JP4853238B2 - 消毒用速乾性透明ローション - Google Patents
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Description
そこで、湿潤剤等を配合し、上述の様な欠点を抑制した速乾性殺菌消毒剤が製品化されている。しかし、医療従事者や食品業界においては手の殺菌消毒が頻繁に繰り返し行われるため、依然として消毒剤が皮膚障害を起こす原因になってしまうことがあり、その効果が十分であるとは言えない。
しかし、この皮膚消毒剤の場合にも、依然として高濃度の低級アルコールや乳化剤に由来した皮膚障害が生じる危険性を有しており、さらに、柔軟剤や保湿剤、皮膚コンディショニング剤の使用によって、速乾性が損なわれてしまうという問題がある。
また特許文献2には、20〜50質量%の低級アルコールにカルボキシビニルポリマーと天然多糖類、脂肪酸エステル、及び殺菌剤を配合した速乾性消毒剤が提案されている。この臭毒剤は、低級アルコール濃度を低くすることで、肌の弱い人の使用を可能にし、しかも速乾性や殺菌性は従来と変わらないとしている。しかし、低級アルコールの配合量を低くしており、そのため殺菌力の維持のために大量の殺菌剤を配合する必要があり、その殺菌剤のために依然として皮膚障害の危険性が残っていた。
しかし、MPC共重合体を、低級アルコールを主成分とする溶液に配合したものは知られておらず、更にアルコールに由来する肌荒れを効果的に防止することも知られていない。
本発明の消毒用速乾性透明ローション(以下、本発明のローションと略すことがある)は、特定のMPC共重合体、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、塩基性物質、高濃度の低級アルコール及び水を必須成分として含有し、且つ界面活性剤を含有しない場合でも外観上無色透明を示し、また速乾性、殺菌力及び肌荒れ防止性に優れる。
本発明に用いるMPC共重合体は、MPCとブチルメタクリレートとを構成単位とする共重合体である。
前記条件は、例えば、重合系を、窒素、二酸化炭素、ヘリウム等の不活性ガスの雰囲気下、重合温度0〜100℃、重合時間10分〜48時間の重合条件でラジカル重合させる方法により実施できる。重合に際しては、通常のラジカル重合開始剤を用いて行うことができる。
また、ラジカル重合開始剤に通常用いられるレドックス系の促進剤を併用しても良い。ラジカル重合開始剤の使用量は、単量体組成物100質量部に対して0.01〜5.0質量部が好ましい。
MPC共重合体の分子量は、通常、重量平均分子量5000〜5000000の範囲である。使用目的に応じて重量平均分子量は種々調整することができるが、本発明のローションの保存安定性、扱い易さ、肌荒れ防止性等を勘案した場合、好ましくは重量平均分子量100000〜1000000である。重量平均分子量が5000より小さい場合、肌荒れ防止機能が不足してしまい、また、5000000より大きい場合、調製したローションの透明性を損ねてしまうと同時に、速乾性も悪くなる恐れがある。
本発明に用いるメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体としては、例えば、ISP社から市販されている商品名GANTREZ ANシリーズの、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸のモル比がほぼ1:1の重量平均分子量216000のメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体が挙げられる。
本発明においては、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体と塩基性物質の配合割合を適度に調整することで、本発明のローションが安定し、白濁を抑える効果があるため、界面活性剤を使用しなくとも透明な溶液とすることができる。
本発明に用いる塩基性物質は、本発明のローションに用いる後述の低級アルコールに溶解可能なものが好ましく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエチルアミンが挙げられる。これらの塩基性物質は、単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても差し支えない。
本発明のローションにおいて、塩基性物質の配合割合は、本発明のローション全量当たり、0.001〜3.0質量%である。0.001質量%未満では、得られるローションが白濁し、又は沈殿が生じて、安定性を損ねる恐れがある。また3.0質量%を超えると、ローションのpHがアルカリ性側に大きくシフトし、使用により肌にたるみが生じ、また、傷みやかぶれを惹き起こす恐れがある。
