JP4798898B2 - 圧電磁器組成物及び圧電共振子並びに積層型圧電素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電磁器組成物及び圧電共振子並びに積層型圧電素子に関し、特に、焼成温度を低温化できる圧電磁器組成物及び圧電共振子並びに積層型圧電素子に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、無線通信や電気回路に用いられる周波数の高周波化が進んでおり、これに伴って、これらの電気信号に対して用いられる圧電共振子(発振子を含む概念で用いる)は高い周波数領域に対応したものが要求され、開発が行われている。最近は、特に、高い周波数領域に対応できる厚み縦振動モードや厚み滑り振動モードを利用した共振子、および周波数定数の高い圧電材料の開発が進められている。
【0003】
厚み縦振動モードや厚み滑り振動モードを利用した圧電共振子では、共振周波数は圧電磁器板の厚みにより決定される。従来から広く知られているチタン酸鉛系圧電共振子では、厚み縦振動の3倍波を用い、発振周波数33.86MHzの時圧電磁器板の厚みは約230μm、厚み滑り振動の基本波を用いた場合、発振周波数が8.0MHzの時に圧電磁器板の厚みは約180μmであり、チタン酸ジルコン酸鉛系圧電共振子では、厚み滑り振動の基本波を用いた場合、発振周波数が8.0MHzの時に圧電磁器板の厚みは約130μmであった。このように通常、16MHz以上の周波数帯域では、加工のし易さから振動モードとして、厚み縦振動の3倍波が用いられている。
【0004】
しかしながら、厚み縦振動の3倍波を使用した場合には、低周波数領域に存在する厚み縦振動モードの基本波振動や、高周波数領域に存在する5倍波振動にて発振条件を満足してしまい、誤って発振してしまうという問題があった。
【0005】
この現象は、発振条件が圧電共振子とICのゲイン及び位相により決定され、また、発振回路のICは周波数が高くなるに従いゲインが小さくなっていくために起こりうる現象で、発振回路の回路定数を最適化することで誤発振を抑制している。
【0006】
しかしながら、雰囲気温度が変化すると発振回路の回路定数も変化してしまい、誤発振することがあるため、高周波領域で使用する場合においても、基本波振動を用いることが望ましく、また、より高周波数領域の圧電共振子を得るため、薄肉化する必要があり、その際に加工歩留まりの高い圧電磁器が望まれていた。
【0007】
また、チタン酸鉛系材料では、抗電界が非常に高く、分極処理の際、高電圧を印可せざるを得ず歩留まりの点から、抗電界の低いチタン酸ジルコン酸鉛系材料が厚み滑り振動の基本波を用いた圧電共振子材料として用いられている。
【0008】
このような圧電共振子材料としては、Pb(Ti、Zr)O3のBサイトを、(Nb1/2Sb1/2)で置換し、MnO2を含有させた酸化物圧電材料が知られており、このような圧電材料は、電気機械結合係数や機械的品質係数や抗電界が高く、キュリー温度も高い上、抗折強度も高いため、圧電共振子用材料として好適に用いられてきた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のPb(Ti、Zr)O3のBサイトを、(Nb1/2Sb1/2)で置換し、MnO2を含有させた酸化物圧電材料では、機械的品質係数(Qm)や共振周波数の温度特性等の特性バラツキが大きいものであった。特に、圧電磁器では磁器厚みによって圧電素子の共振周波数が変化するため、平面研磨における加工精度を高めているが、このように圧電定数のバラツキが大きい場合、共振周波数の初期偏差が大きく、良品率が低下するという問題があった。これは、上記材料は通常1260℃以上で焼結されており、焼成時に主成分であるPbの蒸発がおこり、圧電定数のバラツキを生じさせていると考えている。
【0010】
また、上記圧電材料をAg/Pd等の内部電極と同時焼成した積層素子として用いる場合、焼成温度が高いと、電極材料のAg/Pd比率が30/70〜40/60となってしまい、Pd含有量が全金属量のうち60重量%以上と多く、コストなどの点で不利であるという問題があった。
【0011】
