インクジェット式の記録装置(インクジェット記録装置)は、記録手段(記録ヘッド)から記録媒体にインクを吐出して記録を行うものであり、他の記録方式に比べて高精細化が容易で、高速で静粛性に優れ、かつ安価であるという優れた特徴を有する。インクジェット記録装置は、記録速度の向上のため、複数の記録素子を集積配列してなる記録ヘッドとして、インク吐出部としてのインク吐出口及び液路を複数集積したものを用いている。さらにカラー対応する場合には、記録するインク色分の複数の記録ヘッドを備えている。
図1は、一般的なインクジェット記録装置の主要構成を説明するための図である。図において、101は、4色のカラーインク、ブラック、シアン、マゼンタおよびイエローがそれぞれ収容されたインクカートリッジである。それぞれのインクカートリッジ101は、各色のインクを吐出可能な記録ヘッド102に連結し、吐出に伴って消費されたインクを、記録ヘッド102に供給する。106は、記録ヘッド102およびインクカートリッジ101を搭載した状態で、X方向に往復走査可能なキャリッジである。
図2は、記録ヘッド102に配列する複数の吐出口の様子をZ方向から示した図である。201は、記録ヘッド102上に配置する、ブラックインクを吐出するためのノズルである。本例の記録ヘッド102では、ブラックインク用として、40個のノズルが1/600インチの間隔で配備されている。この場合、記録ヘッドをX方向に移動させながら、各吐出口よりインクを吐出すると、記録媒体には副走査方向(Y方向)に600dpi(ドット/インチ;参考値)の解像度でドットが記録される。
再び図1に戻る。103は紙送りローラであり、104の拍車とともに記録媒体Pを抑えながら図の矢印の方向に回転し、記録媒体Pを+Y方向の副走査方向に随時送っていく。また105は給紙ローラ対であり記録媒体Pの給紙を行うとともに、103、104と同様、記録媒体Pを抑える役割も果たす。
記録動作を行っていないとき、あるいは記録ヘッドの回復作業などを行うとき、キャリッジ106は図の点線で示したホームポジション(h)に待機する。記録開始命令が入力されると、ホームポジションにあるキャリッジ106は、+X方向の主走査方向に所定速度で移動し、記録ヘッド102上の複数のノズル201により記録を行う。ホームポジションとは反対側に位置する記録媒体端部までの走査が終了すると、キャリッジ106はホームポジションに戻る。この間に記録媒体はY方向に所定量搬送される。このような工程を繰り返すことにより、記録媒体に順次画像が形成されていく。高速印刷を行う際には、キャリッジ106の+X方向の往路方向と−X方向の復路方向の両方から記録を行うことも出来る。
このようなインクジェット記録装置においては、記録ヘッド製造工程で生じるわずかなノズル単位のばらつきが、記録画像の濃度むらを引き起こし、画像品位を劣化させる原因となることが知られている。具体例を図3、図4を用いて説明する。
図3(a)において、31は記録ヘッドであり、ここでは簡単のため、8個のノズル32によって構成されているものとする。33はノズル32よって吐出されたインク滴であり、通常はこの図のように、揃った吐出量で揃った方向にインクが吐出されるのが理想である。もし、この様な吐出が行われれば、記録媒体には図3(b)に示したように揃った大きさのドットが着弾され、全体的にも濃度ムラの無い一様な画像が得られる(図3(c))。
しかしながら、実際に個々のノズルから吐出されるインク滴の大きさや方向には、図4(a)に示したようなバラツキが含まれている。この場合、記録媒体では図4(b)に示すような記録状態となり、エリアファクターが100%を満たせない白紙の部分が存在したり、必要以上にドットが重なり合う部分が生じたりする。
この様な状態で着弾されたドットの集まりは、図4(c)に示した濃度分布となり、この分布が記録媒体の搬送方向に繰り返して現れる。結果、目視で観察した限りで濃度むらとして感知される。
このような副走査方向に周期的に現れる濃度ムラに対し、既にマルチパス記録とう記録方法が考案・実施されている(例えば特許文献1参照。)。
図5(a)〜(c)は、マルチパス記録方法を説明するための模式図である。マルチパス記録とは、記録媒体の同一領域に対し複数回の記録走査によって画像を完成させる記録方法である。ここでは2回の記録走査で画像を完成される2パスのマルチパス記録方法が例示されている。図5(a)は、複数の記録走査における、記録ヘッド31の副走査方向の位置を示している。1回の記録走査において1つのノズルが記録するドットは、記録データを所定のマスクパターンに従って約半分に間引いたものとなっている。
図6(a)および(b)は、2パスのマルチパス記録に適用可能なマスクパターンの1例を示している。図において、図6(a)は、上部4ノズルに適用されるマスクパターン、図6(b)は下部4ノズルに適用されるマスクパターンである。個々の四角は、1ドットが宛がわれる画素領域を示しており、黒く塗りつぶされた領域がドットの記録を許容する画素、白い領域がドットの記録を許容しない画素をそれぞれ示している。図6(a)および(b)は、互いに補完の関係になっている。
記録媒体の任意の4ノズル幅の画像領域では、1回目の記録走査において記録ヘッドの上4ノズルで図6(a)のパターンが記録される。その後、記録媒体は4ノズル分だけ副走査方向に搬送され、その位置で次の2回目の記録走査が行われる。2回目の記録走査では、記録ヘッドの下4ノズルで図6(b)のパターンが記録される。図6(a)および(b)のパターンは互いに補完の関係になっているので、以上2回の記録走査によって、上記画像領域の記録は完成される。
この様なマルチパス記録方法を用いると、図4で示した記録ヘッドと等しいものを使用しても、各ノズル固有のバラツキの記録画像への影響が半減される。すなわち、記録された画像は図5(b)の様になり、図4(b)のような黒スジや白スジは目立たなくなる。結果、濃度ムラも図5(c)に示す様に図4の場合と比べ、緩和される。
また、マルチパス記録方法は、ノズルばらつきに起因する濃度ムラのみでなく、記録媒体の搬送ばらつきによる黒スジや白スジの発生も低減することが出来る。そして、副走査方向に繰り返される濃度ムラを低減し、画像の一様性を高めることが出来る。但し、1ページの画像を完成させるための記録走査数が増大するので、記録時間が増大してしまうと言う欠点も併せ持っている。よって、一般のインクジェット記録装置では、要求される画像品位や記録速度に応じて、マルチパス記録を行うモードや、マルチパス記録を行わず1パスで画像を記録するモードなど、複数の記録モードを用意していることが多い。
ところで、近年のインクジェット記録装置においては、更に高解像の画像出力への要求が高まっている。そして、この要求に対応するために、副走査方向において、記録ヘッドに配列するノズルの配列ピッチよりも、更に高密度にドットを記録する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この方法では、各記録走査間に行う搬送動作において、ノズル配列ピッチの整数倍でない量で記録媒体を搬送することにより、ノズルの配列ピッチよりも高い解像度での記録を実現している。各記録走査間に行われる搬送動作の搬送量については、一定の搬送量を繰り返す方法や、複数種類の搬送量を交互に繰り返す方法などがあるが、本明細書においては、どの様な搬送量であれ、副走査方向に配列する複数画素が、記録媒体の搬送動作を挟んだ複数の記録走査によって記録されれば、このような記録方法を総称してインターレス記録方法と称することとする。
上記マルチパス記録方法も、インターレス記録方法も、記録媒体の同一画像領域を複数回の記録走査によって完成させる点については一致している。但し、本明細書においては、主走査方向に配列する複数画素を、記録媒体の搬送動作を挟んだ複数の記録走査によってマスクパターンを用いながら記録する手法をマルチパス記録方法と称し、一方、副走査方向にノズルの配列ピッチより高密度に配列する複数画素を、記録媒体の搬送動作を挟んだ複数の記録走査によって記録する手法をインターレス記録方法と称する。
図7は、インターレス記録方法の具体例を説明するための模式図である。ここでは、図2で示した記録ヘッド102を用い、1200×1200dpiの画像を記録する例を示している。更に、本例においては、図6で示したマスクパターンを用い、2パスのマルチパス記録も同時に行っている。
図の右側に示した丸印は、一定の画像領域に記録されるドットとその記録順番を示している。1走査目〜4走査目と示した位置の記録ヘッドは、図2で示した記録ヘッド102の一部を拡大したものである。記録走査ごとに所定の搬送動作が行われるので、画像領域に対応する記録ヘッド102のノズルは、各記録走査で異なったものとなっている。
図8は、本例のインターレス記録を実現するにあたり、記録装置の動作の工程を説明するためのフローチャートである。画像データが入力されると、まずステップS1501により、記録媒体が装置内に給紙される。
続くステップS1502では、ホームポジションに待機していた記録ヘッド102が、X方向(往路方向)に移動しながら図6で示したマスクパターンに従ってドットを記録する。これにより、1走査目が実行される。このとき、図7で示した画像領域において、記録ヘッドのノズルは、同図の1走査目として示したように配置されている。そして、図6(a)のマスクパターンにより、○1と示したドットが当該1走査目で記録される。
