JP4816419B2 - 積層フィルム - Google Patents

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本発明は、屈折率が異なる2種の樹脂層を光の波長レベルの層厚みで交互に積層する事により発現する光の干渉現象を利用して、特定の波長の光を選択にカットできる積層フィルムに関するものである。
従来から、屈折率が異なる2種以上の材料を光の波長レベルの層厚みで交互に積層する事により発現する光の干渉現象を利用して、特定の波長の光を選択にカットする光干渉多層膜が知られている。このような多層膜は、用いる材料の屈折率、層数、各層厚みを所望の光学設計とすることで、種々の性能を備えた光学フィルタが達成されるため、既に様々な光学用途向けに市販されている。例えば、コールドミラー、ハーフミラー、レーザーミラー、ダイクロイックフィルタ、熱線反射膜、近赤外カットフィルタ、単色フィルタ、偏光反射フィルム等のことである。
一方、近年、無機材料の蒸着法により製膜されていた従来の多層膜に代わり、熱可塑性樹脂の溶融製膜法により製膜される光干渉多層膜が広がりつつある。しかしながら、溶融製膜法による多層膜においては、従来と比べて、異なる材料間の屈折率差が低く、多くの層数を必要とするばかりではなく、積層方法の違いから前記した光学フィルタを達成するためには、光学設計通りの高い積層精度での多層膜構造を実現する必要があった。そのため種々の熱可塑性樹脂の積層方法が検討されてきた。例えば、熱によって可塑化された押出成形可能な熱可塑性樹脂の少なくとも第1の流れ及び第2の流れを供給する段階と、第1及び第2の流れをそれぞれ複数の第1と第2のサブストリームに分割する段階と、前記第1及び第2のサブストリームを組み合わせて前記第1及び第2のサブストリームが交互に配置された複合流を形成する段階と、熱によって可塑化された熱可塑性樹脂の第3の流れを前記複合流の外面に適用して保護境界層を形成する段階であって、前記熱可塑性樹脂の第3の流れは、熱可塑性材料の第1又は第2の流れのいずれよりも小さいか又は等しい粘度を有し、前記複合流の全体量の約1〜12.5%の流量率で供給される段階と、前記保護境界層を有する前記複合流を機械的に操作することによって操作流を成形して層の数を増やす段階と、前記操作された流れを前記第1及び第2の熱可塑性材料の互いにほぼ平行な複数の層を有する複数のポリマー物体に押出成形する段階を有する多層ポリマー物体の押出成形方法が提案されている。(特許文献1)しかしながら、この積層方法では、何度も複合流に機械的操作を繰り返すことによって、層を増やすため、必要層数が増えれば増えるほど、層の破壊は進行し、高い積層精度の実現は難しかった。また、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bの溶融樹脂を多層フィードブロック内の細孔により多層分岐した後に、分岐した熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bが交互に11層以上流入するような平行板で仕切られた扁平な流路に導き、更に多層フィードブロック内の合流部に導くことによって多層フィルムを得る方法が提案されている。しかしながら、この積層方法では、層数が増えるにつれて、装置が大型化するため、200層以上の積層は困難であり、さらに、層の破壊も進行する。(特許文献2)さらに、ハンドリング性の向上を目的に、最外層を厚くする多層フィルムが提案されている。(特許文献3)しかしながら、この特許文献1の保護層に似た最外層は、多層流の形成後に、最外層用流路を通じて合流しており、実質的に層数増加に伴う大型化の問題、さらに層の破壊の本質的な問題の解決には至っていないのが現状である。
特表平8−501994号公報(第2頁) 特開2003−112355号公報(第2頁) 特開2003−251675号公報(第2項)
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑み、従来の複雑な積層方法を必要とすることなく、積層精度に優れ、かつ光学性能に優れた積層フィルムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明の積層フィルムは、少なくとも2種以上の樹脂を多層に積層するフィードブロックが、スリット板を2枚以上用いた構成からなり、スリット板において、両端部に位置する厚膜層を形成するスリット巾が、他の薄膜層を形成するスリット巾の2倍以上であるフィードブロックを用いて製造されるフィルムであって、該フィルムは厚み方向に250層以上積層され、少なくとも1μm以上30μm以下である厚みの厚膜層が3層以上含まれており、かつ、波長250〜2600nmにおける反射率の最大値が60%以上である積層フィルムであることを特徴とする。
本発明の積層フィルムは、層数が増加しても高い積層精度を実現し、特定の波長の光を反射、あるいは透過する高い光学性能を有した積層フィルムを提供するものである。特に、広反射帯域設計された積層フィルムの場合、組成が異なる樹脂間の積層においも、その分光反射スペクトルにおいて、波抜け(部分的な低反射帯域)が存在することなく、一様に高い反射率を有する積層フィルムを提供するものである。
以下に、本発明の詳細を説明する。
本発明の積層フィルムに用いられる樹脂は、熱可塑性、熱硬化性、光硬化性などいかなる樹脂であっても良い。特に、成形加工性や取扱い易さの観点から本発明の樹脂は熱可塑性樹脂であることが好ましい。
本発明の多層に積層されている積層フィルムの製造方法は、以下のように例示することができる。例えば、(AB)n・Aの積層フィルムの場合、A層に対応する押出機AとB層に対応する押出機Bの2台から樹脂が供給され、それぞれの流路からのポリマーが、フィルタ、さらに吐出比を調整するギアポンプを通過し、さらにマルチマニホールドダイやフィードブロックやスクエアミキサーやスタティックミキサーを経て積層された溶融体をT型口金等を用いてシート状に溶融押出され、その後、キャスティングドラム上で冷却固化して未延伸フィルムを得る方法が挙げられる。
本発明の積層フィルムは、フィードブロックを用いることにより好適に得ることができ、この場合、少なくとも2種以上の樹脂を多層に積層するフィードブロックが、スリット板を2枚以上用いた構成であることが必要である。図1に本発明の実施形態であるフィードブロックの例を示す。該フィードブロックは、2種の樹脂Aと樹脂Bを多層に積層する積層装置のことであり、詳細を以下に説明する。図1において、部材板1〜9がこの順に重ねられ、フィードブロック10を形成する。
図1のフィードブロック10は、樹脂導入板2,4,6,8に由来して4つの樹脂導入口を有するが、例えば樹脂Aを樹脂導入板2,6の導入口11から供給し、樹脂Bを樹脂導入板4,8の導入口11から供給する。すると、スリット板3は、樹脂導入板2から樹脂A、樹脂導入板4から樹脂Bの供給を受け、スリット板5は、樹脂導入板6から樹脂A、樹脂導入板4から樹脂Bの供給を受け、スリット板7は、樹脂導入板6から樹脂A、樹脂導入板8から樹脂Bの供給を受けることになる。
ここで、各スリット板に導入される樹脂の種類は、樹脂導入板2,4,6,8における液溜部12の底面とスリット板における各スリットの端部との位置関係により決定される。すなわち、図3に示すように、スリット板における各スリットの頂部の稜線13は、スリット板の厚み方向に対して傾斜を有する(図2(b),(c))。但し、図2(a)に示すように、スリット板の両端部に位置した厚膜層を形成するスリット巾は、薄膜層の層の破壊を防ぐ観点から、他の薄膜層を形成するスリット巾の2倍以上であることが必要である。ここでの他の薄膜層を形成するスリット巾とは、少なくとも1つのスリット板内にある薄膜層を形成するスリット部の巾の平均値のことである。より好ましくは、3倍以上である。
そして、図3に示すように、樹脂導入板2,4,6,8(8は繰り返し構造のため、図3中から省略)における液溜部12の底面の高さは、前記稜線13の上端部14と下端部15との間の高さに位置する。このことにより、前記稜線13が上がった側からは樹脂導入板2,4,6,8の液溜部12から樹脂が導入されるが(図3中16)、前記稜線13が下がった側からはスリットが封鎖された状態となり樹脂は導入されない。かくして各スリットごとに樹脂AまたはBが選択的に導入されるので、積層構造を有する樹脂の流れがスリット板3,5,7(7は繰り返し構造のため、図3中から省略)中に形成され、当該スリット板3,5,7の下方の流出口17より流出する。
スリットの形状としては、樹脂が導入される側のスリット面積と樹脂が導入されない側のスリット面積が同一ではないことが好ましい。このような構造とすると、樹脂が導入される側と樹脂が導入されない側での流量分布を低減できるため、幅方向の積層精度が向上する。さらには、(樹脂が導入されない側のスリット面積)/(樹脂が導入される側のスリット面積)が0.2以上0.9以下であることが好ましい。より好ましくは0.5以下である。また、フィードブロック内の圧力損失が1MPa以上となることが好ましい。また、スリット長(図1中Z方向スリット長さの内、長い方)を20mm以上とすることが好ましい。一方、スリットの間隙である巾は、加工精度の観点から0.3mm以上が好ましく、より好ましくは0.5mm以上3mm以下である。このようにスリットの巾や長さを調整することにより、各層の厚みを制御することが可能である。なお、スリットは、その巾や長さを微妙に調整した高い加工精度を必要とする観点から、ワイヤー放電加工にて製作されたものが好ましい。
また、各スリット板に対応したマニホールド部を有していることも好ましい。マニホールド部により、スリット板の内部での幅方向(図1中Y方向)の流速分布が均一化するため、積層されたフィルムの幅方向の積層比を均一化することができ、大面積のフィルムでも精度良く積層することが可能となり、フィルム巾方向の反射率を精度良く制御することができる。
