JP4824376B2 - 新聞古紙由来の脱墨パルプの製造方法 - Google Patents

新聞古紙由来の脱墨パルプの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は新聞古紙由来の脱墨パルプの製造方法に関して、新聞古紙由来の脱墨パルプに多く含まれる微粒化、或は溶解したケイ酸塩系填料を再難溶化して、新聞古紙由来の填料を含む灰分の歩留りを効率良く向上して、生産コストの低減と環境負荷の軽減を両立できるものを提供する。
従来、古紙を回収して再利用するには、脱墨剤や漂白剤などの薬剤を用いてパルプスラリーから古紙由来のインクなどの不要成分を除去し、できるだけ純度の高いパルプ繊維を回収する必要がある。このため、脱墨パルプは、基本的に、古紙をパルパーで離解し、粘着テープなどの異物をスクリーンで除塵し、水で希釈したパルプスラリーにフローテーターで気泡を吹き付けてインクをパルプから分離した後、再び脱水濃縮し、漂白することなどにより製造されている。
従って、パルプ繊維以外の成分は異物としてなるべく排除されるため、重量で約5〜40%程度を占める古紙由来の填料若しくは灰分は、紙の品質向上に有用であるにも拘わらず、脱墨工程における洗浄や脱水などの過程を経てパルプから用水中へ相当量が脱落してしまい、その一部は回収されて抄紙系に添加されるが、その他の大部分は工場排水と共に廃棄物として処分されているのが実情である。
填料として用いられる無機微粒子にはケイ酸塩系の化合物が広く使用されており、例えば、新聞原紙に添加されるホワイトカーボンがその代表的な例である。
一般に、脱墨工程は紙に添加されている樹脂成分の分解、パルプ繊維の膨潤、或は、過酸化水素による漂白などを促進するため、水酸化ナトリウム、ケイ酸ナトリウムなどが使用される強アルカリ条件下で行われるが、このような条件に晒されると水不溶のケイ酸塩系化合物でも、一部はやがて分解されて水溶性のケイ酸ナトリウムへと変化し、微粒化や溶解した状態になって、パルプに歩留まって抄紙系へ送られる可能性は極めて低くなってしまう。
このように、近年、環境保全や資源の有効利用の観点から、填料を含む灰分の歩留りを高めて、排水量や廃棄物を低減することが要請されているが、その実現は容易でない。
特許文献1には、インキ除去効率を維持しながら、原料古紙に含まれる灰分の歩留りを高く維持することを目的として、動的条件又は静的条件での表面張力を特定化した界面活性剤(実施例では、高級アルコール系、或はノニオン系の界面活性剤など;段落32〜33参照)の溶液を、フローテーション工程以前に添加する再生パルプの製造方法が開示されている。
特許文献2には、重量平均分子量50万〜500万であり、アクリルアミド40〜99.3モル%、カチオン性単量体0.5〜50モル%、アニオン性単量体0.2〜10モル%を単量体組成とする水溶性両性アクリルアミド系重合体をフローテーション又はその前工程に含有することにより、ピッチ、填料を含む灰分(段落2)、インクなどの異物を効果的に除去する古紙脱墨工程フローテーターの異物除去剤が開示されている(請求項1〜4)。
特許文献3には、カチオン性界面活性剤、水溶性カチオン性有機ポリマー及び水溶性両性系有機ポリマーから選ばれた1種以上の化合物、或は、水溶性アニオン系有機ポリマー及び水溶性ノニオン系有機ポリマーから選ばれた1種以上をさらに併用することにより、古紙(例えば、雑誌古紙)からホットメルト接着樹脂を除去する助剤が開示されている(請求項1〜4)。
特許文献4には、脱墨工程で得られた古紙再生パルプに対して他のパルプと配合される前に、重合系カチオン性高分子及び/又は重縮合系カチオン性物質(例えば、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリドなど)からなるカチオン系凝結剤を添加することで(段落17参照)、古紙再生パルプの濁度を低下させ、抄紙原料に対する薬品添加量の減少、結果として系内の汚れや欠陥発生を抑制することを目的とした古紙再生パルプ、或は当該パルプを用いて抄造した紙が開示されている(請求項1〜5参照)。
特許文献5には、ビス第四アンモニウム(メタ)アクリルアミドと、アミノアルキル(メタ)アクリレート又はアミノアルキル(メタ)アクリルアミドのカチオンモノマーに、(メタ)アクリルアミドを、さらに必要に応じて、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、その塩など(第3頁)の不飽和カルボン酸類を共重合した水溶性共重合体を有効成分とする製紙用添加剤を用いることにより、中性ないしアルカリ領域での紙の抄造において、サイズ剤、填料の歩留りなどを向上することが開示されている(特許請求の範囲、第2頁左下欄〜右下欄)。
特許文献6には、高灰分で高白色度の古紙パルプを製造し、スラッジ灰並びに填料を低減することを目的として、古紙パルプ完成前工程の洗浄又は/及び脱水工程で古紙パルプに対して凝結剤を添加することが開示されている(請求項1参照)。
当該凝結剤としては、硫酸アルミニウム、或は、ポリアクリルアミド、ポリダドマックなどの水溶性カチオン性ポリマーなどが列挙されており(請求項4、段落18参照)、実施例1〜7では、高灰分印刷古紙を用いた古紙パルプの製造工程において、脱水前のパルプスラリー又は洗浄シャワー水に当該水溶性カチオン性ポリマーを使用する例が記載されている(段落22、表1参照)。
特許文献7には、上記文献6と同様の目的で、古紙パルプに対して、(古紙パルプの製造工程の最終段階である)抄紙機の原料調整工程へ流送する前に凝結剤を添加することが開示されている(請求項1、段階10参照)。