さらに、特開平10−231169号公報に開示された圧電磁器組成物では、圧電特性をほとんど変化させず焼成温度のみを低下させることができるとして、主成分のPZTに、副成分としてMoを含有させ、その量を主成分に対してMoO3に換算して0.06〜5.0重量%下とする提案が成されている。しかしながら、このMoO3はSiO2やBi2O3と同様液相焼結させるため、低温で焼結し始めるが、焼成温度の管理が微妙で結晶粒の異常粒成長を引き起こし易く、抗折強度が低下したり、圧電特性のバラツキが大きくなるという問題があった。
【0012】
本発明は、圧電特性のバラツキを低減できる圧電磁器組成物及び圧電共振子並びに積層圧電素子を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の圧電磁器組成物は、金属元素として、Pb、Zr、Ti、Nb、Sb、Mn、Mo、Zn及びMgを含有するペロブスカイト型複合酸化物からなる圧電磁器組成物であって、原子比による組成式を、Pb[(Nb1/2Sb1/2)a(Nb2/3Mn1/3)b(Mo1/2 (Mg x Zn 1-x ) 1/2)c(TidZr1-d)1-a―b―c]O3と表したとき、前記a、b、c、d、xが0.02≦a≦0.03、0.05≦b≦0.07、0.02≦c≦0.035、0.50≦d≦0.55、0.25≦x≦0.75を満足するものである。
【0014】
このような圧電磁器組成物では、液相成分として働く、MoとMg及びZnを複合させ、主成分であるPZTのBサイトと同様4価として置換することで、焼成温度を低下させることができ、また異常粒成長を抑制することができるので、優れた電気特性、高い抗折強度を維持できるとともに、圧電特性のバラツキを低減できる。特に、1000〜1100℃で焼成した場合であっても、厚み滑りモードを利用した時の機械的品質係数Qmが1140以上、共振周波数の温度特性が±0.3%以内、抗折強度が97MPa以上、圧電共振子のP/Vが83dB以上の優れた特性を得ることができる。
【0015】
また、本発明の圧電共振子は、圧電磁器板の対向する面に一対の電極を形成してなる圧電共振子であって、前記圧電磁器板が、上記圧電磁器組成物からなることを特徴とする。このような圧電共振子では、圧電特性が高く圧電特性のバラツキが低減された圧電磁器板を用いることで、圧電共振子のP/Vが83dB以上と優れた特性を得ることができる上、周波数定数の分布を小さくでき、周波数定数の最大値および最小値を平均値に対し±0.5%以内とすることができる。
【0016】
また、本発明の積層型圧電素子は、電極と圧電磁器板とを交互に積層してなり、前記電極と前記圧電磁器板を同時焼成してなる積層型圧電素子であって、前記電極中のAg含有量が前記電極中の全金属に対して70重量%以上であるとともに、前記圧電磁器板が、上記圧電磁器組成物からなるものである。本発明の積層型圧電素子では、1100℃以下で焼成可能なため、電極として使用する全金属中のAg比率を70重量%以上とすることができ、製造コストを大幅に低減できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の圧電磁器組成物は、原子比による組成式を、Pb[(Nb1/2Sb1/2)a(Nb2/3Mn1/3)b(Mo1/2 (Mg x Zn 1-x ) 1/2)c(TidZr1-d)1-a―b―c]O3と表したとき、前記a、b、c、d、xが0.02≦a≦0.03、0.05≦b≦0.07、0.02≦c≦0.035、0.50≦d≦0.55、0.25≦x≦0.75を満足するものである。
【0018】
ここで、Pb(Ti、Zr)O3のBサイトを置換する(Nb1/2Sb1/2)は、機械的品質係数と抗折強度を向上させる効果があるが、(Nb1/2Sb1/2)によるBサイトの置換量aが0.02未満では機械的強度向上効果、Qm向上効果が見られず、aが0.03より大きいと、焼成温度が1100℃を越えてしまい、焼成時におけるPbの蒸発量が多くなり、これにより圧電特性のバラツキを大きくなる。また、圧電磁器板と同時焼成する場合、電極中のPd等の貴金属が多くなり、Ag含有量が少なくなるからである。(Nb1/2Sb1/2)によるBサイトの置換量aは、低温焼成、及び機械的強度向上、機械的品質係数Qm向上という点から、0.02〜0.03である。
【0019】
また、Bサイトを置換する(Nb2/3Mn1/3)は、特に機械的品質係数Qmを向上させる効果があるが、(Nb2/3Mn1/3)によるBサイトの置換量bが0.05未満であれば、機械的品質係数Qm向上効果がなく、bが0.07を超えると、焼結不良を起こし磁器の機械的強度が低下するからである。(Nb2/3Mn1/3)によるBサイトの置換量bは、機械的品質係数Qmを向上し、焼結性を向上するという点から、0.05〜0.07である。
