JP4433821B2 - 改質基材 - Google Patents

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Description

本発明は、血液適合性が良好でかつ酸性タンパク質を吸着除去する改質基材に関する。具体的には、人工血管、カテーテル、血液バッグ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工腎臓、人工肺、手術用補助器具などの医療用具、塩基性タンパク質分離基材に好適に用いられる。特に、血液適合性が要求される基材、例えば、血液浄化用モジュールの分離膜には好適に用いられる。
従来より、体外血液循環の分野、とくに血液透析や血漿分離等には中空糸膜を用いた中空糸膜型血液処理器が広く使用され、近年、特に透析膜、血液成分分離膜等の分野においては、高分子製中空糸膜が広く利用されている。しかしながら、長期的に血液透析を行っている患者の中には、血中抗酸化作用の低下などにより、タンパク質や脂質の酸化変性が亢進していることが確認されている。タンパク質が酸化されると、酸性度が増加することが多い。特に酸化変性をうけた低密度リポタンパク質(酸化LDL)は動脈硬化の形成に重要な役割を果たしていると考えられている。酸化LDLは様々な生物作用をもっており、内皮細胞から一酸化窒素(NO)産生を抑制するなどの作用以外にも、単球を内皮下に遊送、集積させ、そのものをマクロファージとさせ、酸化LDLそれ自身を取り込み泡沫細胞とさせ、動脈壁のプラーク形成を促進するほか、内皮細胞や平滑筋細胞傷害を促進するなど、動脈硬化の発症、進展に重要な役割を果たしている。 従って、血中から酸化LDLを除去することが望ましい。
これまで市販されているセルロース膜、ポリメチルメタクリレート膜、エチレンービニルアルコール膜、ポリスルホン/ポリビニルピロリドンブレンド膜などに代表される透析膜では酸化LDLを除去することはできない。むしろ、透析後に透析膜による刺激のため、血中の酸化LDLの値が増加する傾向にある(腎と透析別冊、38:125(1995))。
これらの問題を解決するため、生体内抗酸化作用、生体膜安定化作用、血小板凝集抑制作用などの種々の生理作用を有するビタミンEの被膜を透析膜の表面に被覆する膜型血液浄化器が提案されている(特公昭62−41738号公報)が、いったん生成した患者の血中の酸化LDLなどの酸化変性物質を除去することはできない。
また、血中の酸化LDLを選択的に吸着除去するために、カチオン性ポリマーが含有された中空糸膜が提案されている(特開2002−28461号公報)が、基材のカチオン密度が高くなると、血小板粘着を引き起こすだけでなく、放出反応も大きいことが知られている。したがって、酸化LDLの吸着除去率を高めるためには、カチオン密度を高めることが有効であるが、その分、血液の活性を亢進するという二律背反の問題があった。
特公昭62−41738号公報 特開2002−28461号公報
本発明の目的は、かかる従来技術の欠点を改良し、血液適合性を達成しつつ、酸性タンパク質、特に酸化LDLを吸着する改質基材を提供することにある。
本発明は上記課題を達成するため、以下の構成を有する。
(1) ヒト血小板付着量が10個/4.3×103μm2以下であり、かつ酸性タンパク質の吸着除去率が20%以上であることを特徴とする改質基材。
(2) 前記記載の酸性タンパク質が酸化低密度リポタンパク質であることを特徴とする(1)に記載の改質基材。
(3) 前記基材中にカチオン性基含有物質が含有されていることを特徴とする(1)又は(2)に記載の改質基材。
(4)前記カチオン性基含有物質がカチオン性高分子であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の改質基材。
(5)前記カチオン性高分子の溶出濃度が1000ppm以下であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の改質基材。
(6)前記基材中に非イオン性親水性高分子が含有されていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の改質基材。
(7)(1)に記載の基材において放射線照射されていることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の改質基材。
(8)前記基材が医療用基材であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の改質基材。
(9)前記医療用基材が血液浄化用モジュールに内蔵されていることを特徴とする(8)に記載の改質基材。
(10)前記医療用基材が人工腎臓用モジュールに内蔵されていることを特徴とする(9)に記載の改質基材。
(11)前記医療用基材が分離膜であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載の改質基材。
(12)前記医療用基材が中空糸膜であることを特徴とする(1)〜(11)のいずれかに記載の改質基材。
(13)前記分離膜がポリスルホン系ポリマーであることを特徴とする(11)または12に記載の改質基材。
血液適合性が良好でかつ酸性タンパク質を吸着除去する改質基材を提供することができる。
本発明は、血小板付着を抑制した血液適合性の高い基材でかつ、酸性タンパク質を吸着する改質基材に関するものである。
基材中にカチオン性基含有物質が含まれていれば、血小板粘着を引き起こすだけでなく、放出反応も惹起することが知られている。しかし、基材表面に存在するカチオン性物質を覆うような形で非イオン性の親水性高分子が存在すれば、血小板や血球などのよう大きなものは、基材の最表面の非イオン性親水性高分子層によってはじかれて、その下層のカチオン性基含有物質に近づけない。このため血液の活性化などの好ましくない現象を抑制することができる。一方で、タンパク質や酸化低密度リポタンパク質(酸化LDL)などのリポタンパク質といった比較的小さい物質は、非イオン性親水性高分子層を通り抜けて、カチオン性基含有物質と相互作用できるものと考えられる。


