JP4780594B2 - 建設構造物の補強材、強化建設構造物、及び、建設構造物の補強工法 - Google Patents

建設構造物の補強材、強化建設構造物、及び、建設構造物の補強工法 Download PDF

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Description

本発明は、主に、建設構造物の補強材、強化建設構造物、及び、建設構造物の補強工法に関する。
コンクリート、鉄鋼、木材等の建設材で造られた構造物は、腐食、塩害、温度変化、湿気、水圧、荷重等の様々な原因により経過年数とともにその強度を失い、やがて、亀裂、歪み、崩壊、崩落、破裂等の欠陥を生じる。
現在、強度が低下した構造物を補強する主な方法として、溶接による方法、高力ボルトや添接板等の治具で建設材を拘束する方法、補強を必要とする建設材の部分にシート、プレート、ネット等の形状の補強材を接着する方法がとられている。
しかしながら、溶接による方法及び治具で建設材を拘束する方法は、特別な技術や大掛かりな足場を必要とするといった欠点を有する。また溶接は、コンクリート、石材、木材の補強方法としては不適当である。
補強材を接着する方法は、特別な技術や大掛かりな足場を必要としないため簡便且つ経済的な方法であるが、その一方で、接着剤層の付着端に高いせん断応力(はく離せん断応力)が生じると付加材層がはく離するという問題を抱えている。
一方、現在、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、鋼繊維、鋼、樹脂等を材料とするシートやプレート等が補強材として広く使用されている。
現在、単層構造の補強材が主流であるが、複数の材料からなる積層構造の補強材も幾つか報告されている(特許文献1、非特許文献1)。
例えば、特許文献1には、コンクリート構造物補修・補強用一方向強化繊維材を所定枚数積層した構造が開示されている。しかしながら、特許文献1には、接着剤層の付着端のはく離せん断応力を低減させる構造については示唆されていない。
また、非特許文献1には、複数の炭素繊維シートが積層された構造が記載されている。しかしながら、この構造では、接着剤層の付着端に生じるはく離せん断応力の低減が不十分であり、接着剤層の付着端から炭素繊維シートのはく離が起こる(非特許文献1)。
特開平9−67943号公報 炭素繊維シートによる鋼板応力の低下とはく離せん断応力、大倉・福井・中村・松上、土木学会論文集 No.689/I−57,239−249,2001.10
本発明は、母材からはく離しにくい新規補強材を提供することを課題とする。
本発明者らは、母材からはく離しにくい新規補強材を求めて鋭意研究を重ねた結果、付加材層と挿入材層とが接着剤層を介して積層された構造を有する補強材において、付加材層の剛性に対する挿入材層の剛性の比を0.5以下とすることにより、挿入材層を積層させない場合或いは付加材層の剛性に対する挿入材層の剛性の比が0.5より大きい場合と比べて、補強材が母材からはく離しにくくなることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の事項に関する。
項1.
付加材層3、挿入材層4、及び接着剤層5を有し、
付加材層3と挿入材層4とが接着剤層5を介して積層され、且つ、
付加材層3の剛性に対する挿入材層4の剛性の比が0.5以下である、
建設構造物の補強材。
項2.
付加材層3の剛性に対する挿入材層4の剛性の比が0.4以下である、項1に記載の建設構造物の補強材。
項3.
付加材層3の剛性に対する挿入材層4の剛性の比が0.3以下である、項1に記載の建設構造物の補強材。
項4.
付加材層3の剛性に対する挿入材層4の剛性の比が0.2以下である、項1に記載の建設構造物の補強材。
項5.
付加材層3が炭素繊維プレート又は炭素繊維シートであり、挿入材層4がガラス繊維シート又はアラミド繊維シートである、項1に記載の補強材。
項6.
付加材及び/又は挿入材の表面に接着剤を塗布するか又は含浸させる工程、
接着剤を塗布するか又は含浸させた付加材と挿入材とを重ね合わせる工程、並びに、
接着剤を硬化させる工程、
を包含する、項1に記載の補強材の製造方法。
項7.
所定の間隙を介して付加材及び挿入材を配置する工程、
間隙に接着剤を充填し、付加材及び挿入材に接着剤を含浸させる工程、並びに、
接着剤を硬化させる工程
を包含する、項1に記載の補強材の製造方法。
項8.
項1に記載の補強材の挿入材層4に、接着剤層2が接着されている、建設構造物の接着剤層2付き補強材。
項9.
項1に記載の補強材、接着剤層2、及び母材1を有し、
補強材の挿入材層4と母材1とが接着剤層2を介して接着されている、強化建設構造物。
項10.
下記工程(I)〜(III)からなる群より選択される少なくとも1つの工程を包含する、建設構造物の補強工法:
(I)建設構造物の母材1に挿入材層4を接着し、さらに、該挿入材層4に付加材層3を接着する工程、
(II)建設構造物の母材1に、項1に記載の補強材の挿入材層4を接着する工程、又は、
(III)建設構造物の母材1に、項8に記載の接着剤層2付き補強材を貼付する工程。
項11.項1に記載の補強材と母材1とが接着剤層2を介して接着されるとき、下記式を満足する、建設構造物の補強材:
Figure 0004780594
ここで、
Figure 0004780594
σ0は、付加材層3が接着されていない位置における母材1に生じる応力であり、
1は、母材1のヤング率であり、
1は、母材1の厚さであり(ただし、付加材を両面に有している場合のt1は母材1の厚さであり、付加材を片面に有している場合のt1は母材1の厚さ×2である)、
3は、付加材層3のヤング率であり、
3は、付加材層3の片側厚さであり、
4は、挿入材層4のヤング率であり、
4は、挿入材層4の片側厚さであり、
2は、接着剤層2のせん断弾性係数であり、
2は、接着剤層2の片側厚さであり、
5は、接着剤層5のせん断弾性係数であり、
5は、接着剤層5の片側厚さであり、
21は、接着剤層2と母材1との界面の引張せん断接着強さ及び接着剤層2と挿入材層4との界面の引張せん断接着強さのうち、小さい方の値を表し、
51は、接着剤層5と挿入材層4との界面の引張せん断接着強さ及び接着剤層5と付加材層3との界面の引張せん断接着強さのうち、小さい方の値を表す。
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の補強材は、付加材、挿入材、及び、該付加材と該挿入材とを接着する接着剤から構成される。
付加材としては、特に限定されないが、建設構造物の補強に通常使用される材料、例えば、繊維を原料とする織物、編物、又は不織布をマトリックス高分子で硬化させたもの、繊維をマトリックス高分子中に分散させたもの、金属、樹脂が使用され、特に、繊維を原料とする織物、編物、又は不織布をマトリックス高分子で硬化させたものが好適に使用され得る。