次に、ステップS1503において、記録媒体Pは紙送りローラ153によって、+Y方向へ9.5ノズル分(1200dpiの19ドット分)搬送される。この搬送動作によって、記録ヘッドのノズルは、図7の画像領域に対し同図の2走査目として示した位置に配置される。
ステップS1504において、記録ヘッド102は、−X方向(復路方向)に移動しながらドットを記録する。これにより、2走査目が実行される。2走査目のノズルの位置は、1走査目のノズルの位置に対し、半ピッチ分(1200dpiの1画素分)シフトしている。よって、図6(a)のマスクパターンにより、○2と示したドットが当該2走査目で記録される。
更に、ステップS1505において、記録媒体Pは紙送りローラ153によって、+Y方向へ10.5ノズル分(1200dpiの21ドット分)搬送される。この搬送動作によって、記録ヘッドのノズルは、図7の画像領域に対し同図の3走査目として示した位置に配置される。
ステップS1506では、記録すべきデータが未だ残っているか否かを判断する。記録すべきデータが残っていると判断された場合、ステップS1502へ戻り、第3走査を実行する。
第3走査は第1走査と同じ動作であるが、図7の画像領域に対しては、3回目の記録走査となる。記録ヘッドの下半分の領域によってドットが記録されるので、図6(b)のマスクパターンにより○3と示したドットが当該3走査目で記録される。更に搬送動作を行った後のステップS1504は、画像領域に対する4回目の記録走査が行われる。図6(b)のマスクパターンにより、○4と示したドットが記録される。
以上、ステップS1501〜ステップS1506を繰り返すことにより、1200dpiの画像が記録媒体に徐々に形成されていく。
ステップS1506で、記録すべきデータが残っていないと判断された場合、ステップS1507へ進み、記録媒体を排紙する。以上で本処理が終了する。
以上説明したインターレス記録やマルチパス記録を行うことにより、高解像で一様な品位の高い画像を出力することが可能となる。
ところで、インクジェット記録装置においては、記録媒体の先端部や後端部あるいは左右端部に余白を設けずに画像を出力する、いわゆる余白なし記録を実現するものが、近年数多く提供されている。余白なし記録を実現する際、最も問題視されるのは、記録媒体の最端部にインクを付与する際に、当該最端部からはみ出したインクによって、機内が汚染されることである。また、記録媒体の先端部や後端部を記録する際には、記録媒体の支持や搬送精度が不安定になるので、これに起因する画像劣化も問題となる。よって、余白なし記録を実現するインクジェット記録装置においては、上記問題点を克服するための数々の工夫が施されている。
図9(a)〜(c)は、図1で示したインクジェット記録装置が余白なし記録を可能な構成としたときの、記録部の例を示した断面図である。図において、108は、記録媒体を下部から支えるためのプラテンであり、107はプラテンの所定領域に設けられたインク吸収体である。インク吸収体107は、記録媒体の最端部を記録する際に、最端部からはみ出して吐出されたインクを吸収する役割を担っている。
3つの図において、図9(a)は、インク吸収体107が記録ヘッド102のノズル列と同程度の長さを有している場合を示している。また、図9(b)および(c)は、同図(a)に比べインク吸収体の長さを約1/2に低減した状態を示しており、インク吸収体107が給紙ローラ対105からより遠い部分に配置されている状態が図9(b)、より近い部分に配置されている状態が図9(c)となっている。
図9(a)の場合、全てのノズルが対向する位置にインク吸収体が備わっているので、記録媒体の先端部であろうと、後端部であろうと、機内の汚染を招くことなく全ノズルを用いたインクの吐出を行うことが出来る。しかし一方で、インク吸収体107が長い分、記録媒体を下部から支えるプラテン108の領域が短く、記録媒体の支持が不十分な状態となりやすい。特に、記録媒体の先端部や後端部を記録する際は、記録媒体は給紙ローラ対105か搬送ローラ103と拍車104の対のどちらか一方のみに支持されている状態となる。よって、記録媒体の先端が図の様にカールしている場合などには、その先端が、インク吸収体に落ち込みやすく、記録媒体の汚染や搬送不良を招致する恐れがある。
よって、図9(b)や(c)のように、ある程度プラテン108の領域を確保しつつもノズル列の全長より短い長さのインク吸収体107を備え、先端部や後端部を記録する際には、記録ヘッドの一部のノズルによってインクを吐出するようにすることが好ましい。このように、記録媒体の先端部や後端部に限って記録に使用するノズルの数を低減する場合には、各記録走査間に行われる記録媒体の搬送量も低減されることになる。
特許文献3などには、インターレス記録を行いながら余白なし記録を実現するための記録方法が開示されている。同文献では、記録媒体の先端部あるいは後端部において、記録に使用するノズル数や記録媒体の搬送量を徐々に低減していく(あるいは増大していく)様子が詳細に説明されている。
以上説明したような、記録に使用するノズル数や記録媒体の搬送量をページ内で変更する記録方法は、余白なし記録を実現する場合にのみ有効なものではない。余白の有無に関わらず、記録媒体の先端部や後端部では、搬送機構の限界から画像上問題が起こりやすくなる。このような場合にも上述した記録方法は有効に機能することが出来る。
図10(a)〜(c)は、記録媒体の先後端部における搬送問題を説明するための断面図である。図10(a)は、記録媒体の中央部分を記録している状態を示している。記録媒体Pは給紙ローラ対105と、搬送ローラ103と拍車104のローラ対の、2組のローラ対によって挟持・張加され、平面を保った状態が維持されている。すなわち、記録ヘッド102の吐出口面から記録媒体Pへの距離(以下、紙間距離と称す)も一定値Z1が安定して保たれている。
図10(b)は記録媒体の先端部、同図(c)は記録媒体の後端部をそれぞれ記録している状態を示している。先端部や後端部においては、片方のローラ対でしか記録媒体Pを支持することが出来なくなる。よって、記録媒体の搬送精度は図10(a)に比べて低下し、端部の紙間距離も不安定な状態となる。図では、記録媒体の端部が持ち上がり、Z1より小さな紙間距離Z2あるいはZ3になっている状態を示している。
記録媒体の搬送量や紙間距離が不安定になると、記録媒体に記録されるドットの配列も影響を受ける。例えば、搬送量にばらつきがあると、画像上に白スジや黒スジが不規則に発生する。また、マルチパス記録やインターレス記録を行っている場合には、ドット同士の補完関係が損なわれるので、走査幅単位の濃度ムラなどが懸念される。更に、紙間距離の変動は、記録ヘッドから吐出されたインク滴が記録媒体に到達するまでの時間を変動させることになる。本例のようなシリアル型のインクジェット記録装置の場合、このような時間の変動は、キャリッジ進行方向のドット位置ずれとなって現れる。すなわち、この場合でも記録走査間の補完関係が損なわれるので、走査幅単位の濃度むらなどが招致される。
但し、以上説明したような弊害が起こりうる状況にあっても、記録ヘッド内の使用ノズル数や記録媒体の搬送量を低減することで、上記弊害をある程度抑制することが可能となる。なぜなら、例えば搬送量については、その誤差は搬送量の大きさに影響を受けるので、搬送量自体を少なくすれば低減出来るからである。また、紙間距離についても、記録媒体を支持および搬送しているローラ対により近い方のノズルを使用することにより、紙間距離をZ1に近づけることが出来るからである。よって、余白なし記録を行う記録装置、あるいは先端部および後端部の画像品位を高品位に維持しようとする記録装置においては、記録媒体の記録位置によって、使用するノズル数および記録媒体の搬送量を適宜変更制御している。
図11は、余白なし記録を実現するにあたり、記録装置の動作の工程を説明するためのフローチャートである。ここでは、図1の記録装置および図2の記録ヘッドを用い、インターレス記録を行わずに、4パスのマルチパス記録を実行する場合を示している。また、本例において、インク吸収体の位置は、図9(c)に示すように、記録ヘッドの上流側に位置するノズルに対向しているものとする。
図12(a)〜(d)は、本例の4パスのマルチパス記録で適用するマスクパターンを、図6と同様に示した模式図である。但し本例において、同一の記録走査ではノズル列の全域に渡って1種類のマスクパターンが適用され、記録走査ごとに適用するマスクパターンを順次切り替えていくものとする。図12(a)は、4n+1走査目(nは0以上の整数)の記録走査で適用されるマスクパターン、同図(b)は4n+2走査目の記録走査で適用されるマスクパターン、同図(c)は4n+3走査目の記録走査で適用されるマスクパターン、同図(d)は4n走査目の記録走査で適用されるマスクパターンである。図12(a)〜(d)のマスクパターンは、互いに補完の関係になっている。
画像データが入力されると、まずステップS1001により、記録媒体が装置内に給紙される。続くステップS1002では、記録媒体の先端部に対する記録を実行する。