本発明でいうところの改質基材とは血小板が付着しにくく、酸性タンパク質を吸着する材料のことを指し、高分子材料が好ましい。基材とは上記のような特性を付与させる前の材料のことをいう。また、高分子材料の例としては、ポリスルホンやポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。基材の形状としては、繊維、フィルム、樹脂、分離膜などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ヒト血小板付着量は、改質基材と血液を1時間接触させた場合に、改質基材の表面に付着した血小板の数を、改質基材の表面積4.3×103μm2あたりの数として求めた値である。詳細な測定方法は後述する。ヒト血小板付着量が10個/4.3×103μm2を越えると、血液適合性が不十分になる。
また、酸性タンパク質吸着除去率は、改質基材表面積1m2あたりの血漿量が280ml/m2である条件で灌流操作を施したときに、該血漿中に含まれている初期濃度2μg/mlの酸性タンパク質の吸着除去率を求めたものである。詳細な測定方法は後述する。吸着除去率が20%以上でないと、実際に医療用途に用いた場合に十分な吸着効果を期待できない。また、ここでいう、表面とは改質基材が血漿と接触する部分である。例えば、人工腎臓用の中空糸膜の場合は、内表面のことを指し、膜内部の微細構造部分の表面を含めるものではない。
本発明でいう、酸性タンパク質とは、等電点が生理的pHよりも酸性側にあるタンパク質およびリポタンパク質のことをいう。タンパク質が酸化されると、酸性度が増加することが多い。酸化LDLは、酸化変性を受けたLDLの総称である。したがって、酸化の度合いや酸化の部位はタンパク質や脂質など、種々雑多なものであるが、一般的に実験で使用されているものとしては、銅酸化LDL、minimally−modified−LDL、マロンジアルデヒド化LDL、アセチル化LDL、4−ヒドロキシ−2−ノネナール化LDL、アクロレイン付加LDLなどがある。本発明においては、酸性タンパク質が酸化LDLである場合に吸着除去性能が特に好適に発揮される。
また、本発明においては、基材中にカチオン性基含有物質が含有されていれば、静電相互作用によって、酸化LDLなどの酸性タンパク質を選択的に基材に吸着させることができるので好ましい。
カチオン性基とは、窒素を含有し、pH4.5水溶液で陽電荷を帯びた官能基のことをいい、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アミノ基、ピロール基、ピラゾール基、イミダゾール基、インドール基、ピリジン基、ピリダジン基、キノリン基、ピペリジンン基、ピロリジン基、チアゾール基、プリン基、アミノ硫酸基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、改質基材中に2種類以上のカチオン性基が存在していても良い。また、カチオン性基をもつ高分子は、酸性タンパク質の吸着除去効果が高いため、好ましく用いられる。これは、高分子であれば、酸性タンパク質と最適な立体配置をとる余地が大きいため、相互作用しやすいものと考えられる。カチオン性高分子とはpH4.5において、電荷が1meq/g以上の高分子のことをいい、特に限定されるものではないが、ポリアルキレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ジエチルアミノエチルデキストラン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ビニルイミダゾリウムメトクロライド重合物またはその誘導体などが挙げられる。また、カチオン性高分子の重量平均分子量としては、特に限定されるものではないが、1000以上、好ましくは5000以上、さらに好ましくは1万以上のものが好適に用いられる。ビニルイミダゾリウムメトクロライド重合物としては、ビニルイミダゾリウムメトクロライドとビニルピロリドンの共重合物がBASF社から市販されているので好適に用いられる。また、これらの2種類以上のカチオン性高分子を併用して用いても良い。
また、カチオン性高分子の溶出濃度が1000ppm以下であることが好ましく、好ましくは500ppm、さらには100ppm以下である。溶出濃度が1000ppmを越えると、血液と接触した際に、カチオン性高分子が血中に溶出してくる可能性が考えられる。カチオン性高分子の溶出濃度とは、例えば、改質基材が血液浄化用モジュールに組み込まれている場合は、その中を満たしている充填水中のカチオン性高分子の濃度である。人工腎臓用モジュールのように、透析液側と血液側といったようにモジュール内に区画が存在し、その区画ごとに溶出濃度が異なる場合は、血小板、酸性タンパク質と接触する区画内の溶出濃度を測ればよい。さらに、モジュール内に水が充填されていない場合、すなわち、改質基材が湿潤状態もしくは乾燥状態の場合は、モジュール内を水で満たして、室温で1週間放置して溶出してきたカチオン性高分子濃度を測定すればよい。または、モジュールに組み込まれていない改質基材で、湿潤状態、乾燥状態の場合は、改質基材の乾燥重量に対して10倍量の純水に1週間、室温で浸漬させて溶出したカチオン性高分子濃度を測定すればよい。ここでいう、乾燥重量とは分改質基材を乾燥させて、乾燥中の1時間での重量変化率が2%以内になった状態の重量をいう。
基材中にカチオン性基を導入する方法としては、1)カチオン性基含有物質を基材の構成成分として導入する方法、2)基材成型後にカチオン性基含有物質もしくはカチオン性基そのものを基材に化学結合させる方法、3)基材成型後にカチオン性基含有物質を基材に吸着させる方法、などが挙げられる。
