JP4853299B2 - 包接水和物の塊状体及びその形成方法、蓄熱方法、蓄熱装置 - Google Patents

包接水和物の塊状体及びその形成方法、蓄熱方法、蓄熱装置 Download PDF

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Description

本発明は、包接水和物生成物質を含む水溶液を冷却することで生成される包接水和物が蓄積されてできる包接水和物の塊状体及びその形成方法に関する。包接水和物の塊状体は潜熱蓄熱体の構成要素として、例えば空調、蓄放熱等の熱利用分野及びその他のエネルギー関連分野において利用可能であり、特に静置式蓄熱装置の中核部分をなす潜熱蓄熱体向けとして好適である。
また、本発明は、空調や冷却装置などに用いられる包接水和物を用いた蓄熱方法及び蓄熱装置に関する。
なお、 本明細書において、次に掲げる用語の意味は以下の通りとする。
( i ) 「塊状体」とは、一つの集合体としての外形を有する物体をいい、周囲のものと視覚的に区別できる外形であれば、その形状に限定はなく、特に明記する場合を除き、輪郭の鮮明さ、内部の構造、強度、硬度、粘性、密度、組成等は問わない。
( ii ) 「沖合」とは、水溶液中に熱交換面が存在する状態において、熱交換面を基準にして、水溶液が存在する方向をいう。
冷熱源との熱交換により冷却された溶液から生成される潜熱蓄熱性物質が、冷熱源との熱交換が起こる熱交換面の表面上又はその表面から溶液の沖合に向けて蓄積され、塊状の外形を有するに至ったものは、潜熱蓄熱体としての技術的価値を有する。
この価値に着目して構成された技術の典型例が氷蓄熱技術である。氷蓄熱技術は、槽内に収容された製氷用液体を当該槽内に設置された熱交換器を介して冷媒により冷却することにより氷を生成させ、これを熱交換面の表面上に又はその表面から液体の沖合に向けて蓄積又は成長させることにより氷塊とし、その氷塊を潜熱蓄熱体として利用し、蓄熱空調システムに用いることでエネルギーの有効利用を図る技術である(特許文献1)。
氷以外にも潜熱蓄熱性物質は知られている。例えば、包接水和物である(特許文献2)。
包接水和物は、包接水和物生成物質を含む水溶液が冷熱源との熱交換による冷却により生成される。そして、包接水和物は、冷熱源との熱交換が起こる熱交換面の表面上又はその表面から水溶液の沖合に向けて蓄積されると、塊状体になる。このような性質は、上記の氷蓄熱技術の基礎となる氷の性質と類似しているので、氷蓄熱技術において氷と包接水和物(又は製氷用液体と包接水和物生成物質を含む水溶液)を単純に置換すれば包接水和物蓄熱技術ともいうべき技術が難なく構築されると期待できなくもないが、実際に蓄熱システムへの利用を考慮するとそう単純な話ではない。
包接水和物蓄熱技術の構築に際して最も問題となるのは包接水和物が氷より熱伝導率が低いという点である。このため、包接水和物生成物質を含む水溶液が冷熱源との熱交換による冷却により包接水和物が生成され、冷熱源との熱交換が起こる熱交換面の表面上又はその表面から水溶液の沖合に向けて蓄積される過程において、熱交換面から水溶液の沖合に向けて包接水和物を介して冷熱が伝わり難く、水溶液の沖合に向けて新たな包接水和物の生成に時間を要し、ひいては塊状の包接水和物としてより大きく成長し難い。
包接水和物が大きな塊状体に成長し難いということは、蓄熱できる蓄熱量が頭打ちになることを意味している。このため、物理的(機械的)又は熱的な手段を用いて、冷熱源との熱交換が起こる熱交換面の表面上又はその表面から水溶液の沖合に向けて蓄積された包接水和物の塊状体をその表面から剥離させ溶液中に分散させ、もってスラリにすることにより、熱交換面を露出させ、包接水和物の生成と塊状化を繰返し促すという試みがなされている(特許文献3、特許文献4)。この場合、当該スラリが蓄熱剤(又は蓄熱材)として使用される。
しかしながら、単位体積当たりの蓄熱量(蓄熱密度)は、包接水和物のスラリに比べると、熱交換面に包接水和物が蓄積して形成される包接水和物の塊状体の方が大きい。この意味から、包接水和物の塊状体を蓄熱剤(又は蓄熱材)として用いるのが本来望ましいといえる。
従って、実際の蓄熱空調システム等への利用を可能とする包接水和物蓄熱技術を確立するためには、氷蓄熱技術において氷の代わりに包接水和物(又は製氷用液体の代わりに包接水和物生成物質を含む水溶液)を使用するという程度の単純な工夫では足りず、包接水和物の熱伝導率の低さを何らかの手段により克服し、包接水和物の塊状体により多くの潜熱が蓄熱されるような特段の工夫が必要になる。
ここで、潜熱蓄熱性物質が溶液から生成する際に熱を伝導し易くする手法としては、例えば次のものがある。
(A) 固液相変化物質に膨張黒鉛を熱伝導性助剤として混在させる方法(特許文献5)。
(B) 伝熱管面に熱伝導性のある炭素繊維を配向させる、または、熱伝導率が高い材質のフィンや線などを設ける(特許文献6)。
また、包接水和物の熱伝導率の向上とは別に、包接水和物の蓄熱量を増加させる手法としては、例えば、氷との共晶を利用する手法として、包接水和物生成物質を含む水溶液を冷却する過程で生成される包接水和物と、さらなる冷却により氷を生成し、包接水和物と氷の混合スラリを蓄熱剤の主剤として利用するものがある(特許文献7)。
特開平7−294076号公報 特許3641362号公報 特開2000−111283号公報 特開2000−205775号公報 特開2004−149796号公報 特開2000−55578号公報 特開号2001−280875号公報
包接水和物の熱伝導率を向上させるための方法として、上記(A)及び(B)の手法は、蓄熱剤への別の助材の追加や、熱交換器部材の追加により蓄熱装置の構造が複雑化することを要し、材料費、加工費が増加し総じてコスト高となる。また、追加した部材の空間占有により、蓄熱剤の容積、ひいては単位体積当たりの蓄熱量の減少を招くという問題がある。
また、包接水和物の蓄熱量を増加させる手法として、氷との共晶を利用する特許文献7の手法は、熱交換により熱交換面に生成した包接水和物をその生成の都度除去し、新たに露出した熱交換面においてさらに包接水和物の生成と除去を繰り返し、別に設けた蓄熱槽に蓄積することで冷熱を蓄熱し、さらに氷を生成して蓄熱量を増加させる手法である。それ故、熱交換面の表面上に又はその表面から水溶液の沖合に向けて蓄積されてなる包接水和物の塊状体の熱伝導率を向上させることはできず、包接水和物の熱伝導率が低いことに起因する問題点を解決することはできない。
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、包接水和物生成物質を含む水溶液と冷熱源との熱交換により生成される包接水和物の塊状体において、潜熱蓄熱性物質としての包接水和物の熱伝導率の低さを克服し、より多くの潜熱蓄熱を可能にし、ひいては実際の蓄熱空調システム等への利用に耐え得る包接水和物蓄熱技術の確立に資する技術を提供することを目的とする。
