JP4836318B2 - 歯根膜形成能を有する人工歯根 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は人工歯根、特に周囲の組織との間で天然歯根と周囲の組織との結合構造の如く歯根膜を形成し、これにより健全な咬合機能を回復することを目的とした人工歯根に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、歯が喪失した症例に対する治療法としては、主に有床義歯や橋義歯等による補綴処置がなされてきた。しかし咀嚼、発音、審美性の復元が不十分で、患者に満足感を与えることのできない症例も少なくない。そこで近年このような症例に対しインプラント法が開発され、臨床で広く使用されている。
【0003】
このインプラント法とはチタン、ヒドロキシアパタイト等の生体親和性材料からなる人工歯根を歯槽骨または顎骨内に埋入し、これに人工歯や義歯等の上部構造を保持させる方法である。しかし、この処置による人工歯根と周囲組織の結合態様は、人工歯根が歯槽骨に直接に接する骨性癒着である。
【0004】
このような人工歯根では、この骨性癒着のため咬合圧が直接顎骨に伝達される。したがって、これらのメカニカルストレスに対する生体の反応として骨が次第に消失(骨吸収)して人工歯根の動揺や沈下が起こること、人工歯根の動揺や沈下により生じる隙間にプラーク等が沈着すること、プラーク等の沈着により感染や炎症が生じること、並びに、感染や炎症が歯槽骨や顎骨にまで及ぶ重篤な症状に至ること等が問題視されている。
【0005】
これらの問題は人工歯根−歯槽骨間と天然歯根−歯槽骨間の結合構造が異なることに起因すると考えられる。
【0006】
天然歯根では歯根と歯槽骨との間にセメント質(歯根象牙質表面を被っている石灰化した結合組織で厚みは通常0.02〜0.15mm)、歯根膜(セメント質と歯槽骨の間に介在する緻密な線維性結合組織で、厚みは通常0.2〜0.25mm)が介在し、さらに歯根から歯槽骨に向かってコラーゲン線維束が走行している。このコラーゲン線維束が歯根を歯槽骨に強く結び付けている。
【0007】
上記歯根膜は咬合圧の緩衝作用、圧受容器(咬合圧を感知する器官)を介した咬合圧の感知とそれに基づく神経性調節作用(圧受容器で感知した咬合圧を受け、咬合圧を調整する作用)を有している。また、歯根膜は感染に対してのバリアーとして作用するとともに、骨吸収を引き起こす破骨細胞の誘導を抑制する作用を有している。
【0008】
一方、セメント質は歯根と歯根膜をつなぎ止める働きだけでは無く、歯根膜を一定の厚みに保ち、歯槽骨の形態を保持する等の役割があり、歯周組織の維持に重要な働きを有している。
【0009】
かかる天然歯根と周囲の組織との結合構造は、植立した人工歯根と周囲の組織との間でも再現されることが望ましい。特に、歯根膜が存在していることが好ましい。
【0010】
この目的のため、近年、培養歯根膜細胞を利用した人工歯根の植立方法が提案されている。
【0011】
特開平6−7381は、そうした技術を示す。この従来技術では、抜歯した歯から採取した歯根膜細胞を培養し、培養した歯根膜細胞をさらに重層培養して形成した擬似歯根膜を人工歯根と歯槽骨との間に介在させることにより人工歯根周囲に歯根膜を再生させることが提案されている。
【0012】
また、Byung−Ho Choiはイヌの歯根膜細胞を純チタン性の人工歯根の表面上で培養し、これを同じイヌの顎骨内に埋入する実験を行い、その結果を報告している(Int J Oral Maxillofac Implants2000;15:193−196)。
【0013】
Choiによれば、かかる実験において、人工歯根の表面の一部にコラーゲン線維の封入を伴ったセメント組織が観察されている。ここでコラーゲン線維の封入とは、セメント質の中にコラーゲン線維が閉じこめられ一体化した状態をいう。このセメント中に閉じこめられたコラーゲン線維は歯根膜中のコラーゲン線維と結合している。また、セメント様組織と歯槽骨の間に歯根膜様組織が観察されている。
【0014】
一方、植立した人工歯根と周囲の組織との間で天然歯根と周囲の組織との結合構造を再現するという上記目的を持った別種の技術として、セメント質粒子を利用することが提案されている。
【0015】
特開平8−266559、USP5,772,439は、このような技術を示す。
【0016】
この技術は、セメント質粒子を人工歯根表面に被着したハイブリッド人工歯根を用いることが特徴である。上記セメント粒子は、ヒトまたは動物の歯から採取することができる。また、上記従来技術文献には、セメント粒子を人工歯根に被着するために生体吸収性材料または無機化合物を媒体として用いることが記載されている。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら前述の培養歯根膜細胞を利用した方法は、人工歯根を植立する同一人物から、あるいは拒絶反応を起こさない他人から外科的に歯根膜細胞を入手する必要がある。さらに得られた歯根膜細胞を培養するという煩雑な操作も必要なため、汎用性に乏しい。また、Byung−Ho Choiの動物実験の結果では、セメント質様組織及び歯根膜様組織の形成も十分ではない。したがって現状では、臨床上、大きな効果は期待できない。