【0020】
また、Bサイトを置換する(Mo1/2 (MgZn) 1/2)は、低温焼成化に効果的であるが、(Mo1/2 (MgZn) 1/2)によるBサイトの置換量cが0.02未満では、1100℃以下に低温焼成化できず、0.35を超えると磁器の粗大粒成長を引き起こし、磁器の機械的強度が低下するからである。(Mo1/2 (MgZn) 1/2)によるBサイトの置換量cは、低温焼成及び機械的強度向上という点から、0.02〜0.035である。
【0021】
ここで、高温放置において機械的品質係数Qmの低下を抑制するという点から、(MgxZn1-x)と表したとき、xは0.25〜0.75であることが望ましい。さらに、この場合のBサイト置換量cは、0.25〜0.35である。
【0022】
さらに、BサイトのTi/(Ti+Zr)比は、機械的品質係数Qm、機械的強度に影響を及ぼすが、Ti/(Ti+Zr)比を示すdが0.48未満である場合、組成相境界(MPB)近傍で結晶構造が菱面体晶となるため機械的強度が低下し、dが0.60を超えた場合、温度によって共振周波数が大きく変化するからである。Ti/(Ti+Zr)比を示すdは、機械的強度向上、共振周波数の温度特性維持という点から、0.50〜0.55である。
【0024】
以上のように構成された圧電磁器組成物では、液相成分である(Mo1/2Me1/2)を導入することにより、1100℃以下で焼成しても、圧電磁器自体の抗折強度を高く維持し、緻密体であるため、機械的品質係数Qmを高く維持でき、電気特性のバラツキを低減できる。
【0025】
特に、1000℃〜1100℃で焼成した場合であっても、厚み滑りモードを利用した圧電共振子では機械的品質係数Qmが900以上、共振周波数の温度特性が±0.3%以内、抗折強度が80MPa以上の優れた特性を得ることができる。
【0026】
本発明の組成を有する圧電磁器は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、出発原料として、PbO、TiO2、ZrO2、Nb2O5、Sb2O3、MnO2、MoO3、MgCO3、ZnOの各粉末を、原子比による組成式を、Pb[(Nb1/2Sb1/2)a(Nb2/3Mn1/3)b(Mo1/2 (Mg x Zn 1-x ) 1/2)c(TidZr1-d)1-a-b-c]O3と表したとき、a、b、c、d、xが上記範囲を満足するように秤量し、湿式混合する。所定の時間混合した後スラリーを排出し、乾燥後整粒を行い、Al2O3製坩堝等に投入し、800〜950の温度で3〜5時間仮焼し、仮焼粉を得る。
【0027】
この粉末を所定の粉体粒径となるよう湿式粉砕し、乾燥後整粒を行い粉砕粉体を得る。得られた粉砕粉体に有機バインダーを混合し、金型プレス、静水圧プレス等により所望の形状に成形した後、大気中などの酸素含有雰囲気において、1000〜1100℃で2〜5時間焼成することによって、本発明の圧電磁器組成物を得ることができる。
【0028】
なお、使用する原料粉末としては炭酸塩や酸化物だけでなく、酢酸塩または有機金属などの化合物のいずれであっても、焼成などの熱処理プロセスによって酸化物になるものであれば差し支えない。
【0029】
また、本発明の圧電磁器組成物においては、原料粉末などに微少量含まれるRbやHfなどの不可避不純物が混入する場合があるが、特性に影響のない範囲であれば何ら差し支えない。
【0030】
また、本発明の圧電共振子は、図1に示すように、上記組成を有する圧電磁器板1の対向する面に一対の電極2、3を形成してなるものである。このような圧電共振子は、次のように製造できる。上記のようにして得られた圧電磁器板に銀電極を形成した後、80℃〜250℃のシリコンオイル中で3〜5kV/mmの直流電界を30分間印加して分極処理を行う。分極後所定の厚さに研磨し、研磨された圧電磁器板1の上下面に、電極2、3を蒸着し、所定の素子寸法を有する厚み滑り振動モードの基本波を用いた圧電共振子を得ることができる。
【0031】
なお、上記圧電磁器板は、プレート状のものの他、ブロック状のものでも良く、圧電共振子に要求される所定の厚みにするための加工法は特に限定しない。
【0032】
