(第1実施形態)
以下、本発明を、オンキャリッジタイプのプリンタに具体化した第1実施形態を図1〜図9に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の液体噴射装置としてのプリンタ10は、略箱状をなすフレーム11を有し、このフレーム11内の下部には、その長手方向(図1に示す主走査方向X)に沿って支持部材としてのプラテン12が架設されている。プラテン12は、ターゲットとしての用紙Pを支持する支持台であり、紙送り機構13が有する紙送りモータ14の駆動力に基づき、用紙Pを主走査方向Xと直交する搬送方向Yに沿って給送するようになっている。
また、フレーム11内においてプラテン12の上方にはガイド軸15が架設され、このガイド軸15にはキャリッジ16が移動可能に挿通支持されている。また、フレーム11の内面においてガイド軸15の両端部と対応する位置には、駆動プーリ17及び従動プーリ18が回転自在に支持されている。駆動プーリ17にはキャリッジモータ19が連結され、これら一対のプーリ17,18間には、キャリッジ16を固定支持したタイミングベルト20が掛装されている。従って、キャリッジ16は、ガイド軸15にガイドされながら、キャリッジモータ19の駆動によりタイミングベルト20を介して主走査方向Xに移動可能となっている。
図1に示すように、キャリッジ16の下面側には、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド21が設けられている。この記録ヘッド21の下面側となるノズル形成面21aには、図2に示すように、各色のインクを吐出するための吐出口である多数のノズル22により、ノズル列としてのブラックインクノズル群23Bと、シアンインクノズル群23Cと、マゼンタインクノズル群23Mと、イエローインクノズル群23YEとが形成されている。すなわち、ノズル形成面21aには、各ノズル群23B,23C,23M,23YEにより、搬送方向Yに沿って延びる複数のノズル列が、主走査方向Xへ一定の間隔(ノズルピッチ)をおいて複数の吸引対象領域を形成するように設けられている。
また、記録ヘッド21内には図示しない圧電素子が各ノズル22と個別対応するように配設されている。そして、各圧電素子が駆動制御されることにより、記録ヘッド21の下方に至った用紙Pに向けて、各ノズル22からインク(液体)が噴射されるようになっている。また、キャリッジ16上には記録ヘッド21に対してインクを供給するための複数のインクカートリッジ24が各インクノズル群23B,23C,23M,23YEと個別対応して着脱可能に搭載されている。
さらに、フレーム11内においてプラテン12の下方には、廃液タンク25がプラテン12と平行に延びるように設けられている。この廃液タンク25には、例えば多孔質のパルプ材等からなる吸収部材(図示略)が収容されている。従って、周知のクリーニング時、及びワイピング時には、インクが廃液タンク25に排出されて吸収部材に吸収されるようになっている。
また、プラテン12の一端(図1において、搬送方向Y側から見て左端)には、フラッシング用受容部(キャップ外液体受容部、フラッシング用液体受容部)26が陥没形成されている。このフラッシング用受容部26は記録ヘッド21のノズル形成面21aとほぼ同じ大きさに形成され、フラッシング用受容部26内にはインク吸収材(図示略)が設けられている。定期フラッシング時には、キャリッジ16がフラッシング用受容部26上を通過する際に、印刷と無関係の駆動信号を記録ヘッド21に設けたピエゾ素子に印加することで、ノズル22からインクが噴射される。そして、噴射されたインクは、フラッシング用受容部26内のインク吸収材に吸収されるようになっている。これにより定期フラッシング時には、記録ヘッド21のノズル22内のインクの粘度上昇や固化を抑制するのに十分な量のフラッシングを行うことができる。
さらに、プラテン12上には、紙案内前とも称される複数の縁無し印刷用受容部(キャップ外液体受容部、余白無し噴射用液体受容部)30が陥没形成され、各縁無し印刷用受容部30内にはインク吸収材(図示略)が設けられている。そして、縁無し印刷時には、用紙Pの縁より外側へはみ出した部分(所謂、はみ出し印刷領域)に噴射されたインクが、縁無し印刷用受容部30内のインク吸収材で吸収されるようになっている。なお、縁無し印刷とは、用紙Pに対して余白無く全面に亘って印刷を行うことをいう。
一方、プリンタ10の一端部(図1において、搬送方向Y側から見て右端部)において用紙Pが至らない非印刷領域には、クリーニング機構31が設けられている。クリーニング機構31は、ノズル22内に残存したインクを吸引して、ノズルの目詰まりを解消するための機構である。図1に示すように、クリーニング機構31は、記録ヘッド21を封止する上方が開口したキャップ32と、チューブポンプからなる吸引ポンプ33とを備えている。キャップ32内の空間は複数(本実施形態では4つ)に区画され、各インク色のノズル群23B,23C,23M,23YEに個別対応する複数の液体受容部としてのキャップ小室(第1キャップ小室32a,第2キャップ小室32b,第3キャップ小室32c,第4キャップ小室32d)を形成している。そして、キャップ32は、図示しない公知の昇降手段により上下動可能とされ、上昇した場合には、記録ヘッド21に当接して、記録ヘッド21の各ノズル群23B,23C,23M,23YE(ノズル形成面21a)を封止するようになっている。より詳しくは、第1キャップ小室32aによってブラックインクノズル群23Bが封止され、第2キャップ小室32bによってシアンインクノズル群23Cが封止される。また、第3キャップ小室32cによってマゼンタインクノズル群23Mが封止され、第4キャップ小室32dによってイエローインクノズル群23YEが封止される。
図3は、キャップ32とフラッシング用受容部26及び縁無し印刷用受容部30のそれぞれに排出されたインクを廃液タンク25まで回収するインク回収システム部27を説明するための概略構成図である。図3に示すように、キャップ32の各キャップ小室32a,32b,32c,32d、フラッシング用受容部26、縁無し印刷用受容部30には、それぞれ内部にインクの排出路(液体流路)34a,35a,36a,37a,38a,39aが形成された排出チューブ(液体流路形成部材)34,35,36,37,38,39が接続されている。各排出チューブ34,35,36,37,38,39は、それらの途中において合流された後、吸引ポンプ33を介して廃液タンク25まで連通している。そして、クリーニング時、フラッシング時、縁無し印刷時において、ノズル22から吐出されたインクがそれぞれの排出チューブ34,35,36,37,38,39(排出路34a,35a,36a,37a,38a,39a)を介して廃液タンク25まで排出されるようになっている。