上記目的を達成するためになされた本発明は、以下のような構成を備えたものである。
(1) 本発明の第1の形態に係る包接水和物の塊状体は、包接水和物生成物質を含む水溶液を冷却することによって得られる包接水和物の塊状体であって、前記包接水和物の凝固点は0℃より高く、前記水溶液を包接水和物と氷との共晶点以下に冷却することによって得られることを特徴とするものである。
(2)本発明の第2の形態に係る包接水和物の塊状体は、包接水和物生成物質を含む水溶液を冷熱源との熱交換により冷却することにより生成された包接水和物が、前記冷熱源との熱交換が起こる熱交換面の表面上に又はその表面から前記水溶液の沖合に向けて蓄積されてなる包接水和物の塊状体であって、前記包接水和物の凝固点は0℃より高く、前記水溶液を包接水和物と氷との共晶点以下に冷却することによって得られることを特徴とするものである。
(3) 本発明の第3の形態に係る包接水和物の塊状体は、上記第2の形態に係るものにおいて、熱交換面から水溶液の沖合に向けて遠ざかるほど包接水和物の塊状体中に包接水和物が占める体積比率又は重量比率が減少することを特徴とするものである。
(4) 本発明の第4の形態に係る包接水和物の塊状体は、上記第2の形態及び第3の形態のものにおいて、冷熱源が伝熱管に通流される冷媒であり、熱交換面が伝熱管の外表面であり、包接水和物の塊状体は伝熱管の周りに蓄積されて略同軸鞘状又は略円筒形状の外形をなすことを特徴とするものである。
(5) 本発明の第5の形態に係る包接水和物の塊状体は、上記第1の形態乃至第4の形態に係るものにおいて、包接水和物の凝固点が0℃より高く20℃より低く、包接水和物の塊状体の内部に氷が存在し、氷が存在する割合が26重量%以下であることを特徴とするものである。
(6) 本発明の第6の形態に係る包接水和物の塊状体は、上記第1の形態乃至第5の形態のうちの何れかのものにおいて、水溶液中の包接水和物生成物質の濃度は、包接水和物と水との共晶点を与える濃度より高く、調和融点を与える濃度よりも低いことを特徴とするものである。
(7) 本発明の第7の形態に係る包接水和物の塊状体の形成方法は、包接水和物生成物質を含む水溶液を冷熱源との熱交換により冷却して、凝固点が0℃より高い包接水和物を生成させ、熱交換面の表面上に又はその表面から水溶液の沖合に向けて蓄積させることにより包接水和物の塊状体を形成する方法であって、前記冷熱源の温度を包接水和物と氷との共晶点以下に調整する工程を有することを特徴とするものである。
(8) 本発明の第8の形態に係る包接水和物の塊状体の形成方法は、包接水和物生成物質を含む水溶液を冷熱源との熱交換により冷却して、凝固点が0℃より高い包接水和物を生成させ、熱交換面の表面上に又はその表面から前記水溶液の沖合に向けて蓄積させることにより包接水和物の塊状体を形成する方法であって、前記冷熱源の温度を包接水和物と氷との共晶点以下に、かつ前記水溶液を冷却する熱流を0.6kW/m以上に調整する工程を有することを特徴とするものである。ここで、熱流は熱交換面単位表面積あたりの冷却熱量をいう。
(9) 本発明の第9の形態に係る蓄熱方法は、包接水和物生成物質を含む水溶液を冷熱源との熱交換により、包接水和物と氷との共晶点以下に冷却することにより、凝固点が0℃より高い包接水和物の塊状体を形成して蓄熱することを特徴とするものである。
(10) 本発明の第10の形態に係る蓄熱装置は、包接水和物生成物質を含む水溶液と熱交換器を備えた蓄熱槽と、前記熱交換器に冷熱源としての冷媒を供給する冷凍機と、前記蓄熱槽内の包接水和物生成物質を含む水溶液を冷熱源との熱交換により、包接水和物と氷との共晶点以下に冷却して、凝固点が0℃より高い包接水和物の塊状体を形成するように冷熱源の温度を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
本発明に係る包接水和物の塊状体では、その熱伝導性が相対的に高くなる。このことは形成過程にある塊状体においては、冷熱源の冷却作用が熱交換面からより遠くの沖合にまで及び、より遠くの沖合にある水溶液からも包接水和物の生成と蓄積が進み易くなることを意味している。要するに、包接水和物自体の熱伝導性は低くても、形成過程にある包接水和物の塊状体全体としては熱伝導性が改善され、より多くの潜熱を蓄熱することができるようになる。この結果、最終的に出来上がる包接水和物の塊状体には、より多くの潜熱が蓄熱されることになる。
本発明に係る包接水和物の塊状体の熱伝導性が相対的に高くなる機構や原理は、後述のとおり、当該塊状体の内部に氷と包接水和物との共晶や氷そのものが生成し、存在することが原因であると推察でき、説明できる。
従って、本発明によれば、新規な素材や部材を投入することなく、複雑さを排した相対的に低コストな手法により、塊状体として形成される包接水和物の熱伝導性を改善することができ、潜熱蓄熱量を増やすことができる。そして、このことは、冷媒を冷却するなど冷熱源に繋がる冷凍機において、部分負荷率の改善による冷凍サイクルの効率(COP)の向上を可能にし、現実の利用に耐え得る包接水和物蓄熱技術の確立に資する。
上記の効果は、本発明の第1及び2の形態に止まらず、本発明に共通する効果であるが、これに加えて、本発明の各形態に対応する効果(固有の効果を含む)は次に掲げるとおりである。
即ち、本発明の第3の形態に係る包接水和物の塊状体においては、沖合に向けて遠ざかるほど前記包接水和物が占める体積比率又は重量比率が減少する。このことは、当該塊状体の内部に氷と包接水和物との共晶や氷そのものが生成し、存在することが熱伝導性の高まる原因であるとすると、沖合に向けて遠ざかるほど当該塊状体中の氷の体積比率又は重量比率が増加すること、延いてはその熱伝導性は高くなること又は低下しないことを意味している。
熱交換面から包接水和物の塊状体の沖合にむけて冷熱が伝導される場合、沖合に向けて遠ざかるほど冷却されにくくなる傾向があるが、当該塊状体の熱伝導性が沖合に向けて遠ざかるほど氷の体積比率又は重量比率が増加し、その熱伝導性が高くなる又は低下しないため、冷熱が伝導されやすくなり、沖合にある当該塊状体の部分、延いては沖合にある水溶液にも熱交換面からの冷熱が円滑に伝導される。
従って、本発明の第3の形態によれば、沖合にある水溶液からも包接水和物の生成と蓄積が進み易くなり、多くの潜熱を蓄熱できる包接水和物の塊状体を実現することができる。
本発明の第4の形態においては、冷熱源が伝熱管に通流される冷媒であり、熱交換面が伝熱管の外表面であり、包接水和物の塊状体は伝熱管の周りに蓄積されて略同軸鞘状又は略円筒形状の外形をなす。このような伝熱管を採用している既存装置の典型例は、氷蓄熱装置である。既述のとおり、氷蓄熱技術を包接水和物蓄熱技術にそのまま転用できるものではないが、本発明の第4の形態に係る包接水和物の塊状体であれば、既存の氷蓄熱装置を一部転用してこれを製造することができるという合理性が生じ、装置、設備等の設計や水和物蓄熱への更新作業においても、それの作業が容易になり、既存の部材や機器類の有効利用が可能になり、コストの低減が可能になる。