図13(a)〜(f)は、本例のマルチパス記録において、個々のステップの記録動作を説明するための模式図である。ここで、図13(a)は、ステップS1002での記録動作、すなわち記録媒体の先端部に対する記録動作を示している。図の1走査目〜5走査目と示した位置の記録ヘッドは、記録媒体Pに対する各記録走査の記録ヘッドの位置を示している。
本例では、40ノズルの記録ヘッド102を用いて4パスのマルチパス記録を行っているので、記録ヘッド102は10ノズルずつ4つの領域に分割して考えることが出来る。以下の説明では、便宜上、記録ヘッドに配列する40個のノズルに対し、搬送ローラ側から順に1、2・・・40と番号を振って説明する。
ステップS1002では記録媒体の先端部に対する記録動作を行っている。本例の記録装置では、図9(c)に示すように、記録ヘッドの上流側に位置するノズルに対向する位置に、インク吸収体が配備されている。よって、記録媒体の最端部に記録を行う時は、ノズル11〜ノズル40の30個のノズルを使用する。
1走査目、図12(a)のマスクパターンを用いつつ、+X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。続く第2記録走査では、図12(b)のマスクパターンを用いつつ、−X方向への主走査を行う。2走査目と3走査目の間には搬送動作は行わない。3走査目では、図12(c)のマスクパターンを用いつつ、+X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。更に4走査目では、図12(d)のマスクパターンを用いつつ、−X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。以下、同様の記録走査と搬送動作を繰り返す。
図において、例えば1走査目にノズル31〜ノズル40によって記録された領域に着目してみる。この領域は、図12(a)のマスクパターンを用いて1走査目の31ノズル目から40ノズル目で記録したパターンC1と、図12(b)のマスクパターンを用いて2走査目の21ノズル目から30ノズル目で記録したパターンC2と、図12(c)のマスクパターンを用いて3走査目の21ノズル目から30ノズル目で記録したパターンC3と、図12(d)のマスクパターンを用いて4走査目の11ノズルから20ノズルで記録したパターンC4とが重ね合わせられることによって、画像が完成されている。
また、例えば2走査目にノズル31〜ノズル40によって記録された領域に着目してみる。この領域は、図12(b)のマスクパターンを用いて2走査目の31ノズル目から40ノズル目で記録したパターンD2と、図12(c)のマスクパターンを用いて3走査目の31ノズル目から40ノズル目で記録したパターンD3と、図12(d)のマスクパターンを用いて4走査目の21ノズル目から30ノズル目で記録したパターンD4と、図12(a)のマスクパターンを用いて5走査目の11ノズルから20ノズルで記録したパターンD1とが重ね合わせられることによって、画像が完成されている。以上説明したような、先端部近傍の記録動作が終了すると、ステップS1003に進む。
ステップS1003では、先端部分用のノズル11〜ノズル40を用いた記録から、全ノズルを用いた記録に移行するための記録動作が行われる。図13(b)は、ステップS1003における記録動作を示している。まず、1走査目では、図12(a)のマスクパターンを用いつつ、ノズル11〜ノズル40によって+X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。続く第2記録走査では、図12(b)のマスクパターンを用いつつ、ノズル11〜ノズル40によって−X方向への主走査を行う。その後再び、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。3走査目では、図12(c)のマスクパターンを用いつつ、ノズル1〜ノズル40によって+X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。更に4走査目では、図12(d)のマスクパターンを用いつつ、ノズル1〜ノズル40によって−X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。5走査目は、次に説明する通常領域の1記録走査目とみなすことが出来る。以上で、ステップS1003の工程が終了する。
続くステップS1004では、通常領域に対する全ノズルを用いた記録が行われる。本例において、通常領域とは、給紙ローラ対105と、搬送ローラ103および拍車104のローラ対の、2組のローラ対によって記録媒体が挟持されている状態で記録が行える領域を示す。
図13(c)は、ステップS1004における記録動作を示している。まず、1走査目では、図12(a)のマスクパターンを用いつつ、全ノズルによって+X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。続く第2記録走査では、図12(b)のマスクパターンを用いつつ、全ノズルによって−X方向への主走査を行う。その後再び、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。3走査目では、図12(c)のマスクパターンを用いつつ、全ノズルによって+X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。更に4走査目では、図12(d)のマスクパターンを用いつつ、全ノズルによって−X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。5走査目以降は以上説明した1走査目〜4走査目を繰り返して行く。記録が進行し、記録媒体の後端部が給紙ローラから外れる工程に近づいた段階で、ステップS1005に移行する。
ステップS1005では、全ノズルを用いた記録から、後端部分用のノズル11〜ノズル40を用いた記録に移行するための記録動作が行われる。図13(d)は、ステップS1005における記録動作を示している。まず、1走査目では、図12(a)のマスクパターンを用い、ノズル1〜ノズル40によって+X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。続く第2記録走査では、図12(b)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル40によって−X方向への主走査を行う。2走査目と3走査目の間に搬送動作は行わない。3走査目では、図12(c)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル40によって+X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。更に4走査目では、図12(d)のマスクパターンを用いつつ、ノズル11〜ノズル40によって−X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。5走査目では、図12(a)のマスクパターンを用いつつ、ノズル11〜ノズル40によって+X方向への主走査を行う。以後、2走査目から5走査目の記録動作が順次繰り返される。
ステップS1006では、記録媒体が給紙ローラから外れるタイミングにおける、独特の記録動作が行われる。図13(e)は、ステップS1006における記録動作を示している。まず、1走査目では、図12(a)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル40によって+X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。続く第2記録走査では、図12(b)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル40によって−X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。3走査目では、図12(c)のマスクパターンを用い、ノズル1〜ノズル30によって+X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。
本例では、この3走査目において記録媒体が給紙ローラ105から外れるものとする。記録媒体が給紙ローラを抜ける瞬間の搬送量は、給紙ローラから記録媒体が弾き出されるため、設定値よりも大きくなってしまう傾向がある。よって本例のように、このタイミングの搬送量を通常よりも予め多く設定することで、搬送誤差の影響を低減することが出来る。ここでは、通常の後端記録では搬送を行わないタイミング、すなわち2記録走査目と3記録走査目の間に、あえて10ノズル分の記録動作を行っている。そして、データ位置を揃えるために、使用ノズルの領域を11ノズル〜40ノズルから1ノズル〜30ノズルに移行している。
4走査目では、図12(d)のマスクパターンを用いつつ、ノズル1〜ノズル30によって−X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。5走査目では、図12(a)のマスクパターンを用いつつ、ノズル1〜ノズル30によって+X方向への主走査を行う。この5走査目は、次に説明する後端部領域の1記録走査目とみなすことが出来る。以上で、ステップS1006の工程が終了する。