また、本発明の積層型圧電素子は、Ag含有量が全金属に対して70重量%以上の電極と上記組成からなる圧電磁器板とを交互に積層し、電極と圧電磁器板を同時焼成してなるもので、図2に圧電トランスからなる積層型電子部品を詳細に示す。
【0033】
図2において、圧電トランスは、長方形状の圧電基板21に、その長さ方向に、第1電圧入力部A、電圧出力部B、第2電圧入力部Cが順次形成されており、これらの第1電圧入力部A、電圧出力部B、第2電圧入力部Cにおける圧電基板21の上下面には表面電極22がそれぞれ形成されている。
【0034】
電圧出力部Bにおける圧電基板21の内部には、内部電極24が形成されており、これらの内部電極24の端部が交互に圧電基板21の対向する側面に露出し、露出した内部電極24の端部が、圧電基板21の対向する側面に設けられた一対の外部電極25に交互に接続されている。
【0035】
このような圧電トランスは次のように製造できる。
【0036】
まず、各粉末を添加混合し、仮焼粉砕した粉砕粉体に、バインダー、可塑剤を添加し、有機溶剤中に分散させスラリーを作製する。得られたスラリーを用いてドクターブレード法等により所定の厚みを有するセラミックグリーンシートを作製する。
【0037】
このグリーンシートの片面に、所定の比率で配合されたAg/Pdペーストを所定の形状となるようスクリーン印刷する。印刷されたグリーンシートを積層し、これを熱間プレス等により圧着し一体化させ、400〜500℃で加熱により脱脂を行った後、1000〜1100℃の温度で2〜5時間焼成することによって積層体を得る。この後、表面電極や外部電極を形成し、分極処理を行うことで、例えば圧電トランスや圧電アクチュエータ等の積層型圧電素子を得ることができる。
【0038】
このような積層型圧電素子では、圧電磁器板を1100℃以下で焼成しても良好な特性を維持できるため、積層型圧電素子とした場合、電極として、全金属中のAg含有量を70重量%以上とすることができ、高価なPt等の貴金属使用量を低減でき大幅なコストダウンが図れる。
【0039】
本発明では、液相を形成し易いMo、Zn,Mgは、それぞれ、単独で添加するのではなく、所定の比率で合成し、Pb(Mo1/2 (MgZn) 1/2)O 3 としてBサイトへ置換するように添加しているため、異常粒成長を抑制することができる。
【0040】
【実施例】
まず、出発原料として、Pb3O4、ZrO2、TiO2、Sb2O3、Nb2O5及びMnO2、MoO3、MgCO3、ZnOを用意し、Pb[(Nb1/2Sb1/2)a(Nb2/3Mn1/3)b(Mo1/2 (Mg x Zn 1-x ) 1/2)c(TidZr1-d)1-a-b-c]O3と表したとき、a、b、c、d、xが表1を満足するように、上記原料を秤量し、24時間湿式混合した。
【0041】
尚、表1中ではMg,Znの構成が、x=0.5の場合、50%Mg50%Zn、x=0.25の場合、25%Mg75%Znのように表記した。
【0042】
次いで、上述の各混合物を、それぞれ、排出、乾燥して、950℃の温度で3時間、仮焼した。当該仮焼物を再びボールミルで粉砕し、D50が0.7μm、D90が1.3μmの粒度分布で、比表面積が2.0cm2/gである粉砕粉体を得た。
【0043】
その後、この粉砕物にポリビニルアルコール(PVA)などのバインダーを混合して造粒した。得られた粉末を150MPaの圧力で幅25mm×長さ35mm×厚さ1.5mmの寸法からなる角板状にプレス成形した。この成形体を大気中において表1に示す温度で2時間焼成した。得られた磁器を0.5mmの厚みになるまで研磨した。
【0044】
さらに、この磁器を幅5mm×長さ30mm×厚み0.50mmの短冊形状に加工し、これらの端面部に銀電極を形成した後、200℃のシリコンオイル中で3〜5kV/mmの直流電界を30分間印加して分極処理を行った。この後、短冊を0.2mm(200μm)の厚さまで研磨し、それらの上下面に、銀電極を蒸着し、幅1.5mm×長さ4.5mmの厚み滑り振動モードの基本波を用いた圧電共振子を作製した。
【0045】
そして、この圧電共振子の静電容量Cf、共振周波数fr、***振周波数fa、共振抵抗R0、***振抵抗Raをインピーダンスアナライザーで測定し、機械的品質係数Qm、厚み滑り振動モードの基本波振動におけるP/Vを求めた。P/Vは圧電共振子の発振性能を表す指数で、機械的品質係数Qm、およびP/Vは、Qm=fr2÷[2π×R0×Cf×(fa2−fr2)]
P/V=20×Log(Ra÷R0) (単位:dB)
