JP4810078B2 - 酸化安定性に優れたモリンガオイルとその製造方法 - Google Patents
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Description
このモリンガ(Moringa)属(ワサビノキ)に属する植物は、現在、約14種が知られており、モリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)は、その中でも最も良く知られている。
モリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)は、高さ8〜15mの落葉樹であり、長さ30〜50cmの円筒状の鞘のある果実をつける。この果実は、通常は未熟のまま野菜として食用にされるが、成熟した種子は炒ってナッツとして食用にしているところもある。
しかしながら、搾油により蛋白質の汚濁物凝集能が失われることや、搾油して得られる粕にはサポニンやアルカロイドが含まれるため、飼料に供することができないなど、搾油の総合的採算が悪いため、これまで積極的な搾油の検討は行われてこなかった。
これまでモリンガオイルを製造する場合、搾油を圧搾法で行うときには予め100〜110℃の温度帯で、また搾油を抽出法で行うときには予め60〜80℃の温度帯で、それぞれ前処理した種子から油を取り出していた。
鋭意検討の結果、驚くべきことに本発明者は、この前処理の段階で、種子をより高温の120〜140℃で焙煎することにより、油脂の酸化安定性が飛躍的に高まることを見出した。
従来、油糧種子からの採油には、粗砕や脱皮によって圧搾の適合性を高めてきたが、高温焙煎を行うと、過乾燥による比重の低下や表皮の角質化や微粉による油脂吸着など複合した影響によって、圧搾機への原料フィードの悪化や採油量の低下が惹起した。即ち、圧搾の不適合性が起きて、上記のような高温焙煎は採用できなかった。
その結果、鞘を分離した後の種子について、微粉化を避けるため、通常行われている粗砕を行わず、全粒の種子(ホールシード)を焙煎することにした。
そして、蒸気又は水をクッカーに投入して種子表面を軟化させ、必要に応じて植物種子粕(例えば、トウモロコシ搾油粕)を2〜3重量%投入し圧搾抵抗を増大させることにより、搾油を良好に行うことができた。
これは見方を変えると、圧搾機へフィードするときの原料種子の嵩比重を0.45〜0.50g/cm3の範囲に調整することであることが分かった。
即ち、モリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)の成熟した種子を120〜140℃で焙煎し、次いで圧搾機へフィードするときの原料種子の嵩比重を0.45〜0.50g/cm3の範囲に調整し、その後搾油することにより、酸化安定性に優れ、しかも搾油性に優れたモリンガオイルが得られることが分かった。
本発明者は、このような知見に基づいて本発明を完成するに至った。
さらに、本発明は、酸化安定性に優れたモリンガオイルを搾油性よく製造する方法を提供することを目的とするものである。
請求項2に係る本発明は、モリンガ(Moringa)属に属する植物が、モリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)である請求項1記載のモリンガオイルの製造方法を提供するものである。
また、120〜140℃という高温で焙煎することによる種子の過乾燥及び比重低下からくる圧搾の不適合性を蒸気又は水の投入や植物油種子粕投入等の手段で嵩比重を高めて、圧搾機へのフィード量と採油量を確保しつつ圧搾することにある。
さらに、請求項5に係る本発明によれば、酸化安定性に優れ、しかも搾油性に優れたモリンガオイルを製造することができる。
ここでモリンガ(Moringa)属(ワサビノキ)に属する植物としては、モリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)を初めとして、モリンガ・コンカネンシス(Moringa concanensis)、モリンガ・プテリゴスペルマ(Moringa pterygosperma)などが挙げられるが、その中でも請求項2に記載したように、特にモリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)が好ましい。
ここで種子を120〜140℃で焙煎したとしても、嵩比重を0.45〜0.50g/cm3の範囲に調整したものでなければ不適当である。その反対に、種子の嵩比重を0.45〜0.50g/cm3の範囲に調整したものであったとしても、120〜140℃で焙煎したものでなければ、やはり不適当である。
