JP4778395B2 - 伸びフランジ性と高いベーク後強度にすぐれたアルミニウム合金板 - Google Patents

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Description

本発明は高強度ならびにすぐれた成形加工性、とりわけ伸びフランジ性およびベーク後強度にすぐれたアルミニウム合金板およびこの合金を効率よく安価に量産できる製造法に関する。
あらゆる分野で地球環境に対する配慮がますます要求されることから、所要燃費の抑制を目的として自動車、船舶、航空機その他各種車両等のより一層の軽量化が希求されている。各種機械、電気製品、建築物、構造物その他いろいろの機器類についても同様である。自動車用ボデイパネルを鉄鋼材からアルミニウム合金材に置換しようとの動向は顕著な例である。
自動車のフード、フエンダー、ドア、ルーフ、トランクリッド等のパネル構造体に使用される内外板用パネル材として、Al−Mg−Si系合金(JIS6000系)が有力である。MgおよびSiを必須成分とするこの合金は、すぐれた時効硬化性があって、プレス成形や曲げ加工時には低耐力化により成形性が確保できる。しかも成形後の焼き付け塗装時の加熱による人工時効硬化は、材料の耐力を向上して必要な強度を確保する利点がある。
また、この合金材は、Mg等の合金元素を多く含むJIS5000系アルミニウム合金材等に比較して合金元素の含有量が少ないので、そのスクラップをリサイクルして同種のアルミニウム合金材を経済的に再生産するのに都合がよい。
以上の理由によって、JIS6000系アルミニウム合金材は、とくに自動車用に向けて、その物性面と製法との両面から、多岐にわたる観点からすでに多くの研究開発が継続されている。ところが、この種用途向けに不可欠であるプレス成形や曲げ加工の中でも、成形加工性、とりわけ穴あけ時に曲げによるフランジの形成をともなうところの伸びフランジ性については、JIS6000系アルミニウム合金はJIS5000系に比較してよくない問題がある。
そこで、たとえば下記するいくつかの特許文献は、その改善策として、MgおよびSi以外に別の合金元素をいくつか追加し、あるいはそれに加えて、合金の結晶粒度や晶出物の分散状態を制御する方法を提案する。
特許文献1は、自動車の外板用アルミニウム合金板の曲げ加工性および塗装焼き付硬化性等を向上する目的で、JIS6000系の成分改良を図るとともに組織中の隣接する結晶粒の方位差に着目した発明である。この発明は、そのために2回にわたる均熱処理をとり入れている。
特許文献2あるいは3は、Fe分の不純物を前提に、成形性および塗装焼き付硬化性を向上する目的で、合金組成の調整に加えて製造時の均質化や冷却条件を改良した発明である。
特許文献4は、やはり成形性および塗装焼き付硬化性を向上するための発明であるが、合金中のMg−Si系化合物の性状にも着目して、そのサイズや個数密度の調整を企図する。同時に2回にわたる均熱処理や溶体化等の製造条件にも工夫する。
特許文献5は、導電性をも加味して合金成分や性状を改良し、また強度向上のために溶体化処理等の製造条件も工夫する発明である。
しかし、これらの研究開発成果によるもユーザーが満足できるほどには、成形加工性のなかでも要求度の高い伸びフランジ性が十分に向上すると同時に、ベーク後強度も劣化しないアルミニウム合金板を、リサイクル性を加味した量産適性に見合うほど廉価に供給できる情勢に至っていない。
特開2003−171726号公報 特開2003−105471号公報 特開2003−105472号公報 特開2002−356730号公報 特開2005−8926号公報 特開2003−277869号公報 特開2003−277870号公報
