JP4802537B2 - 改質基材 - Google Patents

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本発明は、表面から深さ方向に5μmの領域の中に、含窒素基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、炭化水素基のいずれかの官能基が存在し、表面から深さ200nm厚みの領域における前記官能基の濃度よりも、表面から深さ方向に200nm〜5μmの領域の中に、前記官能基の濃度が高い200nm厚みの領域が存在していることを特徴とする改質基材に関する。
官能基の特性を失活させることなく、表面に非イオン性が必要な材料に幅広く用いることができる。具体的には、生体適合性が要求される、人工血管、カテーテル、血液バッグ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工腎臓、人工肺、手術用補助器具などの医療用具など、または、タンパク質や有機物の非付着が要求される基材、浄水器用膜、上水浄化膜、下水浄化膜、RO膜などの分離膜、タンパクチップ、DNAチップ、バイオセンサーに好適に用いられる。特に、血液浄化用モジュールの分離膜には好適に用いられる。
基材に種々の官能基を導入し、特定の物質を除去したり、特定の物質を活性化させるような試みは数多くなされている。例えば、LDLの吸着リガンドとしてデキストラン硫酸が挙げられる。しかしながら、デキストラン硫酸のようなアニオン性基が多く存在する陰性電荷の強い表面は、ブラジキンの産生を増加させ、血栓形成を促したり、フサンなどの陽性電荷を有する抗凝固薬を吸着するという問題点がある。そこで、孔径の制御された多孔質ビーズにデキストラン硫酸を固定化し、低密度リポタンパク質(LDL)を除去する方法(特公昭62−56782)が開示されている。また、ヘキサデシル基のような疎水性の強い官能基は非特異的に様々なタンパク質も吸着することに加えて、凝固関連タンパク質の吸着も起きるので、血液の活性化が生じる。そこで、同様に孔径の制御された多孔質ビーズにヘキサデシル基を固定化し、β2−ミクログロブリンを除去する方法(人工臓器27(2)、571−577、1998)が開示されている。しかしながら、この方法だと、これらの物質を固定化する基材の形態が限定されてしまうという問題点があった。
また、アミノ基をもつポリエチレンイミンは酸化低密度リポタンパク質(酸化LDL)と相互作用する(特開2002−028461)。しかしながら、アミノ基は血小板粘着を引き起こすだけでなく、放出反応も大きいことが知られている。
以上のように、目的の物質を除去するには、上記のように、その目的に応じた官能基を導入し、含窒素基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、炭化水素基の密度を高めることが有効であるが、その分、血液の活性を亢進したり、基材の形状が限定されるという問題があった。
特公昭62−56782号公報 特開2002−28461号公報 人工臓器27(2)、571−577、1998
本発明の目的は、かかる従来技術の欠点を改良し、含窒素基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、炭化水素基などの官能基の特性を失活させることなく、表面に非イオン性の親水性を導入した改質基材を提供することにある。
本発明は上記課題を達成するため、以下の構成を有する。
表面から深さ方向に5μmの領域の中に、アミノ基、ピロール基、ピラゾール基、イミダゾール基、インドール基、ピリジン基、ピリダジン基、キノリン基、ピペリジン基、ピロリジン基、チアゾール基およびプリン基から選ばれる含窒素基、および炭化水素基のいずれかの官能基が存在し、表面から深さ方向に0〜200nm厚みの領域における前記官能基の濃度が50mol%以下であり、前記濃度よりも、表面から深さ方向に200nm〜5μmの領域の中に、前記官能基の濃度が1.5倍以上高い200nm厚みの領域が存在していることを特徴とする改質基材。
本発明によって、含窒素基炭化水素基などの官能基の特性を失活させることなく、表面に非イオン性の親水性が必要な改質基材を提供することができる。
本発明は、表面から深さ方向に5μmの領域の中に、含窒素基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、炭化水素基のいずれかの官能基が存在し、表面から深さ方向に0〜200nm厚みの領域における前記官能基の濃度よりも、表面から深さ方向に200nm〜5μmの領域の中に、前記官能基の濃度が高い200nm厚みの領域が存在していることを特徴とする改質基材である。特に、表面から深さ200nm厚みの領域において、水酸基、エーテル基、アミド基、エステル基のいずれかが存在することで、血小板や血球などの付着を抑制することができる。このため血液の活性化などの好ましくない現象を抑制することができる。一方で、含窒素基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、炭化水素基の機能を発揮させることができる。例えば、酸化低密度リポタンパク質(酸化LDL)や低密度リポタンパク質(LDL)、β2−ミクログロブリンなどは、血球成分に比較して小さい。このため、表面から200nmの厚み領域を通り抜けて、その下層にある含窒素基などの官能基とも十分に相互作用できるものと考えられる。
