以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1,図2に本発明に係る実施例の高所作業車1を示している。なお、図1に示す矢印Fの方向を前方、矢印Rの方向を右方、図2に示す矢印Uの方向を上方とする。高所作業車1は、前輪11a,11aおよび後輪11b,11bを備えて四輪走行自在に構成されて前方に配設される運転キャビン12から走行操作可能な車体10と、車体10に設けられた作業装置20と、車体10の側部前後左右に設けられた4本のジャッキ40,40,…とを有して構成されている。作業装置20は、車体10に立設された旋回ポスト21と、基端部が旋回ポスト21に取り付けられたブーム22と、ブーム22の先端部に取り付けられた作業台24とから構成される。
旋回ポスト21は、車体10の前部であって運転キャビン12の後部に立設されており、内蔵された旋回モータBA3の駆動を受けて旋回自在に構成されている。ブーム22は、基端ブーム22aと先端ブーム22bとを入れ子式に組み合わせて構成され、基端ブーム22aが旋回ポスト21に枢結されており、旋回ポスト21とともに旋回作動される。また、ブーム22は、内蔵された伸縮シリンダBA1の伸縮作動を受けて伸縮自在に構成されるとともに、旋回ポスト21と基端ブーム22aとの間に配設される起伏シリンダBA2の伸縮作動を受けて上下に起伏自在に構成されている。先端ブーム22bの先端部には垂直ポスト23が揺動自在に取り付けられている。垂直ポスト23はレベリングシリンダ(図示せず)の伸縮作動を受けて揺動され、常に垂直姿勢に保持されるようになっている。
作業台24は、作業者搭乗用のバケット24aと、バケット24aと垂直ポスト23との間に取り付けられた作業台保持ブラケット24bとから構成され、作業台保持ブラケット24bは垂直ポスト23の軸周りに首振動自在に取り付けられている。作業台保持ブラケット24bには首振モータBA4が内蔵されており、首振モータBA4が駆動されると作業台保持ブラケット24bおよびバケット24aが垂直ポスト23の軸周りに首振作動する。また、作業台24は垂直ポスト23が垂直姿勢であるときにバケット24aの床面が水平状態になるようにして取り付けられており、常にバケット24aの床面が水平状態に保持される。なお、バケット24aの一側面は、一部が上端から下端部まで切り欠かれており、このようにして切り欠かれた部分を開閉自在にドア24cが取り付けられている。作業者は二点鎖線で示すようにドア24cを開けてバケット24aへの乗降を行う。
作業装置20は、走行中などの非作業時には図1,図2に示すように車体10上に格納される。この格納姿勢においては、伸縮シリンダBA1が全縮されてブーム22が全縮状態にされるとともに、全縮状態のブーム22の先端部が平面視において車体10からはみ出ないような旋回角(右方に旋回)に旋回ポスト21が位置している。また、基端ブーム22aを載置するためのブーム載置面13aを上端に形成したブーム受け13が車体10の後部に立設されており、ブーム22がこのブーム載置面13aに載置されるように起伏シリンダBA2が作動される。なお、この格納位置にあるブーム22の起伏角が負角(例えば約−10度)になるようにブーム受け13が配設されているが、起伏シリンダBA2はさらに縮小可能になっており、ブーム22は格納位置の起伏角からさらに倒伏作動させることができる。このように格納されるブーム22の先端部に取り付けられる作業台24は、車体10の後部且つ上部に位置し、平面視において車体10からはみ出ないようにブーム22の収縮方向に向けられてブーム22の左側方に沿うような首振角で格納される。