【0018】
次に、セメント質粒子を人工歯根表面に被着したハイブリッド人工歯根では、生体内でセメント質粒子が異物として認識され、マクロファージによる攻撃をうける可能性が高い。また、セメント質から歯根膜等を形成するのに寄与するタンパク質成分が溶出する速度が極めて遅いため(難水溶性の状態)、歯根膜等の形成作用が不十分である。そして、この従来技術は、炎症が長引くこと、セメント質粒子を人工歯根に均一に分散・固定することが実際上、困難なこと、また歯槽骨内に埋入したハイブリッド人工歯根からセメント質粒子が脱落する恐れがあることから、臨床上安定した効果が期待できない。
【0019】
本発明はこのような事情を鑑みなされたものであって、その目的とするところは、天然歯の場合と同様に周囲に歯根膜を再生させることが可能で且つ安全な人工歯根を工業的に安定した品質で、かつ安価に供給することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意検討した結果、チタンからなる基材の骨内埋入部分の表面にヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分を易水溶性の状態で担持してなる歯根膜形成能を有する人工歯根であって、前記骨内埋入部分の表面に架橋カルボキシメチルキチンが被着するとともに、架橋カルボキシメチルキチンには、前記タンパク質成分の溶解液を含浸して乾燥することによって、前記タンパク質成分が担持されている。
【0021】
ヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分は歯肉および顎骨内の環境下において、歯肉および顎骨内の未分化間葉系細胞の増殖を促し、さらにセメント芽細胞への分化を誘導してセメント質を形成し、さらに増殖した未分化間葉系細胞を線維芽細胞および骨芽細胞へ分化誘導してコラーゲン線維の産生および固有歯槽骨(歯槽骨の最表面にあるコラーゲン線維が封入された歯槽骨)の形成を促進する。一方、新しく形成されたセメント質には歯槽骨を一定距離(歯根膜の幅に相当する距離で約0.2〜0.25mm)以内には近づけない作用があるため、新生セメント質と歯槽骨の間に歯根膜が形成される。
【0022】
そして、前記ヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分が易水溶性の状態にあるので、上記活性の作用が早期から発現する。
【0023】
このことにより、表面のヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分が基材表面にセメント質を新生させ、さらに骨との間に歯根膜を再生させ、その際、セメント質と歯槽骨がコラーゲン線維束で結びつけられる。以上のような作用をもって人工歯根周囲に天然歯と同様の機能を有する歯根膜を形成する。
【0024】
また、本発明の人工歯根は、ヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分が哺乳類の歯などから容易かつ安価に入手でき、さらに、その含有濃度が小さくても十分な効果を奏するため、工業的に安定した品質で、かつ安価に供給することができる。
【0025】
また、本発明の人工歯根は、ヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分を含む生体吸収性膜を表面に被着することが好ましい
【0026】
かかる構成によれば、人工歯根の表面に上記タンパク質成分を容易に固定することができ、タンパク質成分の除放速度を制御ができる。さらに生体吸収性材料が人工歯根周囲にセメント質及び歯根膜が形成されるされるまでの期間では細胞の足場として働き、歯根膜形成後には吸収分解される。以上の理由から人工歯根の周囲にセメント質及び歯根膜を形成する機能が良好なものとなる。
【0027】
次に、本発明の人工歯根は、記ヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分の担持量が0.00001mg〜15mg/平方センチメートルであることが好ましい
【0028】
かかる構成によれば、人工歯根の周囲にセメント質及び歯根膜を形成する機能が良好なものとなる。
【0029】
本発明の人工歯根は、記ヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分に含まれるヒドロキシプロリン残基は全アミノ酸残基含有量に対して0.01〜10%であることが好ましい
【0030】
かかる構成によれば、人工歯根の周囲にセメント質及び歯根膜を形成する機能が良好なものとなる。
【0031】