また、一つの液溜部から二つ以上のスリット板へ樹脂を供給することがより好ましい。このようにすると、例え、わずかにスリット板の内部で幅方向に流量分布が生じていたとしても、次に説明する合流装置にてさらに積層されるため、積層比としてはトータルでは均一化され、高次の反射帯域のむらを低減することが可能となる。
図1に示すようにスリット板3,5,7の下方の流出口17は、3つの樹脂流れの積層構造が並列となる位置関係で配置され、また、樹脂導入板4,6によって互いに隔てられている。この流出口17の形状は、積層精度を高くする観点から、アスペクト比が1以上であることが好ましい。ここでのアスペクト比とは、フィルム巾方向(図1中でY軸方向)の長さに対する積層方向(図1中でX軸方向)の長さの比ことである。
本発明の積層フィルムは、図1のフィードブロック10の真下(Z方向)に図4(a)に示すような合流装置18をに配置し、これを用いて製造されることが好ましい。図4(a)中のL−L’、M−M’、N−N’におけるXY断面図を、それぞれ、図4(b)、(c)、(d)に示す。以下、スリット板以後の3つの樹脂流れについて説明する。図4(a)に示す合流装置18により、中L−L’からM−M’にかけて、図4(b)、(c)の断面図から理解されるように、流路の規制による配置の転換が行われ3つの樹脂流れの構成が並列から直列となる。ここで、図4(a)中のL−L’からM−M’にかけての樹脂流路の断面積は、積層精度を高くする観点から、全て一定であることが好ましい。また、M−M’位置における断面形状の面積も、ポリマーの流速を調整し、積層乱れを制御する観点から、出来るだけ広い方が良い。具体的には、断面積内を単位時間内に通過する交互積層された樹脂の吐出量は、40kg/hr/cm以下であることが好ましい。より好ましくは、30kg/hr/cm以下であり、さらに好ましくは、20kg/hr/cm以下である。さらに、当該樹脂流れは図4(a)中、M−M’からN−N’にかけて拡幅され、図4中N−N’より下流にある口金部へ流入される。
また、この図4中N−N’の次に図5に示すようなスクエアミキサーを配置することも好ましい。図5(a)のXY断面を図5(b)、(c)、(d)に示す。スクエアミキサーを用いることによって積層数を容易に増加させることができ、その結果、積層フィルムの分光反射スペクトルにおいて、波抜け(部分的な低反射帯域)が存在することなく、一様に高い反射率を達成させることができるためである。
スクエアミキサーとは、図4中N−N’のような断面形状が長方形である流路を通過したポリマーが、図5(b)に示すような四角状の流路にフィルム幅方向に一旦、2分割され、図5(c)に示されるこの分岐されたポリマーを、再度、図5(d)に示すように厚み方向上下に積層されるように合わさる合流部を備えた筒体のことである。このようなスクエアミキサーをn個直列に接続し、溶融ポリマーを繰り返し通過させることにより、何層もの積層体を得ることができる。例えば、元の積層体の厚み方向の最表層部が同一樹脂でK層(Kは奇数)あるとすると、n回スクエアミキサーを通過すると、(K−1)×2+1層の積層体となる。本発明の積層体においては、余りスクエアミキサーを通過すると積層精度が悪くなるため、nは2以下が好ましい。より好ましくは、1である。
その後、溶融状態の当該樹脂流れは、Tダイ内部のマニホールド部に充填、さらに拡幅され、次いでダイスリットからシート状に押し出され、樹脂のガラス転移温度以下の冷却ロール上で固化されることにより未延伸状態の積層フィルムが得られる。このようにして得られた未延伸フィルムである積層フィルムは、高い積層精度を有する。
さらに、必要に応じて、この未延伸フィルムを樹脂組成物のガラス転移点(Tg)以上の温度で延伸する方法などで積層フィルムを得る。この際の延伸の方法は、少なくとも一方向に延伸されていることが、熱寸法安定性の観点から好ましい。特に、公知の2軸延伸法で2軸延伸されていることが好ましい。公知の2軸延伸法とは、長手方向に延伸した後に幅方向に延伸する方法、幅方向に延伸した後に長手方向に延伸する方法で行えばよく、長手方向の延伸、幅方向の延伸を複数回組み合わせて行なってもよい。例えば、ポリエステルから構成された延伸フィルムの場合、延伸温度及び延伸倍率はいくらであっても良いが、通常のポリエステルフィルムの場合、延伸温度は80℃以上130℃以下であり、延伸倍率は2倍以上7倍以下が好ましい。厚みむらを少なくする観点から、より好ましくは、延伸温度は90℃以上110℃未満、延伸倍率は、3.4倍以上5倍以下である。次いで、この延伸されたフィルムを熱処理する。この熱処理は、延伸温度より高く、融点より低い温度で行うのが一般的である。通常のポリエステルの場合、130℃ないし250℃の範囲で行うのが好ましいが、熱収縮率を抑える観点から200℃乃至240℃の範囲で行うのがより好ましい。さらに、フィルムの熱寸法安定性を付与するために、フィルムのガラス転移温度以上200℃未満の温度で2〜10%程度の弛緩熱処理を施すことが好ましい。以上記した製造プロセスにより本発明の積層フィルムは達成されることになる。
さらに、詳細に本発明の積層フィルムを説明すると、本発明の積層フィルムの厚みは、各層厚みと総積層数の兼ね合いから決定されるが、使い勝手の良さから、20μm〜300μmであることが好ましい。より好ましくは、50μm〜200μmである。
また、本発明の積層フィルム中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、易滑剤、顔料、染料、耐電防止剤、充填剤、核剤などが、その特性を低下させない程度に添加されていても良い。特に易滑剤は、すべり性を付与する観点から添加することが好ましい。易滑剤としては、有機、無機滑材に大別ができる。その形状としては、凝集粒子、真球状粒子、数珠状粒子、コンペイト状粒子、鱗片状粒子などの形状粒子を使うことができる。また、その材質としては、無機系としては、酸化珪素、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、珪酸アルミニウム、マイカ、クレー、タルク、硫酸バリウム等を、有機系としては、ポリイミド系樹脂、オレフィンあるいは変性オレフィン系樹脂、架橋ないし無架橋ポリスチレン系樹脂、架橋ないし無架橋アクリル樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂等の樹脂、また有機滑材としてステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、フマール酸アミドなどの各種アミド化合物を挙げることができる。特に、本発明の積層フィルムでは、光の正反射性および易滑性能を付与する観点から、粒子の1次の平均粒径は、0.6μm以上3μm以下で、粒子濃度が0.02〜0.08重量%であることが好ましい。一方、意匠性の観点からは、光拡散反射性能を付与するために0.1重量%以上添加しても良い。粒子種については、コスト及び反射率の高さの観点から、凝集シリカが好ましい。熱線遮断の観点からは、波長800〜1200nmの光を吸収する近赤外線吸収粒子を添加しても良い。近赤外線吸収粒子としては、例えば、ATO(アンチモン錫酸化物)、ITO(インジウム錫酸化物)、ジイモニウム塩などを補助機能として添加しても良い。
本発明の積層フィルムは、厚み方向に250層以上積層され、少なくとも1μm以上30μm以下である厚みの厚膜層が3層以上含まれ、かつ、波長250〜2600nmにおける反射率の最大値が60%以上である積層フィルムであることが必要である。
本発明の積層フィルムは、非常に高い反射率を実現させるために厚み方向に、少なくとも異なる2種以上の樹脂層が交互に250層以上積層されていることが重要である。かかる積層構造とすることにより、反射波長および反射率を制御することができる。
本発明の積層構造は、製造コスト、光学設計上の簡便さ、さらには、フィードブロックの設計上の観点からは、2種類の樹脂が、A(BA)nの様に交互に積層された構造を採用することが好ましい。但し、nは繰り返しの数であり、自然数である。特に、3種目の樹脂Cを用いる場合は、(ACB)nの繰り返し構造であっても良いが、プロセス上の難易度の観点からCA(BA)nC、もしくは、CA(BA)nの積層構造を採用することが最も好ましい。これらの構造の達成方法は、図4(a)M−M’以降〜口金にかけて設置されるピノールを用いることより形成することが出来る。すなわち、第三の押出機から供給された樹脂Cが、ピノールにて、A(BA)n多層流に合流することにより達成することができる。
積層構造による反射率の制御は、干渉反射の原理を利用したものである。干渉反射とは、異なる媒質、すなわち屈折率が異なる薄い層を多数重ね、その境の面の反射光が互いに干渉し、強め合う現象である。例えば、2種の樹脂A,Bを交互に多数重ねた多層膜について、膜の表面に対し垂直に光を入射したとき、積層の界面では、次の条件を満たす波長λ(nm)の光が反射する。
2・(nA・dA+nB・dB)=nλ・・・式(5)
ここで、
nA:樹脂Aの屈折率
nB:樹脂Bの屈折率
dA(nm):樹脂Aの層の厚み
dB(nm):樹脂Bの層の厚み
n:反射の次数を表す自然数
である。従って反射波長λは、樹脂A,Bの選択や層厚みの調整により、任意に設定することができる。
