JP4858924B2 - 走査型プローブ顕微鏡用探針の作成方法 - Google Patents
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また、細い円筒状のCNTの周囲に本発明のFIB−CVD技術でタングステン又はDLCを堆積させた構造の探針である本発明の走査型プローブ顕微鏡用探針は、CNTを用いたAFMの探針の剛性に欠ける欠点を補強し実用化を果たした。
また、探針の先端に、集束イオンビーム装置の真空チャンバー内でイオンビームによって有機ガスを分解させ、分解した堆積物によって堅固な円柱状のチップを形成させた後、集束イオンビームの集束状態を変化させ、スパッタリング作用により、堆積させた円筒状チップを微細加工することができる。
さらに、このFIB−CVD法によれば突起成長の場所出し、形成する突起の形状・寸法制御も容易である。突起の成長方向をイオンビーム照射方向に対し垂直方向までとることが可能であり、試料ステージの駆動と協働させればあらゆる三次元構造が形成できる。したがって、この技術を用いれば所望形状の探針を容易に作成することが可能となる。試料面に対して垂直方向の探針接触が得られることはCD(Critical Dimension)計測にとって極めて重要なことである。加工も比較的短時間で実行できる。例えば、高さ1μm・直径80nmのタングステン突起の成長時間は約100秒である。最新のソフトを備えたFIB装置によれば、個別に切離す前のシリコンカンチレバーアレイ(ウエハー)を連続自動加工することによって、数時間で100個以上という高アスペクトレシオで試料測定用の走査プローブ針を作成することが可能である。また、2μm以上の長いチップや100nm以上の太い探針も形成可能であり、新たな走査型プローブ顕微鏡の測定分野も広がる。
ステップ1.FIB装置の試料台上に既製の走査プローブ、例えば探針部まで形成されているシリコンカンチレバーアレイ(個別でも可)を取付けて真空チャンバー内に入れる。
ステップ2.走査イオン顕微鏡機能等によって、突起を形成する場所を特定しその位置出しを行う。図2のAに示すように探針1の先端部に集束イオンビーム2が照射されるように試料(プローブ)の位置決めがなされる。図中の3はガス銃でこのノズルから原料ガスが試料面に噴射される。
ステップ3.必要に応じてFIB−CVD法による突起の形成前に、突起形成を行なう基板側(シリコン突起先端部)を土台として整形する。シリコン突起先端部に直接デポジションを実行し円柱状のチップを形成することもできるが、根元部分の機械的強度を得るためには平坦面上にデポジションを実行し円柱状のチップを形成することが望ましい。試料ステージを倒し側面から集束イオンビームを照射し、図2のBに破線で示した部分から先をスパッタリングで削り落し平坦部を形成する。平坦部は図2のDに示すようにFIB−CVD法によって土台5を形成してもよい。その場合にはイオンビーム2はスポット照射では無く走査しながらデポジションを実行することになるが、広い平坦部を形成することが可能である。
ステップ4.FIB−CVD法により、突起を成長させる。スポットビームで成長させる時のビーム電流は0.3〜1pA程度とする。図2のCは先端部をカットした平坦部に円柱状のチップ4を形成したものであり、Dは先端部にまず土台を形成し、その平坦部に円柱状のチップ4を形成したものである。いずれも平坦部にイオンビームが垂直方向から照射されるように試料ステージをチルトする。このようにすればイオンビームの方向を固定したままで円柱状のチップが成長して図1のBに示した理想形態で形成できる。ステージを傾斜させないでビームの方向を徐々にシフトして所望角度の柱状チップを形成することもこのFIB−CVD法では可能であるが、制御が厄介となるので先の方法がベターである。上記の先端部をカットした平坦部または土台の面を図2のE,Fに示したように試料面と平行となるように加工し、その面上に垂直に円柱状のチップをデポジションで形成させると、円柱状のチップの固着性がより堅固となる。突起の素材としてタングステンを選択した場合は材料ガスとしてタングステンヘキサカルボニル:W(CO)6を用いる。ガス圧(ガス銃ノズルから遠く離れたFIB試料室真空計での計測値)は3×10−3Pa程度で噴射すると突起高さの成長速度は、10nm/秒程度である。突起の素材としてダイヤモンドライクカーボン(DLC)を選択した場合は材料ガスとして炭化水素ガス、例えばフェナントレンガス:C14H10を用いる。