当該凝結剤としては、硫酸アルミニウム、或は、ポリアクリルアミド、ポリダドマックなどの水溶性カチオン性ポリマーなどが列挙されており(請求項3、段落12参照)、実施例1〜7では、高灰分印刷古紙を用いて脱墨処理された古紙パルプを使用して、古紙パルプタンクから古紙パルプが送給される流送チェストの下流側、又は流送ポンプの上流側に当該水溶性カチオン性ポリマーを使用する例が記載されている(段落23、表1参照)。
特開2003−293277号公報 特開2002−115191号公報 特開2001−159084号公報 特開2005−179831号公報 特開昭62−85100号公報 特開2005−206979号公報 特開2005−206978号公報
特許文献5は脱墨パルプの製造に関するものではなく、一般の抄紙工程でのサイズ剤などの歩留りの改善を目的とするものなので、脱墨パルプの製造工程を前提とし、その中での填料の歩留りを改善しようとする本発明とは技術分野や目的がまったく異なる。
特許文献2は、脱墨パルプの製造に際して、ピッチ、灰分、インクなどの異物を除去することを目的とし、特許文献3も、ホットメルト接着樹脂を除去するという特殊なものであるため、脱墨工程での填料の歩留りを改善しようとする本発明とは目的がそもそも逆である(即ち、先行文献が填料などの除去であり本発明が回収である)。
特許文献4は、脱墨工程の後の抄紙工程での古紙再生パルプの濁度低下などを目的としたもので、脱墨工程中での填料の歩留りなどを改善しようとする本発明とは、その目的や課題が異なる。
一方、特許文献1は、特定のパラメーターを有する界面活性剤をフローテーション工程以前に添加して、原料古紙に含まれる灰分の歩留りを高く維持することを目的とするものであるが、実際には、填料を含む灰分の歩留りを改善するには不充分な点がある。
また、上述したように、特許文献2はピッチ、灰分、インクなどの除去を目的として、水溶性両性アクリルアミド系重合体をフローテーション工程又はその前工程に添加するものであるが、後述の試験例に示す通り、実際に当該重合体をフローテーション工程中に添加すると、粘着性の強い泡を巻き込んだスラリーになり、インクが良好に分離できず、脱墨工程自体に支障が出てしまう。
さらに、特許文献6〜7は古紙パルプ完成前工程の洗浄又は/及び脱水工程に、或は、抄紙機の原料調整工程へ流送する前に凝結剤を添加するものであるが、同時に、各実施例にも示す通り、凝結剤は高灰分印刷古紙からなるパルプを対象として添加されており、当該高灰分の印刷古紙紙に用いる填料は炭酸カルシウム、カオリン、タルクなどが一般的であり、これらはアルカリ条件下でも比較的安定である。
これに対して、新聞原紙に用いる填料はいまだホワイトカーボンと呼ばれるケイ酸化合物が主流であり、その主原料はシリカであるため、アルカリ条件では容易に粒子が崩壊して、最終的には水溶性のケイ酸ナトリウム塩に変化してしまう。
従って、上記特許文献6〜7の方法を新聞古紙由来のパルプスラリーにそのまま適用しても、填料を含む灰分を歩留り良く回収することは容易でない。
しかも、新聞原紙にあっては、他の印刷用紙に比べてリサイクル率が非常に高く、再利用可能な品質にするために強いアルカリ条件かつ高温下で処理されていることも、古紙パルプ中の灰分を高く維持するのが困難な要因となっている。
本発明は、新聞古紙由来のパルプスラリーから填料を含む灰分を歩留り良く回収して、これを有効利用することを技術的課題とする。
一般に、古紙に含まれる填料又は灰分はあらゆる荷電状態を持っており、また、インクに比べると比重が大きく疎水性が小さくて泡への付着が弱いなどの性質がある。
本出願人は、この知見に基づいて、先に、特願2004−221108号(以下、先願技術という)で、気泡にインクを付着させて浮上分離させるフローテーション工程の後に、適正な大きさの分子量を有する水溶性両性共重合体を作用させることで、あらゆる荷電状態を持つ填料をパルプ繊維に効率良く凝結させて、填料を含む灰分の歩留まりを有効に向上する脱墨パルプの製造方法を提案した。
本発明者らは、上記先願技術をさらに改良し、特に、新聞古紙由来の脱墨パルプに多く含まれるケイ酸塩系填料に対する適性の向上を目的として、当該ケイ酸塩系填料に酸類や多価金属系化合物などを作用させて、微粒化又は溶解したケイ酸塩系填料を再難溶化させるとともに、さらに、この難溶化物に先願技術の水溶性両性共重合体に見るように、カチオン性モノマー、或いはこれに加えてアニオン性モノマーを構成成分とし、さらに架橋性モノマーや連鎖移動剤を使用した所定の水溶性である両性或いはカチオン性ポリアクリルアミド系共重合体を作用させると、ケイ酸塩系填料の再難溶化とその凝集により填料を含む灰分の歩留りをより効果的に改善できることなどを見い出して、本発明を完成した。
即ち、本発明1は、脱墨処理に際して、新聞古紙由来のケイ酸塩系填料を含むパルプスラリー中に脱墨パルプ製造用添加剤を添加する脱墨パルプの製造方法において、
脱墨パルプ製造用添加剤が、(A)水溶性ケイ酸塩を難溶化させる物質と、(B)水溶性高分子物質との組み合わせであり、
(A)難溶化物質が無機酸類、C1〜C4の有機酸類、多価金属塩、多価金属酸化物、多価金属水酸化物、多価金属塩縮合物から選ばれた少なくとも1種であり、
(B)水溶性高分子物質が(a)(メタ)アクリルアミドと、(b)カチオン性モノマーとを構成成分とし、又は(a)(メタ)アクリルアミドと、(b)カチオン性モノマーと、(c)アニオン性モノマーとを構成成分とし、さらに(d)架橋性モノマー及び/又は(e)連鎖移動剤を使用して重合した水溶性イオン性ポリアクリルアミド系共重合体であって、
フローテーション工程でインクを分離したパルプスラリーの脱水工程の前に当該添加剤を添加することにより、新聞古紙由来の填料を含む灰分の歩留りを向上可能にすることを特徴とする脱墨パルプの製造方法である。