ここで、含窒素基とは、窒素を含んだ官能基のことを指し、具体的にはアミノ基、ピロール基、ピラゾール基、イミダゾール基、インドール基、ピリジン基、ピリダジン基、キノリン基、ピペリジン基、ピロリジン基、チアゾール基、プリン基などが挙げられる。なお、アミノ基としては1級から4級までのいずれでも良い。含窒素基のおもな特徴としては、カチオン性を帯びるために、酸化LDLやエンドトキシンなどのアニオン性物質を吸着することが挙げられる。とくに、含窒素基をもった物質である、ポリアルキレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ジエチルアミノエチルデキストラン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドなどアミノ基含有高分子や、ビニルイミダゾリウムメトクロライド重合体やビニルイミダゾール重合体などは、酸化LDLやエンドトキシンの吸着に特に好適である。これは、官能基をもった物質が高分子であれば、各々の官能基が、酸化LDLやエンドトキシンと相互作用するための、最適な配置をとることができるため、親和性が強くなるものと考えられる。特に限定されるものではないが、重量平均分子量としては、1000以上であることが好ましく、さらに好ましくは5000以上、さらには1万以上のものが好適に用いられる。また、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基のおもな特徴としては、アニオン性を帯びるために、フィブリノーゲンなどのカチオン性物質の吸着が挙げられる。炭化水素基としては、炭素数が6以上50以下の炭化水素基であることが好ましく、鎖状、環状、芳香環のいずれであっても良い。炭素数が6以上50以下の炭化水素基としては、 等がある。炭化水素基のおもな特徴としては、β2−ミクログロブリンやサイトカイン、凝固関連タンパク質などの吸着が挙げられる。
また、これらの官能基が複数あっても構わない。例えばアミノ基と炭化水素基が共存していれば、酸化LDLは、改質基材により吸着する。これは、アミノ基による静電相互作用と炭化水素基による疎水性相互作用の2つの力が作用するためと考えられる。さらに、タンパク質やペプチドのような生理活性物質であってもよい。
また、表面から深さ200nm厚みの領域において、非イオン性の親水性官能基、例えば、水酸基、エーテル基、アミド基、エステル基などが存在することで、血小板や血球などの付着を抑制することができる。これは、非イオン性の親水性部分には凝固関連タンパク質などが付着しにくいため、それらを認識する血小板や血球が付着しにくいものと考えられる。特に、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、デキストランもしくはプルランなどの非イオン性親水性高分子が、表面から深さ200nm厚みの領域に存在することが好ましい。これらの高分子は、排除体積効果により、血小板や血球の付着を、さらに抑制することができる。特に限定されるものではないが、排除体積効果が発揮されるためには、重量平均分子量としては、1000以上であることが好ましく、さらに好ましくは5000以上、さらには1万以上のものが好適に用いられる。また、これらの高分子は、非イオン性、親水性であることを妨げない限り、誘導体や共重合体であっても構わない。非イオン性とは、pH4.5およびpH9.5のいずれにおいても、電荷が1meq/g未満であることをいう。さらに親水性とは、25℃の水に対する溶解度が好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上のことをいう。
本発明でいうところの改質基材において、基材としては、高分子材料が好ましく用いられる。高分子材料の例としては、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。改質基材の形状としては、繊維、フィルム、樹脂、分離膜などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
含窒素基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、炭化水素基などの官能基の深さ領域の濃度測定は、分析電子顕微鏡を用いた測定で知ることができる。詳細は後述するが、改質基材を深さ方向にスライスした断面について、まず、全体をスキャンし、官能基の濃度分布の概要を把握する。分析電子顕微鏡を用いたスキャン結果は、定量的な精度は欠けるため、その後、点分析を行う。任意の幅10μmの領域について、深さ方向の濃度分析を行う。すなわち、表面から深さ方向に0〜200nm、幅10μmの領域の中から任意の10点について、点分析を行う。その後、深さ方向200nm〜5μmの領域の中で、スキャン結果から定性的にもっとも濃度が高いと思われる、幅10μmで深さ方向200nm厚みの領域において、任意の10点の点分析を行う。このとき、観察像の倍率は1万倍〜5万倍が適当である。これを、異なる3つの断面で分析し、合計30点の平均値を、その深さ領域の濃度とする。
なお、分析電子顕微鏡の検出感度を上げたり、目的とする官能基を他の官能基と区別をするために、官能基を修飾した後、測定に供してもよい。修飾とは、ある種の標識物質を化学結合させたり、錯形成させたりすることをいう。
ここで、表面からの深さ方向について、表面に凹凸がある場合、表面粗さの平均線を0nmとする。また、改質基材表面のコントラストが悪く、境界領域が不明瞭な場合、改質基材内部のコントラストのもっとも高い部分と、改質基材ではない箇所のコントラストがもっとも低い部分の中間値を表面とする。
また、改質基材の表面が、中空糸膜のように内表面と外表面がある場合、いずれか一方の表面からの深さ方向に対して、内部に官能基が高い領域が存在していればよい。例えば、人工腎臓用中空糸膜で、ある種の官能基が、血液成分のなかの不要物質を除去する機能を有する場合は、中空糸内表面側から深さ方向に200nm〜5μmの領域の中に、該官能基の濃度が高い200nm厚みの領域が存在していればよい。
官能基の濃度は、0〜200nmの領域の官能基の濃度に比べて1.5倍以上高いことが好ましく、さらには2倍以上高いことが好ましい。