突起高さの成長速度は、100nm/秒程度まで可能であるが、より硬さを出すためには、20nm/秒程度の成長速度とする。成長速度はガス供給量(ガス圧は×10−5〜10−6Pa)によってコントロールする。また、突起素材として磁性体の突起を作成する場合は、テトラニッケルカルボニルNi(CO)4、オクタカルボニルダイコバルトCo2(CO)8、ニッケルセンNi(C5H5)2、コバルトセンCo(C5H5)2、フェロセンFe(C5H5)2などを材料ガスと使用し、同様に成長速度はガス供給量(ガス圧は×10−3〜10−6Pa)によってコントロールする。探針先端部を磁性体とすることにより試料の磁性特性を検出するプローブとして適用することができるわけであるが、従来のこの種の探針はプローブ全体をコートする形態が採られていた。したがって広い試料面の情報の影響を拾ってしまい探針先端部の局所的情報を検出できなかった。また、コートが剥離し易いという欠点もあったのであるが、本発明によってこれらの問題を解決することができた。また、有機ガスとして、炭化水素系のガスとを使用しカーボンの堅固な円柱状チップを形成させた先端に、有機ガスとして、金属系のガスを使用し金属円柱状チップを継いで探針を形成させることもできる。このような探針は所望特性の金属を探針の先端部分にだけ存在させることができるため、走査型プローブ顕微鏡用探針として局所情報を感度よく、すなわち高分解能のプローブを提供できる。
ステップ5.必要に応じてFIB−CVD法による突起の形成後に、さらに、形成された突起自体に集束イオンビームを用いたスパッタエッチング加工による整形を施す。このFIB−CVD法による突起形成は素材によって綺麗な円柱状とはならないで不揃い形状が出来る場合があり、例えば、タングステンヘキサカルボニルを用いたタングステン形成をさせる場合には、木耳形態の薄いぴらぴらの膜が周りに形成される。この部分はスパッタリングによって簡単に削り落すことができる。このFIB−CVD法による突起の形成は、ビーム照射位置を停止したスポットビームによる円柱形状成長形態の他に、ライン走査ビームによる薄板形状成長形態にすることが出来る。さらに必要に応じてFIB−CVD法とトリミングとによって突起先端形状を色々な形状に加工することが可能である。
1.探針先端のが半球状であるため、試料面の凹凸に対し該先端部における接触位置の割り出し(デコンボリューション)が容易であることから、測定像の像ぼけの補正が容易である。
2.探針先端を半球形状になるように作成した場合、接触圧力を一定に制御すると、試料面に対する接触面積が安定して一定値を保つようになり、導電性測定における再現性が増す。
3.探針先端を半球形状になるように作成した場合、試料面に押し付け走査した時、試料面に傷が付きにくく先端部に所望圧力をかけることができる。この円筒状チップの先端部を半球状であるように形成する手法は本発明のFIB−CVD法によって作成すればほぼこの形状ができるのであるが、必要に応じてスパッタエッチングで整形する。
ステップ1.土台作りFIB装置の試料ステージにプローブ顕微鏡のシリコン探針を載置し、試料ステージをイオンビーム方向に対して垂直方向にし、一方のガス銃からリザーバ、ノズルの温度を60℃/85℃としてW(CO)6を、もう一方のガス銃から同じく70℃/73℃としたC14H10を噴射させてCVDを88秒実行し、0.2μm四方で厚みが0.09μmの土台を形成させた。ガス吹き付け密度を高くしたFIB−CVDでは、ビーム方向に対して垂直の方向までの成長が可能であるから、上方からのビーム走査で探針先端部の幅よりも広い土台形成が可能である。
ステップ2.円柱状チップの形成試料ステージの傾斜をプローブ走査時の傾斜角11°にしてビーム照射位置が土台の中央部にくるように位置決めする。集束イオンビームのスポット位置を土台の中央部に固定した状態を保ち、ガス銃からW(CO)6とC14H10を噴射させてFIB−CVDを30秒実行し、根元部分の径が0.18μmφ,先端部分の0.08μmφのテーパー状の円柱チップを形成した。このときの円柱チップの軸方向はカンチレバー面に対し90°−11°=79°となっており、プローブ走査時に探針が試料面に対して垂直に接触する角度とされている。