繊維としては、無機繊維、有機繊維、金属繊維等の繊維が好適に使用され得、例えば、炭素繊維(CF)、ガラス繊維(GF)、アラミド繊維(ArF)、ポリアリレート繊維、高強度ポリエチレン繊維、ポリアセタール繊維、アルミナ繊維(AF)、炭化ケイ素繊維(SiCF)、チラノ繊維、ボロン繊維、アモルファス金属繊維、ステンレス繊維、又は、これらの組み合わせからなる群より選択される繊維が挙げられる。特に、炭素繊維及びアラミド繊維は、高強度、高剛性である点において優れている。必要に応じて、繊維を互いに絡ませたり、束状に集束させたり、糸状に撚ったりしてもよい。
繊維は常法により製造される。例えば、炭素繊維は、次のような方法により製造することができる:アクリロニトリル、コモノマー及び溶剤を触媒の存在下で重合させて得られた紡糸原液を、紡糸、水洗、後処理し、プリカーサーを得る。得られたプリカーサーを、通常200〜350℃の空気中で耐炎化させ、次いで1000〜1500℃の不活性ガス中で炭素化し、さらに表面処理やサイジング処理を施すことにより、炭素繊維を得ることができる。ガラス繊維は、短繊維の場合と長繊維の場合とで多少異なる、以下のような方法により製造することができる:短繊維のガラス繊維は、溶融ガラスを、多数の***(通常0.5〜0.7mm直径)のあいた短繊維紡糸装置中に入れ、約1000rpm以上の回転速度で遠心し、綿あめのように吹き飛ばすことにより得ることができる。長繊維のガラス繊維は、主として、長繊維紡糸装置中で溶融ガラスを冷却しないで直接細孔のあいたブッシングに導き、繊維化する方法(Direct Melt法)により製造することができる。
この他にも各種繊維の製造方法について、本書においてその全体が援用される「繊維便覧 第2版、繊維学会編、平成6年3月25日発行」を参照することができる。
市販の繊維を用いることもできる。例えば、炭素繊維としてパイロメックス(帝人テクノプロダクツ株式会社)、ガラス繊維としてガラスクロス(ユニチカグラスファイバー株式会社)又はガラスクロス(カネボウ株式会社)、アラミド繊維としてトワロン,テクノーラ,コーネックス(帝人テクノプロダクツ株式会社)又はKEVLAR(東レ・デュポン株式会社)等を好適に用いることができる。
織物は、常法により成形され得、例えば、たて糸を並列し、これと互い違いに交錯するようによこ糸を挿入することにより成形され得る。編物は、常法により成形され得、例えば、編針で糸のループを作り、これを既成のループに通す操作を繰り返して、ループを連結することにより形成され得る。不織布は、常法により成形され得、例えば、積層した繊維を縮充、ニードルパンチ、水流パンチなどにより絡ませることにより、或いは、積層した繊維を融着することにより成形され得る。これら以外の方法により織物、編物、又は不織布を成形してもよい。織物、編物、又は不織布の製造方法については、本書においてその全体が援用される「繊維便覧 第2版、繊維学会編、平成6年3月25日発行」を参照することができる。
マトリックス高分子としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が使用され得る。特に、成形性及び耐熱性に優れるエポキシ樹脂等が好ましい。マトリックス高分子には、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、希釈剤等が添加される。
付加材は、繊維の織物、編物又は不織布にマトリックス高分子を塗布するか又は含浸させ、マトリックス高分子を硬化させることにより、或いは、繊維とともにマトリックス高分子を混ぜ込んで織物、編物又は不織布を成形し、マトリックス高分子を硬化させることにより、得ることができる。
付加材として繊維をマトリックス高分子中に分散させたものを用いる場合、例えば、前述の繊維を前述のマトリックス高分子中に常法により分散させたものを用いることができる。付加材として繊維をマトリックス高分子中に分散させたものの製造方法については、本書においてその全体が援用される「繊維便覧 第2版、繊維学会編、平成6年3月25日発行」を参照することができる。
付加材として金属又は樹脂を用いる場合、金属としては、例えば、鋼、ステンレス鋼、樹脂としては、前述のマトリックス高分子を硬化させたものを好適に使用することができる。
付加材の形状は、特に限定されないが、例えば、フィルム(0.05mm未満の厚さを有する)、シート(0.05mm以上、1mm未満の厚さを有する)、プレート(1mm以上の厚さを有する)であり、好ましくはシート又はプレートである。
本発明の好ましい実施形態において、付加材は、炭素繊維プレート、炭素繊維シート、アラミド繊維プレート、アラミド繊維シートである。
市販されている繊維製品、例えば、炭素繊維プレートとして炭素繊維トウプレート(日鉄コンポジット株式会社)又はトレカラミネート(東レ株式会社)、炭素繊維シートとして炭素繊維トウシート(日鉄コンポジット株式会社)、トレカクロス(東レ株式会社)、リペラーク(三菱化学産資株式会社)又はTUクロス(新日本石油株式会社)、アラミド繊維プレートとしてアラミド繊維トウプレート(日鉄コンポジット株式会社製)、アラミド繊維シートとしてアラミド繊維トウシート(日鉄コンポジット株式会社製)又はフィブラシート(ファイベックス株式会社)等も付加材として好適に用いることができる。
付加材層は、複数枚の付加材が接着剤を介して積層されたものであってもよい。このとき、各付加材の種類や形状は、同じであってもよいし、異なってもよい。また、付加材同士の接着に使用される接着剤としては、特に限定されないが、後述する付加材と挿入材との接着に用いられる接着剤が好適に使用され得る。
挿入材としては、特に限定されないが、建設構造物の分野において通常使用される材料、例えば、繊維を原料とする織物、編物、又は不織布をマトリックス高分子で硬化させたもの、繊維をマトリックス高分子中に分散させたもの、金属、樹脂が使用され、特に、繊維を原料とする織物、編物、又は不織布をマトリックス高分子で硬化させたものが好適に使用され得る。
繊維の具体例としては、無機繊維、有機繊維、金属繊維等の繊維が好適に使用され、例えば、炭素繊維(CF)、ガラス繊維(GF)、アラミド繊維(ArF)、ポリアリレート繊維、高強度ポリエチレン繊維、ポリアセタール繊維、アルミナ繊維(AF)、炭化ケイ素繊維(SiCF)、チラノ繊維、ボロン繊維、アモルファス金属繊維、ステンレス繊維、又は、これらの組み合わせからなる群より選択される繊維が挙げられる。必要に応じて、繊維を互いに絡ませたり、束状に集束させたり、糸状に撚ったりしてもよい。
繊維は前述の方法により製造される。市販品を用いる場合には、前述の市販の繊維を用いることができる。
織物、編物、又は不織布は、前述の方法により成形することができる。
マトリックス高分子としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が使用され得る。特に、成形性及び耐熱性に優れるエポキシ樹脂等が好ましい。マトリックス高分子には、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、希釈剤等が添加される。
挿入材は、繊維の織物、編物又は不織布にマトリックス高分子を塗布するか又は含浸させ、マトリックス高分子を硬化させることにより、或いは、繊維とともにマトリックス高分子を混ぜ込んで織物、編物又は不織布を成形し、マトリックス高分子を硬化させることにより、得ることができる。