また、各排出路34a,35a,36a,37a,38a,39aの途中には、吸引ポンプ33までの各排出路34a,35a,36a,37a,38a,39aを連通状態または非連通状態となるように切り替える切替弁装置41が配置されている。この切替弁装置41は、各排出路34a,35a,36a,37a,38a,39a中に弁体81を各々介在させた構成とされ、切替弁装置41は、これらの各弁体81を開弁動作または閉弁動作させることにより、各排出路34a,35a,36a,37a,38a,39aを連通状態または非連通状態となるように切り替える。なお、以下において、切替弁装置41の弁体81のことを「切替弁」ということもある。
さらに、キャップ32の各キャップ小室32a,32b,32c,32dには、それら各キャップ小室32a,32b,32c,32dと個別対応するように複数(本実施形態では4つ)設けられた各大気流路形成部材85の一端側が各々接続されている。そして、これら各大気流路形成部材85において大気側となる他端側には、記録ヘッド21のノズル形成面21aがキャップ32により封止された場合に、各キャップ小室32a,32b,32c,32d内を大気開放状態または密閉状態となるように調整するための大気開放弁装置42が配置されている。すなわち、この大気開放弁装置42は、各大気流路形成部材85の他端側に弁体(大気開放用弁体)84を各々介在させた構成とされ、大気開放弁装置42は、これらの各大気開放用弁体84を開弁動作または閉弁動作させることにより、各キャップ小室32a,32b,32c,32d内を大気開放状態または密閉状態となるように調整する。なお、以下において、大気開放弁装置42の弁体84のことを「大気開放弁」ということもある。
切替弁装置41及び大気開放弁装置42は、吸引ポンプ33を駆動する正逆両方向への回転自在な構成とされた駆動モータ43にワンウェイクラッチ機構44を介して接続されている。本実施形態では、ワンウェイクラッチ機構44により、駆動モータ43が逆転方向(正逆両方向のうち一方の方向)へ駆動された際にのみ、その駆動力が切替弁装置41及び大気開放弁装置42に伝達されるようになっている。さらに、切替弁装置41と吸引ポンプ33との間における各排出路34a,35a,36a,37a,38a,39a(具体的には、各排出路が合流された部位)の途中には、吸引ポンプ33の駆動に基づき負圧を蓄圧するための圧力室45が設けられている。
以下、切替弁装置41及び大気開放弁装置42の構成について、図4〜図7を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明においては、図4における左下方向を「前」、すなわち正面とし、その正面から見た場合の右側を「右」、左側を「左」として説明することとする。
図4に示すように、切替弁装置41及び大気開放弁装置42は、共通の連結カム部51と、連結カム部51の下方に設けられる切替弁用レバー部52と、連結カム部51の上方に設けられる大気開放弁用レバー部53(図7(f)参照)とで構成されている。連結カム部51は、ワンウェイクラッチ機構44に接続される従動部材としてのカムシャフト54を有しており、このカムシャフト54に一体回転可能に設けられる複数のカム体としてのカム部材56,57,58,59,61,62,63,64,65,66をそれぞれ有して構成されている。以下、連結カム部51、切替弁用レバー部52、大気開放弁用レバー部53の順に説明する。
まず、連結カム部51について説明する。図6は、主に連結カム部51を示す正面図であって、図面理解の簡単のため、切替弁装置41及び大気開放弁装置42は、左端の各カム部材65,66と対応する部分についてのみ位置関係を示すために一点鎖線で図示してある。また、図7(a)〜(f)は、図6における各矢視線における断面図であるが、図面理解の簡単のため、切替弁装置41の切替弁用レバー部52及び大気開放弁装置42の大気開放弁用レバー部53は、図7(f)においてのみ図示し、その他の図面では省略してある。また、図7(a)〜(f)においては、各排出路34a,35a,36a,37a,38a,39aに対応する各カム部材56,57,58,59,61,62,63,64,65,66の形状を明確にするため、各カム部材56,57,58,59,61,62,63,64,65,66以外の部材については極力図示を省略してある。
図6に示すように、カムシャフト54の右端には、ワンウェイクラッチ機構44に作動連結されるかさ歯車55が固着され、このかさ歯車55に連続するようにして、カムシャフト54には、複数のカム部材(カム体)56,57,58,59,61,62,63,64,65,66が固着されている。すなわち、第1切替用カム部材56、第2切替用カム部材57、第1大気開放用カム部材58、第3切替用カム部材59、第2大気開放用カム部材61、第4切替用カム部材62、第3大気開放用カム部材63、第5切替用カム部材64、第4大気開放用カム部材65、第6切替用カム部材66が、この順で軸線a方向に並列するように固着されている。
ここで、第1切替用カム部材56は縁無し印刷用受容部30を吸引対象領域とする際のインク排出路となる排出路39aに対応し、第2切替用カム部材57はフラッシング用受容部26を吸引対象領域とする際のインク排出路となる排出路38aに対応している。さらに、第1大気開放用カム部材58と第3切替用カム部材59は、ブラックインクノズル群23Bを封止する第1キャップ小室32aを吸引対象領域とする際のインク排出路となる排出路34aに対応している。第2大気開放用カム部材61と第4切替用カム部材62は、シアンインクノズル群23Cを封止する第2キャップ小室32bを吸引対象領域とする際のインク排出路となる排出路35aに対応している。第3大気開放用カム部材63と第5切替用カム部材64は、マゼンタインクノズル群23Mを封止する第3キャップ小室32cを吸引対象領域とする際のインク排出路となる排出路36aに対応している。第4大気開放用カム部材65と第6切替用カム部材66は、イエローインクノズル群23YEを封止する第4キャップ小室32dを吸引対象領域とする際のインク排出路となる排出路37aに対応している。
まず、切替弁装置41を構成する各切替用カム部材56,57,59,62,64,66について説明する。各大気開放用カム部材58,61,63,65については、各切替用カム部材56,57,59,62,64,66、切替弁用レバー部52の説明の後に説明することとする。
図7(a)に示すように、第1切替用カム部材56には、単独動作用凸部(カム部)56aが径方向に突出形成されている。同様に、図7(b)に示すように、第2切替用カム部材57には、単独動作用凸部57aが径方向に突出形成されている。図7(c)に示すように、第3切替用カム部材59には、共に断面形状が扇形状をなす一斉動作用凸部59aと単独動作用凸部59bが、カムシャフト54の反回転方向(図7における反時計方向であり、以下において同様。)に約270度の間隔をおいてそれぞれ突出形成されている。図7(d)に示すように、第4切替用カム部材62には、共に断面形状が扇形状をなす一斉動作用凸部62aと単独動作用凸部62bが、カムシャフト54の反回転方向に約200度の間隔をおいてそれぞれ突出形成されている。