各ジャッキ40は、車体10の側部に固設されて上下方向に延びるアウタポスト41と、アウタポスト41の下端から上下方向に伸縮自在に挿入されたインナポスト42と、インナポスト42の下端部に揺動自在に取り付けられたジャッキパッド43とから構成され、内蔵されたジャッキシリンダJA1(JA2,JA3,JA4)の伸縮作動によりインナポスト42を上下に伸縮作動させることができる。4本のジャッキ40,40,…のインナポスト42,42,…をそれぞれ下方に伸長作動させることにより、ジャッキパッド43,43,…を接地させて車体10が持上支持される。このとき、車体10を水平状態にすることで車体10が安定した状態になり、ブーム22の作動に応じて車体10に作用する転倒モーメントに抗し、ブーム22の作動を安全に行うことができる。
作業台24には図3に示すように上部操作装置30が備えられている。上部操作装置30には、ブーム22の伸縮操作、起伏操作および旋回操作を行うためのブーム操作レバー31と、作業台24の首振操作を行うための首振操作レバー32とが設けられている。ブーム操作レバー31の基部には、ブーム伸縮操作を検出する伸縮ポテンショメータ、ブーム起伏操作を検出する起伏ポテンショメータおよびブーム旋回操作を検出する旋回ポテンショメータからなるブーム操作センサS1が設けられている。首振操作レバー32の基部には、中立位置でオフ、左右の傾動位置でそれぞれオンとなるスイッチからなる首振操作センサS2が設けられている。
また、上部操作装置30には、両操作レバー31,32とともに、ブーム22および作業台24が自動的に上記格納位置に移動するようにブーム22および作業台24を作動させるための上部自動格納スイッチSW5と、作業台24が高所位置から後述する地上乗込位置に移動するようにブーム22および作業台24を作動させるための自動地上降下スイッチSW3とが設けられている。
車体10の後部には下部操作装置35が備えられている。下部操作装置35には、ジャッキ40,40,…の伸縮作動を操作するためのジャッキ操作装置36とともに、地上乗込スイッチSW1および自動水平スイッチSW2が設けられている。また、自動的に地上乗込位置から上記格納位置にブーム22を作動させるための下部自動格納スイッチSW4が設けられている。
図4に、高所作業車1のコントローラ50に係る構成ブロック図を示している。高所作業車1の作動制御を行うコントローラ50は、バルブ制御部51と、自動水平制御部52と、各種の情報を記憶可能なメモリ53aを備えた地上乗込制御部53とを有して構成される。
コントローラ50には各種のセンサ、スイッチが接続されている。ブーム操作センサS1および首振操作センサS2はコントローラ50と接続されており、ブーム操作センサS1を構成するポテンショメータの検出信号と、首振操作センサS2を構成するスイッチの検出信号とがそれぞれ両操作レバー31,32の操作信号としてコントローラ50に入力される。
車体10には、水平面Hに対する車体10の傾斜角を検出可能に構成された車体傾斜角センサS4が設けられており、車体傾斜角センサS4からの検出信号が逐次コントローラ50に入力される。さらに、上部操作装置30および下部操作装置35に設けられる各スイッチSW1〜SW5の操作信号についてもコントローラ50に入力されるようになっている。
バルブ制御部51は、各油圧アクチュエータに対応して設けられて作動油の給排を制御する各制御バルブの駆動制御を行う。ブーム操作センサS1および首振操作センサS2の操作信号がコントローラ50に入力されると、この操作信号に基づき、伸縮動制御バルブBV1を電磁駆動して伸縮シリンダBA1を伸縮作動させ、起伏動制御バルブBV2を電磁駆動して起伏シリンダBA2を伸縮作動させ、旋回動制御バルブBV3を電磁駆動して旋回モータBA3を駆動させ、首振動制御バルブBV4を電磁駆動して首振モータBA4を駆動させる。これにより、ブーム操作レバー31のレバー操作に応じたブーム22の作動と、首振操作レバー32の操作に応じた作業台24の首振作動とが行われる。
また、このバルブ制御部51により、各ジャッキ制御バルブJV1〜JV4を電磁駆動して対応するジャッキシリンダJA1〜JA4を伸縮作動させることも可能になっている。これにより、インナポスト42,42,…の伸縮作動が行われる。