本発明は、すぐれた伸びフランジ性と高いベーク後強度(焼付け塗装後の時効硬化にともなう強度)を同時に満足するアルミニウム合金板の供給を主課題とする。そして、このためには、いたずらに複雑な製造工程によることなく、したがって廉価に供給することを可能にするために、合金の結晶組織や混在する化合物の性状を目的的に適正化したアルミニウム合金板の提供を課題とする。また、スクラップのリサイクル性にも有用なアルミニウム合金板の供給ならびにこれらの課題の解決に最適の製造技術の提供をも目的とする。
本発明は上記課題を解決するために、まずアルミニウム合金板自体としては、次の各手段を特徴とする構成により、伸びフランジ性と高いベーク後強度にすぐれたアルミニウム合金板の提供を可能にするものである。
(1)Mg:0.1〜3.0重量%(以下、単に%とする。)、Si:0.1〜2.5%、およびCr:0.02〜0.08%を含有し、測定エリアを0.1〜0.2mm 、測定時の倍率を×600とし、加速電圧20kVのもとで、0.5μm以上の粒子を、EPMAで計測したときのCr含有化合物数密度が500〜2000個/mm、かつCr含有化合物の面積率÷全化合物の面積率が60〜98%であると共に、合金の平均結晶粒度が50μm以下であり、かつ化合物の最大粒径が20μm以下であることを特徴とし、残部がAlおよび不可避の不純物であるすぐれた伸びフランジ性と高いベーク後強度にすぐれたアルミニウム合金板。
(2)Mn:0.05%以下を含有することを特徴とする上記1に記載のすぐれた伸びフランジ性と高いベーク後強度にすぐれたアルミニウム合金板。
(3)Fe:0〜0.1%を含有することを特徴とする上記1または2に記載のすぐれた伸びフランジ性と高いベーク後強度にすぐれたアルミニウム合金板。
本発明のアルミニウム合金板は、JIS6000系アルミニウム合金を基本成分とするが、Crを付加的に含有させると同時に、このCr含有化合物の個数密度ならびに全化合物に対する面積率を特定範囲で意識的に規制した点が特徴である。このようにして合金材の性状を構成することにより、アルミニウム合金板の伸びフランジ性が向上すると同時に高いベーク後強度が同時に確保できる効果をあらわす。合わせてスクラップ材の再生利用による製造が無理なく実施できる。
一方、本発明は、特定条件のもとでの2段階の均質化処理に委ねるとともに、他方、中間でのいわゆる粗鈍を避ける方法により、アルミニウム合金板を製造することも特徴である。すなわち、上記した性能を有する本発明アルミニウム合金板が、本法により容易にしかも廉価に工業生産できる効果がある。
本発明のアルミニウム合金板は、JIS6000系のAl−Mg−Si系合金組成を基礎とし、これに他の必須元素としてCrを追添するとともに、合金中に形成されるCr含有化合物の存在形態を調整したことが特徴である。
合金中のMgおよびSiは、GPゾーンといわれるMgSi組成の集合体(クラスター)もしくは中間相を形成し、合金の強度向上に不可欠の元素であるから、両者とも0.1%以上の含有量が必要である。しかし、Mg含有量が3.0%、またSi含有量が2.5%を超えると、粗大な晶出物が増加して変形時の破壊起点となり、合金材の伸びフランジ性および曲げ性が低下する。より好ましくは、Mg含有量は0.0.4〜2.5%、Si含有量は0.6〜2.0%がよい。
以上のAl−Mg−Si系合金組成にCrを追添したことが本発明の特徴であり、これにより合金の製造工程を通じてCr含有化合物が微細に保持され、合金のベーク後強度の向上が可能となる。同時に、Crは結晶粒の微細化に有用であり、合金材の伸びフランジ性を向上させる効果がある。これらの効果を保証するために、Crは0.02%以上の含有量を必要とし、これより少ないとCr含有化合物の化合物数が少なくなりすぎ、そのためCrを含有しない化合物が多くなり、これが粗大化して合金板のベーク後強度の向上が期待できないばかりか、伸びフランジ性も低下する。また、Cr含有量を0.08%より多くしても伸びフランジ性が低下するので、より好ましくは、0.02〜0.10%がよい。