基材の構成成分として導入する方法とは、基材が成型される前に基材に導入される物質のことを指す。例えば、人工腎臓用のポリスルホンとポリビニルピロリドンのブレンド中空糸膜の場合、構成成分であるポリスルホンとポリビニルピロリドンがカチオン性基含有物質に該当する。該中空糸膜の製造方法の詳細は後述するが、カチオン性基含有物質を中空糸膜に構成成分として導入するには、製膜原液、注入液、凝固浴のいずれか1つに少なくとも添加しておく必要がある。カチオン性基含有物質を原液に添加する場合においては、ポリスルホン、ポリビニルピロリドン以外に第3成分として添加するか、ポリスルホンやポリビニルピロリドンの代わりに、カチオン性基をもった変性ポリスルホンやポリビニルピロリドンを用いてもよい。
本発明でいうところの化学結合とは、共有結合もしくはイオン結合を指す。基材を成型後、化学結合によってカチオン性基含有物質を導入する具体的な方法としては、カチオン性基をプラズマ照射やイオンクラスタービームなどによって基材に化学結合として導入することが可能である。または基材に化学反応を用いてカチオン性基含有物質を架橋させても良い。このとき、カチオン性基含有物質と基材の間にスペーサーを介しても良い。さらに、基材上にモノマー溶液に浸積、もしくは湿潤させて、高分子重合によってカチオン性高分子を導入してもよい。また、カチオン性基含有物質を基材に吸着させた後、加熱や、放射線照射によってカチオン性基含有物質と基材に化学結合が形成されるものがある。
本発明でいうところの吸着とは、基材の構成成分とカチオン性基含有物質との間に化学結合で相互作用していることをいい、化学吸着、物理吸着のどちらでもよい。また、間接的な相互作用で吸着されていてもよい。例えば、カチオン性基含有物質が基材の構成成分と水分子を介した水素結合によって吸着されていても良い。基材にカチオン性基含有物質を吸着させる具体的な方法としては、基材をカチオン性基含有物質溶液に浸漬もしくは湿潤させればよい。また、本発明でいう湿潤とは、基材を浸漬していた水溶液を除去して乾燥させない状態のことを言う。特に限定されるものではないが、基材の乾燥重量に対して3重量%以上の水分を含んでいることが好ましい。
また、基材中に非イオン性親水性高分子が含有されていることが好ましい。さらには基材表面に存在するカチオン性基含有物質を覆うような形で非イオン性の親水性高分子が存在することが好ましい。改質基材の最表面に非イオン性親水性高分子が存在すれば、血小板や血球などのよう大きなものは、はじかれて、その下層のカチオン性基含有物質に近づけないために、血液の活性化を抑制することができる。
非イオン性親水性高分子とはpH4.5およびpH9.5のいずれにおいても、電荷が1meq/g未満であり、水に可溶な高分子のことをいう。ここで、水に可溶とは、25℃の水に対する溶解度が好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上のことをいう。特に限定されるものではないが、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコールなどやこれらと他のモノマーとの共重合体や、グラフト体などの誘導体等が挙げられる。また、2種類以上の非イオン性親水性高分子を併用して用いても良い。
血小板の付着抑制には非イオン性親水性高分子が改質基材の最表面に存在することが重要である。改質基材の最表面に非イオン性親水性高分子を導入する方法としては、非イオン性親水性高分子を、カチオン性基を導入した基材に接触させればよい。ここでいう接触させるとは、非イオン性親水性高分子が、カチオン性基を導入した基材において、直接的もしくは間接的に相互作用している状態を指す。相互作用としては、化学結合や吸着が挙げられる。間接的に相互作用している例として、化学結合ならば、非イオン性親水性高分子とスペーサーを介してカチオン性基含有物質もしくは基材と化学結合している場合などが挙げられる。吸着ならば、非イオン性親水性高分子が水分子を介してカチオン性基含有物質もしくは基材と水素結合を形成している場合などが挙げられる。
接触させる具体的な例としては、カチオン性基を導入した基材を、非イオン性親水性高分子を含む溶液に浸漬もしくは湿潤すれば、非イオン性親水性高分子が基材に吸着される。また、非イオン性親水性高分子の吸着力が弱いため、該物質の導入量が少なく、カチオン性基を十分に覆うことができない場合や、該物質の溶出が問題になる場合には、該物質を、カチオン性基を導入した基材と化学反応によって固定化すれば良い。
また、カチオン性基を導入した基材を、非イオン性親水性高分子のモノマー溶液に浸積、もしくは湿潤させて、重合反応を行えば、基材上に存在するカチオン性基含有物質を覆って非イオン性親水性高分子を生成することができる。
カチオン性基含有物質もしくは非イオン性親水性高分子を基材に吸着させる場合、基材の形状がフィルムならばそれぞれの水溶液に浸漬させればよい。また、基材の形状が多孔質の中空糸膜ならば、多孔質部分の細孔径より小さい物質を用いれば、多孔質内部にも吸着させることができる。また、多孔質部分の細孔径よりも大きい物質を用いれば中空糸内表面のみ、もしくは外表面のみというように必要に応じた部分を吸着させることができる。例えば、人工腎臓ならば、モジュールケース内に分離膜が内蔵されている。したがって、カチオン性基含有物質もしくは非イオン性親水性高分子水溶液をモジュール内に充填すれば、分離膜に該物質が吸着される。また、分離膜のみをカチオン性基含有物質もしくは非イオン性親水性高分子水溶液に一旦浸漬させて、該物質を吸着させてから、モジュールに組み込んでも良い。
分離膜が中空糸膜である人工腎臓の場合は、血液が接触する部分が中空糸内表面であるから、カチオン性基含有物質および非イオン性親水性高分子は少なくとも中空糸内表面に存在しなければならない。また、重量平均分子量が10万以上のカチオン性高分子もしくは、非イオン性高分子を中空糸内側から外側に濾過をかけながら充填する方法は、膜内表面にのみ効率的に導入できるので好適な方法である。
