「連続変数方式量子鍵配布プロトコルにおける実施形態」
図1は、第1の実施の形態としての量子暗号通信装置100の構成を示している。この量子暗号通信装置100は、連続変数方式量子鍵配布プロトコルに対応している。この量子暗号通信装置100は、送信側通信端末101と、受信側通信端末102と、これら2つの通信端末を結ぶ光ファイバ等の通信路103からなっている。
受信側通信端末102は、レーザ光源121、サーキュレータ122、ホモダイン検出器123、分岐比1対1のカプラ124、位相変調器125、遅延用ファイバ126および偏光カプラ127を有している。ここで、カプラ124は光分岐部を構成し、位相変調器125は第1の位相変調器を構成し、遅延用ファイバ126は遅延器を構成し、偏光カプラ127は第1の光送出部および光分離部を構成し、ホモダイン検出器123は通信情報取得部を構成している。また、カプラ124から位相変調器125を介して偏光カプラ127に至る光路は第1の光路を構成し、カプラ124から遅延用ファイバ126を介して偏光カプラ127に至る光路は第2の光路を構成している。
送信側通信端末102は、音響光学素子111、位相変調器112およびファラデーミラー113を有している。音響光学素子111は光減衰部、周波数シフト部および第2の光送出部を構成し、位相変調器112は第2の位相変調器を構成している。
この量子暗号通信装置100を用いることで、例えば、4状態の位相変調された微弱コヒーレント状態を用いる方式(第1の方式)、任意のコヒーレント状態と任意の位相方向で測定する方式(第2の方式)、ガウス変調したコヒーレント状態を用いる方式(第3の方式)によるQKD(量子鍵配布プロトコル)を行うことが可能である。なお、第1の方式は、例えば、「特開2005−286485号公報」等に記載されている。また、第2の方式は、例えば、「特開2006−109265号公報」等に記載されている。また、第3の方式は、例えば、「F. Grosshans, G. V. Assche, J. Wenger, R. Tualle-Brouri, N. J. Cerf,and P. Grangier, Nature, 423, 238 (2003)」等に記載されている。
以下、量子暗号を適用した通信処理の動作シーケンスに従って、各構成部における処理の詳細を説明する。受信側通信端末102のレーザ光源121で発生するパルス光が、通信路103を介して送信側通信端末101に送信され、そのパルス光が再度通信路103を介して受信側通信端末102に戻ってくるという順番で動作するので、その順番に従って説明する。
受信側通信端末102のレーザ光源121から出射したパルス光は、サーキュレータ122を通過し、分岐比が1対1のカプラ124へ入射する。サーキュレータ122は、レーザ光源121からの光がカプラ124へ出力され、カプラ124から戻ってきた光がホモダイン検出器123へ出力されるように光路制御を実行する。
レーザ光源121から出射したパルス光は、カプラ124において、パルス光P1と、パルス光P2とに分岐される。カプラ124で分岐されたパルス光P1は、位相変調器125を介して偏光カプラ127に入射される。ただし、このときには、位相変調器125は動作させない。一方、カプラ124で分岐されたパルス光P2は、遅延ファイバ126を介して偏光カプラ127に入射される。
以下、この実施の形態においては、パルス光P1を信号光とし、パルス光P2を参照光として説明する。しかし、パルス光P1を参照光とし、パルス光P2を信号光とする構成も可能である。また、遅延ファイバ126を位相変調器125側の光路上に設置する光学系も可能である。
パルス光P1(以下、「信号光P1」という)およびパルス光P2(以下、「参照光P2」という)は、偏光カプラ127の入射時に、一方が水平偏光であるとき他方は垂直偏光である設定となっている。例えば、信号光P1は水平偏光とされ、参照光P2は垂直偏光とされる。信号光P1、参照光P2は偏光カプラ127を通して通信路103に入力される。ただし、遅延ファイバ126により、信号光P1は、参照光P2より先に、通信路103に入力される。図では、受信側通信端末102から送信側通信端末101へ向かう信号光P1、参照光P2を実線矢印で示し、送信側通信端末101から受信側通信端末102へ戻る信号光P1、参照光P2を点線矢印で示している。
受信側通信端末102から送られてくる信号光P1、参照光P2は、通信路103から送信側通信端末101に入射される。送信側通信端末101において、通信路103から入射された信号光P1、参照光P2は、音響光学素子111、位相変調器112、ファラデーミラー113の順にたどる。そして、これら信号光P1、参照光P2は、ファラデーミラー113による偏光回転、反射を経た後、位相変調器112、音響光学素子111を再び通過して、当該音響光学素子111から通信路103に出射される。
この送信側通信端末101において、信号光P1は、音響光学素子111により減衰されると共に、位相変調器112により通信情報に基づいて位相変調される。上述の第1、第2の方式では、信号光P1は、出射時の平均光子数が、例えば1個程度になるように音響光学素子111により減衰される。また、上述の第1の方式では、信号光P1は、パルス毎に、φA∈{0,π/2,π,3π/2}の中からランダムに1つが選択されて、位相変調器112により位相変調される。また、上述の第2の方式では、様々なプロトコルが存在する。例えば、3状態3位相方向の測定を行うプロトコルでは、信号光P1は、パルス毎に、φA∈{0,2π/3,4π/3}中からランダムに1つが選択されて、位相変調器102により位相変調される。
また、上述の第3の方式では、パルス毎に、ガウス分布(平均値は0、 分散は適切な値)に従って、直交位相振幅座標x,pの各軸の値が選択される。そして、信号光P1は、出射時の平均光子数が、x2+p2となるように音響光学素子111により減衰される。また、信号光P1は、位相変調器112により、パルス毎に、tan−1(p/x)の位相変調が行われる。
また、送信側通信端末101において、信号光P1および参照光P2は、音響光学素子111により、その周波数がシフトされる。上述したように、音響光学素子111は、光減衰部および周波数シフト部を構成している。
図2は、音響光学素子111の具体的な構造を示している。この音響光学素子111は、音響光学結晶111aに振動子111bが接着した構成となっている。図2は、振動子111bに電気信号(周波数信号)が印加されることで、音響光学結晶111a内に音響波が発生し、当該音響光学結晶111a内に屈折率の疎密が発生した状態を示しており、当該音響光学結晶111aへの入射光が、音響波による屈折率変化により0次回折光と1次回折光に分岐している。
図2に示す構造の音響光学素子111では、振動子111bに印加される電圧信号の振幅レベルの変化に対応して1次回折光のレベルが変化する。したがって、この音響光学素子111を光減衰部として機能させることができる。
また、図2に示す構造の音響光学素子111では、光と音波の相互作用の過程で、入射光の周波数をfi、音響波の周波数をfaとするとき、1次回折光の周波数は、fd=fi+faという関係を満たすように周波数がfaだけシフトする。ただし、入射光は、音響波に近づく方向で入射している。量子的描像では、入射光子1個とフォノン1個とが消滅し、新たな回折された光子1個が発生する過程と考えられる。その場合、エネルギー保存則を満たすため、周波数が高くなるようシフトしている。そのため、図3に示すように、音響光学素子111を通過することにより、パルス光のスペクトル分布は、中心周波数fiの分布から、中心周波数fdの分布へと変化する。したがって、この音響光学素子111を周波数シフト部として機能させることができる。
送信側通信端末101から通信路103を介して戻ってくる信号光P1、参照光P2は、当該通信路103から受信側通信端末102の偏光カプラ127に入射される。送信側通信端末101のファラデーミラー113によって偏光方向が回転され、また、通信路103を往復通過することにより、通信路103上での偏光揺らぎが相殺されることで、偏光カプラ127への入射直前では、信号光P1の偏光方向は垂直となり、参照光P2の偏光方向は水平となる。
そのため、信号光P1は、受信側通信端末102に戻ってきた後、偏光カプラ127から遅延ファイバ126を介してカプラ124に入射される。また、参照光P2は、受信側通信端末102に戻ってきた後、偏光カプラ127から位相変調器125を介してカプラ124に入射される。
ここで、上述の第1、第3の方式では、参照光P2は、パルス毎に、φB∈{0,π/2}の中からランダムに1つが選択されて、位相変調器125により位相変調される。また、上述の第2の方式、例えば、3状態3位相方向の測定を行うプロトコルでは、参照光P2は、パルス毎に、φB∈{π/2,−π/6,−5π/6}の中からランダムに1つが選択されて、位相変調器125により位相変調される。
カプラ124と偏光カプラ127の間の信号光P1、参照光P2の経路については、受信側通信端末102から送信側通信端末101へ向かう場合と、逆に送信側通信端末101から受信側通信端末102へ戻った場合とで、入れ替わる。そのため、カプラ124には、信号光P1と参照光P2とが同時刻に到達する。
信号光P1と参照光P2とはカプラ124で干渉し、2つの端子から出射したパルス光は、一方はサーキュレータ122および光ファイバ128を介して、ホモダイン検出器123に入射され、もう一方は、光ファイバ129を介してホモダイン検出器123に入射される。このホモダイン検出器123では、カプラ124から出射したパルス光のそれぞれがフォトダイオードに入射され、各フォトダイオードの出力の差分がとられることで、ホモダイン検出情報、つまり通信情報が取得される。
図4は、ホモダイン検出器123の構成例を示している。図4において、ホモダイン検出器123は、2個のフォトダイオード123a,123bと、増幅器123cとにより構成されている。光ファイバ128の端子はフォトダイオード123aに接続され、光ファイバ129の端子はフォトダイオード123bに接続されている。フォトダイオード123aのアノード、フォトダイオード123bのカソードおよび増幅器123cの入力側は接続され、当該増幅器123cの出力側は図示していないデータ集積デバイスに接続されている。
図1に示す量子暗号通信装置100においては、送信側通信端末101の音響光学素子111により、信号光P1、参照光P2の周波数が高い方向にシフトされ、当該周波数シフトされた信号光P1、参照光P2が受信側通信端末102に戻ってくる。そのため、当該信号光P1、参照光P2の周波数は、光ファイバ内で発生する、周波数が同じか、低くなる後方散乱光の周波数とはずれたものとなる。これにより、信号光P1と参照光P2との干渉に対する雑音となる、参照光P2と後方散乱光との干渉を抑制できる。
ここで、光ファイバ内で発生する後方散乱光についてさらに説明する。光ファイバ内では、光の入射に伴い、様々な散乱光が発生する(「G. P. Agrawal,“非線形ファイバー光学 (日本語訳)”, 吉岡書店 (1997).」参照)。散乱光の1つに、ファイバ作製の過程で融解石英ガラス中に生じたランダムな密度揺らぎに起因する屈折率揺らぎにより散乱されるレイリー散乱がある。このレイリー散乱は、量子鍵配布装置の大きな制約となることが知られている(「D. Subacius,A. Zavriyev,and A. Trifonov,Appl. Phys. Lett.,86,011103 (2005).」参照)。
レイリー散乱光は、入射光と同じ周波数を有する。また、ファイバ中の非線形効果に基づく散乱として、誘導ラマン散乱と誘導ブリユアン散乱が知られている。量子力学的な描像では、入射場の1個の光子が消滅し、周波数が低いストークス周波数を持つ光子1個とフォノン1個が同時に生成する過程となる。この新たに発生した光子が散乱光である。前者は光学モードのフォノンが寄与するのに対し、後者は音響モードのフォノンが寄与するという違いがある。
これらの散乱光が発生すると、連続変数方式QKDでは、参照光と後方散乱光との干渉が、本来観測したい信号光と参照光の干渉に対する雑音となる。参照光は、信号光と比較して平均光子数が多いため、たとえ微弱な後方散乱光であっても、その干渉が大きな影響を及ぼす。また、単一光子方式QKDでは、後方散乱光の強度が微弱であっても、APDが反応するため、信号光検出に対する雑音となる。