Mnの含有もCrと同様に合金の結晶粒の微細化に有用で加工性を向上するが、過大になるとα−Al−Fe−Mn−Siの生成量が増加し、溶体化後の固溶Si量を減少させる。その結果、合金板のベーク後強度の向上が期待できないので、Mn含有量は0.05%以下、より好ましくは、0.02%以下がよい。
本発明は、上述した基本的な合金組成を前提として、Crの含有により生成するCr含有化合物数密度および面積率を制御することをより重要な特徴とする。まず、単位面積あたりのCr含有化合物数を計測して500〜2000個/mm
の範囲となるようにする。この個数の多寡と合金材のベーク後強度ならびに伸びフランジ性との相関を調査研究すると、それが500個より少なければ、Cr添加による合金材のベーク後強度ならびに伸びフランジ性の向上が期待できず、また、2000個よりも多ければ十分な伸びフランジ性が得られないことが明らかになった。より好ましくは、600個/mm以上、1800個/mm以下がよいこともわかった。
なお、この相関関係については、500個より少ないとCrを含有しない化合物が多くなり、これが粗大化して合金板のベーク後強度ならびに伸びフランジ性の向上が期待できない、また、2000個より多いと、製品強度が高くなりすぎるため、ともに伸びフランジ性の向上が期待できないことによる。
また、このようなCr含有化合物の個数比率は、同時に、Cr含有化合物の面積率と他の化合物も含めた全化合物の面積率との比と密接に関係していることが確認される。すなわち、Cr含有化合物の面積率÷全化合物の面積率であらわされる比が60〜98%、より好ましくは70〜90%の範囲となるようにすることで、合金材のベーク後強度ならびに伸びフランジ性の向上が確実に期待できる。
また、本発明は、以上の特徴事項に加えて、合金の平均結晶粒径を50μm以下とすることにより合金板の伸びフランジ性がより向上し、好ましくは、40μm以下の平均結晶粒径にするとよい。
さらに含有化合物の最大粒径を20μm以下に抑制しておくと、これが破壊の起点として作用し、合金板の伸びフランジ性を劣化するのを有効に阻止することができる。より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは8μm以下とするのがよい。
なお、上記したCr含有化合物の個数密度、面積率および最大粒径の計測法や表示の仕方等については、後記する実施例にて明らかにする。
以上の他、本発明は上述した基本的なアルミニウム合金組成に加えていくつかの他の金属元素を選択的に含有させることができる。
まず、Fe:0〜0.1%、Zr:0〜0.01%、V:0〜0.01%の1種もしくは2種以上を含有させることができる。これらの金属元素は既述のMnおよびCrと同様に、合金の結晶粒の微細化に有効で、伸びフランジ性の向上に寄与する。しかし、上記の数値上限を超えて多量に含有すると、これらはSiとの化合物を合成し、合金中化合物に含まれるSi量が過大になってベーク後強度が確保できなくなる。より好ましくは、Fe:0.05%以下、Zr:0.005%以下およびV:0.005%以下がよい。
また、以上のアルミニウム合金組成に対して、さらにTi<0.2%、Zn<1.5%の1種もしくは2種を追加して含有させることができる。これらの元素も合金の結晶粒の微細化に有効で合金材の加工性をより向上できるが、上記の数値上限を超えて多量に含有すると、粗大な化合物を形成し、これが破壊の起点として作用し、加工性が劣化する。好ましくは、Ti:0.005〜0.2%、Zn:0.1〜1.5%がよい。
さらに、以上のアルミニウム合金組成に対して、Cu<1.0%を含有させることができ、0.1%以上の含有でも合金の強度を増強するが、1.0%以上多量に含有すると粗大な化合物を形成し、これが破壊の起点として作用し、伸びフランジ性および曲げ性が劣化する。
