JP4838478B2 - 自己免疫疾患の診断 - Google Patents

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Description

【0001】
発明の分野
本発明は、自己免疫疾患の診断に有用な方法および組成物を提供する。特に本発明は、グレーブス病の診断および管理に用いる方法および組成物を提供する。
【0002】
発明の背景
グレーブス病(「びまん性中毒性甲状腺腫」とも呼ばれる)は、甲状腺に存在する受容体を認識して結合して腺の成長および甲状腺ホルモンの過剰産生を生じる自己抗体の作用に起因する甲状腺機能亢進の主な原因である。グレーブス病は、小児および成人における甲状腺機能亢進の原因として最も多いと報告されている(BoterおよびBrown、J. Pediatr. 132:612〜618 [1998]を参照)。
【0003】
若年成人における同疾患の臨床像は通常極めて容易に認識される。患者は一般に男性より女性が多く、発汗、動悸、神経質、焦燥感、不眠症、振戦、頻回の排便、食欲の変化を伴わない減量が報告されている。理学的検査では通常、軽度の眼球突出、凝視、眼瞼遅滞、平滑でびまん性の圧痛のない甲状腺腫、大きな心音および時に収縮期雑音または胸骨左縁における雑音(scratch)を伴う頻拍(特に運動後)、震顫、爪甲剥離症、および手掌紅斑がよく認められ、また甲状腺上に血管雑音が聞こえ、また頚部に唸音がほぼ常に聞こえる。以上の症状を示す患者ではグレーブス病と容易に認識され、また臨床検査で確認することができる(Federman、「Thyroid」、DaleおよびFederman編、Scientific American Medicine、Scientific American、ニューヨーク州ニューヨーク、[1997] p.3:I-6)。
【0004】
上述の徴候および症状は厄介な場合があるが、同疾患の他の徴候はより危険な場合がある。極めて厄介な徴候の一つが、眼筋麻痺、濾胞性結膜炎、結膜浮腫、および失明を伴う重度の眼球突出である。別の徴候には、皮膚症、前脛骨粘液水腫、ばち状化などがあり、極めて重篤な症例では末端肥厚症がある。以上の徴候や症状は、グレーブス病は自己免疫が病因であることを意味している。
【0005】
グレーブス病には典型的な臨床像があるにもかかわらず、診断を確認し、ならびに管理と治療のための予後指標を提供する方法が必要とされている。また、甲状腺機能亢進の原因が不明の場合は、診断検査法を用いて病因を決定しなければならない。放射性ヨードの取り込み(RAIU)を測定する方法などのインビボにおける方法をグレーブス病患者の診断およびモニタリングに用いることが可能であり(例えば、Baldetら、Acta Endocrinol. (Copenh) 116:7〜12 [1987]を参照)、この目的で開発された二つの基本的なインビトロアッセイ系のグループがある。一つは甲状腺刺激の複数の指標(例えばcAMPの産生)の測定を元にした方法であり、もう一つは甲状腺刺激自己抗体(TSAb)による、放射標識された甲状腺刺激ホルモン(TSH)とその受容体との結合抑制能力を評価する方法である。このような方法には、TSAbを対象としたバイオアッセイ法およびインビトロアッセイ法がある。しかし1984年には、グレーブス病の診断で甲状腺刺激免疫グロブリン(TSIまたはTSAb)を測定する広く用いられる方法はなかった(例えば、Rapoportら、J. Clin. Endocrinol. Metabol.、58:332〜338 [1984]を参照)。また、グレーブス病患者の血清には、甲状腺ホルモン受容体を認識する免疫グロブリンG (IgG)分子の不均一な集団が含まれると認識されていた(例えば、Yokoyamaら、J. Clin. Endocrinol. Metabol.、64:215〜218 1987]を参照)。さらに、TSH-結合阻害アッセイ法が甲状腺刺激活性を必ずしも反映しているわけではないことが明らかになったことで、以上のアッセイ法の臨床応用に関する合意に至る過程に混乱が生じた(例えば、McKenzieおよびZakarija、J. Clin. Endocrinol. Metabol.、69:1093〜1096 [1989]を参照)。感度および特異度に限界があることについても問題があった。むしろ実施可能なアッセイ系に関する諸問題は、甲状腺ペルオキシダーゼ抗体の測定値が甲状腺の自己免疫性の基礎となる十分高感度のマーカーではないかという論議を生じた(BoteroおよびBrownの前掲論文を参照)。
【0006】
ラポポート(Rapoport)らによって報告されたように、標準的な手順で、また多数の試料を対象に容易に実施可能なアッセイ法には、感度および/または特異度に関して重大な制限があり、このような検査法の臨床現場での使用は現実的ではない状況となっている。以上の問題は主に、放射標識したTSHとヒト甲状腺形質膜との結合の、TSIによる阻害能力を測定するアッセイ法(アッセイ法はTSI活性そのものを測定しない)にあてはまる。また、TSH受容体に対するすべての抗体が刺激作用をもつわけではない。ラポポートらは、ヒト甲状腺の形質膜におけるTSIによるアデニル酸シクラーゼ活性の刺激を利用したアッセイ法の感度が極めて悪いことも報告している。一部のアッセイ法は、新鮮なヒト甲状腺組織の使用を元にしたアッセイ法を含む一般的な臨床使用に実用的ではなく、試料処理能力が限られる極めて難渋な手技を要し、また極めて労力を要し、および/または経済的とは言えない(例えば、Rapoportらの前掲論文を参照)。イヌおよびブタの培養甲状腺細胞を用いてTSHに対するcAMP反応を測定するアッセイ法の開発は後に、良好な結果をもたらすと考えられるヒト甲状腺細胞の使用に形を変えた。上記方法の一部(例えば、Rapoportらによって考察されている方法)では新鮮な甲状腺細胞を必要とすることに加えて、多くの方法も、検体をアッセイする前に単調かつ多大な時間を要する試料調製を必要とする。例えば一部のプロトコールでは、労力および時間のかかる、被験血清に含まれる免疫グロブリンの硫酸アンモニウムまたはポリエチレングリコールを用いた透析法および/または沈殿法を実施する必要がある(例えば、Rapoportらの前掲論文;およびKasagiら、J. Clin. Endocrinol. Metabol.、62:855〜862 [1986]を参照)。
【0007】
以上のアッセイ系で遭遇する諸問題をふまえ、容易に実施できて信頼性および感度が高く、またグレーブス病の自己抗体に特異的なアッセイ法を開発するために他の方法が検討されてきた。例えば、cAMP産生を測定するバイオアッセイ法の使用は、連続培養で成長させた非ヒト起源細胞の使用、または初代培養として、もしくはアリコートに分けて凍結し、必要時に使用するヒト細胞の使用に基づく。ヒト甲状腺細胞を使用する際には、外科的処置で得られた甲状腺組織の応答性が変動するという問題がある。したがって、ラットの甲状腺細胞株(FRTL-5)などの非ヒト起源細胞が好まれていた。この細胞は、よく研究されて解明が進んでいる非形質転換型の分化した細胞株である(例えば、Bideyら、J. Endocrinol.、105:7〜15 [1985];およびMichelangeliら、Clin. Endocrinol.、40:645〜652 [1994]を参照)。しかし、この細胞には短所がいくつかあるため、グレーブス病のアッセイ法には最適とは言えない。例えば、この細胞は成長が遅く、またTSHを必要とするなど成長に必要な条件の調整が面倒である。このため妥当なレベルの感度を得るためには、アッセイ法を実施する少なくとも5日前に細胞からTSHを除いておく必要がある。
【0008】
その後、JP09細胞(機能性のヒトTSH受容体を導入したチャイニーズハムスター卵巣細胞)などの開発、およびヒトTSH受容体を安定に発現する他の細胞株の開発が続き、グレーブス病患者の自己抗体の検出に使用可能なアッセイ系は大きく改善されてきた。以上の細胞は、天然の甲状腺細胞にあるTSH受容体に匹敵するTSH受容体をもち、またGタンパク質とのカップリング、アデニル酸シクラーゼの活性化、ならびにTSHおよび甲状腺刺激抗体(TSAb)に応じたcAMP産生がかかわる機能性のシグナル伝達系を有する(例えば、Michelangeliらの前掲論文を参照)。このような細胞は、FRTL-5細胞と比較して同等の診断関連情報をもたらすが、より感度が高く、成長が早く、成長条件の調整がそれほど面倒ではなく、また未抽出の血清に反応するので、FRTL-5細胞より優れていることが報告されている(Michelangeliらの前掲論文;またKakinumaら、J. Clin. Endocrinol. Metabol.、82:2129〜2134 [1997]も参照)。また、このような方法は、より迅速に完了し、かつ再現性に優れており、またあるいはヒト受容体に対するヒト自己抗体の検出に対する特異性が高い。さらに、このようなアッセイ法は、FRTL-5細胞株を用いる方法より簡便で手間がそれほどかからずに実施することができる(例えば、Vittiら、J. Clin. Endocrinol. Metabol.、76:499〜503 [1993]を参照)。しかし、このアッセイ法では、cAMPの検出および定量に放射能を(例えばラジオイムノアッセイで)使用するので、結果的に扱いにくさが残る。酵素結合免疫アッセイ系(シグナルの検出に放射能ではなく酵素反応を用いる、放射性物質を使用しない方法)を用いることができるが、安全で使いやすく、感度および特異度が高く、かつ対費用効果に優れたグレーブス病アッセイ系が必要であることには変わりない。
【0009】
発明の要約
本発明は、自己免疫疾患の診断および管理に有用な方法および組成物を提供する。特に本発明は、グレーブス病の診断および管理に用いる方法および組成物を提供する。
【0010】
一つの態様において本発明は、以下の段階を含む、被験試料に含まれる甲状腺刺激自己抗体の有無を判定する方法を提供する:(i)甲状腺刺激自己抗体を含むと考えられる被験試料、(ii)試験手段に含まれる培養細胞、および(iii)ポリエチレングリコールを提供する段階;被験試料を培養細胞およびポリエチレングリコールに、甲状腺刺激抗体が検出可能な条件で曝露させる段階;ならびに検出可能な甲状腺刺激抗体の有無を観察する段階。一つの好ましい態様において、培養細胞はFRTL-5細胞、CHO-R細胞、およびCHO-Rluc細胞からなる群より選択される。別の態様においては、観察する段階はルミノメーターを用いて実施される。さらなる態様においては、cAMP濃度の決定も行われる。さらに別の態様において該方法は「成長培地(Growth Medium)」をさらに含むが、他の態様において該方法は「刺激培地(Stimulation Medium)」をさらに含む。いくつかの特に好ましい態様においては、培養細胞を「成長培地」に曝露させてから被験試料に曝露させる。さらに別の態様においては、培養細胞を被験試料に曝露させた後に「刺激培地」に曝露させる。他の特に好ましい態様において「刺激培地」はポリエチレングリコールを含む。
【0011】
本発明は、以下の段階を含む、被験試料に含まれる甲状腺刺激自己抗体の有無を判定する方法も提供する:(i)甲状腺刺激自己抗体を含むと考えられる被験試料、(ii)試験手段に含まれるFRTL-5細胞、CHO-R細胞、およびCHO-Rluc細胞からなる群より選択される培養細胞、ならびに(iii)ポリエチレングリコールを提供する段階;被験試料を培養細胞およびポリエチレングリコールに、甲状腺刺激自己抗体が検出可能な条件で曝露させる段階;ならびに検出可能な甲状腺刺激抗体の有無を観察する段階で、ルミノメーターを用いて実施される段階。さらに別の態様においては、cAMP濃度の決定も行われる。いくつかの態様において該方法は「成長培地」をさらに含むが、他の態様においては「刺激培地」をさらに含む。いくつかの特に好ましい態様においては、培養細胞を「成長培地」に曝露させてから被験試料に曝露させる。さらに別の態様においては、培養細胞を被験試料に曝露させた後に「刺激培地」に曝露させる。さらに他の好ましい態様において「刺激培地」はポリエチレングリコールを含む。
