図1は、本発明のインクジェット記録装置の一実施形態に係る複合機10の外観斜視図である。この複合機10は、下部にプリンタ部11を、上部にスキャナ部12を一体的に備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)であり、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。この複合機10のうちプリンタ部11が本発明に係るインクジェット記録装置に相当する。この複合機10において、プリンタ機能以外の機能は、任意のものであって省略されていてもよい。すなわち、本発明は、スキャナ部12がなく、スキャナ機能やコピー機能を有しない単機能のプリンタとして実施されてもよい。
複合機10は、主に図示されていないパーソナルコンピュータと接続され、このパーソナルコンピュータから送信される画像データや文書データを含む印刷データに基づいて、記録媒体の一例である記録用紙に画像や文書が記録される。ただし、複合機10の使用態様はかかる態様に限定されるものではなく、複合機10がデジタルカメラ等の外部機器と接続され、デジタルカメラから出力される画像データが記録用紙に記録されたり、メモリカード等の各種記憶媒体が複合機10に装填され、この記憶媒体に記憶された画像データ等が記録用紙に記録されることも可能である。なお、本明細書において開示される複合機10の構成は、本発明に係るインクジェット記録装置の一例であり、本発明の要旨を変更しない範囲で構成が適宜変更され得るものであることは当然である。
図1が示すように、プリンタ部11は、正面に開口13が形成されており、この開口13から一部が露呈するようにして給紙トレイ14及び排紙トレイ15が上下2段に設けられている。給紙トレイ14は、記録用紙を貯蔵するためのものである。この給紙トレイ14に収容された記録用紙は、プリンタ部11の内部へ給送され、所望の画像が記録された後に排紙トレイ15へ排出されるようになっている。
図1に示すように、複合機10の正面上部に操作パネル20が設けられている。この操作パネル20は、プリンタ部11やスキャナ部12を操作するための各種操作ボタンや液晶表示部を備えている。複合機10は、この操作パネル20からの操作指示に基づいて動作する。また、複合機10がパーソナルコンピュータに接続されている場合には、当該複合機10は、パーソナルコンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても動作する。さらに、複合機10の正面にスロット部21が設けられている。記憶媒体である各種小型メモリカードは、このスロット部21に装填されるようになっている。操作パネル20からの入力に基づいて、スロット部21に装填された小型メモリカードに記録された画像データが読み出され、この画像データに関する情報が液晶表示部に表示され、あるいは、任意の画像がプリンタ部11により記録用紙に記録される。
図2は、プリンタ部11の構成を模式的に示す断面図である。記録ヘッド39は、後述するキャリッジ38(図3参照)に搭載され、主走査方向(図2の紙面垂直方向)に往復移動される。この記録ヘッド39と別個独立して、インクカートリッジ(図示せず)が複合機10内に配置されている。インクカートリッジからシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクが記録ヘッド39に供給される。プラテン42は、記録ヘッド39と対向配置され、この記録ヘッド39の下方に配置されている。プラテン42は、搬送される記録用紙を支持する。インクが供給された記録ヘッド39は、各インクを微小なインク滴としてプラテン42側に吐出する。記録ヘッド39が搭載されたキャリッジ38が往復移動(走査)されることにより、プラテン42上を搬送される記録用紙に画像記録が行われる。
また、図2に示すように、給紙トレイ14に積載された記録用紙に当接する給紙ローラ25は、積載された記録用紙を1枚ずつ分離し、搬送路23へ供給する。給紙された記録用紙は、搬送路23に沿って下方から上方へUターンするように案内されて記録ヘッド39下方に至り、記録ヘッド39により画像記録が行われた後に排紙トレイ15(図1参照)に排出される。なお、給紙された記録用紙を記録ヘッド39下方まで搬送する方向を搬送方向と称する。
図2に示すように、プラテン42の搬送方向上流側には、給紙トレイ14から給紙された記録用紙をプラテン42上へ搬送する搬送ローラ60と、その搬送ローラ60との間で記録用紙を挟持する押さえ部61が設けられている。搬送ローラ60と押さえ部61とは上流側挟持手段の一例である。