図7(e)に示すように、第5切替用カム部材64には、共に断面形状が扇形状をなす一斉動作用凸部64aと単独動作用凸部64bが、カムシャフト54の反回転方向に約140度の間隔をおいてそれぞれ突出形成されている。図7(f)に示すように、第6切替用カム部材66には、共に断面形状が扇形状をなす一斉動作用凸部66aと単独動作用凸部66bが、カムシャフト54の反回転方向に約80度の間隔をおいてそれぞれ突出形成されている。なお、各一斉動作用凸部59a,62a,64a,66aと各単独動作用凸部59b,62b,64b,66bは、各凸部(カム部)によってそれぞれ若干の相違はあるものの概ね中心角が45度〜75度の範囲内の扇形状に形成されている。また、各一斉動作用凸部59a,62a,64a,66aは、軸線aを中心にした周方向位置がそれぞれ同位置となるように形成されており、各単独動作用凸部59b,62b,64b,66bは、軸線aを中心にした周方向位置がそれぞれ異なるように形成されている。なお、各凸部56a,57a,59a,59b,62a,62b,64a,64b,66a,66bの外周面56c,57c,59c,59d,62c,62d,64c,64d,66c,66dによって切替用カム面が構成されている。
次に、切替弁用レバー部52について、図5を参照して説明する。切替弁用レバー部52は、連結カム部51(各切替用カム部材56,57,59,62,64,66)の回転に基づき各排出路39a,38a,34a,35a,36a,37aを連通・非連通状態となるように切り替えるための部位である。切替弁用レバー部52は、平面視略長方形形状の基材71を有し、この基材71上には、2本の回転軸72,73が上記各切替用カム部材56,57,59,62,64,66の直径よりも大きな間隔を空けてカムシャフト54の軸線aと平行となるように配置されている。そして、基材71の内部には、各排出路39a,38a,34a,35a,36a,37aが連続形成されており、吸引ポンプ33側へ3つの排出路ずつ(排出路36a,34a,39a、排出路37a,35a,38a)が合流して導出されている。
2本の回転軸72,73のうち、前方側(図5において下側)の回転軸72には、図5において右側から順に、第1レバー74、第3レバー76、第5レバー78がそれぞれ回転可能に取り付けられている。また、2本の回転軸72,73のうち、後方側(図5において上側)の回転軸73には、図5において右側から順に、第2レバー75、第4レバー77、第6レバー79がそれぞれ回転可能に取り付けられている。そして、各レバー74,75,76,77,78,79は、各々対応する回転軸72,73に取り付けられた状態において、第1レバー74、第2レバー75、第3レバー76、第4レバー77、第5レバー78、第6レバー79の順に、平面視において互い違いとなる千鳥状に配置されている。なお、本実施形態においては、これらの各レバー74,75,76,77,78,79が従動部材としてのカムシャフト54に近接配置された変位部材として機能する。
第1レバー74は、縁無し印刷用受容部30(排出路39a)に対応するように第1切替用カム部材56の下方に位置しており、第1切替用カム部材56の回転に伴い、排出路39aを連通・非連通状態となるように切り替える。第2レバー75は、フラッシング用受容部26(排出路38a)に対応するように第2切替用カム部材57の下方に位置しており、第2切替用カム部材57の回転に伴い、排出路38aを連通・非連通状態となるように切り替える。第3レバー76は、第1キャップ小室32a(排出路34a)に対応するように第3切替用カム部材59の下方に位置しており、第3切替用カム部材59の回転に伴い、排出路34aを連通・非連通状態となるように切り替える。第4レバー77は、第2キャップ小室32b(排出路35a)に対応するように第4切替用カム部材62の下方に位置しており、第4切替用カム部材62の回転に伴い、排出路35aを連通・非連通状態となるように切り替える。第5レバー78は、第3キャップ小室32c(排出路36a)に対応するように第5切替用カム部材64の下方に位置しており、第5切替用カム部材64の回転に伴い、排出路36aを連通・非連通状態となるように切り替える。第6レバー79は、第4キャップ小室32d(排出路37a)に対応するように第6切替用カム部材66の下方に位置しており、第6切替用カム部材66の回転に伴い、排出路37aを連通・非連通状態となるように切り替える。
図7(f)に示すように、切替弁用レバー部52における基材71の上面側において、第6レバー79の後端(図7(f)における右端)と対応する位置には弁体支持部71aが上方へ***形成されている。この弁体支持部71aには基材71内を貫通する排出路37aまで至る弁体支持孔71bが上下方向に形成され、この弁体支持孔71b内に長尺状をなす弁体81が摺動可能に嵌合配置されている。弁体81は、コイルバネ(図示略)によって下方に付勢されており、その弁体81の下部により常には排出路37aを封止した状態にあって、キャップ小室32dと吸引ポンプ33との間を非連通状態としている。また、弁体81の上部には、第6レバー79が図7(f)に実線で示す状態から二点鎖線で示す状態へと揺動(変位)した場合に、その第6レバー79の後端と係止可能な係止部81aが形成されている。
図7(f)に実線で示すように、排出路37aを非連通状態(封止状態)としている場合の弁体81は、その係止部81aが第6レバー79の後端と非接触の位置関係にあり、その弁体81にはコイルバネによる下方への付勢力のみが加わる構成となっている。そして、第6切替用カム部材66の回転に伴い、一斉動作用凸部66aまたは単独動作用凸部66bの外周面66c,66dが第6レバー79の前端(図7(f)における左端)に盛り上がり形成された係合面79aに回転軸73側から当接係合した場合に、第6レバー79は、その前端側が下方へ押し込まれるように図7(f)において反時計方向へ回転する構成とされている。そして、その場合には、第6レバー79の後端(図7(f)における右端)が係止部81aに下方から当接して係止部81aを持ち上げるため、弁体81がコイルバネの下方への付勢力に抗して押し上げられることにより、キャップ小室32dと吸引ポンプ33との間を繋ぐ排出路37aが連通状態とされる。すなわち、一斉動作用凸部66aまたは単独動作用凸部66bの外周面66c、66dが第6レバー79の係合面79aに当接して、凸部66a,66bが第6レバー79前端側を下方に押し込んでいる間は、弁体81が開弁状態となるように構成されている。
なお、第6切替用カム部材66以外の他の各切替用カム部材56,57,59,62,64が個別対応する各レバー74,75,76,77,78を介して排出路39a,38a,34a,35a,36aを連通・非連通状態となるように切り替える構成についても同様であるため、詳しい説明は省略する。また、第1レバー74、第3レバー76、第5レバー78は、第2レバー75、第4レバー77、第6レバー79と比較した場合、係合面が前後逆となる後端に形成されており、各切替用カム部材56,59,64が各レバー74,76,78の係合面に対して、対応する各弁体とは反対側の後端側から回転軸72側に向けて徐々に当接していく点で構成が相違している。