【0012】
本発明は、以下の段階を含む、被験試料に含まれる甲状腺刺激自己抗体の有無を判定する方法も提供する:(i)甲状腺刺激自己抗体を含むと考えられる被験試料、(ii)試験手段に含まれるFRTL-5細胞、CHO-R細胞、およびCHO-Rluc細胞からなる群より選択される培養細胞、(iii)「成長培地」、ならびに(iv)ポリエチレングリコールを含む「刺激培地」を提供する段階;培養細胞を「成長培地」に曝露させて成長した細胞を作製する段階;被験試料を成長した細胞および「刺激培地」に、甲状腺刺激抗体が検出可能な条件で曝露させる段階;ならびに検出可能な甲状腺刺激抗体の有無を観察する段階で、ルミノメーターを用いて実施される段階。別の態様においては、cAMP濃度の決定も行われる。特に好ましい態様においては、細胞はCHO-Rluc細胞である。
【0013】
発明の説明
本発明は、自己免疫疾患の診断および管理に有用な方法および組成物を提供する。特に本発明は、グレーブス病の診断および管理に用いる方法および組成物を提供する。また本発明は、個人の免疫状態および応答のモニタリングに用いる方法および組成物を提供する。特に本発明は、ワクチン受容者の免疫応答のモニタリングに使用することができる。本発明は、ウイルスと細胞表面受容体との接触を加速および促進し、試料に含まれるウイルスを検出および定量するアッセイ法における感度を上げる方法および組成物も提供する。
【0014】
グレーブス病の診断
甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体に対する甲状腺刺激自己抗体(TSAb)は、環状アデノシン一リン酸(cAMP)の産生を担う酵素である甲状腺アデニリルシクラーゼを刺激することができる。この自己抗体は、グレーブス病患者を検出および同定するための診断マーカーとして用いられている。なぜなら、この自己抗体が、同疾患患者にみられる甲状腺機能亢進にかかわると考えられるからである。
【0015】
しかし、詳しく後述するように、TSAbの検出および測定に一般に用いられている方法は複雑で実施に時間がかかる。ある方法では、「FRTL-5」と呼ばれるラット甲状腺細胞株が用いられている。この細胞株は、インターサイヤー研究財団(Interthyr Research Foundation、メリーランド州バルチモア)から入手可能であり、ヒトTSAbと交差反応する受容体を発現している。TSAbの存在下では(すなわち、このような抗体を含むグレーブス病患者の血清に細胞を曝露させると)、この細胞は刺激されてcAMPを産生するようになる。このcAMPを次に、溶解細胞の一部、または細胞を浸した培地を対象にラジオイムノアッセイ法で測定する。FRTL-5細胞は、参照として本明細書に組み入れられる米国特許第4,609,622号に記載されているように、グレーブス病に特徴的な自己抗体について最初に成功したバイオアッセイ法の基礎となった。この方法はまもなく他のバイオアッセイ法に対する基本的な方法となった。
【0016】
ビッティ(Vitti)ら(Vittiら、J. Clin. Endocrinol. Metabol.、76:499 [1993])によって実施されたFRTL-5細胞を用いた典型的なアッセイ法では、細胞培養用の培地に用いられる通常の成長用成分に加えて6種のホルモン(6H)を含む特別な完全培地を満たした96ウェルプレートにFRTL-5細胞を分注する(30,000細胞/ウェル)。5% CO2を含む加湿した設定温度37℃のインキュベーター内で2〜3日(すなわち細胞がコンフルエントになるまで)インキュベートし、その後に培地を、6Hの6種のホルモンの1種であるTSHを含まない「飢餓培地(Starvation Medium)」(5H)に交換する。次に細胞を、培地を2〜3時間毎に交換しながらインキュベーター内で4〜5日間維持する。この期間中、細胞は成長も増殖もしない。このような状態の細胞をアッセイ法に使用する。
【0017】
このアッセイ法は、「飢餓培地」を除去し、ホスホジエステラーゼによるcAMP分解を防ぐために、ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、0.5 mM メチルイソブチルキサンチン)を極めて低濃度の塩化ナトリウム、高濃度のショ糖緩衝液(HBSS−NaCl+222 mM ショ糖;この緩衝液の調合は以下の通り:0.0608 g/L KH2PO4、0.144 g/L CaCl2、0.373 g/L KCl、0.048 g/L MgSO4、0.097 g/L Na2PHO4、1.0 g/L D-グルコース、76 g/L [すなわち222 mM] ショ糖、4.77 g/L HEPES、および10 g/L BSA;pH 7.2〜7.4)を添加して行われる。患者の免疫グロブリン(IgG)を特別に調製した試料、対照、および標準を、適切なウェルに通常は3か所に分注し、このプレートを5% CO2を含む加湿した設定温度37℃のインキュベーター内で2時間インキュベートする。インキュベート後、5〜10 μLの培地を各ウェルから分取し、cAMPの有無を検出するラジオイムノアッセイ系に用いた。通常このアッセイ法は、約6種の標準を用いてそれぞれ2回繰り返して実施する。また患者試料と対照についても2回繰り返して実施する。このアッセイ法には通常一晩のインキュベーションと、翌日に1時間かけて実施する、遊離の放射性cAMPと抗体結合状態の放射性AMPとの分離が必要である。
【0018】
放射能を用いることと調製に時間がかかることは、FRTL-5アッセイ法の負の側面であるが、改善された系が開発されている。ある調査では、アッセイ系の感度を上昇させるために低塩条件が検討された(Kosugiら、Endocrinol.、125:410〜417 [1989]を参照)。1993年になされたバイオアッセイ法のさらなる改善では、ヒトTSH受容体をトランスフェクトしたチャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞株が導入されている(「CHO-R」;Vittiらの前掲論文を参照)。この細胞株はFRTLアッセイ法に対して二つの大きな改善点をもたらした。一点目は、この方法では、ラットのTSH受容体ではなくヒトのTSH受容体を用いており、TSAb検出の特異度とおそらく感度が上昇していると考えられる。二点目は、6〜8日間以上にわたって特別の6Hおよび5H培地の交換が必要ない。というのはCHO-R細胞は標準添加培地上で良好に成長し、ウェル接種後に、接種に用いる細胞懸濁液の密度に応じて1〜3日使用可能だからである。また、FRTL-5細胞との比較試験では、CHO-R細胞が、グレーブス病患者のTSAbをより正確に検出することがわかっている(Vittiらの文献を参照)。しかし以上の点を考慮しても、FRTL-5細胞は現在でも他の試験法に対して基準的な検査法である。
【0019】
またさらに最近なされた改善は、エバンスらの論文(Evansら、J. Clin. Endocrinol. Metabol.、84:374 [1999])に記載されているように、レポーター遺伝子の酵素活性(すなわちルシフェラーゼ)の使用を介してTSIによって引き起されるcAMP量の増加を容易に評価することを意図したCHO-R細胞の使用によりもたらされている。したがって、このような手順で作製された細胞株(CHO-Rluc)を用いることで、cAMPを検出および定量するためにこれまで開発されたラジオイムノアッセイ法で用いられてきた放射性化合物の使用に必ずついて回る複雑さおよび危険性が除かれる。このような細胞を用いる場合、単純に細胞から培地を除去し、溶解緩衝液(lysis buffer)を添加し、20〜30分間かけて溶解を誘導し、溶解物の試料を一部とり、ルシフェラーゼ基質を添加し、さらに光出力をルミノメーターを用いて15秒間隔で測定することでルシフェラーゼを測定する。しかし「実験手順」のセクションで記載されるように、この方法では同等の結果が得られる。
【0020】
本発明は、エバンスらのプロトコールの利点を統合しながら、信頼性および再現性に関して追加の利点をもたらす方法を提供する。本発明の方法の開発には、かなりの努力が払われてきた。これには、グレーブス病患者に由来するTSHおよび免疫グロブリンを用いたルミノメーターを使用するアッセイ法におけるCHO-Rluc細胞の使用を可能とする方法などがあった。当初用いられた標準的なプロトコールでは、18〜24時間のインキュベート後にコンフルーエントな単層を生じる濃度で植え継ぐために、CHO-Rluc細胞を凍結ストックから植え継ぐ段階があった。まず「成長培地」を除去して「刺激培地」を上記単層に添加し、これに一連のTSH標準(例えば、0、10、100、1000 μIU TSH/ml)、および患者のIgG試料を添加した。この方法で得られる結果はよくなかったので、一晩飢餓状態にするか、条件づけに要する期間を検討した。この段階を加えることで、バックグラウンド値が低くなって結果が改善したので、TSH標準および被験者試料について良好な値を得るために重要な進展であると考えられた。ポリエチレングリコール(PEG)を用いて抗原と抗体の結合を促す、他の実験上の選択肢についても検討された。この実験ではPEGが「刺激培地」に添加された。
【0021】
「実験例」のセクションに記載されるように、さまざまな実験において、種々の培地組成および組み合わせが検討された。例えば「刺激培地」で飢餓状態とすることで、RLU/秒の値は、0 μIU/mlのTSH標準で(32,103)、10 μIU TSH/mlの試料で-1,148、1000 μIU TSH/mlの試料で47,478、またIgG試料#13で19,350となった。以降の説明も含めて、括弧内の数字は、標準または試料の値から差引くことで正味の値を算出するための、0 μIU TSH/mlの時の値を示す。
【0022】
標準HBSSによる飢餓状態では、0 μIU/ml TSH対照のRLU/秒値は(21,671)であり、10 μIU TSH/ml試料では1,336であり、1000 μIU TSH/ml試料では82,446であり、またIgG試料#13では39,082の値が得られた。「刺激培地」に含まれる標準のHBSSおよび6% PEGによる飢餓状態では、0 μIU/ml TSH対照のRLU/秒値は(32,562)であり、10 μIU TSH/ml試料では5,980であり、1000 μIU TSH/ml試料では207,831であり、またIgG試料#13では174,461であった。このように、標準のHBSSによる飢餓状態では、TSHおよびグレーブス病患者試料で高い値が得られ、PEGを「刺激培地」に加えるとさらに高い値が得られた。このような高い値は、他の方法と比較して本発明の方法に高レベルの感度をもたらすようである。したがって本発明は、グレーブス病の診断およびモニタリングを行う検出法の使いやすさと安全性において改善がなされている。
【0023】
免疫応答発現のモニタリング
上述の通り、本発明は、免疫応答発現をモニタリングするための方法および組成物も提供する。特に本発明は、ワクチン接種に対する個人の応答のモニタリングに適した方法および組成物を提供する。この態様においては、免疫前の血清(つまりワクチン接種前に採取した血清)を、対照目的のベースラインとして用いることができる。血清は、ワクチン接種の直後(例えばワクチン接種の1〜2週後)に、またワクチン接種後の数か月間に周期的に採取することもできる。次に血清試料を対象に、中和抗体の有無および量を検討する。好ましい態様においてこのアッセイ法を実施することで、ウイルス抗原に対する応答をモニタリングすることができる。このようなアッセイ法では、ELVIS(商標)(Diagnostic Hybrids、オハイオ州アセンズから入手可能)を本発明のPEG溶液とともに使用する。PEGを使用することで抗原抗体反応が促進され、結果的に抗ウイルス抗体に対する高い反応性が得られると考えられる。
【0024】
定義