樹脂Cを採用するときは、上記した樹脂AとBにより発現する光干渉現象以外の役割を担う補助機能的な働きが求められるため、用いる樹脂、屈折率、厚みなどは、補助機能に応じて適宜、決定されればよい。補助機能とは、光吸収の付与、光拡散反射性能や易滑性付与、及び表面自由エネルギーの調整(易接着性の付与)などが挙げられる。光吸収の付与とは、例えば、CA(BA)nの構造において、カーボンブラックなどの黒を含有した樹脂Cを用いると、樹脂C設けられていない面から観察すると干渉反射色が際立ったり、また、CA(BA)nCの構造において、樹脂Cが紫外線を吸収する材料である場合は、耐光性が付与される。さらに、樹脂Cに粒子が高濃度に添加されていれば、拡散反射性能や易滑性が付与される。また、樹脂Cの組成に依存して、表面自由エネルギーも調整される。そのため、樹脂Cの層厚みは、目的に応じて適宜決定調整されればよいが、補助的機能の観点から0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。特に、樹脂Cとしては、各種添加剤が含有されており、そのマトリックス樹脂は、樹脂A、もしくは樹脂Bのどちらか一方であることが最も好ましい。また、、樹脂Aもしくは樹脂Bの組成と同じ成分を共有しているマトリックス樹脂であることが好ましい。同じ成分を共有しているとは、同一の基本骨格を含むことを意味する。基本骨格とは、樹脂を構成する繰り返し単位のことであり、例えば、一方の樹脂がポリエチレンテレフタレートの場合は、エチレンテレフタレートが基本骨格である。また別の例としては、一方の樹脂がポリエチレンの場合、エチレンが基本骨格である。樹脂Aと樹脂Bが同一の基本骨格を含む樹脂であると、層の破壊が起こりにくいため好ましい。本発明の積層フィルムの積層構造は、目的とする光学フィルタの性能に応じて決定される。例えば、特定の波長の光のみ反射し、それ以外の光を透過させる機能を持つ狭帯域反射フィルムとする場合は、厚み方向の樹脂Aの層厚みと樹脂Bの層厚みが一定である周期構造を形成する必要があり、また、ある波長以上の全ての光を透過、もしくは反射させる機能をもつ広帯域反射フィルムとする場合は、樹脂Aの層厚みと樹脂Bの層厚みが一定の割合で変化する傾斜構造を形成する必要がある。
具体的には、所望の反射波長帯域の端部となる波長λ、λ’を決定し、既知の薄膜層における積層比と屈折率から上記式(5)に従い反射波長λに対応する設計層厚みdA、dBを、さらに、もう一方の反対帯域の端部である反射波長λ’に対応する層厚みdA’、dB’をそれぞれ求める。層厚みdA→dA’間、dB→dB’間を、それぞれ単調増加もしくは単調減少と連続的、もしくは離散的に変化する層厚み分布となるような積層構成とする。但し、ここでの積層比とは、薄膜層に対しての倍率が既知である厚膜層を考慮した上で、樹脂Aに対する樹脂Bの吐出量の比から求められる値である。如何なる光学性能も目的となる機能が決定すれば、光学計算により、その最適な構造が決定されうる。光学計算の理論については、H.A.Macleod(訳小倉繁太郎)「光学薄膜」(日刊工業新聞社)(1989)、小檜山 光信「光学薄膜の基礎理論」(オプトロニクス社)(2003)に記載されている。
層の厚みの分布を制御する方法は、フィードブロックの各スリット板のスリット毎の巾や長さを全て調整することである。スリット内を通過するポリマーは、一般に下記式(6)で表されることからも理解される。
Figure 0004816419
ここで
Q:樹脂流量
t:スリットの巾
W:スリットの奥行き
μ:樹脂粘度
L:スリットの長さ
ΔP:圧力降下
すなわち、液溜め部内の圧力が均一化されて圧力降下ΔPが一定であると考えると、1層の層厚みに対応する流量Qは、一つのスリットサイズを調整することにより容易に調整することができる。しかしながら、全てのスリットサイズ設計だけでは、層間の流量バランスが決定されるのみであるため、最終的な層厚み分布は積層フィルムの厚みによって決定される。
また、スクエアミキサーを用いる場合は、フィードブロックで形成された層厚み分布が反映されたものが2つ以上形成されることになる。例えば、図5中に示されたO−O’断面での樹脂の分配比(23Oと24O流路の面積比)が同じであれば、2つの似た層厚み分布が積層フィルム内の厚み方向に並んで形成されることになる。その他、分配比を変えることにより、その値に比例した厚みの異なる層厚み分布が2つ得られる。すなわち、この厚みの異なる2つの似た層厚み分布が厚み方向に並んだ積層フィルムが得られることになる。本発明の積層フィルムでは、フィードブロックでの層厚み分布が周期構造の場合は、分配比は1:1が好ましく、傾斜構造の場合は1:1 〜 1:0.8程度が一様に高い反射率を達成する観点から好ましい。分配比の差が大きいと波抜けと称する部分的な低反射帯域が発生しやすくなるためにである。
特に、本発明の積層フィルムは、その積層プロセス上、広い波長帯域にわたって、一様に高い反射率を実現させる広帯域反射フィルムに適している観点から、積層数は250層以上が必要であり、好ましくは500層以上、より好ましくは800層以上である。さらに好ましくは、1500層以上である。層数を増加させる方法は、スリット板、及びスリット数を増加させることにより達成することができる。通常、1つのスリット板での最大スリット数は、高い積層精度を実現する観点から300個程度が上限であり、スリット板の数も、積層装置の大型化の観点から、5個程度が上限である。あるいは、スクエアミキサーをフィードブロックと併用することで達成できる。このような積層プロセスを経ることにより、容易に1000層以上の積層体を1度に得ることができる。
本発明の積層フィルムは、溶液製膜や溶融製膜により製造されてもよい。特に、本発明においては、生産設備や樹脂の取扱い易さの観点から、溶融製膜を用いることが好ましい。
さらに、本発明の積層フィルムは、異なる厚みの溶融製膜されてなる積層フィルムを接着剤を介して貼り合わせることによっても達成することができる。貼り合わせ枚数が多いと、厚みの違いにより貼り合わせ後に積層フィルムがカールしたりする。そのため、貼り合わせ枚数は3枚以下が好ましく、より好ましくは対称性の観点から2枚貼り合わせが良い。積層フィルムの貼り合わせに用いる接着剤は、熱やUV硬化性アクリル、ウレタン、ポリエステル系のいかなるものであってもよい。その塗布方法も、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコード法、マイヤーバーコード法、ダイコート法、スプレーコートなどを用いることができる。
また、本発明の積層フィルムは、少なくとも1μm以上30μm以下である厚みの厚膜層が3層以上含まれていることが必要である。1μm未満であると、積層プロセス上、厚膜層近傍の薄膜層が設計層厚みより薄くなる傾向がある。一方、30μmを越えると、厚膜層のみで最低90μm以上の厚ものフィルムとなるため、非常に扱い難い積層フィルムの厚みとなる。そのため、より好ましくは、1μm以上10μm以下である。さらに、好ましくは、1μm以上5μm以下である。厚膜層の層厚みは、スリット板において、両端部に位置する厚膜層を形成するスリット巾、スリットの長さ(図2中のZ軸方向の長さ)を調整することにより達成することができる。例えば、本発明の厚膜層を形成するスリットの巾は、1mm以上5mm未満であることが好ましく、薄膜層を形成するスリットの巾は、0.5mm以上3mm以下であることが好ましい。また、厚膜層の層数は、余り多すぎると層厚み分布を制御することが難しいため、15層以下であることが好ましい。より好ましくは、10層以下である。
本発明の積層フィルムは、波長250〜2600nmにおける反射率の最大値が60%以上であることが必要である。反射率の最大値が60%未満であると、光学フィルタなどとして用いることができない場合がある。反射率の最大値は好ましくは、80%以上であり、さらに好ましくは、100%以上である。その達成方法としては、樹脂の選択、さらには、樹脂AとBの面内屈折率差を、0.05以上、より好ましく0.08以上とすることが好適である。さらに好ましくは、0.1以上である。面内屈折率とは、樹脂AとBを交互に積層して得られる積層フィルムと同一製膜条件で、どちらか片方の樹脂のみで構成された単膜フィルムを製膜した場合のフィルムのMD(Machine Direction)方向の屈折率とTD(Transverse Direction)方向の屈折率の平均値を意味する。
すなわち、面内屈折率差とは、片方の樹脂で製膜されたフィルムの両者間の面内屈折率の差のことである。また、面内屈折率は、公知のアッベ屈折率計を用いて測定できる。例えば、公知の2軸延伸・熱処理により配向結晶化したポリエチレンテレフタレートフイルムの場合、面内屈折率は、1.6〜1.67程度である。また、前述したポリエチレンテレフタレートと同じ条件で延伸・熱処理された共重合ポリエチレンテレフタレートは、通常、非晶質、もしくは熱処理温度がポリエチレンテレフタレート以下の融点であるために溶融し、配向緩和が生じ、その面内屈折率は、1.52〜1.59程度となる。すなわち、この場合、製膜条件を種々検討すれば、面内屈折率差は、0.05〜0.12に調整することができる。特に、ポリエチレンテレフタレートとその共重合体との樹脂の組み合わせは、樹脂間の相溶性が良く、積層フィルムの品質問題となるフローマークが発生し難い点からも好ましい。
また、本発明の積層フィルムは、その外観が金属調を呈するフィルムや近赤外線遮断フィルムへの応用の観点から、連続的に波長区間150nmに亘って、反射率60%以上であることが好ましい。より好ましくは、75%以上、さらに好ましくは、90%以上の反射帯域を有することである。さらに、反射率60%以上の反射帯域である連続した波長区間は、200nm以上であることがより好ましい。
本発明の溶融製膜された積層フィルムは、Tダイ法により得られたフィルムであることが好ましい。すなわち、押出機により溶融・混練・計量された樹脂をTダイによりダイリップ全幅に樹脂を均等に圧力降下させてフィルム厚みを均一化し、その後強制的に冷却ロール上で冷却固化される工程を得て、製膜された積層フィルムのことである。次いで、延伸・熱処理工程を含めても良い。
本発明の積層フィルムは、少なくとも最表層に厚膜層があり、厚膜層の順列において隣り合う厚膜層間に、層厚みが0.01以上0.4μm以下である薄膜層が少なくとも50層以上含まれることが好ましい。
本発明の積層フィルムの少なくとも最表層に厚膜層を形成することにより、積層プロセス上では近傍の薄膜層の薄膜化を抑制するだけでなく、本発明の積層フィルムの表層部の層間剥離を抑制する保護層としての役割を果たす。この薄膜化の原因は、一般的な流体論で議論できる。すなわち、最表層部となる樹脂流れは、製造工程では、流路の壁面部に沿って流れるため流動抵抗を受けやすくなる。同様に、隣接する薄膜層になる層も壁面からの距離が近いために流動抵抗を受けて流量が少なくなり、各層毎でみると結果的に層厚みが薄くなる。しかしながら、最表層に流れる樹脂流れの流量を多くすることにより、薄膜層になる層の樹脂流れは、壁面から遠ざかるにつれて、流動抵抗を受け難くなり薄膜化を防ぐことができる。この薄膜化を防ぐ観点から表裏の最表層には、1μm以上10μm以下である厚膜層があることがより好ましい。また、厚膜層と厚膜層の間に位置する薄膜層の層厚みは、各層を構成する樹脂の屈折率に応じて設定すると良いが、通常、樹脂の屈折率はおよそ1.35〜1.8の範囲にあり、この場合、各層の厚みは、近紫外〜赤外領域までの光の波長について光干渉現象を起こさせる観点から、薄膜層の厚みが0.01μm以上0.4μm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.05μm以上0.3μm以下である。