また、図1に示す量子暗号通信装置100においては、送信側通信端末101の音響光学素子111は、光減衰部の他に、周波数シフト部としても機能する。そのため、信号光P1、参照光P2の周波数をシフトする周波数シフト部を設けたとしても、光路に挿入される光学素子の個数が増加しないので参照光P2の強度は低下せず、従って、受信側通信端末102における測定時の過剰雑音を増加させることがなく、量子暗号の安全性が低減することはない。
また、図1に示す量子暗号通信装置100においては、送信側通信端末101の音響光学素子111は光減衰部の他に、周波数シフト部としても機能する。そのため、周波数シフト部を設けたとしても、光減衰用の制御信号の他に周波数シフト用の制御信号が必要となることはなく、例えば、周波数シフトのための励起光が必要となることもなく、消費電力が増加し、装置も複雑となるということはない。
また、図1に示す量子暗号通信装置100においては、送信側通信端末101の音響光学素子111は光減衰部の他に、周波数シフト部としても機能する。そのため、信号光P1、参照光P2の周波数をシフトする周波数シフト部を設けたとしても、光路に挿入される光学素子の個数が増加しないので透過率変動が増すということがなく、微弱光を扱う量子暗号の性能に影響を及ぼすということはない。
なお、図4に示すホモダイン検出器123の代わりに、図5に示すように、フォトダイオード123a,123bの直前にフィルタ130a,130bを挿入した構成も考えられる。この場合、フィルタ130a,130bの特性は、レーザ光源121から発生されるパルス光、後方散乱光、および後方散乱光と参照光P2の干渉により生じた光の透過率は低く、音響光学素子111により周波数シフトされた信号光P1と参照光P2の透過率は高くなるように設定される。つまり、フィルタ130a,130bは、周波数シフトされた信号光P1と参照光P2の周波数帯域に合わせた通過帯域を持つ。この図5に示すホモダイン検出器123を用いることで、余分な雑音成分が当該ホモダイン検出器123に入射することを防ぐことができ、本来観測したい干渉のみを測定することが可能となる。
ところで、上述したように参照光P21と後方散乱光とは互いに周波数が異なるため、ヘテロダイン検波される。このヘテロダイン検波による干渉出力を軽減するための、周波数シフト量およびパルス幅の設定方法について説明する。
ヘテロダイン検波による干渉出力は、sin(2π(fd−fi)t−φ)に比例する。ここで、tは時間、φは後方散乱光が様々なタイミングで検波されることによる参照光P2との位相差である。これを、レーザ光源121から発生されるパルス光のパルス幅Tについて積算し、後方散乱光の位相差φについて平均をとると、(1)式となる。
図1に示す量子暗号通信装置100においては、上述の(1)式で表される干渉項の影響を小さくするために、fa・Tが整数または整数近辺の値となるように、レーザ光源121から発生されるパルス光のパルス幅T、音響光学素子111における周波数シフト量faが設定される。
「第1の方式を採用した量子暗号通信装置の具体例」
第1の方式、つまり4状態の位相変調された微弱コヒーレント状態を用いる方式を採用した量子暗号通信装置の具体例を説明する。図6は、第1の方式を採用した量子暗号通信装置100Aの構成例を示している。
この量子暗号通信装置100Aは、送信側通信端末1と、受信側通信端末2と、これら送信者側端末1および受信者側端末2を結ぶ光ファイバ等の通信路3とを備えている。この量子暗号通信装置100Aは、通信路3を介して、送信側通信端末1から受信側通信端末2に向けて秘密情報(通信情報)を送信する。この秘密情報は、例えば共通鍵暗号方式において使用される共有秘密鍵などの秘密情報である。
受信側通信端末2は、レーザ光源4、サーキュレータ5、分岐比が1対1のビームスプリッタ6、位相変調器7、遅延器8、ビームスプリッタ9、偏光ビームスプリッタ10、検出器12、ホモダイン検出器15およびコントローラ17を有している。また、送信側通信端末1は、ビームスプリッタ19、遅延器20、音響光学素子21、位相変調器22、ファラデーミラー24、検出器26およびコントローラ28を有している。通信路3として、光ファイバあるいは自由空間を用いることができる。自由空間を通信路3とするときは、望遠鏡を使用して通信路3における光ビームの径を大きくすることにより、光の回折の影響を小さくすることができる。
以下、量子暗号を適用した通信処理の動作シーケンスに従って、各構成部における処理の詳細を説明する。受信側通信端末2のレーザ光源4で発生するパルス光が、通信路3を介して送信側通信端末1へ送信され、その送信データが再度、通信路3を介して受信側通信端末2へ戻ってくるという順番で動作するので、その順番に従って説明する。
受信側通信端末2のサーキュレータ5は、レーザ光源4からの光がビームスプリッタ6へ出力され、ビームスプリッタ6から戻ってきた光がホモダイン検出器15へ出力されるように光路制御を実行する。
受信側通信端末2のレーザ光源4から発生したパルス光は、サーキュレータ5を介してビームスプリッタ6に入力されると、当該ビームスプリッタ6において、信号光としてのパルス光P1と、参照光としてのパルス光P2とに分岐される。
ビームスプリッタ6から位相変調器7、遅延器8、ビームスプリッタ9を経て偏光ビームスプリッタ10に進むパルス光をP1とする。また、ビームスプリッタ6から直接偏光ビームスプリッタ10に進むパルス光をP2とする。図では、受信側通信端末2から送信側通信端末1へ向かうパルス光P1,P2を実線矢印で示し、送信側通信端末1から受信側通信端末2へ戻るパルス光P1,P2を点線矢印で示している。
ビームスプリッタ6から偏光ビームスプリッタ10へ進む2つの経路は偏波保存ファイバで各部品間を接続し、パルス光P1(以下、「信号光P1」という)とパルス光P2(以下、「参照光P2」という)が偏光ビームスプリッタ10で合流し、通信路3に送出されるときには、信号光P1と参照光P2は互いに直交する直線偏光となる。
ただし、遅延器8により、信号光P1は参照光P2よりも遅れて通信路3に入力される。信号光P1と参照光P2の時間差は、レーザ光源4で発生されるパルス光のコヒーレンス時間よりも十分長くなければならず、また、受信側通信端末2の位相変調器7と、送信側通信端末1の位相変調器22および音響光学素子21の応答時間よりも長くなるように選ぶ。
送信側通信端末1では、受信側通信端末2から通信路3を経由して信号光P1、参照光P2を受信する。送信側通信端末1では、通信路3からの信号光P1、参照光P2をビームスプリッタ19に入力する。ビームスプリッタ19は、大部分の光を遅延器20側に出力し、一部の光のみを検出器26側に出力するように入力光の分岐処理を行なう。ビームスプリッタ19の分岐比は、検出器26がパルス光P2の到着をモニタできる強度となる範囲でなるべく多くの光が遅延器20側に進むように設定する。例えば、遅延器20側と検出器26側との分岐比は9対1に設定される。
検出器26は、参照光P2の到着をモニタするために用いる。検出器26としては、例えばフォトダイオードもしくはアバランシェフォトダイオードと、これに増幅器を組み合わせた構成を適用できる。フォトダイオードとアバランシェフォトダイオードには、パルス光の波長が可視域もしくは近赤外の場合にはSiを、波長が1.3μm〜1.6μmの場合にはGeもしくはInGaAsを用いることができる。なお、詳細説明は省略するが、送信側通信端末1の検出器12も、検出器26と同様に構成される。
検出器26の検出出力は、コントローラ28に供給される。図6においては、音響光学素子21が位相変調器22よりも通信路3側に設置された例を示しているが、位相変調器22を音響光学素子21よりも通信路3側に設置する構成であってもよい。
コントローラ28は、音響光学素子21と位相変調器22を制御する。音響光学素子21は、光減衰部および周波数シフト部として機能する。この場合、参照光P2に対しては、音響光学素子21における減衰率が低くなるようにし、位相変調器22は作用させない。また、信号光P1に対しては、音響光学素子21における減衰率が高くなるようにし、さらに位相変調器22により適当な位相変調処理を実行する。
また、送信側通信端末1の音響光学素子21により、当該音響光学素子21を通過する信号光P1、参照光P2は、その周波数がシフトされる。この場合、音響光学素子21は、上述の図2に示すような構成とされており、信号光P1、参照光P2の周波数は当該音響光学素子21により高くなる方向にシフトされる。
また、コントローラ28は、検出器26の検出出力に基づいて、参照光P2の到着を知ることができ、位相変調器22における信号光P1に対する位相変調の処理開始タイミング、さらには、音響光学素子21における減衰率等を制御する。これにより、位相変調器22においては、信号光P1を構成する各パルスに対して正しいタイミングで位相変調の処理を行うことができる。また、信号光P1と参照光P2とに対する減衰率を正しいタイミングで切り替えることができる。
例えば、4つの量子状態を用いる量子暗号を行う場合には、0度(0ラジアン)、90度(π/2ラジアン)、180度(πラジアン)、270度(3π/2ラジアン)の位相変調をパルス毎にランダムに加える。位相変調器22には、例えば、LiNbO3位相変調器を用いることができる。
受信側通信端末2から通信路3を介して送信側通信端末1に入力した信号光P1と参照光P2は送信側通信端末1のファラデーミラー24で反射され、受信側通信端末2に戻される。したがって、信号光P1と参照光P2は送信側通信端末1の位相変調器22と音響光学素子21とを、往復で2回通ることになる。音響光学素子21の減衰率は、信号光P1に対しては、送信側通信端末1から受信側通信端末2へ戻っていく信号光P1のパルスあたりの平均光子数が1個程度となるように設定する。
一方、送信側通信端末1から受信側通信端末2へ戻っていく参照光P2のパルスあたりの平均光子数は、受信側通信端末2側のホモダイン検出器15におけるS/N比が最適になるように選ぶ。典型的な参照光P2の強度はパルスあたりの平均光子数が106個程度である。このとき、送信側通信端末1側の音響光学素子21の信号光P1と参照光P2に対する相対的な透過率の典型的な比は、10−6:1程度となる。
ホモダイン検出法は微弱な信号光(パルスあたりの平均光子数が1個程度)と比較的強度の強い参照光(典型的な平均光子数はパルスあたり106個程度)を重ね合わせて信号光の状態を測定する方法である。送信側通信端末1から受信側通信端末2へ戻っていく信号光P1が、平均光子数が1個程度となる信号光に相当する。また、送信側通信端末1から受信側通信端末2へ戻っていく参照光P2が、平均光子数が106個程度の参照光に相当する。
送信側通信端末1の位相変調器22と音響光学素子21はともに、通信路3から送信側通信端末1へ入るパルス光の偏光状態に依存しない位相変調と減衰を与える必要があるが、パルス光(信号光P1と参照光P2)の反射にファラデーミラー24を用いることで、自動的にこの条件を満たすことができる。音響光学素子21は、ほぼ光の偏光状態に依存しない透過率となるので、信号光P1に対する音響光学素子21の1回あたりの透過率は10−3程度に設定する。
送信側通信端末1において上述の処理がなされた減衰パルス光と非減衰パルス光、すなわち減衰パルス光である信号光P1と、非減衰パルス光である参照光P2は、通信路3を介して受信側通信端末2に入力される。受信側通信端末2に入力された信号光P1と参照光P2は、偏光ビームスプリッタ10により分離される。この場合、信号光P1は直接ビームスプリッタ6へ入力される短い経路へ出力され、参照光P2はビームスプリッタ9、遅延器8および位相変調器7を通る長い経路へ出力される。図では、信号光P1、参照光P2をそれぞれ点線矢印で示している。
信号光P1と参照光P2は、送信側通信端末1に設置されたファラデーミラー24によって反射された光であるので、受信側通信端末2の偏光ビームスプリッタ10へ戻ってきた信号光P1と参照光P2は、受信側通信端末2から出力された信号光P1と参照光P2に対してそれぞれ90度偏光面が回転した直線偏光になっている。この偏光に起因して、受信側通信端末2に入力された信号光P1は、偏光ビームスプリッタ10により、直接ビームスプリッタ6へ入力される短い経路へ出力され、参照光P2は、ビームスプリッタ9、遅延器8、位相変調器7を通る長い経路へ出力される。
すなわち、受信側通信端末2の偏光ビームスプリッタ10とビームスプリッタ6の間の経路は、受信側通信端末2から送信側通信端末1へ向かう際の信号光P1、参照光P2と、逆に、送信側通信端末1から受信側通信端末2へ戻った信号光P1、参照光P2とで入れ替わることになる。この構成では、送信側通信端末1における減衰処理によって減衰された微弱な信号光P1は、受信側通信端末2では、余分な光学部品のない短い経路を通るため、受信側通信端末2に戻ってきた信号光P1の光損失を小さくすることができる。