各油圧アクチュエータに給排される作動油は、車体10に設けられた油圧ポンプPにより吐出されており、油圧ポンプPからの作動油が上記各制御バルブを介して対応する油圧アクチュエータに給排される。また、エンジンEから車輪11a,11a,11b,11bへ駆動力を伝達する動力伝達機構に対して、エンジンEの駆動力を取出可能な動力取出機構(パワーテイクオフ機構)PTOが継脱自在に設けられており、油圧ポンプPはこの動力取出機構PTOにより取り出されたエンジンEの駆動力を受けて駆動される。また、運転キャビン12には、この動力取出機構PTOの継脱作動を操作するためのPTOスイッチSW6が設けられている。なお、PTOスイッチSW6が操作されると、操作信号がコントローラ50に入力されるように構成されている。
次いで、高所作業車1を使用した高所作業の手順と、コントローラ50により行われる作業装置20およびジャッキ40の作動制御について、図5〜図11を参照して説明する。ところで、作業開始前において高所作業車1は、図5(a),図7(a)に示すように、ブーム22および作業台24が格納位置にあるとともに、ジャッキ40,40,…が上方に収縮された格納位置にあり、前輪11a,11aおよび後輪11b,11bが接地して停車されている。作業を開始するにあたって、まず、PTOスイッチSW6が操作される(ステップS1)。これにより、エンジンEの駆動力が動力取出機構PTOにより取り出され、油圧ポンプPが駆動して各油圧アクチュエータが作動可能な状態になる。
なお、前輪11a,11aおよび後輪11b,11bが接地した状態においては、地面Gと車体10とは略平行の関係にあり、地面Gの傾斜に関わらず車体10の傾斜角から地面傾斜角θ1を算出することが可能である。
この高所作業車1は、手動および自動でジャッキ40,40,…を張り出すことができる。まず、手動でジャッキ40,40,…を張り出すときについて、図5,図6および図9を参照して説明する。この場合には、PTOスイッチSW6が操作されて操作信号がコントローラ50に入力されると、このときに車体傾斜角センサS4が検出する車体10の水平面に対する傾斜角(以下、作業開始時傾斜角とも称する)θ1が地上乗込制御部53のメモリ53aに記憶される(ステップS2)。この作業開始時傾斜角θ1は、車輪11a,11a,11b,11bが接地している状態に検出されるため、地面傾斜角θ1とほぼ等しい値になる。
次いで、ジャッキ40を伸長させることにより、車体10の持上支持が行われる(ステップS3)。高所作業を行うときには、安定した作業を保証するため車体10が水平に支持されていることが好ましいことから、ジャッキ操作装置36の操作により車体10が水平状態に支持されるようにインナポスト42,42,…が伸長される。
ここで、車体10がジャッキ40,40,…により水平状態に持上支持された状態においては、同じ地面傾斜角θ1の地面に停車したときにおいて、ジャッキ40,40,…の伸長量の違いにより生じる車体10と地面Gとの距離の誤差は小さいものである。このように地面傾斜角θ1が定まると、車体10が水平状態に支持されたときにおける作業台24と地面Gとの距離関係は、そのときどきにおけるジャッキ40,40,…の伸長量の違いに関わらず、概ね定めることができる。
このようにジャッキ操作装置36が操作されて車体10が図5(b)に示すように持上支持されると、地上乗込スイッチSW1が操作される(ステップS4)。地上乗込スイッチSW1が操作されて操作信号がコントローラ50に入力されると、このときに車体傾斜角センサS4が検出する車体10の水平面に対する傾斜角(以下、接地時傾斜角とも称する)θ2が地上乗込制御部53に入力される(ステップS5)。