該官能基が、5μmよりも深い領域で存在しているものは、その機能を十分に発揮することができない。また、官能基の濃度が0〜200nmの領域でもっとも高い場合は、表面における官能基の影響が大きくなる。例えば、炭化水素基の場合、血小板などが炭化水素基に付着するため、血液適合性が低下する。したがって、200nmより深い領域で炭化水素基の濃度が高くなることが好ましい。
0〜200nmの領域の含窒素基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、炭化水素基などの官能基の濃度は、50mol%以下が好ましく、さらにはl%以下、10mol%以下が好ましい。
表面から深さ方向に200nm〜5μmの領域の中に、含窒素基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、炭化水素基などの官能基の濃度が高い200nm厚みの領域を存在するような改質基材を得る方法としては、主に次の3つがある。すなわち、1)基材表面に含窒素基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、炭化水素基などの官能基を導入後、さらに水酸基、エーテル基、アミド基、エステル基などの非イオン性の親水性官能基を導入するという2ステップを踏んで改質基材を得る方法、2)基材成形原液に含窒素基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、炭化水素基などの官能基を有する物質を混練し、基材を成形後、非イオン性の親水性官能基を導入して、改質基材を得る方法、3)基材成形後、含窒素基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、炭化水素基などの官能基を有する物質を基材内部に押し込み、改質基材を得る方法、が挙げられる。
上記のなかで、基材に官能基を導入する方法としては、プラズマ照射により、基材に直接、種々の官能基を導入する方法と、含窒素基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、炭化水素基などの官能基をもった物質を、基材に化学結合もしくは吸着によって導入する方法がある。
上記の官能基をもった物質を、基材に化学結合させる具体例としては、基材に反応性の活性基、例えばクロロアセトアミドメチル基がある場合、ポリエチレンイミンのようにアミノ基を持つ物質と、有機溶媒中もしくは水中で混合させることによって、すみやかに両者を化学結合させ、アミノ基を基材に導入することができる。
上記の官能基をもった物質を、基材に吸着させる具体的な方法としては、基材を官能基をもった物質溶液に浸漬もしくは湿潤させればよい。また、該溶液に浸漬させた後、引き上げて、乾燥させてもよい。ここでいう、湿潤とは、基材を浸漬していた水溶液を除去して乾燥させない状態のことを言う。特に限定されるものではないが、基材の乾燥重量に対して3重量%以上の水分を含んでいることが好ましい。ここでいう、乾燥重量とは基材を乾燥させて、乾燥中の24時間での重量変化率が2%以内になった状態の重量をいう。
つぎに、含窒素基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、炭化水素基などの官能基を導入した基材に、非イオン性の親水性官能基を化学結合を形成させるには、前述と同様な方法を用いることができる。また、非イオン性親水性物質が高分子であるならば、含窒素基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、炭化水素基などの官能基を導入した基材を、非イオン性親水性高分子のモノマー溶液に浸積、もしくは湿潤させて、重合反応を行えば、基材に導入した前記官能基を覆うかたちで非イオン性親水性高分子を生成することができる。さらに、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、デキストラン、プルランなどの非イオン性親水性高分子を吸着させる方法も、前述と同様な方法を用いることができる。
また、前記2)で、含窒素基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、炭化水素基などの官能基を有する物質が混練された基材において、該物質が基材と化学結合しているか、吸着しているかは問わない。
前記3)の方法は、基材表面に非イオン性親水性高分子の散漫層がある場合や、基材が多孔質構造を有するときに好適に用いられる。具体的な方法としては、含窒素基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、炭化水素基などの官能基を有する物質溶液を基材に浸漬もしくは湿潤させた後、圧力をかけた気体や該物質が含まれていない溶液を基材に対して押しつける。このことで、該物質を非イオン性親水性高分子散漫層もしくは、基材多孔質構造の内部に移動させることができる。ここで、該物質が含まれていない溶液とは、該物質の濃度が0.0001重量%未満、好ましくは0.00001重量%未満の溶液をいう。例えば、基材がポリスルホンとポリビニルピロリドンからなる分離膜の場合、分離膜を該物質溶液に浸漬させた後、水で濾過をかけることで、表面から200nmよりも深い場所に、該物質の濃度が高い領域をつくることができる。
含窒素基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、炭化水素基などの官能基を有する物質もしくは非イオン性の親水性官能基を有する物質は吸着によって基材に導入されていても良いが、化学結合されているほうが、溶出の懸念が少なく好ましい。物質の種類や基材によっては、吸着させた後、加熱や、放射線照射によって両者に化学結合が形成されるものがあり、このような場合は簡便なため、好ましい方法である。