さらに、厚膜層の順列において隣り合う厚膜層の間には、薄膜層が50層以上含まれていることが好ましい。通常、厚膜層がなければ、ポリマー流路の内壁の抵抗に依存して、薄膜層がより薄膜化する層数は、50層程度である。最も厚膜層を有効活用する観点から、薄膜層は50層以上含まれていることが好ましい。さらに好ましくは、100層以上である。厚膜層の順列とは、本発明の積層フィルムの全ての層うち、1μm以上の厚みを有する厚膜層のみに着目したときの厚膜層の並びのことである。
上記した積層構造を達成する手段としては、層数については、フィードブロック内のスリット数、また、層厚みについては、スリット長さ、奥行き、および巾を調整することで層間の厚みの比率(層厚み分布)が決定され、さらに積層フィルムの厚み調整により、個々の層厚みが決定される。積層フィルムの厚み調整は、キャスティングドラムなどの冷却ロールの周速度、もしくは押出機の吐出量により調整することができる。
本発明の積層フィルムを構成する少なくとも1種類の樹脂の薄膜層における層番号と層厚みの分布において、一方の最表層側から30層分の層厚み平均をE1(nm)、他方の最表層側から30層分の層厚み平均をE2(nm)、および厚み方向中央部の30層分の層厚み平均をC(nm)としたとき、下記(1)式、(2)式を同時に満足することが好ましい。
E1 ≧ C ≧ E2 ・・・式(1)
0.9 ≧ E2/E1 ≧ 0.3 ・・・式(2)。
層番号とは、本発明の積層フィルムの各層毎に番号を割り当てた値のことである。すなわち、一方の最表層を1とすれば、他方の最表層は、総積層数の番号となる。但し、ここでの1層とは、異なる媒質の間に形成される境界線と隣のもう一方の境界線間に挟まれた層を1層と数える。例えば、同組成の樹脂層が隣接して2つ並んだ状態で積層された2層は、1層とみなす。さらに詳細に説明すると、例えば、最表層側から樹脂Aの厚膜層、樹脂Aの薄膜層、樹脂Bの薄膜層、樹脂Aの薄膜層、・・・・・と並んでいるときは、層番号1が樹脂Aの厚膜層と薄膜層を足し合わせたものが厚膜層となり、次いで、層番号2が樹脂Bの薄膜層となり、さらに層番号3が樹脂Aの薄膜層と定義される。本発明の積層フィルムが2種の樹脂構成される場合、この定義が繰り返されるため、必ず、層番号の奇数か偶数かで樹脂の種類が決定されることになる。但し、樹脂Cが用いられる場合は、その層番号については、最初または/および最後の層番号が割り当てられる。
薄膜層の層厚み分布は、積層フィルムの厚み方向の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて約4万倍程度の倍率で観察することにより、各層番号毎の層厚みを求める。一方、5μm以上の厚膜層の厚みは、TEMで約1万倍での断面観察、もしくは走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、約5000倍程度の断面観察で求めることができる。
本発明の積層フィルムの厚み方向中央部の30層分とは、薄膜層の総積層数の中点にあたる層を中心として、連続して配列している同種の樹脂層を厚み方向上下、それぞれについて、14または15層分加えたものである。例えば、薄膜層の総積層数Nが奇数であれば、中点にあたる層は(N+1)/2番目の層となり、厚み方向上下、それぞれ、奇数の層番号に当たる(N+1)/2−30・・・(N+1)/2−2、(N+1)/2、(N+1)/2+2、・・・・(N+1)/2+28が厚み方向中央部の30層分となる。なお、本発明の積層フィルムが2種の樹脂を厚み方向に交互に積層したものであれば、層番号が奇数か偶数により樹脂層の種類が区別される。また、同様に薄膜層の総積層数Nが偶数であれば、中点にあたる層は、N/2番目とし、厚み方向上下、それぞれ、N/2−30・・・N/2−2、N/2、N/2+2、・・・・N/2+28に当たる層番号が、厚み方向中央部の30層分となる。そして、これらの層厚みの平均をC(nm)とする。E1、E2においても、同様の方法で求めることができる。但し、式(1)と式(2)は、少なくとも1種類の樹脂層に着目したときに、同時に成立することが好ましい。より好ましくは、2種類の樹脂層、それぞれについて、同時に成立していることが好ましい。また、スクエアミキサーを用いて得られた積層フィルムでも同様に求めることができる。傾斜構造かつ非等分配スクエアミキサーを用いた場合は、設計上最も層厚みが厚くなる薄膜層の層厚み分布が積層フィルムの最外層側へ配置されているものとする。設計上最も厚くなる薄膜層の層厚み分布とは、厚膜層間に挟まれた薄膜層において、その平均層厚みが最も厚くなるようにスリット設計された層厚み分布のことである。
本発明の積層フィルムにおいて、部分的な波抜けを少なくする観点から、式(2)において、E2/E1は0.4以上0.8以下であることがより好ましい。このような傾斜構造は、スリット巾や奥行きを一定とし、スリット長のみを連続的に変化させることで達成できる。また、そのスリット長の変化の割合である最短スリット長/最長スリット長の値が、0.4〜0.7の範囲とすることで達成することができる。ここで、分光反射スペクトルにおける部分的な波抜け(低反射帯域)について説明する。本発明の傾斜構造を有した積層フィルムは、その分光反射スペクトルにおいて、一山分(尾根の部分が高反射帯域)の矩形波的な形状をした分光スペクトルとなるように光学設計されたものであるため、一山中に低反射率領域が存在したり、一山の隣に小さな反射ピークが存在することは、品質面で光学性能を低下させる。この光学性能を低下させている低反射帯域の箇所を、本発明では部分的な波抜けと称す。具体的に、波抜けのない広帯域反射フィルムの分光反射スペクトルを図7に、波抜けの酷い広帯域反射フィルムの分光反射スペクトルを図8に示す。図7では、明らかに波長450〜600nmにおいて、連続して反射率が100%と一様な分布となっているのに対して、図8では、図中の34で示した反射率60%に満たない部分的な低反射領域が存在し、光学性能が低いこと分かる。
上記式(1)と式(2)を同時に満足する積層構造は、薄膜層を形成するスリットの長さを単調増加、もしくは、単調減少的に変化させたスリット板を用いたフィードブロック構成とし、さらに、相溶性が良く、レオロジー特性が類似した最適な2種の樹脂の組み合わせ選択することで達成される。また、フィードブロック内のスリット板において、両端部に位置した厚膜層を形成するスリット巾が、他の薄膜層を形成するスリット巾の2倍以上となるように設計されていることが必要であり、スリットの形状、フィードブロックから出た直後のポリマーが通る短管内のポリマー流路の形状を最適化することも重要である。ここで最適な2種の樹脂の組み合わせとは、同種の成分を共有する樹脂を用いることが好ましい。例えば、ポリエステル同士、具体的にはポリエチレンテレフタレートとその共重合体などである。また、スリット形状を最適化するとは、例えば、図3中の13で示されたように傾斜化することである。さらに、ポリマー流路を最適化するとは、例えば、図4中のL−L’からM−M’間のポリマー流路の距離を長くしたり、その断面形状のアスペクト比を高くしたり、面積を広くしたりすることである。
さらに、本発明の積層フィルムは、高い積層精度の実現、分光反射スペクトルにおける部分的な波抜け(低反射帯域)を少なくする観点から、厚膜層を挟んだ薄膜層領域において、厚膜層側から厚み方向上下に向かった10層分の薄膜層のそれぞれの平均層厚みをD1(nm)、D2(nm)とし、同様に、厚膜層側から厚み方向上下に向かった次の厚膜層までの薄膜層の平均層厚みを、それぞれR1(nm)、R2(nm)としたときに、下記の(3)式と(4)式を同時に満足する積層構造であることが好ましい。
R1 ≧ R2 ・・・式(3)
D1 ≦ D2 ・・・式(4)
本発明の積層フィルムにおいては、同一樹脂における層厚み分布において、上記した2つの式を同時に満足する積層構造を有する積層部位が少なくとも1つ以上存在することが好ましい。その部位は、厚膜層の数にも依存するため、例えば、最表層に厚膜層2層を有し、内部に厚膜層を2層の計4層の厚膜層を有する積層フィルムでは、上記した2式を同時に満足する積層部位の数は、最大で2箇所となる。異なる樹脂である樹脂Aと樹脂Bを考慮すると、最大で4箇所となる。そのため、この場合の最適な態様は、2つ以上がより好ましい。
上記した積層構造を図6を用いて、その一態様を例示する。図6に樹脂Aと樹脂Bを交互に積層したときの層番号と層厚み(nm)の関係の一例を示す。該分布が3つのスリット板で構成されたフィードブロックにより製膜された場合を表すものとする。図6中に、樹脂Aの層厚み分布と樹脂Bの層厚み分布を示す。樹脂Aの層厚み分布は、樹脂Bの層厚み分布より上段に位置し、図6中で詳細に示すと、28、29、32、33の層厚み分布で構成されたものである。樹脂Aについて、厚膜層29を挟んだ薄膜層領域とは、実線で記した厚膜層29の層番号から昇順、降順に層番号を進め、次の厚膜層29に到達するまでの薄膜層の分布のことであり、ここでは32と33である。薄膜層の層厚み分布32の平均層厚みはR1(nm)であり、層厚み分布33の平均層厚みはR2(nm)である。また、それぞれの層厚み分布中で、厚膜層29から昇順、降順にそれぞれ、数えた層番号うち、厚膜層29の層番号から近い10層分の薄膜層、それぞれの平均層厚みをD1(nm)、D2(nm)とする。図6では、順列が2番目の厚膜層29の層番号から近い10層分の薄膜層はそれぞれ、31と30に対応する。