本明細書および特許請求の範囲における「試料」および「検体」という用語は広い意味で用いられる。一方ではこれらの用語は、検体または培地を含むことを意味する。また一方ではこれらの用語は、生物試料および環境試料を含むことを意味する。これらの用語は、体液(例えば血液)ならびに固形組織を含むがこれらに限定されないヒトおよび他の動物で得られるあらゆる型の試料を含む。
【0025】
生物試料は、ヒトを含む動物、体液または組織、乳製品、野菜類、肉類、および肉副産物などの食品ならびに添加物、ならびに廃棄物の場合がある。これらの例は、本発明に利用される試料の種類を制限するものと解釈されるべきではない。
【0026】
本明細書で用いられる「キット」という用語は、試薬および他の材料を組み合わせたものを指すものとして用いられる。
【0027】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、特異的な抗原と反応する任意の免疫グロブリン分子を指すものとして用いられる。この用語が任意の供給源(例えば、ヒト、げっ歯類、非ヒトの霊長類、ヤギ、ウシ、ウマ、ヒツジなど)から得られる任意の免疫グロブリン(例えば、IgG、IgM、IgA、IgE、IgDなど)を含むことが意図される。
【0028】
本明細書で用いられる「抗原」という用語は、抗体と反応可能な任意の物質を指すものとして用いられる。この用語が任意の抗原および「免疫原」(すなわち抗体形成を誘導する物質)を含むことが意図される。したがって免疫原性反応では、抗体は、抗原(免疫原)または抗原の一部の存在に反応して産生される。
【0029】
本明細書で用いられる「抗原断片」および「抗原の一部」という表現は、抗原の一部を指すものとして用いられる。抗原断片または抗原の一部は、抗原全体の数パーセントから、抗原の大部分までさまざまな大きさをとりうるが、抗原の100%ではない。しかし、少なくとも抗原の一部を特定して指す場合、抗原全体が存在することが考えられる。抗原断片または抗原の一部は、抗体によって認識される「エピトープ」を含む場合があるが、含む必要はないと考えられる。抗原断片または抗原の一部は免疫原性をもつ場合ももたない場合もある。
【0030】
本明細書で用いられる「自己抗体」という用語は、個人自身の組織または細胞の抗原成分要素と反応可能な抗体を指す(例えば抗体は「自己」抗原に認識して結合する)。
【0031】
本明細書で用いられる「免疫アッセイ法」という用語は、抗原の検出に抗体を用いる任意の方法を指すものとして用いられる。免疫アッセイ法のフォーマットの範囲は、直接免疫アッセイ法、間接免疫アッセイ法、および「サンドイッチ」免疫アッセイ法を含むがこれらに限定されないこの定義に含まれると考えられる。しかし、本発明が任意の特定のフォーマットに制限されることは意図されない。ラジオイムノアッセイ法(RIA)、免疫蛍光アッセイ法(IFA)、ならびにELISA法、RIA法、および/またはIFA法の変法を含むがこれらに限定されない他のアッセイ法のフォーマットを含む他のフォーマットは本発明の方法に有用であると考えられる。
【0032】
本明細書で用いられる「捕捉抗体」という用語は、抗原に結合させることで、後に添加される抗体による抗原の認識を可能とする際に用いられる抗体を指す。例えば捕捉抗体をマイクロタイターウェルに結合させて、ウェルに添加した試料中に存在する対象抗原に結合させる役割を果たさせることができる。次に別の抗体(「一次抗体」と呼ばれる)を用いて抗原-抗体複合体に結合させ、抗体-抗原-抗体からなる「サンドイッチ」構造を事実上形成させる。このような複合体の検出は複数の方法で行うことができる。一次抗体は、ビオチン、酵素、蛍光マーカー、または放射能などの標識を用いて調製することが可能であり、また、これらの標識を指標に直接検出することができる。あるいは、一次抗体を認識する標識された「二次抗体」または「レポーター抗体」を添加して、抗体-抗原-抗体-抗体からなる複合体を形成させることができる。また適切なレポーター試薬を後で添加して標識抗体を直接検出する。要望通りに、任意の数の他の抗体を添加することができる。このような抗体も、酵素、蛍光マーカー、または放射能を含むがこれらに限定されないマーカーで標識することができる。
【0033】
本明細書で用いられる「レポーター試薬」または「レポーター分子」という表現は、抗原に結合した抗体の存在を検出可能な化合物を指すものとして用いられる。例えばレポーター試薬は、酵素基質に結合する比色物質の場合がある。抗体と抗原が結合すると、このような酵素は、その基質に作用して発色を生じる。他のレポーター試薬には、蛍光発生性および放射性の化合物または分子があるがこれらに限定されない。この定義はまた、検出系の一部としてビオチンおよびアビジンをベースとした化合物(例えばニュートラビジン(neutravidin)およびストレプトアビジン(streptavidin)を含むがこれらに限定されない化合物)を使用することも含む。本発明の一つの態様においては、ビオチン化抗体が、アビジンでコーティングされた固相支持体とともに本発明に用いられる場合がある。
【0034】
本明細書で用いられる「シグナル」という用語は、反応、例えば抗原と抗体との結合が生じたことの指標を指すものとして用いられる。放射能、蛍光発生反応、蛍光反応および酵素反応の状態をとるシグナルが本発明に用いられると考えられる。シグナルは質的ならびに量的に評価することができる。
【0035】
本明細書で用いられる「固相支持体」という用語は、抗体、抗原、および他の化合物などの試薬を結合させることができる任意の固体物質を指すものとして用いられる。例えばELISA法では、マイクロタイタープレートのウェルが固相支持体の役割を果たすことがある。固相支持体の他の例には、顕微鏡観察用スライド、カバースリップ、ビーズ、微粒子、細胞培養用フラスコ、ならびに他の材料などがある。
【0036】
本明細書で用いられる「細胞染色」という用語は、細胞を標識または染色して可視化を容易にするために用いられる方法を指すものとして用いられる。このような染色または標識は、蛍光色素、酵素、金、およびヨードを含むがこれらに限定されないさまざまな化合物を用いることで達成できる。この定義は、試験法(すなわちアッセイ法)が試料を対象にインサイチューで行われる「インサイチュー色素産生アッセイ法」などの方法を含むと考えられる。「インサイチュー色素産生アッセイ法」が免疫アッセイ法(ELISA法)の使用を含むことも考えられる。
【0037】
本明細書で用いられる「成長培地(Growth Medium)」という用語は、培養物中の細胞の成長および複製を促進するビタミン、アミノ酸、補因子、および他の任意の適切な栄養素を含むがこれらに限定されないさまざまな成長因子を含むように調製された培地を指す。
【0038】
本明細書で用いられる「刺激培地(Stimulation Medium)」という用語は、TSHおよび/またはTSIによる刺激を高めることで結果的に得られるシグナル(例えばcAMPおよび/またはルシフェラーゼ)を強化する目的で、ある種の成分(例えば塩化ナトリウム)を含まないように調製された培地を指す。
【0039】
本明細書で用いられる、「飢餓培地(Starvation Medium)」という用語は、「成長培地」に含まれる少なくとも1種の成長因子を含まないように調製された培地を指す。好ましい態様において同培地は、細胞を短期間維持するのに必要な塩およびグルコースのみを含む。
【0040】
本明細書で用いられる「生物」および「微生物」という用語は、リケッチアおよびクラミジアを含むウイルスおよび細菌を含むがこれらに限定されない微生物の任意の種または型を指すものとして用いられる。したがって、この用語は、DNAウイルスおよびRNAウイルス、ならびにリケッチア目およびクラミジア目に含まれる生物体を含むがこれらに限定されない。
【0041】
本明細書で用いられる「培養物」という用語は、1種または複数の微生物を含むと考えられる任意の試料または検体を指す。「純粋な培養物」は、存在する生物が特定の属および種の一つの株のみである培養物である。これは、複数の属および/または種の微生物が存在する培養物である「混合培養物」とは対照的である。
【0042】
本明細書で用いられる「細胞型」という用語は、任意の細胞を指し、その供給源または特性には因らない。
【0043】
本明細書で用いられる「細胞株」という用語は、初代細胞株、有限細胞株、連続細胞株、および形質転換細胞株を含む、インビトロで培養された細胞を指す。
【0044】
本明細書で用いられる「初代細胞培養物」および「初代培養物」という用語は、動物または昆虫の組織から直接得られた細胞培養物を指す。このような培養物は、成体ならびに胎児の組織から抽出される場合がある。
【0045】
本明細書で用いられる「有限細胞株」という用語は、老化するまでに一定回数の集団の倍加が可能な細胞培養物を指す。
【0046】
本明細書で用いられる「連続細胞株」という用語は、細胞集団が、初代細胞株および有限細胞株に含まれる細胞が見かけ上成長を停止するが、細胞集団は、細胞の大きさの縮小、高成長率、高クローニング率、高腫瘍原性、および可変性の染色体補体という一般的な特徴を伴って現れる「転換(crisis)」期を経由した細胞培養物を指す。このような細胞は、インビトロにおいて自然発生的な形質転換により生じることがある。このような細胞の寿命は無限である。
【0047】
本明細書で用いられる「形質転換細胞株」という用語は、上述の特徴をもつ連続細胞株に形質転換された細胞培養物を指す。形質転換細胞株は、腫瘍組織から直接抽出することができるほか、ウイルス全体(例えばSV40またはEBV)、またはベクターシステムを用いる形質転換用ウイルスに由来するDNA断片で細胞をインビトロで形質転換することでも抽出することができる。
【0048】
本明細書で用いられる「ハイブリドーマ」という用語は、二つの細胞種を一つに融合して作製された細胞を指す。一般に使用されるハイブリドーマには、免疫化動物に由来する抗体分泌性B細胞と、インビトロで無限に増殖可能な悪性ミエローマ細胞株との融合で作製されるハイブリドーマなどがある。このような細胞をクローン化することで、モノクローナル抗体の調製に用いることができる。
【0049】
本明細書で用いる「混合細胞培養物」という用語は、2種の細胞種の混合物を指す。いくつかの好ましい態様において、このような細胞は、遺伝子工学的に作製されたのではない細胞株であり、他の好ましい態様においては、細胞は遺伝子工学的に作製された細胞株である。いくつかの態様においては、1種または複数の細胞種は、再び「許容」状態(すなわち培養物中でウイルスが複製可能であり、細胞から細胞へ拡散する)となる。本発明は、用いられるすべての細胞種が遺伝子工学的に作製されたものではない混合細胞培養物、1種または複数の細胞種が遺伝子工学的に作製されたもので、残りの細胞種が遺伝子工学的に作製されたものではない混合物、およびすべての細胞種が遺伝子工学的に作製された混合物を含む、試料に含まれるウイルスの検出、同定、および/または定量に適した細胞種の任意の組み合わせを含む。
【0050】
本明細書で用いられる「細胞内寄生生物の検出に適している」という表現は、試料に含まれる細胞内寄生生物の有無の検出に良好に用いられる細胞培養物を指す。好ましい態様においては、細胞培養物は、細胞内寄生生物の感染に対する感受性を維持する、および/または複製を続けさせることができる。本発明が特定の細胞種または細胞内寄生生物に制限されることは意図されない。
【0051】
本明細書で用いられる「感染に感受性がある」という表現は、細胞がウイルスまたは他の細胞内生物に感染されうることを指す。この表現は「許容性」の感染を含むが、この用語が、細胞が感染するが生物は必ずしも複製、および/または感染細胞から他の細胞へ拡散しない環境を含むことを意図することから、この用語が制限されることは意図されない。本明細書で用いられる「ウイルスの増殖」というフレーズは、感染性ウイルスの、許容細胞から許容性または感受性のいずれかをもつ別の細胞への拡散または移動を意味する。
【0052】