本発明の人工歯根は、記タンパク質成分が哺乳類の歯のセメント質から抽出したタンパク質成であることが好ましい
【0032】
かかる構成によれば、ヒトは起源が哺乳類と近いため、哺乳類の歯のセメント質に含まれるタンパク質の構造がヒトのセメント質に含まれているタンパク質の構造が他のは虫類等よりも類似している。このため、哺乳類の歯のセメント質から抽出したタンパク質がよりヒト組織に対する活性が高く、人工歯根の周囲にセメント質及び歯根膜を形成する機能が良好なものとなる。
【0033】
本発明の人工歯根は、記哺乳類が牛または豚であることが好ましい
【0034】
かかる構成によれば、食用に牛や豚などが屠殺されるので、それらの歯から容易にまた安価にセメント質を入手することができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0036】
(人工歯根の材料について)
本発明における人工歯根の材質は特に限定されるものではなく、生体に対して為害作用が少ないものであれば良い。耐久性に優れたチタン、ヒドロキシアパタイト、アルミナ、ジルコニアなどを好適に用いることができる。
【0037】
この中でも特にヒドロキシアパタイト及びチタンがより好適に使用できる。その理由はヒドロキシアパタイトは骨伝導性を有しているためセメント質の新生を促し、さらにセメント質との強固な結合が可能であるためである。またチタンはセメント質との親和性が高いためである。
【0038】
(人工歯根の表面処理について)
本発明において、人工歯根の表面に生体親和性をさらに高めるための公知の処理を施すことができる。
【0039】
人工歯根の表面の生体親和性をより高めるための処理として、例えば人工歯根の表面がチタンからなる場合には、表面をアルカリ水溶液中に浸して表面にアルカリチタネート相を形成する。これに続いて表面を加熱処理することにより、表面の生体親和性を向上させることができる。
【0040】
ところで後述する生体吸収性材料を用いて人工歯根の表面にヒドロキシプロリン残基を含有するタンパク質を担持する場合、生体吸収性材料をより強固に固定化するための公知の表面処理を施すことができる。
【0041】
例えば人工歯根の表面がチタンからなる場合、かかる処理法として表面にエチレン−ビニルアルコール共重合体を溶着また塗布する。続いて、これを乾燥することでエチレン−ビニルアルコール共重合体を人工歯根の表面に被着する。さらに表面をオゾン処理すことにより水酸基が酸化されてカルボキシ基が導入される。
【0042】
かかる処理を施した人工歯根の表面はイオン吸着により生体吸収性材料をより強固に固定することが可能である。
【0043】
例えば、上記処理を施した人工歯根をコラーゲンの水溶液に浸すことにより、コラーゲンを強固に固定することができる。
【0044】
(ヒドロキシプロリン残基を含有するタンパク質を含むタンパク質成分について)
ヒドロキシプロリンは、C59NO3(分子量131.13)の化学式で表される。プロリンの3または4位がヒドロキシル化されたものである。そして、ヒドロキシプロリン残基は、ヒドロキシプロリンのイミノ基NHからHを、カルボキシル基COOHからOHを、すなわち水1分子を離脱したものである。
【0045】
ヒドロキシプロリン残基を含有するタンパク質としては、トロプコラゲンアルファー鎖などがある。
【0046】
前記ヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分は、哺乳類などの歯のセメント質から得ることができる。歯のセメント質は歯根の表面を覆っている歯周組織の骨(歯槽骨)によく似た硬組織であり、前述のように、これに含まれるヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分が線維芽細胞、骨芽細胞、セメント芽細胞に活性を有している。歯のセメント質を用いる利点はセメント質及び歯根膜の再生に関与するヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分が豊富に含まれていることである。哺乳類の中でも、牛や豚の歯を用いた場合、食用に牛や豚などの哺乳動物が大量に飼育されているので、均質なセメント質を、容易にまた安価で入手できることである。
【0047】
上記歯からヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分を得る方法として、歯のセメント質を粉砕したものをコラゲナーゼ水溶液に浸漬する。この水溶液中に、ヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分が溶出する。このように溶出させたヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分は、当然のことながら易水溶性である。
【0048】