さらに、切替弁用レバー部52においては、図5に示すように、第3レバー76の下方位置に、各切替用カム部材56,57,59,62,64,66(及びカムシャフト54)の原点位置を検出するための光センサ80が設けられている。この光センサ80は、平面視二股形状をなしており、第3レバー76の後端側が下方へ回動した際に、その第3レバー76の後端から下方へ延設された検出用突起76bが光センサ80の二股内に下降して、光センサ80において一方から他方へ投射される光線を遮断したときに、カムシャフト54の回転角度を得るための原点位置を検出するようになっている。各弁体81における開弁状態及び閉弁状態への各々の移行は原点位置からのモータパルス管理によって行われる。
次に、大気開放弁装置42を構成する各大気開放用カム部材58,61,63,65について説明する。
図7(c)に示すように、第1大気開放用カム部材58には、断面形状が扇形状をなす2つの大気開放用凸部58a,58bが突出形成されている。同様に、図7(d)に示すように、第2大気開放用カム部材61には、断面形状が扇形状をなす2つの大気開放用凸部61a,61bがそれぞれ突出形成され、図7(e)に示すように、第3大気開放用カム部材63には、断面形状が扇形状をなす2つの大気開放用凸部63a,63bがそれぞれ突出形成されている。さらに、図7(f)に示すように、第4大気開放用カム部材65には、断面形状が扇形状をなす2つの大気開放用凸部65a,65bがそれぞれ突出形成されている。なお、各凸部58a,58b,61a,61b,63a,63b,65a,65bの外周面58c,58d,61c,61d,63c,63d,65c,65dによって大気開放用カム面が構成されている。
なお、2つの大気開放用凸部が形成されることで各大気開放用凸部間に形成される2つの凹部のうち一方の凹部58e,61e,63e,65eは、各大気開放用カム部材58,61,63,65において軸線aを中心にした周方向位置がそれぞれ同位置となるように形成されている。そして、他方の凹部58f,61f,63f,65fは、各大気開放用カム部材58,61,63,65において軸線aを中心にした周方向位置がそれぞれ異なるように形成されている。
図7(f)に示すように、大気開放弁用レバー部53において、大気開放用カム部材65の外周近傍には、大気開放用レバー82が回転軸83に回転可能に取り付けられている。この大気開放用レバー82の後端(図7(f)における右端)と対応する位置には、下方の基材71から内部に大気流路(図示略)が形成された筒状部85aが立設されており、この筒状部85aの下端側は当該筒状部85aと共に大気流路形成部材85を構成する不図示のチューブを介して対応するキャップ小室(この場合は、第4キャップ小室32d)に接続されている。そして、この筒状部85aの上端開口に対して大気開放用弁体としての弁体84(=大気開放弁)が嵌合配置され、この弁体84は、コイルバネ(図示略)によって下方に付勢されている。すなわち、弁体84は、ノズル形成面21aがキャップ32により封止された状態にある場合に、コイルバネの付勢力に基づき、第4キャップ小室32dを常には大気と非連通状態(すなわち、密閉状態)とするべく、筒状部85aの上端開口を閉塞している。また、弁体84の上部には、大気開放用レバー82が図7(f)に実線で示す状態から二点鎖線で示す状態へと揺動(変位)した場合に、その大気開放用レバー82の後端と係止可能な係止部84aが形成されている。
図7(f)に実線で示すように、第4キャップ小室32dを大気と非連通状態(密閉状態)とするべく筒状部85aの上端開口を閉塞している場合の弁体84は、その係止部84aが大気開放用レバー82の後端と非接触の位置関係にあり、その弁体84にはコイルバネによる下方への付勢力のみが加わる構成となっている。そして、大気開放用カム部材65の回転に伴い、大気開放用凸部65a,65bの外周面65c,65dが大気開放用レバー82の前端(図7(f)における左端)に当接した場合に、大気開放用レバー82は回転軸83を中心に図7(f)において二点鎖線で示すように反時計方向へ回転する構成とされている。そして、その場合には、大気開放用レバー82の後端(図7(f)における右端)が係止部84aに下方から当接して係止部84aを持ち上げるため、弁体84がコイルバネの下方への付勢力に抗して押し上げられる結果、第4キャップ小室32d内が大気開放状態とされる。すなわち、大気開放用凸部65a,65bの外周面65c,65dが大気開放用レバー82に当接して、大気開放用凸部65a,65bが大気開放用レバー82を上方に回動させている間は、弁体84が開弁状態となるように構成されている。一方、大気開放用凸部65a,65bが形成されることで各大気開放用凸部65a,65b間に形成される2つの凹部65e,65f間に大気開放用レバー82の先端が位置する場合には弁体84は閉弁状態となる。
なお、大気開放用カム部材65以外の他の各大気開放用カム部材58,61,63についても、それぞれ対応する各大気開放用レバーが設けられており(図示略)、同様の構成・作用によりキャップ小室32a,32b,32c内を大気開放状態または密閉状態となるように調整できるようになっている。したがって、駆動モータ43が逆転駆動されてカムシャフト54(大気開放用カム部材58,61,63,65)が回転した場合には、軸線aを中心にした周方向位置がそれぞれ同位置である一方の凹部58e,61e,63e,65eが、一斉閉弁用の凹部として機能し、軸線aを中心にした周方向位置がそれぞれ異なる他方の凹部58f,61f,63f,65fが、単独閉弁用の凹部として機能することになる。
次に、上記のように構成されたプリンタ10の作用に関し、特にインク回収システム部27における作用に着目して以下説明する。なお、カムシャフト54の回転角度が0度のときには、切替弁装置41及び大気開放弁装置42における全ての弁(切替弁、大気開放弁)が閉弁状態にあるものとする。
まず、駆動モータ43が逆転駆動されると、ワンウェイクラッチ機構44を介してその駆動力がカムシャフト54に伝達され、カムシャフト54が従動回転する。カムシャフト54の回転に伴い、カムシャフト54に設けられた各切替用カム部材56,57,59,62,64,66及び各大気開放用カム部材58,61,63,65が図7における矢印方向(時計方向)に一斉に回転する。このとき、カムシャフト54の回転角度に応じて、各カム部材56,57,58,59,61,62,63,64,65,66によって各弁体(81,84)がそれぞれ開閉動作される。