ステップS1007では、使用ノズル位置をノズル1〜ノズル30の状態からノズル11〜ノズル40に戻すための記録動作が行われる。ステップS1006では、記録媒体が給紙ローラ対105から外れる瞬間の搬送誤差を低減するために、使用ノズル位置をノズル1〜ノズル30にシフトした。しかし、本例の記録装置のインク吸収体は、図9(c)で示したように、搬送方向においてより上流側に位置するノズル列に対向している。よって、余白なし記録において最端部を記録する際には、より上流側のノズルによって記録を行う必要がある。
図13(f)は、ステップS1007における記録動作を示している。まず、1走査目では、図12(a)のマスクパターンを用い、ノズル1〜ノズル30によって+X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。続く第2記録走査では、図12(b)のマスクパターンを用い、ノズル1〜ノズル30によって−X方向への主走査を行う。2走査目と3走査目の間に搬送動作は行わない。3走査目では、図12(c)のマスクパターンを用い、ノズル1〜ノズル30によって+X方向への主走査を行う。3走査目と4走査目の間においても搬送動作は行わない。更に4走査目では、図12(d)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル40によって−X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。5走査目では、図12(a)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル40によって+X方向への主走査を行う。この5走査目は、次に説明する最後端部領域の1記録走査目とみなすことが出来る。
続く、ステップS1008では記録媒体の最後端部領域への最終記録が行われる。ここでの記録動作は、図13(a)を用いて説明したステップS1002における記録動作と同等である。
最後端部領域への記録が完了するとステップS1009へ進み、記録媒体を排紙する。以上で、1ページ分の余白なし記録動作が終了する。
以上説明してきた様に、近年のインクジェット記録装置においては、インターレス記録やマルチパス記録を行うことによって高精細な画像を高品位に出力することが可能となっている。一方で、搬送量や使用ノズル数を適宜調整することによって、画像品位を低下させること無しに、余白なし記録を実現することも可能となっている。
特開平06−143618号公報
USP4,198,642号明細書
特開2002−103584号公報
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態では、図1で示したインクジェット記録装置と、図2で示した記録ヘッドを適用する。
図19は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の制御の構成を説明するためのブロック図である。図において、1305は個々の機能構成が互いにアクセス可能とするためのメインバスラインである。メインバスライン1305に対してアクセスする個々の機能構成としては、画像入力部1303、画像信号処理部1304、および中央制御部CPU1300といったソフト系処理構成と、操作部1306、回復系制御回路1307、ヘッド温度制御回路1314、ヘッド駆動制御回路1315、キャリッジ駆動制御回路1316、および紙送り制御回路1317といったハード系処理構成とに大別される。
CPU1300は、ROM1301、RAM1302、およびEEPROM1318を有する。CPU1300は、画像入力部1303に入力された情報に対して適正な記録条件を与え、記録ヘッド102を駆動して吐出を実行させる。
ROM1301内には、記録ヘッドの回復タイミングチャートを実行するためのプログラムなどが予め格納されている。CPU1300は、必要に応じて予備吐出条件等の回復条件をROM1301から読み出し、これに従って回復系制御回路1307、記録ヘッド102、および保温ヒータ等を制御する。回復系モータ1308は、記録ヘッド102に対向離間するクリーニングブレード1309、キャップ1310、および吸引ポンプ1311を駆動する。ヘッド駆動制御回路1315は、記録ヘッド102の個々のノズルに備えられた電気熱変換体の駆動を実行するもので、予備吐出や記録用のインク吐出を記録ヘッド102に実行させる。
一方、記録ヘッド1102の基板には、保温ヒータが設けられており、記録ヘッド内のインク温度を所望の設定温度に加熱調整することができる。また、ダイオードセンサ1312も同一の基板に設けられており、記録ヘッド内部のインク温度を測定することができる。但し、ダイオードセンサ1312は、必ずしも記録ヘッドの基板に設けられている必要はなく、記録ヘッドの外部や記録ヘッドの周囲近傍に備えられていても良い。
本実施形態では、図2で示した600dpi相当の記録ヘッドを用い、1200×1200dpiの画像をインターレス記録法によって余白なし記録する。この際、図6で示したマスクパターンを用い、2パスのマルチパス記録方法も同時に行う。
本例においても、余白なし記録を実現するにあたり、記録装置の動作の工程を説明するためのフローチャートとして図11を適用することが出来る。以下、図11の各ステップに対応して、本実施形態の具体的な記録動作を説明する。
図20(a)〜(f)は、本実施形態の各ステップの記録動作を説明するための模式図である。ここで、図20(a)は、ステップS1002での記録動作、すなわち記録媒体の先端部に対する記録動作を示している。ステップS1002では記録媒体の先端部に対する記録動作を行っている。本実施形態の記録装置では、図9(c)に示すように、記録ヘッドの上流側に位置するノズルに対向する位置に、インク吸収体が配備されている。よって、記録媒体の最端部に記録を行う時は、ノズル11〜ノズル40の30個のノズルを使用する。
1走査目、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル40によって+X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。続く第2記録走査では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル40によって−X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に9.5ノズル分搬送する。3走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル40によって+X方向への主走査を行う。3走査目と4走査目の間には搬送動作は行わない。更に4走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル40によって−X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10.5ノズル分搬送する。以下、同様の記録走査と搬送動作を繰り返す。
ステップS1003では、先端部分用のノズル11〜ノズル40を用いた記録から、全ノズルを用いた記録に移行するための記録動作が行われる。図20(b)は、ステップS1003における記録動作を示している。まず、1走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル40によって+X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。続く第2記録走査では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル40によって−X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に9.5ノズル分搬送する。3走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル40によって+X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。更に4走査目では、図6(b)のマスクパターンを用いつつ、ノズル1〜ノズル40によって−X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10.5ノズル分搬送する。5走査目は、次に説明する通常領域の1記録走査目とみなすことが出来る。以上で、ステップS1003の工程が終了する。
続くステップS1004では、通常領域に対する全ノズルを用いた記録が行われる。本例において、通常領域とは、給紙ローラ対105と、搬送ローラ103および拍車104のローラ対の、2組のローラ対によって記録媒体が挟持されている状態で記録が行える領域を示す。