偏光ビームスプリッタ10により分岐された、典型的なパルスあたりの光子数が106個程度である参照光P2は、ビームスプリッタ9により、遅延器8へ進むパルス光と検出器12へ進むパルス光に分かれる。ビームスプリッタ9の典型的な分岐比は9対1とされ、大部分のパルス光が遅延器8側に進むように設定される。
受信側通信端末2の検出器12の構成は、送信側通信端末1の検出器26と同様で、ビームスプリッタ9の分岐比に関しても、パルス光P2の到着が検出できる範囲でなるべく多くの光が遅延器8側に出力されるように設定する。検出器12の出力はコントローラ17に供給される。コントローラ17は位相変調器7をコントロールするほか、ホモダイン検出器15の出力を読み出すタイミングをコントロールする働きを持つ。
コントローラ17は、検出器12の検出出力に基づいて、参照光P2の到着を知ることができ、位相変調器7における参照光P2に対する位相変調の処理開始タイミングを制御する。これにより、位相変調器7においては、参照光P2を構成する各パルスに対して正しいタイミングで位相変調の処理が行われる。
位相変調器7は、遅延器8を通った参照光P2に、パルス毎に、ランダムな位相変調を与える。4つの量子状態を用いる量子暗号の場合は、0度(0ラジアン)または90度(π/2ラジアン)の位相変調をランダムに与える。
往路、すなわち受信側通信端末2から送信側通信端末1へ向かう際には、長い経路(ビームスプリッタ6→位相変調器7→遅延器8→ビームスプリッタ9→偏光ビームスプリッタ10)を通った信号光P1は、復路では短い経路(偏光ビームスプリッタ10→ビームスプリッタ6)を通る。一方、往路では短い経路(ビームスプリッタ6→偏光ビームスプリッタ10)を通った参照光P2は、復路では長い経路(偏光ビームスプリッタ10→ビームスプリッタ9→遅延器8→位相変調器7→ビームスプリッタ6)を通る。このように、信号光P1、参照光P2は、受信側通信端末2と送信側通信端末1との間の往復において全く等距離の経路を経由することになり、信号光P1と参照光P2は同時にビームスプリッタ6に到着する。
信号光P1は量子力学的な性質が現れる信号光であり、それに比べて強度の強い参照光(「局部発振光」ともいう)P2を用いて、ホモダイン検出を行うことになる。ビームスプリッタ6の2つの出力は、片方は直接、もう片方はサーキュレータ5を通って、ホモダイン検出器15へ入力される。
ホモダイン検出器15の2つの入力部には、それぞれフォトダイオードを設置する(図4参照)。フォトダイオードには、パルス光の波長が可視域もしくは近赤外の場合にはSiを、波長が1.3μm〜1.6μmの場合にはGeもしくはInGaAsを用いることができる。2つのフォトダイオードの出力は、低雑音で利得の高い増幅器に入力され、さらにこの増幅器の出力を、参照光P2の強度や増幅器の利得等を使って規格化すると、信号光P1の直交位相振幅が得られる。このホモダイン検出器15の検出情報から通信秘密情報、例えば秘密鍵を得ることができる。
図6に示す量子暗号通信装置100Aにおいては、送信側通信端末1の音響光学素子21により、信号光P1、参照光P2の周波数が高い方向にシフトされ、当該周波数シフトされた信号光P1、参照光P2が受信側通信端末2に戻ってくる。そのため、当該信号光P1、参照光P2の周波数は、光ファイバ内で発生する、周波数が同じか、低くなる後方散乱光の周波数とはずれたものとなる。これにより、受信側通信端末2のホモダイン検出器15において、信号光P1と参照光P2との干渉に対する雑音となる、参照光P2と後方散乱光との干渉を抑制できる。
図6に示す量子暗号通信装置100Aにおける、送信者側端末1と受信者側端末2との間の通信による秘密情報の共有シーケンスの概要について、図7〜図9を参照して説明する。
まず、図7に示すように、受信側通信端末2から往路の信号光P1、参照光P2が送信側通信端末1に出力され、送信側通信端末1から受信側通信端末2に復路の信号光P1、参照光P2が戻される。ここで、送信側通信端末1は、受信側通信端末2からの信号光P1、参照光P2のうち、信号光P1に位相変調器22を適用して、{0,π/2,π,3π/2}のいずれかの位相変調を施す。この位相変調系列が、図7下段の表の(b)のデータ送信側位相変調系列に相当する。
送信側通信端末1が、信号光P1に対して実行する位相変調系列(図7の下段の表の(b))はランダムに選択された系列であってよい。あるいは、予め図7の下段の表の(a)選択ビットを設定した後、その選択ビットに対応する変調を行なってもよい。なお、例えば、ビット0に対しては、0またはπ/2の位相変調とし、ビット1に対しては、π,または3π/2の位相変調が対応付けられているものとする。
このような位相変調が行なわれた信号光P1は音響光学素子21(図6参照)によって減衰された後に受信側通信端末2に戻される。なお、参照光P2は減衰されることなく受信側通信端末2に戻される。送信側通信端末1から受信側通信端末2に戻される信号光P1は微弱なパルス光(パルスあたりの平均光子数が1個程度)であり、送信側通信端末1から受信側通信端末2に戻される参照光P2は、比較的強度の強いパルス光(典型的な平均光子数はパルスあたり106個程度)である。
この戻り信号光P1と、戻り参照光P2を受信した受信側通信端末2は、位相変調器7において、例えば{0,π/2}のいずれかをランダムに選択して、参照光P2に対する位相変調を行いホモダイン検出器15において干渉を測定する。
例えば、受信側通信端末2の位相変調器7において、図7の下段の表に示す(c)の位相変調処理を実行した場合、ホモダイン検出器15においては、(d)に示すビット検出が可能となる。(d)干渉に基づく確認ビットに示すデータにおいて、[0],[1]が、干渉によるビット識別が実行できた部分であり、[×]は、ビット識別が実行できなかった部分である。ビット識別の可否は、前述したように送信側通信端末1と受信側通信端末2において実行される位相変調処理の組み合わせによって決定される。
例えば、受信側通信端末2のホモダイン検出器15では、図7の下段の表の(d)干渉に基づく確認ビットに示すデータに示すように、位相変調処理の組み合わせが所定条件を満足する場合にのみ、ビット[0]、または[1]が検出されることになる。[×]は、ビットの識別が実行できなかった部分である。
その後、受信側通信端末2は、図8に示すように、受信側通信端末2において適用した変調系列情報、すなわち図8の下段の表の(c)の情報列を送信側通信端末1に通知する。図に示す{0,0,π/2,π/2,0・・}である。
送信側通信端末1は、受信側通信端末2から受領した変調系列情報に基づいて、ビット検出に適応した正しい変調が行なわれた部位と、正しくない変調が行なわれた部位を示す情報を生成して受信側通信端末2に送信する。すなわち図8の下段の表の(e)の情報列を受信側通信端末2に通知する。図に示す{○,×,○,×,○,○・・}である。なお、図8に示す受信側通信端末2からの変調系列情報{0,0,π/2,π/2,0・・}、送信側通信端末1からの情報{○,×,○,×,○,○・・}は公開通信路を適用してよい。
次に、図9に示すように、受信側通信端末2は、検出されたビット情報列を送信側通信端末1に通知する。図に示す{0,0,1,0・・}である。一方、送信側通信端末1は、受信側通信端末2側で検出可能な位相変調を行なった部分のみのビット列情報を受信側通信端末2に通知する。図に示す{0,0,1,0・・}である。これは、図9の下段の表において、(a)の選択ビットから(e)送受信側の変調適合において[○]が設定されたもののみを選択したビット系列である。これらの通知処理も公開通信路を介して実行してよい。
通信路3において通信データの盗聴が行なわれていない場合は、図9に示すビットの相互通知処理において、すべての確認ビットが一致する。しかし、通信路3において通信データの盗聴が行なわれると、図10に示すように、ビットの相互通知処理において、相互の通知ビットのずれが発生する。これは、通信路3の盗聴により、変調状態が変化してしまうことによる。通信路3における盗聴がない場合には、相互の通知ビットのずれは発生することがない。
このようなデータ通信により、例えば共通鍵暗号方式における秘密鍵などの秘密情報を共有することが可能となる。なお、例えば秘密鍵nビットを共有する場合は、図9を参照して説明した相互通知処理のなされたビットが互いに一致することを確認した後、予め相互に通知済みの共通のビット選択処理により、上記処理によって共有できたmビット(m>n)からnビットを選択するなどの処理が実行される。
「第2の方式を採用した量子暗号通信装置の具体例」
第2の方式、つまり任意のコヒーレント状態と任意の位相方向で測定する方式を採用した量子暗号通信装置の具体例を説明する。
まず、図11を参照して、上述した第1の方式における符号化効率について説明する。図11(1)は、送信側の位相変調処理によって得られる4つの変調信号としての量子状態(コヒーレント状態)51〜54と、受信側の観測系として適用される2つの位相変調処理に対応する基底X1,71と、基底X2,72を示している。
受信側の観測系として基底(受信側適用位相変調)X1,71を適用した場合には、送信側の位相変調処理によって得られる4つの量子状態(コヒーレント状態)51〜54の中で、0度位相変調信号である量子状態51と、180度(π)位相変調信号である量子状態53の判別のみが可能となり、90度(π/2)位相変調信号である量子状態52と、270度(3π/2)位相変調信号である量子状態54の判別はできない。また、受信側の観測系として基底(受信側適用位相変調)X2,72を適用した場合には、送信側の位相変調処理によって得られる4つの変調信号である量子状態51〜54の中で、90度(π/2)位相変調信号である量子状態52と、270度(3π/2)位相変調信号である量子状態54の判別のみが可能となり、0度位相変調信号である量子状態51と、180度(π)位相変調信号である量子状態53の判別はできない。
この状態別の対応を示したのが、図11(2)の表である。図11(2)に示す表において、上段から順に、(A)データ送信側位相変調量(φA)、(B)データ受信側位相変調量(φB)、(C)検出ビットと基底の一致、不一致、(D)検出可能ビット率(基底一致率)の各データを示している。
(A)データ送信側位相変調量(φA)は、図11(1)に示す送信側の位相変調処理によって得られる4つの変調信号である量子状態51〜54のいずれか、すなわち、
0度位相変調信号である量子状態51、
90度(π/2)位相変調信号である量子状態52、
180度(π)位相変調信号である量子状態53、
270度(3π/2)位相変調信号である量子状態54、
のいずれかである。
(B)データ受信側位相変調量(φB)は、図11(1)に示す受信側の観測系として適用される2つの基底(受信側適用位相変調)、すなわち、
基底(受信側適用位相変調)X1,71、
基底(受信側適用位相変調)X2,72、
のいずれかである。
送信側で任意に4つの位相変調信号をランダムに選択し、受信側においても2つの観測系をランダムに選択した場合、図11(2)に示す8通りの組み合わせが均等に発生することになる。
図11(2)の(C)は、検出ビットと基底の一致、不一致のデータを示している。前述したように、受信側の観測系として基底(受信側適用位相変調)X1,71を適用した場合には、送信側の0度位相変調信号である量子状態51と、180度(π)位相変調信号である量子状態53の判別のみが可能となり、受信側の観測系として基底(受信側適用位相変調)X2,72を適用した場合には、送信側の90度(π/2)位相変調信号である量子状態52と、270度(3π/2)位相変調信号である量子状態54の判別のみが可能となる。
受信側で適用する観測系を受信側位相変調基底と呼ぶ。受信側においてビット値を判別可能な場合を「基底の一致」、受信側においてビット値を判別不可能な場合を「基底の不一致」とする。図から理解されるように、全8パターン中、基底一致の組み合わせは4通り、基底不一致の組み合わせは4通りである。結果として、図11(2)の(D)検出可能ビット率(基底一致率)に示すように、データ送受信側において基底が一致し、ビット値の検出可能となる確率は1/2(50%)となる。
基底の一致、不一致の態様について、図12を参照して、さらに説明する。図12(a)は、基底が一致する場合、図12(b)は基底不一致の場合の例である。図12(a1)は、基底一致の場合の送信側の位相変調量と受信側の位相変調量の組み合わせを示している。
すなわち、