図8は、カムシャフト54(各カム部材56,57,58,59,61,62,63,64,65,66)の回転角度に対する各弁体81,84の開閉状態を示す表である。例えば、カムシャフト54(各カム部材56,57,58,59,61,62,63,64,65,66)の回転角度が0度であるときには(図8におけるNo.1)、全ての排出路34a,35a,36a,37a,38a,39aに対応する切替弁(=弁体81)及び大気開放弁(=大気開放用弁体84)が閉弁状態にある。したがって、カムシャフト54の回転角度が0度のときに、吸引ポンプ33を正転駆動させると、4つ全ての切替弁が閉弁状態であるため、吸引ポンプ33の駆動に基づいて圧力室45内に負圧が蓄圧される。
また、カムシャフト54(各カム部材56,57,58,59,61,62,63,64,65,66)の回転角度が21度であるときには(図8におけるNo.2)、キャップ小室32a,32b,32c,32dに対応する4つの切替用カム部材(第3切替用カム部材59,第4切替用カム部材62,第5切替用カム部材64,第6切替用カム部材66)の一斉動作用凸部59a,62a,64a,66aがそれぞれに対応する各レバー(第3レバー76,第4レバー77,第5レバー78,第6レバー79)を押し下げる。そして、対応する各弁体(81)が上方へ持ち上げられて開弁状態となり各排出路34a,35a,36a,37aが連通状態とされる。すなわち、切替弁装置41によって、4つのキャップ小室32a,32b,32c,32dが吸引ポンプ33と連通状態となる。
一方、大気開放弁装置42においては、4つの各キャップ小室32a,32b,32c,32dに対応する全ての弁体84(大気開放弁)が閉弁状態のままである。したがって、カムシャフト54の回転角度が21度のときに、吸引ポンプ33を正転駆動に切り替えると、4つの全てのキャップ小室32a,32b,32c,32d内からインクが吸引される。
続いて、カムシャフト54(各カム部材56,57,58,59,61,62,63,64,65,66)の回転角度が42度であるときには(図8におけるNo.3)、切替用カム部材(第3切替用カム部材59,第4切替用カム部材62,第5切替用カム部材64,第6切替用カム部材66)の一斉動作用凸部59a,62a,64a,66a(外周面59c,62c,64c,66c)は対応する各レバー(第3レバー76,第4レバー77,第5レバー78,第6レバー79)を未だ押し下げた状態のままであるため、回転角度が21度のときと同様に、各キャップ小室32a,32b,32c,32dに対応する全ての切替弁が開弁状態となっている。
一方、大気開放弁装置42においては、各大気開放用カム部材58,61,63,65の凸部58a,61a,63a,65aが対応する各大気開放用レバー(82)を押し下げるため、対応する各弁体84が上方へ持ち上げられてキャップ小室32a,32b,32c,32dが大気開放状態とされる。したがって、カムシャフト54の回転角度が42度のときには、4つの全ての各キャップ小室32a,32b,32c,32d内の負圧が開放される。
続いて、カムシャフト54(各カム部材56,57,58,59,61,62,63,64,65,66)の回転角度が63度であるときには(図8におけるNo.4)、切替用カム部材(第3切替用カム部材59,第4切替用カム部材62,第5切替用カム部材64,第6切替用カム部材66)の一斉動作用凸部59a,62a,64a,66a(外周面59c,62c,64c,66c)は対応する各レバー(第3レバー76,第4レバー77,第5レバー78,第6レバー79)から離間するため、各弁体81(切替弁)は、図7(f)において実線で示す元の位置に復帰して閉弁状態となる。
一方、大気開放弁装置42においては、大気開放用カム部材65の凸部65aが対応する大気開放用レバー82から離間して、大気開放用レバー82の前端(図7(f)における左端)が凹部65fに位置する。また、他の各大気開放用カム部材58,61,63の凸部58a,61a,63aはそれぞれに対応する各大気開放用レバーを未だ押し下げた状態のままである。よって、第4キャップ小室32dに対応する弁体84(大気開放弁)のみ閉弁状態となり、他のキャップ小室32a,32b,32cに対応する弁体84については開弁状態となる。したがって、カムシャフト54の回転角度が63度のときに、吸引ポンプ33を正転駆動に切り替えると、排出路34a,35a,36a,37aに対応する4つ全ての弁体81が閉弁状態であるため、第4キャップ小室32dに対応する弁体84が閉弁状態であっても、吸引ポンプ33の駆動に基づいて圧力室45内に負圧が蓄圧される。
続いて、カムシャフト54(各カム部材56,57,58,59,61,62,63,64,65,66)の回転角度が84度であるときには(図8におけるNo.5)、第6切替用カム部材66の単独動作用凸部66bが第6レバー79を押し下げるため、弁体81が上方へ持ち上げられて開弁状態となり排出路37aが連通状態とされる。このとき、その他の弁体81(切替弁)については、閉弁状態のままであるため、第4キャップ小室32dのみが吸引ポンプ33と連通状態となる。
一方、大気開放弁装置42においては、回転角度が63度のときと同様であって、第4キャップ小室32dに対応する弁体84のみ閉弁状態であり、他のキャップ小室32a,32b,32cに対応する弁体84については開弁状態となっている。したがって、カムシャフト54の回転角度が84度のときに、吸引ポンプ33を正転駆動に切り替えると、第4キャップ小室32dのみからインクが吸引される。
続いて、カムシャフト54(各カム部材56,57,58,59,61,62,63,64,65,66)の回転角度が105度であるときには(図8におけるNo.6)、切替弁装置41では、回転角度が84度のときと同様であって、第4キャップ小室32dのみが吸引ポンプ33と連通状態となっている。
一方、大気開放弁装置42においては、大気開放用レバー82の先端(図7(f)における右端)が凹部65fから第4大気開放用カム部材65の凸部65bの外周面65d側へ移動するため、弁体84を上方へ押し上げていた力が開放されて閉弁状態となる。その他の弁体84(大気開放弁)については、回転角度が63度のときと同様であるため、この段階(カムシャフト54の回転角度が105度のとき)では、回転角度が42度のときと同様に4つの弁体84の全てが開弁状態となっている。したがって、カムシャフト54の回転角度が105度のときには、第4キャップ小室32d内の負圧が開放される。
以下、カムシャフト54の回転角度に応じて、キャップ小室32c→キャップ小室32b→キャップ小室32aの順に、順次対応する弁体81(切替弁)によって排出路34a,35a,36a,37a,38a,39aが単独で吸引ポンプ33と連通状態とされる。その一方、各キャップ小室32a,32b,32c,32dに対応する弁体84(大気開放弁)は閉弁状態とされる。すなわち、カムシャフト54の回転角度が147度であるときには(図8におけるNo.8)、第3キャップ小室32cのみが吸引ポンプ33と連通状態となり、このとき、吸引ポンプ33を正転駆動に切り替えると、第3キャップ小室32cのみからインクが吸引される。同様に、カムシャフト54の回転角度が210度であるときには(図8におけるNo.11)、第2キャップ小室32bのみが吸引ポンプ33と連通状態となり、このとき、吸引ポンプ33を正転駆動に切り替えると、第2キャップ小室32bのみからインクが吸引される。同様に、カムシャフト54の回転角度が273度であるときには(図8におけるNo.14)、第1キャップ小室32aのみが吸引ポンプ33と連通状態となり、このとき、吸引ポンプ33を正転駆動に切り替えると、第1キャップ小室32aのみからインクが吸引される。