図20(c)は、ステップS1004における記録動作を示している。まず、1走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、全ノズルによって+X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。続く第2記録走査では、図6(b)のマスクパターンを用い、全ノズルによって−X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に9.5ノズル分搬送する。3走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、全ノズルによって+X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。更に4走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、全ノズルによって−X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10.5ノズル分搬送する。5走査目以降は以上説明した1走査目〜4走査目を繰り返して行く。記録が進行し、記録媒体の後端部が給紙ローラから外れる工程に近づいた段階で、ステップS1005に移行する。
ステップS1005では、全ノズルを用いた記録から、後端部分用のノズル11〜ノズル40を用いた記録に移行するための記録動作が行われる。図20(d)は、ステップS1005における記録動作を示している。まず、1走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル1〜ノズル40によって+X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。続く第2記録走査では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル1〜ノズル40によって−X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に9.5ノズル分搬送する。3走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル1〜ノズル40によって+X方向への主走査を行う。3走査と4走査の間には搬送動作は行われない。更に4走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル40によって−X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10.5ノズル分搬送する。5走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル40によって+X方向への主走査を行う。
ステップS1006では、記録媒体が給紙ローラから外れるタイミングにおける、独特の記録動作が行われる。図20(e)は、ステップS1006における記録動作を示している。まず、1走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル40によって+X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に20ノズル分搬送する。続く2走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル1〜ノズル30によって−X方向への主走査を行う。
本例では、この2走査目において記録媒体が給紙ローラ105から外れるものとする。記録媒体が給紙ローラを抜ける瞬間の搬送量は、給紙ローラから記録媒体が弾き出されるため、設定値よりも大きくなってしまう傾向がある。よって本例のように、このタイミングの搬送量を通常よりも予め多く設定することで、搬送誤差の影響を低減することが出来る。ここでは、通常の後端記録では10ノズル分の搬送を行うタイミング、すなわち1記録走査目と2記録走査目の間に、20ノズル分の記録動作を行っている。そして、データ位置を揃えるために、使用ノズルの領域を11ノズル〜40ノズルから1ノズル〜30ノズルに移行している。
2走査目終了後、記録媒体を副走査方向に9.5ノズル分搬送する。3走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル1〜ノズル30によって+X方向への主走査を行う。3走査目と4走査目の間には搬送動作は行わない。
4走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル1〜ノズル30によって−X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10.5ノズル分搬送する。5走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル1〜ノズル30によって+X方向への主走査を行う。この5走査目は、次に説明する後端部領域の1記録走査目とみなすことが出来る。以上で、ステップS1006の工程が終了する。
ステップS1007では、使用ノズル位置をノズル1〜ノズル30の状態からノズル11〜ノズル40に戻すための記録動作が行われる。ステップS1006では、記録媒体が給紙ローラ対105から外れる瞬間の搬送誤差を低減するために、使用ノズル位置をノズル1〜ノズル30にシフトした。しかし、本例の記録装置のインク吸収体は、図9(c)で示したように、搬送方向においてより上流側に位置するノズル列に対向している。よって、余白なし記録において最端部を記録する際には、より上流側のノズルによって記録を行う必要がある。
図20(f)は、ステップS1007における記録動作を示している。まず、1走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル1〜ノズル30によって+X方向への主走査を行う。1走査目と2走査目の間には搬送動作を行わない。続く第2記録走査では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル40によって−X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に9.5ノズル分搬送する。3走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル40によって+X方向への主走査を行う。3走査目と4走査目の間においても搬送動作は行わない。更に4走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル40によって−X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10.5ノズル分搬送する。5走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル40によって+X方向への主走査を行う。この5走査目は、次に説明する最後端部領域の1記録走査目とみなすことが出来る。
続く、ステップS1008では記録媒体の最後端部領域への最終記録が行われる。ここでの記録動作は、図20(a)を用いて説明したステップS1002における記録動作と同等である。
最後端部領域への記録が完了するとステップS1009へ進み、記録媒体を排紙する。以上で、1ページ分の余白なし記録動作が終了する。
以上説明したステップS1002〜ステップS1008の各記録工程において、記録媒体の搬送量や記録に使用するノズル数あるいはノズル領域は互いに異なっている。しかしながら、いずれの工程においても、単位領域内のフェーズ状態は、図14(b)に示した状態に統一されている。すなわち、どのステップの単位領域も同等の濃度を発色することが出来、また、どのステップの単位領域も主滴とサテライトの位置関係が同等の状態となる。
図21は、本実施形態のインターレス記録を行った場合の、単位領域に記録されるインクの主滴およびサテライトの着弾状態を模式的に示した図である。ここでは、下段114の領域も上段113の領域も、主滴の右側にサテライトが記録されるドットと、主滴の左側にサテライトが記録されているドットが、交互に均等に配置している。本実施形態のインターレス記録においては、このようなサテライトの記録状態も、各ステップで同等となっている。よって、同等の特徴、あるいはエリアファクターを有する単位領域がページ内全域に及んでいるので、課題の項で説明したような濃度むらが現れることはない。
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態においても図1および図19で説明したインクジェット記録装置を用いる。また、記録ヘッドについても図2で示したように600dpiのピッチでノズルが配列するものを用いる。ただし、本実施形態においては、記録ヘッド上にノズルが80個配列しているものとする。
更に、本実施形態においては、600dpi相当の記録ヘッドを用い、2400×2400dpiの画像をインターレス記録法によって余白なし記録する。この際、図6で示したマスクパターンを用い、2パスのマルチパス記録方法も同時に行う。
本実施形態においても、余白なし記録を実現するにあたり、記録装置の動作の工程を説明するためのフローチャートとして図11を適用することが出来る。以下、図11の各ステップに対応して、本実施形態の具体的な記録動作を説明する。