受信側位相変調量:φB=π/2の場合、
送信側位相変調量:φA=π/2、3π/2
と、
受信側位相変調量:φB=0の場合、
送信側位相変調量:φA=0、π
の4通りである。
これらの場合、受信側では、図12(a2)に示すように、信号を区分して判別することができる。すなわち、判別用の信号として、得られるデータは、
φ=|φA−φB|
であり、
φ=0、またはφ=πのいずれかの検出信号を得ることで、ビット値判別が可能となる。このような場合が基底一致状態である。
一方、図12(b)は基底不一致の場合の例である。図12(b1)は、基底不一致の場合の送信側の位相変調量と受信側の位相変調量の組み合わせを示している。
すなわち、
受信側位相変調量:φB=0の場合、
送信側位相変調量:φA=π/2、3π/2
と、
受信側位相変調量:φB=π/2の場合、
送信側位相変調量:φA=0、π
の4通りである。
これらの場合、受信側では、図12(b2)に示すように、信号を区分して判別することができない。すなわち、判別用の信号として、得られるデータは、
φ=|φA−φB|
であり、
φ=π/2の検出信号のみしか得ることができず、ビット値判別が不可能となる。このような場合が基底不一致状態である。
基底不一致の場合は、送信側と受信側の共有秘密情報を構成するビット値として適用できないので、破棄されることになる。送信側と受信側の共有秘密情報を構成するビット値は、基底一致の場合のみとなる。すなわち、送信側で位相変調処理を実行して受信側に送信した信号中、最大1/2が有効情報として利用可能であるが、残りの1/2の信号が無駄になってしまうことになる。
第2の方式は、量子暗号を適用した秘密情報の通信において、送信側から受信側に対して送信する位相変調信号に無駄を発生させることなく、より多くの信号を有効情報として適用、すなわち、送信側と受信側においてより多くの情報を共有する秘密情報として適用することを可能としたものである。
第2の方式を採用した量子暗号通信装置も、上述した第1の方式を採用した量子暗号通信装置100Aと同様の構成となる。ただし、第2の方式を採用した量子暗号通信装置では、送信側通信端末1の位相変調器22および受信側通信端末2の位相変調器7における位相変調処理に、第1の方式とは異なる手法が採用される。
以下、第2の方式における位相変調処理を説明する。ここでは、量子状態として設定する位相変調量の種類の数に応じて、4状態、6状態、8状態の位相変調量を適用した量子暗号通信処理それぞれの実施例について、順次説明する。
[(1)送信側位相変調量を4状態、受信側位相変調基底を2基底とした処理例]
図6に示す量子暗号通信装置100Aにおいて、送信側通信装置1の位相変調器22と、受信側通信装置2の位相変調器7とで実行する位相変調処理の対応を、図13を参照して説明する。
図13(a)は、送信側位相変調量を4状態、受信側位相変調基底を2基底とした位相変調処理例を示す。図に示す4つの円は、送信側通信装置1の位相変調器22において実行する位相変調量に対応し、45°変調データ321、135°変調データ322、225°変調データ323、315°変調データ324の4つの変調処理対応データの量子状態(コヒーレント状態)を示している。原点から各円の中心までの距離は、表示するコヒーレント状態の平均の光子数の平方根に比例している。また、2つの円に注目した場合、円の中心と原点をそれぞれ結んでできる2直線がなす角度は、2つのコヒーレント状態の位相差を表す。また、円の大きさは量子状態の持つ揺らぎを表す。
平衡型ホモダイン検出を用いる図6の量子暗号通信装置100Aにおいて、送信側は、位相変調器22において{45°,135°,225°,315°}のいずれかの変調をかけた4種類のコヒーレント状態を送信し、受信側は、位相変調器7において{0°,90°}のいずれかの位相変調を行い、フォトダイオード、増幅器などからなるホモダイン検出器15においてホモダイン検出をおこなう。
図13(a)に示すコヒーレント状態表示について、図14を参照して説明する。レーザ光の量子状態がコヒーレント状態であり、コヒーレント状態は、以下に示すウィグナー関数と呼ばれる2次元平面上の関数で表現できる。
W(x,y)=(2/π)exp[−2(x1−X)2−2(x2−Y)2]
このとき、
α=X+iYを
コヒーレント状態の複素振幅とよぶ。
tanφ=X/Yとすれば、α=|α|eiφと書き表せる。
光パルスに位相変調を加えることは、位相φの値を変化させることに相当し、また、強度変調を加えることはαの大きさ|α|の値を変化させることに相当する。n=|α2|は、コヒーレント状態の平均光子数に相当し、パルス光に平均して含まれる光子数を示し、パルス光の強度、エネルギーを表す。
コヒーレント状態は、ウィグナー関数の等高線によって模式的に示すことができる。図14に示すように、ウィグナー関数が定義されている2次元平面において、円351は、揺らぎを考慮したある量子状態の範囲を示す等高線であり、この円351に含まれるコヒーレント状態が|α〉として示される。この円351の中心における位相は、位相=φ、原点から円351の中心までの距離は、コヒーレント状態の複素振幅の大きさ|α|であり、コヒーレント状態の平均光子数の平方根に比例している。
図13に戻り、送信側位相変調量を4状態、受信側位相変調基底を2基底とした位相変調処理例についての説明を続ける。受信側通信端末2の位相変調器7において実行する位相変調処理は、{0°,90°}のいずれかの位相変調処理である。この2つの位相変調処理は、図に示す直交軸X1,X2によって示される基底(受信側位相変調処理)に相当する。すなわち、
0°位相変調処理に相当する基底X1,311
90°位相変調処理に相当する基底X2,312
である。
本明細書では、受信側で適用する観測系を受信側位相変調基底と呼ぶ。本実施例では、受信側位相変調基底は2基底となる。本実施例は、送信側位相変調量を4状態、受信側位相変調基底を2基底とした処理例である。
なお、参考のために、図13(b)に、上述の第1の方式における位相変調処理構成を示してある。図13(a)と図13(b)を対比して理解されるように、第1の方式では、送信側の位相変調器22において{0°,90°(π/2),180°(π),270°(3π/2)}のいずれかの変調をかけた4種類のコヒーレント状態を送信し、受信側の位相変調器7において{0°,90°(π/2)}いずれかの位相変調を行い、ホモダイン検出をおこなう構成である。
しかし、本実施例の位相変調処理では、送信側は、図13(a)の各円で示すように、送信側の位相変調器22において{45°(π/4),135°(3π/4),225°(5π/4),315°(7π/4)}のいずれかの変調をかけた4種類のコヒーレント状態を送信する。受信側の位相変調器7において{0°,90°(π/2)}いずれかの位相変調を行い、ホモダイン検出器15においてホモダイン検出をおこなう。
図13(b)に示す第1の方式の位相変調処理例では、先に説明したように、基底一致の場合にのみ情報の共有が可能となり、送信側の位相変調量(φA)と受信側の位相変調量(φB)の組み合わせとして、
受信側位相変調量:φB=π/2の場合、
送信側位相変調量:φA=π/2、3π/2
と、
受信側位相変調量:φB=0の場合、
送信側位相変調量:φA=0、π
の4通りのみにおいて
情報共有が可能となり、その他の組み合わせでは、基底不一致となり情報が共有できないという状態であった。
本実施例では、受信側の位相変調量は、{0°,90°}いずれかであり、第1の方式と変わりないが、送信側の位相変調量は、{45°,135°,225°,315°}のいずれかであり、第1の方式とは異なる。
データ送信側では、送信データとして、有限個の量子状態(コヒーレント状態)として、{45°,135°,225°,315°}を設定し、これらのいずれかをランダムに選択して、選択位相変調量に基づく位相変調処理を、送信側通信端末1の位相変調器22において実行して送信する。例えば、データ送信側では、{0,1,2,3}の4種類の数値からなるランダム数列を設定し、0〜3の各数値を、{45°,135°,225°,315°}の各位相変調量に対応付けて、ランダム数列に基づいて変調量を順次決定して変調処理を行って送信するなどの処理が可能である。
一方、データ受信側では、データ送信側から送信されるデータとしての有限個のコヒーレント状態を観測する処理を行なうことになる。観測処理は、以下の(a)、(b)の処理からなる。
(a)観測系として複数の基底、すなわち位相変調量{0°,90°}の基底(受信側適用位相変調処理)を設定する。
(b)設定した複数の観測系、すなわち位相変調量{0°,90°}の基底をランダムに選択して、ホモダイン検出処理を実行する。
上述の観測処理は、受信側通信端末2の位相変調器7においてランダムに選択した複数の基底(異なる複数の位相変調処理)を適用し、ホモダイン検出による検出処理として実行される。
さらに、データ受信側は、測定態様情報として、適用した観測系、すなわち適用基底(受信側適用位相変調処理)情報をデータ送信側に通知し、データ送信側は、受信側において適用した位相変調処理に応じて、送信した複数の量子状態(コヒーレント状態)、すなわち、データ送信側で適用した{45°,135°,225°,315°}に相当する4種類の量子状態(コヒーレント状態)の各々に対して、ビット値を割り当てて、この割り当て情報をデータ受信側に通知する。
本実施例では、受信側が0°の変調量(X1軸)で測定した場合、送信側は{45°,315°}のコヒーレント状態をビット1、{135°,225°}のコヒーレント状態をビット0としてビット値を割り振る。すなわち、受信側が図13(a)に示す0°位相変調処理X1,311を適用した測定を行なった場合は、送信側は、45°変調データ321と、315°変調データ324の2つの態様のコヒーレント状態をビット1とし、残りの135°変調データ322と、225°変調データ323の2つの態様のコヒーレント状態をビット0とする。
また、受信側が90°の変調量(X2軸)で測定した場合、送信側は{45°,135°}のコヒーレント状態をビット1、{225°,315°}のコヒーレント状態をビット0としてビット値を割り振る。すなわち、受信側が図13(a)に示す90°位相変調処理X2,312を適用した測定を行なった場合は、送信側は、45°変調データ321と、135°変調データ322の2つの態様のコヒーレント状態をビット1とし、残りの225°変調データ323と、315°変調データ324の2つの態様のコヒーレント状態をビット0とする。
送信側は、受信側からの測定態様情報をデータ送信後に受け取り、受信側において適用した位相変調処理に応じて、上述のようなビット割り振りを行なう、なお、上述のビット0とビット1の割り振り例は一例であり、上述の割り振りの逆の態様での割り振り処理を行ってもよい。
このように受信側が行った測定の種類に従って、4つの状態のそれぞれに2種類のビット値を割り振るという符号化を行うことで、送信側と受信側の基底の不一致によって送信側と受信側で共有できなくなる情報、例えば、共有秘密鍵に貢献しない情報をゼロとすることができる。
図15を参照して、本発明の構成における量子暗号法における符号化効率について説明する。図15(1)は、受信側が0°の変調量(X1軸)で測定した場合の例であり、円321〜324は、送信側通信端末1の位相変調器22において実行する位相変調量に対応し、各々45°変調データ321、135°変調データ322、225°変調データ323、315d°変調データ324の4つの変調処理対応データを示している。受信側が 変調量0°で測定した場合、
45°変調データ321=ビット1
315°変調データ324=ビット1
としてビット値が対応付けられ、
135°変調データ322=ビット0、
225°変調データ323=ビット0、
としてビット値が対応付けられる。
図15(2)は、受信側が90°の変調量(X2軸)で測定した場合の例であり、この場合、
45°変調データ321=ビット1
135°変調データ322=ビット1、
としてビット値が対応付けられ、
225°変調データ323=ビット0、
315°変調データ324=ビット0
としてビット値が対応付けられる。
この状態別の対応を示したのが、図15(3)の表である。図15(3)に示す表において、上段から順に(A)データ送信側位相変調量(φA)、(B)データ受信側位相変調量(φB)、(C)共有ビット、(D)共有可能情報率の各データを示している。
(A)データ送信側位相変調量(φA)は、図15(1)(2)に示す送信側の位相変調処理によって得られる4つの変調信号、すなわち、45°変調データ321、135°変調データ322、225°変調データ323、315°変調データ324の4つの変調処理データを示している。