挿入材として繊維をマトリックス高分子中に分散させたものを用いる場合、例えば、前述の繊維を前述のマトリックス高分子中に常法により分散させたものを用いることができる。
挿入材として金属又は樹脂を用いる場合、金属としては、例えば、鋼、ステンレス鋼樹脂としては、前述のマトリックス高分子を硬化させたものを好適に使用することができる。
挿入材の形状は、特に限定されないが、例えば、フィルム(0.05mm未満の厚さを有する)、シート(0.05mm以上、1mm未満の厚さを有する)、プレート(1mm以上の厚さを有する)であり、好ましくはフィルム又はシートである。
本発明の好ましい実施形態において、挿入材は、ガラス繊維シート、ガラス繊維フィルム、アラミド繊維シート、又はアラミド繊維フィルムである。
市販されている繊維製品、例えば、ガラス繊維シートとしてガラス繊維トウシート(日鉄コンポジット株式会社製)、アラミド繊維シートとしてアラミド繊維トウシート(日鉄コンポジット株式会社製)又はフィブラシート(ファイベックス株式会社)等も挿入材として用いることができる。
挿入材層は、複数枚の挿入材が接着剤を介して積層されたものであってもよい。このとき、各挿入材の種類や形状は、同じであってもよいし、異なってもよい。また、挿入材同士の接着に使用される接着剤としては、特に限定されないが、後述する付加材と挿入材との接着に用いられる接着剤が好適に例示される。
挿入材層4の剛性は、付加材層3の剛性の約0.5倍以下、好ましくは約0.4倍以下、より好ましくは約0.3倍以下、さらに好ましくは約0.2倍以下である。言い換えると、付加材層3の剛性に対する挿入材層4の剛性の比は、約0.5以下、好ましくは約0.4以下、より好ましくは約0.3以下、さらに好ましくは約0.2以下である。
このような範囲の剛性を有する挿入材層4を付加材層3と母材1との間に存在させることにより、このような範囲の剛性を有さない挿入材層4を付加材層3と母材1との間に存在させる場合或いは挿入材層4を存在させない場合と比べて、補強材が母材からはく離しにくく、より長い間又はより大きなはく離荷重に対して母材を補強することができる。
なお、挿入材層4が、複数枚の挿入材が接着剤を介して積層されたものである場合、挿入材の積層体全体の剛性を、挿入材層4の剛性とする。また、付加材層3が、複数枚の付加材が接着剤を介して積層されたものである場合、付加材の積層体全体の剛性を、付加材層3の剛性とする。
また、挿入材層4が、複数枚の挿入材が接着剤を介して積層されたものである場合、及び/又は、付加材層3が、複数枚の付加材が接着剤を介して積層されたものである場合、挿入材層4に最も近い付加材と、付加材層3に最も近い挿入材との間の接着剤層を接着剤層5とする。
また、本発明では、前述のような範囲の剛性を有する挿入材層4を、付加材層3と母材1との間に介在させることにより、挿入材層4を介在させない場合と比べて、より高い剛性の付加材層3を用いることができるため、母材をより強固に補強することができる。
付加材と挿入材との形状の組み合わせとしては、好ましくは、挿入材がフィルムであるとき、付加材はシート又はプレートであり、挿入材がシートであるとき、付加材はシート又はプレートであり、挿入材がプレートであるとき、付加材はプレートである。言いかえると、付加材と挿入材との形状の組み合わせとしては、好ましくは、付加材がプレートであるとき、挿入材はプレート、シート又はフィルムであり、付加材がシートであるとき、挿入材はシート又はフィルムである。
付加材と挿入材との繊維原料の組み合わせとしては、好ましくは、挿入材がガラス繊維又はアラミド繊維であるとき、付加材は炭素繊維である。
本発明において使用される付加材と挿入材との好ましい組み合わせの例を、下記の表1に示す。
Figure 0004780594
本発明の補強材は、前述の付加材と挿入材とを接着剤により接着させることにより得られる。
付加材と挿入材との接着に使用され、接着剤層5を形成する接着剤としては、特に限定されないが、合成樹脂又は天然樹脂を主成分とし、これに硬化剤、硬化促進剤、希釈剤、可塑剤、充填材等を適当に配合した接着剤を好適に使用することができる。主成分となる樹脂としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル(酸)樹脂、シリコン樹脂、酢酸ビニル樹脂又は酢酸ビニル共重合樹脂等の硬化性又は可塑性樹脂が使用され得、その中でも特に、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂が好適に使用され得る。接着剤は、製造や施工時の取扱い易さの点において、約5℃〜約45℃の温度で数日以内に硬化するものが好ましい。また、かかる接着剤は、所望の厚さの接着剤層をもたらす量で使用される。接着剤の量は、試験片を用いて、単位面積当たりどれくらいの量の接着剤を適用すれば硬化後の接着剤層が所望の厚さになるかを確認した上で決定することが望ましい。
エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールAの低分子量ジグリシジルエーテルとジアミンを反応させて得られる重合体、又は、オレフィンを過酢酸で酸化して得られる重合体が挙げられる。アクリル(酸)樹脂の例としては、アクリル酸エステル(例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルへキシル)の重合体が挙げられる。ウレタン樹脂の例としては、ジイソシアネートとジオールとを反応させて得られるウレタン結合を主体とする重合体が挙げられる。
付加材と挿入材との接着は、常法、例えば、前述の接着剤を含浸させた又は塗布した挿入材に付加材を重ね合わせ、接着剤を硬化させる方法、前述の接着剤を含浸させた又は塗布した付加材に挿入材を重ね合わせ、接着剤を硬化させる方法、或いは、予め所定の間隙を介して付加材と挿入材を固定しておいてから、付加材と挿入材との間隙に接着剤を充填し、接着剤を硬化させる方法により行われ得る。また、接着剤に熱硬化性樹脂、UV照射性樹脂等の熱、UV等により物性が変化して硬化する接着剤を使用する場合は、必要に応じて、温風を吹き付ける、UVを照射する等の処理を施す。更に、脱泡、送風乾燥などを行ってもよい。接着剤及び接着技術については、本書においてその全体が援用される「接着ハンドブック(第3版)、日本接着学会編、1996年6月28日発行」を参照することができる。
本発明の補強材は、さらに、必要に応じてコーティング処理される。コーティング処理に使用されるコーティング剤としては、光(UV、可視光)遮断剤、防カビ剤、防藻剤、防サビ剤、難燃剤、顔料、着色料、色素、光沢剤、耐水性物質等の表面特性を改善する物質を含有する樹脂(例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等のコーティング剤に通常使用される樹脂)、ガラスが挙げられる。コーティングは、吹付け、ローラー塗り、刷毛塗り等の常法によってコーティング剤を補強材の表面へ塗布することにより行われ得る。