の式にて算出した。
【0046】
さらに、共振周波数frの温度特性fr.T.Cを、以下の式から算出した。fr.T.C=[fr(T)−fr(25 ℃ )]/fr(25 ℃ )×100 (単位:%)ここで、fr(T)はT℃で測定したfrであり、25℃に対する変化の度合いを求めた。測定は−20℃〜80℃で行い、絶対値が最も大きなものをその試料の共振周波数の温度特性とした。fr.T.Cが±0.2%以内の場合を○、±0.2%より大きく±0.3%以内を△、±0.3%より大きい場合を×とした。
【0047】
さらに、抗折強度はJISR1601に従い4点曲げ強度を評価した。また、周波数定数のバラツキに関しては、各試料100個抜き取りで周波数定数を評価し、平均値に対して、最大値および最小値のズレを算出し、バラツキが±0.3%以内の場合を○、±0.3%より大きく±0.5%以内を△、±0.5%より大きい場合を×とした。得られた結果を表1に表記した。なお、周波数定数は***振周波数と磁器厚みから算出した。
【0048】
【表1】
【0049】
表1から、本発明の試料では、1100℃で焼成したにも拘わらず、Qmが1140以上、共振周波数の温度特性fr.T.Cが±0.3%以内、P/Vが80dB以上で、周波数定数のバラツキが平均値に対して±0.3%以内、抗折強度が97MPa以上であり、通常焼成温度より100℃以上低温で焼成しても高い電気特性と高い機械的強度を兼ね備えるものであることが分かる。
【0050】
特に、Mo1/2 (Mg x Zn 1-x ) 1/2 ,0.25≦x≦0.75を添加しない比較例の試料No.1の場合、1100℃で焼成しても、抗折強度が53MPaであったものが、本発明範囲内である例えば、試料No.25では97MPaと飛躍的に向上することが分かる。また、比較例である試料No.2では機械的品質係数Qmが670、P/Vが43dBであった電気特性が、試料No.25においてはQmが1140、P/Vが83dBの電気特性が得られた。
【0051】
一方、本発明の範囲外である試料No.3、11では低温焼成化の効果が見られず、抗折強度が68MPaより低く、Qmも850より低く、分極工程でのバラツキから周波数定数のバラツキが大きいものであった。また、試料No.7、8、12の場合Qmが小さいものであった。さらに、試料No.15では、緻密化が進まず抗折強度が低い上、Qmも低かった。また、試料No.16では、組成相境界近傍で、抗折強度が低く、試料No.20では、共振周波数の温度特性が大きいものであった。
【0052】
【発明の効果】
以上のように、本発明の圧電磁器組成物では、1100℃以下で焼成することができ、かつ、1100℃以下で焼成しても優れた圧電特性を有しており、主元素であるPbの蒸発を抑制し、電気特性、特に周波数定数のバラツキを抑えることができるとともに、内部電極材料としてAg含有量を増加でき、安価な積層型電子部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電共振子を示す斜視図である。
【図2】本発明の圧電トランスを示す斜視図である。
【符号の説明】
1・・・圧電磁器板
2、3、24・・・電極
Claims (3)
- 金属元素として、Pb、Zr、Ti、Nb、Sb、Mn、Mo、Zn及びMgを含有するペロブスカイト型複合酸化物からなる圧電磁器組成物であって、
原子比による組成式を、
Pb[(Nb1/2Sb1/2)a(Nb2/3Mn1/3)b(Mo1/2 (Mg x Zn 1-x ) 1/2)c(TidZr1-d)1-a-b-c]O3
と表したとき、前記a、b、c、d、xが
0.02≦a≦0.03
0.05≦b≦0.07
0.02≦c≦0.035
0.50≦d≦0.55
0.25≦x≦0.75
を満足することを特徴とする圧電磁器組成物。 - 圧電磁器板の対向する面に一対の電極を形成してなる圧電共振子であって、前記圧電磁器板が、請求項1記載の圧電磁器組成物からなることを特徴とする圧電共振子。
- 電極と圧電磁器板とを交互に積層してなり、前記電極と前記圧電磁器板を同時焼成してなる積層型圧電素子であって、前記電極中のAg含有量が前記電極中の全金属に対して70重量%以上であるとともに、前記圧電磁器板が、請求項1記載の圧電磁器組成物からなることを特徴とする積層型圧電素子。
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