一方、プラテン42の搬送方向下流側には、記録済みの記録用紙を搬送する搬送手段の一例である排紙ローラ62と、その排紙ローラ62との間で記録用紙を挟持する拍車ローラ63とが設けられている。排紙ローラ62と拍車ローラ63とは下流側挟持手段の一例である。搬送ローラ60及び排紙ローラ62は、LFモータ71(図13参照)により駆動され、記録用紙を所定の改行幅で間欠的に送る。
搬送ローラ60の回転と排紙ローラ62の回転とは同期されている。そして、搬送ローラ60に設けられたロータリエンコーダ(図示せず)が、搬送ローラ60と共に回転するエンコーダディスクをフォトインタラプタで検出することにより、搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転が制御されている。
また、図2に示すように、搬送ローラ60よりも搬送方向上流側における搬送路23には、レジストセンサ26が配設されている。レジストセンサ26は、搬送路23に突出して設けられ、搬送される記録用紙に接触することにより、記録用紙の有無を検出する。レジストセンサ26により記録用紙の搬送方向先端が検出されてから、記録用紙の搬送方向後端が検出されるまでの搬送量(LFモータ71の回転量)に基づいて、搬送された記録用紙のサイズを取得することができる。
また、図2に示すように、給紙トレイ14には、用紙有無検知センサ27が配設される。この用紙有無検知センサ27は、給紙トレイ14に記録用紙が積層されているか否かを検出するためのセンサである。
図3は、プリンタ部11の主要な構成を示す斜視図である。図3に示すように、プリンタ部11は、キャリッジ38と、記録ヘッド39と、プラテン42を備えている。なお、図3においては、キャリッジ38の主走査方向への移動を案内するガイドフレームの図示を省略している。
図3に示すように、記録ヘッド39による画像形成範囲には、プラテン42が配設される。一方、主走査方向端である、記録ヘッド39による画像形成が行われない範囲には、パージ機構や廃インクトレイ等が設けられたメンテナンスユニット48が配設されている。これらメンテナンスユニット48により、記録ヘッド39内の気泡や混色インクの除去等のメンテナンスが行われる。
なお、本実施形態に係る複合機10は、4色のインクで画像記録を行うものであるが、本発明に係るインクジェット記録装置においてインク色の数は特に限定されず、例えば、6色インクや8色インクにより画像記録を行う場合には、インクカートリッジを増やすことが可能であることは勿論である。
図4は、図3に示すプラテン42の上面47を拡大して示す拡大斜視図である。このプラテン42は、前述のように、記録ヘッド39に対向して配置されており、搬送される記録用紙を支持する。また、同図において、矢印45の方向が記録用紙の搬送方向であって、記録用紙は、この矢印の向きに搬送されるようになっている。
図4に示すように、プラテン42は、フレーム41と、支持体の一例である可動リブ46と、この可動リブ46をスライド駆動する駆動機構51(図5参照)とを備えている。
フレーム41は、例えば合成樹脂や鋼板からなり、プラテン42の骨格を構成し、複合機10に係止固定されている。図4に示すように、このフレーム41の上面47には、複数のスリット49が設けられている。このスリット49は、上面47の搬送方向上流側端部から下流側端部まで延びている。そして、このスリット49からは、フレーム41内に設けられた可動リブ46の先端が上方に突出している。この可動リブ46は、プラテン42のフレーム41内を、搬送方向に往復移動する。
図5は、プラテン42のフレーム41の上側カバーを外した状態を示す斜視図であり、図6は、プラテン42のフレーム41の上側カバーを外した状態を示す側面図である。図5および図6に示すように、可動リブ46は、箱状に形成されたベース52と、そのベース52上に突設された薄肉板状部材53とを有している。可動リブ46は、合成樹脂又は金属から構成され得る。ベース52は、その主走査方向両端部が上記フレーム41によって、搬送方向(図6に示す矢印122方向)へスライド可能に支持されている。
薄肉板状部材53は、ベース52と一体的に形成されている。図6に示すように、薄肉板状部材53は、記録ヘッド39下方を搬送される記録用紙の下面に接触しこれを支持する頂部531と、その頂部531に隣接すると共にその頂部531から離隔するにつれて下方へ向かう傾斜部532とが設けられた山状を呈している。
この薄肉板状部材53は、ベース52の上面に、主走査方向に沿って所定間隔で並設されている。この所定間隔とは、上記スリット49のピッチに対応されている。したがって、複数の薄肉板状部材53が、上記各スリット49から上方に突き出している。