本発明に用いる低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールが挙げられ、使用に際しては1種又は2種以上を混合して用いても良い。好ましくは、殺菌力や使用感の向上等を考慮し、エタノール及び/又はイソプロパノールが好ましい。
本発明のローションにおいて、低級アルコールの配合割合は、本発明のローション全量当り、50質量%以上、通常50〜98質量%、好ましくは60〜90質量%、更に好ましくは75〜85質量%の範囲である。50質量%未満の場合、十分な殺菌性と速乾性が得られず、また98質量%を超えて配合しても効果が得られない。
本発明に用いる水は、本発明の目的を損なわない範囲で特に限定されないが、精製水が望ましい。またその配合割合は、本発明の殺菌力の向上及び速乾性の保持を考慮し、ローション全量が100質量%となるように適宜決定することができる。通常、本発明のローション全量当り、0.01〜45質量%、好ましくは0.01〜30質量%、更に好ましくは10〜20質量%である。水の配合割合が0.01質量%未満では、殺菌力が低下する恐れがあり、一方、45質量%を超えると、殺菌力が低下すると同時に、速乾性も失われる恐れがある。
本発明のローションは、本発明の目的を逸脱しない範囲で、公知の皮膚外用剤に使用される湿潤剤を含んでも良い。該湿潤剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ペンチレングリコール、へキシレングリコール、イソプレングリコール、エチルヘキサンジオール、イソペンチルジオール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール、エリスリトール等のポリオール系化合物類が挙げられ、使用に際しては、単独若しくは2種以上の混合物として用いることができる。これら湿潤剤の中でも、肌へのなじみの良さや保湿性の高さから、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンがより好ましい。
湿潤剤を含有させる場合の割合は、本発明の所望の効果を損なうことのない範囲で、本発明のローション全量当り、通常0.1〜5.0質量%が好ましい。
本発明のローションは、本発明の目的を逸脱しない範囲で、公知の皮膚用消毒剤に使用される殺菌剤を含んでも良い。該殺菌剤としては、例えば、本発明のローションの殺菌効果を増強し、その効果をより持続させるために、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の逆性石鹸系化合物;クレゾール等のフェノール系化合物;ヨウ素イオン、ヨウドホルム、ヨードホア等のヨウ素化合物が挙げられる。これらは使用に際して1種又は2種以上混合して用いることができる。好ましくは、殺菌効果と抗菌効果の持続性の点から塩化ベンザルコニウム又は塩化ベンゼトニウムが挙げられる。
殺菌剤を含有させる場合の割合は、本発明のローション全量当り、通常0.01〜5.0質量%が好ましい。
本発明のローションは、前記成分の他に、本発明の目的を逸脱しない範囲で、公知の皮膚外用剤に使用される添加剤を含有させても良い。前記添加剤としては、例えば、色材、有機酸、酸化防止剤、安定剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、香料、色素が挙げられ、本発明の性能を損なわない範囲で適宜配合することができる。
本発明のローションは、低級アルコールを主成分とするので速乾性に優れる。この速乾性は、例えば、次の方法で測定することができる。
即ち、湿度40%、室温20℃のクリーンルーム内で15分間安静にした後、本発明のローション2.0mLを手に取り、両手を擦り合わせてローションを手全体に広げ、自然乾燥させる。その際、ローションを塗布してから乾燥するまでの時間を測定する方法により測ることができる。該速乾性は、通常、ローションを塗布してから乾燥するまでの時間が、30秒以内と感じる場合が特に好ましい。
即ち、ポリスチレン製ディスポセル(標準型)に試験液約4mLを取り、600nmにおける透過率(%T)を紫外可視分光光度計(日本分光(株)製、Ubestシリーズ V−550型紫外可視分光光度計)を用いて測定することができる。
本発明においては、このような測定方法により、透過率が90%以上の場合を透明であると規定する。
即ち、まず、実験前の手の菌数測定のために、手をパームスタンプ(日研生物医学研究所製、一般細菌(SCD)培地)上にスタンプし、次いで、本発明のローション3mLを手指に採り、20秒間擦り込む。ローション擦り込み直後に再度手指をパームスタンプ培地にスタンプし、実験終了後、スタンプした培地を37℃の孵卵器内で24時間培養し、培地上のコロニー数をカウントし、菌の実験前コロニー数に対する本発明のローション擦り込み直後のコロニー数の百分率を計算することにより測定することができる。
殺菌性は、菌の実験前コロニー数に対するローション擦り込み直後のコロニー数の減少率が90%以上であることが好ましい。