本発明の第5の形態によれば、包接水和物の凝固点が0℃より高く20℃より低く、包接水和物の塊状体中に氷が存在する割合が26重量%以下であることから、冷凍機の冷凍サイクルの効率(COP)の低下のない包接水和物の塊状体を実現することができる。
本発明の第6の形態に係る包接水和物の塊状体においては、水溶液中の包接水和物生成物質の濃度が、包接水和物と水との共晶点を与える濃度より高く、調和融点を与える濃度よりも低い。それ故、包接水和物の塊状体が形成される水溶液が、冷熱源との熱交換により冷却される過程で包接水和物固体と水溶液からなる固液混合相を不可避的に経るような包接水和物生成物質の濃度範囲にある。よって、この形態によれば、形成過程にある当該塊状体において、冷熱源の冷却作用が熱交換面からより遠くの沖合にまで及び、より遠くの沖合にある水溶液からも包接水和物の生成と蓄積が進み易くなることの効用や結果(本発明の効果)がより顕著に、また好適に発現する。
なお、この形態に係る塊状体は、調和濃度よりも低い濃度の水溶液から形成される。このことは、比較的少量の包接水和物生成物質で当該塊状体を形成できることを意味している。それ故、当該塊状体は安価となり、現実の使用に耐え得る包接水和物蓄熱技術により好適なものとなる。
本発明の第7の形態においては、前記冷熱源の温度を包接水和物と氷との共晶点以下に調整する工程を有するようにしたので、第1乃至第6の形態に係る包接水和物の塊状体を形成することができる。
本発明の第8の形態においては、前記冷熱源の温度を包接水和物と氷との共晶点以下に、かつ水溶液を冷却する熱流を0.6kW/m以上に調整する工程を有するようにしたので、第1乃至第6の形態に係る包接水和物の塊状体を形成するのに好適な形成方法を実現することができる。
このことは、包接水和物の塊状体の内部に氷と包接水和物との共晶や氷そのものが生成し、存在することが熱伝導性の高まる原因であるとすると、本発明の第7又は第8の形態により、当該塊状体内に少なくとも包接水和物との共晶の形態で氷を導入することが容易になり、全体として熱伝導性が改善され、より多くの潜熱を蓄熱できる塊状体を形成することができると換言できる。
本発明の第9の形態においては、第1乃至第6の形態に係る包接水和物の塊状体を形成することにより、当該塊状体により蓄熱することができる。その結果、形成過程にある包接水和物の塊状体全体として熱伝導性が改善され、より多くの潜熱を蓄熱することができる。
従って、本発明によれば、新規な素材や部材を投入することなく、複雑さを排した相対的に低コストな手法により、塊状体として形成される包接水和物の熱伝導性を改善することができ、もって潜熱蓄熱量を増やすことができる。
本発明の第10の形態においては1乃至第6の形態に係る包接水和物の塊状体を形成して蓄熱することができる蓄熱装置を実現することができ、上述したように、潜熱蓄熱量を増やすことができる。それ故、冷媒を冷却するなど冷熱源に繋がる冷凍機において、部分負荷率の改善による冷凍サイクルの効率(COP)の向上を実現できる。
本発明に係る包接水和物の塊状体の熱伝導性が相対的に高くなる現象は後述のとおり実測値により裏付けられるものであるが、その原因は、当該塊状体の内部に相対的に熱伝導性が高い氷が生成することにあると合理的に推察され、説明することができる。詳しくは以下のとおりである。
なお、以下の説明は、本発明の基本原理の説明及実施例を一部兼ねている。
〈包接水和物と氷生成の原理説明〉
(A) 包接水和物生成曲線について
蓄熱式空気調和システムにおいては、一般に冷凍サイクルの冷媒蒸発温度が高いほど冷凍サイクルの効率(COP)は高く省エネルギーとなる。このような蓄熱式空気調和システムでは、凝固点が0℃より高く20℃より低い温度の蓄熱剤が好適であるとされている。
例えば、特許文献2に開示されているテトラn−ブチルアンモニウム塩、トリn−ブチルnペンチルアンモニウム塩、テトラiso−アミルアンモニウム塩、テトラn−ブチルフォスフォニウム塩、トリiso−アミルサルフォニウム塩などの水溶液を冷却して生成される包接水和物はその代表例である。
図5は包接水和物生成物質としてテトラn−ブチルアンモニウム塩のひとつである臭化テトラn−ブチルアンモニウム(以下「TBAB」という場合がある)の水溶液濃度と、包接水和物生成温度の関係を示すグラフであり、縦軸が包接水和物生成温度(℃)を示し、横軸が水溶液濃度(重量%)を示している。
図5において、調和融点とは水和物生成物質の水溶液を冷却して水和物を生成する際、水溶液(液相)から水和物(固相)に変相する前後の組成が変わらない場合(例えばもとの水溶液中の水和物生成物質濃度と同じ濃度の水和物を生じる)の温度をいう。また、本明細書では調和融点を与える濃度を調和濃度という。換言すれば、縦軸を包接水和物生成温度、横軸を水溶液濃度とした状態図(以下「水和物生成曲線」という場合がある)では極大点を調和融点といい、TBABの場合、調和融点を与える濃度(調和濃度)は約40重量%である(図5点H)。
なお、TBAB以外の包接水和物生成物質(特に第4級アンモニウム塩)の包接水和物生成曲線は、TBABのそれと定性的に同じものになるので、TBABを包接水和物生成物質の代表として以下の説明を行う。その他のデータもTBABに関するものであるが、本発明の原理に係る説明は、TBAB以外の包接水和物生成物質(特に第4級アンモニウム塩)において定性的に変わるものではない。
(B) 包接水和物生成物質を含む水溶液を攪拌混合しながら緩やかに冷却した場合における水溶液濃度と包接水和物の生成温度の関係について
TBABの濃度が調和濃度である水溶液を冷却すると、調和融点で水和物が生成しはじめ、水溶液が全て水和物になるまでこの融点温度で温度は一定になる。融解時も同様にこの一定の融点温度で融解する。また、水和物の凝固融解時の潜熱量は調和濃度で最大となる。
他方、TBABの濃度が調和濃度よりも低い水溶液を冷却すると、図6に例示すような包接水和物の生成特性を示す。
図6はTBABを含む濃度30重量%の水溶液を初期状態とし、これを攪拌混合しながら緩やかに冷却した場合における水溶液濃度と包接水和物生成温度の変化を示すグラフである。
初期状態の水溶液を温度15℃の点Sから冷却するとき、水溶液の温度が点Aすなわち濃度30重量%における包接水和物生成温度になるかあるいは点Aよりも低い温度となる過冷却現象を経てTBABの包接水和物が生成し始める。