本発明は以上に説明してきたとおりのアルミニウム合金組成・化合物組織を特徴とする伸びフランジ性およびベーク後強度にすぐれた材料であるが、これらは以下に説明する方法によりその合金板が有効に製造される。
通常のこの種アルミニウム合金板は、鋳造→均質加熱処理→熱間圧延→冷間圧延→最終焼鈍の各工程を経て製造される。本発明の方法はこの工程の内、熱間圧延前の均質加熱処理を特定の条件下で2段階でおこなう2回均熱を特徴とする。
1回めの焼鈍は500℃以上・融点未満の温度において、2時間以上にわたっておこない、合金組織の均質化、すなわち鋳塊組織中の結晶粒内偏析を十分に消失させる。実際この焼鈍温度が500℃より低いと、結晶粒内偏析の解消が不十分で、これが化合物破壊の起点となって製品合金板の伸びフランジ性および曲げ性を劣化する。また、加熱時間が2時間より少ないときも同様である。
1回めの均熱後につづく冷却は、結晶粒界における析出相の発生すなわち伸びフランジ性の低下を抑制するために、40〜100℃/hの範囲で実施するのがよい。100℃/hを超える高速冷却は、強制空冷装置を要しコスト増を招くので実用的でない。
1回めの均熱につづいて、本発明では、後続する熱間圧延に備え、合金組織の最適化を目的として、390〜480℃の温度範囲で、いわば本来の熱延前焼鈍をおこなう。2回めの均熱である。このときの温度が390℃以下では析出相の形成が促進されて伸びフランジ性および曲げ性を劣化し、480℃以上では強度過大にて伸び特性したがって伸びフランジ性が低下する。
またこの2回めの均熱における焼鈍時間は、2〜15時間とし、2時間より短かいと強度過大、また15時間より長くなると粒界における析出相の形成が促進され、いずれも合金板の伸びフランジ性および曲げ性を損なう。
2回にわたる均熱処理のあと通常の加熱条件下で熱間圧延がおこなわれるが、終了温度は170〜300℃の範囲とするのがよい。170℃より低いと結晶の異方性が大きくなりすぎ、また300℃より高温では部分的に再結晶して組織が不均一化するとともに結晶粒も粗大化して伸びフランジ性を劣化させる。
なお、次工程の最終冷間圧延の実施にあたっては、コスト増を避けるために、いわゆる荒鈍処理を施さないこととする。
また、冷間圧延後の最終溶体化処理は500℃以上でおこない、溶体化を十分に遂行して製品のベーク後強度をよくする。この溶体化時の保持時間は、冷却中に化合物が粗大化しないために少なくとも5秒間が望ましいが、120秒以上もの保持は非実用的である。なお、この溶体化に後続する冷却は、同様の配慮から、50℃/s以上で実施するのがよい。
これまで述べてきたような条件を実用的に組み合わせて実施することにより、すぐれた伸びフランジ性およびベーク後強度を有するアルミニウム合金板が容易に製造できる。
(実施例)
本発明の規制範囲に属する計12種のアルミニウム合金を実施例として、またその範囲から合理的に逸脱するように成分調整された計17種のアルミニウム合金の比較例として、それぞれの組成を表1に示す。
DC鋳造もしくは薄板連鋳により鋳造された各アルミニウム合金の鋳塊は、表2に示すように、本発明の規制範囲に属する2段階の均熱処理を経て熱冷延ならびに最終焼鈍されて製品板相当の供試材を得た。なお、2段階の均熱処理条件の一部には、本発明の規制範囲を合理的に逸脱するものを含めて比較例とした。得られた厚さが1.0mmの各供試材の各種試験結果は表2、3に示される。
供試材についてまずCr含有化合物の個数密度が測定された。この測定は、はじめに供試材をその圧延面から0.25mmの深さまで機械研磨して削り落とし、その研磨面を電子線プローブマイクロアナライザーすなわちEPMA(日本電子社製JXA−8000シリーズ)によりおこなわれた。測定エリアは約0.1〜0.2mm、測定時の倍率は×600とし、加速電圧20kVのもとで、0.5μm以上の粒子を計測した。なお、装置の分解能から0.5μm以下の粒子の検出は困難である。