本明細書で用いられる「単層」、「単層培養」、および「単層細胞培養」という用語は、基質に吸着して1細胞の厚みの層状に成長する細胞を指す。単層は、フラスコ、試験管、カバースリップ(例えばシェルバイアル)、ローラーボトルなどを含むがこれらに限定されない任意のフォーマットで成長させることができる。細胞は、ビーズを含むがこれらに限定されない微小担体に結合させた状態で成長させることもできる。
【0053】
本明細書で用いられる「懸濁液」および「懸濁培養物」という用語は、基質に結合することなく生存および増殖する細胞を指す。懸濁培養物は典型的には、造血細胞、形質転換細胞株、および悪性腫瘍に由来する細胞を用いて作製される。
【0054】
本明細書で用いられる「培地」および「細胞培地」という用語は、インビトロで細胞の成長を継続させるのに適した培地(すなわち細胞培養物)を指す。この用語が特定の培地に制限されることは意図されない。例えば、この定義は、成長培地ならびに維持培地を含むことが意図される。この用語は実際には、対象細胞培養物の成長に適した任意の培地を含むことが意図される。
【0055】
本明細書で用いられる「偏性細胞内寄生体」(または「偏性細胞内生物」)は、その生存、および/または複製のための細胞内環境を必要とする任意の生物を指す。偏性細胞内寄生体には、ウイルスならびに一部の細菌(例えば、リケッチア目[例えば、コクシエラ(Coxiella)、リケッチア(Rickettsia)、およびエールリヒア(Ehrlichia)]およびクラミジア目[例えば、クラミジア・トラコマティス(C. trachomatis)、オウム病クラミジア(C. Psittaci)]など多くの細菌)を含む他の多くの生物が含まれる。「細胞内寄生体」という用語は、先に簡単に触れた偏性細胞内寄生体を含むがこれらに限定されない宿主動物の細胞内に見出されうる任意の生物を指す。例えば細胞内寄生体には、ブルセラ(Brucella)、リステリア(Listeria)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)(例えば、結核菌(M. tuberculosis)およびライ菌(M. leprae))、およびプラスモジウム(Plasmodium)、ならびにロシャメリア(Rochalimea)などの生物が含まれる。
【0056】
本明細書で用いられる「抗菌薬」という用語は、微生物の成長を抑制したり、または微生物を死滅させたりする任意の化合物を指すものとして用いられる。この用語が広い意味で用いられ、また天然に産生される、または合成される抗生物質などの化合物を含むがこれに限定されないことが意図される。またこの用語が、微生物の成長の抑制、または微生物の死滅に有用な化合物および因子を含むことも意図される。
【0057】
本明細書で用いられる「色素生産性化合物」、および「色素生産性基質」という用語は、光の吸収または放射の特性による検出系に有用な任意の化合物を指す。この用語には、肉眼による観察または光学的装置使用のいずれかにより検出可能な、可溶性ならびに不溶性の任意の酵素切断産物を含むことが意図される。「色素生産性」という表現に含まれる基質は、色の変化を指標として検出可能な最終産物を産生するあらゆる酵素基質である。このような基質には、藍、青、赤、黄、緑、橙、茶などの従来の意味での「色」、ならびに蛍光(例えばフルオレセインの黄緑色、ローダミンの赤など)を伴って検出される色を生じる蛍光化合物もしくは蛍光発生化合物として用いられる任意の色が含まれるがこれらに限定されない。色素などの他の指示薬(例えばpH)および発光化合物がこの定義に含まれることが意図される。
【0058】
本明細書で用いられるように、一般的な意味での「pH指示薬」、「レドックス指示薬」、および「酸化還元指示薬」などの用語が意図される。したがって「pH指示薬」は、フェノールレッド、ニュートラルレッド、ブロモチモールブルー、ブロムクレゾールパープル、ブロムクレゾールグリーン、ブロムクロロフェノールブルー、m-クレゾールパープル、チモールブルー、ブロモクレゾールパープル、キシレノールブルー、メチルレッド、メチルオレンジ、およびクレゾールレッドを含むがこれらに限定されない、pH変化の検出に一般に使用されるあらゆる化合物を含む。「レドックス指示薬」および「酸化還元指示薬」という用語は、さまざまな種類または形状のテトラゾリウム(tetrazolium)、レサズリン(resazurin)、およびメチレンブルーを含むがこれらに限定されない酸化/還元電位(すなわち「eH」)の検出に一般に使用されるあらゆる化合物を含む。
【0059】
本明細書で用いられる「接種用懸濁液(inoculating suspension)」、または「接種材料(inoculant)」という用語は、検査対象の生物に接種可能な懸濁液を指すものとして用いられる。「接種用懸濁液」という用語が、特定の体液または液体物質に制限されることは意図されない。例えば接種用懸濁液は、水、生理食塩水、または水溶液からなる場合がある。接種用懸濁液が、生理食塩水、または任意の水性材料に添加する成分を含む場合があることも考えられる。一つの態様においては、このような成分が、意図した微生物に有用な少なくとも1種の成分からなることが考えられる。本発明が特定の成分に制限されることは意図されない。
【0060】
本明細書で用いられる「初期単離」という用語は、試料から生物を直接培養する過程を指す。本明細書で用いられる「単離」という用語は、生物の任意の培養を意味し、初期単離またはそれに続く任意の培養の区別は問われず、維持および/または使用するための生物のストック培養物の「継代」または「移し替え」が含まれる。
【0061】
本明細書で用いられる「推定診断」という用語は、患者の疾患にかかわる病原体に関して治療を行う医師にいくつかのガイダンスを与える予備診断を指す。予備診断は、微生物の予備的な同定を指すように本明細書で用いられる「推定同定」を元にする場合がある。
【0062】
本明細書で用いられる「確定診断」という用語は、患者の疾患の病因を同定する最終的な診断を指すものとして用いられる。「確定的な同定」という用語は、ある生物を属および/または種のレベルに最終的に同定することを指すものとして用いられる。
【0063】
本明細書で用いられる「組換えDNA分子」という用語は、分子生物学的手法でひとまとめに連結されたDNAのセグメントからなるDNA分子を指す。
【0064】
DNA分子は、1個のモノヌクレオチドのペントース環の5'リン酸が、近傍にある3'酸素に、ホスホジエステル結合を介して一方向性に結合されるようにモノヌクレオチドが反応してオリゴヌクレオチドが作られるので、「5'端」および「3'端」をもつと表現される。したがって、オリゴヌクレオチドの末端は、その5'リン酸がモノヌクレオチドペントース環の3'酸素に結合していない場合に「5'」端と表現され、また3'酸素が続くモノヌクレオチドペントース環の5'リン酸に結合していない場合に「3'端」と表現される。本明細書で用いられるように、核酸配列は、たとえそれが長いオリゴヌクレオチドの内部にあっても5'端および3'端をもつと表現される場合がある。直線状または環状のDNA分子のいずれであっても、独立した配列は、「下流」または3'側の配列の「上流にある」または5'側にあると表現される。このような用語の使い方は、転写がDNA鎖に沿って5'から3'方向へ進むという事実を反映している。連結した遺伝子の転写を誘導するプロモーターおよびエンハンサーの配列は一般に、コード領域の5'側または上流に位置する(エンハンサー配列は、プロモーター配列およびコード配列の3'側に位置しても作用を発揮する場合がある)。転写終結およびポリアデニル化のシグナルは、コード領域の3'側または下流に位置する。
【0065】
「遺伝子をコードするヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド」という表現は、遺伝子のコード領域、言い換えると、遺伝子産物をコードするDNA配列を含むDNA配列を指す。コード領域は、cDNA上、またはゲノムDNA上に存在する場合がある。エンハンサー、プロモーター、スプライス部位、ポリアデニル化シグナルなどの適切な制御配列は、転写の適切な開始および/または一次RNA転写産物の正確なプロセシングを可能とすることが必要とされる場合に、遺伝子のコード領域の近傍に位置する場合がある。あるいは、本発明のベクターに用いられるコード領域は、内因性のエンハンサーおよび/またはプロモーター、スプライス部位、介在配列、ポリアデニル化シグナルなど、または内因性および外因性の制御配列の組み合わせを含む場合がある。
【0066】
本明細書で用いられる「転写単位」という用語は、転写の開始部位と終結部位の間にあるDNAのセグメント、ならびに効率のよい開始および終結に必要な制御配列を指す。例えば、エンハンサー/プロモーター、コード領域、ならびに終結配列およびポリアデニル化シグナル配列を含むDNAのセグメントが転写単位を構成する。
【0067】
本明細書で用いられる「制御配列」という用語は、核酸配列の発現のいくつかの局面を調節する遺伝因子を指す。例えばプロモーターは、機能的に連結させたコード領域の転写の開始を促す制御配列の一つである。他の制御配列には、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル、終結シグナルなどがある(以下で定義する)。
【0068】
本明細書で用いられる「レポーター遺伝子構築物」または「レポーター遺伝子ベクター」という表現は、特定の宿主生物において、レポーター遺伝子および使用可能に連結させたコード配列の発現に必要な適切な核酸配列の産物をコードする配列を含む組換えDNA分子を指す。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー、ならびに終結シグナルおよびポリアデニル化シグナルを利用することが知られている。
【0069】
「レポーター遺伝子」という用語は、異種プロモーターおよび/またはエンハンサー配列に使用可能に連結させたレポーター遺伝子配列を含む構築物を、プロモーター配列および/またはエンハンサー配列の活性化に必要な配列を含む(または含むように作製した)細胞に導入したときに、容易かつ量的に検討される遺伝子産物(通常は酵素)をコードする配列を有するオリゴヌクレオチドを指す。レポーター遺伝子の例には、β-ガラクトシダーゼ(lacZ)をコードする細菌遺伝子、細菌のクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(cat)遺伝子、ホタルのルシフェラーゼ遺伝子、およびβ-グルクロニダーゼ(GUS)をコードする遺伝子などがあるがこれらに限定されない。
【0070】
真核生物における転写制御シグナルは、「プロモーター」配列および「エンハンサー」配列を含む。プロモーターおよびエンハンサーは、転写にかかわる細胞タンパク質と特異的に相互作用する短い一連のDNA配列からなる(Maniatisら、Science 236:1237 [1987])。プロモーター配列およびエンハンサー配列は、酵母細胞、昆虫細胞、および哺乳類細胞、ならびにウイルスの遺伝子を含むさまざまな真核生物供給源から単離されている(相同な調節領域[すなわちプロモーター]は真核生物にも見出される)。特定のプロモーターおよびエンハンサーの選択は、どのような細胞種を用いて対象タンパク質を発現させるかを元に行う。いくつかの真核生物のプロモーターおよびエンハンサーは広い宿主域をもつが、限られた細胞種でしか機能しないものもある(Vossら、Trends Biochem. Sci.、11:287 [1986]の総説、およびManiatisらの前掲書籍[1987]を参照)。例えばSV40の初期遺伝子のエンハンサーは、多くの哺乳類種の広範囲の細胞種で極めて活性が高く、哺乳類細胞でタンパク質を発現させるために広く用いられている(Dijkemaら、EMBO J.4:761 [1985])。広範囲の哺乳類細胞種で活性を示す他の二つのプロモーター/エンハンサー配列の例が、ヒトの伸長因子1α遺伝子(Uetsukiら、J. Biol. Chem.、264:5791 [1989];Kimら、Gene 91: 217 [1990];ならびにMizushimaおよびNagata、Nuc. Acids. Res.、18:5322 [1990])、およびラウス肉腫ウイルスの末端反復配列(LTR)(Gormanら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:6777 [1982])、およびヒトサイトメガロウイルス(Boshartら、Cell 41:521 [1985])に由来するものである。
