JP4495623B2 - 伸びフランジ性および曲げ加工性に優れたアルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents

伸びフランジ性および曲げ加工性に優れたアルミニウム合金板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高強度でかつ成形性に優れたAl合金板およびその製造方法に関し、曲げ加工性を劣化させること無く卓越した伸びフランジ性を有するAl合金板と、このAl合金板を確実に得ることのできる製造方法に関するものである。本発明で言うアルミニウム合金板とは、冷延板を溶体化処理したものを言う。また、以下、アルミニウムを単にAlとも言う。
近年、排気ガス等による地球環境問題に対して、自動車などの輸送機の車体の軽量化による燃費の向上が追求されている。このため、特に、自動車の車体に対し、従来から使用されている鋼材に代わって、圧延板や押出形材、あるいは鍛造材など、より軽量なAl合金材の適用が増加しつつある。
この内、自動車のフード、フェンダー、ドア、ルーフ、トランクリッドなどのパネル構造体の、アウタパネル (外板) やインナパネル( 内板) 等のパネルには、高強度なAl-Mg-Si系のAA乃至JIS 6000系 (以下、単に6000系と言う) のAl合金板の使用が検討されている。
6000系Al合金板は、基本的には、Si、Mgを必須として含み、優れた時効硬化能を有しているため、プレス成形や曲げ加工時には低耐力化により成形性を確保するとともに、成形後のパネルの塗装焼付処理などの、比較的低温の人工時効( 硬化) 処理時の加熱により時効硬化して耐力が向上し、必要な強度を確保できるBH性 (ベークハード性、人工時効硬化能、塗装焼付硬化性) がある。
また、6000系Al合金板は、Mg量などの合金量が多い、他の5000系のAl合金などに比して、合金元素量が比較的少ない。このため、これら6000系Al合金板のスクラップを、Al合金溶解材 (溶解原料) として再利用する際に、元の6000系Al合金鋳塊が得やすく、リサイクル性にも優れている。
ただし、6000系Al合金板は、5000系Al合金板に比べてプレス成形性が良くないため、改善策としてMgやSi以外の第三、四元素を添加し、或いは合金元素の添加に併せて結晶粒径や晶析出物の分散状態を制御する方法が試みられてきた。
しかしこれらの方法でも、近年ますます厳しさを増している需要者の要望を満たすまでには至っておらず、更なるプレス成形性の向上が求められている。
プレス成形性の向上のために、6000系Al合金板の伸びフランジ性を改善することが従来から提案されている。例えば、穴拡げ率λ60%以上を確保する為に、板の r値の異方性を以下の条件で規定することが提案されている(特許文献1参照)。 r≦-0.722×Δr+0.5739 [ここで、r=1/4 ×(r0+2r45+r90) 、Δr=1/2 ×(r0+r90-2r45) を意味する] 。このような組織を得るために、特許文献1は、熱延後で冷延前に、昇温速度100 ℃/min以上、温度450 ℃以上で焼鈍を行い、この焼鈍後に冷却速度600℃/min以上で冷却している。そして、最終焼鈍前の冷延率を65%以上として冷延している。ただ、この特許文献1によるλは60〜70%程度のレベルである。
また、穴拡げ加工用アルミニウム合金板として、打ち抜き穴内表面より1mmの範囲内での、後述する硬化率を20%以下とすることが提案されている(特許文献2参照)。硬化率(%)=(打ち抜き穴加工部の硬さ-母材部の硬さ)×100/母材の硬さ。このような組織を得るために、特許文献2では、打ち抜き穴部を、加熱炉、誘導加熱、高温体接触及びバーナー加熱などで、200〜600℃×2 時間以下の加熱を行なっている。
更に、穴拡げ加工用アルミニウム合金圧延板及びその製造方法として、Mg量5.5〜9.5wt.%、Cu量0.3〜1.5wt.% を各々含有し、圧延方向と平行方向の結晶粒径が100μm以下、圧延方向と平行方向の平均結晶粒径/板圧方向の平均結晶粒径が2以下とすることが提案されている(特許文献3参照)。このような組織を得るために、特許文献3では、以下の式で規定した温度で熱間圧延を行った後、1回または中間焼鈍を挟んだ2回の冷延を施し、さらに最終冷延の冷延率は20%以上としている。熱延温度(℃)=凝固開始温度(℃)-25×Mg量(wt.%)+15×Cu量(wt.%)+10×Zn 量(wt.%)。ただ、この特許文献3によるλの最大値は67%程度である。
一方、6000系Al合金板の曲げ加工性を改善することも従来から提案されている。例えば、Mg-Si系化合物の最大径が10μm以上、2〜10μm径の化合物数が1000個/mm2以下とし、内側限界曲げ半径が0.5mm以下とすることが提案されている(特許文献4参照)。このような組織を得るために、特許文献4では、均熱条件は1 回目が450 ℃以上の、2 段階、または2 回の均熱を行なっている。