このようにして、付加材層3と挿入材層4とが接着剤層5を介して積層された構造を有する本発明の構造物が得られる。本発明の構造物は、付加材層3と挿入材層4とが接着剤層5を介して積層された構造を部分的に有してもよいし、全体的に有してもよい。
本発明の補強材は、補強が望まれる母材1へ接着される。このとき、補強材は、母材1の全体に接着されてもよいし、母材1の一部に接着されてもよい。
本発明の補強材と母材1との接着は、補強材の挿入材層4と母材1とを適当な接着剤で接着することによって行われる。補強材と母材1との接着は、常法、例えば、接着剤を含浸させた又は塗布した母材1に補強材を重ね合わせ、接着剤を硬化させる方法、接着剤を含浸させた又は塗布した補強材を母材1に重ね合わせ、接着剤を硬化させる方法、或いは、予め所定の間隙を介して母材1に補強材の挿入材層4を固定しておいてから、母材1と挿入材層4との間隙に接着剤を充填し、接着剤を硬化させる方法により行われ得る。接着後、必要に応じて、圧着、光(UV、可視光)照射、脱泡、仕上げ処理(表面コーティング等)、送風乾燥、などを行ってもよい。
本発明の補強材の挿入材層4と母材1との接着に使用され、接着剤層2を形成する接着剤としては、特に限定されないが、例えば、前述の付加材と挿入材との接着に使用される接着剤が例示される。補強材と母材1との接着に使用される接着剤は、母材1の種類、挿入材の種類、環境条件等により、適宜選択され得る。例えば、母材1がコンクリートである場合、接着剤としては、エポキシ樹脂、アクリル(酸)樹脂、酢酸ビニル樹脂、及び、酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂が好適に使用され得るが、これらに限定されない。母材1が鉄鋼である場合、接着剤としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル(酸)樹脂、及び、酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂が好適に使用され得るが、これらに限定されない。エポキシ樹脂は、接着力が大きく、強靭であり、耐薬品性が高く、寸法安定性に優れるなどの利点を有し、また、低粘度液状品から高粘度パテ状品まで調製できる点、種々の材料からなる母材に対して適用可能である点においても優れている。アクリル樹脂は、軽量であり、強靭であり、耐候性が高く、耐光性が高いなどの利点を有し、また、取扱いが容易な水系エマルジョンに調製可能な点においても優れている。接着剤は、製造や施工時の取扱い易さの点において、約5℃〜約45℃の温度で数日以内に硬化するものが好ましい。接着剤及び接着技術については、本書においてその全体が援用される「接着ハンドブック(第3版)、日本接着学会編、1996年6月28日発行」を参照することができる。
接着剤層2と接着剤層5の組み合わせは、接着剤層2及び接着剤層5に関する無次元パラメーターDの値によって選定される。無次元パラメーターDは、現実的には約0.5〜4.0の範囲をとり得るが、同程度の物性及び厚みを有する接着剤層2及び接着剤層5が好適に使用されるため、多くの場合約0.7〜1.4、より多くの場合0.9〜1.1、しばしば約1.0である。ここで、D=h52/(h25)であり、G2は接着剤層2のせん断弾性係数、h2は接着剤層2の片側厚さ、G5は接着剤層5のせん断弾性係数、h5は接着剤層5の片側厚さである。
母材1としては、建設構造物に使用される物質であれば特に限定されないが、例えば、コンクリート、鉄鋼、アルミニウム、木材、石材、モルタル、レンガ、タイルが挙げられ、特に好ましくはコンクリート及び鉄鋼である。
本発明の適用対象となる建設構造物としては、補強を必要とするあらゆる建築施設及び土木施設、そのユニット並びにその部材が含まれ、例えば、橋梁(河川、海水面、湖水面、谷、道路、鉄道等と立体的に交差する構造物)或いはそれらのユニット又は部材(例えば、橋板、橋脚、橋柱、橋架、橋床、橋台、橋杭、橋塔)、トンネル(山腹、河底、海底、湖底、地下に貫かれた通路)或いはそれらのユニット又は部材(例えば、内壁、出入口の壁)、建築物(屋根及び柱又は壁を有する構造物)(例えば、ビル、高層ビル、家屋、畜舎)或いはそれらのユニット又は部材(柱、梁、屋根、外壁、内壁、床、天井、塀等)、或いは、道路、井戸、ダム、煙突、塔、像、記念碑、標識、門、塀、堤防或いはそれらのユニット又は部材が含まれるが、これらに限定されない。
本発明は、また、補強材の製造方法にも関する。
具体的には、本発明は、付加材及び/又は挿入材の表面に接着剤を塗布するか又は含浸させる工程、接着剤を塗布するか又は含浸させた付加材と挿入材とを重ね合わせる工程、並びに、接着剤を硬化させる工程を包含する補強材の製造方法を提供する。
本発明は、別の製造方法として、所定の間隙を介して付加材及び挿入材を配置する工程、間隙に接着剤を充填し、付加材及び挿入材に接着剤を含浸させる工程、並びに、接着剤を硬化させる工程を包含する補強材の製造方法を提供する。ここで、複数枚の付加材を用いる場合には、配置工程において、予め付加材同士を接着させたものを配置してもよいし、各々の付加材を所定の間隙を介して配置してもよい。複数枚の挿入材を用いる場合には、配置工程において、予め挿入材同士を接着させたものを配置してもよいし、各々の挿入材を所定の間隙を介して配置してもよい。
本発明は、さらに、接着剤層2付き補強材にも関する。
本発明の接着剤層2付き補強材は、本発明の補強材の挿入材層4に接着剤を含浸させる又は塗布することにより製造され得、挿入材層4に接着剤層2が積層された構造を有する。本発明の接着剤層2付き補強材は、さらに、接着剤層2の表面に剥ぎ取り可能なはく離材を有してもよい。はく離材(例えば、はく離フィルム又はシート)は、接着剤層2付き補強材が使用されるまでの一時的な支持体であり、接着剤層2の乾燥や汚れを防ぎ、接着性を維持する役割を果たす。はく離材としては、はく離可能である限り特に限定されないが、例えば、はく離紙(例えば、樹脂ラミネート加工を施した紙)が使用され得る。
接着剤層2付き補強材に使用される接着剤としては、特に限定されず、上記の補強材の挿入材層4と母材1との接着に使用される接着剤が例示される。接着剤層2付き補強材は、接着剤層2をはく離材でシールした状態で長期保存される可能性が高いので、このような長期保存に耐え得るよう、長期の形状安定性に優れ、はく離材に対して耐性が高いことが望ましい。また、施工時の作業性の観点から、約5℃〜約45℃の温度で数日以内に硬化する接着剤が好ましい。
本発明は、さらに、本発明の補強材を有する強化建設構造物にも関する。
本発明の強化建設構造物には、補強材、接着剤層2及び母材1を有し且つ補強材の挿入材層4が母材1に接着剤2を介して接着された(一体化された)構造を有する前述の建設構造物が含まれる。
本発明は、さらに、建設構造物の補強工法を提供する。本発明の補強工法は、(I)建設構造物の母材1に挿入材層4を接着し、さらに、該挿入材層4に付加材層3を接着する工程、(II)建設構造物の母材1に、本発明の補強材の挿入材層4を接着する工程、又は、(III)建設構造物の母材1に、本発明の接着剤層2付き補強材を貼付する工程、からなる群より選択される少なくとも1つの工程を包含する。