本発明2は、上記本発明1において、(A)難溶化物質が多価金属酸化物、多価金属水酸化物、多価金属塩縮合物の少なくとも一種であり、(B)水溶性高分子物質が両性高分子物質であることを特徴とする脱墨パルプの製造方法である。
本発明3は、上記本発明1又は2において、カチオン性モノマー(b)が、1〜3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、1〜3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリルアミド、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート、ジアリルジアルキルアンモニウムハライドの少なくとも一種である事を特徴とする脱墨パルプの製造方法である。
本発明4は、上記本発明1〜3のいずれかにおいて、アニオン性モノマー(c)が、α,β−不飽和カルボン酸類、α,β−不飽和スルホン酸類の少なくとも1種であることを特徴とする脱墨パルプの製造方法である。
(1)従来では、新聞古紙由来の脱墨パルプに多く含まれるケイ酸塩系填料は、強いアルカリ条件下で微粒化、或は溶解し易く、パルプ繊維に歩留る可能性は低かった。
これに対して、本発明は前記先願技術をさらに改良し、先願技術の水溶性両性共重合体と同様にポリアクリルアミド系の水溶性で両性又はカチオン性の高分子物質(B)に加えて、新聞古紙由来の脱墨パルプに多く含まれるケイ酸塩系填料を難溶化させる物質(A)を新たに併用したものである。
即ち、本発明では、強アルカリ条件下で微粒化又は溶解したケイ酸塩系填料を上記成分(A)により再難溶化し、この難溶化物を成分(B)で円滑に凝集するため、填料を含む灰分を先願技術よりもさらに歩留り良く回収できる。このため、脱墨工程後の抄紙工程での作業者の操作性(使い勝手)が向上する。
尚、上記特許文献4は、フローテーション工程の後に薬剤を添加する点で本発明と共通するが、前述したように、当該文献4は脱墨工程後の抄紙工程での古紙再生パルプの濁度低下などを目的とするため、脱墨工程中での填料の歩留り向上を図る本発明とは目的や課題が異なる。
また、上記特許文献6〜7は古紙パルプ完成前工程の洗浄又は/及び脱水工程に、或は、抄紙機の原料調整工程へ流送する前に薬剤を添加する点で本発明に近いが、これらは実施例にも示す通り、アルカリ条件下でも比較的安定な炭酸カルシウム、カオリン、タルクなどの填料を用いた高灰分印刷古紙からなるパルプを対象とするため、アルカリ条件下で容易に溶解又は微粒子化するケイ酸塩系填料を主に用いる新聞古紙由来のパルプスラリーにそのまま適用しても、填料を含む灰分の充分な回収は容易でない。
(2)上述の通り、新聞古紙由来の脱墨パルプに多く含まれるケイ酸塩系填料は、成分(A)で効果的に再難溶化でき、この再難溶化作用と、成分(B)による難溶化物の凝集作用とにより、填料を含む灰分の歩留り効率は円滑に改善できる。
従って、本発明の製造方法は新聞古紙由来の脱墨パルプに対する適性が高い。
また、本発明の脱墨パルプを用いて新聞用紙を抄造すると、脱墨パルプには填料(特に、ケイ酸塩系填料)が効率良く歩留っているため、ホワイトカーボンなどの新たな填料の補充量を有効に削減できる。
ちなみに、脱水工程の後では比重が大きい填料を含む灰分は用水中に脱落してしまうため、本発明の脱墨パルプ用添加剤はフローテーション工程の後であって、しかも脱水工程の前に添加する必要がある。
本発明は、新聞古紙由来のパルプスラリー中に脱墨パルプ製造用添加剤を添加する脱墨パルプの製造に際して、水溶性ケイ酸塩を難溶化させる物質(A)とポリアクリルアミド系の水溶性高分子物質(B)を組み合わせた混合物を添加剤として、フローテーション工程の後で、且つ、脱水工程の前に添加する脱墨パルプの製造方法である。
上記新聞古紙由来のパルプスラリーとは、新聞古紙由来分を含むパルプスラリーであってケイ酸塩系填料を多く含むものをいい、従って、新聞古紙だけを含むパルプスラリーに限らず、新聞古紙以外に他種の再生古紙などを含むパルプスラリーを包含する概念である。要するに、強アルカリ条件下で微粒化又は溶解し易いケイ酸塩系填料を効率良く回収することを目的とした本発明にあっては、適用対象となるパルプスラリーは、新聞古紙由来分を中心として、このようなケイ酸塩系填料を多く含むパルプスラリーなのである。
上記難溶化物質(A)は無機酸類、C1〜C4の有機酸類、多価金属塩、多価金属酸化物、多価金属水酸化物、多価金属塩縮合物から選ばれた少なくとも1種であり、上記水溶性高分子物質(B)はポリアクリルアミド系の水溶性両性高分子物質、水溶性カチオン性高分子物質から選ばれた少なくとも一種である。
本発明の脱墨パルプ用添加剤の一方の難溶化物質(A)は、脱墨工程での強いアルカリ条件を酸性側に調整する酸性化剤と、ケイ酸塩との結合機能を有する多価金属系化合物との両者を包含する概念である。
上記酸性化剤は無機酸類、有機酸類をいう。無機酸類は硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ホウフッ酸、スルファミン酸、ポリリン酸などの任意の酸類である。特に、有機酸類はC1〜C4の有機酸類であり、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、マレイン酸、フマル酸、乳酸などが具体例である。従って、前記特許文献1や3には、ステアリン酸、パルミチン酸などの高級脂肪酸系脱墨剤、オレイン酸などの消泡剤が開示されているが、これらの高級脂肪酸は本発明から排除される。
上記多価金属系化合物は多価金属塩、多価金属酸化物、多価金属水酸化物、多価金属塩縮合物をいう。多価金属は、実用面からカルシウム、アルミニウム、鉄、マグネシウム、バリウムなどが代表的である。多価金属系化合物の具体例は、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸第二鉄、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄、アルミン酸塩などが挙げられる。