図7を参照して、可動リブ46を搬送方向(矢印122方向)に往復移動させるための機構について説明する。図7は、プラテン42を下方から見た斜視図である。図7に示すように、プラテン42には、可動リブ46を駆動するための駆動機構51が設けられている。駆動機構51は、可動リブ46を搬送方向122(図6参照)にスライドさせるための動力伝達機構であって、図7が示すように、伝動機構511と、回転板512と、揺動部材513とが設けられている。
伝動機構511は、排紙ローラ62の一端に配置され、排紙ローラ62から回転板512に回転力を伝達する複数の噛み合い歯車またはローラから構成される。回転板512は、円盤状に形成されており、回転中心軸514(図5参照)によって回転可能に支持されている。この回転中心軸514は固定されており、回転板512の中心に挿通されている。この回転板512は、円形溝515を備えている。図7に示すように、この円形溝515に揺動部材513の基端部が係合するようになっている。
揺動部材513は、揺動中心軸516によって回転自在に支持されている。揺動部材513の基端部には、上方に突出する係合ピンが設けられており、その係合ピンが、回転板512の円形溝515に嵌め込まれている。係合ピンが円形溝515に沿って相対移動することにより、揺動部材513は、揺動中心軸516を中心にして回転する。すなわち、揺動部材513は、この揺動中心軸516を中心にして揺動し、これにより、揺動部材513の先端部は、揺動中心軸516を中心とする円弧状をスライドすることになる。さらに、フレーム41は、搬送方向に延びる長孔411を備えており、揺動部材136の先端から突設された係合ピンは、その長孔411を介して、ベース52(図5参照)の底面と連結されている。
したがって、前述のように揺動部材513が揺動し、揺動部材513先端が揺動中心軸516を中心とする円弧状をスライドさせることにより、可動リブ46がフレーム41上を摺動し、搬送方向(図6に示す矢印122方向)またはその反対方向へ移動される。
図6に戻り、画像形成時における可動リブ46の動作について説明する。記録ヘッド39による画像形成を開始する際に、記録用紙がプラテン42の直前まで搬送されてくると、可動リブ46は、搬送方向上流側(搬送ローラ60側)へ移動して記録用紙を迎える。
その後、可動リブ46は、記録用紙の前端部をその下面側から支持したまま、記録ヘッド39下面に形成されたノズルうち搬送方向最端に位置するノズルを通過するまで、その記録用紙に追従して搬送方向(矢印122方向)へ移動する。
一方、記録用紙が搬送され、その記録用紙の後端部がプラテン42上に到達した場合においても、再び可動リブ46が、搬送方向上流側(搬送ローラ60側)へ移動して記録用紙の後端部を迎え、下面から支持すると共に、その記録用紙後端部に追従して搬送方向(矢印122方向)にスライドし、記録ヘッド39下面に形成されたノズルのうち搬送方向最端に位置するノズルを通過するまで、搬送方向へ移動する。このようにすれば、記録用紙の前端部および後端部が、撓むことなく記録ヘッドを搬送される。
本実施形態に係る複合機10では、プラテン42上を搬送される記録用紙の前端部および後端部の撓みが、その記録用紙に追従して移動する可動リブ46により抑制されるので、記録ヘッド39からインク滴の吐出が行われる間、記録用紙と記録ヘッド39との距離が一定に保たれ、高画質印刷が実現される。
図6に戻り、上述する可動リブ46を上昇させるための構成について説明する。フレーム41は、可動リブ46を支持する面として、第1保持部143と、第2保持部144とが設けられている。図6に示すように、第2保持部144は、第1保持部143よりも搬送方向下流側に設けられている。また、第1保持部143と第2保持部144との間には、第2保持部144に近づくにつれて上昇する傾斜部145が設けられている。
第1保持部143は、記録ヘッド39下面にノズルが形成された範囲に渡って設けられ、可動リブ46を第1高さT1に支持する。記録ヘッド39からインク滴の吐出が行われる画像形成時には、可動リブ46は第1保持部143上を搬送方向またはその反対方向へ摺動することにより、搬送される記録用紙を迎え、それに追従して移動する。
第2保持部144は、可動リブ46を第2高さT2に支持する。上述した駆動機構51により可動リブ46を駆動し、第1保持部143上を搬送方向(矢印122方向)に摺動させ、さらに、傾斜部145を経由して第2保持部144まで移動させることにより、可動リブ46を第2高さT2へ上昇させることができる。
支持部を第2高さT2に保持する第2保持部144は、第1保持部143よりも搬送方向下流側に設けられているので、画像形成時における可動リブ46の往復移動範囲における構成が複雑化することが抑制される。