また、カチオン性基含有物質もしくは非イオン性親水性高分子水溶液と基材を接触させた後、基材に付着した水溶液をブローして湿潤状態にしても良い。
カチオン性基含有物質もしくは非イオン性親水性高分子が吸着により固定化されていても良いが、化学結合によって固定化されているほうが、溶出の懸念が少なく好ましい。吸着によって固定化されているものが、放射線によってラジカルが発生し、簡便に化学結合を形成することができうる。放射線としてはα線、β線、γ線、X線、紫外線、電子線などが用いられる。また、人工腎臓などの医療用具は滅菌することが必要であり、近年は残留毒性の少なさや簡便さの点から、放射線滅菌法が多用されており、特に、γ線や電子線が好適に用いられている。例えば、血液浄化用モジュールをγ線で滅菌するには20kGy以上の線量照射が好ましいとされている。また、放射線照射によってラジカルが発生し、カチオン性基含有物質および非イオン性親水性高分子が基材と、もしくはカチオン性基含有物質と非イオン性親水性高分子の相互で化学結合が形成されるので、これらの物質の溶出量が低下する。したがって、20kGy以上の放射線照射は、カチオン性基含有物質や非イオン性親水性高分子の固定化と滅菌処理を同時に行えるので好ましい処理である。ただし、このときに、カチオン性基含有物質の失活や非イオン性親水性高分子の過度な変性に注意することが好ましい。ここでいう過度な変性とは、非イオン性親水性高分子のもつ血小板などの血液成分の付着抑制能が無くなる程度の変性を指す。放射線照射を行う際に、変性、失活を防ぐために、抗酸化剤を同時に添加していても良い。ここでいう抗酸化剤とは、他の分子に電子を与えやすい性質をもつ分子のことを言うが、基材やカチオン性基含有物質、非イオン性親水性高分子が放射線によって変性することを抑制する性質をもつものである。例えば、ビタミンCなどの水溶性ビタミン類、ポリフェノール類、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、グルコース、ガラクトース、マンノース、トレハロースなどの糖類、ソジウムハイドロサルファイト、ピロ亜硫酸ナトリウム、二チオン酸ナトリウムなどの無機塩類、尿酸、システイン、グルタチオン、酸素などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの抗酸化剤は単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。本発明の方法を医療用具に用いる際は、その安全性を考慮する必要があるため、抗酸化剤は毒性の低いものが好適に用いられる。抗酸化剤を含有する水溶液の濃度については、含有する抗酸化剤の種類、放射線の照射線量などにより異なるため、適宜、最適な濃度で使用すればよい。
本発明の基材は、医療用基材として好適に用いられる。医療用基材としては、人工血管、カテーテル、血液バッグ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、手術用補助器具等が挙げられ、血液浄化用モジュールなどにおいて用いられる分離膜なども含まれる。
本発明の血液浄化用モジュールとは、血液を体外に循環させる際に、吸着や濾過、拡散によって血中の老廃物や有害物質を取り除く機能を有したモジュールのことをいい、人工腎臓や外毒素吸着カラムなどがある。
また、人工腎臓に内蔵される分離膜としては、コイル型、平板型、中空糸型があるが、処理効率などの点から、現在では中空糸型が広く普及している。
血液浄化用モジュールに内蔵される分離膜の形態は特に限定されるものではなく、平膜、中空糸膜などの形態で用いられる。しかし、処理効率すなわち血液と接触する表面積の確保などを考慮すると中空糸膜型であることが好ましい。
本発明の分離膜となる素材は、特に限定しないが、医療用に用いられている素材が好ましく、例えば、ポリ塩化ビニル、セルロース系ポリマー、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンやポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系ポリマー、ポリウレタンなどが挙げられる。この中でも特にポリスルホンは成形が容易で、膜にしたときの物質透過性能に優れているため、好適に用いられる。
本発明で用いられるポリスルホン系ポリマーは、主鎖に芳香環、スルフォニル基およびエーテル基をもつもので、例えば、次式(1)、(2)の化学式で示されるポリスルホンが好適に使用されるが、本発明ではこれらに限定されない。式中のnは、例えば50〜80の如き整数である。
Figure 0004433821
ポリスルホンの具体例としては、ユーデルポリスルホンP−1700、P−3500(ソルベイ社製)、ウルトラソンS3010、S6010(BASF社製)、ビクトレックス(住友化学)、レーデルA(ソルベイ社製)、ウルトラソンE(BASF社製)等のポリスルホンが挙げられる。又、本発明で用いられるポリスルホンは上記式(1)及び/又は(2)で表される繰り返し単位のみからなるポリマーが好適ではあるが、本発明の効果を妨げない範囲で他のモノマーと共重合していても良い。特に限定するものではないが、他の共重合モノマーは10重量%以下であることが好ましい。
本発明にかかる血液浄化用モジュールの製造方法としては、その用途により、種々の方法があるが、大まかな工程としては、血液浄化用の分離膜の製造工程と、その分離膜をモジュールに組み込むという工程にわけることができる。本発明にかかる基材の処理方法を、分離膜をモジュールに組み込む工程の前に用いてもよいし、分離膜をモジュールに組み込んだ後に用いてもよい。モジュール化の後にγ線照射するのであれば、滅菌も同時に行うことができるので好ましい。