(B)データ受信側位相変調量(φB)は、図15(1)(2)に示す受信側の観測系として適用される2つの位相変調量、すなわち、
位相変調量=0°
位相変調量=90°
のいずれかである。
送信側で任意に4つの位相変調信号(φA=45°,135°,225°,315°)をランダムに選択し、受信側においても2つの観測系としての2つの位相変調量(φB=0°,90°)をランダムに選択した場合、図15(3)に示す8通りの組み合わせが均等に発生することになる。
(C)の共有ビットは、送信側と受信側で共有することとなるビット情報を示している。前述したように、受信側の観測系に応じてビット値の対応を変更しており、8個全ての組み合わせにおいてビット値共有を可能としている。すなわち、送信側の4種類の位相変調と受信側の2種類の位相変調による8個全ての組み合わせにおいて、ビット値の共有が可能となり、(D)に示すように共有可能情報率を100%とすることができる。
なお、受信側通信端末2では、図16に示すように、信号を区分して判別する。すなわち、判別用の信号として適用するデータは、データ送信側位相変調量(φA)とデータ受信側位相変調量(φB)の差分データ、
φ=|φA−φB|
であり、
φ=0、またはφ=πのいずれかの検出信号を得ることで、ビット値判別が可能となる。なお、図16示すように、しきい値(X0,−X0)を定め、観測した値としきい値をもとにビット値の決定および共有を行なう。
[(2)送信側位相変調量を3状態、受信側位相変調基底を3基底とした処理例]
図6に示す量子暗号通信装置100Aにおいて、送信側通信装置1の位相変調器22と、受信側通信装置2の位相変調器7とで実行する位相変調処理の対応を、図17を参照して説明する。
図17は、送信側位相変調量を3状態、受信側位相変調基底を3基底とした位相変調処理例を示す。図に示す3つの円401〜403は、送信側通信装置1の位相変調器22において実行する位相変調量に対応し、0°変調データ321、120°変調データ322、240°変調データ323の3つの変調処理対応データの量子状態(コヒーレント状態)を示している。原点から各円の中心までの距離は、表示するコヒーレント状態の光子数の平方根に比例している。また、円の大きさは量子状態の持つ揺らぎを表す。
受信側通信端末2の位相変調器7において実行する位相変調処理は、{90°,−30°,−150°}のいずれかの位相変調処理であり、この3つの位相変調処理は、図に軸として示す基底(受信側位相変調処理)421(φB=90°)、基底(受信側位相変調処理)422(φB=−30°)、基底(受信側位相変調処理)423(φB=−150°)に相当する。
平衡型ホモダイン検出を用いる図6の量子暗号通信装置100Aにおいて、送信側は位相変調器22において{0°,120°,240°}のいずれかの変調をかけた3種類のコヒーレント状態をランダムに選択して送信し、受信側は位相変調器7において{90°,−30°,−150°}のいずれかの位相変調を行い、フォトダイオード、増幅器などからなるホモダイン検出器15においてホモダイン検出をおこなう。
さらに、データ受信側は、測定態様情報として、適用した観測系、すなわち適用基底(受信側適用位相変調処理)情報をデータ送信側に通知し、データ送信側は、受信側において適用した位相変調処理に応じて、送信した複数の量子状態(コヒーレント状態)、すなわち、データ送信側で適用した{0°,120°,240°}に相当する各量子状態(コヒーレント状態)の各々に対して、ビット値を割り当てて、この割り当て情報をデータ受信側に通知する。
本実施例では、受信側が90°の変調量(X2軸)で測定した場合、送信側は{120°}のコヒーレント状態をビット1、{240°}のコヒーレント状態をビット0としてビット値を割り振る。すなわち、受信側が図17に示す90°位相変調処理軸(φB=90°)に相当する基底(受信側位相変調処理)421を適用した測定を行なった場合は、送信側は、120°変調データ402の態様のコヒーレント状態をビット1とし、240°変調データ403のコヒーレント状態をビット0とする。0°変調データ401の態様のコヒーレント状態については、検出不能、すなわち基底不一致として処理する。
また、受信側が−30°の変調量で測定した場合、送信側は{0°}のコヒーレント状態をビット1、{120°}のコヒーレント状態をビット0としてビット値を割り振る。すなわち、図17に示す−30°位相変調処理軸(φB=−30°)に相当する基底(受信側位相変調処理)422を適用した測定を行なった場合は、送信側は、0°変調データ401の態様のコヒーレント状態をビット1とし、120°変調データ402のコヒーレント状態をビット0とする。240°変調データ403の態様のコヒーレント状態については、検出不能、すなわち基底不一致として処理する。
さらに、受信側が−150°の変調量で測定した場合、送信側は{240°}のコヒーレント状態をビット1、{0°}のコヒーレント状態をビット0としてビット値を割り振る。すなわち、図17に示す−150°位相変調処理軸(φB=−150°)423に相当する基底(受信側位相変調処理)を適用した測定を行なった場合は、送信側は、240°変調データ403の態様のコヒーレント状態をビット1とし、0°変調データ401のコヒーレント状態をビット0とする。120°変調データ402の態様のコヒーレント状態については、検出不能、すなわち基底不一致として処理する。
送信側は、受信側からの測定態様情報をデータ送信後に受け取り、受信側において適用した位相変調処理に応じて、上述のようなビット割り振りを行なう。なお、上述のビット0と1の割り振り例は一例であり、上述の割り振りの逆の態様での割り振り処理を行ってもよい。
このように受信側が行った測定の種類に従って、送信側の送信した3つの量子状態中の2つに異なるビット値を割り振るという符号化を行うことで、3つの量子状態中2つが有効な共有情報として設定可能であり、送信側と受信側の基底の不一致によって送信側と受信側で共有できなくなる情報、例えば、共有秘密鍵に貢献しない情報を1/3に削減することができる。
図18を参照して、本実施例の符号化効率について説明する。図18に示す表において、上段から順に(A)データ送信側位相変調量(φA)、(B)データ受信側位相変調量(φB)、(C)共有ビット、(D)共有可能情報率の各データを示している。
(A)データ送信側位相変調量(φA)は、図17に示す送信側の位相変調処理によって得られる3つの変調信号、すなわち0°変調データ401、120°変調データ402、240°変調データ403の3つの変調処理データを示している。
(B)データ受信側位相変調量(φB)は、図17に示す受信側の観測系として適用される3つの位相変調量、すなわち、
位相変調量=90°
位相変調量=−30°
位相変調量=−150°
のいずれかである。
送信側で任意に3つの位相変調信号(φA=0°,120°,240°)をランダムに選択し、受信側においても3つの位相変調量(φB=90°,−30°,−150°)をランダムに選択した場合、図18に示す9通りの組み合わせが均等に発生することになる。
(C)の共有ビットは、送信側と受信側で共有することとなるビット情報を示している。前述したように、受信側の観測系に応じてビット値の対応を変更しており、9個の組み合わせ中、6個の組み合わせにおいてビット値の共有を可能としている。すなわち、送信側の3種類の位相変調と受信側の3種類の位相変調による9個の組み合わせ中、6個の組み合わせにおいてビット値の共有が可能となり、残りの3個の組み合わせにおいてのみ、基底不一致によりビット値の共有が不可となる。したがって、(D)に示すように、共有可能情報率を2/3とすることができる。
なお、受信側通信端末2では、先に図16を参照して説明したように、信号を区分して判別する。すなわち、判別用の信号として適用するデータは、データ送信側位相変調量(φA)とデータ受信側位相変調量(φB)の差分データ、
φ=|φA−φB|
であり、
φmod2π=π/6、またはφmod2π=5π/6のいずれかの検出信号を得ることで、ビット値判別が可能となる。なお、図16示すように、しきい値(X0,−X0)を定め,観測した値としきい値をもとにビット値の決定および共有を行なう。
[(3)送信側位相変調量を6状態、受信側位相変調基底を3基底とした処理例]
図6に示す量子暗号通信装置100Aにおいて、送信側通信装置1の位相変調器22と、受信側通信装置2の位相変調器7とで実行する位相変調処理の対応を、図19を参照して説明する。
図19は、送信側位相変調量を6状態、受信側位相変調基底を3基底とした位相変調処理例を示す。図に示す6つの円431〜436は、送信側通信装置1の位相変調器22において実行する位相変調量に対応し、0°変調データ431、60°変調データ432、120°変調データ433、180°変調データ434、240°変調データ435、300°変調データ436の6つの変調処理対応データに相当する量子状態(コヒーレント状態)を示している。原点から各円の中心までの距離は、表示するコヒーレント状態の光子数の平方根に比例している。また、円の大きさは量子状態の持つ揺らぎを表す。
受信側通信端末2の位相変調器7において実行する位相変調処理は、{90°,−30°,−150°}のいずれかの位相変調処理である。この3つの位相変調処理は、図に軸として示す基底(受信側位相変調処理)441(φB=90°)、基底(受信側位相変調処理)442(φB=−30°)、基底(受信側位相変調処理)443(φB=−150°)に相当する。
平衡型ホモダイン検出を用いる図6の量子暗号通信装置100Aにおいて、送信側は位相変調器22において{0°,60°,120°,180°,240°,300°}のいずれかの変調をかけた6種類のコヒーレント状態をランダムに選択して送信し、受信側は位相変調器7において{90°,−30°,−150°}のいずれかの位相変調量に対応する基底をランダムに選択して位相変調を行い、フォトダイオード、増幅器などからなるホモダイン検出器15においてホモダイン検出をおこなう。
さらに、データ受信側は、測定態様情報として、適用した観測系、すなわち適用基底(受信側適用位相変調処理)情報をデータ送信側に通知し、データ送信側は、受信側において適用した位相変調処理に応じて、送信した複数の量子状態(コヒーレント状態)、すなわち、データ送信側で適用した{0°,60°,120°,180°,240°,300°}に相当する各量子状態(コヒーレント状態)の各々に対して、ビット値を割り当てて、この割り当て情報をデータ受信側に通知する。
本実施例では、受信側が90°の変調量(X2軸)で測定した場合、送信側は{60°,120°}のコヒーレント状態をビット1、{240°、300°}のコヒーレント状態をビット0としてビット値を割り振る。すなわち、受信側が図19に示す90°位相変調処理軸(φB=90°)に相当する基底(受信側位相変調処理)441を適用した測定を行なった場合は、送信側は、60°変調データ432と、120°変調データ433の2つの態様のコヒーレント状態をビット1とし、240°変調データ435と、300°変調データ436の2つのコヒーレント状態をビット0とする。0°変調データ431と、180°変調データ434の2つの態様のコヒーレント状態については、検出不能、すなわち基底不一致として処理する。
また、受信側が−30°の変調量で測定、すなわち、図19に示す−30°位相変調処理軸(φB=−30°)に相当する基底(受信側位相変調処理)442を適用した測定を行なった場合は、送信側は、0°変調データ431と、300°変調データ436の2つの態様のコヒーレント状態をビット1とし、120°変調データ433、180°変調データ434の2つの態様のコヒーレント状態をビット0とする。60°変調データ432と、240°変調データ435の2つの態様のコヒーレント状態については、検出不能、すなわち基底不一致として処理する。
さらに、受信側が−150°の変調量で測定、すなわち、図19に示す−150°位相変調処理軸(φB=−150°)に相当する基底(受信側位相変調処理)443を適用した測定を行なった場合は、送信側は、180°変調データ434、240°変調データ435の2つの態様のコヒーレント状態をビット1とし、0°変調データ431と、60°変調データ432の2つの態様のコヒーレント状態をビット0とする。120°変調データ433、300°変調データ436の2つの態様のコヒーレント状態については、検出不能、すなわち基底不一致として処理する。