放射線としてはα線、β線、γ線、X線、紫外線、電子線などが用いられる。また、人工腎臓などの医療用具は滅菌することが必要であり、近年は残留毒性の少なさや簡便さの点から、放射線滅菌法が多用されており、特に、γ線や電子線が好適に用いられている。例えば、血液浄化用モジュールをγ線で滅菌するには15kGy以上の線量照射が好ましいとされている。また、放射線照射によってラジカルが発生し、含窒素基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、炭化水素基などの官能基を有する物質と基材および非イオン性の親水性官能基を有する物質と基材、もしくは含窒素基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、炭化水素基などの官能基を有する物質と非イオン性の親水性官能基を有する物質の相互で化学結合が形成される。したがって、吸着で導入された物質の場合、該物質の溶出量が低下するので好ましい方法である。つまり、15kGy以上の放射線照射は、吸着で導入された物質の化学結合による固定化と滅菌処理を同時に行えるので好ましい処理である。ただし、このときに、含窒素基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、炭化水素基などの官能基や非イオン性の親水性官能基の変性に注意することが好ましい。放射線照射を行う際に、変性、失活を防ぐために、抗酸化剤を同時に添加していても良い。ここでいう抗酸化剤とは、他の分子に電子を与えやすい性質を持つ分子のことをいい、ビタミンCなどの水溶性ビタミン類、ポリフェノール類、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、グルコース、ガラクトース、マンノース、トレハロースなどの糖類、ソジウムハイドロサルファイト、ピロ亜硫酸ナトリウム、二チオン酸ナトリウムなどの無機塩類などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの抗酸化剤は単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。本発明の方法を医療用具に用いる際は、その安全性を考慮する必要があるため、抗酸化剤は毒性の低いものが好適に用いられる。抗酸化剤を含有する水溶液の濃度については、含有する抗酸化剤の種類、放射線の照射線量などにより異なるため、適宜、最適な濃度で使用すればよい。
本発明の改質基材は、医療用基材として好ましく用いられる。医療用基材は、人工血管、カテーテル、血液バッグ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、手術用補助器具、生体成分分離用モジュール、血液浄化用モジュールなどにおいて用いられるものを含む。
本発明の改質基材は、生体成分分離膜に好ましく用いられる。生体成分分離膜とは、濾過もしくは透析により生体物質を分離し、一部を回収する膜のことをいう。例えば、含窒素基の上部に非イオン性の親水性官能基が多く存在する改質分離膜を用いれば、生体成分の非特異的な吸着や血液成分の活性化を抑制しつつ、酸性タンパク質を効率的に分離できる。
血液浄化用モジュールとは、血液を体外に循環させる際に、吸着や濾過、拡散によって血中の老廃物や有害物質を取り除く機能を有したモジュールのことをいい、人工腎臓や外毒素吸着カラムなどがある。
血液浄化用モジュールに内蔵される分離膜の形態は特に限定されるものではなく、平膜、中空糸膜などの形態で用いられる。しかし、処理効率すなわち血液と接触する表面積の確保などを考慮すると中空糸膜型であることが好ましい。
医療用基材が分離膜であることが好ましい。分離膜となる素材は、特に限定しないが、医療用に用いられている素材が好ましく、例えば、ポリ塩化ビニル、セルロース系ポリマー、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンやポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系ポリマー、ポリウレタンなどが挙げられる。この中でも特にポリスルホンは成形が容易で、膜にしたときの物質透過性能に優れているため、好適に用いられる。
本発明で用いられるポリスルホン系ポリマーは、主鎖に芳香環、スルフォニル基およびエーテル基をもつもので、例えば、次式(1)、(2)の化学式で示されるポリスルホンが好適に使用されるが、本発明ではこれらに限定されない。式中のnは、例えば50〜80の如き整数である。
Figure 0004802537
ポリスルホンの具体例としては、ユーデルポリスルホンP−1700、P−3500(ソルベイ社製)、ウルトラソンS3010、S6010(BASF社製)、ビクトレックス(住友化学)、レーデルA(ソルベイ社製)、ウルトラソンE(BASF社製)等のポリスルホンが挙げられる。又、本発明で用いられるポリスルホンは上記式(1)及び/又は(2)で表される繰り返し単位のみからなるポリマーが好適ではあるが、本発明の効果を妨げない範囲で他のモノマーと共重合していても良い。特に限定するものではないが、他の共重合モノマーは10重量%以下であることが好ましい。
本発明にかかる血液浄化用モジュールの製造方法としては、その用途により、種々の方法があるが、大まかな工程としては、血液浄化用の分離膜の製造工程と、その分離膜をモジュールに組み込むという工程にわけることができる。本発明における分離膜の処理方法としては、分離膜をモジュールに組み込む工程の前に用いてもよいし、分離膜をモジュールに組み込んだ後に用いてもよい。モジュール化の後に放射線照射するのであれば、滅菌も同時に行うことができるので好ましい。
血液浄化用モジュールの製造方法としては、その用途により、種々の方法があるが、大まかな工程としては、血液浄化用の分離膜の製造工程と、その分離膜をモジュールに組み込むという工程にわけることができる。