さらに、カムシャフト54の回転角度が305度であるときには(図8におけるNo.16)、第2切替用カム部材57の凸部57aが第2レバー75を押し下げるため、対応する弁体81(切替弁)が開弁状態となり、排出路38a(フラッシング用受容部26)が吸引ポンプ33と連通状態とされる。そして、このとき、吸引ポンプ33を正転駆動に切り替えると、フラッシング用受容部26のみからインクが吸引される。
さらに、カムシャフト54の回転角度が336度であるときには(図8におけるNo.17)、第1切替用カム部材56の凸部56aが第1レバー74を押し下げるため、対応する弁体81(切替弁)が開弁状態となり、排出路39a(縁無し印刷用受容部30)が吸引ポンプ33と連通状態とされる。そして、このとき、吸引ポンプ33を正転駆動に切り替えると、縁無し印刷用受容部30のみからインクが吸引される。
このように、本実施形態では、カムシャフト54を所定回転角度に回転させることによって、排出路34a,35a,36a,37a,38a,39a中に各々介在させた弁体81を開弁動作または閉弁動作させることにより、排出路34a,35a,36a,37a,38a,39aを選択的に吸引ポンプ33と連通状態または非連通状態となるように切り替えるようにしている。また、併せて、各キャップ小室32a,32b,32c,32dと個別対応する大気流路形成部材85に各々介在させた大気開放用弁体84を開弁動作または閉弁動作させることにより、ノズル形成面21aがキャップ32により封止された状態時に、各キャップ小室32a,32b,32c,32dを選択的に大気開放状態または密閉状態となるように調整するようにしている。
そして、4つの全てのキャップ小室32a,32b,32c,32dから一斉に吸引する全室吸引モード(図8におけるNo.2)、いずれか1つのキャップ小室のみを吸引する単室吸引モード(1)〜(4)(図8におけるNo.5、No.8、No.11、No.14)、フラッシング用受容部26のみを吸引するフラッシング用受容部吸引モード(図8におけるNo.16)、縁無し印刷用受容部30のみを吸引する縁無し印刷用受容部吸引モード(図8におけるNo.17)の各モードでインクを廃液タンク25まで回収できるようになっている。
なお、全ての弁体81(切替弁)が閉弁状態とされるカムシャフト54の回転角度が0度(図8におけるNo.1)、63度(図8におけるNo.4)、126度(図8におけるNo.7)、189度(図8におけるNo.10)、252度(図8におけるNo.13)のときに、圧力室45に負圧が蓄圧されることになる。
また、カムシャフト54の回転角度が42度(図8におけるNo.3)、105度(図8におけるNo.6)、168度(図8におけるNo.9)、231度(図8におけるNo.12)、284度(図8におけるNo.15)のときに、負圧状態となった各キャップ小室32a,32b,32c,32d内の負圧が開放されることになる。したがって、吸引処理を終了する際には、これらのうちいずれかの回転角度までカムシャフト54をさらに回転させて負圧を開放させるようにしている。
以上、詳述した実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、切替弁装置41を設け、この切替弁装置41によって複数(上記実施形態では4つ)のノズル群B,C,M,YEからインクを選択的に吸引して廃液タンク25に排出するようにしている。このため、クリーニングが必要なノズル群のみからインクを吸引して排出することができるため、インクの浪費を抑制することができる。
(2)上記実施形態における切替弁装置41は、各排出路34a,35a,36a,37a,38a,39a中に各々介在させた弁体81(切替弁)を、吸引ポンプ33を駆動する駆動モータ43の駆動力を利用して開弁動作または閉弁動作させる。このため、その吸引対象領域(ノズル群B,C,M,YE、フラッシング用受容部26、縁無し印刷用受容部30)を選択するにあたり、その選択のための作業が簡単になる。
(3)上記実施形態では、切替弁装置41の駆動に際し、吸引ポンプ33の駆動モータ43が兼用されているため、装置全体のコンパクト化を図ることができる。
(4)上記実施形態では、駆動モータ43と各弁装置(切替弁装置41、大気開放弁装置42)との間にワンウェイクラッチ機構44が設けられており、駆動モータ43が逆転駆動された際にのみ、その駆動力が切替弁装置41及び大気開放弁装置42に伝達されるようになっている。このため、駆動モータ43の正逆回転方向を切り替えることによって、各弁装置41,42における各弁体(81,84)の開閉状態を切り替えたり、その開閉状態を維持したまま吸引ポンプ33によってインクを吸引したりする構成を容易に実現できる。
(5)上記実施形態では、軸線a上に回転可能に配置され、駆動モータ43が逆転駆動された場合に駆動モータ43に従動回転するカムシャフト54に、切替用カム部材56,57,59,62,64,66が設けられている。このため、カムシャフト54を回転させるだけで切替用カム部材56,57,59,62,64,66を介して各弁体(81)をそれぞれ開閉動作させることができる。同様に、大気開放弁装置42においても、カムシャフト54を回転させるだけで大気開放用カム部材58,61,63,65を介して各弁体(84)をそれぞれ開閉動作させることができる。
(6)上記実施形態では、切替用カム部材56,57,59,62,64,66が回転した際には、各レバー74,75,76,77,78,79を介して各弁体(81)がそれぞれ開閉動作されるようになっている。このように各レバー74,75,76,77,78,79を介することで各切替用カム部材56,57,59,62,64,66の真下にわざわざ各排出チューブ39,38,34,35,36,37を配置する必要がなく設計自由度を向上させることができる。
(7)上記実施形態では、各吸引対象領域の選択に際し、全室吸引モード、単室吸引モード、フラッシング用受容部吸引モード、縁無し印刷用受容部吸引モードの複数のモードでインクを廃液タンク25まで回収できるようになっている。このように、各吸引対象領域を選択吸引する場合に、種々の選択態様に適応できる構成となっている。
(8)上記実施形態では、切替弁装置41と大気開放弁装置42とで、駆動モータ43及びカムシャフト54を兼用しているため、装置全体のコンパクト化をさらに良好に図ることができる。