即ち、本発明のローション3mLを手に採り、30秒間擦り込む操作を約2時間間隔で1日5回、1週間連続して実施した後、ビデオマイクロスコープを用いて皮膚表面の状態を観察する方法により評価することができる。このような観察において、本発明のローションは、高濃度の低級アルコールを含んでいるにも関わらず、塗布し続けた場合にも、皮膚状態が健康に近く、肌荒れの症状が確認し難い。
本発明のローションは、前記各成分を公知の方法で適宜混合して製造でき、例えば、次のように製造することもできる。
まず、水に、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体を加え、70〜90℃で完全に溶解するまで撹拌した後、室温まで冷却し、冷却が完了したら塩基性物質を加えてさらに撹拌する。均一に混合したことを確認した後、MPC共重合体を添加し、再び混合溶解して溶液Aを得る。一方、低級アルコールに本発明の所望の効果を損なうことのない範囲で添加物を加え、均一になるまで撹拌して溶液Bを得る。前記溶液Bに、前記溶液Aを添加し、系全体が均一になるまで充分撹拌することで、本発明のローションを簡便に得ることができる。
本発明のローションの使用方法は特に限定されないが、使用時の簡便さや安全性の観点等から、ローションをスプレーポンプ容器に充填した噴霧タイプ又はボトル容器に充填した手に取るタイプの形態として使用することが望ましい。該使用に際しては、噴霧タイプの場合、手や肌に適量噴霧して消毒することができる。ボトル容器に充填した手に取るタイプの場合は、手に適量取り、手や肌にこすりつけ、擦り込むように使用することで消毒することができる。
実施例1
精製水11.96gに、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体(商品名Gantrez AN−119、アイエスピー・ジャパン(株)製、分子量Mw=216000)0.2gを加え、80℃で同共重合体が完全に溶解するまで撹拌した。次いで、室温まで冷却し、冷却が完了したら水酸化ナトリウム水溶液(1mol/L)0.6gを加えてさらに撹拌した。充分に混合したことを確認した後、MPC共重合体の5質量%水溶液0.4gを添加し、再び混合溶解した。得られたメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体水溶液を日局エタノール80.1gに添加し、系全体が均一になるまで充分撹拌を行い、ローション100gを調製した。得られたローションの600nmにおける透過率(%T)を紫外可視分光光度計により測定した。透過率は、90%以上が合格とされる。結果を表1に示す。
配合成分の組成を表1に示すものに変更した以外は、実施例1に記載の方法に準じて、実施例2〜6のローションを調製した。得られたローションの透過率を実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
精製水11.96gに、実施例1と同様なメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体0.2gを加え、80℃で同共重合体が完全に溶解するまで撹拌した。次いで、室温まで冷却し、冷却が完了したら水酸化ナトリウム水溶液(1mol/L)0.6gを加えてさらに撹拌した。充分に混合したことを確認した後、MPC重合体の5質量%水溶液0.4gを添加し、再び混合溶解した。
一方、日局エタノール80.1gに、イソプロパノール5.0g、塩化ベンザルコニウム0.24g、濃グリセリン1.0g及びミリスチン酸イソプロピル0.5gを加え、充分に撹拌した。
得られたエタノール溶液に、上記で調製したメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体水溶液を添加し、更に充分に撹拌してローション100gを調製した。得られたローションの透過率を実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
配合成分の組成を表1に示すように変更した以外は、実施例7に記載の方法に準じて、実施例8〜10のローションを調製した。得られたローションの透過率を実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
配合成分の組成を表2に示すように変更した以外は、実施例1に記載の方法に準じて、比較例1〜5のローションを調製した。得られたローションの透過率を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
配合成分の組成を表2に示すように変更した以外は、実施例7に記載の方法に準じて、比較例6〜9のローションを調製した。得られたローションの透過率を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