【0071】
「プロモーター/エンハンサー」という用語は、プロモーター機能およびエンハンサー機能の両方を提供可能な配列を含むDNAのセグメント(例えば、レトロウイルスの末端反復配列(LTR)はプロモーター機能とエンハンサー機能の両方を含む)を意味する。エンハンサー/プロモーターは、「内因性」または「外因性」すなわち「異種」のいずれの場合もある。内因性のエンハンサー/プロモーターは、ゲノム上で任意の遺伝子に天然の状態で連結している配列である。外因性(異種)エンハンサー/プロモーターは、遺伝子操作(すなわち分子生物学的手法)によって遺伝子の近位に位置させる配列である。
【0072】
発現ベクター上に「スプライシングシグナル」が存在すると、組換え体の転写産物が高レベルで発現することがある。スプライシングシグナルは、一次RNA転写物からのイントロンの除去にかかわり、スプライス供与部位とスプライス受容部位からなる(Sambrookら、「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク [1989]、pp.16.7〜16.8)。一般に用いられるスプライス供与部位およびスプライス受容部位は、SV40の16S RNAのスプライス部位である。
【0073】
真核細胞で組換えDNA配列を効率よく発現させるためは、結果として生じる転写産物の効率のよい終結およびポリアデニル化を誘導するシグナルが必要である。転写終結シグナルは一般にポリアデニル化シグナルの下流に見出され、数百ヌクレオチドの長さをもつ。本明細書で用いられる「ポリA部位」または「ポリA配列」という用語は、新生RNA転写産物の終結およびポリアデニル化を誘導するDNA配列を意味する。組換え体の転写産物の効率のよいポリアデニル化が望ましい理由は、ポリAテールをもたない転写産物が不安定かつ速やかに分解されてしまうからである。発現ベクターに用いられるポリAシグナルは「異種」または「内因性」の場合がある。内因性ポリAシグナルは、天然の状態ではゲノム上の任意の遺伝子のコード領域の3'端に見出される。異種ポリAシグナルは、一つの遺伝子から単離され、別の遺伝子の3'側に配置される。一般に用いられる異種ポリAシグナルはSV40のポリAシグナルである。SV40のポリAシグナルは、237 bpのBamHI/BclI制限酵素切断断片中に含まれ、終結およびポリアデニル化の両方を誘導する(Sambrookによる前掲書籍、16.6〜16.7)。この237 bpの断片は、671 bpのBamHI/PstI制限酵素切断断片に含まれる。
【0074】
「遺伝子工学的に作製された細胞株」という表現は、分子生物学的手法(すなわち組換えDNA技術)によって細胞株に導入された異種DNAを含む細胞株を指す。
【0075】
「安定なトランスフェクション」または「安定にトランスフェクトされた」という表現は、導入細胞ゲノムへの外来DNAの導入および組込みを指す。「安定な形質転換体」という表現は、外来DNAがゲノムDNAに安定に組み込まれた細胞を指す。
【0076】
「安定なトランスフェクション」(または「安定にトランスフェクトされた」)という用語は、導入細胞ゲノムへの外来DNAの導入および組込みを指す。「安定な形質移入体」という表現は、外来DNAがゲノムDNAに安定に組み込まれた細胞を指す。
【0077】
本明細書で用いられる「選択マーカー」という用語は、選択マーカーを発現する細胞において抗生物質または薬剤に対する耐性を付与する酵素活性をコードする遺伝子を使用することを指す。選択マーカーは「優性」の場合がある。すなわち優性選択マーカーは、任意の哺乳類細胞株で検出可能な酵素活性をコードする。優性選択マーカーの例には、哺乳類細胞で薬剤G418に対する耐性を付与する細菌のアミノグリコシド3'ホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo遺伝子とも呼ばれる)、抗生物質ハイグロマイシンに対する耐性を付与する細菌のハイグロマイシンGホスホトランスフェラーゼ(hyg)遺伝子、およびミコフェノール酸の存在下における成長能力を付与する細菌のキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(gpt遺伝子とも呼ばれる)などがある。他の選択マーカーは優性ではなく、その使用には、関連する酵素活性をもたない細胞株を併用しなければならない。非優性の選択マーカーの例には、tk-細胞株とともに用いられるチミジンキナーゼ(tk)遺伝子、CAD欠損細胞と併用して用いられるCAD遺伝子、およびhprt-細胞株とともに用いられる哺乳類のヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(hprt)遺伝子などがある。哺乳類細胞における選択マーカーの使用に関して述べた総説はSambrookらの前掲書籍のpp.16.9〜16.15に記載されている。
【0078】
「〜をコードする核酸分子」、「〜をコードするDNA配列」、および「〜をコードするDNA」という表現は、デオキシリボ核酸の鎖に沿ったデオキシリボヌクレオチドの順序または配列を指す。このようなデオキシリボヌクレオチドの順序は、ポリペプチド(タンパク質)鎖に沿ったアミノ酸の順序を決定する。このようにしてDNA配列はアミノ酸配列をコードしている。
【0079】
本明細書で吸着性の細胞株に関して用いられる「コンフルエントな」、または「コンフルエンシー」という表現は、培地全体に含まれる細胞が相互に接触して、細胞の連続したシートまたは「単層」のように見える状態を指す。
【0080】
本明細書で用いられる「細胞変性効果」または「CPE」という表現は、外部からウイルスなどが侵入することで生じる細胞構造の変化(すなわち病理的作用)を意味する。一般的な細胞変性効果には、細胞崩壊、合胞体(すなわち融合した巨大細胞)の形成、細胞内における球状液胞の形成、および封入体の形成などがある。CPEは、生き抜く為に必要とされる機能を前もって形成する許容細胞宿主に負の影響を及ぼす、許容細胞に対するウイルスの作用によって生じる。インビトロ細胞培養系では、コンフルエントな単層の一部としての細胞が、ウイルスを含む検体との接触後に非コンフルエントな領域を示す際にCPEは明らかになる。観察される微視的作用は、一般に天然の状態で限局的であり、この焦点は1個のウイルス粒子から開始される。ただし、試料に含まれるウイルス量に応じて、十分なインキュベーション時間をおいた後に単層全体にCPEが観察される場合がある。ウイルス誘導性のCPEを示す細胞は通常、形態を球状に変化させ、長時間経過後には死滅する場合があり、また単層中の係留点から放出されることがある。多数の細胞が焦点崩壊点に至ると、その領域が単層の穴となって現れる。この領域はウイルスプラークと呼ばれる。当業者であれば細胞変性効果を容易に識別および区別することができる。
【0081】
省略形「ONPG」は、o-ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシドを意味する。ONPGは、酵素β-ガラクトシダーゼ(β-gal)の基質である。ONPGとβ-galが反応すると、405 nmで分光光度的に定量可能な黄色の産物が生じる。
【0082】
省略形「X-gal」は、酵素β-ガラクトシダーゼの基質である化合物5-ブロモ-4-クロロ-3-インドイル-β-D-ガラクトピラノシドを意味する。X-galとβ-ガラクトシダーゼが反応すると、視覚的に識別可能な青色の沈殿が生じる。
【0083】
「ハイブリウィックス(hybriwix)」という用語は、DNAハイブリダイゼーションによる細胞の感染単層におけるある種のウイルスDNAの定量を可能とする、ダイアグノスティック・ハイブリッズ社(Diagnostic Hybrids、Inc.、オハイオ州アセンズ)の製品を意味する。「DNAハイブリダイゼーション」は、2本の相補的なDNA分子をアニール化することであり、塩基配列は塩基対合の規則したがって対合する。DNAハイブリダイゼーションを行うことで、既知のDNAすなわち「プローブ」とハイブリッドを形成させることで未知のDNAすなわち「標的」DNAを同定および定量することができる。プローブは典型的には、ガンマ線カウンターで検出および定量可能な放射性同位元素である125Iなどのレポーター分子で標識される。
【0084】
本明細書で用いられる「プラーク減少アッセイ法」または「PRA」という表現は、薬剤に曝露させた細胞単層中のプラーク形成の減少数を数えることで抗ウイルス薬の効率を決定する際に用いられる標準的な方法を意味する。「プラーク」は「CPE」の領域と定義される。これは通常、1個の感染ウイルスが細胞単層に感染した後に複製して単層上で隣接する細胞に拡がった結果である。プラークは、「ウイルス感染のフォーカス」と呼ばれる場合もある。
【0085】
本明細書で用いられる「許容性がある」という表現は、ウイルスとその推定宿主細胞間の相互作用の一連の事象を意味する。この過程は、宿主細胞表面へのウイルスの吸着で始まり、感染性ウイルス粒子を放出して終わる。細胞は、そこで容易にウイルスが他の細胞へ拡散可能な場合に「許容性」であると言える。任意の細胞株の許容性を決定する多くの方法がある。これには、プラーク減少アッセイ法、ゲル電気泳動で得られた結果に基づくウイルスタンパク質の産生の比較および/または定量、DNA量またはRNA量を解析するハイブリダイゼーション分析を用いた相対比較などが含まれるがこれらに限定されない。
【0086】
本明細書で用いられる「感受性がある」という表現は、許容性または非許容性の宿主細胞が、ウイルスに吸着可能な程度、またはウイルスに侵入される程度を意味する。細胞株は、ウイルス粒子が透過可能であるがウイルス粒子を放出しない場合に、許容性はないが感受性がある。しかし許容細胞株は感受性がなければならない。
【0087】
本明細書で用いられる「接種(seed on)」というフレーズは、細胞懸濁物の水溶液を、表面に結合した細胞を含む容器に移す動作を意味する。移した後に容器を十分な時間保存することで、浮遊した細胞または「種細胞(seed)」を重力で沈殿させ、比較的均一に吸着細胞に結合させて、混合物の状態で最終的な細胞単層に統合させることが可能となる。「混合状態の細胞単層」はこの「接種」過程の結果生じる。
【0088】
本明細書で用いられる「接種(seed in)」というフレーズは、組織培養細胞懸濁物(個々の細胞懸濁液は異なる細胞特性をもつ)の2種またはそれ以上の水溶液を混合することを意味し、またこのような細胞混合物を、十分な期間保存された容器に移して、浮遊した細胞を重力で沈殿させ、任意の1種の細胞の分布が、元の混合物に含まれる細胞の相対比を示すように比較的均一に結合させることを可能とすることを意味する。
【0089】
本明細書で用いられる「開始」という表現は、レポーター細胞が最初にウイルスの感染を受けることを指す。ウイルスはレポーター細胞(遺伝子工学的に作製された細胞)に感染し、レポーター遺伝子の発現を誘導する。レポーター細胞は、非許容性の場合(レポーター細胞の許容性が必要とされない場合)もあり、それでも開始する。
【0090】
実験例
以下の実施例は、本発明のある好ましい態様および局面を示してさらに説明する目的で提供されるものであり、本発明の範囲を制限するように解釈されない。
【0091】