このようにして検出された全粒子のうち、Cr含有化合物をつぎのようにして抽出した。まず、EPMA装置により、個々の粒子に含まれるFe、Mn、Mg、SiならびにCrの構成元素分析を実施した。この場合、得られた定量的な値は、各粒子のサイズやビーム径によって分析精度に問題が生ずるので、下記するようにして主要含有元素の比率により、Cr含有化合物の判別をおこなうことにした。
すなわち、EPMA装置により、各at%量にて、Fe+Mn+Mg+Si+Crの合計量(T)を求める。つぎに個々の粒子について、Fe/T、Mn/T、Mg/T、Si/TおよびCr/Tにより、含有5総量値(T)に対するFe等各元素それぞれの含有比率を求めた。そして、これらの中で、Cr/Tが0.3以上のものをCr含有化合物と判定することにした。
上記分析法により得たCr含有化合物の個数を、その計測面積で除することでCr含有化合物数密度が算出できる。つぎに、Cr含有化合物の画像上のピクセル値、すなわちCr含有化合物の画像を構成する正方形の最小単位の和をもって各粒子の面積を求め、その総和を計測面積で除することでCr含有化合物の面積率が得られる。
また、検出された全粒子を対象にして、各化合物の最大影長さ(粒子を投射した際の最大長さ)を個別に求めることにより、化合物の最大粒径が計測できる。
つぎに、アルミニウム合金材の平均結晶粒径は、圧延面の集合組織を評価しておこなう。すなわち、さきに説明したように、厚さ1.0mmの供試材を圧延方向の垂直方向に0.25mm深さを機械研削したものを使用し、これをバフ研磨および電解研磨することにより表面を調整した試料を用意した。
この試料について、日本電子社製SEM(型式JEOL JEM 5410)を使用し、EBSP(Electoron Back Scatterinng(Scattered) Pattern)による結晶方位および結晶粒径をおこなった。領域は150μm×1500μmの範囲とし、測定のステップ間隔は2μmとした。なお、EBSP測定・解析システムは、EBSP:TSL社製(OIM)を用いた。
以上の要領で平均結晶粒径を測定する場合、本発明の実施例では、±15°以内の方位のずれは同一の結晶粒に属するものと定義した。そして、隣接する結晶粒の方位差が5°以上の結晶粒の境界を結晶粒界と定義した上で、下式1により平均結晶粒径を算出した。
平均結晶粒径=(Σx)/n ・・・・・・(1)
n:結晶粒の測定個数
x:個々の結晶粒径
つぎに、アルミニウム合金供試材のベーク後強度は、圧延方向に対する角度が90°方向を長手方向とする引張り試験片を用いておこなう。すなわち、この試験片について、JIS5号引張り試験により応力−歪み曲線を得たのち、0.2%耐力を求め、これを各試験片について各3回ずつ実施し、その平均値を算出してベーク後強度とした。
最後に、アルミニウム合金供試材の伸びフランジ性の評価は穴広げ試験によることとし、まず70×70mmの試験板に直径10mmの穴を打ち抜き、ついで直径33mmの円錐ポンチを用いて穴広げをおこなう。すなわち、バリを上面側(ダイス側)にして試験板を定置し、しわ押さえ力3トン、ポンチ速度10mm/min.で穴広げし、打ち抜き穴の縁に破断が生じた段階でポンチを停止する。
そして、下式2により穴広げ率(λ)を計算する。
λ=(d−d)/d×100 ・・・・・・(2)
:破断後の穴内径
:試験前の初期穴径
なお、破断後の穴内径(d)は、圧延方向とそれに垂直方向でそれぞれ測定し、穴広げ率を各々求め、その平均値をもって各試験板の穴広げ率とした。さらに、この操作を各試験板について各3回ずつ実施し、その平均値をもって最終的に当試験板の穴広げ率(λ)とした。
以上の手順にしたがって製造され試験された実施例ならびに比較例が3種の表に示される。