図8は、第2保持部144へ移動させられた可動リブ46を示す側面図であり、図6に対応する図である。図8に示すように、第2保持部144へ移動させられることにより、可動リブ46は第2高さT2まで上昇させられる。可動リブ46を第2高さT2まで上昇させると、薄肉板状部材53の頂部531は、搬送ローラ60と押さえ部61とによる記録用紙の挟持高さ及び排紙ローラ62と拍車ローラ63とによる記録用紙の挟持高さT3よりも上になる。
なお、図示は省略されているが、第2保持部144には、可動リブ46が第2保持部144にあるか否かを検出するための可動リブ検知センサ1441(図13参照)が設けられる。後述する制御部64は、可動リブ検知センサ1411からの出力に従って、可動リブ46が第2高さT2にあるか否かを判断することができる。
本実施形態の複合機10では、可動リブ46を第2高さT2へ上昇させた状態で、記録用紙を搬送方向へ搬送する。このようにすれば、可動リブ46に対し相対的に移動する記録用紙により、可動リブ46に付着したインクが記録用紙下面によって拭き取られ、可動リブ46を清掃することができる。また、記録用紙を一方向(搬送方向)に移動させることにより、可動リブ46のインクは、常に記録用紙の新しい面によって拭き取られるので、一旦拭き取ったインクが支持部へ再付着することが抑制され、高い清掃効果が得られる。
ここで、可動リブ46の清掃用に用いる記録用紙を、本実施形態では、クリーニング用紙と称して説明することとするが、クリーニング用紙としては、任意の種類の記録用紙を使用することができる。
また、このクリーニング用紙は、可動リブ46に付着したインクを拭い取った後、搬送ローラ60および排紙ローラ62により搬送されて、排紙トレイ15(図1参照)へ排紙される。このようにすれば、ユーザは、排紙トレイ15に排紙された汚れたクリーニング用紙を廃棄するだけで良く、清掃作業が極めて簡単である。すなわち、複合機10のカバーを開けて内部の部品を取り出し清掃するなどの面倒な作業をすることなく、可動リブ46を清掃することができる。さらに、次回清掃の際には、新しいクリーニング用紙を給紙トレイ14にセットすれば、その新しいクリーニング用紙により、可動リブ46のインクを拭い取ることができる。よって、複合機10内部に予め設けられたクリーニング部材を繰り返し使用する場合に比較して、長期間、高い清掃効果が得られる。
また、可動リブ46を第2高さT2へ上昇させる際には、クリーニング用紙の搬送方向上流側を搬送ローラ60と押さえ部61とにより挟持させ、且つそのクリーニング用紙の搬送方向下流側を排紙ローラ62と拍車ローラ63とにより挟持させてから、可動リブ46を上昇させる。このようにすれば、クリーニング用紙が弛みなく張った状態で、可動リブ46がクリーニング用紙に押し付けられるので、高い清掃効果が得られる。
なお、本実施形態の複合機10によれば、可動リブ46を第2高さT2へ上昇させる際には、上昇した可動リブ46と記録ヘッド39との衝突を防止するために、記録ヘッド39を搭載したキャリッジ38を上昇させる。以下、記録ヘッド39を上昇させるための構成について説明する。
図9は、記録ヘッド39を搭載したキャリッジ38の外観構成を示す平面図である。図10(a)は、キャリッジ38のX−X断面図であり、図10(b)は、(a)に示す断面図の要部を拡大して示す要部拡大断面図である。図11(a)は、ギャップ調整部材88をスライド移動させたキャリッジ38の断面図であり、図10(a)に対応する図である。図11(b)は、(a)に示す断面図の要部を拡大して示す要部拡大断面図である。なお、図10、図11は、模式的な断面図であって、各部材の相対的な大小関係を必ずしも正確には図示していない。
図9および図10に示すように、キャリッジ38は、キャリッジ本体85と、ガイドフレーム43,44にそれぞれ摺接してキャリッジ本体85を所定高さに支持する摺動部材86と、摺動部材86を上方へ弾性付勢するコイルバネ87と、キャリッジ本体85と摺動部材86との間に介設されたギャップ調整部材88とを具備する。摺動部材86、コイルバネ87、ギャップ調整部材88は、ガイドフレーム43,44に対応して、キャリッジ本体85の記録用紙搬送方向両側にそれぞれ組み付けられているが、これらは同様の構成なので、以下、記録用紙搬送方向上流側の構成を例に説明する。
図10に示すように、摺動部材86は、摺接板89と、摺接板89から上方へ延出された足部90とを有する。足部90は、案内溝92を有しており、その案内溝92は、足部90の延出方向に形成され、足部90の延出端(図10の上側)に開口している。この案内溝92に、後述されるキャリッジ本体85の支持リブ98が嵌挿される。