人工腎臓に用いられる中空糸膜モジュールの製造方法についての一例を示す。人工腎臓に内蔵される中空糸膜の製造方法としては、つぎのような方法がある。すなわち、ポリスルホンおよびポリビニルピロリドンを良溶媒または良溶媒を含む混合溶媒に溶解させたものを原液とする。ポリマー濃度は、10〜30重量%が好ましく、15〜25重量%がより好ましい。ポリスルホンおよびポリビニルピロリドンの重量比率は、20:1〜1:5が好ましく、5:1〜1:1がより好ましい。良溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジオキサンなどが好ましい。該原液を二重環状口金の外側の管から吐出し、乾式部を走行させた後凝固浴へ導く。二重環状口金の内側の管からは、中空部を形成するための注入液もしくは気体を吐出する。この際、乾式部の湿度が影響を与えるために、乾式部走行中に膜外表面からの水分補給によって、外表面近傍での相分離挙動を速め、孔径拡大し、結果として透析の際の透過/拡散抵抗を減らすことも可能である。ただし、相対湿度が高すぎると外表面での原液凝固が支配的になり、かえって孔径が小さくなり、結果として透析の際の透過/拡散抵抗を増大する傾向がある。そのため、相対湿度としては60〜90%が好適で
ある。また、注入液組成としては、プロセス適性から、原液に用いた溶媒を基本とする組
成からなるものを用いることが好ましい。注入液濃度としては、例えばジメチルアセトア
ミドを用いたときは、45〜80重量%、さらには60〜75重量%の水溶液が好適に用
いられる。
中空糸膜をモジュールに内蔵する方法としては、特に限定されないが、一例を示すと次の通りである。まず、中空糸膜を必要な長さに切断し、必要本数を束ねた後、筒状ケースに入れる。その後両端に仮のキャップをし、中空糸膜両端部にポッティング剤を入れる。このとき遠心機でモジュールを回転させながらポッティング剤を入れる方法は、ポッティング剤が均一に充填されるために好ましい方法である。ポッティング剤が固化した後、中空糸膜の両端が開口するように両端部を切断し、中空糸膜モジュールを得る。
上記において含窒素基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、炭化水素基などの官能基を導入するには、該官能基を有する物質を原液や注入液あるいは凝固浴に添加することで、達成することができる。また、中空糸膜に成型した後、中空糸膜を該物質溶液に浸漬または湿潤させて、該物質を吸着させて導入することができる。また、モジュール化を行った後に、モジュール内を該物質溶液で充填、もしくは湿潤させて、中空糸膜に該物質を吸着させて導入することもできる。
また、中空糸膜の細孔径よりも大きい物質の場合、中空糸膜を通して濾過しながら充填した場合、膜の表面に濃縮されるため、表面密度を高めたい場合は効果的な手法である。さらに、濾過充填した物質は、膜表面に強く押しつけられて、遊離しにくくなるので、好適に用いられる方法である。用いる物質の分子量としては、好ましくは5000以上、さらに好ましくは5万以上が用いられる。これらの物質は、含窒素基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、炭化水素基などの官能基を有する物質でも、非イオン性の親水性官能基を有する物質のどちらでもよい。
一方、中空糸膜の細孔径よりも小さい物質の場合は、膜細孔内部まで物質を接触させることが可能である。用いる物質の分子量としては、好ましくは5000以下、さらに好ましくは1000以下が用いられる。例えば、人工腎臓用中空糸膜では、β−ミクログロブリンは膜細孔内部に入り込むことができる。したがって、β−ミクログロブリンを吸着しようとすると、膜細孔内部を利用したほうが、効率的である。一方で、血小板は膜細孔内部には入り込めない。このため、β−ミクログロブリンを効率的に吸着し、血小板の付着を抑制して、生体適合性を向上させるためには、膜の細孔内部に炭化水素基を有する物質などβ−ミクログロブリンと相互作用する分子量5000以下の物質を濾過によって導入し、膜表面には非イオン性の親水性官能基を導入すればよい。
上記のようにして得られた中空糸膜モジュールを用いた人工腎臓の基本構造の一例を図1に示す。円筒状のプラスチックケース7に中空糸膜5の束が挿入されており、中空糸の両端部を樹脂10で封止されている。ケース7には透析液の導入口8および導出口9が設けられており、中空糸膜5の外部には透析液、生食、濾過水等が流れるようになっている。ケース7の端部にはそれぞれ入口側ポート部1および出口側ポート部2が設けられている。血液6は入口側ポート部1に設けた血液導入口3より導入され、漏斗状のポート部1によって、中空糸膜5の内部に導かれる。中空糸膜5によってろ過された血液6は、出口側ポート部2によって集合させられ、血液導出口4より排出される。血液導入口3および血液導出口4には、血液回路11が接続される。
以下に、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
1.中空糸膜モジュールの作成
(1)ポリスルホン中空糸膜
ポリスルホン(ソルベイ社製ユーデル(登録商標)P−3500)18重量部をN,N’−ジメチルアセトアミド81重量部および水1重量部の混合溶媒に加え、90℃で10時間加熱して溶解し、製膜原液を得た。この製膜原液を外径0.3mm、内径0.2mmのオリフィス型二重円筒型口金の外側の管より吐出した。芯液としてN,N’−ジメチルアセトアミド60重量部および水40重量部からなる溶液を内側の管より吐出した。吐出された製膜原液は、乾式長350mmを通過した後、水100%の凝固浴に導かれ、中空糸が得られた。
得られた中空糸膜を10000本、図1に示すような、透析液入口および透析液出口を有する円筒状のプラスチックケースに挿入し、両端部を樹脂で封止して、中空糸の内側および外側に水を充填し、内表面積1.6m2のウェットタイプの人工腎臓用中空糸膜モジュール1を作成した。
(2)ポリスルホン/ポリビニルピロリドン混合中空糸膜