式(3)および式(4)を満足する積層構造は、各スリット板のスリット長さの分布を調整することにより達成される。例えば、図6に示されるような構造とする場合の達成方法を説明する。この場合、スリット板は3枚構成であり、個々のスリット板のスリット長さは単調増加しているスリット長さの分布を有しており、かつ、隣合うスリット板間(ここでは、25と26)において、層の繋ぎ目となる厚膜層を形成するスリットを中心として、それぞれ、前後に配列する少なくとも10層分以上のスリットの長さと巾の分布が、前後で同じになるように設計することで達成される。各スリット板のスリット長の変化の割合は、0.9〜0.5に調整することにより達成できる。
本発明での積層構造を形成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリフッ化ビニリデン、環状ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ナイロン6、11、12、66などのポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボーネート、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミドなどを用いることができる。これらは、ホモポリマーでも共重合ポリマーであってもよい。本発明で用いる2種以上の樹脂はこれらの樹脂を用いたものであれば良く、同種のポリマーにおいて共重合比率を変化させたもの、ホモポリマーと共重合ポリマーの組み合わせであっても良い。
上記樹脂のうち透明性などの点で、環状ポリオレフィン、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボーネート、ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等が好ましく、耐熱性、寸法安定性、コスト面からは特に汎用性が高いポリエステルが好ましい。
ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールとを主たる構成成分とする単量体からの重合により得られる。
芳香族ジカルボン酸としては例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を挙げることができる。中でも好ましくはテレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸を挙げることができる。酸成分は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、さらにヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸等を一部共重合してもよい。
また、ジオール成分としては例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。中でもエチレングリコールを好ましく採用できる。ジオール成分は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
特にポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートおよびその重合体、ポリエチレンナフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンナフタレートおよびその共重合体、さらにはポリヘキサメチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリヘキサメチレンナフタレートおよびその共重合体等を挙げることができ、特にポリエチレンテレフタレートとその共重合体が好ましい。
また、少なくとも2種類の樹脂の組み合わせとしては、高反射率を達成する観点から、樹脂Aとしてはポリエチレンテレフタレートを含んでなる層と樹脂Bとしてはシクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などを共重合したポリエステルを含んでなる層とで構成されることが好ましい。樹脂Bにおける共重合量は、5〜50mol%が好ましく、本発明においては、特に、光学性能に優れる観点から、スピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸を共重合したポリエステルを用いることが最も好ましい。その場合は、スピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸の共重合量が、それぞれ、5〜30mol%であるエチレンテレフタレート重縮合体であることが最も好ましい。なお、樹脂Bは、ポリエチレンテレフタレートと共重合ポリエステルのアロイであっても構わない。
また、本発明の積層構造を達成する観点から、レオロジー特性の指標でもある樹脂の溶液粘度は低いことが好ましい。具体的には、オルトクロロフェノール中で測定される極限粘度(IV:Intrinsic Viscosity)が、0.65以下であることが好ましい。より、好ましくは、0.56以下である。
以下、本発明の積層フィルムの実施例を用いて説明する。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
特性値の評価方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
(1)積層厚み、積層数、積層構造
フィルムの層構成は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、電子顕微鏡観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡H−7100FA型((株)日立製作所製)を用い、加速電圧75kVでフィルムの断面を40000倍に拡大観察し、断面写真を撮影、層構成および各層厚みを測定した。尚、場合によっては、コントラストを高く得るために、公知のRuOやOsOなどを使用した染色技術を用いても良い。
積層構造の具体的な求め方を、説明する。約4万倍のTEM写真画像を、CanonScanD123Uを用いて画像サイズ720dpiで取り込んだ。画像をJPEG形式で保存し、次いで画像処理ソフトImage−Pro Plus ver.4(販売元 プラネトロン(株))を用いて、このJPGファイルを開き、画像解析を行った。画像解析処理は、垂直シックプロファイルモードで、厚み方向位置と幅方向の2本のライン間で挟まれた領域の平均明るさとの関係を、数値データとして読み取った。表計算ソフト(Excel2000)を用いて、位置(nm)と明るさのデータに対してサンプリングステップ6(間引き6)、3点移動平均の数値処理を施した。さらに、この得られた周期的に明るさが変化するデータを微分し、VBAプログラムにより、その微分曲線の極大値と極小値を読み込み、隣り合うこれらの間隔を1層の層厚みとして層厚みを算出した。この操作を写真毎に行い、全ての層の層厚みを算出した。なお、実施例1〜12、比較例1の積層フィルムは、全て0.01μm以上0.4μm以下の薄膜層と1μm以上30μm以下の厚膜層で構成されていた。比較例2は、薄膜層のみで構成されており、比較例3は、薄膜層、厚膜層、さらに、厚膜層以上の厚みの層で構成されていた。
得られたポリエチレンテレフタレートの共重合体である樹脂の薄膜層における層番号と層厚みの分布において、一方の最表層側から30層分の層厚み平均をE1(nm)、他方の最表層側から30層分の層厚み平均をE2(nm)、および厚み方向中央部の30層分の層厚み平均をC(nm)とした。但し、傾斜構造の場合、予め層厚み分布が薄くなるように設計された方の最表層を層番号1とし、順次、逆の最表層まで層番号を付けた中で、数が小さい層番号30層分の薄膜層の層厚み平均をE1(nm)とした。
また、ポリエチレンテレフタレートである厚膜層を挟んだポリエチレンテレフタレートの共重合体である樹脂層の薄膜層領域において、厚膜層側から厚み方向上下に向かった10層分の薄膜層、それぞれの平均層厚みをD1(nm)、D2(nm)とし、同様に、厚膜層側から厚み方向上下に向かった次の厚膜層までの薄膜層の平均層厚みを、それぞれR1(nm)、R2(nm)とした。なお、D1,D2,R1,R2が2つ以上存在する場合は、最も高い平均値の方を採用した。但し、傾斜構造の場合、数が大きい層番号10層分の薄膜層の層厚み平均をD1(nm)とした。
(2)最大反射率
日立製作所製 分光光度計(U−3410 Spectrophotomater)にφ60積分球130−0632((株)日立製作所)および10°傾斜スペーサーを取り付け反射率を測定した。バンドパスは2nm/servoとし、ゲインは3と設定し、250nm〜2600nmの範囲を120nm/min.の走査速度で測定した。また、反射率を基準化するため、標準反射板として装置付属の酸化アルミニウム板を用い、サンプル測定時は、裏面からの反射による干渉をなくすために、“マジックインキ”(登録商標)で黒塗りした。反射率の最大値とは、波長250〜2600nmにおける分光反射率の最大値のことであり、その波長を反射波長とした。
(3)異なる樹脂間の面内屈折率差
積層フィルムを構成する樹脂を単独で用いて、積層フィルムと同じ製膜条件で単膜フィルムを製膜した。この際の製膜方法は、キャスティングまでは同じ方法で未延伸フィルムを製膜した。次いで、未延伸フィルムからサンプルを10cm×10cmの寸法に切り出し、二軸延伸装置(東洋精機(株))を用いて延伸し、さらに、得られた延伸フィルムを20cm×20cmの金枠に貼り付けてトンネルオーブン(泰伸製作所製)を用いて熱処理を施し、単膜フィルムを得た。なお、製膜時の熱処理温度が樹脂を溶融する温度の場合は、ポリイミドフィルムなどの支持体で挟みトンネルオーブンで熱処理を施した。得られた単膜フィルムのフィルム巾方向中央部からサンプルを長さ4×巾3.5cmの寸法で切り出し、アッベ屈折率計4T(アタゴ(株)製)を用いて、MD、TDの屈折率を求めた。光源は、ナトリウムD線 波長589nmを用いた。MDとTDの屈折率の平均を面内屈折率とし、異なる樹脂間での面内屈折率の差を面内屈折率差(絶対値)として、求めた(|樹脂Aの面内屈折率―樹脂Bの面内屈折率|)。なお、浸液には、ヨウ化メチレン、テストピースの屈折率は、1.74のものを用いた。