地上乗込制御部53には、作動量記憶部54が備えられている。この作動量記憶部54には、地面傾斜角(作業開始時傾斜角)θ1と、接地時傾斜角θ2とに応じて、作業台24を地上乗込位置に移動させるにあたって最適となる作業装置20の作動量(ブーム22の伸長量、起伏角および旋回角)を求めるためのテーブル(マップ)が記憶されている。このような作動量は、地面傾斜角θ1と接地時傾斜角θ2との差から求められ、ジャッキ40,40,…により持上支持された状態における車体10の延びる方向と地面Gとでなす角θ3に応じた作業台24と地面Gとの距離関係から予め設定することができる。地上乗込制御部53は、地上乗込スイッチSW1が操作されて接地時傾斜角θ2が入力されると、メモリ53aに記憶される地面傾斜角(作業開始時傾斜角)θ1と、この接地時傾斜角θ2とに基づいて作動量記憶部54から作業装置20の作動量を求める(ステップS6)。
ここで、作業装置20の作動量のうちブーム22の伸長量についていえば、図6に示すように、地面Gが水平状態であるとき(図6(b))を基準にして、地面Gが前下がりであってその傾斜角θ1が大きくなると、これに応じて作動量記憶部54に予め記憶されるブーム22の伸長量が小さくなるように設定されている(図6(a))。また、地面Gが前上がりであってその傾斜角θ1が大きくなると、これに応じて作動量記憶部54に予め記憶されるブーム22の伸長量が大きくなるように設定されている(図6(c))。なお、前上がりの傾斜角θ1が所定の値を超えると、ブーム22を限界まで伸長させても、地面Gに近付けることができなくなる。また、このような状態となる前において地面Gに近付けられるにしてもブーム22の伸長量が大きいと車体10の後方に大きなスペースを必要とする。このため、地上乗込制御部53は、スペースを確保する上で許容される所定の伸長量を超えなければ作業台24を地面Gに近付けられないような地面の傾斜角θ1が算出されたときには、地上乗込スイッチSW1を操作してもブーム22を作動させないように制御し、同時にブザー等の所定の警報手段を作動させて作業台24を地上乗込位置に移動させることができないことを作業者に報知可能に構成されている。
また、ブーム22の起伏角は、格納状態に対して倒伏させる方向に設定されている。ここで、最終目標値として起伏角が倒伏させる方向に設定されていても、格納状態からそのままブーム22を倒伏させると、ブーム受け13と干渉してブーム受け13が破損するおそれがある。このため、格納状態からブーム22を最終目標値の起伏角にするまでの過程では、まず、ブーム22を所定角度だけ起仰し、次いで、所定角度だけブーム22を旋回し、次いで最終目標値の起伏角までブーム22を倒伏させるようになっている。このように、作業装置20のうちブーム22の旋回角は、ブーム22を倒伏させるにあたって、ブーム22の下面とブーム受け13とが干渉することのない所定角度に設定されている。
作業装置20の作動量が求められると、求められた作動量だけ作業装置20が作動するように、バルブ制御部51に制御信号を出力する。出力された制御信号に基づき、バルブ制御部51により、伸長動制御バルブBV1、起伏動制御バルブBV2および旋回動制御バルブBV3が駆動制御されてブーム22の伸長作動、起伏作動および旋回作動が行われる(ステップS7)。なお、コントローラ50には、ブーム22の所定箇所にそれぞれ設けられたブーム22の伸長量を検出する伸長量センサS5、起伏角を検出する起伏角センサS6および旋回角を検出する旋回角センサS7からの検出信号が逐次出力されている。地上乗込制御部53は、各センサS5〜S7からの検出信号により作動量記憶部54から求めた所定の作動量に達したと判断すると、作業装置20の作動を停止させるようにバルブ制御部51が制御される。
このようにして作業台24が取り付けられた先端部を後方に向けて車体10上に格納されている状態のブーム22が伸長することにより、図5(c)に示すように、高所作業車は、車体10が水平状態で持上支持されているとともに、作業台24が車体10の後方における地面近くの地上乗込位置に移動し、作業者は地上から作業台24に容易に搭乗することができる。なお、ブーム22を倒伏させることにより、伸長量を短くしても作業台24を十分地面に近付けることができるため、地上乗込位置に移動させるために車両後方に確保する必要があるスペースをコンパクトにすることができる。