ポリスルホン(ソルベイ社製ユーデルポリスルホン(登録商標)P−3500)18重量部およびポリビニルピロリドン(BASF社製K30)9重量部をN,N’−ジメチルアセトアミド72重量部および水1重量部の混合溶媒に加え、90℃で14時間加熱して溶解し、製膜原液を得た。この製膜原液を外径0.3mm、内径0.2mmのオリフィス型二重円筒型口金の外側の管より吐出した。芯液としてN,N’−ジメチルアセトアミド58重量部および水42重量部からなる溶液を内側の管より吐出した。吐出された製膜原液は、乾式長350mmを通過した後、水100%の凝固浴に導かれ、中空糸が得られた。
得られた中空糸膜10000本を中空糸膜モジュール1と同様にして、図1に示すような、中空糸内表面積1.6m2のウェットタイプの人工腎臓用中空糸膜モジュール2を作成した。
2.含窒素基の導入方法
(1)ポリスルホン中空糸膜
含窒素基を有する物質としてポリエチレンイミン(BASF社製、重量平均分子量75万)0.01重量%水溶液を前記の中空糸膜モジュール1の血液導出口4から入れ、透析液の導出口9から出して、中空糸膜に導入した。通液量は1Lとした。またこのとき、血液導入口3および透析液の導入口8には栓をした。その後、非イオン性の親水性官能基を有する物質としてポリエチレングリコール(和光純薬社製、重量平均分子量20000)0.01重量%水溶液を、ポリエチレンイミン水溶液と同様に1L通液し、中空糸膜に導入した。この後、25kGyのγ線を照射した。
(2)ポリスルホン/ポリビニルピロリドン混合中空糸膜
含窒素基を有する物質としてポリエチレンイミン(BASF社製、重量平均分子量75万)0.01重量%水溶液を前記の中空糸膜モジュール2の血液導出口4から入れ、透析液の導出口9から出して、中空糸膜に導入した。通液量は1Lとした。またこのとき、血液導入口3および透析液の導入口8には栓をした。その後、ポリエチレンイミンを膜表面ポリビニルピロリドン散漫層の内部に押し込む目的で、純水をポリエチレンイミン水溶液と同様に5L通液し中空糸膜に導入した。この後、25kGyのγ線を照射した。
3.測定方法および試験方法
(1)ポリスルホン中空糸膜のポリエチレンイミン濃度
非イオン性の親水性官能基を有する物質がポリエチレングリコール、含窒素基を有する物質がポリエチレンイミン、基材である中空糸膜がポリスルホンであるため、窒素量の分析により、アミノ基を定量した。
上記2(1)で得られた中空糸膜モジュールの血液側を1L以上の超純水で洗浄した。その後、中空糸をモジュールから切り出し、中空糸膜を凍結させた後、0.5Torr以下で24時間以上乾燥させた。
該中空糸膜をエポキシ樹脂で包埋してミクロトームにて中空糸長手方向の厚み70nmにスライスした。このサンプルについて、分析電子顕微鏡(日本電子社製、JEM2100F)を用いてエネルギー分散型X線スペクトロスコピー(EDS)にて窒素の分布を測定した。観察倍率は4万倍で行った。その後、点分析を行い、窒素量を定量した。
(2)ポリスルホン/ポリビニルピロリドン混合中空糸膜のアミノ基濃度
含窒素基を有する物質がポリエチレンイミンで窒素原子を有し、中空糸膜にはポリビニルピロリドンが窒素原子をもつため、窒素分析だけでは、両者の区別がつかない。このような場合、アミノ基を修飾した後、分析を行えばよい。ポリエチレンイミンは2価の銅イオンを強くキレートすることが知られているので、中空糸膜に銅イオンをキレートさせた後、分析電子顕微鏡で銅の分布を調べることができた。
上記3(1)と同様に中空糸膜モジュールを洗浄した後、中空糸膜の血液側および透析液側について、それぞれ0.1mol/Lの硫酸銅水溶液1L通液した。その後、中空糸膜の血液側および透析液側について、同様に純水でそれぞれ1Lで洗浄した。その後、中空糸を取り出し、凍結乾燥させた後、分析電子顕微鏡分析に供し、銅を定量した。このときの観察倍率は4万倍で行った。
(3)中空糸膜のヒト血小板付着試験方法
18mmφのポリスチレン製の円形板に両面テープを貼り付け、そこに中空糸膜を固定した。貼り付けた中空糸膜を片刃で半円筒状にそぎ切り、中空糸膜の内表面を露出させた。中空糸内表面に汚れや傷、折り目などがあると、その部分に血小板が付着し、正しい評価ができないことがあるので注意を要する。筒状に切ったFalcon(登録商標)チューブ(18mmφ、No.2051)に該円形板を、中空糸膜を貼り付けた面が、円筒内部にくるように取り付け、パラフィルムで隙間を埋めた。この円筒管内を生理食塩水で洗浄後、生理食塩水で満たした。人間の静脈血を採血後、直ちにヘパリンを50U/mlになるように添加した。前記円筒管内の生理食塩水を廃棄後、前記血液を、採血後10分以内に、円筒管内に1.0ml入れて37℃にて1時間振盪させた。その後、中空糸膜を10mlの生理食塩水で洗浄し、2.5%グルタルアルデヒド生理食塩水で血液成分の固定を行い、20mlの蒸留水にて洗浄した。洗浄した中空糸膜を常温0.5Torrにて10時間減圧乾燥した。このフィルムを走査型電子顕微鏡の試料台に両面テープで貼り付けた。その後、スパッタリングにより、Pt−Pdの薄膜を中空糸膜表面に形成させて、試料とした。この中空糸膜の内表面をフィールドエミッション型走査型電子顕微鏡(日立社製S800)にて、倍率1500倍で試料の内表面を観察し、1視野中(4.3×103μm2)の付着血小板数を数えた。中空糸長手方向における中央付近で、異なる10視野での付着血小板数の平均値を血小板付着数(個/4.3×103μm2)とした。中空糸の長手方向における端の部分は、血液溜まりができやすいためである。
なお、血小板付着試験においては、試験が適切に行われているかどうかを確認するために、ポジティブコントロールとネガティブコントロールを実験毎に水準に入れる。ポジティブコントロールとは、血小板付着が多いことがわかっている既知のサンプルである。また、ネガティブコントロールとは、血小板付着が少ないことがわかっている既知のサンプルである。ポジティブコントロールとしては東レ社製人工腎臓“フィルトライザー”BG−1.6Uの中空糸膜、ネガティブコントロールとしては川澄化学社製人工腎臓PS−1.6UWの中空糸膜とする。上記の実験条件で血小板付着数が、ポジティブコントロールとして、40(個/4.3×10μm)以上、かつ、ネガティブコントロールとして、5(個/4.3×10μm)以下であったときに、測定値を採用する。コントロールの血小板付着数が上記範囲からはずれた場合は、血液の鮮度が欠けていたり、血液の過度な活性化が生じていることなどが考えられるので、試験をやり直す。