当該成分(A)としては、酸性化剤より多価金属系化合物が効果的であり、多価金属系化合物にあっては、同時に酸性を呈する(つまり、酸性化剤としての作用を兼備する)化合物がより効果的である。
難溶化物質(A)としては、本発明2に示すように、酸性を呈する化合物が多く属し、比較的少量でも効果的な酸化カルシウムなどの多価金属酸化物、水酸化マグネシウムなどの多価金属水酸化物、或は、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄などの多価金属塩縮合物が好ましい。
上記成分(A)は単用又は併用でき、パルプスラリーへの添加量は任意であり、特に制限はない。
本発明の脱墨パルプ用添加剤の他方は水溶性高分子物質(B)であり、水溶性両性高分子物質、水溶性カチオン性高分子物質より選ばれる。これらの高分子物質はホモポリマー、或は共重合体の両方を包含する。また、重合反応或は重縮合反応などにより得られた生成物をいう。
上記水溶性高分子物質は、水溶性イオン性のポリアクリルアミド(PAM)系共重合体である。但し、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDADMACと略す)、ポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂(PAEと略す)、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸などのPAM系以外の任意の水溶性高分子物質についても、前記水溶性イオン性PAM系共重合体と同様に、難溶化物の凝集作用の点で有効である。
上記水溶性イオン性PAM系共重合体としては、本発明1に示すように、(a)(メタ)アクリルアミドと、(b)カチオン性モノマーと、(c)アニオン性モノマーとを構成成分とする水溶性両性共重合体、或いは上記成分(a)と成分(b)を構成成分とする水溶性カチオン性共重合体が挙げられ、水溶性アニオン性共重合体は本発明から排除される
上記(メタ)アクリルアミド(a)は、アクリルアミド(AMと略す)、メタクリルアミドを意味する。
上記水溶性両性PAM系共重合体の構成単位であるカチオン性モノマー(b)は、1〜3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、1〜3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリルアミド、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート、ジアリルジアルキルアンモニウムハライドを初めとして(本発明4参照)、分子内にカチオン性基を1個乃至複数個有するものであり、例えば、4級アンモニウム塩基含有モノマーでは、下記の一般式(1)で示される化合物が代表例である。
[CH2=C(R1)−CO−A−R2−N+(R3)(R4)(R5)]X- …(1)
(式(1)中、R1はH又はCH3;R2はC1〜C3アルキレン基;R3、R4、R5はH、C1〜C3アルキル基、ベンジル基、CH2CH(OH)CH2+(CH3)3-であり、夫々同一又は異なっても良い;AはO又はNHである;Xはハロゲン、アルキルスルフェートなどのアニオン)
上記1〜2級アミノ基含有(メタ)アクリルアミドは、アミノエチル(メタ)アクリルアミドなどの1級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、或は、メチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドなどの2級アミノ基含有(メタ)アクリルアミドである。
また、上記3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミドは、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド(ジメチルアミノプロピルアクリルアミドはDMAPAAと略す)、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドを代表例とする。
上記1〜2級アミノ基含有(メタ)アクリレートは、アミノエチル(メタ)アクリレートなどの1級アミノ基含有(メタ)アクリレート、或は、メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの2級アミノ基含有(メタ)アクリレートである。
また、上記3級アミノ基含有(メタ)アクリレートは、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートを代表例とする。
上記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリルアミド、又は4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレートは、3級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリルアミド、又は3級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレートを塩化メチル、塩化ベンジル、硫酸メチル、エピクロルヒドリンなどの4級化剤を用いたモノ4級塩基含有モノマーであり、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(DMAPAA-Qと略す)、アクリルアミドプロピルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、メタクリロイロキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド(DM-BQと略す)、アクリロイロキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリエチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイロキシエチルトリエチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