上記コラゲナーゼ含有水溶液のコラゲナーゼ濃度は0.1%〜15%が好ましく、0.1%〜5%であればより効果的である。また、溶出成分中(ヒドロキシプロリン残基を含むタンパク質成分)に含まれるヒドロキシプロリン残基の含有量が多すぎても、少なすぎても人工歯根周囲にセメント質及び歯根膜を形成する機能に低下を来す。この観点から、上記ヒドロキシプロリン残基の含有量は、成分中に含まれる全アミノ酸残基に対して0.01%〜10%が好ましく、0.1%〜3.0%がより好ましい。
【0049】
なお、本発明では、歯のセメント質の中の水に可溶なタンパク質成分の中に、歯根膜を形成するタンパク質が複数個含まれている。このタンパク質の全てまたは複数個がある濃度で存在すると、歯周組織が再生されるが、どのタンパク質も分離精製した、単一のタンパク質の状態では、このような活性はない。上記歯根膜を形成するタンパク質は、ヒドロキシプロリン残基タンパク質を必須のタンパク質としている。したがって、ヒドロキシプロリン残基を含有することを必須とする。
【0050】
上記溶出液中の不用物を除去するために遠心分離及び濾過等を行って良いが、溶出成分はあまり精製を行わないことが好ましい。その理由は、精製すればするほど人工歯根周囲にセメント質及び歯根膜を形成する機能が低下するからである。したがって、分子量分画及びクロマトグラフィー等により、単一のタンパク質成分に精製することは避ける。
【0051】
なお、ヒドロキシプロリン残基を含有するタンパク質の存在の有無はタンパク質成分をアミノ酸レベルまで加水分解して、質量分析装置を用いてヒドロキシプロリン残基が含まれているかどうかを調べることによって確認することができる。
【0052】
また、この溶出成分に含まれているヒドロキシプロリン残基の含有量は、上と同様にタンパク質成分をアミノ酸レベルまで加水分解して、全自動アミノ酸分析機器、例えば日本電子製mnoAminotac JIC−500/Vを使って、各アミノ酸残基の定量することによって測定することができる。但し、コラゲナーゼを用いて溶出した場合には、溶出液中にはコラゲナーゼが含まれているので、上で述べた方法で溶出液中に含まれるアミノ酸残基の量を測定してから、コラゲナーゼのアミノ酸残基の量を補正して計算するか、または溶出液中のタンパク質成分を電気泳動法等を用いてコラゲナーゼを除去したタンパク質成分について上で述べた方法により、ヒドロキシプロリン残基の含有量を測定する必要がある。
【0053】
(人工歯根表面にヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分を担持させる方法について)
本発明のヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分を人工歯根の表面に担持する方法は特に限定されるものではなく、種々の方法を用いることができる。例えば、天然高分子又は合成高分子を利用する方法としては、生体吸収性材料をバインダーとして人工歯根表面に上記タンパク質成分を含浸、接着または吸着する方法、上記タンパク質成分を含浸、接着または吸着させた高分子のシートを作製してこれを人工歯根表面に貼り付ける方法、等挙げることができる。また人工歯根表面にヒドロキシアパタイトの多孔体を形成してこの中に上記タンパク質成分を吸着させる方法等を挙げることができる。この中で、生体吸収性材料を使ってヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分を人工歯根の表面に担持させる方法が好ましい。
【0054】
生体吸収性材料とは、生体内に移植した後、一定期間後分解吸収される材料である。生体吸収性材料の生体内で分解速度を利用して体内でのヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分の除放速度が制御できる。また生体吸収性材料が細胞の増殖、分化の足場となる。
【0055】
かかる生体吸収性材料としては、例えばポリ乳酸、ポリグルコール酸、ポリ(ε−カプロラクトン)等の脂肪族ポリエステル類、コラーゲン、ゼラチン、アルブミン、デキストラン、キチン、キトサンなどのタンパク質及び多糖類、またこれらの脂肪族ポリエステル類、タンパク質及び多糖類の誘導体、複合化物、架橋化物が使用できる。その中でも特にアテロコラーゲン、架橋化アテロコラーゲン、架橋化ゼラチン、カルボキシメチルキチン、架橋化カルボキシメチルキチンがより好適に使用できる。
【0056】
(生体性吸収材料を使う場合―1)
生体吸収性材料を使ってヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分を人工歯根の表面に担持させる方法として、例えばヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分を担持した生体吸収性膜を作製し、これを人工歯根の表面に被着することができる。ここで、生体吸収性膜を人工歯根の表面に被着する方法は、特に限定されるものでない。公知のどの方法を用いてもよい。
【0057】