(4)溶液粘度(IV)
オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度から、算出した。また、溶液粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。単位は[dl/g]で示した。なお、n数は3とし、その平均値を採用した。
(5)反射性能評価
前記(2)の波長250nm〜2600nmの分光反射率において、少なくとも任意の波長区間幅150nmにわたって、連続して反射率が90%以上の分光反射スペクトルが存在するものを◎、75%以上〜90%未満あるものを○、60%以上〜75%未満あるものを△、60%未満のものを×として評価した。
但し、実施例8と比較例2に関しては、薄膜層を形成するスリットの長さが全て同じである設計のスリット板を用いているため、基本的に周期構造を有する狭帯域反射フィルムとなる。そのため、反射率30%での反射波長帯域幅が200nm以下のものを○、それ以上のものを×として評価した。ここでの反射率30%での反射波長帯域幅とは、前記(2)の測定で得られた分光反射スペクトルにおいて、反射率30%との交点にあたる波長λ1(nm)と波長λ2(nm)の差(絶対値)を意味する。なお、交点が3以上存在するものは×とした。
[実施例1]
IV=0.63のポリエチレンテレフタレートを樹脂A(樹脂Aには、平均粒径1.2μmの凝集シリカを0.06重量%添加した。)として用い、また樹脂BとしてIV=0.55のポリエチレンテレフタレートの共重合体(スピログリコール成分15mol%およびシクロヘキサンジカルボン酸成分20mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート)を用いた。(樹脂Bは無粒子)。樹脂AおよびBは、それぞれの押出機にて280℃で溶融させ、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて吐出比が樹脂A組成物/樹脂B組成物=1.2/1になるように計量しながら、スリット数267個のスリット板を2枚、269個のスリット板1枚の計3枚用いた構成である801層フィードブロックにて合流させて、厚み方向に交互に801層積層された積層体とした。但し、用いた各スリット板において、両端部に位置した厚膜層を形成するスリット巾が、他の薄膜層を形成するスリット巾の2.8倍設計とし、さらに、薄膜層を形成するスリットの層番号とスリット長さの関係が、図5の層厚み分布と類似した設計とした。ここでは、スリット巾は、全て一定とし、長さのみ変化させた。なお、スリット長の変化の割合は、0.59とした。また、積層構造の内訳は、樹脂Aが401層、樹脂Bが400層からなる厚み方向に交互に積層された傾斜構造を有する積層体とした。
次いで、このフィードブロックから、ポリマー管を経て、各スリット板からの積層流が合流した801層の積層流が通過するポリマー流路の断面形状(図4(a)中のM−M’の位置)は、アスペクト比(巾方向の長さ/厚み方向の長さ)1.5の角型形状を用いた。また、このポリマー管の断面積内を単位時間内に通過する801層積層された樹脂の吐出量は、30kg/hr/cmであった。該積層体をTダイに供給し、シート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し未延伸フィルムを得た。
この未延伸フィルムを、100℃、延伸倍率3.5倍で縦延伸を行い、両端部をクリップで把持するテンターに導き105℃、4.3倍横延伸した後、230℃で熱処理を施し、120℃で約5%のTDリラックスを実施し、厚み67μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの厚み方向の断面をTEM観察し、画像処理により層厚み分布を求めた。最表層となる層番号1の層厚みは1.5μmであり、層番号267の層厚み3.1μm、層番号535の層厚みは3.4μm、そして、最表層となる層番号801の層厚みは1.7μmであり、これら4層とも樹脂Aの厚膜層であった。一方、得られた樹脂A、Bの薄膜層の厚みは、全て30nm〜115nmの範囲にあり、傾斜構造を実現していた。得られた積層フィルムの積層構造および物性結果を表1に示す。得られた分光反射スペクトルは、図6に類似した形状をしていることを確認した。波長400nm〜600nmに渡り、波抜け(部分的な低反射帯域)が少なく、一様に高い反射率(75%以上)を有する金属光沢感のある積層フィルムであった。但し、樹脂AとB間の面内屈折率差(絶対値)は、0.11であった。
[実施例2]
実施例1の樹脂AをIV=0.67のポリエチレンナフタレートに、樹脂BをIV=0.62のポリエチレンナフタレートの共重合体(テレフタル酸成分20mol%を共重合したポリエチレンナフタレート)に換え、さらに、ポリマー流路の断面積を拡大し、該断面積内を単位時間内に通過する801層積層された樹脂の吐出量を10kg/hr/cmとし、得られた未延伸フィルムを、135℃、延伸倍率3.3倍で縦延伸を行い、両端部をクリップで把持するテンターに導き145℃、4.1倍横延伸した後、240℃で熱処理を施し、150℃で約5%のTDリラックスを実施する以外は、実施例1と同様にして、厚み69μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの厚み方向の断面をTEM観察し、画像処理により層厚み分布を求めた。最表層となる層番号1の層厚みは1.6μmであり、層番号267の層厚み2.7μm、層番号535の層厚みは3.1μm、そして、最表層となる層番号801の層厚みは1.7μmであり、これら4層とも樹脂Aの厚膜層であった。一方、得られた樹脂A、Bの薄膜層の厚みは、全て44nm〜120nmの範囲にあり、傾斜構造を実現していた。得られた積層フィルムの積層構造および物性結果を表1に示す。得られた分光反射スペクトルの結果から波長500nm〜650nmに渡り、波抜け(部分的な低反射帯域)が少なく、一様に高い反射率を有する金属光沢感のある積層フィルムであった。但し、樹脂AとB間の面内屈折率差(絶対値)は、0.11であった。
[実施例3]
実施例1の樹脂BをIV=0.82のポリエチレンテレフタレート共重合体(アジピン酸成分20mol%およびイソフタル酸成分10mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート)に置き換え、吐出量を10kg/hr/cmとする以外は、実施例1と同様にして、厚み143μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの厚み方向の断面をTEM観察し、画像処理により層厚み分布を求めた。最表層となる層番号1の層厚みは3.1μmであり、層番号267の層厚み5.5μm、層番号535の層厚みは6.1μm、そして、最表層となる層番号801の層厚みは3.3μmであり、これら4層とも樹脂Aの厚膜層であった。一方、得られた樹脂A、Bの薄膜層の厚みは、全て104nm〜212nmの範囲にあり、傾斜構造を実現していた。得られた積層フィルムの積層構造および物性結果を表1に示す。得られた分光反射スペクトルの結果から波長900nm〜1150nmに渡り、波抜け(部分的な低反射帯域)が少なく、一様に高い反射率を有する透明感のある積層フィルムであった。但し、樹脂AとB間の面内屈折率差(絶対値)は、0.1であった。
[実施例4]
実施例1の樹脂BをIV=0.75のポリエチレンテレフタレートの共重合体(ナフタレンジカルボン酸成分10mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート)に換え、スリット長さの分布を変更する以外は、実施例1と同様にして、厚み91μmの積層フィルムを得た。ここで用いた各スリット板は、実施例1で用いたスリット板3枚にわたってのスリット長さ変化分を1枚のスリット板に形成したものであり、3枚とも同じ傾斜型のスリット長さ、巾の分布を有し、厚膜層を形成するスリット幅も変更したスリット板とした。なお、両端部に位置した厚膜層を形成するスリット巾は、他の薄膜層を形成するスリット巾の3.5倍設計とした。得られた積層フィルムの厚み方向の断面をTEM観察し、画像処理により層厚み分布を求めた。最表層となる層番号1の層厚みは4.5μmであり、層番号267の層厚み9.3μm、層番号535の層厚みは9.5μm、そして、最表層となる層番号801の層厚みは4.5μmであり、これら4層とも樹脂Aの厚膜層であった。一方、得られた樹脂A、Bの薄膜層の厚みは、全て59nm〜111nmの範囲にあり、個々のスリットで積層された薄膜層毎に概ね傾斜構造を実現していた。得られた積層フィルムの積層構造および物性結果を表1に示す。得られた分光反射スペクトルの結果から波長450nm〜600nmに渡り、波抜け(部分的な低反射帯域)が少なく、一様に高い反射率(60%以上)を有する金属光沢感のある積層フィルムであった。但し、樹脂AとB間の面内屈折率差(絶対値)は、0.08であった。
[実施例5]
実施例1の樹脂BをIV=0.75のポリエチレンテレフタレートの共重合体(ジフェニルジカルボン酸成分15mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート)に換える以外は、実施例1と同様にして、厚み71μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの厚み方向の断面をTEM観察し、画像処理により層厚み分布を求めた。最表層となる層番号1の層厚みは1.6μmであり、層番号267の層厚み2.7μm、層番号535の層厚みは3.3μm、そして、最表層となる層番号801の層厚みは1.8μmであり、これら4層とも樹脂Aの厚膜層であった。一方、得られた樹脂A、Bの薄膜層の厚みは、全て32nm〜110nmの範囲にあり、概ね傾斜構造を実現していた。得られた積層フィルムの積層構造および物性結果を表1に示す。得られた分光反射スペクトルの結果から波長450nm〜600nmに渡り、波抜け(部分的な低反射帯域)が少なく、一様に高い反射率(60%以上)を有する金属光沢感のある積層フィルムであった。但し、樹脂AとB間の面内屈折率差(絶対値)は、0.07であった。