送信側は、受信側からの測定態様情報をデータ送信後に受け取り、受信側において適用した位相変調処理に応じて、上述のようなビット割り振りを行なう、なお、上述のビット0と1の割り振り例は一例であり、上述の割り振りの逆の態様での割り振り処理を行ってもよい。
このように受信側が行った測定の種類に従って、送信側の送信した6つの量子状態中の4つにそれぞれビット値を割り振るという符号化を行うことで、6つの量子状態中4つが有効な共有情報として設定可能である。これにより、送信側と受信側の基底の不一致によって送信側と受信側で共有できなくなる情報、例えば、共有秘密鍵に貢献しない情報を1/3に削減することができる。
図20を参照して、本実施例の符号化効率について説明する。図20に示す表において、上段から順に(A)データ送信側位相変調量(φA)、(B)データ受信側位相変調量(φB)、(C)共有ビット、(D)共有可能情報率の各データを示している。
(A)データ送信側位相変調量(φA)は、図19に示す送信側の位相変調処理によって得られる6つの変調信号、すなわち0°変調データ431、60°変調データ432、120°変調データ433、180°変調データ434、240°変調データ435、300°変調データ436、の6つの変調処理データを示している。
(B)データ受信側位相変調量(φB)は、図19に示す受信側の観測系として適用される3つの位相変調量、すなわち、
位相変調量=90°
位相変調量=−30°
位相変調量=−150°
のいずれかである。
送信側で任意に6つの位相変調信号(φA=0°,60°,120°,180°,240,300°)をランダムに選択し、受信側においても3つの位相変調量(φB=90°,−30°,−150°)をランダムに選択した場合、図20に示す18通りの組み合わせが均等に発生することになる。
(C)の共有ビットは、送信側と受信側で共有することとなるビット情報を示している。前述したように、受信側の観測系に応じてビット値の対応を変更しており、18個の組み合わせの中、12個の組み合わせにおいてビット値共有を可能としている。すなわち、送信側の6種類の位相変調と受信側の3種類の位相変調による全ての18個の組み合わせ中、12個の組み合わせにおいてビット値の共有が可能となり、残りの6個の組み合わせにおいてのみ、基底不一致によりビット値共有が不可となり、(D)に示すように共有可能情報率を2/3とすることができる。
なお、受信側通信端末2では、先に図16を参照して説明したように、信号を区分して判別する。すなわち、判別用の信号として適用するデータは、データ送信側位相変調量(φA)とデータ受信側位相変調量(φB)の差分データ、
φ=|φA−φB|
であり、
φmodπ=π/6、またはφmodπ=5π/6のいずれかの検出信号を得ることで、ビット値判別が可能となる。なお、図16示すように、しきい値(X0,−X0)を定め、観測した値としきい値をもとにビット値の決定および共有を行なう。
[(4)送信側位相変調量を8状態、受信側位相変調基底を2基底とした処理例]
図6に示す量子暗号通信装置100Aにおいて、送信側通信装置1の位相変調器22と、受信側通信装置2の位相変調器7とで実行する位相変調処理の対応を、図21を参照して説明する。
図21は、送信側位相変調量を8状態、受信側位相変調基底を2基底とした位相変調処理例を示す。図に示す8つの円421〜428は、送信側通信装置1の位相変調器22において実行する位相変調量に対応し、0°変調データ521、45°変調データ522、90°変調データ523、135°変調データ524、180°変調データ525、225°変調データ526、270°変調データ527、315°変調データ528の8つの変調処理対応データの量子状態(コヒーレント状態)を示している。原点から各円の中心までの距離は、表示するコヒーレント状態の光子数の平方根に比例している。また、円の大きさは量子状態の持つ揺らぎを表す。
受信側通信端末2の位相変調器7において実行する位相変調処理は、{0°,90°}のいずれかの位相変調処理であり、この2つの位相変調処理は、図にX1軸として示す基底(受信側位相変調処理)541(φB=0°)、図にX2軸として示す基底(受信側位相変調処理)542(φB=90°)に相当する。
原点から各円の中心までの距離は、各コヒーレント状態の平均光子数の平方根に相当するが、本実施例では、8つの変調データ中、0°変調データ521、90°変調データ523、180°変調データ525、270°変調データ527の4つの変調データの原点からの距離と、45°変調データ522、135°変調データ524、225°変調データ526、315°変調データ528の4つの変調データの原点からの距離が異なり、これらのコヒーレント状態は、異なる平均光子数に設定することが必要となる。
従って、送信側通信端末装置1では、図21に示す8つのコヒーレント状態を生成するために、光子数を変更することが必要となる。この光子数の変更は、音響光学素子21における減衰率、あるいは透過率を、変調データの種類に応じて制御することにより、達成可能である。
平衡型ホモダイン検出を用いる図6の量子暗号通信装置100Aにおいて、送信側は、位相変調器22において{0°,45°,90°,135°,180°,225°,270°,315°}のいずれかの変調をかけ、また音響光学素子21において強度(光子数)変調を施した8種類のコヒーレント状態をランダムに選択して送信し、受信側は、位相変調器7において{0°,90°}のいずれかの位相変調量に対応する基底をランダムに選択して位相変調を行い、フォトダイオード、増幅器などからなるホモダイン検出器15においてホモダイン検出をおこなう。
さらに、受信側は、測定態様情報として、適用した観測系、すなわち適用基底(受信側適用位相変調処理)情報をデータ送信側に通知し、データ送信側は、受信側において適用した位相変調処理に応じて、送信した複数の量子状態(コヒーレント状態)、すなわち、データ送信側で適用した{0°,45°,90°,135°,180°,225°,270°,315°}に相当する各量子状態(コヒーレント状態)の各々に対して、ビット値を割り当てて、この割り当て情報をデータ受信側に通知する。
本実施例では、受信側が0°の変調量(X1軸)で測定した場合、送信側は{0°,45°,315°}のコヒーレント状態をビット1、{135°,180°,225°}のコヒーレント状態をビット0としてビット値を割り振る。すなわち、受信側が図21に示す0°位相変調処理軸(φB=0°)に相当する基底(受信側位相変調処理)541を適用した測定を行なった場合は、送信側は、0°変調データ521と、45°変調データ522と、315°変調データ528の3つの態様のコヒーレント状態をビット1とし、135°変調データ524と、180°変調データ525と、225°変調データ526の3つの態様のコヒーレント状態をビット0とする。90°変調データ523と、270°変調データ527の2つの態様のコヒーレント状態については、検出不能、すなわち基底不一致として処理する。
また、受信側が90°の変調量(X2軸)で測定した場合、送信側は{45°,90°,135°}のコヒーレント状態をビット1、{225°,270°,315°}のコヒーレント状態をビット0としてビット値を割り振る。すなわち、受信側が図21に示す90°位相変調処理軸(φB=90°)に相当する基底(受信側位相変調処理)542を適用した測定を行なった場合は、送信側は、45°変調データ522、90°変調データ523と、135°変調データ524の3つの態様のコヒーレント状態をビット1とし、225°変調データ526と、270°変調データ527と、315°変調データ528の3つの態様のコヒーレント状態をビット0とする。0°変調データ521と、180°変調データ525の2つの態様のコヒーレント状態については、検出不能、すなわち基底不一致として処理する。
送信側は、受信側からの測定態様情報をデータ送信後に受け取り、受信側において適用した位相変調処理に応じて、上述のようなビット割り振りを行なう、なお、上述のビット0と1の割り振り例は一例であり、上述の割り振りの逆の態様での割り振り処理を行ってもよい。
このように受信側が行った測定の種類に従って、送信側の送信した8つの量子状態中の6つにそれぞれビット値を割り振るという符号化を行うことで、8つの量子状態中の6つが有効な共有情報として設定可能である。したがって、送信側と受信側の基底の不一致によって送信側と受信側で共有できなくなる情報、例えば、共有秘密鍵に貢献しない情報を1/4に削減することができる。
図22を参照して、本実施例の符号化効率について説明する。図22に示す表において、上段から順に(A)データ送信側位相変調量(φA)、(B)データ受信側位相変調量(φB)、(C)共有ビット、(D)共有可能情報率の各データを示している。
(A)データ送信側位相変調量(φA)は、図21に示す送信側の位相変調処理によって得られる8つの変調信号、すなわち0°変調データ521、45°変調データ522、90°変調データ523、135°変調データ524、180°変調データ525、225°変調データ526、270°変調データ527、315°変調データ528の8つの変調処理データを示している。
(B)データ受信側位相変調量(φB)は、図21に示す受信側の観測系として適用される2つの位相変調量、すなわち、
位相変調量=0°
位相変調量=90°
のいずれかである。
送信側で任意に8つの位相変調信号(φA=0°,45°,90°,135°,180°,225°,270°,315°)をランダムに選択し、受信側においても2つの位相変調量(φB=0°,90°)をランダムに選択した場合、図22に示す16通りの組み合わせが均等に発生することになる。
(C)の共有ビットは、送信側と受信側で共有することとなるビット情報を示している。前述したように、受信側の観測系に応じてビット値の対応を変更しており、16個の組み合わせ中、12個の組み合わせにおいてビット値の共有を可能としている。すなわち、送信側の8種類の位相変調と受信側の2種類の位相変調による16個の組み合わせ中、12個の組み合わせにおいてビット値の共有が可能となり、残りの4個の組み合わせにおいてのみ、基底不一致によりビット値の共有が不可となる。したがって、(D)に示すように共有可能情報率を3/4とすることができる。
なお、受信側通信端末2では、先に図16を参照して説明したように、信号を区分して判別する。すなわち、判別用の信号として適用するデータは、データ送信側位相変調量(φA)とデータ受信側位相変調量(φB)の差分データ、
φ=|φA−φB|
であり、
φmodπ=0、π/4、またはφmodπ=3π/4のいずれかの検出信号を得ることで、ビット値判別が可能となる。なお、図16示すように、しきい値(X0,−X0)を定め,観測した値としきい値をもとにビット値の決定および共有を行なう。
[(5)送信側位相変調量を8状態、受信側位相変調基底を4基底とした処理例]
図6に示す量子暗号通信装置100Aにおいて、送信側通信装置1の位相変調器22と、受信側通信装置2の位相変調器7とで実行する位相変調処理の対応を、図23を参照して説明する。
図23は、送信側位相変調量を8状態、受信側位相変調基底を4基底とした位相変調処理例を示す。この処理例は、上述した実施例で説明した送信側適用位相変調量を8状態とした構成と同様、送信側位相変調量を8状態とするが、光子数の調整、すなわち強度変調処理を行わない構成例である。
図23に示す8つの円601〜608は、送信側通信装置1の位相変調器22において実行する位相変調量に対応し、22.5°変調データ601、67.5°変調データ602、112.5°変調データ603、157.5°変調データ604、202.5°変調データ605、247.5°変調データ606、292.5°変調データ607、337.5°変調データ628の8つの変調処理対応データの量子状態(コヒーレント状態)を示している。原点から各円の中心までの距離は、表示するコヒーレント状態の光子数の平方根に比例している。また、円の大きさは量子状態の持つ揺らぎを表す。
受信側通信端末2の位相変調器7において実行する位相変調処理は、{0°,45°,90°,135°}のいずれかの位相変調処理であり、この4つの位相変調処理は、図にX1軸として示す基底(受信側位相変調処理)621(φB=0°)、図にX1/2軸として示す基底(受信側位相変調処理)622(φB=45°)、図にX2軸として示す基底(受信側位相変調処理)623(φB=90°)、図にX3/2軸として示す基底(受信側位相変調処理)624(φB=135°)に相当する。本実施例では原点から各円の中心までの距離は、すべて等しく設定され、これらのコヒーレント状態を同一の光子数とすることが可能であり、音響光学素子21における強度変調は不要である。