本実験で血小板付着数が20(個/4.3×10μm)以下であれば、血液適合性が良好であると考えられる。
(4)酸化低密度リポタンパク質(酸化LDL)吸着除去試験方法
酸化LDLは、酸化低密度リポタンパク質(LDL)が酸化変性したものである。酸化LDLは、動脈硬化との関係が指摘されており、体内から除去されるべき物質である。
(a)抗酸化LDL抗体の作製
板部ら(H.Itabe et al.,J.Biol.Chem.269:15274、1994)の方法に従って作成した。すなわち、ヒト粥状硬化病巣ホモジェネートをマウスに注射して免疫し、そのマウスの脾臓からハイブリドーマを作製し、硫酸銅処理LDLと反応するものを選別して、抗酸化LDL抗体を得た。得られた抗酸化LDL抗体の抗体クラスは、マウスIgMで、未処理LDL、アセチルLDL、マロンジアルデヒドLDLとは反応しない。一方、該抗酸化LDL抗体は、フォスファチジルコリンのアルデヒド誘導体やヒドロペルオキシドを含めていくつかのフォスファチジルコリン過酸化反応生成物と反応する。該抗酸化LDL抗体を150mMのNaClを含む10mMほう酸緩衝液(pH8.5)に溶解したものを用いた(蛋白質濃度0.60mg/ml)。
(b)酸化LDLの調製
市販のLDL(HUMAN,Biomedical Technologies Inc.社製)を脱塩カラム(HiTrap Desalting, Pharmacia製)にかけ、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を除去するとともに、0.2mg/mlとなるようにリン酸緩衝液(以下、PBSと略記)で希釈した。その後、Falcon(登録商標)チューブ(18mmφ、No.2051)に2mlずつ分注した。37℃で3分間保温した。0.5mM硫酸銅水溶液を2wt%添加し、37℃で5時間反応させた。このとき、0.5mM硫酸銅水溶液は用事調製した。また、37℃で5時間反応させている間は、チューブに蓋をせず、空気と触れるようにしておき、1時間おきに2,3度ピペッティングを行った。得られた溶液に、25mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を1wt%、10wt%アジ化ナトリウムを0.02wt%となるように添加したものを酸化LDL標品とした。この酸化LDLの総タンパク質量は0.171mg/ml、マロンジアルデヒド量は86.3nM/mgLDLであった。
(c)酸化LDL濃度の測定
前記抗酸化LDL抗体をPBSで5μg/mlに希釈し、96穴のプレートに100μl/ウェルずつ分注した。室温で2時間震盪した後、4℃にて一晩以上放置し、抗体を壁に吸着させた。
ウェル中の抗体溶液を捨て、1%Bovine Serum Albmin(BSA、フラクションV、生化学工業)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)を200μl/ウェルずつ分注した。室温で2時間震盪して壁をブロッキングした後、ウェル中のBSA溶液を捨て、酸化LDLを含んだ血漿および検量線作成用のスタンダードを100μl/ウェルずつ分注した。その後、室温で30分震盪した後、4℃で一晩放置した。
室温に戻し、ウェル中の溶液を捨て、0.05%トゥイーン(登録商標)−20を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)でウェルを3回洗浄した。洗浄したウェルにPBSで2000倍に希釈したヒツジ抗アポB抗体100μl/ウェルずつ分注した。室温で2時間震盪した後、ウェル中の抗アポB抗体を捨て、0.05%トゥイーン−20を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)でウェルを3回洗浄した。洗浄したウェルに2%ブロックエース(大日本製薬社製)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で2000倍に希釈したアルカリ性フォスファターゼ標識ロバ抗ヒツジIgG抗体を100μl/ウェルずつ分注し、室温で2時間震盪した。その後、ウェル中の標識抗体を捨て、0.05%トゥイーン−20を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)でウェルを3回洗浄し、さらにトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で2回洗浄した。続いて、p−ニトロフェニルリン酸の1mg/ml溶液(0.0005M MgCl2、1Mジエタノールアミン緩衝液、pH9.8)を100μl/ウェルずつ分注した。適当な時間室温で反応させた後、波長415nmにおける吸光度をプレートリーダーで測定した。スタンダードの結果から検量線を引き、酸化LDL濃度を決定した。
(d)酸化LDL吸着除去率の測定
健常者血漿(日本人、30歳、LDL(βリポ蛋白)濃度275mg/dl,HDL−コレステロール濃度70mg/dl)に、上記酸化LDLを濃度2μg/mlとなるように添加した。