図10に示すように、キャリッジ本体85には、摺動部材86の足部90が挿通される貫通孔97と、摺動部材86の案内溝92に嵌入される支持リブ98とが形成されている。この支持リブ98が、摺動部材86の案内溝92に嵌入されることにより、摺動部材86が、案内溝92に沿って上下動可能に支持される。
図9及び図10に示すように、ギャップ調整部材88は、細長棒状の平板であり、摺動部材86と支持リブ98との間に介設される。ギャップ調整部材88は、その肉厚(図10の上下方向)がギャップ調整部材88のスライド方向に3段階に変化されている。詳細には、最も薄肉の薄肉部99と、真ん中の中肉部101と、最も厚肉の厚肉部102とが、一方向に肉厚が段階的に変化するように隣接して形成されている。
ギャップ調整部材88には、薄肉部99,中肉部101,厚肉部102に渡って厚み方向に貫通する長孔103が、ギャップ調整部材88の短手方向の略中央に形成されている。この長孔103に足部90が貫通される。
そして、コイルバネ87の弾性付勢力が摺動部材86に作用し、摺動部材86は、支持リブ98が許容する上下動範囲内で最も上側に位置するように弾性付勢される。また、支持リブ98と摺動部材86の摺接板89との間には、ギャップ調整部材88が介設されているので、ギャップ調整部材88の肉厚分だけ、摺動部材86が弾性付勢力に反して下側へ移動される。換言すれば、摺動部材86に対し、キャリッジ本体85が上昇させられる。記録ヘッド39を搭載したキャリッジ38は、図10(a)に図示したように、キャリッジ本体85の摺動部材86により、ガイドフレーム43,44上の所定高さに支持されているので、摺動部材86に対しキャリッジ本体85を上昇させることにより、図11(a)に示すように、キャリッジ本体85は、ガイドフレーム43,44に対し上昇する。
図12は、キャリッジ38およびそれに搭載された記録ヘッド39を示す側面図であり、図面に向かって右側の図は、キャリッジ38の高さが3段階の真ん中の高さに設定されている状態を示し、図面に向かって左側の図は、キャリッジ38の高さが3段階の最大の高さに設定されている状態を示す図である。本実施形態では、通常画像形成時には、図12右側の図に示すように、キャリッジ38の高さが3段階の真ん中の高さに設定されているものとする。この3段階の真ん中の高さは、ギャップ調整部材88の中肉部101が、支持リブ98と摺動部材86の摺接板89との間に介在された状態である。
一方、上述した可動リブ46の清掃時には、図12左側の図に示すようにキャリッジ38の高さが3段階の最大高さに設定される。この3段階の最大の高さは、ギャップ調整部材88の厚肉部102が、支持リブ98と摺動部材86の摺接板39との間に介在された状態である。このようにすれば、記録ヘッド39の下面をプラテン42から遠ざけ、第2高さT2へ上昇させられた可動リブ46との衝突を防止することができる。なお、図12においては、ガイドフレーム43,44、および摺動部材86の図示は省略されている。
なお、図10を参照して説明したように、ギャップ調節部材88はキャリッジ38から外側へ突出しているので、制御部64は、キャリッジ38の高さを高くする場合には、キャリッジ38を移動させて、ギャップ調整部材88の端部を所定の当接部位に当接させることにより、ギャップ調整部材88をキャリッジ本体85に対して所望の位置へスライドさせ、キャリッジ38の高さを調節することができる。
図13は、複合機10の制御部64の構成を示すブロック図である。制御部64は、プリンタ部3のみでなくスキャナ部2も含む複合機10の全体動作を制御するものであるが、スキャナ部12は本発明の主要な構成ではないので詳細な説明は省略する。制御部64は、図に示すように、CPU(Central Processing Unit)65、ROM(Read Only Memory)66、RAM(Random Access Memory)67、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)68を主とするマイクロコンピュータとして構成されており、バス69を介してASIC(Application Specific Integrated Circuit)70に接続されている。
ROM66には、複合機10の各種動作を制御するためのプログラム等が格納されている。RAM67は、CPU65が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記録する記憶領域又は作業領域として使用される。また、EEPROM68には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