更に、板の曲げ加工性やヘム加工性を改善する方法としては、6000系Al合金板の集合組織に異方性を持たせる方法が種々提案されている。例えば、板の集合組織を結晶粒方位差によって規定することが提案されている (特許文献5、8参照)。また、Cube方位の強度比、密度などや、 r値の異方性で規定することが提案されている (特許文献6、7、9、10、11、12参照)。
そして、6000系Al合金板の集合組織に異方性を持たせるための製造方法も、上記特許文献5、8などでは、Al合金鋳塊を、500 ℃以上融点未満の温度で均質化処理した後、500 ℃以上の温度から350 〜450 ℃の温度範囲まで冷却して熱間圧延を開始する(2段均熱) か、500 ℃以上の温度から一旦室温まで冷却し、350 〜450 ℃の温度範囲まで再加熱して熱間圧延を開始する(2回均熱) 、段階的な均質化処理方法が提案されている。
また、これに対して、熱間圧延されたAl-Mg-Si系Al合金板を、10〜50% の圧下率で冷間圧延後、210 〜440 ℃の温度で中間焼鈍し、更に70% 以上の圧下率で冷間圧延した後、溶体化および焼入れ処理して、Al合金板の集合組織に異方性を持たせることも提案されている (特許文献13参照)。
特開2003-129156 号公報 (特許請求の範囲) 特開2004-197184号公報( 特許請求の範囲) 特許第3066091号公報 (特許請求の範囲) 特開2002-356730号公報 (特許請求の範囲) 特開2003-171726号公報 (特許請求の範囲) 特開2003-277869 号公報 (特許請求の範囲) 特開2003-277870 号公報 (特許請求の範囲) 特開2003-166029 号公報 (特許請求の範囲) 特開2003-226926 号公報 (特許請求の範囲) 特開2003-226927 号公報 (特許請求の範囲) 特開2003-321723 号公報 (特許請求の範囲) 特開2003-268475 号公報 (特許請求の範囲) 特開2003-321754 号公報 (特許請求の範囲)
前記した伸びフランジ性改善のための一連の従来技術(特許文献1〜3)では、伸びフランジ性は改善されるものの、曲げ加工性の改善が十分ではない。また特許文献2では、打ち抜き穴部の加熱のために、製造コストが増したり、付随設備が必要となったりする。更に、特許文献3は、実質的には5000系合金板であり、6000系Al合金板についての開示が無い。
また、集合組織に異方性を持たせた一連の従来技術(特許文献4〜13)では、6000系Al合金板のCube方位を集積させて、大傾角粒界に比して小傾角粒界の割合を増し、粒界段差を少なく、あるいは生じなくする。この結果、曲げの際に、粒界段差が割れの起点とならず、板の曲げ加工性やヘム加工性を改善できる。
しかし、特許文献4〜13は、共通して、伸びフランジ性の開示が無いとともに、伸びフランジ性の改善が十分ではない。
本発明はこの様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、曲げ加工性を劣化させること無く、優れた伸びフランジ性を有するAl合金板と、このAl合金板を確実に得ることのできる製造方法を提供しようとするものである。
この目的を達成するための、伸びフランジ性および曲げ加工性に優れたアルミニウム合金板の要旨は、質量% で、Si:0.1〜2.5%、Mg:0.1〜3.0%を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金板であって、このアルミニウム合金板のr値の内、圧延方向に対して各々、0 °方向のr値をr0 、45°方向のr値をr45、90°方向のr値をr90とした時、Δr=(r0 −2×r45+r90)/2で表され、r0とr90 に対するr45 の異方性を示す指標であるΔrが0.2 〜0.6 であるとともに、(r0 +2×r45+r90)/4で表されるr値の平均値が0.5 以上であり、更に、このアルミニウム合金板の圧延方向に対して45°方向の均一伸びが24%以上で、かつ穴拡げ率λが61% 以上であることとする。
また、上記目的を達成するための、伸びフランジ性および曲げ加工性に優れたアルミニウム合金板の製造方法の要旨は、上記要旨のアルミニウム合金板を得る方法であって、質量% で、Si:0.1〜2.5%、Mg:0.1〜3.0%を含み、残部がAlおよび不純物からなるアルミニウム合金鋳塊を、500 ℃以上、融点未満の温度で均質化熱処理後に、一旦200 ℃以下の温度まで冷却して390 〜480 ℃の温度まで再加熱するか、または390 〜480 ℃の温度まで冷却し、いずれもこの温度範囲で保持後に熱間圧延を開始するとともに、熱間圧延の終了温度を170 〜300 ℃として熱延板を製作し、更に、この熱延板を470℃以上の温度で焼鈍を施した後に、100℃/s以上の速度で冷却する処理を行なった後に、引き続き冷間圧延を行なって冷延板を製作し、この冷延板を溶体化処理したアルミニウム合金板のr値の内、圧延方向に対して各々、0 °方向のr値をr0 、45°方向のr値をr45、90°方向のr値をr90とした時、Δr=(r0 −2×r45+r90)/2で表され、r0とr90 に対するr45 の異方性を示す指標であるΔrを0.2 〜0.6 とするとともに、(r0 +2×r45+r90)/4で表されるr値の平均値が0.5 以上とし、更に、この冷延板の圧延方向に対して45°方向の均一伸びを24%以上とすることである。