次いで、自動的にジャッキ40,40,…を張り出すときについて図7,図8および図10を参照して説明する。この場合には、自動水平スイッチSW2が操作される(ステップS12)。自動水平スイッチSW2の操作信号がコントローラ50に入力されると、このときに車体傾斜角センサS4が検出する車体10の水平面に対する傾斜角(作業開始時傾斜角)θ1が地上乗込制御部53のメモリ53aに記憶される(ステップS13)。自動水平スイッチSW2が操作されたときとは、作業開始直前において車輪11a,11a,11b,11bが接地している状態であり、車体10の傾斜角は、地面傾斜角θ1とほぼ等しい値になる。
そして、自動水平スイッチSW2からの操作信号がコントローラ50に出力されると、自動水平制御部52からバルブ制御部51に制御信号が出力され、バルブ制御部51はこの制御信号に基づいてジャッキ制御バルブJV1〜JV4を電磁駆動し、各ジャッキシリンダJA1〜JA4を伸長作動させてインナポスト42,42,…を下方に伸長作動させて車体10を持上支持させる。このとき、車体傾斜角センサS4から、車体10の水平面Hに対する傾斜角を示す検出信号が逐次出力されており、自動水平制御部52はこの検出信号に基づいて制御信号をバルブ制御部51に出力し、車体10が水平状態になるようにバルブ制御部51によるジャッキ制御バルブJV1〜JV4の駆動制御を行わせる。このようにして車体10は、図7(b)に示すように、地面の傾斜角θ1に関わらず、自動水平スイッチSW2が操作されると、前輪11a,11aおよび後輪11b,11bが地切りされて水平に支持された状態になる。
このように車体10がほぼ水平状態になるように支持された後に、地上乗込スイッチSW1が操作される(ステップS14)。地上乗込スイッチSW1が操作されて操作信号がコントローラ50に入力されると、このときに車体傾斜角センサS4が検出する車体10の水平面に対する傾斜角(以下、接地時傾斜角とも称する)θ2が地上乗込制御部53に入力される(ステップS15)。ただし、このように自動的にジャッキ40,40,…が張り出される場合には、接地時傾斜角θ2=0になり、持上支持された車体10の延びる方向と地面Gとでなす角θ3が地面傾斜角θ1と等しくなる。
地上乗込制御部53は、地上乗込スイッチSW1が操作されて接地時傾斜角θ2が入力されると、メモリ53aに記憶される地面傾斜角(作業開始時傾斜角)θ1と、この接地時傾斜角θ2(=0)とに基づき、作動量記憶部54から作業装置20の作動量が求められる(ステップS16)。
このようにして作業装置20の作動量が求められると、手動でジャッキ40,40,…を張り出した場合と同様に、求められた作動量だけ作業装置20が作動するようにバルブ制御部51に制御信号が出力されて作業装置20が作動制御され(ステップS17)、図7(c)に示すように、車体10が水平状態で持上支持されているとともに作業台24が車体10の後方における地面近くの地上乗込位置に移動する。
なお、自動的にジャッキ40,40,…を張り出すときには、上記のように地面傾斜角θ1に関わらず、接地時傾斜角θ2は0として検出される。このため、自動的にジャッキ40,40,…を張り出す制御を行うときには、接地時傾斜角θ2を定数(0)として扱うことができ、地面傾斜角θ1が定まると作動量記憶部54から最適な作業装置20の作動量を求めることができる。このような点に鑑み、自動的にジャッキ40,40,…を張り出すときには、図11に示す制御を行うことができる。
PTOスイッチSW6が操作されて油圧アクチュエータに作動油圧を供給可能な状態になると、図7(a)に示す状態において地上乗込スイッチSW1が操作される(ステップS22)。地上乗込スイッチSW1が操作されると、このときに車体傾斜角センサS4が検出する車体10の水平面に対する傾斜角(作業開始時傾斜角)θ1がコントローラ50に入力される(ステップS23)。