血液浄化用モジュールの製造方法としては、その用途により、種々の方法があるが、大まかな工程としては、血液浄化用の分離膜の製造工程と、その分離膜をモジュールに組み込むという工程にわけることができる。
人工腎臓に用いられる中空糸膜モジュールの製造方法についての一例を示す。人工腎臓に内蔵される中空糸膜の製造方法としては、つぎのような方法がある。すなわち、ポリスルホンおよびポリビニルピロリドンを良溶媒または良溶媒を含む混合溶媒に溶解させたものを原液とする。ポリマー濃度は、10〜30重量%が好ましく、15〜25重量%がより好ましい。ポリスルホンおよびポリビニルピロリドンの重量比率は、20:1〜1:5が好ましく、5:1〜1:1がより好ましい。良溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジオキサンなどが好ましい。該原液を二重環状口金の外側の管から吐出し、乾式部を走行させた後凝固浴へ導く。二重環状口金の内側の管からは、中空部を形成するための注入液もしくは気体を吐出する。この際、乾式部の湿度が影響を与えるために、乾式部走行中に膜外表面からの水分補給によって、外表面近傍での相分離挙動を速め、孔径拡大し、結果として透析の際の透過/拡散抵抗を減らすことも可能である。ただし、相対湿度が高すぎると外表面での原液凝固が支配的になり、かえって孔径が小さくなり、結果として透析の際の透過/拡散抵抗を増大する傾向がある。そのため、相対湿度としては60〜90%が好適である。また、注入液組成としては、プロセス適性から、原液に用いた溶媒を基本とする組成からなるものを用いることが好ましい。注入液濃度としては、例えばジメチルアセトアミドを用いたときは、45〜80重量%、さらには60〜75重量%の水溶液が好適に用いられる。
中空糸膜をモジュールに内蔵する方法としては、特に限定されないが、一例を示すと次の通りである。まず、中空糸膜を必要な長さに切断し、必要本数を束ねた後、筒状ケースに入れる。その後両端に仮のキャップをし、中空糸膜両端部にポッティング剤を入れる。このとき遠心機でモジュールを回転させながらポッティング剤を入れる方法は、ポッティング剤が均一に充填されるために好ましい方法である。ポッティング剤が固化した後、中空糸膜の両端が開口するように両端部を切断し、中空糸膜モジュールを得る。
上記においてカチオン性基含有物質を基材に導入するには、原液中のポリビニルピロリドンの代わりにイオン性基もしくは疎水性基もしくは生理活性物質が共有結合した変性ポリビニルピロリドンを用いるか、ポリスルホンの代わりにイオン性基もしくは疎水性基もしくは生理活性物質が共有結合した変性ポリスルホンを用いることによって達成することができる。変性ポリビニルピロリドンの具体例としては次式(3)で表されるようなBASF社から市販されているカチオン性ポリビニルピロリドンが挙げられる。式中のm、nは、例えば10〜1000の如き整数である。
Figure 0004433821
また、原液中のポリスルホンとポリビニルピロリドンに加えて、第3成分としてカチオン性基含有物質を添加しても良い。例えば、上記の変性ポリビニルピロリドンやポリアルキレンイミンなどのカチオン性高分子や生理活性物質が好適に用いられる。さらには注入液や凝固浴にカチオン性基含有物質を添加することで、基材にカチオン性基含有物質を導入することも可能である。また、中空糸膜に成型した後、中空糸膜をカチオン性基含有物質水溶液に浸漬または湿潤させて、該物質を吸着させても良い。また、モジュール化を行った後に、モジュール内をカチオン性基含有物質水溶液で充填、もしくは湿潤させて、中空糸膜に該物質を吸着させても良い。
中空糸膜がモジュールに組み込まれる前に、カチオン性基含有物質が導入されていれば、非イオン性親水性高分子水溶液を中空糸膜に接触させても良いし、モジュール化を行った後に、モジュール内を非イオン性親水性高分子水溶液で充填、もしくは湿潤させても良い。中空糸膜がモジュールに組み込まれた後に、カチオン性基含有物質を導入する場合は、カチオン性基含有物質を導入した後、非イオン性親水性高分子を導入しなくてはならない。
また、中空糸膜の細孔径よりも大きい物質の場合、中空糸膜を通して濾過しながら充填した場合、膜の表面に濃縮されるため、表面密度を高めたい場合は効果的な手法である。さらに、濾過充填した物質は、膜表面に強く押しつけられて、遊離しにくくなるので、好適に用いられる方法である。用いる物質としては、高分子量の機能性材料でも高分子量の非イオン性親水性高分子でもよい。一方、中空糸膜の細孔径よりも小さい物質の場合は、膜細孔内部まで物質を接触させることが可能である。例えば、生体成分の一部をカチオン性基含有物質が吸着して除去する場合で、その目的物質が膜細孔径よりも小さい場合は、カチオン性基含有物質は膜細孔内部まで存在したほうが、効率的に除去できる。また、選択性を出すために、非イオン性親水性高分子も膜細孔内部まで存在させることが好ましい形態である。
上記のようにして得られた中空糸膜モジュールを用いた人工腎臓システムの基本構造の一例を図1に示す。円筒状のプラスチックケース7に中空糸膜5の束が挿入されており、中空糸の両端部を樹脂10で封止されている。ケース7には透析液の導入口8および導出口9が設けられており、中空糸膜5の外部には透析液、生食、濾過水等が流れるようになっている。ケース7の端部にはそれぞれ入口側ポート部1および出口側ポート部2が設けられている。血液6は入口側ポート部1に設けた血液導入口3より導入され、漏斗状のポート部1によって、中空糸膜5の内部に導かれる。中空糸膜5によってろ過された血液6は、出口側ポート部2によって集合させられ、血液導出口4より排出される。血液導入口3および血液導出口4には、血液回路11が接続される。
以下実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