以下に述べる実験に関する説明では以下の省略形を用いる:eq(等量);M (モル濃度);μM(マイクロモル);N(規定);mol(モル);mmol(ミリモル);μmol(マイクロモル);nmol(ナノモル);g(グラム);mg(ミリグラム);μg(マイクログラム);ng(ナノグラム);lまたはL(リットル);ml(ミリリットル);μl(マイクロリットル);uIUもしくはμIU(マイクロ国際単位);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメートル);nm(ナノメートル);℃(セ氏温度);sec.またはs(秒);min.またはm(分);MW(分子量);甲状腺刺激ホルモンまたはサイロトロピン(thyrotropin)(TSH);bTSH(ウシTSH);TSI(甲状腺刺激免疫グロブリン);TSAb(甲状腺刺激抗体);EDTA(エチレンジアミン四酢酸);RLU/秒(相対光度単位/秒);GMまたはPM(「成長培地(Growth Medium)」または「プランティング培地(Planting Medium)」;SM(「飢餓培地(Starvation Medium)」);HBSS (ハンク平衡塩類溶液(Hank's Balanced Salt Solution));EMEM(イーグル最小必須培地);FBSまたはFCS (ウシ胎児血清);DMSO (ジメチルスルホキシド);CHO (チャイニーズハムスター卵巣細胞);CHO-R (ヒトTSH受容体をトランスフェクトしたCHO細胞);CHO-Rluc (cre-ルシフェラーゼレポーター遺伝子複合体をトランスフェクトしたCHO-R細胞);Oxoid (Oxoid、英国ベージングストーク);BBL (Becton Dickinson Microbiology Systems、メリーランド州コッキーズビル);DIFCO (Difco Laboratories、ミシガン州デトロイト);U.S. Biochemical (U.S. Biochemical Corp.、オハイオ州クリーブランド);Fisher (Fisher Scientific、ペンシルベニア州ピッツバーグ);Sigma (Sigma Chemical Co.、ミズーリ州セントルイス);ATCC (American Type Culture Collection、メリーランド州ロックビル);LTI (Life Technologies、メリーランド州ロックビル);およびPromega (Promega Corp.、ウィスコンシン州マジソン)。
【0092】
以下に述べる方法では、方法に用いるすべての溶液は(TSH、対照、患者検体を除いて)無菌性であり、無菌的に扱われた。すべての操作は、バイオセーフティーキャビネット内で無菌条件下で行われた。細胞培養に用いる培地(例えばHam's F-12、EMEMなど)はLTIから入手し、非必須アミノ酸などの他の試薬類はシグマ社(Sigma)から入手した。
【0093】
細胞の凍結保存用バイアルは、温度を周期的に変化させると生存能が失われる恐れがあるので、解凍して本発明の方法に使用する直前まで-80℃(またはさらに低温)の保存温度から暖めないようにする。細胞凍結保存用バイアルは室温で不安定なジチオスレイトールを含むので、1×溶液調製に必要容量を取り出すだけの時間しか5×細胞溶解溶液を-20℃の保存温度から取り出すべきでない。また、再構成されたルシフェラーゼ基質溶液もジチオスレイトールを含むので、使用直前まで-20℃で凍結したままとする。使用時に冷凍庫から取り出して25〜37℃の水浴に浸し、解凍して室温になるまで待つ。
【0094】
一般にウェル(例えばマイクロタイタープレートなど)から液体が除去される場合、液体はウェルからバイオセーフティーフード内の容器へと廃棄される。残りの液体は、無菌性の吸湿紙の上にプレートを上下逆さまの位置において吸収させて除くことができる。または、このような液体は、アスピレーターの微細な先端を用いて吸引して除くことができる。吸引する方法を用いる場合、プレートを斜めに固定して液体がウェルからあふれ出さないようにして、アスピレーターの先端をウェルの側壁からほぼ底まで下方に移動させ、できるかぎり液体が残らないように除く。しかし、アスピレーターで細胞は容易に剥がれてしまうので、細胞単層が乱れないように注意しなければならない。
【0095】
以下の方法に示すように、検体、標準、および対照はそれぞれ3回繰り返して実施されることが薦められる。溶液3は粘張であり、またウェル内で適切に混合した状態にすることが難しいので、これらの試薬の3回分の合計容量の10%増し(33 μl)を必要な溶液3の3回分容量の10%増し(330 μl)に移して、十分混合し、110 μlを3組のウェルに移すことで最高の再現性が得られる。
【0096】
細胞単層の調製(例えば、マイクロタイタープレートのウェル内における調製)時には、細胞をウェル内に均一に分布させることが好ましい。したがって不均一な細胞分布を避けるために、細胞懸濁液をウェルに移す作業は、振動のないバイオセーフティーフード内で行うようにする。プレート上のすべてのウェルに細胞を注入したら、プレートを覆って、安定した振動のない表面に30分静置し、細胞を乱さないようにウェルの底に結合させる。こうすることで各ウェル内で細胞が均一に分布する。
【0097】
実施例1
試験用のCHO-Rluc細胞の調製
この実験では、グレーブス病患者におけるTSIを検出する方法を試験するためにW-25 CHO-R細胞からCHO-Rluc細胞を調製した。ピューロマイシン耐性細胞のプールを入手し、ウシTSHに応じた光出力を試験した。最も高い光出力を示したクローンを選択して後述の実験に用いた。
【0098】
CHO-Rluc細胞を、Ham's F-12培地、10% FBS (56℃で30分間加熱して補体を不活性化させたもの)、2 mM グルタミン、および1×非必須アミノ酸を含む成長培地を入れた細胞培養用フラスコ(例えばT-225フラスコ)内で成長させた。このフラスコを、5%の二酸化炭素を含む加湿した雰囲気中で35〜37℃でインキュベートした。
【0099】
細胞培養物がコンフルエントになったら各フラスコから培地を吸引し、Ca++およびMg++を含まないHBSSで細胞単層を洗浄した。次に7 mlの0.25% トリプシン/1 mM EDTA溶液を各フラスコに添加し、単層と約5〜10分間室温で反応させて、細胞を剥がし、ほぼ単細胞の懸濁液中に分散させた。次にこの細胞懸濁液を約5分間300〜400×gで遠心した。上清を除去し、沈殿した細胞を、1×HBSSおよび20% FBSを含む4 ml EMEMを、4 mlの凍結保護培地(1×HBSSおよび15% DMSOを含むEMEMと混合して調製した8 mlの培地に再懸濁した。
【0100】
次に各細胞懸濁液のアリコートを用いて、懸濁液に含まれる細胞数を決定した。細胞数の決定は、細胞数を決定する血球計数器を用いる方法を含むがこれらに限定されない当技術分野で周知の任意の方法で行える。したがって、任意の方法で懸濁液に含まれる細胞数を決定できると考えられる。懸濁液に含まれる細胞数を元に、約2×106個/本の細胞になるように、標準凍結保存用バイアルに細胞を小分けにした。次に細胞を短期保存用に-90℃で凍結保存した。長期保存用に細胞を液体窒素中(約-200℃)で保存した。
【0101】
実施例2
CHO-Rlucアッセイプレートの調製および試験
この実験では、実施例1に記載された手順で調製されたCHO-Rluc細胞を、グレーブス病を診断するアッセイ法に用いた。試験する24種の単層を調製するために、最初に96ウェルマイクロタイタープレート上の24ウェルを、50〜100 μLの0.1% ゼラチン溶液(Sigma)を添加して処理し、試験用に選択された24ウェルの底への細胞の接着を促進させた。約1分間室温でインキュベートした後に、ゼラチン溶液を各ウェルから吸引して除いた。この場合、ゼラチンは、細胞上に1分以上留まる場合があることが分かった。ゼラチンはコラーゲンとともにウェルをコーティングするはたらきをもち、このため細胞はウェルに速やかに接着し、より速くコンフルエントになる。しかし、ゼラチンを使用することなく細胞をウェルに落ち着かせてコンフルエントになるまで成長させることが可能であり、このような場合でも細胞の挙動は良好である。
【0102】
実施例1に記載された手順で調製されたCHO-Rluc細胞を入れた凍結保存用バイアルを37℃の水浴中で速やかに解凍して、約0.4 mlの細胞懸濁液を得て、ピペットを用いて十分混合した。次に細胞を2.5 mlのGM(「プランティング培地(Planting Medium)」とも呼ばれる)に加え、ボルテックスミキサーを用いて1〜2秒間十分混合し、細胞懸濁液の100 μLのアリコートを各ウェルに分注してプレートを覆った。各ウェル内で細胞を均一に分布させることが好ましい。したがって不均一な細胞分布を避けるために、マイクロタイタープレートを振動のないフード内に置いて、細胞のウェルへの分注、およびマイクロタイタープレートの壁への細胞の接着に行うようにする。ウェルへ投入した細胞を次に、5% CO2を含む加湿雰囲気中で35〜37℃で約20〜24時間インキュベートし、細胞がほぼコンフルエントな単層、または完全にコンフルエントな単層を形成するようにした。
【0103】
次にGMを各ウェルからできるだけ完全に、また単層を乱さないように(コンフルエントな単層をウェル内に維持するように)注意しながら吸引した。この単層を1ウェルあたり約100 μlの「飢餓培地」(Ca++ (0.14 g/L)およびMg++ (0.048 g/L)を含むHBSS)で洗浄した。「飢餓培地」を吸引後、新鮮な100 μLの「飢餓培地」を各ウェルに添加した。この段階を、細胞単層が乾燥しないように十分速やかに行うことが重要である。次にプレートを5% CO2を含む加湿インキュベーター内で35〜37℃で一晩インキュベートした。インキュベート後、単層が乱れないように注意しながら「飢餓培地」をウェルから吸引した。次に、約100 μLの「刺激培地」を個々の単層に添加し、単層が乾燥しないように再び速やかに処理を行った。
【0104】
次に、既に説明された方法とは異なる方法で、10 μLの患者溶液、対照溶液、およびTSH標準溶液を適切な細胞に添加した。TSH標準およびIgG試料は希釈液(HBSS-NaCl+222 mMショ糖)で希釈した。TSH標準は、0、10、100、1000、および5000 μIUで試験した。患者試料は10 mg タンパク質/mlの濃度に希釈してアッセイ法に用いた。「刺激培地」は粘張なので、懸濁液を十分混合することが重要であった。混合が適切になされたことは、単層を顕微鏡で観察して確認された。このプレートを4時間35〜38℃で、5% CO2加湿インキュベーター内でインキュベートした。培地を各ウェルから慎重に吸引し、150 μLの溶解溶液(lysis solution)(Promega)を各ウェルに添加した。溶解溶液は、25 mM Tris-リン酸、pH 7.8、2 mM ジアミノシクロヘキサン四酢酸(CDTA)、2 mM ジチオスレイトール(DTT)、10% グリセロール、および1% Triton X-100を含むものを用いた。次にプレートを30分間室温でインキュベートして単層を溶解させた。溶解後、各ウェルをかきとり、ピペットの先端でかきまぜた。次に25 μLの溶解物を各ウェルから除き、ルミノメーターチューブ(12×75 mm、ポリプロピレン製)に移した後に50 μLのルシフェラーゼ基質(Promega)を添加した。このチューブを1〜2秒間ボルテックスし、ディレイ(delay)5秒、リード(read)10秒に設定したルミノメーターでRLU/秒値を決定した。正味の平均を得るため、「0 TSH」(負の対照)の試料の平均を、すべての試験平均値から差引いた。
【0105】
実施例3
IgG試料の調製
この実験では、本発明の方法の試験用に患者のIgGを調製した。周知で特徴が明らかな、未治療グレーブス病患者38名の凍結乾燥状態のIgG試料が、チョウ(B.Y. Cho)博士(ソウル国立大学医学部内科、韓国ソウル)の好意で供与された。試料の大半は、CHO-R細胞およびFRTL-5細胞を用いた標準的な方法で過去に試験されていたので、試験結果は35の試料については既知であった。
【0106】