図22(a)〜(c)は、本実施形態の各ステップの記録動作を説明するための模式図である。ここで、図22(a)の1走査目〜3走査目は、ステップS1002での記録動作、すなわち記録媒体の先端部に対する記録動作を抜粋して示したものである。本実施形態の記録装置では、図9(c)に示すように、記録ヘッドの上流側に位置するノズルに対向する位置に、インク吸収体が配備されている。よって、記録媒体の最端部に記録を行う時は、ノズル21〜ノズル80の60個のノズルを使用する。
1走査目、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル21〜ノズル80によって+X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。2走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル21〜ノズル80によって−X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に10.5ノズル分搬送する。3走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル21〜ノズル80によって+X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。
ここでは、3走査分の記録動作のみを説明したが、実際には、図6(a)のマスクパターンと図6(b)のマスクパターンを交互に用いながら、先端部領域の記録が完了するまで往復の記録主走査を行う。各記録走査終了後の記録媒体の搬送量は、9.75ノズル分、10ノズル分、10.5ノズル分、0ノズル分、9.25ノズル分、10ノズル分、10.5ノズル分、0ノズル分を順次繰り返す。
ステップS1003では、先端部分用のノズル21〜ノズル80を用いた記録から、全ノズルを用いた記録に移行するための記録動作が行われる。図22(a)の3走査目〜図22(b)の8走査目は、ステップS1003における記録動作を示している。
上記3走査目に続く4走査目、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル80によって−X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に9.25ノズル分搬送する。5走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル80によって+X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。6走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル80によって−X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に10.5ノズル分搬送する。7走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル80によって+X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。8走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル1〜ノズル80によって−X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に9.75ノズル分搬送する。以上でステップS1003を終了する。
続くステップS1004では、通常領域に対する全ノズルを用いた記録が行われる。本例において、通常領域とは、給紙ローラ対105と、搬送ローラ103および拍車104のローラ対の、2組のローラ対によって記録媒体が挟持されている状態で記録が行える領域を示す。
図22(b)の8走査目〜11走査目は、ステップS1004における記録動作を抜粋して示している。図では抜粋して示したが、実際には、図6(a)のマスクパターンと図6(b)のマスクパターンを交互に用いながら、全ノズルを用いて往復の記録主走査を行う。各記録走査終了後の記録媒体の搬送量は、9.75ノズル分、10ノズル分、10.5ノズル分、10ノズル分、9.25ノズル分、10ノズル分、10.5ノズル分、10ノズル分を繰り返す。記録が進行し、記録媒体の後端部が給紙ローラから外れる工程に近づいた段階で、ステップS1005に移行する。
ステップS1005では、全ノズルを用いた記録から、後端部分用のノズル21〜ノズル80を用いた記録に移行するための記録動作が行われる。図22(b)の11走査目〜図22(c)の16走査目は、ステップS1005における記録動作を示している。
まず、11走査目、図6(a)のマスクパターンを用い、全ノズルよって+X方向への主走査を行う。11走査目と12走査目の間で搬送動作は行わない。12走査目、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル80によって−X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に9.25ノズル分搬送する。13走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル80によって+X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。14走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル80によって−X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に10.5ノズル分搬送する。15走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル80によって+X方向への主走査を行う。15走査目と16走査目の間で搬送動作は行わない。16走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル21〜ノズル80によって−X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に9.75ノズル分搬送する。以上でステップS1005を終了し、ステップS1006に移行する。
ステップS1006では、記録媒体が給紙ローラから外れるタイミングにおける、独特の記録動作が行われる。図22(c)の17走査目から図22(c)の19走査目は、ステップS1006における記録動作を示している。まず、17走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル21〜ノズル80によって+X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に30ノズル分搬送する。続く18走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル1〜ノズル60によって−X方向への主走査を行う。
本例では、この18走査目において記録媒体が給紙ローラ対105から外れるものとする。記録媒体が給紙ローラを抜ける瞬間の搬送量は、給紙ローラから記録媒体が弾き出されるため、設定値よりも大きくなってしまう傾向がある。よって本例のように、このタイミングの搬送量を通常よりも予め多く設定することで、搬送誤差の影響を低減することが出来る。ここでは、通常の後端記録では10ノズル分の搬送を行うタイミング、すなわち17走査目と18走査目の間に、30ノズル分の搬送動作を行っている。そして、データ位置を揃えるために、使用ノズルの領域を21ノズル〜80ノズルから1ノズル〜60ノズルに移行している。
18走査目終了後、記録媒体を副走査方向に10.5ノズル分搬送する。19走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル1〜ノズル60によって+X方向への主走査を行う。以上で、ステップS1006の工程が終了する。
ステップS1007では、使用ノズル位置をノズル1〜ノズル60の状態からノズル21〜ノズル80に戻すための記録動作が行われる。ステップS1006では、記録媒体が給紙ローラ対105から外れる瞬間の搬送誤差を低減するために、使用ノズル位置をノズル1〜ノズル60にシフトした。しかし、本例の記録装置のインク吸収体は、図9(c)で示したように、搬送方向においてより上流側に位置するノズル列に対向している。よって、余白なし記録において最端部を記録する際には、より上流側のノズルによって記録を行う必要がある。