1.中空糸膜モジュールの作製
ポリスルホン(テイジンアモコ社製ユーデル(登録商標)P−3500)18重量部およびポリビニルピロリドン(BASF社製K30)9重量部をN,N’−ジメチルアセトアミド72重量部および水1重量部の混合溶媒に加え、90℃で14時間加熱して溶解し、製膜原液を得た。この製膜原液を外径0.3mm、内径0.2mmのオリフィス型二重円筒型口金の外側の管より吐出した。芯液としてN,N’−ジメチルアセトアミド58重量部および水42重量部からなる溶液を内側の管より吐出した。吐出された製膜原液は、乾式長350mmを通過した後、水100%の凝固浴に導かれ、中空糸が得られた。
得られた中空糸を10000本、図1に示すような、透析液入口および透析液出口を有する円筒状のプラスチックケースに挿入し、両端部を樹脂で封止して、有効膜面積1.6m2の人工腎臓用中空糸膜モジュールを作成した。
2.測定方法
(1)中空糸膜のヒト血小板付着試験方法
18mmφのポリスチレン製の円形板に両面テープを貼り付け、そこに中空糸膜を固定した。貼り付けた中空糸膜を片刃で半円筒状にそぎ切り、中空糸膜の内表面を露出させた。中空糸内表面に汚れや傷、折り目などがあると、その部分に血小板が付着し、正しい評価ができないことがあるので注意を要する。筒状に切ったFalcon(登録商標)チューブ(18mmφ、No.2051)に該円形板を、中空糸膜を貼り付けた面が、円筒内部にくるように取り付け、パラフィルムで隙間を埋めた。この円筒管内を生理食塩水で洗浄後、生理食塩水で満たした。人間の静脈血を採血後、直ちにヘパリンを50U/mlになるように添加した。前記円筒管内の生理食塩水を廃棄後、前記血液を、採血後10分以内に、円筒管内に1.0ml入れて37℃にて1時間振盪させた。その後、中空糸膜を10mlの生理食塩水で洗浄し、2.5%グルタルアルデヒド生理食塩水で血液成分の固定を行い、20mlの蒸留水にて洗浄した。洗浄した中空糸膜を常温0.5Torrにて10時間減圧乾燥した。このフィルムを走査型電子顕微鏡の試料台に両面テープで貼り付けた。その後、スパッタリングにより、Pt−Pdの薄膜を中空糸膜表面に形成させて、試料とした。この中空糸膜の内表面をフィールドエミッション型走査型電子顕微鏡(日立社製S800)にて、倍率1500倍で試料の内表面を観察し、1視野中(4.3×103μm2)の付着血小板数を数えた。中空糸長手方向における中央付近で、異なる10視野での付着血小板数の平均値を血小板付着数(個/4.3×103μm2)とした。中空糸の長手方向における端の部分は、血液溜まりができやすいためである。
(2)中空糸膜のウサギ血小板付着試験方法
中空糸分離膜を30本束ね、中空糸中空部を閉塞しないようにエポキシ系ポッティング剤で両末端をガラス管モジュールケースに固定し、ミニモジュールを作成した。該ミニモジュールの直径は約7mm、長さは約10cmであった。該ミニモジュールの血液入口と透析液出口をシリコーンチューブで繋ぎ、血液出口から蒸留水100mlを10ml/minの流速で流し、中空糸およびモジュール内部を洗浄した。その後、生理食塩水を充填し、透析液入口、出口をキャップした。次に、血液入口から、0.59ml/minの流速で、2時間生理食塩水プライミングした後、3.2%クエン酸三ナトリウム2水和物水溶液と家兎新鮮血を1:9(容積比)で混合した血液7mlを0.59ml/minの流速で1時間灌流した。その後、生理食塩水で10mlシリンジにて洗浄し、3%グルタルアルデヒド水溶液を中空糸内部および透析液側の両方に充填し、一晩以上置き、グルタルアルデヒド固定を行った。その後、蒸留水にて、グルタルアルデヒドを洗浄し、ミニモジュールから中空糸膜を切り出して減圧乾燥を5時間以上行った。中空糸膜を走査型電子顕微鏡の試料台に両面テープで貼り付けた後、長手方向にスライスし、内表面を露出させた。その後、スパッタリングにより、Pt−Pdの薄膜を試料に形成させた。走査型電子顕微鏡(日立社製S800)にて、倍率3000倍で試料の内表面を観察し、1視野中(1.12×103μm2)の付着血小板数を数えた。異なる10視野での付着血小板数の平均値を1.12で割った値を血小板付着数(個/1.0×103μm2)とした。
(3)酸化LDL吸着除去試験方法
(a)抗酸化LDL抗体の作製
板部らの方法(H.Itabe et al.,J.Biol.Chem.269:15274、1994)に従って作製した。すなわち、ヒト粥状硬化病巣ホモジェネートをマウスに注射して免疫し、そのマウスの脾臓からハイブリドーマを作製し、硫酸銅処理LDLと反応するものを選別して、抗酸化LDL抗体を得た。得られた抗酸化LDL抗体の抗体クラスは、マウスIgMで、未処理LDL、アセチルLDL、マロンジアルデヒドLDLとは反応しない。一方、該抗酸化LDL抗体は、フォスファチジルコリンのアルデヒド誘導体やヒドロペルオキシドを含めていくつかのフォスファチジルコリン過酸化反応生成物と反応する。該抗酸化LDL抗体を150mMのNaClを含む10mMほう酸緩衝液(pH8.5)に溶解したものを用いた(蛋白質濃度0.60mg/ml)。
(b)酸化LDLの調製
市販のLDL(HUMAN,Biomedical Technologies Inc.社製)を脱塩カラム(HiTrap Desalting, Pharmacia製)にかけ、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を除去するとともに、0.2mg/mlとなるようにリン酸緩衝液(以下、PBSと略記)で希釈した。その後、Falcon(登録商標)チューブ(18mmφ、No.2051)に2mlずつ分注した。37℃で3分間保温した。0.5mM硫酸銅水溶液を2wt%添加し、37℃で5時間反応させた。このとき、0.5mM硫酸銅水溶液は用事調製した。また、37℃で5時間反応させている間は、チューブに蓋をせず、空気と触れるようにしておき、1時間おきに2,3度ピペッティングを行った。得られた溶液に、25mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を1wt%、10wt%アジ化ナトリウムを0.02wt%となるように添加したものを酸化LDL標品とした。この酸化LDLの総タンパク質量は0.171mg/ml、マロンジアルデヒド量は86.3nM/mgLDLであった。