なお、焙煎時間は、焙煎温度等により異なり一義的に決定することは困難であるが、一般に10〜15分程度でよい。
また、種子の嵩比重が0.45g/cm3未満であると、圧搾機が空回りしたりしてしまうなど、採油量が低下するおそれがあり、好ましくない。一方、種子の嵩比重が0.50g/cm3超える場合には、加水量が過剰となっていて原料が軟化してしまっていたり、或いは細かく粉砕され過ぎたりしていて、いずれも搾油適性が不充分となるおそれがあり、好ましくない。
即ち、請求項5に記載した方法により、請求項1に係る本発明のモリンガオイルを製造することができる。なお、請求項1と5において、同じ文言のものは同じ意味を持っている。
本発明においては、焙煎時の過乾燥を防ぐため、従来行われている粗砕、圧扁、粉砕などの処理を行わず、全粒種子(ホールシード)のまま焙煎し、さらに蒸気をクッカーに投入して種子表面を軟化させたり、或いは植物種子粕(例えば、トウモロコシ搾油粕、菜種粕、大豆粕等)を2〜3重量%投入し原料の空隙率を低下させて、圧搾抵抗を増大させたりして、得られる種子の微粉化を防止し、原料表面の角質化を防止し、さらに得られる種子の嵩比重を0.45〜0.50g/cm3の範囲に調整し、次いで圧搾する。
なお、粗砕、圧扁、粉砕などの処理を行わず、全粒種子を用いることにより、劣化生成物の生成や基質の油脂そのものの酸化劣化を防ぐことができる。
この前処理工程の目的は、種子成分中のたんぱく質を熱変性によって凝固させて脂質を集合させて採油しやすくすると同時に、種子の水分を乾燥させて採油を容易にするためである。
従って、この熱処理(焙煎)を効率よく達成するために種子を粗砕や圧扁によって砕いたのち熱処理(焙煎)を行うことが通常採られている。
しかしながら、前記したように、本発明においては、敢えてこのような粗砕や圧扁を行わない。
油脂の精製工程は、一般に油脂に溶解して含まれてくるリン脂質や採油の前処理などで劣化生成した遊離脂肪酸等の不純物の除去を目的としている。
そのため、油脂の精製工程としては、脱ガム、脱酸、脱色、脱ロウ、脱臭などの工程があり、これら工程を経て精製油となる。これらの精製工程は常法と同様にして行うことができる。
即ち、従来の方法で得られた油脂の酸化安定性は、AOM値を指標とすると、80〜100時間程度であったが、請求項1に係る本発明のモリンガオイルは、従来と同様の精製工程を経ても、AOM値が200〜700時間と著しく酸化安定性に優れている。
これは、請求項1に係る本発明のモリンガオイルは、120〜140℃と高温で焙煎されていることから、種子の中でメイラード反応が起こり、メラノイジンが生成することで、酸化安定性が飛躍的に高まったものと推定される。
従って、請求項1に係る本発明のモリンガオイルは、請求項3に記載したように食用油脂として利用できるのみならず、請求項4に記載したように化粧品などへも利用することができる。これらの場合には、食用油脂或いは化粧品として通常配合されている成分を含有させることができる。
原料の搾油適性を把握するため、原料の前処理を検討した。
モリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)種子について、鞘を残した鞘有りと、鞘を除去した鞘無しの2種類のものを用意し、100〜110℃に加温して焙煎し、小型のエキスペラーでそれぞれの搾油適性を検討した。ここで搾油適性は、原料1kgあたりの採油量により、○:優、△:可、×:不可の3段階で判断した。条件と結果を表1に示す。
鞘有りでは搾油適性が不適当であったため、鞘無しの原料をさらに粗砕、圧扁又は粉砕したものを100〜110℃に加温して焙煎し、小型のエキスペラーでそれぞれの搾油適性を検討した。この条件と結果を表1に併せて示す。
なお、原料の粗砕は、フレーキングロールのロールクリアランスを広げて、常温のままで行い、種子が3〜5個程度に粗砕されるころを目安として行った。また、圧扁は、フレーキングロールのロールクリアランスを0.45mmに調整し、常温で行った。さらに、粉砕は、ホールの種子をそのまま粉砕機に通し、粒度は10〜20メッシュを目安に常温で行った。
そこで、この結果から、鞘無しで、しかも粗砕、圧扁、粉砕という処理を行わないものについて、以下の試験例2に示すように焙煎温度の検討を行った。
モリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)種子として、鞘無しで、しかも粗砕、圧扁、粉砕という処理を行わないものを用い、110℃から140℃の各焙煎温度で焙煎し、小型のエキスペラーでそれぞれの搾油適性を検討した。条件と結果を表2に示す。