本発明の1つの好ましい実施形態において、補強材は、付加材層3と挿入材層4とが接着剤層5を介して積層された構造を全体的に有する。図2(a)及び(b)は、かかる補強材及びかかる補強材を備える強化建設構造物の側面外略図である。
本発明の1つの好ましい実施形態において、補強材は、付加材層3と挿入材層4とが接着剤層5を介して積層された構造を部分的に有する。図11(a)−(e)は、かかる補強材及びかかる補強材を備える強化建設構造物の側面外略図である。
本発明の1つの好ましい実施形態において、補強材は、母材1の片面に接着される。図2(b)は、補強材を母材1の片面に接着した場合の側面外略図である。
本発明の1つの好ましい実施形態において、補強材は、母材1の両面に接着される。図2(c)は、補強材を母材1の両面に接着した場合の側面外略図である。
本発明の1つの好ましい実施形態において、補強材は、端部、或いは、端部及び必要部分のみにおいて、付加材層3と挿入材層4とが接着剤層5を介して積層された構造を有する。接着剤層のはく離せん断応力を受けやすい端部、或いは、端部及び必要部分のみに挿入材を用いることにより、より少ない量の挿入材で母材1を効率的に補強することができる。
本発明の1つの好ましい実施形態において、挿入材層4の積層面の面積は、付加材層3の積層面の面積より少し広い。図10に挿入材層4の積層面の面積が付加材層3の積層面の面積より少し広い場合の本発明の強化建設構造物の側面概略図を示す。
本発明の好ましい実施形態において、本発明における補強材は、後述する式〔21〕及び式〔22〕を満足する。
式〔21〕及び式〔22〕は、以下のように得られる。
先ず図3に、本発明の強化建設構造物の各層に生じる力のつりあいを示す。この力のつりあいから、下記の式〔1〕で表される4階微分方程式を得る。
Figure 0004780594
ここで、
Figure 0004780594
ここで、
σ0は、付加材層3が接着されていない位置における母材1に生じる応力であり、
σ1は、付加材層3が接着されている位置における母材1に生じる応力であり、
1は、母材1のヤング率であり、
1は、母材1の厚さであり(ただし、付加材を両面に有している場合のt1は母材1の厚さであり、付加材を片面に有している場合のt1は母材1の厚さ×2である)、
3は、付加材層3のヤング率であり、
3は、付加材層3の片側厚さであり、
4は、挿入材層4のヤング率であり、
4は、挿入材層4の片側厚さであり、
2は、接着剤層2のせん断弾性係数であり、
2は、接着剤層2の片側厚さであり、
5は、接着剤層5のせん断弾性係数であり、
5は、接着剤層5の片側厚さであり、
xは、付加材層3の中央を原点とする水平方向の座標である。
ここで、各せん断弾性係数G及び各ヤング率Eについては、例えば、以下のように求めることができる。せん断弾性係数Gとヤング率Eとの間には次式で表される関係がある。
Figure 0004780594
ここで、μはポアソン比である。
せん断弾性係数Gは、上式から、ヤング率Eとポアソン比μによって与えられる。ヤング率Eとポアソン比μは、材料の引張試験により求めることができる。
例えば、金属材料のヤング率Eとポアソン比μについては、JIS Z 2241 「金属材料引張試験方法」の規格に従って求めることができる。炭素繊維プレートのヤング率Eとポアソン比μについては、JIS K 7073 「炭素繊維強化プラスチックの引張試験方法」の規格に従って求めることができる。また、プラスチックのヤング率Eとポアソン比μについては、JIS K 7113 「プラスチックの引張試験方法」の規格に従って求めることができる。コンクリート材料に対しては、ヤング率を求めるJISはないが、設計では、JIS A 1108 「コンクリートの圧縮強度試験方法」の規格から求められる圧縮強度の1/3点と原点とを結ぶ線の傾きをヤング率とみなしている。またポアソン比に対して、設計では0.17程度を使用している。
また、付加材層3の厚さt3、挿入材層4の厚さt4、各接着剤層の厚さh2及びh5は、例えば、ノギス、マイクロメータ、レーザ変位センサ、マイクロスコープ等の計測器具を用いて、常法により測定される。母材の厚さt1は、例えば、ノギス、コンベックス、巻尺、測量ロープ等の計測器具を用いて、常法により測定される。また、市販されている付加材又は挿入材を使用する場合は、多くの場合、カタログや説明書にヤング率、厚さが記載されているので、それらの値を用いることもできる。
式〔1〕を解くことにより、接着剤層2に生じるせん断応力τ2および接着剤層5に生じるせん断応力τ5がそれぞれ次式で与えられる。
Figure 0004780594
ここで、
Figure 0004780594
式〔9〕および式〔10〕のxにL(ここで、Lは付加材層3の半長さである)を代入することにより、接着剤層2の付着端に生じるはく離せん断応力τ21及び接着剤層5の付着端に生じるはく離せん断応力τ51がそれぞれ次式で与えられる:
Figure 0004780594
ここで、c2Lが3より大きい時、tanh(c2L)がほぼ1になるので、式〔15〕および式〔16〕はそれぞれ次式になる。
Figure 0004780594
接着剤層2のはく離せん断応力τ21および接着剤層5のはく離せん断応力τ51がそれぞれ次式を満足するとき、付加材層3又は補強材のはく離を防止することができる。
Figure 0004780594
ここで、
21は、接着剤層2と母材1との界面の引張せん断接着強さおよび接着剤層2と挿入材層4との界面の引張せん断接着強さのうち、小さい方の値を表し、
51は、接着剤層5と挿入材層4との界面の引張せん断接着強さおよび接着剤層5と付加材層3との界面の引張せん断接着強さのうち、小さい方の値を表す。
引張せん断接着強さは、接着剤の材料特性および接着される材の表面の状態によって決定され、一般にJIS K 6850「接着剤の引張せん断接着強さ試験方法」により測定することができる。
式〔19〕および式〔20〕は変形すると、それぞれ次式になる。
Figure 0004780594
ここで、
Figure 0004780594
他方、従来工法で付加材層3又は補強材のはく離を防止する条件は、非特許文献1により、次式で与えられる。
Figure 0004780594
ここで、
τ20は、従来工法において、挿入材を挿入しない時の接着剤層2の付着端に生じるはく離せん断応力であり、T20は、従来工法において、接着剤層2と母材1との界面の引張せん断接着強さ及び接着剤層2と付加材層3との界面の引張せん断接着強さのうち、小さい方の値を表す。
式〔25〕を変形して、次式を得る。
Figure 0004780594
ここで、
Figure 0004780594
発明工法において、補強材が母材からはく離しないためには、式〔21〕と式〔22〕を満足しなければならない。式〔21〕と式〔22〕は、無次元量E44/(E33)、E33/(E11)、D、K21、K51で表される。ここで、E44/(E33)は付加材の剛性に対する挿入材の剛性の比を表し、E33/(E11)は母材の剛性に対する付加材の剛性の比を表す。