(c)酸化LDL濃度の測定
前記抗酸化LDL抗体をPBSで5μg/mlに希釈し、96穴のプレートに100μl/ウェルずつ分注した。室温で2時間震盪した後、4℃にて一晩以上放置し、抗体を壁に吸着させた。
ウェル中の抗体溶液を捨て、1%Bovine Serum Albmin(BSA、フラクションV、生化学工業)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)を200μl/ウェルずつ分注した。室温で2時間震盪して壁をブロッキングした後、ウェル中のBSA溶液を捨て、酸化LDLを含んだ血漿および検量線作成用のスタンダードを100μl/ウェルずつ分注した。その後、室温で30分震盪した後、4℃で一晩放置した。
室温に戻し、ウェル中の溶液を捨て、0.05%トゥイーン(登録商標)−20を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)でウェルを3回洗浄した。洗浄したウェルにPBSで2000倍に希釈したヒツジ抗アポB抗体100μl/ウェルずつ分注した。室温で2時間震盪した後、ウェル中の抗アポB抗体を捨て、0.05%トゥイーン−20を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)でウェルを3回洗浄した。洗浄したウェルに2%ブロックエース(大日本製薬社製)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で2000倍に希釈したアルカリ性フォスファターゼ標識ロバ抗ヒツジIgG抗体を100μl/ウェルずつ分注し、室温で2時間震盪した。その後、ウェル中の標識抗体を捨て、0.05%トゥイーン−20を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)でウェルを3回洗浄し、さらにトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で2回洗浄した。続いて、p−ニトロフェニルリン酸の1mg/ml溶液(0.0005M MgCl2、1Mジエタノールアミン緩衝液、pH9.8)を100μl/ウェルずつ分注した。適当な時間室温で反応させた後、波長415nmにおける吸光度をプレートリーダーで測定した。スタンダードの結果から検量線を引き、酸化LDL濃度を決定した。
(d)酸化LDL吸着除去率の測定
健常者血漿(日本人、30歳、LDL(βリポ蛋白)濃度275mg/dl,HDL−コレステロール濃度70mg/dl)に、上記酸化LDLを濃度2μg/mlとなるように添加した。
中空糸膜を70本束ね、直径約7mm、長さは12cmのガラス管モジュールケースに挿入した。中空糸膜の両末端を、中空糸膜中空部を閉塞しないようにエポキシ系ポッティング剤で固定し、ミニモジュール(内表面積53cm2)を作成した。ミニモジュールを超純水で37℃で30分間洗浄した。その後、ミニモジュールの両端に内径7mm(外径10mm)、長さ2cmのシリコーンチューブ(製品名ARAM(登録商標))と異形コネクターを介して、内径0.8mm、外径1mm、長さ37cmのシリコーンチューブ(製品名ARAM(登録商標))をつなぎ、上記血漿1.5mlを窒素雰囲気下で0.5ml/分の流量で25℃、4時間中空糸膜内に灌流した。中空糸膜表面積1m2あたりの血漿量は2.8×102ml/m2であった。さらにミニモジュールをつけずにシリコーンチューブのみで灌流操作も行った。灌流前後の血漿中の酸化LDL濃度を定量することにより、それぞれの吸着除去率を下記式により算出した。
酸化LDL吸着除去率(%)=ミニモジュールでの酸化LDL吸着除去率(%)−シリコーンチューブのみでの酸化LDL吸着除去率(%)
酸化LDL吸着除去率(%)=100×(灌流前の濃度−灌流後の濃度)/灌流前の濃度
(4)溶出ポリエチレンイミン濃度測定方法
放射線を照射した後、室温にて1週間放置したモジュールの血液側に充填された液を血液導出口4から自然落下にて抜き出した。溶出したポリエチレンイミン量を、以下の条件でHPLCにて定量した。
装置:Waters、GPC−244
カラム:TSKgel GMPWXL 1本
溶媒:0.1Nの酢酸と0.1Nの酢酸ナトリウムの混合水溶液
流速:0.5ml/min
温度:30℃
(実施例1)
カチオン性基含有物質としてポリエチレンイミン(BASF社製、重量平均分子量75万)を、非イオン性親水性高分子としてポリビニルピロリドン(BASF社製K90)を使用した。ポリエチレンイミン0.01重量%水溶液を前記の中空糸膜モジュールの血液導出口4から入れ、透析液の導出口9から出して、ポリエチレンイミンを中空糸膜に導入した。通液量は1Lとした。またこのとき、血液導入口3および透析液の導入口8には栓をした。その後、ポリビニルピロリドン0.001重量%水溶液を、ポリエチレンイミン水溶液と同様に1L通液し、ポリビニルピロリドンを中空糸膜に導入した。この後、該モジュールにγ線を照射した。γ線吸収線量は28kGyであった。該モジュールの血液側に充填された液を抜き出して、溶出ポリエチレンイミン濃度を測定した。さらに、中空糸を切り出し、血小板付着数を評価した。切り出した中空糸膜を用いてミニモジュールを作成し、酸化LDL吸着実験に供した。その結果、表1に示された通りであった。
(比較例1)