凍結乾燥試料を調製する際は、当技術分野で周知のタンパク質A-セファロースCL-4Bカラムを用いてIgGをアフィニティー精製した後に、100倍容量の滅菌水で4℃の温度で透析を行った。透析用の水は2日間にわたり8時間毎に交換した。変性タンパク質を1500×gで15分間4℃で遠心して除去した後に、IgGを凍結乾燥し、本明細書に記載された実験で使用するまで-20℃で保存した。
【0107】
一部の実験では、精製した未治療グレーブス病患者のIgGを通常の血清(実施例7で説明される甲状腺機能が正常な血清)で希釈し、後述するCHO-Rlucアッセイ法を用いてアッセイを行った。
【0108】
実施例4
CHO-Rlucアッセイ法
この実験では、エバンス(Evans)らの文献(Evansら、J. Clin. Endocrinol. Metabol.、84:374 [1999])に記載された方法でCHO-Rluc細胞の能力を評価した。実施例2に記載された方法で調製された96ウェルマイクロタイタープレートで用いられた24ウェルの細胞単層由来の培地を吸引して、10%の活性炭処理済みウシ血清(Sigma)を含む100 μLのHam's F-12培地と交換し、35〜37℃で5% CO2を含む加湿雰囲気中で一晩インキュベートした。
【0109】
次に、濃度範囲(例えば、0、10、100、および1000)に希釈した10 μLのウシTSH標準、およびグレーブス病患者のIgG(活性炭処理済みウシ血清中に10 mg タンパク質/mlの濃度になるように溶解した)をそれぞれ4ウェルに添加した。各ウェルの懸濁液を混合し、プレートを4時間35〜37℃の温度で5% CO2を含む加湿雰囲気中でインキュベートした。次に培地を各ウェルから吸引し、150 μLの溶解緩衝液(Promega、上述)を各ウェルに添加した。次にプレートを室温で30分間インキュベートし、ウェル内で細胞を溶解させた。次に25 μLの各溶解物を、12×75のポリエチレン製ルミノメーターチューブに移し、これに50 μLのルシフェラーゼ基質(Promega)を添加後、すぐに混合し、ディレイ5秒、リード10秒に設定したルミノメーターで判定した。ルミノメーターの読み出しから、相対的な光単位/秒(RLU/秒)を得た。負の、または「ゼロ」のTSH標準値を個々の読み値から差引いた。一つの試行では、ゼロμIU/ml TSI標準の正味の平均は68,011 RLU/秒であり、10 μIU/μlを含む試料の結果は4031 RLU/秒であり、1000 μIUを含む試料の結果は222,801 RLU/秒であり、あるグレーブス病患者のIgG試験試料の結果は-384 RLU/秒(試料#1)であり、別のグレーブス病患者のIgG試験試料(試料#9)の結果は-3012 RLU/秒であった。
【0110】
グレーブス病患者のIgG試料#1および試料#9は、標準的なFRTL-5細胞およびcAMP RIAを用いたアッセイ法で試験済みである。cAMPアッセイ法では、FRTL-5細胞について153より大きい値は、TSIの存在が陽性であるとみなされる。試料#1のFRTL-5細胞のcAMP値は212であり、試料#9のcAMP値は803であった。同じ試料(#1と#9)のCHO-R値はそれぞれ116と1733であり、CHO-R値が173より大きいアッセイ系では、グレーブス病が陽性であるとみなされる。したがって以上の結果は、グレーブス病を検出する際に異なる細胞株を対象に得られた結果には食い違いがあることをはっきり示している。実際にエバンス(Evans)らの方法を用いると、両IgG試料について負の結果が得られ、ウシTSHに対する反応が極めて良好であるという事実があるにもかかわらず、CHO-Rlucを用いる系がヒトTSIの検出に有用でないことを示している。
【0111】
また、CHO-Rluc細胞が、活性炭処理済みウシ血清を含む培地中に24時間かけて定着すると(すなわちコンフルエントになると)細胞はウェルの底に単純に結合するが、正常FBSを用いたときの状況とは異なり、インキュベート中に増殖せず、コンフルエントにならないことが本発明の開発中(後述)に明らかとなった。したがって、この驚くべき結果は、培地中における活性炭処理済み血清の使用が、5H培地中におけるFRTL-5細胞のインキュベーションにある程度似た、飢餓状態を細胞に招くことを示している。
【0112】
一部の実験では、精製し、正常血清で希釈した未治療のグレーブス病患者のIgGを対象にCHO-Rlucアッセイ法(PEG使用)で試験が行われた。IgG #10 (2 mg/ml)ではRLU/秒値は131,461であり、IgG #15 (2 mg/ml)ではRLU/秒値は180,327であり、IgG #27 (5 mg/ml)ではRLU/秒値は179,777であり、またIgG #32 (5 mg/ml)ではRLU/秒値は112,627であった。以上の結果は、CHO-Rlucアッセイ法が、血清存在下でTSIを測定できることをはっきり示している。
【0113】
実施例5
培地組成の開発
既に説明した実験に関しては、さまざまな培地組成の作用は、ウシおよびヒトのTSIの測定におけるCHO-Rluc細胞との使用に関して調べられた。この実験では、さまざまな培地組成を、bTSH標準、およびグレーブス病患者血清から抽出したIgGを用いて、CHO-Rlucアッセイ法における「飢餓」段階および「刺激」段階について試験が行われた。
【0114】
この実験では、96ウェルマイクロタイタープレート(上述)のウェル内に含まれる細胞単層がコンフルエントとなった時点で、「成長培地」を吸引除去し、100 μLの「飢餓培地」を各単層に添加した。次にこのプレートを16〜24時間35〜37℃で、5% CO2を含む加湿雰囲気中でインキュベートし、細胞を飢餓させる、または調子を整えた。次に「飢餓培地」をウェルから吸引した。
【0115】
このアッセイ法を行う際に、10 μLの患者検体IgG、bTSH標準、およびIgG対照(正常血清およびグレーブス病患者の血清)を単層の3か所に添加した。この懸濁液を各ウェル内で混合し、上記の条件で4時間インキュベートした。次に液体を各単層から吸引除去し、150 μLの溶解緩衝液(Promega、上述)を各ウェルに添加した。プレートを室温で30分間インキュベートして単層中の細胞を溶解した。
【0116】
TSH標準またはTSH受容体に対する抗体によって生じた細胞刺激の量を測定するために、細胞溶解液中のルシフェラーゼを、25 μLの溶解物を、50 μLの基質溶液(Promega)を添加しておいたルミノメーターチューブに添加することで測定した。懸濁液を混合した後に、ディレイ5秒、リード10秒に設定したルミノメーターで値を読み、各試料のRLUを決定した。
【0117】
TSIまたはTSHで刺激する細胞を用いる際には、「飢餓培地」を吸引除去して100 μLの「刺激培地」を各ウェルに添加した。この「刺激培地」は、222 mMのショ糖を含むHBSS-NaClとした。下の表は、HBSS-NaCl+222 mM ショ糖および標準HBSSの各組成を比較した結果を示す。
【表1】
HBSS培地組成の比較
Figure 0004838478
【0118】
「刺激培地」の組成は、FRTL-5細胞およびCHO-R細胞を用いるTSIの測定に一般的に用いられる組成である。
【0119】
さまざまな「飢餓培地」の組成を試験した実験の結果を以下の表に示す。これらの実験では、HBSS-NaCl+222 mMショ糖の「刺激培地」を用いた。表2に示すように、20 mMショ糖を加えた標準HBSSの場合、最高のシグナル対ノイズ比率(すなわち、バックグラウンドが最も低く、グレーブス病患者のIgGの値が最も高い)が得られた。
【表2】
さまざまな「飢餓培地」のRLU/秒の結果
Figure 0004838478
*CHO GMは、10% FBSを含むCHO「成長培地」を示す。
**CHO Char.は、10%の活性炭処理済みウシ血清含有CHO「成長培地」を示す。
【0120】
実施例6
PEGの使用
PEGは、反応速度を支持または促進するためのインビトロにおける抗原/抗体反応に用いることができるので、「刺激培地」にPEGを含めた試験を実施した。この化合物は抗原/抗体複合体のオフ速度(off-rate)または解離を低下させる場合があるので、本発明の方法におけるPEGの使用を試験した。
【0121】
HBSS-NaCl-ショ糖を溶媒とする12% PEG-8000(平均分子量8,000)を用いた予備的な結果では、細胞間の空間が広い単層が生じた。このような見かけ上の浸透圧ストレスを減少させるため、HBSS-NaCl+111 mMショ糖を溶媒とする6% PEG-8000を試験した。この実験では、最高の結果を生じる「飢餓培地」(標準HBSS+20 mMショ糖)を使用した。この結果を表3に示す。
【表3】
PEGを添加/非添加時の「刺激培地」のRLU/秒の結果
Figure 0004838478
【0122】
表3に示すように、6% PEG-8000を使用すると、グレーブス病患者のIgGと同様にbTSHの添加に応じてCHO-Rluc細胞における発光シグナルが有意かつ実質的に促進された。
【0123】
「刺激培地」中のPEG-8000の最適濃度を決定するために追加の実験を行った。FRTL-5 cAMPの値が957であるグレーブス病患者の試料(グレーブス病患者IgG #20)の正味を表4に示す。この表からわかるように、6% PEGのときにグレーブス病のTSabの最大シグナルが得られた。
【表4】
さまざまなPEG濃度におけるRLU/秒の結果
Figure 0004838478
【0124】
後の実験では、「飢餓培地」は20 mMショ糖を含む必要がないことが明らかとなった。これは、ショ糖を添加または非添加時で得られた結果に統計学的に有意な差が認められなかったことによる。
【0125】
また、本発明のアッセイ法が、甲状腺刺激免疫グロブリンを用量依存的に測定可能であることを示す実験を行った。この実験では、3名のグレーブス病患者のIgG試料(#6、#11、および#16)を試験した。3倍に段階希釈した溶液を、6% PEG-8000を含む「刺激培地」を用いて、上記の方法で調製した。この結果を図1に示すが、希釈段階で直線性があることがわかる。IgG試料を10 mg/mlのストックから調製した後に、未希釈のもの、また0.3333、0.1111、0.0371、0.0123、および0.0041倍(すなわち3.333 mg/mlとなるように、またその後に3倍希釈して1.111 mg/mlとなるように)に段階希釈(3倍希釈)したものを試験した。
【0126】
IgG試料#6のFRTL-5値は2080であり、IgG試料#11のFRTL-5の値は4453であり、またIgG試料#16では830であった。下の表に各試料について得られた結果を記す。相関係数(r)はIgG試料#6について0.857であり、試料#11について0.858、試料#16について0.995であった。
【表5】
グレーブス病患者のIgG検体の用量反応(希釈)曲線*
Figure 0004838478
*すべての値の単位はRLU/秒である。
【0127】
実施例7
PEGを用いた別のプロトコール
この実験では、PEGを用いた別のプロトコールを試験した。最初にCHO-RLuc細胞の凍結保存用バイアルを解凍し、「成長培地」で希釈し(各細胞バイアルに2.5 mlの培地を添加)、100 μLの細胞懸濁液を、既に記載した方法で調製した96ウェルマイクロタイタープレートのゼラチンコートした24ウェルにそれぞれ添加した。このプレートを20〜24時間、35〜37℃の温度で5% CO2加湿雰囲気のインキュベーター内でインキュベートした。こうすることで、緩くコンフルエント状態となった単層が得られた。
【0128】
「成長培地」を除き、単層を100 μlの「飢餓培地」(Ca++およびMg++を添加した通常のHBSS)で洗浄し、最後の100 μlを各単層に添加した後、上述の条件で一晩インキュベートした。インキュベート後に「飢餓培地」を除き、6% PEGを含む100 μlの「刺激培地」(上述)を各単層に添加した。次に10 μlの標準および試料をそれぞれウェルに分注した(3回)。他の容量(例えば、25 μl、50 μl、および75 μl)について試験したところ、得られた値は、10 μlで得られた値と実質的に同等であった。したがって、試料および試薬を節約するために、また一部の血清試料中に含まれる物質に干渉する可能性のある濃度を最小とするために少量を使用した。