また、地上乗込スイッチSW1が操作されると、自動水平制御部53が作動し、上記と同様にして車体10を水平状態に持上支持させるようにジャッキ40,40,…の作動制御が行われる(ステップS24)。
さらに、この作業開始時傾斜角θ1と、定数として扱う接地時傾斜角θ2に基づき、作動量記憶部から最適な作業装置20の作動量が求められる(ステップS25)。そして、ジャッキ40,40,…の作動制御と並行して、求められた作動量だけ作業装置20が作動するようにバルブ制御部51に制御信号が出力され、ブーム22の作動制御が行われる(ステップS26)。
ここで、作業装置20の作動量のうちブーム22の伸長量についていえば、図8に示すように、地面Gが水平状態であるとき(図8(b))を基準にして、地面Gが前下がりであってその傾斜角θ1が大きくなると、これに応じて作動量記憶部54に予め記憶されるブーム22の伸長量が小さくなるように設定されている(図8(a))。また、地面Gが前上がりであってその傾斜角θ1が大きくなると、これに応じて作動量記憶部54に予め記憶されるブーム22の伸長量が大きくなるように設定されている(図8(c))。なお、前上がりの傾斜角θ1が所定の値を超えると、ブーム22を限界まで伸長作動させても、また限界まで倒伏作動させても地面Gに近付けることができなくなる。また、このような状態となる前において地面Gに近付けられるにしてもブーム22の伸長量が大きいと車体10の後方に大きなスペースを必要とする。このため、地上乗込制御部53は、スペースを確保する上で許容される所定の伸長量を超えなければ作業台24を地面Gに近付けられないような地面の傾斜角θ1が算出されたときには、地上乗込スイッチSW1を操作してもブーム22を作動させないように制御し、同時にブザー等の所定の警報手段を作動させて作業台24を地上乗込位置に移動させることができないことを作業者に報知可能に構成されている。また、起伏角および旋回角についても、ジャッキ40,40,…を手動で操作したときと同様にして設定される。
これにより、ジャッキ40,40,…とブーム22とが同時に作動し、図7(c)に示すように、車体10が水平状態で持上支持されているとともに、作業台24が車体10の後方における地面近くの地上乗込位置に移動する。
このとき、ジャッキ40,40,…の伸長過程で作業装置20を作動させ過ぎると、作業台24が地面に干渉するおそれがある。したがって、ジャッキ40,40,…とブーム22とを並行して作動させるのに先立って、ジャッキ40,40,…のみを所定時間だけ先行して作動させるように(作業装置20の作動制御を所定時間だけ遅らせるように)してもよい。このような制御を行うにあたっては、例えば、ジャッキパッド43,43,…が接地して車体10の持上支持が開始されるまでは、ブーム22の作動制御を行わないようにしてもよい。
このように地上乗込位置にある作業台24に搭乗すると、上部操作装置30に備えられるブーム操作レバー31および首振操作レバー32でブーム22および作業台24を作動操作して所望の高所作業位置に作業台24が移動される。なお、作業台24の搭乗時において、車体10はすでに水平状態に持上支持されて安定した状態となっているため、作業台24を高所作業位置まで安全に移動させることができる。
作業を終えて上部操作装置30に設けられた自動地上降下スイッチSW3が操作されると、操作信号を受けたコントローラ50により制御バルブの駆動制御がなされ、ブーム22および作業台24を作動させて図5(c),図7(c)に示すように、作業台24を地上乗込位置に移動させる。これにより、作業者は作業台24から地上に降りることができる。地上に降りた作業者は、下部操作装置35に設けられた下部自動格納スイッチSW4を操作する。下部自動格納スイッチSW4からの操作信号がコントローラ50に出力されると、コントローラ50により制御バルブの駆動制御が行われ、ブーム22を収縮作動および起仰作動させ、図5(b),図7(b)に示すように、ブーム22および作業台24を車体10上の格納位置に移動させる。