TBABの濃度が調和融点を与える濃度未満である場合、包接水和物の生成によりTBABが包接水和物内に取り込まれ、水溶液中のTBABの濃度は減少する。このため、包接水和物の生成に応じて水溶液と包接水和物の混合物における包接水和物生成温度は、包接水和物生成曲線を辿るように矢印の方向に低下してゆく。そして、TBABの濃度が約5重量%となると、氷との共晶点(点B:約−0.5℃)に達する。この段階で、包接水和物と氷の共晶が生成し始める。包接水和物生成物質を含む水溶液を冷却した場合、その温度が氷との共晶点に達するまでは氷は生成せず、包接水和物のみが生成し、共晶点到達以降は氷も生成する。
以上は包接水和物生成物質を含む水溶液を冷却したときの包接水和物生成に関する一般的な特性である。
(C) 包接水和物生成物質を含む水溶液の冷却の仕方と包接水和物の生成との関係について
以下、包接水和物生成物質を含む水溶液(以下「水溶液」という場合がある)の冷却の際、包接水和物を熱交換面から剥離させずに、熱交換面の表面上に又はその表面から水溶液の沖合に向けて蓄積させ、包接水和物の塊状体を形成する実験の結果に基づいて説明する。この場合も図6の包接水和物生成曲線に沿った包接水和物の生成挙動を示すことは言うまでもない。
(ア) 熱交換面温度を共晶点Bより高い温度にして水溶液を図6の点Sから緩やかに冷却する場合
熱交換面単位表面積あたりの冷却熱量(熱流)を例えば約0.6kW/mより小さくすることにより図6の点Sから緩やかに冷却すると、包接水和物生成曲線上の点Aに達して以降、熱交換を通じて包接水和物が形成され、これが蓄積して塊状に成長し、平均的には点Tに至るが、氷は生成しない。
この場合、熱交換面が包接水和物で覆われているので、新たな包接水和物の生成は、既に存在する包接水和物を介した熱伝導による冷却により起こることになる。これでは、包接水和物の熱伝導性が低いため包接水和物が生成するほど熱交換面から伝わるはずの冷熱が水溶液の沖合まで及ばなくなり、塊状の包接水和物の成長は頭打ちとなり、十分な量の包接水和物が蓄積せず、本来高いはずの蓄熱密度を蓄熱に活かせない(因みに、熱交換面温度を共晶点Bより高い温度に冷却することで熱交換面に包接水和物を生成させ、物理的(機械的)又は熱的手段によりこれを除去するというのが特許文献3及び4の蓄冷手法である。また、点Tに達して以降、更に点B以下まで温度を下げると氷ができる。そこで、包接水和物生成曲線に沿って生成されるごとに包接水和物を熱交換面から除去し、別途設けた蓄熱槽に蓄積されていた包接水和物のスラリと、氷を混合し、混合スラリとして熱負荷側での利用に供するというのが特許文献7の蓄冷手法である)。
(イ) 熱交換面温度を共晶点B以下の温度にして水溶液を点Sから急速に冷却する場合
上記(ア)と異なり、熱流を例えば約0.6kW/m以上とすることにより図6の点Sから急速に冷却すると、水溶液は包接水和物生成曲線上の点Aに達して以降、熱交換を通じて包接水和物が形成され、さらに、これが蓄積して塊状に成長する。その際、熱交換面では共晶点B以下の温度であるため、包接水和物と氷の共晶が生成する。
一方、テトラヒドロフランをゲスト分子とする包接水和物の核生成においては、−6℃程度まで、即ち当該包接水和物と氷との共晶点以下までテトラヒドロフランの水溶液を冷却すると、包接水和物の核生成より先に氷の核生成が起こるという前駆現象が確認されている(原囿、塚本:「ハイドレート結晶化の前駆現象としての氷の核形成」、Journal of the Japanese Association of Crystal Growth, Vol.30, No.3,
p. 133)
これらを考慮すると、包接水和物の塊状体の内部に氷が存在することで熱伝導性が向上することについて、次のようなモデルを設定することができる。
即ち、生成される包接水和物の結晶は木の枝状の所謂デンドライト構造となり、熱交換面から放射状に結晶が形成される。水溶液を共晶点以下の温度に急速に冷却する冷却条件では、包接水和物結晶が放射線状に入り組んだ構造の内部で水溶液から包接水和物と氷が共晶する。その結果、氷が分散した包接水和物が塊状に成長することになる。また、このとき、共晶という分子レベルでの氷の成長に加えて、包接水和物の結晶に囲まれた水溶液中に氷の粒が生成し、さらに熱交換面の一部にも局所的に氷の結晶が生成する可能性もある。しかして、塊状に成長する包接水和物の内部に氷が分散して存在することにより、その氷の分だけ熱伝導性が向上し、熱伝導性が向上する。それにより、冷熱源の冷却作用が熱交換面からより遠くの沖合にまで及び、より遠くの沖合にある水溶液からも包接水和物の生成と蓄積も進み易くなる。
上記のモデルが妥当であれば、包接水和物自体の熱伝導性は低くても、形成過程にある包接水和物の塊状体全体としては熱伝導性が改善され、より多くの潜熱を蓄熱することができるようになり、最終的に出来上がる包接水和物の塊状体には、より多くの潜熱が蓄熱されることになる。
(D) モデルの妥当性について
例えば臭化テトラn−ブチルアンモニウムの初期水溶液濃度が30重量%の水溶液を、熱交換面を氷との共晶点以下に冷却し氷が包接水和物の塊状体中に10重量%平均的に分布した場合(本発明)と、熱交換面を氷との共晶点より高い温度で冷却し包接水和物の塊状体中に氷が存在しない場合(従来)との蓄熱量の経時変化を、包接水和物の塊状体中の氷そのものの蓄熱量を除いて包接水和物だけの蓄熱量を算出して、比較した結果を図7のグラフに示す。図7のグラフでは縦軸が本発明の最大蓄熱量を1とした蓄熱量比を示し、横軸が本発明の最大蓄熱量に達するまでの所要時間を1とした蓄熱所要時間比を示している。図7のグラフに示されるように、包接水和物の塊状体中に氷が存在する場合の蓄熱量は、従来の包接水和物のみで蓄熱する場合に比べて約20%増加することが分かった。包接水和物塊状体の内部に存在する氷により包接水和物の塊状体の熱伝導性が向上したことを示している。
次に、実際に包接水和物の塊状体を形成させ、そのときの熱通過率を測定した。計測装置は図8に示すとおりであり、蓄熱槽61内に伝熱管63と蓄熱材65を収容し、伝熱管63に冷媒循環装置67により冷媒を循環供給し、蓄熱材65の温度(温度計T1〜T5の計測値の平均値)と冷媒の温度(温度計T6,T7の計測値)、冷媒循環流量を計測するものである。蓄熱材65は臭化テトラn−ブチルアンモニウム(TBAB)の初期水溶液濃度が30重量%の水溶液を用い、冷却温度と熱流(伝熱管の単位表面積あたりの冷却熱量)の条件を変えて、交換熱量と熱通過率を算出した。冷却温度は伝熱管入口と出口の冷媒温度の平均値であり、伝熱管表面温度の平均値と同温度である。交換熱量、熱通過率は下記の式によって求める。
交換熱量[kW]=(伝熱管出口冷媒温度[K]−伝熱管入口冷媒温度[K])×冷媒流量[kg/s]×冷媒比熱[kJ/kgK]
熱通過率[kW/mK]=交換熱量[kW]/{伝熱管表面積[m]・(蓄熱材温度[K]−伝熱管入口から出口までの冷媒平均温度
[K])}