具体的に、例えば、架橋剤としてグリセラールポリグリシジルエーテルを添加、溶解したゼラチン水溶液を調整する。この水溶液をポリメチルメタクリレート製のプレート上に流延した後冷却し、膜状のゼラチンゲルを作製する。さらにこの膜状のゼラチンゲルを凍結乾燥して水を除去した後、加熱処理を行うことで多孔質架橋化ゼラチン膜を得る。
【0058】
一方、牛の歯根からセメント質を機械的に削り取り、乾燥する。これを乳鉢等で粉砕ししたものを、適量のコラゲナーゼ含有の生理食塩水に投入、撹拌、溶解する。その後、不溶物を遠心分離で除去した溶液を凍結乾燥してヒドロキシプロリン含有タンパク質を含むタンパク質成分の固形物を得る。
【0059】
次に、適量のヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分の固形物を溶かした水溶液を、前記架橋化ゼラチン膜に含浸し、凍結乾燥を行う。これによりヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分を担持した生体吸収性膜を得ることができる。
【0060】
次いでグリセロールポリグリシジルエーテルを添加、溶解したゼラチン水溶液を人工歯根表面に塗布し、その上に前記ヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分を担持した生体吸収性膜を貼り付ける。そして、これを乾燥することにより、本発明の人工歯根を得ることができる。
【0061】
なお、生体吸収性材料が水溶性の場合には架橋処理等を施して、水への溶解性を低減させることができる。
【0062】
(生体吸収性材料を使う場合―2)
また、生体吸収性材料を使ってヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分を人工歯根の表面に担持させる別の方法として、人工歯根の表面に生体吸収性材料を被着しておいてから、ヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分を表面に導入することができる。
【0063】
具体的に、架橋剤としてグリセロールポリグリシジルエーテルを添加、溶解したカルボキシメチルキチン水溶液を調整する。この水溶液を筆等を用いて人工歯根の基材表面に塗布する。これを、凍結乾燥した後、加熱処理を行うことで人工歯根の表面に架橋カルボキシメチルキチンを被着する。
【0064】
次に、この人工歯根の表面に対し、適量のヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分を溶かした水溶液を含浸させる。そして水分を乾燥して、本発明の人工歯根を得ることができる。
【0065】
なお、ヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分の担持量は、多すぎても少なすぎても人工歯根と歯槽骨の間にセメント質及び歯根膜を形成する能力が低下する。この観点から、骨埋入部分におけるヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分の担持量は0.00001mg〜15mg/平方センチメートルが好ましく、0.0001mg〜6mg/平方センチメートルがより好ましい。
【0066】
このヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分の単位面積当たりの担持量は以下のようにして測定することができる。かかる人工歯根を水中に浸漬、撹拌することにより、人工歯根の表面に担持させたヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分を溶出する。透析膜を用いて脱塩処理を行った後、電気泳動法を用いてコラゲナーゼを除去したヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分の重量を測定する。このヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分の重量を同タンパク質成分が担持されていた人工歯根面の表面積で除することにより求めることができる。
【0067】
【実施例】
以下に、実施例、比較例、試験例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
人工歯根(HA−T)
使用した人工歯根の材質:ヒドロキシアパタイト
使用した生体吸収性材料:架橋ゼラチン
セメント質からのヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分の抽出
食用肉屠殺場より提供されたウシ顎骨から歯を抜歯用鉗子で抜去し、−4℃で冷凍保存した。解凍後、ただちに歯根に不着する歯肉組織を掻爬し、除去した。これらの処置後、手術用スケーラーを用い、1本の歯につき100〜200ストロークでセメント質を掻爬し、牛歯100本からセメント質の切除片を得た。セメント質の切除片を凍結乾燥装置(FREEZE DRYER FD−5N 東京理化機器(株)製)で凍結乾燥した後、乳鉢に入れ、さらの篩過し、粒子径0.088mm以下のセメント質4.9gを得た。