ASIC70は、CPU65からの指令に従い、LF(搬送)モータ71に通電する相励磁信号等を生成して、該信号をLFモータ71の駆動回路72に付与し、該駆動回路72を介して駆動信号をLFモータ71に通電することにより、LFモータ71の回転制御を行っている。
駆動回路72は、給紙ローラ25、搬送ローラ60、排紙ローラ62などに接続されたLFモータ71を駆動させるものであり、ASIC70からの出力信号を受けて、LFモータ71を回転するための電気信号を形成する。該電気信号を受けてLFモータ71が回転し、該LFモータ71の回転力がギアや駆動軸等からなる周知の駆動機構を介して、給紙ローラ25、搬送ローラ60、排紙ローラ62へ伝達される。
ASIC70は、CPU65からの指令に従い、CR(キャリッジ)モータ73に通電する相励磁信号等を生成して、該信号をCRモータ73の駆動回路74に付与し、該駆動回路74を介して駆動信号をCRモータ73に通電することにより、CRモータ73の回転制御を行っている。
駆動回路74は、上記キャリッジ38に接続されたCRモータ73を駆動させるものであり、ASIC70からの出力信号を受けて、CRモータ73を回転するための電気信号を形成する。該電気信号を受けてCRモータ73が回転し、該CRモータ73の回転力がキャリッジ38へ伝達されことによりキャリッジ38が往復動される。
駆動回路75は、記録ヘッド39から所定のタイミングでインクを記録用紙に対して選択的に吐出させるものであり、CPU65から出力される駆動制御手順に基づいてASIC70において生成された出力信号を受け、記録ヘッド39を駆動制御する。
ASIC70には、スキャナ部12や、複合機10の操作指示を行うための操作パネル20、各種小型メモリカードが挿入されるスロット部21、パソコン等の外部機器とパラレルケーブルやUSBケーブルを介してデータの送受信を行うためのパラレルインタフェース78及びUSBインタフェース79、上述したレジストセンサ26、用紙有無検知センサ27、可動リブ検知センサ1441等が接続されている。さらに、ファクシミリ機能を実現するためのNCU(Network Control Unit)80やモデム(MODEM)81が接続されている。
図14を参照して、上記のように構成された複合機10において実行される画像形成処理について説明する。図14は、複合機10により実行される画像形成処理を示したフローチャートである。この画像形成処理は、複合機10に対し画像形成すべき画像データが入力されると実行される処理である。
まず、可動リブ検知センサ1441(図13参照)からの出力に従って、可動リブ46が上昇位置にあるか否か、すなわち高さT2にあるか否かを判断する(S2)。可動リブ46が上昇位置(第2高さT2)にある場合(S2:Yes)、可動リブ46を第1高さT1へ下降させてから(S4)、給紙ローラ25により、給紙トレイ14の記録用紙を記録ヘッド39下方へ給紙する(S6)。
このように、可動リブ46が第2高さT2にあると判断される場合は、記録用紙の給紙を禁止することにより、可動リブ46に記録用紙が当接して用紙ジャム(用紙詰まり)が発生することを抑制することができる。
一方、可動リブ46が上昇位置にない場合、すなわち第1高さT1にある場合(S2:No)、S4の処理をスキップし、給紙トレイ14の記録用紙を給紙する(S6)。
次に、記録ヘッド39によりインクを吐出し画像形成(印刷)を行う(S8)。なお、S8のステップにおいては、上述のように、記録ヘッド39は、インク滴をプラテン42側に吐出すると共に、記録ヘッド39が搭載されたキャリッジ38が往復移動(走査)されることにより、プラテン42上の記録用紙に画像記録が行われる。そして、搬送ローラ60および排紙ローラ62は、LFモータ71(図13参照)により駆動され、記録用紙を所定の改行幅で間欠的に送る。さらに、可動リブ46を駆動機構51により駆動して、可動リブ46を搬送される記録用紙に追従して移動させる。
次に、レジストセンサ26(図2参照)によって記録用紙の搬送方向先端を検出してからその記録用紙の搬送方向後端を検出するまでのLFモータ71(図13参照)の回転量に従って、画像形成を行った記録用紙のサイズを検出する(S10)。
次に、実際に画像形成を行った記録用紙が、入力された画像データに基づいて形成しようとした画像のサイズよりも小であるか否かを判断する(S12)。実際に画像形成を行った記録用紙が、入力された画像データに基づいて形成しようとした画像のサイズ以上である場合(S12:No)、インクのはみ出しはなかったものと判断できるから、そのまま画像形成処理を終了する。