冷却温度をTBABと氷の共晶点である−0.5℃より低い温度に設定した場合(実施例1〜6)と、冷却温度を−0.5℃より高い温度に設定した場合(比較例1,2)の熱通過率を求め、比較例1の熱通過率を基準として熱通過率の差を求め表1に示す。
Figure 0004853299
表1に示す結果から、次に掲げる技術的事項が確認できた。
(1) 包接水和物と氷の共晶点以下に水溶液を冷却すると、共晶点より高い温度に冷却した場合に比べて、熱通過率が増加する。つまりその水溶液から生成する包接水和物が蓄積してできる塊状体の熱伝導率が増加する。
(2) 包接水和物の塊状体の熱伝導率又は蓄熱量を高めるためには、包接水和物と氷の共晶点以下に水溶液を冷却する場合、熱流を0.6kW/m以上とすることが好ましい。
(3) 包接水和物の塊状体の熱伝導率又は蓄熱量を高めるためには、包接水和物と氷の共晶点以下であって、より低い温度で冷却することが好ましい。
なお、本計測実験のように蓄熱槽の内部で蓄熱材の強制的な対流がない所謂スタティックタイプの蓄熱方式では、蓄熱効率に対して蓄熱材の熱伝導率の影響が支配的である。そのため上記の(1)(2)(3)の技術的事項を実施することにより、蓄熱材の包接水和物の塊状体の熱伝導率を高め、蓄熱効率を高めることができる。
さらに、表1中の実施例1及び2において、水溶液を冷却して包接水和物の塊状体を製造した後、これを直ちに引き揚げて当該塊状体を切開して、熱交換面近傍の部分を採取し、断面を拡大鏡で観察したところ、柱状の包接水和物の結晶とは異なる結晶を観察することができた。このような結晶は、比較例1や2の場合には観察できないものであり、水溶液の組成及び冷却温度からして氷以外に考えられない。
他方、実施例3乃至6においては、上記のような方法では熱交換面近傍の部分に柱状の包接水和物の結晶とは異なる結晶を観察することはできなかったが、表1に示すとおり熱透過率の増加は確認できた。氷とおぼしき結晶を確認することはできなかったが、水溶液の冷却温度からして、氷が存在しないとは考え難い。逆に、氷が存在しているとすれば、熱透過率の増加を説明できる。
以上の結果から、包接水和物の塊状体の内部に氷が存在することで熱伝導性が向上するという上記のモデルは妥当であり、このモデルによれば、少なくとも本発明の基礎となる原理を説明できるといえる。
(E) 関連事項
(ア) 実施例1乃至6のいずれの場合においても、水溶液を冷却して包接水和物の塊状体を製造した後、これを直ちに引き揚げて当該塊状体を切開し、熱交換面近傍から沖合側に離隔した部分(外縁部又はそれに近い部分)を採取し、断面を拡大鏡で観察したところ、上記のような氷と思しき結晶を観察することができた。これは、上記のモデルに基づけば、次のように説明することができる。
即ち、冷熱源との熱交換により水溶液が冷却されると、その過程で凝固点が氷よりも高い包接水和物が氷よりも先に生成され、熱交換面の表面上又はその表面から当該水溶液の沖合に向けて蓄積される結果、沖合に向かうほど水溶液中の包接水和物生成物質の濃度は低下する。他方、包接水和物の塊状体の形成過程では当該塊状体の内部に氷が包み込まれて存在するようになるので、その氷の生成に供される水の分だけ水溶液中の包接水和物生成物質の濃度は増加する。しかし、包接水和物の生成と蓄積によって沖合に向かうほど水溶液中の包接水和物生成物質の濃度が低下する方が、氷の生成による水溶液中の包接水和物生成物質の濃度の増加よりはるかに上回っているため、沖合に向かうほど水溶液中の包接水和物生成物質の濃度は低下する。そのため、包接水和物の塊状体において、冷却の効果が及ぶ限りにおいて、沖合に向けて遠ざかるほど包接水和物が占める体積比率又は重量比率が減少し、氷が占める体積比率又は重量比率は増加する。その結果として、これらの計測例では、塊状体の外縁部に近い部分に氷(と思しき結晶)が観察された、と説明することができる。
尤も、この説明が妥当か否かに拘らず、実施例1乃至6において、熱伝導性がより高まり、より多くの潜熱を蓄熱できる包接水和物の塊状を実現することができることは、表1に示すとおりである。
(イ) 計測例3乃至6においては、上記のような方法では熱交換面近傍の部分に透明物質を観察することはできなかったが、熱交換面近傍から沖合側に離隔した部分(外縁部又はそれに近い部分)からはこれを観察することができたということは、沖合側に離隔するほど氷の体積比率又は重量比率が高くなっていることを意味している。
〈蓄熱式空気調和システム〉
図1は本発明の一実施の形態に係る蓄熱式空気調和システムの構成を説明する図である。本実施の形態の蓄熱式空気調和システムは、熱源装置Aと空調負荷装置Bと蓄熱装置Cのそれぞれを構成する各構成機器を冷媒配管で連結し、冷媒配管の途中に冷媒の流路を切替える開閉弁51、53、55で連結して冷凍サイクル回路を構成する。
熱源装置Aは、冷媒を加圧する圧縮機1、外気と冷凍サイクルの冷媒との熱交換を行う室外側熱交換器2を備えて構成される。
また、空調負荷装置Bは、室内に設置されて室内空気と冷凍サイクルの冷媒との熱交換を行う室内側熱交換器4a、4b、室内側熱交換器4a、4bに流入する冷媒を減圧する第2の減圧装置5a、5b備えて構成される。
さらに、蓄熱装置Cは、蓄熱剤を貯留する蓄熱槽7、蓄熱槽7に貯留される水和物生成物質を含む水溶液からなる蓄熱剤9、蓄熱剤9と冷凍サイクルの冷媒とを熱交換させる蓄熱用熱交換器11、蓄熱用熱交換器11に送られる冷媒の圧力を減圧する第1の減圧装置12、蓄熱剤の温度を計測する温度計13、蓄熱剤9の蓄熱量を計測する蓄熱量計15、蓄熱量計15の検出値を入力して熱流測定値を演算し、後述の調節計21に出力する熱流検出演算装置17、温度計13の計測値を入力して熱流の制御目標値を演算する熱流目標値演算装置19、熱流目標値演算装置19で演算された熱流目標値と、熱流検出演算装置17で演算された熱流測定値を入力し、これら熱流目標値と熱流測定値の偏差を算出してこの偏差が0となるよう制御信号を第1の減圧装置12へ出力する調整計21を備えている。
蓄熱剤の温度を計測する温度計13は、蓄熱槽7内の複数箇所の蓄熱剤温度を計測してその平均値または何らかの判定処理をして代表値を求めるもの、蓄熱槽7内の特定箇所(例えば底部または下部)の蓄熱剤温度を計測するもののうちから適宜選択される。
蓄熱装置Cの運転は図示しないコンピュータにより管理され、熱流検出演算装置17及び熱流目標演算装置19の少なくとも一部の機能はコンピュータプログラムの実行により実現される。
蓄熱剤9は水溶液中の水和物生成物質の濃度が調和濃度未満になるように調整されている。
蓄熱量計15は温度計やレベル計、溶液濃度計などの計器を単独もしくは組み合わせで蓄熱量を計測することができるようにした計測器である。
熱流検出演算装置17は、予め記憶された蓄熱用熱交換器11の伝熱面積と蓄熱量計15からの入力値に基づいて直近1分の平均的な熱流を算出して、第1の減圧装置12をフィードバック制御するための熱流測定値とする。なお、熱流検出演算装置は蓄熱量計15で計測した1分間ごとの蓄熱量を積算する機能も有し、予定された蓄熱量に達した時点で蓄熱運転の停止信号を出力することも可能である。