[実施例6]
吐出量を10kg/hr/cmとする以外は実施例1と同様にして、厚み139μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの厚み方向の断面をTEM観察し、画像処理により層厚み分布を求めた。最表層となる層番号1の層厚みは3μmであり、層番号267の層厚み5.6μm、層番号535の層厚みは6.1μm、そして、最表層となる層番号801の層厚みは3.1μmであり、これら4層とも樹脂Aの厚膜層であった。一方、得られた樹脂A、Bの薄膜層の厚みは、全て110nm〜208nmの範囲にあり、傾斜構造を実現していた。得られた積層フィルムの積層構造および物性結果を表1に示す。得られた分光反射スペクトルの結果から波長900nm〜1150nmに渡り、波抜け(部分的な低反射帯域)が少なく、一様に高い反射率(90%以上)を有する透明感のある積層フィルムであった。但し、樹脂AとB間の面内屈折率差(絶対値)は、0.11であった。
[実施例7]
樹脂BとしてIV=0.54のポリエチレンテレフタレートの共重合体(スピログリコール成分15mol%およびシクロヘキサンジカルボン酸成分30mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート)を用いる以外は、実施例6と同様にして、厚み66μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの厚み方向の断面をTEM観察し、画像処理により層厚み分布を求めた。最表層となる層番号1の層厚みは1.6μmであり、層番号267の層厚み2.8μm、層番号535の層厚みは3.3μm、そして、最表層となる層番号801の層厚みは1.7μmであり、これら4層とも樹脂Aの厚膜層であった。一方、得られた樹脂A、Bの薄膜層の厚みは、全て42nm〜105nmの範囲にあり、傾斜構造を実現していた。得られた積層フィルムの積層構造および物性結果を表1に示す。得られた分光反射スペクトルの結果から波長400nm〜650nmに渡り、波抜け(部分的な低反射帯域)が少なく、一様に高い反射率(90%以上)を有する金属光沢感のある積層フィルムであった。但し、樹脂AとB間の面内屈折率差(絶対値)は、0.12であった。
[実施例8]
樹脂BをIV=0.72のポリエチレンテレフタレートの共重合体(イソフタル酸成分25mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート)に換え、さらにスリット長さ、幅を一定としたスリット数177個のスリット板を2枚用いた構成の353層フィードブロックにて合流させて、厚み方向に交互に353層積層された積層体とする以外は、実施例1と同様にして、厚み36μmの積層フィルムを得た。但し、用いた各スリット板において、両端部に位置した厚膜層を形成するスリット巾が、他の薄膜層を形成するスリット巾の2倍以上である設計とした。得られた積層フィルムの厚み方向の断面をTEM観察し、画像処理により層厚み分布を求めた。最表層となる層番号1の層厚みは1.1μmであり、層番号177の層厚み3.1μm、もう一方の最表層となる層番号353の層厚みは1μmであり、これら3層の厚膜層は、全て樹脂Aの厚膜層であった。一方、得られた樹脂A、Bの薄膜層の厚みは、全て60nm〜100nmの範囲にあり、周期構造を実現していた。得られた積層フィルムの積層構造および物性結果を表1に示す。得られた分光反射スペクトルの結果から反射波長550nmを中心とした高い反射率を有する積層フィルムであった。また、その分光反射スペクトルの形状は、シングルピークであった。但し、樹脂AとB間の面内屈折率差(絶対値)は、0.08であった。
[実施例9]
実施例1のスリット板の厚膜層を形成するスリット巾のみ変更して、それ以外は、実施例1と同様にして、厚み136μmの積層フィルムを得た。但し、用いた各スリット板において、両端部に位置した厚膜層を形成するスリット巾が、他の薄膜層を形成するスリット巾の5倍設計とした。得られた積層フィルムの厚み方向の断面をTEM観察し、画像処理により層厚み分布を求めた。最表層となる層番号1の層厚みは12μmであり、層番号267の層厚み22μm、層番号535の層厚みは26μm、そして、最表層となる層番号801の層厚みは12μmであり、これら4層とも樹脂Aの厚膜層であった。一方、得られた樹脂A、Bの薄膜層の厚みは、全て65nm〜121nmの範囲にあり、傾斜構造を実現していることを確認した。得られた積層フィルムの積層構造および物性結果を表1に示す。波長450nm〜600nmに渡り、波抜け(部分的な低反射帯域)が少なく、一様に高い反射率(60%以上)を有する金属光沢感のある積層フィルムであることを確認した。
[実施例10]
Tダイの上に1:0.9に分配する1回のスクエアミキサーを設置する以外は、実施例1と同様の製膜方法にて、1601層積層された厚み132μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの厚み方向の断面をTEM観察し、画像処理により層厚み分布を求めた。最表層となる層番号1の層厚みは1.3μmであり、層番号267の層厚み3.0μm、層番号535の層厚みは3.1μm、層番号801の層厚みは3.5μm、層番号1067の層厚みは3.4μm、層番号1335の層厚みは3.8μm、最表層となる層番号1601の層厚みは1.8μmであり、これら7層とも樹脂Aの厚膜層であった。一方、得られた樹脂A、Bの薄膜層の厚みは、全て30nm〜120nmの範囲にあり、傾斜構造が2つ並んだ層厚み分布を実現していた。得られた積層フィルムの積層構造および物性結果を表1に示す。得られた分光反射スペクトルは、図6に類似した形状の層厚み分布が、厚み方向に2つ並んだ層厚み分をしていることを確認した。波長400nm〜660nmに渡り、波抜け(部分的な低反射帯域)が少なく、一様に高い反射率(90%以上)を有する金属光沢感のある積層フィルムであった。但し、樹脂AとB間の面内屈折率差(絶対値)は、0.11であった。
[実施例11]
樹脂BをIV=0.72のポリエチレンテレフタレートの共重合体(シクロヘキサンジメタノール33mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート)に変更し、厚膜層のスリット巾の変更およびTダイの上に1:0.95に分配する1回のスクエアミキサーを設置する以外は、実施例1と同様の製膜方法にて、1601層積層された厚み260μmの積層フィルムを得た。但し、用いた各スリット板において、両端部に位置した厚膜層を形成するスリット巾が、他の薄膜層を形成するスリット巾の2.0倍設計とした。得られた積層フィルムの厚み方向の断面をTEM観察し、画像処理により層厚み分布を求めた。最表層となる層番号1の層厚みは2.3μmであり、層番号267の層厚み3.0μm、層番号535の層厚みは3.1μm、層番号801の層厚みは6.5μm、層番号1067の層厚みは3.4μm、層番号1335の層厚みは3.3μm、最表層となる層番号1601の層厚みは3.2μmであり、これら7層とも樹脂Aの厚膜層であった。一方、得られた樹脂A、Bの薄膜層の厚みは、全て102nm〜205nmの範囲にあり、傾斜構造が2つ並んだ層厚み分布を実現していた。得られた積層フィルムの積層構造および物性結果を表1に示す。得られた分光反射スペクトルは、図6に類似した形状の層厚み分布が、厚み方向に2つ並んだ層厚み分をしていることを確認した。波長854nm〜1106nmに渡り、波抜け(部分的な低反射帯域)が少なく、一様に高い反射率(90%以上)を有し、また、色目が透明な近赤外カットフィルタなどに好適な積層フィルムであった。但し、樹脂AとB間の面内屈折率差(絶対値)は、0.085であった。
[実施例12]
実施例1と同様にして、厚み63μmの積層フィルムを得た。この積層フィルムと実施例1の積層フィルムを、それぞれ、ラミネート機を用いて、接着剤を介して2枚貼り合わせ積層フィルムを作製した。ラミネート方法は、酢酸エチルに溶解したウレタン系接着剤をダイレクトグラビア方式で一方の積層フィルムに塗布し、次いで60℃のオーブン乾燥、さらに60℃のラミロールで貼り合わせた。得られた積層フィルムの厚みは、135μmであった。得られた積層フィルムの厚み方向の断面をTEM観察し、画像処理により層厚み分布を求めた。最表層となる層番号1の層厚みは1.1μmであり、層番号267の層厚み2.8μm、層番号535の層厚みは3.0μm、層番号801の層厚みは1.4μm、層番号802の接着剤の厚みは6μm、層番号803の層厚みは、1.8μm、層番号1067の層厚みは3.3μm、層番号1335の層厚みは3.6μm、最表層となる層番号1601の層厚みは1.8μmであり、接着剤を除く、8層とも樹脂Aの厚膜層であった。一方、得られた樹脂A、Bの薄膜層の厚みは、全て30nm〜120nmの範囲にあり、傾斜構造が2つ並んだ層厚み分布を実現していた。得られた積層フィルムの積層構造および物性結果を表1に示す。得られた分光反射スペクトルは、図6に類似した形状の層厚み分布が、厚み方向に2つ並んだ層厚み分をしていることを確認した。波長400nm〜600nmに渡り、波抜け(部分的な低反射帯域)が少なく、一様に高い反射率(90%以上)を有する金属光沢感のある積層フィルムであった。但し、樹脂AとB間の面内屈折率差(絶対値)は、0.11であった。
[比較例1]