中空糸膜を70本束ね、直径約7mm、長さは12cmのガラス管モジュールケースに挿入した。中空糸膜の両末端を、中空糸膜中空部を閉塞しないようにエポキシ系ポッティング剤で固定し、ミニモジュール(内表面積53cm2)を作成した。ミニモジュールを超純水で37℃で30分間洗浄した。その後、ミニモジュールの両端に内径7mm(外径10mm)、長さ2cmのシリコーンチューブ(製品名ARAM(登録商標))と異形コネクターを介して、内径0.8mm、外径1mm、長さ37cmのシリコーンチューブ(製品名ARAM(登録商標))をつなぎ、上記血漿1.5mlを窒素雰囲気下で0.5ml/分の流量で25℃、4時間中空糸膜内に灌流した。中空糸膜表面積1m2あたりの血漿量は2.8×102ml/m2であった。さらにミニモジュールをつけずにシリコーンチューブのみで灌流操作も行った。灌流前後の血漿中の酸化LDL濃度を定量することにより、それぞれの吸着除去率を下記式により算出した。
酸化LDL吸着除去率(%)=ミニモジュールでの酸化LDL吸着除去率(%)−シリコーンチューブのみでの酸化LDL吸着除去率(%)
酸化LDL吸着除去率(%)=100×(灌流前の濃度−灌流後の濃度)/灌流前の濃度
(実施例1)
前記2(1)で得られた中空糸膜モジュールから、中空糸を切り出し、分析電子顕微鏡分析に供した。その結果、表面から200〜400nm深さの窒素の濃度は、0〜200nm以内の窒素の2倍であり、ポリエチレンイミンの上部にポリエチレングリコールが存在する構造を確認できた。さらに、ヒト血小板付着試験および酸化LDL吸着除去試験方法を行った。その結果、表1に示された通り、ポリエチレンイミン由来のアミノ基による酸化LDLの吸着と、ポリエチレングリコールによる血小板付着の抑制が両立できた。
(実施例2)
前記2(2)で得られた中空糸膜モジュールから、中空糸を切り出し、分析電子顕微鏡分析に供した。その結果、表面から400〜600nm深さの銅イオン(アミノ基を表す)の濃度は、0〜200nm以内の銅イオン(アミノ基を表す)の3倍であり、ポリエチレンイミンがポリビニルピロリドン散漫層内部に潜り込んだ構造をしていることが確認できた。さらに、ヒト血小板付着試験および酸化LDL吸着除去試験方法を行った。その結果、表1に示された通り、ポリエチレンイミン由来のアミノ基による酸化LDLの吸着と、ポリビニルピロリドンによる血小板付着の抑制が両立できた。
(比較例1)
前記2(1)で、ポリエチレンイミンとポリエチレングリコールの導入の順序を逆にした以外は、同様の方法で中空糸膜モジュールを作成した。中空糸膜モジュールから中空糸を切り出し、分析電子顕微鏡分析に供した。その結果、0〜200nm深さの窒素の濃度が、それよりも深い領域の窒素の濃度に比べて、もっとも高かった。さらに、ヒト血小板付着試験および酸化LDL吸着除去試験方法を行った。その結果、ポリエチレンイミン由来のアミノ基が存在するため酸化LDLは吸着したが、該アミノ基が表面から深さ0nm〜200nmに多くあるため血小板も付着した。
(比較例2)
前記2(2)で、純水で通液しなかった以外は、同様の方法で中空糸膜モジュールを作成した。中空糸膜モジュールから中空糸を切り出し、分析電子顕微鏡分析に供した。その結果、0〜200nm深さの銅イオン(アミノ基を表す)の濃度が、それよりも深い領域の銅イオン(アミノ基を表す)の濃度に比べて、もっとも高かった。さらに、ヒト血小板付着試験および酸化LDL吸着除去試験方法を行った。その結果、ポリエチレンイミン由来のアミノ基が存在するため酸化LDLは吸着したが、該アミノ基が表面から深さ0nm〜200nmに多くあるため血小板も付着した。
(比較例3)
前記2(1)で、ポリエチレンイミン水溶液およびポリエチレングリコールの代わりに、純水を用いた以外は、同様の方法で中空糸膜モジュールを作成した。中空糸膜モジュールから中空糸を切り出し、分析電子顕微鏡分析に供した。その結果、どの深さ領域でも、ごく微量の銅イオンが観測された。これは、膜に物理的にトラップされた分であると思われる。さらに、ヒト血小板付着試験および酸化LDL吸着除去試験方法を行った。その結果、アミノ基がないため酸化LDLは吸着せず、非イオン性の親水性官能基がないため血小板も付着した。
Figure 0004802537
本発明に用いられる人工腎臓の一態様を示す。

Claims (9)

  1. 表面から深さ方向に5μmの領域の中に、アミノ基、ピロール基、ピラゾール基、イミダゾール基、インドール基、ピリジン基、ピリダジン基、キノリン基、ピペリジン基、ピロリジン基、チアゾール基およびプリン基から選ばれる含窒素基、および炭化水素基のいずれかの官能基が存在し、表面から深さ方向に0〜200nm厚みの領域における前記官能基の濃度が50mol%以下であり、前記濃度よりも、表面から深さ方向に200nm〜5μmの領域の中に、前記官能基の濃度が1.5倍以上高い200nm厚みの領域が存在しており、かつ表面から深さ方向に0〜200nm厚みの領域において、水酸基、エーテル基、アミド基およびエステル基のいずれかが存在していることを特徴とする改質基材。
  2. 前記水酸基がポリビニルアルコール由来、エーテル基がポリアルキレングリコール由来、アミド基がポリビニルピロリドン由来、エステル基がデキストラン由来もしくはプルラン由来であることを特徴とする請求項1に記載の改質基材。
  3. 放射線照射されていることを特徴とする請求項1または2に記載の改質基材。
  4. 前記改質基材が医療用基材であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の改質基材。
  5. 前記医療用基材が血液浄化用モジュールに内蔵されていることを特徴とする請求項に記載の改質基材。
  6. 前記医療用基材が人工腎臓に内蔵されていることを特徴とする請求項またはに記載の改質基材。
  7. 前記医療用基材が分離膜であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の改質基材。
  8. 前記医療用基材が中空糸膜であることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の改質基材。
  9. 前記分離膜がポリスルホン系ポリマーであることを特徴とする請求項またはに記載の改質基材。
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