6000系アルミニウム合金板 (冷延板を溶体化処理した板) において、伸びフランジ性と板のr値や、伸びフランジ性と板の r値 (ランクフォード値) の異方性とが相関し、板のr値を高めたり、 r値の異方性 (ランクフォード値の異方性) を抑制すれば、バーリング試験によって求められる、穴拡げ率λが高くなることは、前記特許文献1などで公知である。
6000系アルミニウム合金板の伸びフランジ性を向上させると、一方で、曲げ加工性が低下するという新たな問題ある。
これに対して、本発明では、 r値の異方性 (ランクフォード値の異方性) の抑制や、板のr値の平均値を高めることに加えて、6000系アルミニウム合金板の、特に、圧延方向に対して45°方向の均一伸びを向上させる。
本発明者らの知見によれば、6000系アルミニウム合金板の伸びフランジ性 (λ) を評価する穴拡げ試験時において、穴拡げ部分のクラックの発生方向は圧延方向に対して概ね45°方向となる。したがって、このクラックの発生方向を改善する、即ち、板の45°方向の均一伸びを高めることによって、高い伸びフランジ性を得ることができる。
この45°方向の均一伸び向上は、前記荒鈍以前の、均質化熱処理および熱間圧延の工程において、粗大な再結晶粒の生成や、粒界における金属間化合物析出相 (主として、Mg-Si 系) の形成を抑制することによって実現される。
粗大な再結晶粒や、粒界における金属間化合物析出相が多量に形成された場合、6000系アルミニウム合金板の、特に、上記圧延方向に対して45°方向の均一伸びが顕著に低下する。
したがって、本発明における圧延方向に対して45°方向の均一伸びの規定は、単なる板の特性の規定では無く、粗大な再結晶粒や粒界における析出相の形成状況の指標でもある。即ち、煩雑な板の組織分析によって、これら粗大な再結晶粒や粒界における析出相の形成状況を直接把握しなくても、前記45°方向の均一伸びの把握によって、これらの形成状況を類推することができる。
このように、6000系アルミニウム合金板の、圧延方向に対して45°方向の均一伸びの向上と、上記板の r値の異方性の抑制や、板のr値の平均値の向上によって、本発明では、6000系アルミニウム合金板の伸びフランジ性を向上させることができるとともに、曲げ加工性を低下させることが無い。
以下に、本発明の実施態様につき具体的に説明する。
(化学成分組成)
先ず、本発明が対象とする6000系Al合金板の化学成分組成について説明する。本発明が対象とする6000系Al合金板は、前記した自動車材などとして、優れた成形性やBH性、強度、溶接性、耐食性などの諸特性が要求される。このような要求を満足するために、Al合金板の基本組成は、質量% で、Si:0.1〜2.5%、Mg:0.1〜3.0%を含み、残部がAlおよび不純物からなるものとする。
なお、その他の元素としては、Fe、Mn、Cr、Zr、V 、Ti、Zn、Cuがあり、これらの元素は、AA乃至JIS 規格などに沿った6000系アルミニウム合金の各不純物レベルの含有量 (許容量) まで許容される。また、後述する実施例で示したように、Fe:0.15 質量% 、Zr:0.10質量% 、Cu:0.60質量% 、Zn:0.10質量% までは許容され、これらの元素(Fe 、Mn、Cr、Zr、V 、Ti、Zn、Cu) は単独または2 種以上を含んでも良い。
上記合金元素以外のその他の合金元素やガス成分も不純物である。しかし、リサイクルの観点から、溶解材として、高純度Al地金だけではなく、6000系合金やその他のAl合金スクラップ材、低純度Al地金などを溶解原料として使用して、本発明Al合金組成を溶製する場合には、これら他の合金元素は必然的に含まれることとなる。したがって、本発明では、目的とする本発明効果を阻害しない範囲で、これら不純物元素が含有されることを許容する。
上記6000系Al合金における、各元素の好ましい含有範囲と意義、あるいは許容量について以下に説明する。
Si:0.1〜2.5%。
SiはMgとともに、固溶強化と、塗装焼き付け処理などの前記低温での人工時効処理時に、GPゾーンなどの化合物相を形成して、時効硬化能を発揮し、自動車パネルとして必要な、例えば170MPa以上の必要強度を得るための必須の元素である。更に、本発明6000系Al合金板にあって、伸びフランジ性及び曲げ性などの諸特性を兼備させるための最重要元素である。
また、パネルへの成形後の低温塗装焼き付け処理後(2% ストレッチ付与後170 ℃×20分の低温時効処理時) の耐力を高くする、優れた低温時効硬化能を発揮させるためには、Si/Mg を質量比で1.0 以上とし、SiをMgに対し過剰に含有させた過剰Si型6000系Al合金組成とすることが好ましい。