(9)上記実施形態では、キャップ32だけでなく、フラッシング用受容部26及び縁無し印刷用受容部30をも吸引対象領域として設定されており、切替弁装置41によって単独で選択吸引できるようになっている。このため、フラッシング用受容部26または縁無し印刷用受容部30内にインクが貯留された際に吸引を実行することで、フラッシング用受容部26または縁無し印刷用受容部30内においてインク吸収材に吸収しきれなかったインクを確実に除去することができる。
(10)上記実施形態では、キャップ32と吸引ポンプ33との間の排出路中に圧力室45が設けられている。このため、圧力室45に負圧が蓄圧された状態で切替弁装置41における各弁体81を開弁動作させることで、一気にインクを吸引して廃液タンク25側へ排出することができる。図9は、圧力室45を設けた場合と設けていない場合における時間経過とキャップ32内の負圧の大きさとの関係を示すグラフである。図9において、実線で示すのが本実施形態(圧力室45を設けた場合)におけるキャップ32内の負圧の圧力変化Dであり、2点鎖線で示すのが圧力室45を設けていない場合におけるキャップ32内の負圧の圧力変化Eである。図9に示すように、十分な負圧が得られないまま吸引する場合と比較して、圧力室45を備える本実施形態では、インクを無駄に浪費することを抑制できる(圧力変化Dのグラフで囲まれた面積(=インク消費量)<圧力変化Eのグラフで囲まれた面積(=インク消費量))。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、図10〜図13を参照して説明する。なお、本実施形態におけるプリンタ10の主な構成は第1実施形態と同様であるため、その重複した部分の説明は省略し、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態では、図10に示すように、フラッシング用受容部26及び縁無し印刷用受容部30からのインク吸引を行わない構成であるため、インク回収システム部27(切替弁装置41)においてフラッシング用受容部26及び縁無し印刷用受容部30に対応する各機構を有していない点が第1実施形態と異なっている。また、これに伴い、本実施形態のプリンタ10は、フラッシング用受容部26と廃液タンク25とを接続する排出チューブ38及び縁無し印刷用受容部30とを接続する排出チューブ39を有していない構成となっている。なお、上記第1実施形態と同一の構成部材については同一の符号を付すものとして、以下、第1実施形態と異なる部分に着目して説明する。
図11は、本実施形態の連結カム部51を示す正面図であって、図12(a)〜(d)は、図11における各矢視線における断面図である。なお、図12(a)〜(d)においては、図7と同様に、各排出路34a,35a,36a,37aに対応する各カム部材58,59,61,62,63,64,65,66の形状を明確にするため、各排出路に対応するカム部材のみを図示するものとし、その他の部材については図示省略してある。
図11に示すように、カムシャフト54には、ワンウェイクラッチ機構44に接続されるかさ歯車55、第1大気開放用カム部材58、第3切替用カム部材59、第2大気開放用カム部材61、第4切替用カム部材62、第3大気開放用カム部材63、第5切替用カム部材64、第4大気開放用カム部材65、第6切替用カム部材66が、この順で軸線a方向に並列するように固着されている。第1実施形態における第1切替用カム部材56と第2切替用カム部材57は、本実施形態では設けられていない。
図12(a)に示すように、第3切替用カム部材59には、共に断面形状が扇形状をなす一斉動作用凸部(カム部)59aと単独動作用凸部59bが、カムシャフト54の反回転方向(図7における反時計方向であり、以下において同様。)に約300度の間隔をおいてそれぞれ突出形成されている。図12(b)に示すように、第4切替用カム部材62には、共に断面形状が扇形状をなす一斉動作用凸部62aと単独動作用凸部62bが、カムシャフト54の反回転方向に約240度の間隔をおいてそれぞれ突出形成されている。
図12(c)に示すように、第5切替用カム部材64には、共に断面形状が扇形状をなす一斉動作用凸部64aと単独動作用凸部64bが、カムシャフト54の反回転方向に約160度の間隔をおいてそれぞれ突出形成されている。図12(d)に示すように、第6切替用カム部材66には、共に断面形状が扇形状をなす一斉動作用凸部66aと単独動作用凸部66bが、カムシャフト54の反回転方向に約90度の間隔をおいてそれぞれ突出形成されている。本実施形態では、各単独動作用凸部59b,62b,64b,66bの軸線aを中心にした周方向位置における形成間隔が、上記第1実施形態における形成間隔よりも若干広く設定されている。
なお、切替弁装置41において、各切替用カム部材59,62,64,66が各レバー76,77,78,79を介して対応する各弁体81を開閉動作させる構成については上記第1実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。また、大気開放弁装置42において、大気開放弁装置42(大気開放用カム部材58,61,63,65)の構成及び、各大気開放用カム部材58,61,63,65が各レバー(82)を介して対応する各大気開放用弁体84を開閉動作させる構成についても上記第1実施形態と同様であるため詳細な説明は省略する。
次に、上記のように構成されたプリンタ10の作用に関し、特にインク回収システム部27における作用に着目して以下説明する。
図13は、カムシャフト54(各カム部材58,59,61,62,63,64,65,66)の回転角度に対する各弁体81,84の開閉状態を示す表である。カムシャフト54の回転角度に応じて、キャップ小室32d→キャップ小室32c→キャップ小室32b→キャップ小室32aの順に、順次対応する弁体81(切替弁)によって排出路37a,36a,35a,34aが単独で吸引ポンプ33と連通状態とされる一方、順次対応する弁体84(大気開放弁)は閉弁状態とされる。
すなわち、カムシャフト54(各カム部材58,59,61,62,63,64,65,66)の回転角度が24度であるときには(図13におけるNo.2)、キャップ小室32a,32b,32c,32dが吸引ポンプ33と連通状態となり、このとき、吸引ポンプ33を正転駆動に切り替えると、4つの全てのキャップ小室32a,32b,32c,32d内からインクが吸引される。また、カムシャフト54の回転角度が96度であるときには(図13におけるNo.5)、第4キャップ小室32dのみが吸引ポンプ33と連通状態となり、このとき、吸引ポンプ33を正転駆動に切り替えると、キャップ小室32dのみからインクが吸引される。同様に、カムシャフト54の回転角度が168度であるときには(図13におけるNo.8)、第3キャップ小室32cのみが吸引ポンプ33と連通状態となり、このとき、吸引ポンプ33を正転駆動に切り替えると、第3キャップ小室32cのみからインクが吸引される。さらに、カムシャフト54の回転角度が240度であるときには(図13におけるNo.11)、第2キャップ小室32bのみが吸引ポンプ33と連通状態となり、このとき、吸引ポンプ33を正転駆動に切り替えると、第2キャップ小室32bのみからインクが吸引される。同様に、カムシャフト54の回転角度が312度であるときには(図13におけるNo.14)、第1キャップ小室32aのみが吸引ポンプ33と連通状態となり、このとき、吸引ポンプ33を正転駆動に切り替えると、第1キャップ小室32aのみからインクが吸引される。