引張せん断接着強さT21とT51が等しいときK21とK51は等しくなる。しかし、K21とK51は、母材1に生じる応力σ0の大きさによって、様々な値をとる。
例として、D=1として、K21=0.36、0.42、0.48の各場合に対して、式〔21〕を満足するE44/(E33)とE33/(E11)の領域を図4に示す。K21の各値に対して、各曲線(実線)の下側が式〔21〕を満足する領域である。K51=0.36、0.42、0.48の各場合に対して、式〔22〕は常に成立しているので、式〔22〕から導出される、E44/(E33)とE33/(E11)の領域は図にない。
他方、従来工法において、補強材が母材からはく離しないためには、式〔26〕を満足しなければならない。式〔26〕は、無次元量E33/(E11)及びK20で表される。K20=0.36,0.42,0.48の各場合に対して、式〔26〕を満足するE33/(E11)の領域を図4に示す。K20の各値に対して、各直線(破線)の左側が式〔26〕を満足する領域である。
図4において、K21=0.36に対して式〔21〕が与える曲線は、K20=0.36に対して式〔26〕が与える直線と点Aで交わる。同様に、K21=0.42に対して式〔21〕が与える曲線は、K20=0.42に対して式〔26〕が与える直線と点Bで交わる。さらに、K21=0.48に対して式〔21〕が与える曲線は、K20=0.48に対して式〔26〕が与える直線と点Cで交わる。
図5においてK21=K20=0.36の場合を例として、発明工法と従来工法の比較を行なう。K21=0.36に対して、式〔21〕を満足する領域、及びK20=0.36に対して、式〔26〕を満足する領域を、改めて図5に示す。曲線Iの下側の領域、すなわち[R1]と[R2]の領域が、式〔21〕を満足する領域である。直線IIの左側の領域、すなわち[R1]と[R3]の領域が、式〔26〕を満足する領域である。これより次のことが分かる。E33/(E11)が小さいとき、すなわち母材の剛性に対して付加材の剛性が小さいときは、従来工法でも発明工法でも、補強材が母材からはく離しない。しかし、E33/(E11)が大きくなると、すなわち母材の剛性に対して付加材の剛性が大きくなると、発明工法でなければ、母材から補強材のはく離を防止することはできない。
したがって発明工法は、E44/(E33)の値が交点Aより下になるような剛性E44を有する挿入材を使用することにより、付加材の剛性E33を、従来工法のそれよりも大きくすることができる。
図4において、交点A、B、Cを通過する曲線(一点鎖線)は、K21=K20の任意の値に対して、式〔21〕が与える曲線と式〔26〕が与える直線との交点を連ねたものであり、式〔21〕の左辺と式〔26〕の左辺とを等値することによって、次式で与えられる。
Figure 0004780594
図4の交点A、B、Cを通過する曲線は、D=1に対する結果である。式〔5〕で定義されるDは、接着剤層2のせん断弾性係数G2、接着剤層2の片側厚さh2、接着剤層5のせん断弾性係数G5、および接着剤層5の片側厚さh5を変数とする無次元量である。これらの変数の値の組合せにより、Dは0.5〜4の範囲で様々な値をとり得る。具体例としてD=0.5、1、2及び4の各場合について、式〔28〕の曲線を図6に示す。
図6から、E33/(E11)=0.05〜0.5に対して、下記のようなDとE44/(E33)との好ましい関係が得られる:
Dが0.5の場合、E44/(E33)は好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.2以下、
Dが0.5より大きく1.0以下の場合、E44/(E33)は好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.3以下、
Dが1.0より大きく2.0以下の場合、E44/(E33)は好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.4以下、
Dが2.0より大きく4.0以下の場合、E44/(E33)が好ましくは0.6以下、さらに好ましくは0.5以下。
このようなD値とE44/(E33)の関係を満足することにより、本発明の補強材は、補強材が挿入材層4を有さない場合或いはD値とE44/(E33)とがこのような関係を満たさない場合と比べて、母材からはく離しにくく、より長い間又はより大きなはく離荷重に対して母材を補強することができる。また、このようなD値とE44/(E33)の関係を満足することにより、本発明の補強材は、挿入材層4を介在させない場合と比べて、より高い剛性の付加材を用いることができるため、母材をより強固に補強することができる。
ここでは、D=0.5、1、2、及び4の各場合を具体例に挙げて説明しているが、当業者であれば、式〔28〕、後述の式〔29〕、後述の式〔30〕及び図6に基づき、他のD値についても、好ましいE44/(E33)値を選定することができる。
また、図6における各曲線の変動幅は小さく、式〔28〕を次式で近似できる。
Figure 0004780594
さらに、E44/(E33)が次式を満たすとき、補強材が挿入材層4を有さない場合或いはE44/(E33)が次式を満たさない場合と比べて、補強材が母材からはく離しにくく、より長い間又はより大きなはく離荷重に対して母材を補強することができる。
Figure 0004780594
ここで、通常、E33/(E11)の適用範囲は0.05から0.5の間であり、Dの適用範囲は0.5から4の間である。
図12に、E33/(E11)=0.05〜0.5の範囲について、D=0.5、1、2、及び4の各場合を具体例に挙げて、式〔28〕とその近似式〔29〕との位置関係を示す。図12から明らかなように、E33/(E11)=0.05〜0.5の範囲について、D=0.5、1.0、2.0、4.0のいずれの場合についても、常に近似式〔29〕が式〔28〕を下回っている。これから明らかなように、E33/(E11)=0.05〜0.5であり、D=0.5〜4.0である場合、式〔30〕を満足するようなE44/(E33)を選定すれば、常に、補強材が挿入材層4を有さない場合或いはE44/(E33)が式〔30〕を満たさない場合と比べて母材からはく離しにくい補強材を得ることができる。
本発明の1つの好ましい実施形態において、本発明の補強材と母材1とが接着剤層2を介して接着されるとき、E33/(E11)=0.05〜0.5であり、D=0.5〜4.0であり、且つ、E44/(E33)が式〔30〕を満足する。
本書において「補強」とは、特に言及しない限り、構造物の欠陥を修繕又は補修すること、構造物の予測される欠陥を防止又は軽減すること、或いは、構造物の強度を改善することを意味する。
本発明により、母材からはく離しにくい新規補強材及びその製造方法、該補強材を有する新規強化建設構造物、該補強材を用いた建設構造物の新規補強工法が提供された。