Si量が0.1%未満では、前記時効硬化能、更には、自動車パネル用途などに要求される、伸びフランジ性及び曲げ性、あるいはプレス成形性などの諸特性を兼備することができない。一方、Siが2.5%を越えて含有されると、粗大な化合物が増加して破壊の起点になり、伸びフランジ性及び曲げ性を低下させる。更に、溶接性をも著しく阻害する。したがって、Siは0.1 〜2.5%の範囲とする。なお、自動車のアウタパネルなどでは、ヘム加工性が特に重視されるため、フラットヘム加工性などの曲げ性をより向上させるためには、Si含有量を0.6 〜2.0%と、より低めの範囲とすることが好ましい。
Mg:0.1〜3.0%。
Mgは、固溶強化と、塗装焼き付け処理などの前記人工時効処理時に、SiとともにGPゾーンなどの化合物相を形成して、時効硬化能を発揮し、パネルとして、例えば170MPa以上の必要強度を得、更に、伸びフランジ性及び曲げ性を得るための必須の元素である。
Mgの0.1%未満の含有では、絶対量が不足するため、人工時効処理時に前記化合物相を形成できず、時効硬化能を発揮できない。このためパネルとして必要な170MPa以上の必要強度が得られない。
一方、Mgが3.0%を越えて含有されると、却って、粗大な化合物が増加して破壊の起点になり、伸びフランジ性及び曲げ性を低下させる。したがって、Mgの含有量は、0.1 〜3.0%の範囲とする。また、自動車のアウタパネルなどで重視されるフラットヘムなどのヘム加工性をより向上させるために、Si含有量を前記0.6 〜2.0%のより低めの範囲とする場合には、これに対応して、Mg含有量も0.4 〜2.5%と低めの範囲とすることが好ましい。
Fe、Mn、Cr、Zr、V 、Ti、Znは、スクラップなど溶解原料などから混入しやすい元素であるが、結晶粒の微細化効果もあり、加工性の向上効果もある。但し、含有量が多すぎると、粗大な化合物を形成し、それが破壊の起点として作用するため、却って加工性が劣化する。したがって、各々、上記上限までの含有は許容する。
Cu もスクラップなど溶解原料などから混入しやすい元素であるが、人工時効処理の条件で、Al合金材組織の結晶粒内へのGPIIやβ" 相析出を促進させる効果もある。また、時効処理状態で固溶したCuは成形性を向上させる効果もある。一方、粗大な化合物が増加して破壊の起点になり、伸びフランジ性及び曲げ性を低下させる。また、耐応力腐食割れ性や、塗装後の耐蝕性の内の耐糸さび性、また溶接性を著しく劣化させる。このため、上記上限までの含有は許容する。
(組織特性)
次ぎに、本発明が対象とする6000系Al合金板の組織特性について説明する。
(r値の異方性)
本発明では 6000 系アルミニウム合金板において、伸びフランジ性を向上させるために、板の r値 (ランクフォード値) の異方性を抑制する。但し、板のr 値の異方性 (ランクフォード値の異方性) が小さくなり過ぎると、却って曲げ性が低下する。
このため、本発明では、r0とr90 に対するr45 の異方性を示す指標であるΔrを0.2 〜0.6 の範囲と規定する。
ここで、r0 は圧延方向に対して0 °方向のr値を、r45は圧延方向に対して45°方向のr値、r90は圧延方向に対して90°方向のr値である。そして、Δrは、r0とr90 に対するr45 の異方性を示す指標として、Δr=(r0 −2×r45+r90)/2で表される。
Δrが0.2 未満では、良好な曲げ性が得られない。反対に、Δrが0.6 を超えた場合、穴拡げ時の局所的な板厚減少が著しくなり、くびれの発生が促進され、伸びフランジ性が低下する。したがって、Δrは0.2 〜0.6 、好ましくは0.3 〜0.5 の範囲とする。
(r値の平均値)
曲げ加工性を保証するためには、前記各r値に対し、(r0 +2×r45+r90)/4で表されるr値の平均値が0.5 以上とする。 r値の平均値が0.50より小さいと、r 値が小さくなり過ぎ、曲げ加工性を保証できない。言い換えると、伸びフランジ性と曲げ加工性とを兼備できない。したがって、r値の平均値は0.50以上、好ましくは0.55以上とする。
これらr 値の測定は、板について、圧延方向に対する角度がそれぞれ0、45および90°方向を長手方向とする引張試験片を採取し、これら各引張試験片について、各々はじめに試験片中央部の板幅及び板厚を測定し、次に、JIS5号引張試験により歪み量を15%与えた段階での板幅及び板厚をそれぞれ測定し、下記式に代入することで、r0 、r45、r90のr値を各々得る。なお、各r値については3回の試験を行った平均値とした。
r=ln(W0/W)/ln(t0/t)。ここで、W0、t0:引張試験前の幅及び厚さ、W、t:15%引張後の幅及び厚さ。
更に、Δr 、r 値の平均値は、これらの各r 値を上記式に各々代入することで求められる。
(45 °方向の均一伸び)
従来から、6000系アルミニウム合金板において、伸び特性が高いほど伸びフランジ性が向上することが知られている。しかし、6000系アルミニウム合金板の伸びフランジ性 (λ) を評価する穴拡げ試験時において、穴拡げ部分のクラックの発生方向は圧延方向に対して概ね45°方向となることまでは知られていない。したがって、このクラックの発生方向の板特性を改善し、板の45°方向の均一伸びを高めることによって、高い伸びフランジ性を得ることができることまでは知られていない。