なお、全ての弁体81(切替弁)が閉弁状態とされるカムシャフト54の回転角度が0度(図13におけるNo.1)、72度(図13におけるNo.4)、144度(図13おけるNo.7)、216度(図13におけるNo.10)、288度(図13におけるNo.13)のときに、圧力室45に負圧が蓄圧されることになる。
また、カムシャフト54の回転角度が48度(図13におけるNo.3)、120度(図13におけるNo.6)、192度(図13におけるNo.9)、264度(図13におけるNo.12)、336度(図8におけるNo.15)のときに、負圧状態となった各キャップ小室32a,32b,32c,32d内の負圧が開放されることになる。
以上、詳述した第2実施形態によれば、上記第1実施形態における効果(1)〜(6)(ただし、フラッシング用受容部26と縁無し印刷用受容部30に対応する切替弁装置41に関する記載は除く。)、(10)に加えて、以下の効果を得ることができる。
(11)上記実施形態では、フラッシング用受容部26と縁無し印刷用受容部30に対応する弁体81(切替弁)が設けられておらず、キャップ32のみからキャップ32内に排出されたインクを吸引する構成であるため、装置構成が簡単になるとともに、装置全体のコンパクト化を図ることができる。
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態(別例)に変更してもよい。
・ 上記第2実施形態において、フラッシング用受容部26と縁無し印刷用受容部30のうちいずれか一方からも吸引ポンプ33を介して廃液タンク25までインクを吸引するように構成してもよい。
・ 上記各実施形態において、カムシャフト54と各カム部材56,57,58,59,61,62,63,64,65,66とを、一体に形成されてなる同一部材として構成してもよい。
・ 上記各実施形態において、切替弁用レバー部52における変位部材としての各レバー74,75,76,77,78,79を設けずに、各切替用カム部材56,57,59,62,64,66のカム部としての各凸部56a,57a,59a,59b,62a,62b,64a,64b,66a,66bが直接対応する弁体81を開閉動作させるように構成してもよい。同様に、大気開放弁用レバー部53における各レバー82を設けずに、各大気開放用カム部材58,61,63,65の各凸部58a,58b,61a,61b,63a,63b,65a,65bが対応する弁体84を直接開閉動作させるように構成してもよい。
・ 上記各実施形態において、全室吸引モードの際に、各切替用カム部材59,62,64,66の各一斉動作用凸部59a,62a,64a,66aが対応する弁体81を同時に閉弁状態から開弁状態へ動作させると、カムシャフト54の回転負荷が一時的に大きくなってしまう。そこで、上記各実施形態において、各一斉動作用凸部59a,62a,64a,66aの形成位置や凸部の中心角の大きさを適宜調整して、僅かなタイムラグを有して各弁体81を開弁動作させるように構成してもよい。この構成によれば、カムシャフト54の一時的な負荷増大を抑制することができる。
・ 上記各実施形態において、切替弁装置41をキャップ32より廃液タンク25側から見て上流側に配置してもよい。
・ 上記各実施形態において、大気開放弁装置42は設けなくてもよい。
・ 上記各実施形態において、圧力室45は設けなくてもよい。
・ 上記各実施形態では、カムシャフト54の回転角度が大きくなる順に、第4キャップ小室32d、第3キャップ小室32c、第2キャップ小室32b、第1キャップ小室32aの順に単室吸引されるように構成したが、この順序は限定されるものではなく、適宜変更可能である。
・ 上記各実施形態では、インクカートリッジ23,24がキャリッジ16に搭載されたオンキャリッジタイプのインクジェット式プリンタに具体化したが、これに限らず、オフキャリッジタイプのインクジェット式プリンタに具体化してもよい。
・ 上記各実施形態においては、液体噴射装置として、インクを吐出するプリンタ10について説明したが、その他の液体噴射装置であってもよい。例えば、ファックス、コピア等を含む印刷装置や、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置であってもよい。また、液体もインクに限られず、他の液体に応用してもよい。
10…液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ、12…支持部材としてのプラテン、21…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、21a…ノズル形成面、22…ノズル、23B…ノズル列としてのブラックインクノズル群、23C…ノズル列としてのシアンインクノズル群、23M…ノズル列としてのマゼンタインクノズル群、23YE…ノズル列としてのイエローインクノズル群、25…廃液タンク、26…キャップ外液体受容部及びフラッシング用液体受容部としてのフラッシング用受容部、30…キャップ外液体受容部及び余白無し噴射用液体受容部としての縁無し印刷用受容部、31…クリーニング機構、32…キャップ、32a…第1キャップ小室、32b…第2キャップ小室、32c…第3キャップ小室、32d…第4キャップ小室、33…吸引ポンプ、34,35,36,37,38,39…液体流路形成部材としての排出チューブ、34a,35a,36a,37a,38a,39a…液体流路としての排出路、41…切替弁装置、42…大気開放弁装置、43…駆動モータ、44…ワンウェイクラッチ機構、45…圧力室、54…従動部材としてのカムシャフト、56,57,59,62,64,66…切替用カム体としての切替用カム部材、56c,57c,59c,59d,62c,62d,64c,64d,66c,66d…切替用カム面としての外周面、58,61,63,65…大気開放用カム体としての大気開放用カム部材、58c,58d,61c,61d,63c,63d,65c,65d…大気開放用カム面としての外周面、59a,62a,64a,66a…一斉動作用カム部としての一斉動作用凸部、59b,62b,64b,66b…単独動作用カム部としての単独動作用凸部、74,75,76,77,78,79…変位部材としてのレバー、79a…係合面、81…弁体(切替弁)、84…大気開放用弁体(大気開放弁)、85…大気流路形成部材、85a…大気流路形成部材の一部を構成する筒状部、a…軸線。