本発明により、付加材と母材との間に挿入材を介在させた積層構造を有する補強材において、付加材層の剛性に対する挿入材層の剛性の比を0.5以下とすることにより、挿入材層を介在させない場合或いは付加材層の剛性に対する挿入材層の剛性の比が0.5より大きい場合と比べて、補強材が母材からはく離しにくく、より長い間又はより大きなはく離荷重に対して母材を補強することが可能になった。
また、本発明により付加材層の剛性の0.5倍以下の剛性を有する挿入材層を母材と付加材層との間に介在させることにより、挿入材層を介在させない場合と比べて、より高い剛性の付加材を用いることができるため、母材をより強固に補強することができる。
本発明は、例えば、拘束治具の取り付けや溶接による施工が困難な母材(例えば、石材、木材、コンクリート)にも適用可能である。
また、本発明の補強工法を用いれば、拘束治具の取り付けや溶接等を必要としないため、高度な技術を有していない者でも簡単に母材を補強することができる。
図1は、従来工法に従って、付加材層3が母材1に接着剤層2を介して接着されたときの側面概略図である。 図2(a)は、付加材層3、挿入材層4及び接着剤層5を有し、付加材層3と挿入材層4とが接着剤層5を介して積層された構造を有する本発明の補強材の側面概略図である。図2(b)は、本発明の補強材が、接着剤2を介して母材1の片側に積層されているときの側面概略図である。図2(c)は、本発明の補強材が、接着剤2を介して母材1の両側に積層されているときの側面概略図である。 図3は、本発明に従って、本発明の補強材が接着剤層2を介して母材1に接着されているときの、微小区間における力のつりあいを示す側面概略図である。 図4において、K21=K20=0.36、0.42、0.48の場合を例に挙げて、式〔21〕、式〔26〕及び式〔28〕を示す。K21=0.36に対して式〔21〕が与える曲線は、K20=0.36に対して式〔26〕が与える直線と点Aで交わる。同様に、K21=0.42に対して式〔21〕が与える曲線は、K20=0.42に対して式〔26〕が与える直線と点Bで交わる。さらに、K21=0.48に対して式〔21〕が与える曲線は、K20=0.48に対して式〔26〕が与える直線と点Cで交わる。点A、B及びCを結ぶ曲線が、式〔28〕の曲線で表される。 図5において、K21=K20=0.36の場合を例に挙げて、式〔21〕及び式〔26〕を示す。本発明におけるE44/(E33)とE33/(E11)との関係を表す式〔21〕の曲線をIとする。従来工法(付加材層3と母材1との間に挿入材層4を介在させない場合)におけるE33/(E11)の値を表す式〔26〕の直線をIIとする。Iよりも下の領域([R1]及び[R2])は、本発明において、設定したはく離荷重に対して補強材が母材からはく離しない領域である。一方、IIの直線よりも左側の領域([R1]及び[R3])は、従来工法において、設定したはく離荷重に対して補強材が母材からはく離しない領域である。Iより下側であり且つIIより右側の領域([R2])は、設定したはく離荷重に対して、従来工法でははく離を防止できないが、本発明でははく離を防止できる領域である。本発明を用いれば、従来工法より高いE33/(E11)を適用して、補強材のはく離を防止することができる。言いかえると、本発明を用いれば、母材1に対して、従来工法より高い剛性の付加材層3を適用することができ、それゆえ、従来工法より強固に母材1を補強することができる。 Dの値が0.5、1、2、及び4の各場合に対して、式〔28〕が与える結果を図6に示す。E44/(E33)は、D=4に対して約0.5から約0.6の間、D=2に対して約0.4から約0.5の間、D=1に対して約0.3から約0.4の間、D=0.5に対して約0.2から約0.3の間で変動し、各曲線の変動幅は小さい。Dの値が増加すると、曲線も上昇する。すなわち、Dの値が増加すると、挿入材の剛性を大きく取ることができる。 図7は、実施例1で使用した試験片の概略図である。 図8は、実施例1の試験結果を示す図である。縦軸は、本発明の工法によって炭素繊維プレートがはく離する時の荷重P1を、従来工法によって炭素繊維プレートがはく離する時の荷重P0で除した値を示す。 図9は、実施例2で使用した試験片の概略図である。 図10は、挿入材層4が付加材層3よりも少し大きい(挿入材層4の端部が付加材層3の端部よりも外側に存在する)場合の本発明の補強材が、母材1の両側に接着されている場合の、本発明の強化建設構造物の側面概略図を示す。 図11(a)は、付加材層3と挿入材層4とが接着剤層5を介して積層された積層構造を部分的に有する本発明の補強材の一例の側面概略図である。図11(b)、(c)、(d)及び(e)は、付加材層3と挿入材層4とが接着剤層5を介して積層された積層構造を部分的に有する本発明の強化建設構造物の一例の側面概略図である。 図12は、式〔28〕とその近似式〔29〕との位置関係を示す。E33/(E11)=0.05〜0.5の範囲について、D=0.5、1.0、2.0、4.0のいずれの場合についても、常に近似式〔29〕が式〔28〕を下回っている。E33/(E11)=0.05〜0.5であり、D=0.5〜4.0である場合、式〔30〕を満足するようなE44/(E33)を選定すれば、常に、補強材が挿入材層4を有さない場合或いはE44/(E33)が式〔30〕を満たさない場合と比べて母材からはく離しにくい補強材を得ることができる。
符号の説明
1:母材
2:接着剤
3:付加材層
4:挿入材層
5:接着剤
<材料特性>
E:各材料のヤング率。
G:各材料のせん断弾性係数。
1:母材1のヤング率。
3:付加材層3のヤング率。
4:挿入材層4のヤング率。
2:接着剤層2のせん断弾性係数。
5:接着剤層5のせん断弾性係数。
21:接着剤層2と母材1との界面の引張せん断接着強さ及び接着剤層2と挿入材層4との界面の引張せん断接着強さのうち、小さい方の値。
51:接着剤層5と挿入材層4との界面の引張せん断接着強さ及び接着剤層5と付加材層3との界面の引張せん断接着強さのうち、小さい方の値。
20:挿入材を挿入しない時,接着剤層2と母材1との界面の引張せん断接着強さ及び接着剤層2と付加材層3との界面の引張せん断接着強さのうち、小さい方の値。
μ:各材料のポアソン比。
<寸法>
2:接着剤層2の片側厚さ。
5:接着剤層5の片側厚さ。
L:付加材層3の半長さ。
1:母材1の厚さ(ただし、付加材を両面に有している場合のt1は母材1の厚さであり、付加材を片面に有している場合のt1は母材1の厚さ×2である)。
3:付加材層3の片側厚さ。
4:挿入材層4の片側厚さ。
<応力>
σ0:付加材層3が接着されていない位置における、母材1に生じる応力。
σ1:付加材層3が接着されている位置における、母材1に生じる応力。
σ3:付加材層3に生じる応力。
σ4:挿入材層4に生じる応力。
τ2:接着剤層2に生じるせん断応力。
τ5:接着剤層5に生じるせん断応力。
τ20:挿入材を挿入しない時の接着剤層2の付着端に生じるはく離せん断応力。
τ21:挿入材を1枚挿入した時の接着剤層2の付着端に生じるはく離せん断応力。
τ51:挿入材を1枚挿入した時の接着剤層5の付着端に生じるはく離せん断応力。
<その他の記号>
D:接着剤層2および接着剤層5の各せん断弾性係数および各片側厚さから成るパラメータ。