カチオン性基含有物質としてポリエチレンイミン(BASF社製、重量平均分子量75万)を、非イオン性親水性高分子としてポリビニルピロリドン(BASF社製K90)を使用した。ポリビニルピロリドン0.001重量%水溶液を前記の中空糸膜モジュールの血液導出口4から入れ、透析液の導出口9から出して、ポリビニルピロリドンを中空糸膜に導入した。通液量は1Lとした。またこのとき、血液導入口3および透析液の導入口8には栓をした。その後、ポリエチレンイミン0.01重量%水溶液を、ポリビニルピロリドン水溶液と同様に1L通液し、ポリエチレンイミンを中空糸膜に導入した。この後、該モジュールにγ線を照射した。γ線吸収線量は28kGyであった。該モジュールの血液側に充填された液を抜き出して、溶出ポリエチレンイミン濃度を測定した。さらに、中空糸を切り出し、血小板付着数を評価した。切り出した中空糸膜を用いてミニモジュールを作成し、酸化LDL吸着実験に供した。その結果、表1に示された通りであった。
(比較例2)
カチオン性基含有物質としてポリエチレンイミン(BASF社製、重量平均分子量75万)を使用した。ポリエチレンイミン0.01重量%水溶液を前記の中空糸膜モジュールの血液導出口4から入れ、透析液の導出口9から出して、ポリエチレンイミンを中空糸膜に導入した。通液量は1Lとした。またこのとき、血液導入口3および透析液の導入口8には栓をした。この後、該モジュールにγ線を照射した。γ線吸収線量は28kGyであった。該モジュールの血液側に充填された液を抜き出して、溶出ポリエチレンイミン濃度を測定した。さらに、中空糸を切り出し、血小板付着数を評価した。切り出した中空糸膜を用いてミニモジュールを作成し、酸化LDL吸着実験に供した。その結果、表1に示された通りであった。
(比較例3)
カチオン性基含有物質としてポリエチレンイミン(和光純薬社製、重量平均分子量7万)を使用した。ポリエチレンイミン1重量%水溶液を前記の中空糸膜モジュールの血液導出口4から入れ、血液導の導入口3から出して、ポリエチレンイミンを中空糸膜に導入した。通液量は1Lとした。またこのとき、透析液の導入口8および導出口9には栓をした。この後、該モジュールにγ線を照射した。γ線吸収線量は28kGyであった。該モジュールの血液側に充填された液を抜き出して、溶出ポリエチレンイミン濃度を測定した。さらに、中空糸を切り出し、血小板付着数を評価した。切り出した中空糸膜を用いてミニモジュールを作成し、酸化LDL吸着実験に供した。その結果、表1に示された通りであった。
(比較例4)
非イオン性親水性高分子としてポリビニルピロリドン(BASF社製K90)を使用した。ポリビニルピロリドン0.001重量%水溶液を前記の中空糸膜モジュールの血液導出口4から入れ、透析液の導出口9から出して、ポリビニルピロリドンを中空糸膜に導入した。通液量は1Lとした。またこのとき、血液導入口3および透析液の導入口8には栓をした。この後、該モジュールにγ線を照射した。γ線吸収線量は28kGyであった。該モジュールの血液側に充填された液を抜き出して、溶出ポリエチレンイミン濃度を測定した。さらに、中空糸を切り出し、血小板付着数を評価した。切り出した中空糸膜を用いてミニモジュールを作成し、酸化LDL吸着実験に供した。その結果、表1に示された通りであった。
(比較例5)
純水を前記の中空糸膜モジュール血液導出口4から入れ、透析液の導出口9から出した。通液量は2Lとした。この後、該モジュールにγ線を照射した。γ線吸収線量は28kGyであった。該モジュールの血液側に充填された液を抜き出して、溶出ポリエチレンイミン濃度を測定した。さらに、中空糸を切り出し、血小板付着数を評価した。切り出した中空糸膜を用いてミニモジュールを作成し、酸化LDL吸着実験に供した。その結果、表1に示された通りであった。
Figure 0004433821
本発明に用いられる人工腎臓の一態様を示す。

Claims (10)

  1. pH4.5において電荷が1meq/g以上のカチオン性高分子およびポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコールおよびその誘導体から選ばれる1種類または2種類以上の非イオン性親水性高分子が含有されており、前記非イオン性親水性高分子が最表面に導入されことを特徴とする改質基材。
  2. 前記カチオン性高分子物質が基材表面に導入され、かつ前記非イオン性親水性高分子が最表面に導入されたことを特徴とする請求項1に記載の改質基材。
  3. ヒト血小板付着量が10個/4.3×10 3 μm 2 以下であり、かつ酸性タンパク質の吸着除去率が20%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の改質基材。
  4. 前記記載の酸性タンパク質が酸化低密度リポタンパク質であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の改質基材。
  5. 前記カチオン性高分子の溶出濃度が1000ppm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の改質基材。
  6. 請求項1に記載の基材において放射線照射されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の改質基材。
  7. 前記基材が医療用基材であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の改質基材。
  8. 前記医療用基材が血液浄化用モジュールに内蔵されていることを特徴とする請求項7に記載の改質基材。
  9. 前記医療用基材が中空糸膜であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の改質基材。
  10. 前記中空糸膜がポリスルホン系ポリマーであることを特徴とする請求項9に記載の改質基材。
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