一方、実際に画像形成を行った記録用紙が、入力された画像データに基づいて形成しようとした画像のサイズより小である場合(S12:Yes)、すなわち、記録ヘッド39から吐出されるインクにより形成する画像のサイズに対し、画像形成対象の記録用紙のサイズが不適合であると判断される場合、吐出されたインクが記録用紙からはみ出し、プラテン42上に付着していると判断できる。
よって、操作パネル20の液晶表示部に、プラテン42が汚れた旨を表示し、ユーザに報知すると共に(S14)、入力された画像データに基づいて形成しようとした画像のサイズの記録用紙を、給紙トレイ14にセットするよう案内する(S16)。ユーザによりセットされる記録用紙は、クリーニング用紙として、可動リブ46に付着したインクの拭き取りに用いられることとなる。ここで、インクの汚れは、形成しようとした画像の範囲内であって、先に搬送された記録用紙からはみ出た部分に集中していることが予想されるから、その範囲内でインクの拭き取りを行えるよう、形成しようとした画像のサイズの記録用紙をクリーニング用紙としてセットするようにユーザに促すのである。
次に、クリーニング用紙が給紙トレイ14にセットされたか否かを、用紙有無検知センサ27からの出力に基づいて判断する(S18)。S18の判断が否定される場合(S18:No)、すなわち、給紙トレイ14に1枚も記録用紙がセットされていない場合、次回の画像形成時に記録用紙下面が汚れる危険がある旨の警告を、操作パネル20の液晶表示部に表示し(S20)、処理を終了する。
一方、S18の判断が肯定される場合(S18:Yes)、可動リブ46を清掃するクリーニング処理(S22)を実行し、処理を終了する。クリーニング処理については、図15を参照して後述する。
画像形成処理によれば、画像形成対象の記録用紙のサイズが不適合であると判断された場合に、クリーニング処理(S22)が実行されるので、可動リブ46がインクで汚れる場合には、自動で清掃が行われ、可動リブ46がインク汚れの少ない清潔な状態に保たれる。
図15は、複合機10において実行されるクリーニング処理(S22)を示すフローチャートである。クリーニング処理(S22)では、まず、キャリッジ38の高さを、上述したギャップ調整部材88により調整して高くし、記録ヘッド39とプラテン42とのギャップを大とすることにより、記録ヘッド39を上方へ待避させる(S24)。
次に、給紙トレイ14にセットされたクリーニング用紙を、給紙ローラ25により給紙する(S26)。そして、そのクリーニング用紙の搬送方向先端が、排紙ローラ62と拍車ローラ63との間で挟持されるまで、クリーニング用紙を搬送する(S27)。
そして、クリーニング用紙の一端が排紙ローラ62と拍車ローラ63とで挟持され、且つその他端側が搬送ローラ60と押さえ部61とで挟持された状態で、可動リブ46を第2保持部144(図8参照)まで移動させることにより、第2高さT2へ上昇させる(S28)。このように、搬送ローラ60と排紙ローラ62との間において撓み無く張り渡された記録用紙の下方から、可動リブ46を上昇させることにより、記録用紙下面に可動リブ46を押し付けることができる。
そして、クリーニング用紙を搬送する(S30)。これにより、可動リブ46に付着したインクがクリーニング用紙によって拭い取られる。そして、可動リブ46を第1高さT1へ下降させ(S32)、クリーニング用紙を排紙トレイ15へ排紙する(S34)。次に、キャリッジ38の高さをギャップ調整部材88により調整し、記録ヘッド39を待避位置から通常位置へ戻し(S36)、処理を終了する。
本実施形態の複合機10によれば、可動リブ46を上昇させることにより、可動リブ46とクリーニング用紙下面とを確実に接触させた状態で、クリーニング用紙を搬送させるので、可動リブ46に付着したインクがクリーニング用紙下面に転写され、可動リブ46を清掃することができる。また、インクの拭き取りに用いられるクリーニング用紙を給紙トレイ14にセットするという簡単な作業により、常にきれいな面で可動リブ46の拭き取りを行うことができるので、装置内部にクリーニング用の部材を設ける場合に比較して、長期間、高い清掃効果が得られる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上述した実施形態では、画像形成対象の記録用紙のサイズが不適合である場合に、クリーニング処理(S22)を実行するものとして説明した。これに替えて、所定時間毎に自動的にクリーニング処理(S22)を実行するように構成しても良い。
図16は、第1変形例の複合機10において実行される、自動クリーニング実行処理を示すフローチャートである。この自動クリーニング実行処理は、複合機10の電源が起動されると、実行される処理である。