F:母材1のヤング率および厚さ、ならびに付加材層3および挿入材層4の各ヤング率および各片側厚さから成るパラメータ。
K20:E1,t1,G2,h2,T20及びσ0から成るパラメータ。
K21:E1,t1,G2,h2,T21及びσ0から成るパラメータ。
K51:E1,t1,G2,h2,T51及びσ0から成るパラメータ。
0:従来工法によって炭素繊維プレートがはく離する時の荷重。
1:本工法によって炭素繊維プレートがはく離する時の荷重。
ξ:母材1のヤング率と厚さ、ならびに付加材層3のヤング率および片側厚さから成るパラメータ。
2:接着剤層2のせん断弾性係数と片側厚さ、母材1のヤング率と厚さ、ならびにξから成るパラメータ。
r:D、Fおよびξから成るパラメータ。
s:D、Fおよびξから成るパラメータ。
α:rおよびsから成るパラメータ。
β:rおよびsから成るパラメータ。
A:F、L、c2、α、βおよびξから成るパラメータ。
B:F、L、c2、α、βおよびξから成るパラメータ。
x:付加材の中央を原点とする水平方向の座標。
以下、本発明の実施例を示すが、この実施例は本発明をより容易に理解するための説明であって、本発明を何ら限定するものではない。
挿入材にガラス繊維シート、付加材に炭素繊維プレートを用いた場合の、本工法と従来工法の比較
図7に示す試験片に引張力を作用させ、炭素繊維プレートがはく離する時の荷重を、本工法と従来工法とで比較する。母材1にE1=203.5GPa、t1=11.58mmの鋼板、挿入材層4にE4=120GPa、t4=0.115mmのガラス繊維シート、付加材層3にE3=141GPaの炭素繊維プレート、接着剤層2と接着剤層5のためにG2=G5=0.743GPaのエポキシ樹脂層を用いる。表2に示すように、炭素繊維プレートの厚さt3=4.0mmおよびt3=6.0mmに対して試験片を作製した。エポキシ樹脂層の厚さは、試験片が完成した後にノギスを用いて計測した厚さである。表2には、E44/(E33)の選定値、並びに、E33/(E11)の値及びDの値を式〔29〕に代入して得られるE44/(E33)の限界値が示してある。E44/(E33)の選定値は、E44/(E33)の限界値より小さい。
Figure 0004780594
試験結果を図8に示す。縦軸は、本工法によって炭素繊維プレートがはく離する時の荷重P1を、従来工法によって炭素繊維プレートがはく離する時の荷重P0で除した値を示す。この図から分かるように、本工法によって炭素繊維プレートがはく離する時の荷重は、従来工法によって炭素繊維プレートがはく離する時の荷重より大きい。
挿入材にガラス繊維シート、付加材に炭素繊維シートを用いた場合の、本工法と従来工法の比較
図9に示す試験片に引張力を作用させ、炭素繊維シートがはく離する時の荷重を、本工法と従来工法とで比較する。母材1にE1=212.9GPa、t1=8.6mmの鋼板、挿入材層4にE4=120GPa、t4=0.115mmのガラス繊維シート、付加材層3にE3=450GPa、t3=1.63mmの炭素繊維シート、接着剤層2と接着剤5のためにG2=G5=0.755GPaのエポキシ樹脂層を用いる。表3に示すエポキシ樹脂層の厚さは、試験片が完成した後にノギスを用いて計測した厚さである。表3には、E44/(E33)の選定値、並びに、E33/(E11)の値及びDの値を式〔29〕に代入して得られるE44/(E33)の限界値が示してある。E44/(E33)の選定値は、E44/(E33)の限界値より小さい。引張試験の結果は、P1/P0=1.37であった。したがって、本工法による炭素繊維シートがはく離する時の荷重は、従来工法による炭素繊維シートがはく離する時の荷重より大きい。
Figure 0004780594

Claims (12)

  1. 接着剤層2の接着のみによって母材1に固定される補強材であって、
    付加材層3、挿入材層4、及び接着剤層5を有し、
    付加材層3と挿入材層4とが接着剤層5を介して積層され、挿入材層4が接着剤層2を介して母材1に接着され、且つ、
    次式を満たす、建設構造物の補強材。
    [数式19]
    Figure 0004780594
    Figure 0004780594
    E 1 :母材1のヤング率
    E 3 :付加材層3のヤング率
    E 4 :挿入材層4のヤング率
    t 1 :母材1の厚さ(ただし、付加材層3を両面に有している場合のt 1 は母材1の厚さであり、付加材層3を片面に有している場合のt 1 は母材1の厚さ×2である。)
    t 3 :付加材層3の片側厚さ
    t 4 :挿入材層4の片側厚さ
    G 2 :接着剤層2のせん断弾性係数
    G 5 :接着剤層5のせん断弾性係数
    h 2 :接着剤層2の片側厚さ
    h 5 :接着剤層5の片側厚さ
  2. Dが2.0より大きく4.0以下の場合、付加材層3の剛性に対する挿入材層4の剛性の比が0.5以下である、請求項1に記載の建設構造物の補強材。
  3. Dが1.0より大きく2.0以下の場合、付加材層3の剛性に対する挿入材層4の剛性の比が0.4以下である、請求項1に記載の建設構造物の補強材。
  4. Dが0.5より大きく1.0以下の場合、付加材層3の剛性に対する挿入材層4の剛性の比が0.3以下である、請求項1に記載の建設構造物の補強材。
  5. Dが0.5の場合、付加材層3の剛性に対する挿入材層4の剛性の比が0.2以下である、請求項1に記載の建設構造物の補強材。
  6. 付加材層3が炭素繊維プレート又は炭素繊維シートであり、挿入材層4がガラス繊維シート又はアラミド繊維シートである、請求項1に記載の補強材。
  7. 前記挿入材層4の積層面の面積は、付加材層3の積層面の面積より広い、請求項1に記載の補強材。
  8. 付加材及び/又は挿入材の表面に接着剤を塗布するか又は含浸させる工程、
    接着剤を塗布するか又は含浸させた付加材と挿入材とを重ね合わせる工程、並びに、
    接着剤を硬化させる工程、
    を包含する、請求項1に記載の補強材の製造方法。
  9. 所定の間隙を介して付加材及び挿入材を配置する工程、
    間隙に接着剤を充填し、付加材及び挿入材に接着剤を含浸させる工程、並びに、
    接着剤を硬化させる工程
    を包含する、請求項1に記載の補強材の製造方法。
  10. 請求項1に記載の補強材の挿入材層4に、接着剤層2が接着されている、建設構造物の接着剤層2付き補強材。
  11. 請求項1に記載の補強材、接着剤層2、及び母材1を有し、
    補強材の挿入材層4と母材1とが接着剤層2を介して接着されている、強化建設構造物。
  12. 下記工程(I)〜(II)からなる群より選択される少なくとも1つの工程を包含する、建設構造物の補強工法:
    (I)建設構造物の母材1に請求項1に記載の補強材の挿入材層4を接着し、さらに、該挿入材層4に付加材層3を接着する工程、
    (II)建設構造物の母材1に、請求項10に記載の接着剤層2付き補強材を貼付する工程。
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