熱流目標値演算装置19には、初期の水溶液濃度の情報と図6に示した水溶液濃度と包接水和物生成温度の関係が記憶されている。そして、熱流目標値演算装置19は、温度計13の計測値を入力し、この入力値と予め記憶されている図6に示した水溶液濃度と包接水和物生成温度の関係に基づいて蓄熱剤の温度が包接水和物生成開始温度であるか否かを判定し、この判定に基づいて第1の減圧装置12をフィードバック制御するための熱流目標値を調節計21に出力する。
以上のように構成された本実施の形態の蓄熱式空気調和システムの運転方法を、蓄熱を行う蓄熱運転方法と、蓄熱を利用する蓄熱利用冷房運転方法と、に分けて説明する。
〈蓄熱運転方法〉
蓄熱運転時には、開閉弁51、53は閉の状態、開閉弁55は開の状態になっている。
圧縮機1で圧縮された冷媒は室外側熱交換器2で空気との熱交換により冷却されて凝縮される。冷却された冷媒は第1の減圧装置12で減圧されて蓄熱用熱交換器11で蒸発し、このとき蓄熱剤9を冷却して冷熱を蓄熱する。蒸発した冷媒は圧縮機1に戻りこのサイクルを繰り返す。以下、この蓄熱運転において、水和物生成物質を含む水溶液から氷が分布した包接水和物を塊状に成長させる具体的な運転制御方法の一例を説明する。
蓄熱槽7に設けた温度計13で蓄熱槽7中にある蓄熱剤9の温度を計測し、計測温度値を熱流目標値演算装置19に入力する。熱流目標値演算装置19は、蓄熱剤9の温度が包接水和物生成開始温度であるか否かを判定し、蓄熱剤9の温度が包接水和物生成開始温度より低い場合には、包接水和物が生成されて平衡状態になり、蓄熱剤9の温度が包接水和物生成開始温度以上になるまで待機する。
他方、熱流目標値演算装置19は、蓄熱剤の温度が包接水和物生成温度以上であると判定すれば、第1の減圧装置12をフィードバック制御するための熱流目標値を例えば1.0kW/mとして調節計21に入力する。
次に、蓄熱量計15で1分間ごとの蓄熱量を計測して、熱流検出演算装置17に入力する。熱流検出演算装置17は、入力された蓄熱量測定値と予め記憶されている蓄熱用熱交換器11の伝熱面積とに基づいて直近1分の平均的な熱流を算出して、第1の減圧装置12をフィードバック制御するための熱流測定値として調節計21に入力する。
調節計21では、熱流目標値演算装置19から入力された熱流目標値と、熱流検出演算装置17から入力された熱流測定値との偏差を算出し、この偏差が0となるよう、すなわち熱流測定値が熱流目標値である1.0kW/mとなるように制御信号を第1の減圧装置12へ出力する。第1の減圧装置12では調節計21から入力される制御信号を受けて、減圧弁の開度が制御されることにより冷媒の膨張比が制御され、蓄熱用熱交換器11へ導入される冷媒の蒸発温度と熱流が調整される。
そして、このように制御することで、冷媒の蒸発温度すなわち蓄熱用熱交換器11の熱交換面の温度が包接水和物と氷の共晶点以下に制御され、その結果蓄熱剤9が急速に包接水和物と氷の共晶点以下に冷却され、前述の原理説明で説明したように、氷が分散した包接水和物が蓄熱用熱交換器11の表面上に、更にはその表面から沖合に向けて塊状に成長する。
また、熱流測定値が熱流目標値である1.0kW/mとなるように制御信号を圧縮機1にも出力し、圧縮機の能力制御と第1の減圧装置の制御とを連携することにより、蓄熱用熱交換器11へ導入される冷媒の蒸発温度を共晶温度以下にしつつ熱流を制御することが容易に行える。
なお、蓄熱空調システムの安定性を配慮した通常の冷凍システムで行われている減圧装置の過熱度制御や圧縮機の容量制御を行うことは言うまでもない。
図2は図1に示した蓄熱槽7を模式的に示す図であり、蓄熱槽7に設置された蓄熱用熱交換器(伝熱管)11の周囲に包接水和物の塊状体が形成されている状態を示している。また、図3は図2における矢視A−A断面を拡大して示す図である。なお、図2では蓄熱用熱交換器(伝熱管)の配置例として、上下方向に蛇行したものを示したが、これに限定されるものではなく、例えば、水平方向に蛇行するように配置してもよい。
図2、図3に示すように、包接水和物の調和濃度未満の水溶液を冷却して生成した塊状の包接水和物は、伝熱管の周りに略同軸鞘状、略円筒形状に形成されている。
この包接水和物の塊状体は、包接水和物と氷の共晶点以下に水溶液を冷却しなかった場合に比べて、熱伝導性が高く、蓄熱量も多くなる。(上記のモデルに基づけば)これは、当該塊状体の内部に氷が生成し、存在する結果、熱伝導性の小さい包接水和物の固相中に熱伝導性の大きい氷が分散配置するためと考えられる(氷の分だけ熱伝導性が向上し、蓄熱量も増えるのであり、氷はあたかも熱伝導助剤やフィンとして機能し、潜熱蓄熱剤としても機能するものと推察される)。それ故、蓄熱剤中に新規に熱伝導性を高める助材を追加することや、熱伝導性を高める部材を設けることなく伝熱特性が向上し、低コストで単位体積あたりの蓄熱量の増大を図ることができる。
また、包接水和物の塊状体中では伝熱管11から遠ざかるほど包接水和物の塊状体中に占める包接水和物の体積比率が低下する。(上記のモデルに基づけば)これは、冷熱源との熱交換により冷却される過程で凝固点が氷よりも高い包接水和物が氷よりも先に生成され、熱交換面の表面上又はその表面から当該水溶液の沖合に向けて蓄積される結果、沖合に向かうほど水溶液中の包接水和物生成物質の濃度は低下することによる。
沖合に向けて遠ざかるほど包接水和物の塊状体中の包接水和物が占める体積比率又は重量比率が減少し、これに伴い、当該塊状体中の氷の体積比率又は重量比率が増加することにより、包接水和物の塊状体の熱伝導性は沖合に向けて遠ざかるほど高くなる。熱交換面から包接水和物の塊状体の沖合に向けて冷熱が伝導される時に、沖合に向けて遠ざかるほど冷却されにくくなる傾向があるが、包接水和物の塊状体の熱伝導性が沖合に向けて遠ざかるほど高くなるため、冷熱が伝導され易くなり、包接水和物の塊状体の沖合でも熱交換面からの冷熱が円滑に伝導される。
なお、包接水和物の塊状体中の氷の内包割合が高ければ高いほど伝熱特性は向上するが、一方でそれに伴い冷凍サイクルの効率(COP)は低くなる。したがって、氷の内包割合は冷凍サイクルCOPを犠牲にしない範囲に限定される。
図4は従来の氷蓄熱式空気調和システムの蓄熱時COPを1として正規化したCOP(蓄熱時COP比)と、氷の内包割合との関係を実験に基づいて算出し、グラフで示したものであり、横軸が氷の内包割合(重量%)、左側の縦軸が蓄熱時COP比を示している。また、図4においては、氷の内包割合が0%の時の熱通過率を1として正規化した伝熱性能向上比を右側の縦軸に示している。
なお、熱通過率は冷媒から供給される交換熱量と、伝熱管表面積と、蓄熱剤温度と冷媒温度との差(具体的には、蓄熱槽内蓄熱剤温度−伝熱管入口から出口までの冷媒平均温度)に基づいて、下式によって求めた。