精製水13.50gに、界面活性剤としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(商品名ユニオックスHC−60、日本油脂株式会社製、HLB:15.0)1.0gを加え、80℃で同界面活性剤が完全に溶解するまで撹拌した。その後室温まで冷却し、冷却が完了したところで実施例1と同様なMPC重合体の5質量%水溶液0.4gを添加し、再び混合溶解した。
一方、日局エタノール80.1gに、イソプロパノール5.0gを加え、充分に撹拌を行い、得られたエタノール溶液に、上記で調製したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油水溶液を添加し、更に充分に撹拌してローション100gを調製した。得られたローションの透過率を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
配合成分の組成を表2に示すように変更した以外は、比較例10に記載の方法に準じて、比較例11〜13のローションを調製した。得られたローションの透過率を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
男女10名をモニターとして、実施例1〜10及び比較例8、9及び10で調製したローションについて、以下に示す、速乾性、殺菌性及びその持続性、並びに肌荒れに対する影響(肌荒れ防止)を評価した。結果を表3に示す。
(速乾性の評価)
湿度40%、室温20℃の恒湿・恒温環境下で15分間安静にした後、ローション2.0mLを手に取り、ローションを手全体に広げ、自然乾燥させた。その際、塗布直後から乾燥するまでの時間について、平均時間をとり、それをもとに、平均乾燥時間が30秒未満の場合を適切として○、30秒以上を遅いとして×と評価した。
まず実験前の手の菌数測定のために、手をパームスタンプ培地(日研生物医学研究所製、一般細菌(SCD)培地)上にスタンプした。次いで、前記ローション3mLを手に採り、ローションを手全体に均一に広げた。ローション塗布直後及び2時間経過後(その間、モニターには手洗いを控え、読書をして過ごしてもらう)に再度手指をパームスタンプ培地にスタンプした。実験終了後、スタンプした培地を37℃の孵卵器内で24時間培養し、培地上のコロニー数をカウントした。
殺菌性は、菌の実験前コロニー数に対するローション塗布直後のコロニー数の百分率をとりこれを平均した。また殺菌性の持続性は、菌の実験前コロニー数に対するローション塗布2時間経過後のコロニー数の百分率をとりこれを平均した。効果判定は、菌の減少率により、減少率90%以上を著効、50〜89%を有効、1〜49%をやや有効、0%以下を無効とした。
前記ローション3mLを手に採り、30秒間擦り込む操作を約2時間間隔で1日5回、1週間連続して実施した後、ビデオマイクロスコープを用いて手の皮膚表面の状態を観察した。
肌荒れ状態の評価は、健常状態から変化が無いものを変化なし(4点)、肌の平滑化又は紅斑が僅かに確認されたものをやや悪化(3点)、肌の平滑化又は紅斑がはっきり確認できるものを悪化(2点)、肌の平滑化が確認され、更に紅斑の拡大、浮腫が確認されるものを明らかに悪化(1点)として、その点数をスコアー化した。その評価結果を平均して、平均3.0点以上を合格、平均3.0点未満を不合格と判定した。尚、明らかに悪化の結果が一人でもあった場合は、平均点に係わらず不合格と判定した。
従って、本発明の消毒用速乾性透明ローションは、医療現場や食品業界等で、消毒剤を繰り返し使用する機会の多い現場において有効に用いることができるものと評価できる。
Claims (2)
- 2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと、ブチルメタクリレートとを重合した、前記2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに由来する構成単位と前記ブチルメタクリレートに由来する構成単位とのモル比が3:7〜9:1である重量平均分子量5000〜5000000のMPC共重合体0.001〜5質量%と、重量平均分子量10000〜3000000のメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体0.01〜2質量%と、塩基性物質0.001〜3質量%と、低級アルコール50質量%以上と、水とを含むことを特徴とする消毒用速乾性透明ローション。
- 塩基性物質が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエチルアミンよりなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項1に記載の消毒用速乾性透明ローション。
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