【0068】
さらに得られたセメント質粒子を1%コラゲナーゼ((株)新田ゼラチン製、COLLAGENASE N−2)含有pH7の生理食塩水15mlに投入し、スターラーを用いて37℃、1時間撹拌した。不溶物を3000rpm、10分間の遠心分離で除去し、上澄液を得た。
【0069】
この上澄液を凍結乾燥機(FREEZE DRYER FD−5N 東京理化機器(株)製)を用いて凍結乾燥することで固形物0.39(セメント質からの溶出成分0.10g、コラゲナーゼ0.15g、塩化ナトリウム0.14g)を得た。
【0070】
このセメント質からの溶出成中にはヒドロキシプロリン残基は、全アミノ酸残基に対して0.5%の割合で含まれていた。
架橋ゼラチン膜の調整
アルカリ法で製造された市販ゼラチン[(株)新田ゼラチン製、6.66%水溶液にしたときの粘度31mp、ゼリー強度94g]の5重量%水溶液に架橋剤としてグリセロールポリグリシジルエーテル[ナガセ化成工業(株)製]をゼラチンの重量に対し3重量%添加、溶解し、ゼラチンとグリセロールポリグリシジルエーテルの混合水溶液を調整した。ポリメチルメタクリレート板(大きさ10×10cm、厚さ2mm)の片面に幅1cm、厚さ1.0mmのシリコン製のテープで縁取りし、その内側(8×8cm)に上記の混合水溶液2gを流延した。これを凍結乾燥機(FREEZE DRYER FD−5N 東京理化機器(株)製)で凍結乾燥し、ゼラチン膜(膜の大きさ8×8cm、膜の厚さ0.2mm)を得た。このゼラチン膜を110℃で2時間熱処理することにより架橋を行い、架橋ゼラチン膜を得た。
ヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分を担持した架橋ゼラチン膜
▲1▼で調整した固形物0.0585g(セメント質からの溶出成分0.015g)を15mlの蒸留水に溶解した。、ポリメチルメタクリレート板(大きさ10×10cm、厚さ2mm)の片面に幅1cm、厚さ1.0mmのシリコン製のテープで縁取りし、その内側(8×8cm)に上記溶解液1.5gを採取し流延した。さらにその上に▲2▼で調整した架橋ゼラチン膜をかぶせる様にして、乗せ、溶解液を架橋ゼラチン膜に吸収させたあと、凍結乾燥機(FREEZE DRYER FD−5N 東京理化機器(株)製)を用いて凍結乾燥を行い、セメント質からの溶出物を担持した架橋ゼラチン膜を得た。またヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分の担持量は0.023mg/平方センチメートルであった。
人工歯根 HA−Tの調整
市販の人工歯根[アパセラム、長さ9mm、直径4.5mm、表面の材質はヒドロキシアパタイト、(株)旭光学製]表面に、市販のゼラチン[(株)新田ゼラチン、6.66%水溶液にしたときの粘度31mp、ゼリー強度94g]2重量%水溶液を作製し、これを小筆で薄く塗布した。▲3▼で調整したセメント質からの溶出物を担持した架橋ゼラチン膜を適当な大きさに切断し、人工歯根の表面に一重隙間が開かないように貼り付けた。これを凍結乾燥装置(FREEZE DRYER FD−5N 東京理化機器(株)製)を用いて凍結乾燥を行うことでヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分を担持した人工歯根(HA−T)を得た。このHA−Tをポリエチレンの袋の中に密閉し、(株)東芝製の紫外線滅菌ランプ(15ワット)より30cm下方に置き、表裏それぞれに30分づつ紫外線照射を行うことにより滅菌処理を施し、5℃の冷蔵庫中で保管した。
【0071】
(実施例2)
人工歯根(Ti−T)
使用した人工歯根の材質:チタン合金
使用した生体吸収性材料:架橋カルボキシメチルキチン
架橋カルボキシメチルキチン被覆人工歯根の調整
市販のカルボキシメチルキチン[甲陽ケミカル(株)製、カルボキシメチル化置換度75%、脱アセチル化度27%、重量平均分子量20万]の5重量%水溶液に架橋剤としてグリセロールポリグリシジルエーテル[ナガセ化成工業(株)製]をカルボキシメチルキチンの重量に対し5%添加、溶解し、カルボキシメチルとグリセロールポリグリシジルエーテルの混合水溶液を調整した。
【0072】
市販の人工歯根[POIシステム FINAFIX 3Piece Fixture、長さ8mm、直径3.7mm、表面の材質はチタン合金、京セラ(株)製]表面に筆でカルボキシメチルとグリセロールポリグリシジルエーテルの混合水溶液を塗布し、人工歯根表面のねじ切り面の溝部分を全て混合水溶液で埋めた。
【0073】
これを凍結乾燥機(FREEZE DRYER FD−5N 東京理化機器(株)製)で凍結乾燥し、カルボキシメチルキチンを被覆した人工歯根を得た。さらにこの人工歯根を110℃で4時間加熱処理することにより架橋を行い架橋カルボキシメチルキチン被覆人工歯根を得た。