まず、可動リブ46の定期的な清掃の実行がユーザによって設定されているか否かを確認する(S40)。定期的な清掃の実行が設定されていない場合(S40:No)、自動クリーニング実行処理を終了する。
一方、可動リブ46の定期的な清掃の実行がユーザによって設定されている場合(S40:Yes)、次に、前回のクリーニング処理(S22)の実行時から、所定時間(例えば24時間)経過したか否かを判断する(S42)。所定時間が経過していない場合(S42:No)、処理を待機する。
一方、前回のクリーニング処理(S22)の実行時から所定時間を経過した場合(S42:Yes)、クリーニング処理(S22、図15参照)を実行し、処理を終了する。
自動クリーニング実行処理によれば、定期的かつ自動的にクリーニング処理(S22)が実行されるので、ユーザに手間をかけさせることなく、また、可動リブ46が常にきれいな状態に保たれ、可動リブ46の汚れが記録用紙の裏面を汚すことを抑制できる。なお、予め設定した時刻になったとき、あるいは、ユーザからの指示があったときに、クリーニング処理(S22)を実行するように構成しても良い。また、クリーニング処理(S22)の実行前に、クリーニング用紙とすべき記録用紙が給紙トレイ14にセットされているか否かを判断し、記録用紙がある場合のみ、クリーニング処理(S22)を実行するように構成しても良い。
また、上述した実施形態によれば、可動リブ46を第2高さT2へ上昇させるための第2保持部144は、画像形成対象の記録用紙に追従して可動リブ46がスライドする範囲外に設けられていた。しかしながら、例えば、可動リブ46を上昇させる機構を、記録用紙に追従して可動リブ46がスライドする範囲内に設けても良い。
図17は、第2変形例のプラテン42の断面を示す模式図である。この変形例においては、プラテン42に、可動リブ46を下方に向けて付勢するバネなどの弾性部材171と、可動リブ46を昇降させる上下駆動部材172と、可動リブ46の上方向への移動を規制する上側ストッパ173と、可動リブ46の下方向への移動を規制する下側ストッパ174とが設けられている。なお、図17は、模式図であるため、各部材の形状、大小関係を正確には図示していない。
図17(a)は、画像形成時における可動リブ46の配置を示している。図17(a)に示すように、画像形成時には、可動リブ46は弾性部材171に付勢されてその下面が下側ストッパ174に当接する。このときの可動リブ46は、搬送ローラ60による挟持高さ及び排紙ローラ62による挟持高さと同じ高さに、記録用紙を支持することとなるが、このときの可動リブ46の高さが、実施形態の第1高さT1に相当する。
図17(b)は、クリーニング処理実行時において上昇された可動リブ46の配置を示している。可動リブ46は、ソレノイドまたはカムで構成された上下駆動部材172によって、上側ストッパ173に当接するまで上昇させられる。このときの可動リブ46の高さが、実施形態の第2高さT2に相当し、可動リブ46は、搬送ローラ60による挟持高さ及び排紙ローラ62による挟持高さよりも高い高さまで上昇し、可動リブ46が記録用紙に対し押し付けられることとなる。よって、この状態で記録用紙を搬送することにより、上述した実施形態と同様に、高い清掃効果が得られると共に、フレーム41の搬送方向長さを小型化することができる。
また、上述した実施形態では、可動リブ46の薄肉板状部材53の形状が山状であるものとして説明したが、図17に示すように、台形状など他の形状であっても良い。
さらに、可動リブ46を回動させる機構を備えるものであっても良い。記録用紙に可動リブ46を接触させた状態で、その可動リブ46を回動させることにより、より高い清掃効果が得られる。
図18は、第3変形例のプラテン42を示す図であり、図6に相当する図である。変形例のプラテン42のフレーム41には、図18に示すように、第2保持部144の搬送方向下流側に隣接する傾斜面である第3保持部146が設けられている。この第3保持部146が回動手段の一例である。可動リブ46が第2保持部144から第3保持部146に移動させられることにより、可動リブ46が傾き(回動し)、可動リブ46の傾斜部532が記録用紙に接触させられる。よって、傾斜部532に付着したインクも、簡単な構成で清掃することができる。
また、上述した実施形態では、クリーニング処理(S22)において、可動リブ46を上昇させる際には、それに先んじて、記録ヘッド39を上方へ待避させていたが、これに替えて、記録ヘッド39をメンテナンスユニット48が設けられた位置へ待避させるように構成しても良い。このようにしても、記録ヘッド39と可動リブ46との衝突を防止することができる。