No.1〜12は、本発明が特徴とする合金組成を、その上下限から中間域にわたって選択的に満足するアルミニウム合金である(表1)。また、これら12種の合金の処理条件も本発明が特徴とする範囲において選択されている(表2)。そしてこれらの試験結果を表3に示す。
No.1は、Mg、Si、MnおよびCrのみを必須的に含有する本発明の基本的なアルミニウム合金を本発明の基本的条件にしたがって処理することにより製造された製品である。したがって、本合金板は平均結晶粒径、Cr含有化合物の個数密度や面積率においても適性範囲にあって、伸びフランジ性を示す穴広げ率およびベーク後強度も十分によい特性を明示している。
No.2は、Mnを積極的に含有させない本発明合金であるが、No.1合金に比肩されるほどのよい特性を保持している。
No.3、4および5は、Fe、TiまたはCuをそれぞれ追加的に含有させた本発明合金であって、いずれもよい性能を有する。
No.6および7は、MgおよびSiの各含有量を本発明が規制する上限近くまで多くしたもので、この程度のMg、Si含有量でもよい性能の合金が得られる。
No.8は、任意元素Feを上限近くまで多くしたもので、性能は満足できる。
No.9はMnが下限近くでCrを上限近くとしたもの、そしてNo.10はMnが上限近くでCrを下限近くとしたもので、ともに性能は満足できる。
No.11および12は、MnおよびCrをともに下限近くおよび上限近くとしたものであるが、やはり性能は満足できる結果が得られている。
つぎに、表1のNo.13〜21の合金材は、Cr、Mn、Si含有量あるいはCu、Mg、Fe、Zr、Ti等の含有量を本発明の規制範囲から合理的に逸脱させた比較例であるが、処理条件は本発明方法の規制範囲内で実施例と同様である。これらの合金材は、伸びフランジ性が一様に劣っており、一方ベーク後強度にはばらつきがあり、この両性能をともに満足するものはない。
最後に、No.22〜29は、必須元素を本発明の規制範囲内で含有する合金を、本発明方法の規制範囲から合理的に逸脱させた条件で処理した比較例である。ベーク後強度は総体的にやや低めであるが、伸びフランジ性が一様に劣っていると観察される。その原因は、合金中の化合物の最大粒径が総じて大きく、本発明の上限値20μmを超えていることと、Cr含有化合物の面積率が一様に本発明の上限値60%に満たないことによる。
なお、本アルミニウム合金板に要求される伸びフランジ性のλ値およびベーク後強度値としての要求レベルはかならずしも一概に決められないが、表3の本発明実施例No.1〜12の数値範囲は現実的に満足できるものである。
Figure 0004778395
Figure 0004778395
Figure 0004778395

Claims (3)

  1. Mg:0.1〜3.0重量%(以下、単に%とする。)、Si:0.1〜2.5%、およびCr:0.02〜0.08%を含有し、測定エリアを0.1〜0.2mm 、測定時の倍率を×600とし、加速電圧20kVのもとで、0.5μm以上の粒子を、EPMAで計測したときのCr含有化合物数密度が500〜2000個/mm、かつCr含有化合物の面積率÷全化合物の面積率が60〜98%であると共に、合金の平均結晶粒度が50μm以下であり、かつ化合物の最大粒径が20μm以下であることを特徴とし、残部がAlおよび不可避の不純物であるすぐれた伸びフランジ性と高いベーク後強度にすぐれたアルミニウム合金板。
  2. Mn0.05%以下を含有することを特徴とする請求項に記載のすぐれた伸びフランジ性と高いベーク後強度にすぐれたアルミニウム合金板。
  3. Fe:0〜0.1%を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のすぐれた伸びフランジ性と高いベーク後強度にすぐれたアルミニウム合金板。
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