本発明では、70%以上の高い伸びフランジ性を得るために、6000系アルミニウム合金板の圧延方向に対して45°方向の均一伸びを24%以上、好ましくは26%以上と規定する。この均一伸びが24%より低いと、より厳しくは26%より低いと、高い伸びフランジ性が得られない。
(ランダム方位)
本発明では、前記した通り、 6000 系アルミニウム合金板の伸びフランジ性を向上させるために、板の r値 (ランクフォード値) の異方性を抑制する。ただ、この特性を、集合組織の点から保証するために、結晶方位分布関数解析によるランダム方位を一定割合以上とすることが好ましい。
通常のアルミニウム合金においては、下記の集合組織が形成することが知られている。(例えば、長島晋一編著「集合組織」(丸善株式会社刊)および軽金属学会「軽金属」解説 Vol.43 (1993) P 285 -293)ここで集合組織のでき方は同じ結晶系でも加工法によって異なり、圧延による板材の場合には、圧延面と圧延方向で表す必要がある。圧延面は、 [○○○] で表現され、圧延方向は<△△△>で表現される(○、△は整数を示す)。
かかる表現方法に基づいて、各方位は下記のようにあらわされる。
Cube方位 :{001}<100>
Goss方位 :{011}<100>
Brass方位:{011}<211>
Cu方位 :{112}<111>
(若しくは、D方位:{4 4 11}<11 11 8>)
S方位 :{123}<634>
PP方位 :{011}<1−22>
RW方位 :{001}<110> (Cube方位が板面回転した方位)
など多くの種類の結晶方位が存在する。
本発明では、ランダム方位を、ランダム方位(%)=100−Cube方位(%)−Goss方位(%)−Brass方位(%)−Cu方位(%)−S方位(%)−PP方位(%)−RW方位(%)と規定する。
そして、前記した通り、 6000 系アルミニウム合金板の伸びフランジ性の向上目的から、好ましくは、上記ランダム方位を一定割合以上とする。即ち、板の集合組織の内、ランダム方位の面積率を高め、上記方位から選択される、異方性を有するCube方位、Goss方位、Brass方位、Cu方位、S方位、PP方位、RW方位などの、各集合組織の方位成分の平均面積率の総和の方を低減する。
より具体的には、アルミニウム合金板の表面から板厚の1/4 深さ部分における結晶方位分布関数解析によるランダム方位の面積率が55〜75%であると規定する。
ランダム方位の面積率が55%未満では、板の r値 (ランクフォード値) の異方性が大きくなる。一方、ランダム方位の面積率を75%を超えて大きくすることは、圧延材においては難しい。
本発明における集合組織分布の測定箇所は板厚方向の直角断面とし、合金板の表面から板厚方向1/4部の任意の点で測定する。即ち、最終焼鈍後の板厚断面の1/4 部の任意の点を通り、板表面に平行な面について、SEM−EBSP(Electron Back Scattering (Scattered) Pattern)を用いて測定する。但し、上記各集合組織の面積率は、各理想方位からのずれが±15゜以内の方位領域の面積率とする。
より具体的には、上記部位から複数サンプリングした板断面試料表面に機械研磨して、板表面から約0.25mmを機械研磨により削り落とし、更に、バフ研磨および電解研磨を行なって表面を調整した試料を用意する。次に、測定部位は試料研磨表面、測定領域は1500μm×1500μmの領域、測定ステップ間隔は5 μmとして、集合組織組成を複数箇所測定し、各方位の平均面積率を算出する。
SEM−EBSPは、例えば、日本電子社製SEM(走査電子顕微鏡:JEOL JSM 5410)を用い、EBSP測定・解析システムは、例えば、TSL 社製(OIM )を用いる。
(平均結晶粒径)
このようにして得られたAl合金板の平均結晶粒径は50μm 以下の微細化させることが好ましい。結晶粒径をこの範囲に細かく乃至小さくすることによって、伸びフランジ性及び曲げ性、あるいはプレス成形性が確保乃至向上される。結晶粒径が50μm を越えて粗大化した場合、伸びフランジ性及び曲げ性、あるいはプレス成形性が著しく低下する可能性が高い。
なお、ここで言う結晶粒径とは板の長手(L) 方向の結晶粒の最大径である。この結晶粒径は、Al合金板を0.05〜0.1mm 機械研磨した後電解エッチングした表面を、光学顕微鏡を用いて観察し、前記L 方向に、ラインインターセプト法で測定する。1 測定ライン長さは0.95mmとし、1 視野当たり各3 本で合計5 視野を観察することにより、全測定ライン長さを0.95×15mmとする。
(製造方法)
次ぎに、本発明Al合金板の製造条件について以下に説明する。通常のAl合金板は鋳造→均質化熱処理→熱間圧延→中間焼鈍→冷間圧延→最終焼鈍の各工程を経て製造される。しかし、Al合金板の化学組成や各工程の設定条件によって得られる板の、粗大な再結晶粒や粒界における析出相の形成状況や、板の異方性の状態は変わるので、一連の製造工程として総合的に条件を選択して決定すべきである。以下に、本発明で意図する、優れた伸びフランジ性及び曲げ性を有するAl合金を確実に得るための好ましい条件について説明する。