IV=0.65のポリエチレンテレフタレートを樹脂Aとして用い、また樹脂BとしてIV=0.75のポリエチレンテレフタレートの共重合体(シクロヘキサンジメタノール成分30mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート)を用いた。(樹脂B、は無粒子)。樹脂AおよびBは、それぞれの押出機にて280℃で溶融させ、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて吐出比が樹脂A組成物/樹脂B組成物=1/1になるように計量しながら、スリット数267個のスリット板を2枚、スリット数269個のスリット板を1枚用いた構成の801層フィードブロックにて合流させて、厚み方向に交互に801層積層された積層体とした。用いた各スリット板において、厚膜層を形成するものはなく、スリット巾は全て同じとした。また、積層構造の内訳は、樹脂Aが401層、樹脂Bが400層からなる厚み方向に交互に積層された傾斜構造を有する積層体とした。次いで、このフィードブロックからピノールまでのポリマー流路の断面形状は、アスペクト比(巾方向の長さ/厚み方向の長さ)1の角型形状を用いた。また、断面積内を単位時間内に通過する積層された樹脂の吐出量は、50kg/hr/cmであった。さらに、押出機Cから樹脂Aに平均粒径1.2μmの凝集シリカを0.06重量%添加した樹脂Cが、最表層部にくるようにフィードブロック下のピノールから合流させて、計801層からなる積層体とした。該積層体をTダイに供給し、シート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し未延伸フィルムを得た。
この未延伸フィルムを、100℃、延伸倍率3.5倍で縦延伸を行い、両端部をクリップで把持するテンターに導き105℃、4.3倍横延伸した後、230℃で熱処理を施し、120℃で約5%のTDリラックス実施し、厚み65μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの厚み方向の断面をTEM観察し、画像処理により層厚み分布を求めた。最表層となる層番号1の層厚みは1.7μmであり、そして、もう一方の最表層となる層番号801の層厚みは1.5μmであり、樹脂Aの厚膜層は、合計で2層であった。一方、得られた樹脂A、Bの薄膜層の厚みは、全て40nm〜124nmの範囲にあったが、層番号の初めの方と終わりの方の層厚みが薄くなる(表層薄膜化)の現象が見られる層厚み分布構造を有したものであった。得られた積層フィルムの積層構造および物性結果を表1に示す。得られた分光反射スペクトルは、図7に類似した波抜けが大きい形状をしていることを確認した。すなわち、波長425nm〜575nmに渡り、反射率50%未満となる波抜けが多く、光学性能が悪い積層フィルムであることを確認した。但し、樹脂AとB間の面内屈折率差(絶対値)は、0.08であった。
[比較例2]
スリット幅、長さを一定としたスリット数201個のスリット板を用い、ポリマー流路の断面積を縮小し、吐出量を50kg/hr/cmとする以外は、実施例8と同様にして、厚み17μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの厚み方向の断面をTEM観察し、画像処理により層厚み分布を求めた。1μm以上の厚膜層は、全く見当たらなかった。一方、得られた樹脂A、Bの薄膜層の厚みは、全て21nm〜126nmの範囲にあり、上に凸の層厚み分布構造であった。得られた積層フィルムの積層構造および物性結果を表1に示す。得られた分光反射スペクトルの結果から反射波長551nmを中心として、反射波長帯域幅が広がった分光反射スペクトルを有する積層フィルムであることを確認した。また、その分光反射スペクトルの形状は、メインピークの低波長側にサイドピークが確認される分光反射スペクトルであった。但し、樹脂AとB間の面内屈折率差(絶対値)は、0.08であった。
[比較例3]
実施例2のスリット板の厚膜層を形成するスリット巾のみ変更して、それ以外は、実施例1と同様にして、厚み172μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの厚み方向の断面をTEM観察し、画像処理により層厚み分布を求めた。最表層となる層番号1の層厚みは15μmであり、層番号267の層厚み33μm、層番号535の層厚みは31μm、そして、最表層となる層番号801の層厚みは17μmであり、これら4層とも樹脂Aの厚膜層であった。一方、得られた樹脂A、Bの薄膜層の厚みは、全て42nm〜190nmの範囲にあり、表層薄膜化が見られる層厚み分布構造であった。得られた積層フィルムの積層構造および物性結果を表1に示す。分光反射スペクトルにおいて、反射率50%未満となる波抜けが多く、光学性能が悪い積層フィルムであることを確認した。
Figure 0004816419

本発明は、積層フィルムに関するものである。更に詳しくは、携帯電話、家電製品、建材、包装、自動車の内外装などに用いられる意匠性材料、有価証券に用いられるホログラムなどの偽造防止用材料、液晶ディプレイ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、有機エレクトロニクスディスプレイなどの各種ディスプレイや、光学印刷機器、カメラ、ライトガイド、光通信など種々の光学機器の反射材料もしくは光学フィルタ、車載用、建材用の熱線遮断ウィンドウフィルム、太陽電池用反射体などとして好適な積層フィルムに関するものである。
本発明に用いられるフィードブロックの構成図の一例 スリット板およびスリットの構成図 スリットの断面構成図 合流装置の模式図 スクエアミキサーの模式図 本発明の積層構造の一例の説明図 波抜けのない広帯域反射フィルムの分光反射スペクトル 波抜けの酷い広帯域反射フィルムの分光反射スペクトル
符号の説明
1:部材板
2:樹脂導入板
3:スリット板
4:樹脂導入板
5:スリット板
6:樹脂導入板
7:スリット板
8:樹脂導入板
9:部材板
10:フィードブロック
11:導入口
12:液溜部
13:各スリットの頂部の稜線
14:各スリットの頂部の稜線の上端部
15:各スリットの頂部の稜線の下端部
16:スリットへ導入される樹脂
17:流出口
18:合流装置
19L:スリット板3の流出口
20L:スリット板5の流出口
21L:スリット板7の流出口
19M:スリット板3の流出口から流路の規制により再配置された流路の断面形状
20M:スリット板5の流出口から流路の規制により再配置された流路の断面形状
21M:スリット板7の流出口から流路の規制により再配置された流路の断面形状
19N:拡幅された流路の断面形状
20N:拡幅された流路の断面形状
21N:拡幅された流路の断面形状
22:スクエアミキサー
23O:分割された一方のスクエアミキサー流入口
23P:スクエアミキサー内の分割された一方のポリマー流路
23Q:分割された一方のスクエアミキサー流出口
24O:分割された他方のスクエアミキサー流入口
24P:スクエアミキサー内の分割された他方のポリマー流路
24Q:分割された他方のスクエアミキサー流出口
25:スリット板1により作製される層厚み分布
26:スリット板2により作製される層厚み分布
27:スリット板3により作製される層厚み分布
28:スリット板3内の樹脂Aの層厚み分布
29:厚膜層
30:平均層厚みD2(nm)となる樹脂Aの薄膜層10層分の層厚み分布
31:平均層厚みD1(nm)となる樹脂Aの薄膜層10層分の層厚み分布
32:スリット板2内の樹脂Aの層厚み分布
33:スリット板1内の樹脂Aの層厚み分布
34:部分的な波抜けの領域

Claims (7)

  1. 少なくとも2種以上の樹脂を多層に積層するフィードブロックが、スリット板を2枚以上用いた構成からなり、スリット板において、両端部に位置する厚膜層を形成するスリット巾が、他の薄膜層を形成するスリット巾の2倍以上であるフィードブロックを用いて製造されてなるフィルムであって、該フィルムは厚み方向に250層以上積層され、少なくとも1μm以上30μm以下である厚みの厚膜層が3層以上含まれ、かつ、波長250〜2600nmにおける反射率の最大値が60%以上である積層フィルム。
  2. 少なくとも最表層に厚膜層があり、厚膜層の順列において隣り合う厚膜層間に、層厚みが0.01以上0.4μm以下である薄膜層が少なくとも50層以上含まれる請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 該積層フィルムの少なくとも1種類の樹脂の薄膜層における層番号と層厚みの分布において、一方の最表層側から30層分の薄膜層の層厚み平均をE1(nm)、他方の最表層側から30層分の薄膜層の層厚み平均をE2(nm)、および厚み方向中央部の30層分の薄膜層の層厚み平均をC(nm)としたとき、下記(1)式、(2)式を同時に満足する請求項1または2に記載の積層フィルム。
    E1 ≧ C ≧ E2 ・・・式(1)
    0.9 ≧ E2/E1 ≧ 0.3 ・・・式(2)
  4. 厚膜層を挟んだ薄膜層領域において、厚膜層側から厚み方向上下に向かった10層分の薄膜層、それぞれの平均層厚みをD1(nm)、D2(nm)とし、同様に、厚膜層側から厚み方向上下に向かった次の厚膜層までの薄膜層の平均層厚みを、それぞれR1(nm)、R2(nm)としたときに、下記の(3)式と(4)式を同時に満足する請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルム。
    R1 ≧ R2 ・・・式(3)
    D1 ≦ D2 ・・・式(4)
  5. スクエアミキサーを用いて製造されてなる請求項1〜4のいずれかに記載の積層フィルム。
  6. ポリエチレンテレフタレートを含んでなる層とスピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸を含んでなるポリエステルからなる層とが積層されてなる請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルム。
  7. Tダイを用いたフィルム製造方法により製造された請求項1〜6のいずれかに記載の積層フィルム。
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