このように、本実施例の高所作業車1によると、地面傾斜角θ1と接地時傾斜角θ2とに基づいて作業台24を地上乗込位置に移動させるために最適な作業装置20の作動量を求め、このような作動量となるように作業装置20の作動制御を行う地上乗込制御部53を備えている。したがって、地面の傾斜に関わらず、また、ジャッキ40,40,…により車体10が持上支持された状態における車体10の傾斜角に関わらず、作業台24を確実に地上乗込位置に移動させることができる。このため、前下がりあるいは前上がりの地面に停車して高所作業を行う場合においても、手動でジャッキ40,40,…を張り出したため水平状態に車体10を支持できなかった場合においても、作業台24を地面に干渉させることなく地上乗込位置に移動させることができる。
また、地面傾斜角θ1が、PTOスイッチSW6が操作されたときの車体10の傾斜角で代用されている。このように、PTOスイッチSW6が操作されたときというのは、車両を停止させて作業を開始するときであり、ジャッキ40,40,…が未接地であり、車体10の傾斜角を地面傾斜角θ1として十分に代用できる。したがって、路面傾斜角を検出するための専用の検出器を設ける必要がなく、高所作業車の構成を簡易化することができる。
また、自動的に車体10を水平状態にする自動水平制御部52を備えることにより、地面の傾斜に関わらず、地上から作業台24に搭乗した後に行われる作業装置20の作動操作を安全に行わせることができる。
ここで、PTOスイッチSW6が操作されて油圧アクチュエータに作動油圧が供給可能な状態であっても、エンジンEから車輪11a,11a,11b,11bへの動力伝達自体が遮断されるわけではなく、所定条件下で車両を走行可能に構成した高所作業車がある。このような場合、上記のようにPTOスイッチSW6が操作されたときの車体10の傾斜角を地面傾斜角として代用する構成では、必ずしもメモリ53aに記憶された傾斜角が、実際に高所作業が行われる地点の地面傾斜角と一致しないおそれがある。自動的に車体10を水平状態に持上支持する場合において、自動水平スイッチSW2が操作されたときの車体10の傾斜角を地面傾斜角として代用することにより、上記と同様に高所作業車の構成を簡易化することができるとともに、高所作業が行われる地点の地面傾斜角として確実に代用することができ、制御信頼性を向上させることができる。
また、自動的に車体10を水平状態に持上支持する場合においては、ジャッキ40,40,…により持上支持された状態での車体10の傾斜角が地面傾斜角に関わらず一定になるため、作業装置20の作動量を地面傾斜角θ1に応じて求めることができる。したがって、地面傾斜角θ1が定まると、ジャッキ40,40,…およびブーム22の作動を並行して行わせることができ、このように並行して作動させることにより、車両を停車してから作業台24を地上乗込位置まで移動させるまでに要する時間を短縮でき、作業効率を向上させることができる。
これまで本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例の構成に限定されるものではない。上記実施例においては、自動水平制御部52の制御により、車体10を水平状態に持上支持して作業台24を地面Gに近付けるとしたが、本発明に係る高所作業車は、ジャッキ40,40,…による車体支持状態と地面の傾斜角θ1とに応じた作動量だけ作業装置20を作動させて作業台24を地面Gに近付けさせるように移動させる制御を行わせるように構成されていればよい。