▲2▼人工歯根 Ti−Tの調整
実施例1の▲1▼で調整した固形物0.0585g(溶出成分0.015g)を7.5mlの蒸留水に溶解し、溶解液0.1gを採取して▲1▼で調整した架橋カルボキシメチルキチン被覆人工歯根の表面に均一に染み込ませた。これを凍結乾燥機(FREEZE DRYER FD−5N 東京理化機器(株)製)で凍結乾燥し、ヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分を担持した人工歯根(Ti−T)を得た。このHA−Tをポリエチレンの袋の中に密閉し、(株)東芝製の紫外線滅菌ランプ(15ワット)より30cm下方に置き、表裏それぞれに30分づつ紫外線照射を行うことにより滅菌処理を施し、5℃の冷蔵庫中で保管した。
【0074】
また人工歯根の表面に対するヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分の平均担持量は0.12mg/平方センチメートルであった。
【0075】
(比較例1)
人工歯根(HA−B)の調整
使用した人工歯根の材質:ヒドロキシアパタイト
使用した生体吸収性材料:架橋ゼラチン
▲1▼1%コラゲナーゼ含有pH7の生理食塩水の調整
1%コラゲナーゼ含有pH7の生理食塩水15mlを調整、凍結乾燥装置(FREEZE DRYER FD−5N 東京理化機器(株)製)を用いて凍結乾燥を行うことで固形物0.29g(セメント質からの溶出成分0g、コラゲナーゼ0.15g、塩化ナトリウム0.14g)を得た。
▲2▼架橋ゼラチン膜の調整
実施例1の▲2▼と同様の方法で架橋ゼラチン膜を得た。
▲3▼セメント質からの溶出成分を担持していない架橋ゼラチン膜の調整
▲1▼で調整した固形物0.044g(セメント質からの溶出成分0g)を15mlの蒸留水に溶解し、ポリメチルメタクリレート板(大きさ10×10cm、厚さ2mm)の片面に幅1cm、厚さ1.0mmのシリコン製のテープで縁取りし、その内側(8×8cm)に上記溶解液1.5gを採取し、流延した。さらにその上に▲2▼で調整した架橋ゼラチン膜をかぶせる様にして、乗せ、溶解液を架橋ゼラチン膜に吸収させたあと、凍結乾燥機(FREEZE DRYER FD−5N 東京理化機器(株)製)を用いて凍結乾燥を行い膜を得た。
▲4▼HA−B調整
市販の人工歯根[アパセラム、長さ9mm、直径4.5mm、表面の材質はヒドロキシアパタイト、(株)旭光学製]表面に、市販のゼラチン[(株)新田ゼラチン、6.66%水溶液にしたときの粘度31mp、ゼリー強度94g]2重量%水溶液を作製し、これを小筆で薄く塗布した。▲3▼で調整した架橋ゼラチン膜を適当な大きさに切断し、人工歯根の表面に一重隙間が開かないように貼り付けた。これを凍結乾燥装置(FREEZE DRYER FD−5N 東京理化機器(株)製)で凍結乾燥し、比較例の人工歯根(HA−B)を得た。
【0076】
HA−Bをポリエチレンの袋の中に密閉し、(株)東芝製の紫外線滅菌ランプ(15ワット)より30cm下方に置き、表裏それぞれに30分づつ紫外線照射を行うことにより滅菌処理を施し、5℃の冷蔵庫中で保管した。
【0077】
(比較例2)
人工歯根(Ti−B)の調整
使用した人工歯根の材質:チタン合金
使用した生体吸収性材料:架橋カルボキシメチルキチン
▲1▼架橋カルボキシメチルキチン被覆人工歯根の調整
実施例2の▲1▼と同様の方法で調整した。
▲2▼人工歯根 Ti−Bの調整
比較例1の▲1▼で調整した固形物0.044g(溶出成分0g)を7.5mlの蒸留水に溶解し、溶解液0.1gを採取して▲2▼で調整した架橋カルボキシメチルキチン被覆人工歯根の表面に均一に染み込ませた。これを凍結乾燥機(FREEZE DRYER FD−5N 東京理化機器(株)製)で凍結乾燥し、比較例の人工歯根(Ti−B)を得た。Ti−Bをポリエチレンの袋の中に密閉し、(株)東芝製の紫外線滅菌ランプ(15ワット)より30cm下方に置き、表裏それぞれに30分づつ紫外線照射を行うことにより滅菌処理を施し、5℃の冷蔵庫中で保管した。
【0078】
(試験例)
実験動物にはアカゲザル2頭を用いた。術前処置として、人工歯根植立部位を確保するため、下顎左右側の第1、第2小臼歯と第1大臼歯を抜去した。3ヶ月後、アカゲザル一頭には、下顎右側無歯顎部に実施例1で調整したHA−Tを、下顎左側無歯顎部に比較例1で調整したHA−Bを植立した。またもう1頭のアカゲザルには下顎右側無歯顎部に実施例2で調整した人工歯根Ti−Tを、下顎左側無歯顎部にTi−Bを植立した。
【0079】
手術は、まず無歯顎部近遠心での垂直切開と歯肉粘膜境界部より1mm頬側での横切開を行った後、全層歯肉弁を剥離、骨面を露出した。続いて、人工歯根植立キットを用いて、顎骨に人工歯根植立穴を開け、人工歯根を埋入した。その後、歯肉弁を元の位置で縫合した。尚HA−T、HA−Bでは直径5mmの人工歯根植立穴を、またTi−T、TI−Bでは直径4mmの人工歯根植立穴を開けて埋入した。