本実施例において、送信側は位相変調器22において{22.5°,67.5°,112.5°,157.5°,202.5°,247.5°,292.5°,337.5°}のいずれかの変調をかけた8種類のコヒーレント状態をランダムに選択して送信し、受信側は位相変調器7において{0°,45°,90°,135°}のいずれかの位相変調量に対応する基底をランダムに選択して位相変調を行い、フォトダイオード、増幅器などからなるホモダイン検出器15においてホモダイン検出をおこなう。
さらに、受信側は、測定態様情報として、適用した観測系、すなわち適用基底(受信側適用位相変調処理)情報をデータ送信側に通知し、データ送信側は、受信側において適用した位相変調処理に応じて、送信した複数の量子状態(コヒーレント状態)、すなわち、データ送信側で適用した{22.5°,67.5°,112.5°,157.5°,202.5°,247.5°,292.5°,337.5°}に相当する各量子状態(コヒーレント状態)の各々に対して、ビット値を割り当てて、この割り当て情報をデータ受信側に通知する。
本実施例では、受信側が0°の変調量(X1軸)で測定した場合、送信側は{22.5°,67.5°,292.5°,337.5°}のコヒーレント状態をビット1、{112.5°,157.5°,202.5°,247.5°}のコヒーレント状態をビット0としてビット値を割り振る。すなわち、受信側が図23に示す0°位相変調処理軸(φB=0°)に相当する基底(受信側位相変調処理)621を適用した測定を行なった場合は、送信側は、22.5°変調データ601、67.5°変調データ602、292.5°変調データ607、337.5°変調データ608の4つの態様のコヒーレント状態をビット1とし、112.5°変調データ603、157.5°変調データ604、202.5°変調データ605、247.5°変調データ606の4つの態様のコヒーレント状態をビット0とする。
また、受信側が45°の変調量(X1/2軸)で測定した場合、送信側は{22.5°,67.5°,112.5°,337.5°}のコヒーレント状態をビット1、{157.5°,202.5°,247.5°,292.5°}のコヒーレント状態をビット0としてビット値を割り振る。すなわち、受信側が図23に示す45°位相変調処理軸(φB=45°)に相当する基底(受信側位相変調処理)622を適用した測定を行なった場合は、送信側は、22.5°変調データ601、67.5°変調データ602、112.5°変調データ603、337.5°変調データ608の4つの態様のコヒーレント状態をビット1とし、157.5°変調データ604、202.5°変調データ605、247.5°変調データ606、292.5°変調データ607の4つの態様のコヒーレント状態をビット0とする。
また、受信側が90°の変調量(X2軸)で測定した場合、送信側は{22.5°,67.5°,112.5°,157.5°}のコヒーレント状態をビット1、{202.5°,247.5°,292.5°,337.5°}のコヒーレント状態をビット0としてビット値を割り振る。すなわち、受信側が図23に示す90°位相変調処理軸(φB=90°)に相当する基底(受信側位相変調処理)623を適用した測定を行なった場合は、送信側は、22.5°変調データ601、67.5°変調データ602、112.5°変調データ603、157.5°変調データ604の4つの態様のコヒーレント状態をビット1とし、202.5°変調データ605、247.5°変調データ606、292.5°変調データ607、337.5°変調データ608の4つの態様のコヒーレント状態をビット0とする。
さらに、受信側が135°の変調量(X3/2軸)で測定した場合、送信側は{67.5°,112.5°,157.5°,202.5°}のコヒーレント状態をビット1、{22.5°,247.5°,292.5°,337.5°}のコヒーレント状態をビット0としてビット値を割り振る。すなわち、受信側が図23に示す135°位相変調処理軸(φB=135°)に相当する基底(受信側位相変調処理)624を適用した測定を行なった場合は、送信側は、67.5°変調データ602、112.5°変調データ603、157.5°変調データ604、202.5°変調データ605の4つの態様のコヒーレント状態をビット1とし、22.5°変調データ601、247.5°変調データ606、292.5°変調データ607、337.5°変調データ608の4つの態様のコヒーレント状態をビット0とする。
送信側は、受信側からの測定態様情報をデータ送信後に受け取り、受信側において適用した位相変調処理に応じて、上述のようなビット割り振りを行なう、なお、上述のビット0と1の割り振り例は一例であり、上述の割り振りの逆の態様での割り振り処理を行ってもよい。
このように受信側が行った測定の種類に従って、送信側の送信した8つの量子状態中の8つ全てにそれぞれビット値を割り振るという符号化を行うことで、すべての量子状態を有効な共有情報として設定可能となる。送信側と受信側の基底の不一致によって送信側と受信側で共有できなくなる情報、例えば、共有秘密鍵に貢献しない情報をゼロとすることができる。
図24を参照して、本実施例の符号化効率について説明する。図24に示す表において、上段から順に(A)データ送信側位相変調量(φA)、(B)データ受信側位相変調量(φB)、(C)共有ビット、(D)共有可能情報率の各データを示している。
(A)データ送信側位相変調量(φA)は、図23に示す送信側の位相変調処理によって得られる8つの変調信号、すなわち22.5°変調データ601、67.5°変調データ602、112.5°変調データ603、157.5°変調データ604、202.5°変調データ605、247.5°変調データ606、292.5°変調データ607、337.5°変調データ608の8つの変調処理データを示している。
(B)データ受信側位相変調量(φB)は、図23に示す受信側の観測系として適用される4つの位相変調量、すなわち、
位相変調量=0°
位相変調量=45°
位相変調量=90°
位相変調量=135°
のいずれかである。
送信側で任意に8つの位相変調信号(φA=22.5°,67.5°,112.5°,157.5°,202.5°,247.5°,292.5°,337.5°)をランダムに選択し、受信側においても4つの位相変調量(φB=0°,45°,90°,135°)をランダムに選択した場合、図24に示す32通りの組み合わせが均等に発生することになる。
(C)の共有ビットは、送信側と受信側で共有することとなるビット情報を示している。前述したように、受信側の観測系に応じてビット値の対応を変更しており、32個の全ての組み合わせにおいて、ビット値の共有を可能としている。すなわち、送信側の8種類の位相変調と受信側の4種類の位相変調による32個の全ての組み合わせにおいて、ビット値の共有が可能となり、(D)に示すように共有可能情報率を100%とすることができる。共有秘密情報に貢献しない情報をゼロとすることができる上、状態と測定法が増えるため、盗聴者の攻撃法がより複雑になり、盗聴の困難性を増加させることが可能であり、盗聴される可能性が従来手法より低くなることで、安全性が向上する。
[(6)適用位相変調量をN状態とした一般化処理例]
上述した実施例においては、
(1)送信側位相変調量を4状態、受信側位相変調基底を2基底とした処理例
(2)送信側位相変調量を3状態、受信側位相変調基底を3基底とした処理例
(3)送信側位相変調量を6状態、受信側位相変調基底を3基底とした処理例
(4)送信側位相変調量を8状態、受信側位相変調基底を2基底とした処理例
(5)送信側位相変調量を8状態、受信側位相変調基底を4基底とした処理例
の各実施例について説明してきた。しかし、第2の方式は、これらの各実施例に限定されるものではなく、他にも様々な態様が設定可能である。以下、これらの処理例について説明する。
(A)送信側位相変調量を4N状態、受信側位相変調基底を2基底とした処理例
図6に示す量子暗号通信装置100Aにおいて、送信側通信装置1の位相変調器22と、受信側通信装置2の位相変調器7とで実行する位相変調処理の各々について、送信側位相変調量を4N状態、受信側位相変調基底を2基底とした処理例について説明する。ここで、Nを正の整数(N=1,2,・・・)とする。
送信側端末装置1の位相変調器22は、
j=0,1,・・・,4N−1
からランダムに選択した値jを適用して、
位相変調量:(π/2N)j+(π/4N)
の位相変調処理を実行する。
一方、受信側通信端末2の位相変調器7は、{0°,90°}いずれかの位相変調処理を適用したホモダイン検出を実行する。
本処理例は、例えば、N=1とした場合、先に説明した(1)送信側位相変調量を4状態、受信側位相変調基底を2基底とした処理例に相当する処理となり、先の実施例において図15を参照して説明したように、データ送受信両側において転送データから共有可能なビット情報の割合、すなわち共有可能情報率を100%とすることが可能となり、無駄な送信データを全く発生させることがない。
(B)送信側位相変調量を4N状態、受信側位相変調基底を2N基底とした処理例
図6に示す量子暗号通信装置100Aにおいて、送信側通信装置1の位相変調器22と、受信側通信装置2の位相変調器7とで実行する位相変調処理の各々について、送信側位相変調量を4N状態、受信側位相変調基底を2N基底とした処理例について説明する。ここで、Nを正の整数(N=1,2,・・・)とする。
送信側通信端末1の位相変調器22は、
j=0,1,・・・,4N−1
からランダムに選択した値jを適用して、
位相変調量:(π/2N)j+(π/4N)
の位相変調処理を実行する。
一方、受信側通信端末2の位相変調器7は、
k=0,1,・・・,2N−1
からランダムに選択した値kを適用して、
{(π/2N)k°}の位相変調処理を適用したホモダイン検出を実行する。
本処理例は、たとえばN=1とした場合、先に説明した(1)送信側位相変調量を4状態、受信側位相変調基底を2基底とした処理例に相当する処理となり、先の実施例において5を参照して説明したように、データ送受信両側において転送データから共有可能なビット情報の割合、すなわち共有可能情報率を100%とすることが可能となり、無駄な送信データを全く発生させることがない。
また、本処理例は、N=2とした場合、先に説明した(5)送信側位相変調量を8状態、受信側位相変調基底を4基底とした処理例に相当する処理となり、先の実施例において4を参照して説明したように、データ送受信両側において転送データから共有可能なビット情報の割合、すなわち共有可能情報率を100%とすることができ、さらに、転送データのコヒーレント状態と測定法が増えるため、盗聴者の攻撃法がより複雑になり、盗聴の困難性を増加させることが可能であり、盗聴される可能性が従来手法より低くなることで、安全性が向上する。
上述した実施例(1)〜(5)には、上述の(A),(B)の手法によって定義されない処理例も含まれる。上述した実施例(1)〜(5)処理構成を、より一般化して定義すると以下のようにまとめることができる。
まず、データ送信側では、送信データとして、有限個の量子状態(コヒーレント状態)を設定する。
有限個の量子状態(コヒーレント状態)の設定処理は、
a)M≧2の整数を選択
b)位相変調量を2π/Mの整数倍からランダムに選択
c)上記の選択位相変調量に基づく位相変調処理を、図6を参照して説明した送信側通信端末1の位相変調器22において実行して送信する。
以上の処理が、データ送信側の処理となる。なお、先に図21を参照して説明したように、異なる光子数の量子状態(コヒーレント状態)を設定することが必要となる場合は、音響光学素子21により光子数調整(強度変調)処理を実行する。
一方、データ受信側では、データ送信側から送信されるデータとしての有限個のコヒーレント状態を観測する処理を行なうことになる。観測処理は、
a)観測系として2以上の複数の基底(異なる複数の位相変調処理)を設定
b)設定した複数の観測系をランダムに選択して、ホモダイン検出処理を実行
上述の観測処理は、図6を参照して説明した受信側通信端末2の位相変調器7においてランダムに選択した複数の基底(異なる複数の位相変調処理)を適用し、ホモダイン検出による検出処理として実行される。
さらに、データ受信側は、測定態様情報として、適用した観測系、すなわち適用基底(受信側適用位相変調処理)情報をデータ送信側に通知し、データ送信側は、受信側において適用した位相変調処理に応じて、送信した複数の量子状態(コヒーレント状態)、すなわち、データ送信側で適用した[M:M≧2の整数]に応じた2π/Mの整数倍に相当する複数個の量子状態(コヒーレント状態)の各々に対して、ビット値を割り当て、この割り当て情報をデータ受信側に通知する。ただし、データ受信側において適用した基底(受信側適用位相変調処理)による測定が困難と判定される量子状態は、ビット割り当て対象から排除する処理を行なう。