図22(d)の19走査目〜24走査目は、ステップS1007における記録動作を示している。まず、19走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル1〜ノズル60によって+X方向への主走査を行う。19走査目と20走査目の間には搬送動作を行わない。続く20走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル1〜ノズル60によって−X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に9.25ノズル分搬送する。21走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル1〜ノズル60によって+X方向への主走査を行う。21走査目と22走査目の間においても搬送動作は行わない。更に22走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル70によって−X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10.5ノズル分搬送する。23走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル70によって+X方向への主走査を行う。23走査目と24走査目の間においても搬送動作は行わない。24走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル21〜ノズル80によって−X方向への主走査を行う。以上で、ステップS1007の工程が終了する。
続く、ステップS1008では記録媒体の最後端部領域への最終記録が行われる。ここでの記録動作は、ステップS1002における記録動作と同等である。
最後端部領域への記録が完了するとステップS1009へ進み、記録媒体を排紙する。以上で、1ページ分の余白なし記録動作が終了する。
以上説明したステップS1002〜ステップS1008の各記録工程において、記録媒体の搬送量や記録に使用するノズル数あるいはノズル領域は互いに異なっている。しかしながら、いずれの工程においても、単位領域内のフェーズ状態は、同等な状態に統一されている。
図23は、本実施形態のインターレス記録を行った場合の、単位領域のフェーズ状態およびサテライトの着弾状態を模式的に示した図である。ここでは、181〜184のどの領域も、主滴の右側にサテライトが記録されるドットと、主滴の左側にサテライトが記録されているドットが、交互に均等に配置している。本実施形態のインターレス記録においては、ステップS1002〜ステップS1008のどの記録動作における単位領域であっても、ここに示したサテライトの記録状態およびフェーズ状態が、得られるようになっている。よって、同等の特徴、あるいはエリアファクターを有する単位領域がページ内全域に及んでいるので、課題の項で説明したような濃度むらが現れることはない。
(第3の実施形態)
以下に、本発明の第3の実施形態を説明する。本実施形態においても図1および図19で説明したインクジェット記録装置を用いる。また、記録ヘッドについても図2で示したように600dpiのピッチでノズルが配列するものを用いる。ただし、本実施形態においては、記録ヘッド上にノズルが60個配列しているものとする。
更に、本実施形態においては、600dpi相当の記録ヘッドを用い、1200×1200dpiの画像をインターレス記録法によって余白なし記録する。この際、図6で示したマスクパターンを用い、2パスのマルチパス記録方法も同時に行う。
本実施形態においても、余白なし記録を実現するにあたり、記録装置の動作の工程を説明するためのフローチャートとして図11を適用することが出来る。以下、図11の各ステップに対応して、本実施形態の具体的な記録動作を説明する。
本例においても、余白なし記録を実現するにあたり、記録装置の動作の工程を説明するためのフローチャートとして図11を適用することが出来る。以下、図11の各ステップに対応して、本実施形態の具体的な記録動作を説明する。
図24(a)〜(f)は、本実施形態の各ステップの記録動作を説明するための模式図である。ここで、図24(a)は、ステップS1002での記録動作、すなわち記録媒体の先端部に対する記録動作を示している。ステップS1002では記録媒体の先端部に対する記録動作を行っている。本実施形態の記録装置では、図9(c)に示すように、記録ヘッドの上流側に位置するノズルに対向する位置に、インク吸収体が配備されている。よって、記録媒体の最端部に記録を行う時は、ノズル31〜ノズル60の30個のノズルを使用する。
1走査目、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル31〜ノズル60によって+X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。続く第2記録走査では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル31〜ノズル60によって−X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に9.5ノズル分搬送する。3走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル31〜ノズル60によって+X方向への主走査を行う。3走査目と4走査目の間には搬送動作は行わない。更に4走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル31〜ノズル60によって−X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10.5ノズル分搬送する。以下、先端部領域の記録が完了するまで同様の記録走査と搬送動作を繰り返す。
ステップS1003では、先端部分用のノズル31〜ノズル60を用いた記録から、全ノズルを用いた記録に移行するための記録動作が行われる。図24(b)は、ステップS1003における記録動作を示している。まず、4走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル31〜ノズル60によって+X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に20.5ノズル分搬送する。5走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル21〜ノズル60によって+X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。続く6走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル21〜ノズル60によって−X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に19.5ノズル分搬送する。7走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル60によって+X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。更に8走査目では、図6(b)のマスクパターンを用いつつ、ノズル1〜ノズル60によって−X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に20.5ノズル分搬送する。以上で、ステップS1003の工程が終了する。
続くステップS1004では、通常領域に対する全ノズルを用いた記録が行われる。本例において、通常領域とは、給紙ローラ対105と、搬送ローラ103および拍車104のローラ対の、2組のローラ対によって記録媒体が挟持されている状態で記録が行える領域を示す。
図24(c)は、ステップS1004における記録動作を示している。まず、9走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、全ノズルによって+X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。続く10走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、全ノズルによって−X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に19.5ノズル分搬送する。11走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、全ノズルによって+X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。更に12走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、全ノズルによって−X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に20.5ノズル分搬送する。続く記録走査は以上説明した9走査目〜12走査目を繰り返して行く。記録が進行し、記録媒体の後端部が給紙ローラから外れる工程に近づいた段階で、ステップS1005に移行する。