ステップ3.形状を整えるトリミングこのとき形成された円柱チップは周りにぴらぴら膜がついており、テーパー角も大きいので試料ステージをビーム方向に対し垂直では無く若干傾斜させ、上方からのビーム照射により形状を整えるトリミングを実行した。整形された円柱状チップは高さ寸法が1.20μm,根元径が120nmφ,先端径が60nmφ、そして先端部形状は30nmRの半球面であった。図5はこの実施例をイオン顕微鏡像で撮影したものであり、シリコン探針部の先端に土台が形成され、その上に79°の方向に立てられたタングステンとカーボンの円柱状チップが観察できる。この観察像からタングステンデポジションの場合にはシャープペンの芯のような円柱状にはならずテーパー角が生じることが見て取れる。しかし、寸法を更に長く成長させると、太さは次第に一定となってくる。
ステップ1.FIB装置の試料台に既製のウエハー上に作り込まれた、カンチレバー群を取付けて真空チャンバー内に入れる。
ステップ2.前記と同様に走査イオン顕微鏡機能等によって、突起を形成する場所を特定しその位置出しを行う。事前に加工する複数個のカンチレバー探針先端を観察し、そのXY座標を記録する。ステージを移動しても、ガス銃のノズルから加工する個々の探針先端の距離が変らないようにステージを移動する。
ステップ3.ウエハーをθステージで傾けイオンビームで探針先端を切断し、測定試料面と平行になるように平坦部を作成する。あるいは、当初から先端が平らで測定試料面と平行になるように面の角度を作成した探針をウエハー上に作成したものを使用し、導電性探針を作成する場合は、チャンバーに導入前に、探針部を含むプローブを金属(たとえば金、白金など)でスパッターコートしておく。θステージをカンチレバー取り付け角度補正分だけ傾け、ガス銃より材料ガスを噴射させ突起形成を行なう基板側(シリコン突起先端部)を土台として整形する。これは根元部分の機械的強度を得るためと下部の導電性コート材と導通を得るためである。その場合には前記のようにイオンビームはスポット照射では無く走査しながらデポジションを実行することになるが、広い平坦部を形成することが可能である。導電性カンチレバーの場合は、土台作成時にウエハーに流れ込むイオンビーム電流を高感度電流計で測定し、土台と探針の導通状態を確認し、導通のないカンチレバーはウエハー上の位置を特定し不良品として選別記録する。
ステップ4.前記と同様にFIB−CVD法により、この土台上に突起を成長させる。スポットビームで成長させる時のビーム電流は0.3〜1pA程度とする。成長速度はガス供給量(ガス圧はガスの種類にもよるが×10−3〜10−6Torr)によってコントロールし、最適条件をもとめ、通常はイオンビーム照射時間を制御して円筒の高さを制御する。あるいは導電性カンチレバーの場合は、円柱(探針)成長時にウエハーに流れ込むイオンビーム電流を高感度電流計で測定し、探針の導通状態を確認し、導通のない探針はウエハー上の位置を確定し不良品として選別記録する。また円柱チップの成長長さを制御する方法として、ウエハーに流れ込むイオンビーム電流を積算し一定の電荷量になったときイオンビームの照射を停止することで行なうようにしてもよい。デポジションの量はFIBのビーム電流積算量に対応すると考えられるからである。
ステップ5.前記と同様でこのとき形成された円柱チップは周りにぴらぴら膜がついており、必要に応じてFIB−CVD法による突起の形成後に、さらに、作成された突起自体に集束イオンビームを用いたスパッタエッチング加工による整形を施す。
ステップ6.ウエハーをθステージで傾け、成長した円柱(探針)の長さをSIM像で計測する。あるいは、電子ビームカラムのあるデュアルビーム装置の場合は、SEM像で円柱の長さを計測する。
ステップ7.ウエハー上の次のカンチレバーの位置に移動し、各カンチレバー毎にステップ2−6の加工を繰り返す。上記方法は1箇所で1つのカンチレバーを順次工程ごとに作成していく手順を示したが、同一の工程を位置をずらして複数個のカンチレバーで作成していく方法も可能である。この場合集束イオンビームの設定変更やステージの傾き変更が不要になり、作成加工時間の短縮が計られる。
「側壁測定用枝分かれ探針」図6のAに示したような二股形状の探針を用いて試料における溝のような凹部の側壁測定用の探針を本発明のデポジション技術を使って作成した。探針先端部は、図のようにベースチップ部より一定の長さlの二つの円筒状チップを有し2つの円筒状チップ間の角度θが既知である。この二股形状の探針を用いて図6のA,Bの示すように垂直壁に対し一方の円筒状チップが先端接触を実現することができるため、従来プローブ顕微鏡で困難とされていたCD計測が可能となる。本数は必ずしも2本である必要はなく、それぞれのチップのベースチップ部に対する長さと角度が既知であればそれ以上の数でもよい。