【0129】
ウェルの内容物を混合し、上述の通りに単層を4時間インキュベートした(刺激段階)。培地を各ウェルから除き、150 μlの溶解溶液(上述)を各ウェルに添加した。この単層を室温で30分間静置して溶解させた。次に25 μlの各溶解物を個々のルミノメーターチューブに移した。50マイクロリットルのルシフェラーゼ基質(上述)を各チューブに添加し、内容物を混合し、チューブの示す値を、ディレイ5秒、リード10秒に設定したルミノメーターで直ちに読み取った。
【0130】
甲状腺機能が正常な血清の正常範囲を決定する実験では、参照実験施設から得た24の検体を対象に、上述のCHO-Rlucアッセイ法で処理を行った。この血清については甲状腺機能は正常であり、どの試料についても甲状腺試験は行われなかった。甲状腺機能が正常な24の試料について平均(55,334 RLU/秒)および標準偏差(1 SD=7,434 RLU/秒)の値が得られた。この結果を図6に示す。次にSD値に3を乗じ、正常な非グレーブス病の値のカットオフ値77,636 RLU/秒を得た。このカットオフ値は正常集団の99%を越える範囲を含む。これより大きな値はTSI陽性とみなした。
【0131】
別の一連の実験では、TSIについてcAMP RIAおよびFRTL-5細胞を用いた民間の部外者には分からない試験室で試験済みの17名の患者グループの検体を、上述の手順でCHO-Rluc細胞を用いて試験された。FRTL-5の試験結果から、16名の患者試料がTSI陰性を示すことがわかった(すなわち陽性は1名のみ)。FRTL-5/cAMPアッセイ法(258%または1.98×カットオフ値、アッセイ法のカットオフ値は130%)で同定された一つの陽性検体は、図7に示すように、77,636 RLU/秒の2.45×カットオフ値に基づくCHO-Rlucアッセイ法(190,691 RLU/秒)でも同様に陽性であった。FRTL-5/cAMPアッセイ法で陰性結果(正常)を示した患者16名の検体のCHO-Rluc値は、同アッセイ法の正常範囲を決定するために用いた24の正常血清で得られた結果と良好に一致することが判明した(図6参照)。
【0132】
実施例8
CHO-Rluc法と標準法との比較
この実験では、6% PEG-8000を含む「刺激培地」を用いる本発明の方法を、チョウ(Cho)博士から入手した35の未治療グレーブス病患者のIgG検体のルシフェラーゼ値を得るための標準HBSS含有「飢餓培地」および「刺激培地」を用いた方法と比較した。本発明の方法で用いられた同じIgG試料を用いてFRTL-5およびCHO-R細胞を対象にチョウ博士によって得られたcAMP値を、CHO-Rとルシフェラーゼを用いて得られた結果と比較した結果を図2、3、および4に示す。図5は、bTSHに対するルシフェラーゼの反応に直線性があることを示している。
【0133】
図2は、CHO-Rlucルシフェラーゼで得られた結果と、FRTL-5 cAMPで得られた結果の比較を示す。この図から、二つの方法に極めて良好な相関があることがわかる。図3は、CHO-Rlucルシフェラーゼで得られた結果と、CHO-R cAMPで得られた結果との比較を示す。CHO-R CAMPのカットオフ値は173であった。このカットオフ値に満たない値は以下の通りであった(CHOluc RLU/秒):110(219,913)、113(14,434)、116(25,373)、152(84,493)、156(7576)、および161(61,321)。この図からわかるように、CHO-R cAMPの結果の範囲は、CHO-Rluc値と比較して比較的狭い。これは、CHO-R cAMPで得られた結果をFRTL-5 cAMPで得られた結果と比較した図4でも示されている。CHO-R値は173であった。FRTL-5のカットオフ値は153であった。カットオフ値に満たない値は以下の通りであった(FRTL-5値):110(830)、113(283)、116(212)、152(1100)、156(388)、および161(335)。IgG対照(ICN)の平均+/-SD値は、図2に示す試験では472+/-4015であった(n=8)。
【0134】
図5は、CHO-Rluc細胞の対bTSH反応に直線性があることを示している。この実験ではbTSHの希釈物が試験された。得られたRLU/秒の値を表6に示す。
【表6】
bTSH希釈物について得られた結果
Figure 0004838478
【0135】
bTSHに対する反応に直線性および感受性があることは、TSH受容体に対する阻止抗体(例えば、TSH受容体をブロックすることで甲状腺ホルモンの産生および放出を妨げて甲状腺機能低下を生じる、萎縮性甲状腺炎および橋本甲状腺炎の患者の自己抗体)の検出に有用であることを証明していると考えられる。この図はまた、CHO-R細胞株が、グレーブス病患者の血清由来のTSIに対して、FRTL-5細胞株ほど感度が高くない理由を少なくとも部分的に説明している。以上の結果では、相関係数(r)は0.9925であった。3つのS.D.(標準偏差)感度は1.3 μIU TSH/mlであった。
【0136】
実施例9
免疫応答のモニタリング
この実験では、ワクチン受容者の免疫応答の測定およびモニタリングが行われる。本発明が制限されることは意図されていないが、この実施例では、単純ヘルペス(HSV)ワクチンに対する被験者の免疫応答のモニタリングについて説明する。
【0137】
ワクチンの投与の前に、血清試料(免疫前血清)を被験者から採取して、ベースラインまたは対照として使用し、また試験を実施するまで凍結保存する。血清試料は、ワクチン投与後の定期的な間隔(例えば、ワクチン接種後の1〜2週、1か月、2か月など)をおいた時点でも採取する。必要に応じて血清を解凍し、中和抗体の有無および量(力価)を決定するアッセイ法に用いる。血清を段階希釈し、既知量のHSVと混合する。これらの試料を、2 mM グルタミン、2% FBS、およびPEG(例えば6% PEG 8000)を含むHBSSを含むイーグルMEM培地を含む希釈液で希釈する。しかし、対象のウイルスおよびアッセイ系に適切な、さまざまな濃度および種類のPEGを含む希釈物を含む他の希釈物が本発明で使用可能であることも考えられる。このような試料を、HSV感染時にβ-ガラクトシダーゼなどの酵素を産生する能力をもつ細胞(例えば ELVIS(商標)細胞、Diagnostic Hybrids)を含む細胞単層に添加する。標準的な細胞培養条件で一晩インキュベートした後に、単層を溶解し、色素を生じる方法、または光を発する方法で酵素活性を測定する。
【0138】
ワクチンに対する陽性反応は、試料に含まれるHSVを中和するワクチン接種後の血清の最も低い希釈率によって示される(すなわち、免疫前対照と比較して低いOD値または発光値で示される)。
【0139】
以上を要約すると、本発明には従来技術に対して数多くの進展および利点がある。これには、使いやすさ、信頼性の高さ、感度の高さ、特異性の高さ、優れた対費用効果、および再現性の高さを伴う放射能の使用の回避が含まれる。
【0140】
上記の明細書で言及されたすべての出版物および特許は、参照として本明細書に組み入れられる。本発明の記載された方法および系のさまざまな修正および変更が、本発明の範囲および精神を逸脱しないことは当業者には明らかである。本発明は、特定の好ましい態様を対象に記載されているが、請求される発明が、このような特定の態様に過度に制限されるべきではないことが理解されるべきである。実際には、診断法、細胞培養法、および/または関連する分野に精通した者に明らかな、本発明を実施するに際して記載された様式のさまざまな修正は、先に記載の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 6% PEG-8000を含む「刺激培地」を用いるアッセイ法における3名のグレーブス病患者のIgG試料(未治療のグレーブス病患者に由来するもの)の3倍段階希釈液で得られた結果を示す。
【図2】 未治療グレーブス病患者35名に由来するIgGについて、CHO-Rlucを対象にルシフェラーゼを用いた方法で得られた結果と、FRTL-5を対象にcAMPに着目した方法で得られた結果との比較を示す。
【図3】 未治療グレーブス病患者35名に由来するIgGについて、CHO-Rlucを対象にルシフェラーゼを用いた方法で得られた結果と、CHO-Rを対象にcAMPに着目した方法で得られた結果との比較を示す。
【図4】 未治療グレーブス病患者35名に由来するIgGについて、CHO-Rを対象にcAMPに着目した方法で得られた結果と、FRTL-5を対象にcAMPに着目した方法で得られた結果との比較を示す。
【図5】 CHO-Rluc細胞の対bTSH反応に直線性があることを示す。
【図6】 FRTL-5細胞(LCA TSI検体の10 μlの試料)を用いた、既知のTSIに関するある試料群で得られた結果を示す。
【図7】 正常試料(AML「正常」検体の10 μl)の試料群で得られた結果を示す。

Claims (13)

  1. 以下の段階を含む、被験試料に含まれる甲状腺刺激自己抗体の有無を検出する方法:
    a)以下を提供する段階:
    i)CHO-Rluc細胞、
    ii)標準ハンク平衡塩類溶液(Hank's Balanced Salt Solution(HBSS))およびHBSS+20 mMショ糖からなる群から選択される飢餓培地、
    iii)甲状腺刺激自己抗体を含むと考えられる被験試料、および
    iv)HBSS−NaCl緩衝液、111 mMショ糖、およびポリエチレングリコールを含む刺激培地
    b)該細胞を該飢餓培地に一晩暴露させる段階であって、飢餓細胞を産生させる段階;
    c)該飢餓細胞を該刺激培地および該被験試料に暴露する段階;ならびに
    d該刺激培地に暴露された該飢餓細胞を用いて甲状腺刺激自己抗体の有無を検出する段階。
  2. 検出する段階がルミノメーターを用いることを含む、請求項1記載の方法。
  3. 検出する段階が、被験試料の非存在下の場合と較べた、被験試料の存在下で接触させた細胞における増加した環状アデノシン一リン酸(cAMP)レベルを検出することを含む、請求項1記載の方法。
  4. 刺激培地が、0.144 g/L CaCl 2 、0.373 g/L KCl、0.060 g/L KH 2 PO 4 、0.048 g/L MgSO 4 、0.097 g/L Na 2 PHO 4 、1.0 g/L D-グルコース、76 g/L ショ糖、4.77 g/L HEPES、および10 g/L ウシ血清アルブミンを含む、請求項1記載の方法。
  5. ポリエチレングリコールが、8,000の平均分子量を有する、請求項1記載の方法。
  6. ポリエチレングリコールが、2%〜10% w/vの濃度を有する、請求項1記載の方法。
  7. ポリエチレングリコールが、6% w/vの濃度を有する、請求項1記載の方法。
  8. 検出する段階が、被験試料の非存在下の場合と較べた、被験試料の存在下で接触させた細胞による増加したルシフェラーゼ遺伝子の発現を検出する段階を含む、請求項1記載の方法。
  9. 細胞が、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を含む、請求項1記載の方法。
  10. 甲状腺刺激自己抗体を検出する段階が、被験試料の非存在下の場合と較べた、被験試料の存在下で接触させた細胞による増加した該レポーター遺伝子の発現を測定する段階を含む、請求項9記載の方法。
  11. 被験試料が、ヒト試料からの免疫グロブリンG(IgG)を含む、請求項1記載の方法。
  12. ヒト試料が、グレーブス病と考えられる患者に由来する、請求項11記載の方法。
  13. ヒト試料が、グレーブス病でないと考えられる患者に由来する、請求項11記載の方法。
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