また、カチオン性モノマー(b)としては、両性共重合体の填料の凝集力を増す見地から、分子内に2個の4級アンモニウム塩基を有するビス4級塩基含有モノマーが好ましく、具体的には、2個の4級アンモニウム塩基を有するビス4級塩基含有(メタ)アクリルアミド、或はビス4級塩基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。ビス4級塩基含有(メタ)アクリルアミドの例としては、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドに、1−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドを反応させて得られるビス4級塩基含有(メタ)アクリルアミド(DMAPAA-Q2と略す)がある。このDMAPAA-Q2は、上記カチオン性モノマーの一般式(1)において、R1=H、R2=プロピレン基、A=NH、R3とR4は各メチル基、R5=CH2CH(OH)CH2+(CH3)3Cl-、X=塩素に相当する化合物である。
一方、上記4級アンモニウム塩基含有のカチオンモノマーに属するジアリルジアルキルアンモニウムハライドは、例えば、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMACと略す)である。
前記水溶性両性PAM系共重合体の構成単位であるアニオン性モノマー(c)は、本発明4に示すように、α,β−不飽和カルボン酸類、α,β−不飽和スルホン酸類である。
上記不飽和カルボン酸類は(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸(FAと略す)、イタコン酸(IAと略す)、(無水)シトラコン酸、そのナトリウム、カリウム、アンモニウム塩などである。
上記不飽和スルホン酸類は、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、その塩などである。
前記水溶性両性PAM系共重合体の構成単位のうち、(メタ)アクリルアミド(a)の含有量は、填料を凝集すべき共重合体の分子骨格の適性化や、カチオン性モノマー(b)やアニオン性モノマー(c)の含有量の適正化を担保できる範囲で任意に選択できる。
上記カチオン性モノマー(b)は単用又は併用でき、両性共重合体に対する含有量は、飽和状態になったカチオン電荷でポリマー同士が反発しない範囲で任意に選択できる。
また、上記アニオン性モノマー(c)は単用又は併用でき、低pH領域においてカルボキシル基(酸)の固定化により水溶性が低下しない範囲で任意に選択できる。
本発明の水溶性両性PAM系共重合体においては、上記成分(a)〜(b)、或いはこれに加えて成分(c)を構成成分とし、さらに、架橋性モノマー(d)及び/又は連鎖移動剤(e)を使用して、共重合体に分岐架橋構造を持たせている。
上記架橋モノマー(d)は共重合体の分子量を増し、灰分を歩留らせる活性点を増大させるために寄与し、メチレンビスアクリルアミド(MBAMと略す)、エチレンビス(メタ)アクリルアミドなどのビス(メタ)アクリルアミド類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート類、ジメチルアクリルアミド(DMAMと略す)、メタクリロニトリルなどが使用できる。
上記連鎖移動剤は共重合体の粘度の増大を抑制し、分岐構造を増して分子量を調整する作用をし、イソプロピルアルコール(IPAと略す)、メタリルスルホン酸ナトリウム(SMSと略す)、n−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、チオグリコール酸等のメルカプタン類などの公知の連鎖移動剤が使用できる。
さらに、前記水溶性両性共重合体では必要に応じて、他のモノマーとして、アクリロニトリルなどのノニオン系モノマーを使用しても差し支えない。
本発明の水溶性高分子物質(B)が水溶性カチオン性PAM系共重合体の場合には、上記両性PAM系共重合体のうち、成分(a)と成分(b)を構成成分とする重合反応により得られる。
このカチオン性共重合体の場合には、成分(a)〜(b)で使用できる具体的化合物は両性共重合体の場合と同様である。また、必要に応じて、他のモノマーとして、アクリロニトリルなどのノニオン系モノマーを使用できる点も両性共重合体の場合と同様である。
さらに、前記両性共重合体の場合と同様に、架橋性モノマー(d)及び/又は連鎖移動剤(e)を使用して、共重合体に分岐架橋構造を付与する。
本発明では、水溶性高分子物質(B)は上記両性、カチオン性の高分子物質を単用又は併用できる。パルプスラリーへの添加量は任意であり特に制限はない。水溶性高分子物質(B)においては、両性、アニオン性高分子物質がより効果的である。
水溶性高分子物質(B)については、分子量50万〜1000万程度が好ましく、100万〜600万がより好ましい。一般に、分子量が増大すると、カチオン電荷量及び/又はアニオン電荷量が増し、灰分の捕捉機能の向上に寄与する。