この処理によって、例えば、上述した処理例各々について、以下の情報共有が可能となる。
(1)送信側位相変調量を4状態、受信側位相変調基底を2基底とした処理例
この処理例では、送信側位相変調量を4状態すべてにビット情報が割り当てられ、全てのデータ、すなわち送信側で適用された位相変調量の4状態全てが有効なビット情報としてデータ送受信側双方で共有できる(図15参照)。
(2)送信側位相変調量を3状態、受信側位相変調基底を3基底とした処理例
この処理例では、送信側位相変調量3状態中、2/3の量子状態にビット情報が割り当てられ、2/3のデータ、すなわち送信側で適用された位相変調量の3状態中、2/3が有効なビット情報としてデータ送受信側双方で共有できる(図18参照)。
(3)送信側位相変調量を6状態、受信側位相変調基底を3基底とした処理例
この処理例では、送信側位相変調量6状態中、2/3の量子状態にビット情報が割り当てられ、2/3のデータ、すなわち送信側で適用された位相変調量の6状態中、2/3が有効なビット情報としてデータ送受信側双方で共有できる(図20参照)。
(4)送信側位相変調量を8状態、受信側位相変調基底を2基底とした処理例
この処理例では、送信側位相変調量8状態中、3/4の量子状態にビット情報が割り当てられ、3/4のデータ、すなわち送信側で適用された位相変調量8状態中、3/4が有効なビット情報としてデータ送受信側双方で共有できる(図22参照)。
(5)送信側位相変調量を8状態、受信側位相変調基底を4基底とした処理例
この処理例では、送信側位相変調量8状態中、全ての量子状態にビット情報が割り当てられ、全ての状態が有効なビット情報としてデータ送受信側双方で共有できる(図24参照)。この例では、情報共有率は100%である。また、状態と測定法が増えるため,盗聴者の攻撃法がより複雑になり、盗聴の困難性を増加させることが可能であり、盗聴される可能性が従来手法より低くなり、安全性が向上する。
「単一光子方式量子鍵配布プロトコルにおける実施形態」
図25は、第2の実施の形態としての量子暗号通信装置200の構成を示している。この量子暗号通信装置200は、単一光子検出変数方式量子鍵配布プロトコルに対応している。この量子暗号通信装置200は、送信側通信端末201と、受信側通信端末202と、これら2つの通信端末を結ぶ通信路103からなっている。
受信側通信端末202は、レーザ光源221、サーキュレータ222、フィルタ223,225、アバランシェフォトダイオード(APD)224,226、分岐比1対1のカプラ227、位相変調器228、遅延用ファイバ229および偏光カプラ230を有している。ここで、カプラ227は光分岐部を構成し、位相変調器228は第1の位相変調器を構成し、遅延用ファイバ229は遅延器を構成し、偏光カプラ230は第1の光送出部および光分離部を構成し、APD224,226は通信情報取得部を構成している。また、カプラ227から位相変調器228を介して偏光カプラ230に至る光路は第1の光路を構成し、カプラ227から遅延用ファイバ229を介してカプラ230に至る光路は第2の光路を構成している。
送信側通信端末202は、音響光学素子211、位相変調器212およびファラデーミラー213を有している。音響光学素子211は光減衰部、周波数シフト部および第2の光送出部を構成し、位相変調器212は第2の位相変調器を構成している。
以下、量子暗号を適用した通信処理の動作シーケンスに従って、各構成部における処理の詳細を説明する。受信側通信端末202のレーザ光源221で発生するパルス光が、通信路203を介して送信側通信端末201に送信され、そのパルス光が再度通信路を介して受信側通信端末202に戻ってくるという順番で動作するので、その順番に従って説明する。
受信側通信端末202のレーザ光源221から出射したパルス光は、サーキュレータ222を通過し、分岐比が1対1のカプラ227へ入射する。サーキュレータ227は、レーザ光源221からの光がカプラ227へ出力され、カプラ227から戻ってきた光がフィルタ223へ出力されるように光路制御を実行する。
レーザ光源221から出射したパルス光は、カプラ227において、パルス光P1と、パルス光P2とに分岐される。カプラ227で分岐されたパルス光P1は、位相変調器228を介して偏光カプラ230に入射される。ただし、このときには、位相変調器228は動作させない。一方、カプラ227で分岐されたパルス光P2は、遅延ファイバ229を介して偏光カプラ230に入射される。
以下、この実施の形態においては、パルス光P1を信号光とし、パルス光P2を参照光として説明する。しかし、パルス光P1を参照光とし、パルス光P2を信号光とする構成も可能である。また、遅延ファイバ229を位相変調器228側の光路上に設置する光学系も可能である。
パルス光P1(以下、「信号光P1」という)およびパルス光P2(以下、「参照光P2」という)は、偏光カプラ230の入射時に、一方が水平偏光であるとき他方は垂直偏光である設定となっている。例えば、信号光P1は水平偏光とされ、参照光P2は垂直偏光とされる。信号光P1、参照光P2は偏光カプラ230を通して通信路203に入力される。ただし、遅延ファイバ229により、信号光P1は、参照光P2より先に、通信路203に入力される。図では、受信側通信端末202から送信側通信端末201へ向かう信号光P1、参照光P2を実線矢印で示し、送信側通信端末201から受信側通信端末202へ戻る信号光P1、参照光P2を点線矢印で示している。
受信側通信端末202から送られてくる信号光P1、参照光P2は、通信路203から送信側通信端末201に入射される。送信側通信端末201において、通信路203から入射された信号光P1、参照光P2は、音響光学素子211、位相変調器212、ファラデーミラー213の順にたどる。そして、これら信号光P1、P2は、ファラデーミラー213による偏光回転、反射を経た後、位相変調器212、音響光学素子211を再び通過して、当該音響光学素子211から通信路203に出射される。
この送信側通信端末201において、信号光P1は、音響光学素子211により減衰されると共に、位相変調器212により通信情報に基づいて位相変調される。信号光P1は、出射時の平均光子数が、例えば0.5個程度になるように音響光学素子211により減衰される。また、信号光P1は、パルス毎に、例えば、φA∈{0,π/2,π,3π/2}の中からランダムに1つが選択されて、位相変調器212により位相変調される。
また、送信側通信端末201において、信号光P1および参照光P2は、音響光学素子211により、その周波数が高い方にシフトされる。上述したように、音響光学素子211は、光減衰部および周波数シフト部を構成している。この音響光学素子211は、上述した量子暗号通信装置100の送信側通信端末101における音響光学素子111と同様の構造とされている(図2参照)。
送信側通信端末201から通信路203を介して戻ってくる信号光P1、参照光P2は、当該通信路203から受信側通信端末202の偏光カプラ230に入射される。送信側通信端末201のファラデーミラー213によって偏光方向が回転され、また、通信路203を往復通過することにより、通信路203上での偏光揺らぎが相殺されることで、偏光カプラ230への入射直前では、信号光P1の偏光方向は垂直となり、参照光P2の偏光方向は水平となる。
そのため、信号光P1は、受信側通信端末202に戻ってきた後、偏光カプラ230から遅延ファイバ229を介してカプラ227に入射される。また、参照光P2は、受信側通信端末202に戻ってきた後、偏光カプラ230から位相変調器228を介してカプラ227に入射される。この位相変調器125において、参照光P2は、パルス毎に、φB∈{0,π/2}の中からランダムに1つが選択されて位相変調される。
カプラ227と偏光カプラ230の間の信号光P1、参照光P2の経路については、受信側通信端末202から送信側通信端末201へ向かう場合と、逆に送信側通信端末201から受信側通信端末202へ戻った場合とで、入れ替わる。そのため、カプラ227には、信号光P1と参照光P2とが同時刻に到達する。信号光P1と参照光P2とはカプラ227で干渉し、2つの端子からの出射したパルス光は、一方はフィルタ225を介してAPD226に入射され、もう一方は、サーキュレータ222およびフィルタ223を介してAPD224に入射される。
この場合、信号光P1と参照光P2との位相差が0である場合には、カプラ227からフィルタ225側にパルス光が出力される。また、信号光P1と参照光P2との位相差がπである場合には、カプラ227からサーキュレータ222側にパルス光が出力される。さらに、信号光P1と参照光P2との位相差がπ/2または3π/2である場合には、半々の確率で、カプラ227からフィルタ225側またはサーキュレータ222側にパルス光が出力される。
ここで、フィルタ223,225の特性は、レーザ光源221から発生されるパルス光、後方散乱光、および後方散乱光の透過率は低く、音響光学素子211により周波数シフトされた信号光P1の透過率は高くなるように設定される。つまり、フィルタ223,225は、周波数シフトされた信号光P1の周波数帯域に合わせた通過帯域を持つ。これにより、単一光子検出器としてのAPD224,226には、後方散乱光等の不要な光は供給されない。各APD224,226の出力により通信情報が取得される。
図25に示す量子暗号通信装置200においては、送信側通信端末201の音響光学素子211により、信号光P1、参照光P2の周波数が高い方向にシフトされ、当該周波数シフトされた信号光P1、参照光P2が受信側通信端末202に戻ってくる。そのため、当該信号光P1、参照光P2の周波数は、光ファイバ内で発生する、周波数が同じか、低くなる後方散乱光の周波数とはずれたものとなる。フィルタ223,225の特性は、周波数シフトされた信号光P1に対する透過率は高く、一方後方散乱光の透過率は低くなるように設定されている。したがって、APD224,226への後方散乱光の入射が抑制されるため、信号光P1の検出に悪影響を及ぼすことを防止できる。
また、図25に示す量子暗号通信装置200においては、送信側通信端末201の音響光学素子211は光減衰部の他に、周波数シフト部としても機能する。そのため、周波数シフト部を設けたとしても、光減衰用の制御信号の他に周波数シフト用の制御信号が必要となることはなく、周波数シフトのための励起光が必要となることもなく、消費電力が増加し、装置も複雑となるということはない。
また、図25に示す量子暗号通信装置200においては、送信側通信端末101の音響光学素子211は光減衰部の他に、周波数シフト部としても機能する。そのため、信号光P1、参照光P2の周波数をシフトする周波数シフト部を設けたとしても、光路に挿入される光学素子の個数が増加しないので透過率変動が増すということがなく、微弱光を扱う量子暗号の性能に影響を及ぼすということはない。
1・・・送信側通信端末、2・・・受信側通信端末、3・・・通信路、4・・・レーザ光源、5・・・サーキュレータ、6・・・ビームスプリッタ、7・・・位相変調器、8・・・遅延器、9・・・ビームスプリッタ、10・・・偏光ビームスプリッタ、12・・・検出器、15・・・ホモダイン検出器、17・・・コントローラ、19・・・ビームスプリッタ、20・・・遅延器、21・・・音響光学素子、22・・・位相変調器、24・・・ファラデーミラー、26・・・検出器、28・・・コントローラ、100,100A・・・量子暗号通信装置、101・・・送信側通信端末、102・・・受信側通信端末、103・・・通信路、111・・・音響光学素子、112・・・位相変調器、113・・・ファラデーミラー、121・・・レーザ光源、122・・・サーキュレータ、123・・・ホモダイン検出器、124・・・カプラ、125・・・位相変調器、126・・・遅延ファイバ、127・・・偏光カプラ、128,129・・・光ファイバ、130a,130b・・・フィルタ、200・・・量子暗号通信装置、201・・・送信側通信端末、202・・・受信側通信端末、203・・・通信路、211・・・音響光学素子、212・・・位相変調器、213・・・ファラデーミラー、221・・・レーザ光源、222・・・サーキュレータ、223,225・・・フィルタ、224,226・・・アバランシェフォトダイオード、227・・・カプラ、228・・・位相変調器、229・・・遅延ファイバ、230・・・偏光カプラ