熱通過率=交換熱量÷伝熱管表面積÷(蓄熱槽内蓄熱剤温度−伝熱管入口から出口までの冷媒平均温度)
図4のグラフから分かるように、熱通過率は氷内包割合の増加に伴って増加して伝熱性能向上比が増加するが、蓄熱時COP比は氷内包割合の増加に伴って減少する。そして、蓄熱時COP比が1となり、氷蓄熱式空気調和システムと同等となる氷の内包割合は26%である。このことから、従来の氷蓄熱式空気調和システムの蓄熱時COP以上を確保して伝熱性を向上させるための氷の内包割合は26重量%以下が好適な範囲となる。
なお、包接水和物塊状体中の氷の内包割合を26重量%以下にするには、包接水和物生成物質の水溶液濃度を調整すればよい。包接水和物生成物質の濃度を高くすれば、氷の内包割合は低くなり、包接水和物生成物質の濃度を低くすれば、氷の内包割合は高くなるという関係があるので、包接水和物生成物質の濃度を所定の濃度に調整することで包接水和物の塊状体中の氷の内包割合を所定値にすることができる。
また、熱交換面の温度すなわち冷媒の蒸発温度と、熱流を調整して包接水和物の塊状体中の氷の内包割合を調整することもできる。
〈蓄熱利用冷房運転方法〉
蓄熱利用冷房運転においては、開閉弁51、55は閉状態、開閉弁53は開状態、第1の減圧装置12は全開状態とする。圧縮機1で圧縮された冷媒は室外側熱交換器2で空気との熱交換により冷却され凝縮される。第1の減圧装置12は全開の状態であり、冷媒は減圧されずに蓄熱用熱交換器11に流通する。蓄熱用熱交換器11に流通した冷媒は蓄熱剤9によりさらに冷却され、過冷却状態となる。過冷却された冷媒は第2の減圧装置5a、5bで減圧されて室内用熱交換器4a、4bで蒸発し、このとき空気を冷却して冷房空調する。蒸発した冷媒は圧縮機1に戻りこのサイクルを繰り返す。
この蓄熱利用冷房運転は、蓄熱式空気調和システムが蓄熱槽内に蓄熱残量が無いと判断したときに終了する。以降の冷房空調は、開閉弁51を開、第1の減圧装置12を閉の状態にして冷媒が蓄熱槽7をバイパスするようにして行われる。
図1に示す蓄熱式空気調和システムにおいて伝熱管面の温度を包接水和物と氷との共晶点以下にして蓄熱した場合の伝熱特性を、共晶点よりも高い温度で蓄熱した場合の伝熱特性と比較することによって共晶点以下で蓄熱することの優位性を検証した。なお、蓄熱剤として臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液を用いた。
伝熱特性は、交換熱量から求めた蓄熱量に対する熱通過率変化比で評価した。蓄熱量に対する熱通過率変化比を図9のグラフに示す。図9においては、横軸が蓄熱量(kJ)、縦軸が熱通過率変化比を示している。
熱通過率変化比とは、伝熱管表面に包接水和物が生成し始めた時の熱通過率を基準として、時間経過に伴う熱通過率の変化をいう。なお、交換熱量、蓄熱量、熱通過率、熱通過率変化比、は下記の式によって求まる。
・交換熱量=(伝熱管出口比エンタルピー−伝熱管入口比エンタルピー)×冷媒流量
冷媒の比エンタルピーは伝熱管に流入および流出する冷媒の温度または圧力を計測して求める。
・蓄熱量=交換熱量×蓄熱時間
・熱通過率=交換熱量÷伝熱管表面積÷(蓄熱槽内蓄熱剤温度−伝熱管入口から出口までの冷媒平均温度)
・熱通過率変化比=計測時毎の熱通過率÷水和物が生成し始めた時の熱通過率
図9に示されるように、共晶点以下で蓄熱した場合および共晶点よりも高い温度で蓄熱した場合のいずれの場合も冷却が進み水和物が伝熱管表面から沖合に向けて蓄積され蓄熱量が増加するにつれて、熱通過率が減少し熱通過率変化比が次第に低下する。
しかし、図9のグラフには、共晶点以下で蓄熱した場合の方が、共晶点よりも高い温度で蓄熱した場合に比べて熱通過率変化比の低下が少なく、共晶点以上で蓄熱した場合に比べて熱通過率が10〜20%高いことが明確に示されている。このことから、共晶点以下で蓄熱した場合には伝熱性能が優れていることが実証された。
なお、上記の蓄熱運転方法において示した熱流目標演算装置19における判定の仕方及びフィードバック制御の内容は一例にすぎず、これらの内容はコンピュータプログラムを修正することで任意に定め、また変更することができる。
例えば、図6の水和物生成曲線に示した臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液の冷却プロファイルを、下記のように設定することができる。包接水和物生成物質の水溶液濃度が25重量%以上で調和融点濃度未満の場合には、水溶液の温度が、その濃度に対応する水和物生成曲線上の温度以上であるときは、0.8kW/m以上の熱流で水溶液を冷却するように冷媒の蒸発温度を制御し、水溶液の温度が水和物生成曲線上の温度未満であるときは、水和物生成曲線上の温度になった後、0.6kW/m以上の熱流で水溶液を冷却するように冷媒の蒸発温度を制御する。
水溶液濃度が15重量%以上で25重量%未満の場合には、水溶液の温度が、その濃度に対応する水和物生成曲線上の温度以上であるときは、1.0kW/m以上の熱流で水溶液を冷却するように冷媒の蒸発温度を制御し、水溶液の温度が水和物生成曲線上の温度未満であるときは、水和物生成曲線上の温度になった後、0.7kW/m以上の熱流で水溶液を冷却するように冷媒の蒸発温度を制御する。
水溶液濃度が15重量%未満で共晶点濃度より大きい場合には、水溶液の温度がその濃度に対応する水和物生成曲線上の温度以上か以下かに依存せず、概ね0.9kW/m以上の熱流で水溶液を冷却するように冷媒の蒸発温度を制御する。
水溶液濃度が25重量%以上の場合について、熱流を小さく設定しているのは、水溶液濃度が大きいときは水溶液粘度が大きく熱伝達しにくいことを考慮して、エネルギーの無駄を少なくするためである。
上記は臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液の場合を例示したが、同様な水和物生成曲線を有する他の包接水和物生成物質についても、包接水和物生成物質の水溶液濃度に対応して、また水溶液の温度が水溶液濃度に対応する水和物生成曲線上の温度以上であるか、温度未満であるかに対応して、同じように熱流を0.6kW/m以上で段階的に変えて水溶液を冷却するように冷媒の蒸発温度を制御することができる。
また、熱交換面の温度すなわち冷媒の蒸発温度プロファイル又は水溶液の冷却プロファイルを、例えば、水溶液の濃度、蓄熱槽7の形状や蓄熱槽7内の伝熱管の配置、熱交換面に最初に形成される包接水和物の量や厚さ、包接水和物が覆う熱交換面の面積や分布状態、形成過程にある包接水和物の塊状体の内部における氷の分布や量等々を考慮して定めることができる。