この水溶性高分子物質(B)の分子量の調整には、上記架橋性モノマーや連鎖移動剤を使用する。また、例えば、成分(b)に上記DMAPAA−Q2のビス4級塩基含有モノマーを使用すると、高分子の電荷量の増大に寄与する。
一方、本発明の脱墨パルプ用添加剤は難溶化物質(A)と水溶性高分子物質(B)を組み合わせた混合物であるが、この両者の組み合わせは任意であり、特に制限はない。
本発明は、上記成分(A)と(B)からなる脱墨パルプ用添加剤をパルプスラリーに添加することを特徴とする。
この添加態様を説明すると、パルプスラリーに成分(A)と(B)を同時に添加しても良いし、時間差を設けて添加しても良い。同時添加の場合には、例えば、予め成分(A)と成分(B)の希釈混合液を調製して、この混合液をパルプスラリーに添加しても良いし、成分(B)の製造工程で得られる水溶液に成分(A)を添加して成分(A)と(B)の複合液を調製し(即ち、一液化し)、この複合液を添加しても良い。時間差による添加では、成分(A)の後に成分(B)を添加しても良いし、その逆の順序でも良い。
このように、本発明では、強アルカリ条件下で微粒化又は溶解したケイ酸塩系填料を上記成分(A)により再難溶化し、この難溶化物を成分(B)で円滑に凝集するため、新聞古紙由来の脱墨パルプを製造する際に特に好適である。
尚、本発明の添加剤においては、上記成分(A)と(B)の他に、公知の凝集剤(カチオンポリマーなど)を併用できることはいうまでもない。
以下、本発明の水溶性高分子物質(B)のうち、イオン性PAM系共重合体の合成例、各合成例で得られたPAM系共重合体、或はPAM系以外の水溶性高分子物質(即ち、成分(B))と難溶化物質(A)とを組み合わせた脱墨パルプ用添加剤を用いた新聞古紙由来の脱墨パルプの製造実施例、各実施例で得られた脱墨パルプシートにおける填料を含む灰分の歩留り率(%)の測定試験例を順次説明する。各合成例、実施例に記載した「%」、「部」は基本的に重量基準である。
尚、本発明は下記の合成例、実施例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
《水溶性イオン性PAM系共重合体の合成例》
下記の合成例1〜4及び参考合成例1のうち、合成例1とは水溶性イオン性PAM系共重合体(B)がカチオン性共重合体の例であり、合成例1はカチオン性モノマー(b)に3級アミノ基含有アクリルアミドを使用した例、合成例4は同(b)に4級アンモニウム塩基含有アクリルアミドを使用して重合反応を行った後、難溶化物質(A)である塩化カルシウムを添加した例である。参考合成例1は成分(B)がアニオン性共重合体の例である。合成例2〜3は成分(B)が両性共重合体の例であり、合成例2はカチオン性モノマー(b)に4級アンモニウム塩基含有メタクリレートを使用した例、合成例3は同(b)にジアリルジアルキルアンモニウムクロリドを使用した例である。
ちなみに、上記合成例1〜4及び参考合成例1で得られた各PAM系共重合体水溶液の組成、粘度、固形分などの性状値を図1にまとめた。また、同図1においては、下記の架橋剤(d)及び連鎖移動剤(e)の含有量はモノマー成分(a)〜(c)の総モル量に対するモル%で表記した。
(1)合成例1
攪拌機、温度計、環流冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、50%アクリルアミド水溶液121g(71モル%)、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド7.5g(4モル%)、イソプロパノール3.6g(5モル%)及びイオン交換水236gを仕込み、硫酸にてpH3に調整し、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した。
次いで、系内を55℃とし、攪拌下で触媒として1%過硫酸アンモニウム水溶液5gを投入した後、90℃まで昇温した。その後、さらに50%アクリルアミド水溶液41.0g(24モル%)、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド1.87g(1モル%)を混合し、硫酸にてpH3に調整したモノマー水溶液を添加、続いて追加の触媒として1%過硫酸アンモニウム水溶液5gを投入し、重合熱を制御しながら3時間温度を保持した。
適度な粘度になったところで水50gを投入して冷却を行い、反応を終了させて、pH4.5、固形分20.7%、粘度(25℃)4900mPa・sのカチオン性PAM系共重合体水溶液を得た。
(2)合成例2〜3及び参考合成例1
上記合成例1を基本として、成分(a)〜(e)の種類とその含有量を、図1のように変更した他は、合成例1と同様な操作を行って、各種のイオン性PAM系共重合体水溶液を得た。
(3)合成例4
上記合成例1を基本として、成分(a)〜(e)の種類とその含有量を、アクリルアミド85モル%、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド15モル%、メタリルスルホン酸ナトリウム0.2モル%に変更した他は、合成例1と同様な操作を行って、カチオン性PAM系共重合体水溶液を得て、当該水溶液に100g(ポリマー部と同重量)の塩化カルシウムを混合させた。
そこで、上記合成例1〜4及び参考合成例1の各水溶性イオン性PAM系共重合体、又はPAM系以外の水溶性共重合体を水溶性高分子物質(B)として、水溶性ケイ酸塩を難溶化させる物質(A)と上記水溶性高分子物質(B)とを組み合わせた混合物を脱墨パルプ用添加剤に用いて、新聞古紙由来分を多く含むパルプスラリーから脱墨パルプシートを製造する実施例を述べる。
《成分(A)と成分(B)を併用した新聞古紙由来の脱墨パルプシートの製造実施例》