先ず、溶解、鋳造工程では、上記6000系成分規格範囲内に溶解調整されたAl合金溶湯を、連続鋳造圧延法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。
このAl合金鋳塊に500 ℃以上融点未満の温度で均質化熱処理を施す。この均質化熱処理は組織の均質化、すなわち、鋳塊組織中の結晶粒内の偏析をなくすことを目的とする。熱処理温度が500℃より低いと鋳塊の粒内偏析を十分になくすことができず、これが破壊の起点として作用するため、伸びフランジ性及び曲げ性が劣化する。また、熱処理時間は、鋳塊の厚みにもよるが、2hr 以上とすることが好ましい。2hr より低いと鋳塊の粒内偏析を十分になくすことができず、これが破壊の起点として作用するため、伸びフランジ性及び曲げ性が劣化する可能性がある。
この均質化熱処理(1回目の均質化熱処理) 後に、一旦200 ℃以下の温度まで冷却して390 〜480 ℃の温度まで再加熱する均質化熱処理(2回均熱) を行なうか、または、前記均質化熱処理後に、390 〜480 ℃の温度まで冷却し、いずれもこの温度範囲で保持する均質化熱処理(2段均熱) を行なった後に、熱間圧延を開始する。これによって、1 回のみの均質化熱処理に比して、伸びフランジ性及び曲げ性がより向上する。
これら2 回均熱あるいは2 段均熱のいずれの場合においても、上記1 回目および、上記2 回目あるいは2 段目の均質化熱処理における、前記各温度範囲での保持によって、熱間圧延前の組織が最適化される。この保持温度が低いと、粒界における析出相の形成が促進され、伸びフランジ性及び曲げ性が劣化する。一方、保持温度が高過ぎると、強度が大きくなりすぎ、伸び特性が低下する為に伸びフランジ性も低下する。
上記1 回目および、上記2 回目あるいは2 段目の均質化熱処理における、保持時間は 2〜15hrを目安とする。保持時間が2hr より短いと、強度が大きくなりすぎ、伸び特性が低下する為に伸びフランジ性も低下する可能性がある。一方、保持時間が15hrより長いと、粒界における析出相の形成が促進され、却って伸びフランジ性及び曲げ性が劣化する可能性がある。
これらの均質化熱処理後に、390 〜480 ℃の温度で熱間圧延を開始する。熱間圧延開始温度が480 ℃を超えた場合、再結晶が生じて熱間圧延時に粗大な再結晶粒が生成し、伸びフランジ性及び曲げ性が劣化する。また、熱間圧延開始温度が390 ℃未満の場合、熱間圧延自体が困難となる。
更に、熱間圧延の終了温度を170 〜300 ℃として、コイル状、板状などの熱延板を製作する。熱間圧延終了温度が300 ℃を超えた場合、SiとMgとの質量比Si/Mg が1 以上であるような過剰Si型の6000系Al合金板は再結晶しやすく、伸びフランジ性及び曲げ性が劣化する。熱間圧延の終了温度が170 ℃未満では、熱間圧延自体が困難となる。
この熱延板を、冷間圧延前に、470 ℃以上の温度で焼鈍 (荒鈍) を施した後に、100 ℃/s以上の速度で冷却する処理を行なう。荒鈍温度が470 ℃より低いと、粒界における析出相の形成が促進され、伸びフランジ性及び曲げ性が劣化する。また、上記冷却速度が100 ℃/sより小さいと、冷却過程で粒界における析出相の形成が促進され、伸びフランジ性及び曲げ性が劣化する。
伸びフランジ性及び曲げ性を兼備させるためには、前記2 回均熱あるいは2 段均熱とともに、この条件下での荒鈍工程が必須である。従来の伸びフランジ性向上を意図した技術が、曲げ性を兼備できていなかったのは、均熱条件が前記2 回均熱あるいは2 段均熱となっていなかったせいでもある。また、従来の曲げ性向上を意図した技術が、伸びフランジ性を兼備できていなかったのは、この荒鈍工程が無かった (荒鈍工程を省略して冷間圧延を行なっていた) せいでもある。
この荒鈍後に、引き続き冷間圧延を行なって、所望の板厚の冷延板 (コイルも含む) を製作する。
冷延後の板は、調質処理として、必須に溶体化および焼入れ処理されてAl合金板とされる。溶体化および焼入れ処理は、後の塗装焼き付け硬化処理などの人工時効硬化処理によりGPゾーンなどの化合物相を十分粒内に析出させるために重要な工程である。この効果を出すための溶体化処理条件は、500 〜560 ℃の温度範囲で行うのが好ましい。これによって、Al合金板の伸びフランジ性及び曲げ性を兼備した高強度の板とする。
溶体化処理後の焼入れの際には、冷却速度は50℃/ 分以上の急冷とすることが好ましい。冷却速度が50℃/ 分未満の遅い場合には、焼入れ後の強度が低くなり、時効硬化能が不足し、前記低温短時間の低温での人工時効処理により170MPa以上の高耐力を確保できない。
また、粒界上にSi、Mg2Si などが析出しやすくなり、プレス成形や曲げ加工時の割れの起点となり易く、Al合金板の伸びフランジ性及び曲げ性が低下する。この冷却速度を確保するために、焼入れ処理は、ファンなどの空冷でもよいが冷却速度が遅くなる可能性が大きく、ミスト、スプレー、浸漬等の水冷手段から選択して行うことが好ましい。