例えば、ジャッキ40,40,…を自動的に作動させて水平状態に車体10を持上支持させるとしたが、必ずしも水平状態に限らず、地面Gの傾斜に関わらず所定の後傾角に車体10を後傾させるための自動後傾制御部を新たに設け、この自動後傾制御部を作動させるための自動後傾スイッチを下部操作装置に新たに設ける構成としてもよい。このとき、自動後傾制御部は自動水平制御部52と同様にして、自動後傾スイッチからの操作信号を受けて車体傾斜角センサS4の検出する車体10の水平面に対する傾斜角(作業開始時車体傾斜角)θ1の検出信号に基づいた制御信号をバルブ制御部51に制御信号を出力し、この制御信号を受けたバルブ制御部51により各ジャッキ制御バルブJV1〜JV4を駆動制御し、車体傾斜角センサS4の検出する車体10の傾斜角θ1が自動後傾制御部に予め設定された所定の後傾角となるように車体10を持上支持されるまでジャッキ40,40,…を作動させる。このように地面の傾斜角に関わらず所定の後傾角となるように車体10が持上支持される本構成例においても上記実施例と同様にして、地面の傾斜角θ1が定まると車体支持状態における作業台24と地面Gとの距離関係が概ね定められる。このため作動量記憶部54には、この距離関係に基づいて地面の傾斜角θ1に対応付けて地面Gに近付けさせるために必要な作業装置20の作動量が予め記憶されている。
このような構成であっても、例えば、前方左右のジャッキシリンダを最大伸長量で伸長作動させ、後方左右のジャッキシリンダをジャッキパッド43,43,…が接地する程度の伸長量で伸長作動させ、上記所定の後傾角を大きくとった場合であっても、上記実施例と同様にして地面Gが前下がりの場合に作業台24が地面Gと干渉するおそれをなくすことができる。さらに、この構成によると、車体10が後方に傾けられた状態においてブーム22を伸長させるようになっている。後方に傾けられることにより車体10の後方に格納される作業台24は下方に向けられ、地面Gに近付けられる。このため、車体10を水平状態にする形態と比べ、ブーム22の伸長量を小さくすることができ、作業台24を地上乗込位置に移動させるために車体10の後方に必要なスペースをコンパクトにすることができる。
なお、このように、車体10を後傾する場合においても、車体10は地面の傾斜に関わらず、所定の傾斜角になるため、地面傾斜角θ1が定まると作業装置20の作動量を求めることができる。このため、地上乗込スイッチSW1が操作されたときに、ジャッキ40,40,…の作動制御とブーム22の作動制御とを並行させる制御を行ってもよい。
なお、上記地上乗込制御において行われる作業装置20の作動制御は、ブーム22の伸長、起伏および旋回に限られない。例えば、ブーム22の収縮方向に向けられてブーム22の側部に沿って格納される作業台24を首振作動させてもよい。これにより、作業台24がブーム22の伸長方向に位置するため、ブーム22の伸長量を小さくしても作業台24を地面Gに近付けさせることができる。また、ブーム22の先端部と作業台24との間に屈伸アームを介設する形態の作業装置を設けた高所作業車においては、所定の屈伸角だけ屈伸アームを屈伸作動させる形態であってもよい。
また、地上乗込制御部53によりブーム22を倒伏作動させる場合、ブーム受け13の干渉を回避するために予め旋回作動させるとしたが、ブーム載置面13aの高さを上下移動自在に構成し、地上乗込スイッチSW1の操作に応じてブーム載置面13aの高さ位置を下動させる構成としてもよい。例えば、ブーム受け13を入れ子式に組み合わせて伸縮自在に構成する形態でもよいし、ブーム受け13を車体10の前後方向に揺動自在に立設させる形態としてもよい。
なお、図10に示す地上乗込制御においては、ジャッキ40,40,…による車体10の支持が終了した後、作業装置20の作動量を求めるとしたが、求めるタイミングはジャッキ40,40,…が接地したときであってもよい。また、図10に示す地上乗込制御においては、自動水平スイッチSW2に地上乗込スイッチSW1と自動水平スイッチSW2を共用させてもよい。すなわち、一度自動水平スイッチSW2が操作されるとジャッキ40,40,…の自動張り出しを行わせ、車体10が水平に支持された状態において再度自動水平スイッチSW2が操作されると作業台24を地上乗込位置に移動させるように作業装置20を作動制御するように構成してもよい。これにより、高所作業車の構成を簡略化できる。