図2の左寄り2欄に示す通り、下記の実施例1〜4及び参考例1〜4のうち、実施例1〜4は難溶化物質(A)と前記合成例1〜3及び参考合成例1(即ち、PAM系の水溶性共重合体(B))をフローテーション工程の後に添加した例であり、参考例2〜4は難溶化物質(A)とPAM系以外の水溶性高分子物質(B)をフローテーション工程の後に添加した例である。実施例4は成分(B)の水溶液を製造した後に成分(A)を添加して1液化したものをフローテーション工程の後に添加した例である。また、実施例1〜3及び参考例1〜2はパルプスラリーに成分(A)を添加した後に成分(B)を添加した例、参考例3は逆に成分(B)を添加した後に成分(A)を添加した例である。参考例4は成分(A)と成分(B)の希釈混合液を添加した(即ち、同時添加した)例である。実施例4は上述のように成分(A)と(B)の複合水溶液を添加した例である。
一方、下記の比較例1〜6のうち、比較例1〜5は各種薬剤をフローテーション工程の後に添加し、或は添加しない例であり、比較例6は冒述の特許文献2などに準拠して、成分(A)と(B)からなる本発明の脱墨パルプ用添加剤をフローテーション工程中に添加した例である(図2の左寄り2欄参照)。
上記比較例1〜5のうち、比較例1は成分(A)と成分(B)を用いないブランク例である。比較例2は成分A(酸性化剤)のみで、成分Bのないブランク例である。比較例3は成分A(多価金属塩)のみで、成分Bのないブランク例である。比較例4は成分B(前記合成例1のカチオン性PAM系共重合体)のみで、成分Aのないブランク例である。比較例5は成分B(前記合成例5のカチオン性PAM系共重合体)と、成分A以外のケイ酸塩難溶化機能のない薬剤(水酸化カリウム)とを組み合わせ例である。比較例6は酸性化剤(成分(A))と前記合成例1のカチオン性PAM系共重合体(成分(B))とを添加した例である。
(1)実施例1
先ず、新聞古紙とチラシを、新聞古紙/チラシ=70/30(重量比)で配合したもの(灰分15%)を水道水に一昼夜浸漬し、ナイアガラ式ビーターにて離解した後、パルプスラリー濃度を2%に希釈した。これに市販脱墨剤のハリトップP−320(ハリマ化成(株)製)を添加し、フローテーション法による脱墨処理を行った。
次いで、フローテーションによりインク成分を除去したスラリーに、硫酸を1%、続いて前記合成例1の水溶性高分子水溶液を攪拌下で対パルプ0.1%の割合で添加し、200meshワイヤー上に流し入れて脱水させ、ウェットシートを得た。
このシートを乾燥機中で105℃にて6時間乾燥させ、乾燥パルプの重量を測定した後、JIS P8003に準じてパルプシートに歩留まった灰分を測定し、当初の灰分量(15%)に対する歩留り率(%)を算出した。
(2)実施例2〜実施例3、参考例1〜2
上記実施例1を基本として、図2に示す通り、パルプスラリーに添加する添加剤をそれぞれ変更し、その他は実施例1と同様な操作を行って、乾燥シートの灰分を測定した。
(3)参考例3
上記実施例1を基本として、パルプスラリーに、ポリエチレンイミン(成分(B))を対パルプ0.1%、続いてポリ塩化アルミニウム(成分(A))を対パルプ1%の割合で添加して、成分(A)と成分(B)を加える順序を逆にした以外は、実施例1と同様な操作を行って、乾燥シートの灰分を測定した。
(4)参考例4
上記実施例1を基本として、ポリ硫酸第二鉄水溶液(成分(A))とポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂水溶液(成分(B))を添加直前に希釈混合したものをパルプスラリーに添加し、その他は実施例1と同様な操作を行って、乾燥シートの灰分を測定した。
(5)実施例4
上記実施例1を基本として、パルプスラリーに前記合成例4で得られた塩化カルシウム/カチオン性PAM系共重合体の複合水溶液を添加し、その他は実施例1と同様な操作を行って、乾燥シートの灰分を測定した。
(6)比較例1
前記実施例1を基本として、フローテーション後のスラリーに本発明の脱墨パルプ用添加剤を全く添加しなかった他は、当該実施例1と同様の操作を行って、乾燥シートの灰分を測定した。
(7)比較例2〜5
上記実施例1を基本として、図2に示す通り、パルプスラリーに添加する添加剤をそれぞれ変更し、その他は実施例1と同様な操作を行って、乾燥シートの灰分を測定した。
(8)比較例6
パルプスラリーに市販脱墨剤のハリトップP−320を添加し、フローテーション法によるインク分離処理の工程中に前記実施例1に従い、硫酸を対パルプ1%、続いて前記合成例1の水溶性カチオン性PAM系共重合体水溶液を添加した。
しかしながら、この場合、脱離したインクなど樹脂成分に伴う粘着性の強い泡および灰分の凝集物を多量に含有したスラリーとなってしまい、脱墨処理自体に支障が出たため、操作を途中で中止した。
《填料を含む灰分の歩留り率の評価試験結果》
図2の右欄は、上記実施例1〜4、参考例1〜4並びに比較例1〜6の各新聞古紙由来の脱墨パルプの製造方法により得られた乾燥シート中の灰分の歩留り率(%)である(但し、比較例6を除く)。
これによると、先ず、本発明の脱墨パルプ用添加剤を脱墨工程でまったく添加しない比較例1では灰分の歩留りは4.9%であった。これに対して、所定の難溶化物質(A)と水溶性高分子(B)を併用した本発明の脱墨パルプ用添加剤をフローテーション工程の後に添加した実施例1〜4及び参考例1〜4では灰分の歩留りは8.6〜10.4%であり、本発明の脱墨パルプ用添加剤を使用した場合には、ブランク例である比較例1に比べて、灰分の歩留りは顕著に改善されることが確認できた。