本発明では、成形パネルの塗装焼き付け工程などの人工時効硬化処理での時効硬化性を高めるため、溶体化焼入れ処理後のクラスターの生成を抑制し、GPゾーンの析出を促進するために、予備時効処理をしても良い。この予備時効処理は、50〜100 ℃、好ましくは60〜90℃の温度範囲に、1 〜24時間の必要時間保持することが好ましい。また、予備時効処理後の冷却速度は、1 ℃/hr 以下であることが好ましい。
この予備時効処理として、溶体化処理後の焼入れ終了温度を50〜100 ℃と高くした後に、直ちに再加熱乃至そのまま保持して行う。あるいは、溶体化処理後常温までの焼入れ処理の後に、直ちに50〜100 ℃に再加熱して行う。
また、連続溶体化焼入れ処理の場合には、前記予備時効の温度範囲で焼入れ処理を終了し、そのままの高温でコイルに巻き取るなどして行う。なお、コイルに巻き取る前に再加熱しても、巻き取り後に保温しても良い。また、常温までの焼入れ処理の後に、前記温度範囲に再加熱して高温で巻き取るなどしてもよい。
この他、用途や必要特性に応じて、更に高温の時効処理や安定化処理を行い、より高強度化などを図ることなども勿論可能である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
次に、本発明の実施例を説明する。表1 に示す1 〜27の各組成の6000系Al合金をDC鋳造によって鋳造した400mm 厚の鋳塊を、表2 に示す種々の条件で、均質化熱処理 (均熱とも略記) および熱間圧延を行う。得られた各熱延板について、表2 に示す種々の条件で荒鈍を施した後、冷間圧延、溶体化および焼入れ処理を行い、厚さ1mmの最終板を得た。なお、表1 中の各元素の含有量の表示において、「−」の表示は、検出限界以下であることを示す。
均熱処理は、表2 に示す加熱温度と保持時間の1 回目の均熱の後に、一旦室温まで冷却した後、更に表2 に示す加熱温度と保持時間の2 回目の均熱を行なう2 回均熱と、表2 に示す加熱温度と保持時間の1 回目の均熱の後に、更に表2 に示す温度まで冷却して保持を行なって、2 回目の均熱を行なう2 段均熱との2 種類とした。
この均熱後に、表2 に示す各開始温度と各終了温度で、厚さ5mmtまで熱間圧延した。この熱延板を、表2 に示す温度と冷却速度で荒鈍した後、冷間圧延を行い、厚さ1.0mmtの冷延板を得た。そして、この冷延板を、連続式の熱処理設備で、各例とも共通して、510 ℃の溶体化処理温度に到達した時点で (保持時間 0秒) 、直ちに室温まで200 ℃/ 秒の急冷にて焼入れ、この焼入れ後直ちに、70℃の温度で1 時間保持する予備時効処理を行った (保持後は冷却速度0.6 ℃/hr で徐冷) 。
これら調質処理後の各Al合金板から供試板 (ブランク) を切り出し、前記調質処理後 3カ月間 (90日間) の室温時効後の各供試板の異方性として、Δr 、r 値の平均値、ランダム方位面積率(%) を測定した。また、同じく、平均結晶粒径 (μm)、圧延方向に対し45°の方向の0.2%耐力 (MPa)と均一伸び(%) 、更に、伸びフランジ性 (λ:%) 、圧延方向に対し0 °45°90°の各方向の曲げ性などを各々測定、評価した。これらの結果を表3 に示す。
Δr 、r 値の平均値、ランダム方位面積率(%) 、平均結晶粒径 (μm)は前記した方法で求めた。
45°方向の0.2%耐力 (MPa)と均一伸びは、圧延方向に対する角度が45°方向を長手方向とするJIS 5 号引張試験片を採取し、JIS Z 2201にしたがって行った。クロスヘッド速度は5mm/分で、試験片が破断するまで一定の速度で行った。各サンプルについて3回の試験を行い、その平均値を採用した。
なお、45°方向の均一伸びは、上記引張試験により応力-歪み曲線を得た後、最大応力点における歪み量(%)から0.2 %を引いた値を45°方向の均一伸びとした。
伸びフランジ性の評価のための、穴拡げ試験は、先ず、1辺が70mmの正方形の板に直径10mmの穴を打ち抜いた。そして 、直径33mmの60°円錐ポンチを用いて、バリを上面(ダイス面)側として、しわ押さえ力3トン、ポンチ速度10mm/minで穴拡げ試験を行い、前記打ち抜き穴の縁に破断が発生した段階でポンチを止め、破断後の穴内径(d s )と成型試験前の初期穴径(d0)から下記式によって穴拡げ率(λ)を求めた。
λ=(d s -d0)/d0 ×100(%)
破断後の穴内径については、圧延方向と、圧延方向に垂直な方向でそれぞれ測定し、穴拡げ率を各々求めた後に平均を取って、各サンプルの穴拡げ率とした。さらに、各サンプルについて3回の穴拡げ試験を行い、その平均値を最終的に穴拡げ率(λ:%)とした。
曲げ性の評価は、供試板から長さ150mm ×幅30mmの曲げ加工試験片を採取し、フラットヘミング加工を想定した曲げ性を評価した。即ち、試験片に対して、15%の歪みを予め加えた後、角度180°の密着曲げ(内側曲げ半径R=約0.25mm)を行った。曲げ性の評価は、曲げ加工後の試験片縁曲部の割れ発生程度を目視で確認し、下記基準に基づいて5 段階で評価した。
0:肌荒れ、及び微小な割れが無い。
1:肌荒れが僅かに発生している。
2:肌荒れが発生しているものの微小なものを含めた割れは無い。
3:微小な割れが発生。
4:大きな割れが発生。
5:大きな割れが複数あるいは多数発生。