「側壁測定用ベル形探針」上記枝分かれ探針の他、先端形状をベル形状に形成し、先端両端部を尖らせた側壁測定用探針を提示する。図7に示すようにシリコン探針の先端部をカットしてそこに土台をデポジションし、その土台を基礎として円筒状体をデポジションで作成する。その円筒状体の側周面部をFIBエッチング加工により図に示すように削り取り先端裾部を尖らせてベル形状を作る。この尖った先端裾部が溝の側壁に接触してプローブ機能を果たす。図に示した構造は土台とベル状体間を円柱状体で継ぐようになっているが、これは被測定溝或いは穴が深い場合には長くするとよく、必要に応じて形成される。加工方法としてはデポジションによる円柱状探針を形成途中でイオンビームの照射条件を変え太めの探針を作成し、さらにイオンビームの照射条件を変えて微細なイオンビームで先端を切断し次に側周面を斜めに削り出し、先端裾部に側壁測定用の尖った突起を作成するようにすればよい。
図8のAに示したように同一カンチレバー上に長さの異なる円筒状チップを複数本立てた構造の探針である。このような構成とすることにより、一番長い第一の針が損傷した場合にも次の針により測定が出来るようにした。探針寿命を長くできるだけでなく、測定途上で探針が折れるという事故があってもそのまま測定を継続して行なうことが出来る。真空チャンバーを開けて探針の交換を行ない再度測定条件を整えるということは、大変に手間と時間の掛かることであるため、この応用例は実施効果が高い。
「円筒状チップの太さを部分的に細く形成した探針」
図8のBに示したように円柱状チップの太さを部分的に細く形成した構造の探針である。このような構成とすることにより、構造的に径の細くなった所で折れ易くなっている。測定途上で先端部が不都合に変形したり、異物が付着したような場合に意識的に負荷をかけ先端部分を折って次の節を先端部として使用することができる。先の例と同様に真空チャンバーを開けて探針の交換を行なうことなく、測定を続行することができる。
自然界にも存在している2〜数十層のグラファイト状の炭素が積み重なってできた多重のチューブであるカーボンナノチューブ(CNT)を、AFMの探針として用いる試みもなされているが、このCNTをAFMのカンチレバーの先端に取り付ても剛性が低いため段差試料の測定には不向きであることは既に述べた。そこで本発明のデポジション技術を応用し、図9に示したような探針を想到した。すなわち、細い円筒状のCNTの周囲に本発明のFIB−CVD技術でタングステン又はDLCを堆積させた構造の探針である。このデポジションにより、CNTを用いたAFMの探針の欠点を補強し実用化を果たした。
Claims (5)
- カンチレバーのたわみ信号より試料表面の形状、物性情報を得る走査型プローブ顕微鏡に用いられる探針の先端に、集束イオンビーム装置の真空チャンバー内でイオンビームによって有機ガスを分解させ、分解した堆積物によって堅固な円柱状のチップを作成する工程において、前記チップはカンチレバーの傾き分だけずらした角度でデポシションによる成長を行なわせて、走査時には試料面に垂直に接触するように形成するべく成長する探針部のガスの分圧を一定に保ちかつイオンビーム電流を一定にした条件の下で成長する探針の長さをイオンビーム照射時間によって管理することにより堅固な円柱状の探針先端部を形成することを特徴とする走査型プローブ顕微鏡用探針の作成方法。
- 堅固な円柱状の探針先端部は、イオンビームによって有機ガスを分解させ、分解した堆積物によって長さ寸法が1.55μm以下、根元寸法が300nm以下、先端までのテーパー角が片側角で1.9°以下に形成させるものとした請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡用探針の作成方法。
- 堅固な円柱状の探針先端部は、集束イオンビームの集束状態を変更し、円柱状チップの先端形状が半球形状になるようにデポジションを行なうことを特徴とするに請求項1または2に記載の走査型プローブ顕微鏡用探針の作成方法。
- 堅固な円柱状の探針先端部は、集束イオンビームの集束状態を変更し、円柱状チップの太さを部分的に細く形成するようにデポジションを行なうことを特徴とするに請求項1乃至3のいずれかに記載の走査型プローブ顕微鏡用探針の作成方法。
- 有機ガスとして一方のガス銃からW(CO)6をもう一方のガス銃からC14H10を同時に噴射させて形成したカーボンとタングステンの混合チップを形成させるようにしたことを特徴とするに請求項1乃至4のいずれかに記載の走査型プローブ顕微鏡用探針の作成方法。
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