次いで、難溶化物質(A)のみを添加し、水溶性高分子物質(B)を添加しない比較例2〜3では灰分の歩留りは5.4〜5.7%にとどまり、上記比較例1より高かったが、実施例1〜8に比べて劣っていた。逆に、カチオン性PAM系共重合体(成分(B))のみを添加し、難溶化物質(A)を添加しない比較例4でも、灰分の歩留りは上記比較例2〜3に類した水準にとどまり、実施例1〜4及び参考例1〜4に比べてやはり劣っていた。また、カチオン性PAM系共重合体(成分(B))と難溶化機能のない薬剤(水酸化カリウム)を併用した比較例5では、灰分の歩留りは上記比較例2〜4より多少は改善されたが、実施例1〜4及び参考例1〜4には及ばなかった。
従って、難溶化物質(A)のみの添加は勿論のこと、水溶性高分子物質(B)だけを添加した場合、或は、当該成分(B)に難溶化機能のない薬剤を併用した場合に比べても、難溶化物質(A)と水溶性高分子物質(B)を組み合わせた本発明の添加剤を使用した場合には灰分の歩留りをより効果的に改善できることが明らかになった。これにより、強アルカリ条件下での脱墨処理で微粒化又は溶解したケイ酸塩系填料を成分(A)で再難溶化し、この難溶化物を成分(B)で円滑に凝集して、填料を含む灰分を歩留り良く回収するという本発明方法の、従来技術に対する優位性が裏付けられた。
そして、本試験例は、新聞古紙/チラシ=70/30(重量比)のパルプスラリーを対象にした灰分の歩留りを評価したものであり、本発明は、新聞古紙由来の脱墨パルプに多く含まれるケイ酸塩系填料の歩留りの改善に特に好適であることが判明した。
一方、フローテーション工程の途中に本発明の成分(A)と(B)を添加した比較例6では、上述の通り、粘着性の強い泡が生じて脱墨処理自体に支障が出たことから、本発明の脱墨パルプ用添加剤はフローテーション工程中ではなく、フローテーション工程の後に添加することが重要である点が明白になった。
尚、前述したように、比重の大きい灰分は脱水により大部分がパルプスラリー系から水と共に系外に排出されるため、本発明の添加剤はフローテーション工程の後であっても、脱水工程の前に添加する必要がある。
そこで、実施例1〜4及び参考例1〜4の試験評価を詳述する。
先ず、難溶化物質(A)に着目すると、灰分の歩留り向上効果には酸性化剤と多価金属系化合物を問わず有効であるが、多価金属系化合物を使用した方が酸性化剤の場合より灰分の歩留りが向上した(例えば、実施例2〜3及び参考例2〜4など参照)。また、多価金属系化合物においては、ポリ塩化アルミニウムなどのように酸性を呈するものが有効であった(参考例3等参照)。
次いで、水溶性高分子物質(B)に着目すると、PAM系共重合体(実施例1〜3及び参考例1参照)と、PAM系以外の高分子物質(参考例2〜4参照)とを問わずに有効であり、PAM系共重合体では、両性、カチオン性を問わず有効であった。
また、成分(A)と(B)の添加態様を見ると、成分(A)と(B)を時間差を設けて添加しても、同時添加しても有効であった。時間差を設けた添加では、成分(A)と(B)の添加順序は問わずに有効であった(実施例1〜3及び参考例1〜3参照)。また、同時添加では、製造後の成分(A)と(B)の希釈液を混合しても良いし(参考例4参照)、成分(B)の製造後に成分(A)を混合した複合液を添加しても良いことが確認できた(実施例4参照)。
合成例1〜4及び参考合成例1の各水溶性イオン性PAM系共重合体の単量体組成、得られた共重合体の粘度、固形分などの各種性状を示す図表である。 実施例1〜4、参考例1〜4及び比較例1〜6の各新聞古紙由来の脱墨パルプの製造方法で得られたシートの灰分の歩留り率を示す図表である。

Claims (4)

  1. 脱墨処理に際して、新聞古紙由来のケイ酸塩系填料を含むパルプスラリー中に脱墨パルプ製造用添加剤を添加する脱墨パルプの製造方法において、
    脱墨パルプ製造用添加剤が、(A)水溶性ケイ酸塩を難溶化させる物質と、(B)水溶性高分子物質との組み合わせであり、
    (A)難溶化物質が無機酸類、C1〜C4の有機酸類、多価金属塩、多価金属酸化物、多価金属水酸化物、多価金属塩縮合物から選ばれた少なくとも1種であり、
    (B)水溶性高分子物質が(a)(メタ)アクリルアミドと、(b)カチオン性モノマーとを構成成分とし、又は(a)(メタ)アクリルアミドと、(b)カチオン性モノマーと、(c)アニオン性モノマーとを構成成分とし、さらに(d)架橋性モノマー及び/又は(e)連鎖移動剤を使用して重合した水溶性イオン性ポリアクリルアミド系共重合体であって、
    フローテーション工程でインクを分離したパルプスラリーの脱水工程の前に当該添加剤を添加することにより、新聞古紙由来の填料を含む灰分の歩留りを向上可能にすることを特徴とする脱墨パルプの製造方法。
  2. (A)難溶化物質が多価金属酸化物、多価金属水酸化物、多価金属塩縮合物の少なくとも一種であり、(B)水溶性高分子物質が両性高分子物質であることを特徴とする請求項1に記載の脱墨パルプの製造方法。
  3. カチオン性モノマー(b)が、1〜3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、1〜3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリルアミド、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート、ジアリルジアルキルアンモニウムハライドの少なくとも一種である事を特徴とする請求項1又は2に記載の脱墨パルプの製造方法。
  4. アニオン性モノマー(c)が、α,β−不飽和カルボン酸類、α,β−不飽和スルホン酸類の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の脱墨パルプの製造方法。
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