上記のランクの内、0〜2段階が合格で、3〜5段階は不合格である。
表1 、2 に示す通り、発明例1 〜9 は、本発明成分組成範囲内で、かつ、本発明の好まし条件範囲で、均質化熱処理および熱間圧延し、更に、荒鈍を行なっている。このため、表3 に示す通り、得られたAl合金板のΔrが0.2 〜0.6 の範囲内であるとともに、r値の平均値が0.5 以上であり、更に、このアルミニウム合金板の圧延方向に対して45°方向の均一伸びが24%以上である。また、アルミニウム合金板の組織もランダム方位の面積率が55〜75%の範囲である。この結果、発明例1 〜9 は、伸びフランジ性および曲げ加工性に優れている。
これに対して、比較例10〜27は、各々発明条件を外れている。このため、伸びフランジ性および/または曲げ加工性が発明例に比して著しく劣る。
比較例10は1 回目の均熱処理の温度が低過ぎる。
比較例11は1 回目の均熱処理の時間が短過ぎる。
比較例12は1 回のみの均熱処理であることに加えて、熱延開始温度が高過ぎる。比較例13は2 回目の均熱処理の温度が低過ぎることに加えて、熱延開始温度が低過ぎる。
比較例14は2 回目の均熱処理の温度が高過ぎることに加えて、熱延終了温度が高過ぎる。
比較例15は1 回目の均熱処理の時間が短過ぎる。
比較例16は2 回目の均熱処理の時間が長過ぎる。
比較例24、25は1 回のみの均熱処理であることに加えて、熱延開始温度および熱延終了温度が高過ぎる。
比較例17、26は荒焼の温度が低過ぎる。
比較例18は荒焼後の冷却速度が低過ぎる。
比較例27は荒焼工程自体が無い。
比較例19はMg量が上限を超えて多過ぎる。
比較例20はSi量が上限を超えて多過ぎる。
比較例21はFe量が多過ぎることに加えて、熱延開始温度が低過ぎる。
比較例22はTi量が多過ぎる。
比較例23はCu量が多過ぎる。
したがって、以上の実施例の結果から、本発明の各要件の持つ臨界的な意義乃至効果が裏付けられる。
Figure 0004495623
Figure 0004495623
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本発明によれば、曲げ加工性を劣化させること無く、優れた伸びフランジ性を有するAl合金板と、このAl合金板を確実に得ることのできる製造方法を提供できる。この結果、自動車、船舶あるいは車両などの輸送機、家電製品、建築、構造物の部材や部品用として、また、特に、自動車などの輸送機の部材に、6000系Al合金材の適用を拡大できる。

Claims (3)

  1. 質量% で、Si:0.1〜2.5%、Mg:0.1〜3.0%を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金板であって、このアルミニウム合金板のr値の内、圧延方向に対して各々、0 °方向のr値をr0 、45°方向のr値をr45、90°方向のr値をr90とした時、Δr=(r0 −2×r45+r90)/2で表され、r0とr90 に対するr45 の異方性を示す指標であるΔrが0.2 〜0.6 であるとともに、(r0 +2×r45+r90)/4で表されるr値の平均値が0.5 以上であり、更に、このアルミニウム合金板の圧延方向に対して45°方向の均一伸びが24%以上で、かつ穴拡げ率λが61% 以上であることを特徴とする、伸びフランジ性および曲げ加工性に優れたアルミニウム合金板。
  2. 前記アルミニウム合金板の表面から板厚の1/4 深さ部分における結晶方位分布関数解析によるランダム方位の面積率が55〜75%である請求項1に記載の伸びフランジ性および曲げ加工性に優れたアルミニウム合金板。
  3. 請求項1または2のいずれかのアルミニウム合金板を得る方法であって、質量% で、Si:0.1〜2.5%、Mg:0.1〜3.0%を含み、残部がAlおよび不純物からなるアルミニウム合金鋳塊を、500 ℃以上、融点未満の温度で均質化熱処理後に、一旦200 ℃以下の温度まで冷却して390 〜480 ℃の温度まで再加熱するか、または390 〜480 ℃の温度まで冷却し、いずれもこの温度範囲で保持後に熱間圧延を開始するとともに、熱間圧延の終了温度を170 〜300 ℃として熱延板を製作し、更に、この熱延板を470℃以上の温度で焼鈍を施した後に、100℃/s以上の速度で冷却する処理を行なった後に、引き続き冷間圧延を行なって冷延板を製作し、この冷延板を溶体化処理したアルミニウム合金板のr値の内、圧延方向に対して各々、0 °方向のr値をr0 、45°方向のr値をr45、90°方向のr値をr90とした時、Δr=(r0 −2×r45+r90)/2で表され、r0とr90 に対するr45 の異方性を示す指標であるΔrを0.2 〜0.6 とするとともに、(r0 +2×r45+r90)/4で表されるr値の平均値が0.5 以上とし、更に、この冷延板の圧延方向に対して45°方向の均一伸びを24%以上とすることを特徴とする、伸びフランジ性および曲げ加工性に優れたアルミニウム合金板の製造方法。
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