そこで、以下の試験例3に示すように、原料に対し5重量%分又は10重量%分の水を加えたり、或いはコーンの圧搾粕を原料に対し3重量%分加えたりして嵩比重を調整し、搾油した。
モリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)種子として、鞘無しで、しかも粗砕、圧扁、粉砕という処理を行わないものを用い、130℃又は140℃の各焙煎温度で焙煎した後、原料に対し5重量%分又は10重量%分の水を加えたり、或いはコーンの圧搾粕を原料に対し3重量%分加えたりして嵩比重を調整し、搾油した。条件と結果を表3に示す。なお、加水について、原料に対し5重量%分の水を加えた場合には「有」と表示し、10重量%分の水を加えた場合には「有(過多)」と表示した。
しかしながら、原料に対し10重量%分の水を加えた場合(加水過多の場合)には、嵩比重が増大し、充分な搾油適性を得ることができなかった。
以上の結果から、原料を前処理する際に、嵩比重を指標に0.45〜0.50g/cm3の範囲に調整することにより、搾油適性が飛躍的に増大することが分かった。
(1)モリンガオイルAの製造
鞘を取り除いたモリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)種子6kgを120℃達温で焙煎し、次いで前記原料に対し5重量%分の水を加えて嵩比重を0.48g/cm3に調整した後、小型のエキスペラーにて搾油し、約2kgの粗原油を得た。
得られた粗原油に、リン酸を対油0.1重量%加え、水酸化ナトリウム水溶液にて遊離脂肪酸を中和し、遠心分離機にて油を分離し、約1.3kgの脱酸油を得た。
次に、これに、活性白土1重量%を加え、90℃で45分間攪拌したものをろ紙でろ過して、約1.2kgの脱色油を得た。
さらに、これを250℃の真空下(5mmHg以下)で60分間水蒸気蒸留を行って得られた約1.2kgの脱臭油を精製モリンガオイルAとした。
上記(1)にて得られた精製モリンガオイルAに関して、酸化安定性の指標となるAOM値の測定を基準油脂分析試験法に従って行った。結果を表4に示す。なお、AOM値は、油に空気を吹き込み所定の過酸化物価に達するまでの時間を示し、数値が大きいほど酸化安定性がよい。
(1)モリンガオイルBの製造
鞘を取り除いたモリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)種子5kgを140℃達温で焙煎し、次いで前記原料に対し5重量%分の水を加えて嵩比重を0.46g/cm3に調整した後、小型のエキスペラーにて搾油したこと以外は、実施例1(1)と同様にして行い、得られた脱臭油を精製モリンガオイルBとした。
上記(1)にて得られた精製モリンガオイルBに関して、実施例1(2)と同様にして酸化安定性の指標となるAOM値の測定を行った。結果を表4に示す。
(1)モリンガオイルCの製造
鞘を取り除いたモリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)種子5kgを100℃達温で焙煎し、次いで前記原料に対し5重量%分の水を加えて嵩比重を0.50g/cm3に調整した後、小型のエキスペラーにて搾油したこと以外は、実施例1(1)と同様にして行い、得られた脱臭油を精製モリンガオイルCとした。
上記(1)にて得られた精製モリンガオイルCに関して、実施例1(2)と同様にして酸化安定性の指標となるAOM値の測定を行った。結果を表4に示す。
(1)モリンガオイルDの製造
鞘を取り除いたモリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)種子5kgを60〜80℃に加温後、N−ヘキサンで油を抽出し、以下、実施例1(1)と同様に精製を行い、得られた脱臭油を精製モリンガオイルDとした。
上記(1)にて得られた精製モリンガオイルDに関して、実施例1(2)と同様にして酸化安定性の指標となるAOM値の測定を行った。結果を表4に示す。
Claims (2)
- モリンガ(Moringa)属に属する植物の種子から搾油によりモリンガオイルを製造するにあたり、モリンガ(Moringa)属に属する植物の種子を全粒のまま120〜140℃で焙煎し、次いで得られる種子の嵩比重を0.45〜0.50g/cm3の範囲に調整した後、圧搾法により搾油することを特徴とする酸化安定性に優れたモリンガオイルの製造方法。
- モリンガ(Moringa)属に属する植物が、モリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)である請求項1記載のモリンガオイルの製造方法。
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