【0080】
動物は人工歯根埋入後12週で屠殺した。断頭後直ちに、左右の総頸動脈より2.5%グルタールアルデヒド−2.0%パラホルムアルデヒド(pH7.2、4℃)で潅流固定した。
【0081】
その後サルの顎の術部から人工歯根体、骨、歯肉を一塊として取り出した。採取した組織ブロックは上記固定液で7日間固定した。固定後、実験領域をダイヤモンドノコギリで頬舌的に切断し、テクノビット7200樹脂に包埋した。
【0082】
重合した各包埋試料は、ダイヤモンドノコギリを用いて約300μm厚に切断し、続いて研磨機で厚さ100μmの研磨切片を作製した。切片はヘマトキシン・エオジン染色を施し、光学顕微鏡にて観察した。
【0083】
次の表に観察結果を示した。
【0084】
【表1】
Figure 0004836318
【0085】
上記表1に示すように、本発明品のHA−TおよびTi−Tは、いずれも人工歯根上にセメント質の沈着が見られ、また血管を伴った線維性結合組織が形成されるので、歯根膜が形成されていく途上にあったのに対し、比較例品のHA−B、Ti−Bはいずれも人工歯根が周囲の組織と骨性癒着していた。
【0086】
【発明の効果】
以上のように本発明の人工歯根によれば、ヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分は線維芽細胞、骨芽細胞、セメント芽細胞に活性を有しているので、表面のヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分が基材表面にセメント質を新生させ、さらに骨との間に歯根膜を再生させ、その際、セメント質と歯槽骨がコラーゲン線維束で結びつけられるので、人工歯根周囲に天然歯と同様の機能を有する歯根膜を安全に形成する。
【0087】
また、本発明の人工歯根は、ヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分が哺乳類の歯などから容易かつ安価に入手でき、さらに、その含有濃度が小さくても十分な効果を奏するため、工業的に安定した品質で、かつ安価に供給することができる。
【0088】
また、本発明において、ヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分を含む生体吸収性膜を表面に被着した場合、人工歯根の表面に上記タンパク質成分を容易に固定することができ、タンパク質成分の除放速度を制御ができる。さらに生体吸収性材料が人工歯根周囲にセメント質及び歯根膜が形成されるされるまでの期間では細胞の足場として働き、歯根膜形成後には吸収分解される。以上の理由から人工歯根の周囲にセメント質及び歯根膜を形成する機能が良好なものとなる。
【0089】
次に、本発明において、上記ヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分の担持量を0.00001mg〜15mg/平方センチメートルであるようにすること、及び/又は、上記ヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分に含まれるヒドロキシプロリン残基の含有量を全アミノ酸残量に対して0.01〜10%であるようにすることで、人工歯根の周囲にセメント質及び歯根膜を形成する機能が良好なものとすることができる。
【0090】
また、本発明において、上記ヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分を哺乳類の歯のセメント質から抽出することで、ヒトは起源が哺乳類と近いため、哺乳類の歯のセメント質に含まれるタンパク質の構造がヒトのセメント質に含まれているタンパク質の構造が他の類よりも類似しているため、人工歯根の周囲にセメント質及び歯根膜を形成する機能が良好なものとなる。
【0091】
さらに、牛または豚の歯のセメント質を用いるようにすると、食用に牛や豚などが屠殺されるので、それらの歯から容易にまた安価にセメント質を入手することができる。

Claims (3)

  1. チタンからなる基材の骨内埋入部分の表面にヒドロキシプロリン残基含有タンパク質を含むタンパク質成分を易水溶性の状態で担持してなる歯根膜形成能を有する人工歯根であって、
    前記骨内埋入部分の表面に架橋カルボキシメチルキチンが被着するとともに、架橋カルボキシメチルキチンには、前記タンパク質成分の溶解液を含浸して乾燥することによって、前記タンパク質成分が担持されていることを特徴とした人工歯根。
  2. 前記タンパク質成分が哺乳類の歯のセメント質から抽出したタンパク質成分であることを特徴とした請求項1記載の人工歯根。
  3. 前記哺乳類が牛または豚であることを特徴とした請求項2記載の人工歯根。
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