例えば、(1)水溶液の濃度に対応する包接水和物生成温度よりやや低い温度(例えば、包接水和物生成温度が10℃の場合であれば、5℃)に一定時間熱交換面温度を維持した後、熱交換面温度を高速で下降させる、(2)水溶液の温度が、その濃度に対応する包接水和物生成温度より低い中間目標温度までは熱交換面温度を低速で降下させ、その後、熱交換面温度を高速で降下させる、(3)氷と包接水和物の共晶点の温度を挟んで水溶液の温度が変動するように、熱交換面温度を昇降させる、等々の温度プロファイルを用いることができる。
また、熱交換面の温度すなわち冷媒の蒸発温度プロファイル又は水溶液の冷却プロファイルを、以下のようにすることもできる。すなわち、水溶液の冷却開始後、過冷却が解除されて包接水和物が生成し始めるまでの間は、熱交換面の温度が共晶点以上となるように冷却し、包接水和物が生成し始めてからは熱交換面の温度が共晶点以下になるように冷却する。ここで過冷却とは包接水和物生成物質の水溶液の温度が凝固点より低くなっても包接水和物が生成せず水溶液の状態を保っている状態をいう。
上記のような水溶液の冷却プロファイルによれば、包接水和物が生成し始めるまでは、熱交換面に包接水和物もしくは包接水和物と氷の共晶が生成することなく熱交換面から水溶液は冷却され、蓄熱槽内全体の水溶液が過冷却状態を保って冷却される。この場合には、熱交換面に水溶液にくらべて伝熱性の低い包接水和物もしくは包接水和物と氷の共晶がないので、熱交換面から水溶液への熱通過率が大きく効率よく蓄熱槽内全体の水溶液を冷却できる。また、冷媒の蒸発温度を共晶点以上として冷媒を供給するので、冷凍サイクルのCOPを高くすることができ、省エネルギーとなる。
また、包接水和物が生成し始めてからは熱交換面の温度が共晶点以下となるように冷却することにより、熱交換面に包接水和物と氷の共晶を生成して伝熱性の低下を抑制しながら包接水和物の塊状体を形成して蓄熱できる。
なお、上記のような水溶液の冷却プロファイルを実現する具体的な方法としては、蓄熱槽内の水溶液温度を計測することにより、過冷却が解除され包接水和物が生成し始めて水溶液温度が平衡になった時点を判断し、熱交換面の温度を共晶点以上に冷却する運転から共晶点以下に冷却する運転に変更するようにすればよい。熱交換面の温度すなわち冷媒の蒸発温度をこのように変更するには減圧弁の開度を調整し冷媒の圧力、温度を下げる操作、圧縮機の回転数を低くする操作を行うようにすればよい。
また、蓄熱運転の開始と同時に熱交換面の温度が共晶点以下となるように冷却を行うようにしてもよい。
この場合には、第1の減圧装置12の下流に冷媒の温度を計測する冷媒温度計を設け、測定した冷媒の温度を調節計21に入力するようにして、蓄熱運転の開始と同時に蓄熱剤の温度を計測する温度計13の計測値とは無関係に、蓄熱用熱交換器6で蒸発する冷媒の温度を包接水和物と氷との共晶点以下とするように調節計21で第1の減圧装置12を制御する
本発明の一実施の形態に係る蓄熱式空気調和システムの構成を説明する図である。 本発明の一実施の形態に係る蓄熱槽を模式的に示す図である。 図2の矢視A-A断面の拡大図である。 従来の氷蓄熱式空気調和システムの蓄熱時COPを1として正規化した氷の内包割合とCOPとの関係を実験に基づいて算出したグラフである。 臭化テトラn−ブチルアンモニウム(TBAB)の水溶液濃度と、包接水和物生成温度の関係を示すグラフである。 TBABを含む濃度30重量%の水溶液を初期状態とし、これを攪拌混合しながら緩やかに冷却し場合における水溶液濃度と包接水和物生成温度の変化を示すグラフである。 本発明の効果を説明する説明図であり、初期水溶液濃度が30重量%、氷が包接水和物中に10重量%平均的に分布したと仮定したとき、蓄熱量の経時変化を解析的に評価した結果を示すグラフである。 本発明の効果を確認するために使用した装置の説明図である。 本発明の効果を説明する説明図であり、本発明の実施例と比較例について、蓄熱量に対する熱通過率変化比を示すグラフである。
符号の説明
1 圧縮機、2 室外側熱交換器、4a、4b 室内側熱交換器、5a、5b 第2の減圧装置、7 蓄熱槽、9 蓄熱剤、11 蓄熱用熱交換器、12 第1減圧装置、13 温度計、15 蓄熱量計、17 熱流検出演算装置、19 熱流目標値演算装置、21 調節計、51、53、55 開閉弁。

Claims (7)

  1. 包接水和物生成物質を含む水溶液を冷却することによって得られる包接水和物の塊状体であって、前記包接水和物の凝固点は0℃より高く、前記水溶液を包接水和物と氷との共晶点以下に冷却することによって得られることを特徴とする包接水和物の塊状体。
  2. 包接水和物生成物質を含む水溶液を冷熱源との熱交換により冷却することにより生成された包接水和物が、前記冷熱源との熱交換が起こる熱交換面の表面上に又はその表面から前記水溶液の沖合に向けて蓄積されてなる包接水和物の塊状体であって、前記包接水和物の凝固点は0℃より高く、前記水溶液を包接水和物と氷との共晶点以下に冷却することによって得られることを特徴とする包接水和物の塊状体。
  3. 前記冷熱源が伝熱管に通流される冷媒であり、前記熱交換面が前記伝熱管の外表面であり、前記包接水和物の塊状体は前記伝熱管の周りに蓄積されて略同軸鞘状又は略円筒形状の外形をなすことを特徴とする請求項2記載の包接水和物の塊状体。
  4. 包接水和物生成物質を含む水溶液を冷熱源との熱交換により冷却して、凝固点が0℃より高い包接水和物を生成させ、熱交換面の表面上に又はその表面から前記水溶液の沖合に向けて蓄積させることにより当該包接水和物の塊状体を形成する方法であって、
    前記冷熱源の温度を包接水和物と氷との共晶点以下に調整する工程を有することを特徴とする包接水和物の塊状体の形成方法。
  5. 包接水和物生成物質を含む水溶液を冷熱源との熱交換により冷却して、凝固点が0℃より高い包接水和物を生成させ、熱交換面の表面上に又はその表面から前記水溶液の沖合に向けて蓄積させることにより当該包接水和物の塊状体を形成する方法であって、
    前記冷熱源の温度を包接水和物と氷との共晶点以下に、かつ前記水溶液を冷却する熱流を0.6kW/m以上に調整する工程を有することを特徴とする包接水和物の塊状体の形成方法。
  6. 包接水和物生成物質を含む水溶液を冷熱源との熱交換により、包接水和物と氷との共晶点以下に冷却することにより、凝固点が0℃より高い包接水和物の塊状体を形成して蓄熱することを特徴とする蓄熱方法。
  7. 包接水和物生成物質を含む水溶液と熱交換器を備えた蓄熱槽と、前記熱交換器に冷熱源としての冷媒を供給する冷凍機と、前記蓄熱槽内の包接水和物生成物質を含む水溶液を冷熱源との熱交換により、包接水和物と氷との共晶点以下に冷却して、凝固点が0℃より高い包接水和物の塊状体を形成するように冷熱源の温度を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする蓄熱装置。
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