ステップS1005では、全ノズルを用いた記録から、後端部分用のノズル31〜ノズル60を用いた記録に移行するための記録動作が行われる。図24(d)は、ステップS1005における記録動作を示している。まず、12走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル1〜ノズル60によって−X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に10.5ノズル分搬送する。13走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル60によって+X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に10ノズル分搬送する。続く14走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル60によって−X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に9.5ノズル分搬送する。15走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル21〜ノズル60によって+X方向への主走査を行う。15走査と16走査の間には搬送動作は行われない。更に16走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル31〜ノズル60によって−X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10.5ノズル分搬送する。
ステップS1006では、記録媒体が給紙ローラから外れるタイミングにおける、独特の記録動作が行われる。図24(e)は、ステップS1006における記録動作を示している。まず、17走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル31〜ノズル60によって+X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に40ノズル分搬送する。続く18走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル1〜ノズル30によって−X方向への主走査を行う。
本例では、この18走査目において記録媒体が給紙ローラ105から外れるものとする。記録媒体が給紙ローラを抜ける瞬間の搬送量は、給紙ローラから記録媒体が弾き出されるため、設定値よりも大きくなってしまう傾向がある。よって本例のように、このタイミングの搬送量を通常よりも予め多く設定することで、搬送誤差の影響を低減することが出来る。ここでは、通常の後端記録では10ノズル分の搬送を行うタイミング、すなわち1記録走査目と2記録走査目の間に、40ノズル分の記録動作を行っている。そして、データ位置を揃えるために、使用ノズルの領域を31ノズル〜60ノズルから1ノズル〜30ノズルに移行している。
18走査目終了後、記録媒体を副走査方向に9.5ノズル分搬送する。19走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル1〜ノズル30によって+X方向への主走査を行う。19走査目と20走査目の間には搬送動作は行わない。
20走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル1〜ノズル30によって−X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10.5ノズル分搬送する。以上で、ステップS1006の工程が終了する。
ステップS1007では、使用ノズル位置をノズル1〜ノズル30の状態からノズル31〜ノズル60に戻すための記録動作が行われる。ステップS1006では、記録媒体が給紙ローラ対105から外れる瞬間の搬送誤差を低減するために、使用ノズル位置をノズル1〜ノズル30にシフトした。しかし、本例の記録装置のインク吸収体は、図9(c)で示したように、搬送方向においてより上流側に位置するノズル列に対向している。よって、余白なし記録において最端部を記録する際には、より上流側のノズルによって記録を行う必要がある。
図24(f)は、ステップS1007における記録動作を示している。まず、21走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル1〜ノズル30によって+X方向への主走査を行う。21走査目と22走査目の間には搬送動作を行わない。続く22走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル40によって−X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に9.5ノズル分搬送する。23走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル40によって+X方向への主走査を行う。23走査目と24走査目の間において搬送動作は行わない。更に24走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル40によって−X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10.5ノズル分搬送する。25走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル11〜ノズル40によって+X方向への主走査を行う。25走査目と26走査目の間において搬送動作は行わない。26走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル21〜ノズル50によって−X方向への主走査を行う。その後、記録媒体を副走査方向に9.5ノズル分搬送する。27走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル21〜ノズル50によって+X方向への主走査を行う。27走査目と28走査目の間において搬送動作は行わない。更に28走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル21〜ノズル50によって−X方向への主走査を行い、その後、記録媒体を副走査方向に10.5ノズル分搬送する。29走査目では、図6(a)のマスクパターンを用い、ノズル21〜ノズル50によって+X方向への主走査を行う。29走査目と30走査目の間において搬送動作は行わない。30走査目では、図6(b)のマスクパターンを用い、ノズル31〜ノズル60によって−X方向への主走査を行う。以上で、ステップS1007の記録動作が終了する。
続く、ステップS1008では記録媒体の最後端部領域への最終記録が行われる。ここでの記録動作は、図20(a)を用いて説明したステップS1002における記録動作と同等である。
最後端部領域への記録が完了するとステップS1009へ進み、記録媒体を排紙する。以上で、1ページ分の余白なし記録動作が終了する。
以上説明したステップS1002〜ステップS1008の各記録工程において、記録媒体の搬送量や記録に使用するノズル数あるいはノズル領域は互いに異なっている。しかしながら、いずれの工程においても、単位領域内のフェーズ状態は、同等な状態に統一されている。
図25は、本実施形態のインターレス記録を行った場合の、単位領域のフェーズ状態およびサテライトの着弾状態を模式的に示した図である。ここでは、113および114のどちら領域も、主滴の右側にサテライトが記録されるドットと、主滴の左側にサテライトが記録されているドットが、交互に均等に配置している。本実施形態のインターレス記録においては、ステップS1002〜ステップS1008のどの記録動作における単位領域であっても、ここに示したサテライトの記録状態およびフェーズ状態が、得られるようになっている。よって、同等の特徴、あるいはエリアファクターを有する単位領域がページ内全域に及んでいるので、課題の項で説明したような濃度むらが現れることはない。
以上説明した3つの実施形態では、いずれも2パスのマルチパス記録を併用したインターレス記録方法を説明したが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。マルチパス記録を併用せずとも、ノズルの配列ピッチより高い解像度の画像を実現するためのインターレス記録は実行可能である。そして、この場合であっても、図15に示したように、単位領域内におけるフェーズ状態(各画素にエリアにドットを記録する順番)は様々な状態が考えられるからである。また逆に、3パス以上のマルチパス記録を併用することも出来る。
以上では、双方向の記録走査によってインターレス記録を行う場合で説明してきたが、本発明の効果は片方向記録においても十分得られる。本発明が目的とする「単位領域内のフェーズ状態を揃える」とは、「単位領域内に記録されるドットの記録順を、全ての単位領域で揃える」と言う意味であり、必ずしもドットの記録方向に制限を加えるものではない。但し、双方向記録においては、既に説明したサテライトの記録位置が単位領域のエリアファクターなどに影響を及ぼすことから、本発明を双方向記録で採用することにより一層その効果が発揮されると言える。
また、上記実施形態では、給紙ローラ側にインク吸収体を配備した構成のインクジェット記録装置も用い、余白無し記録を実行する場合について説明してきたが、本発明は、このような構成に限定されるものではない。インク吸収体を配備する位置は、図9(c)に限られるものではなく、その位置や幅が変更されれば、各実施形態の搬送量や使用ノズル数も変更される。どのような場合であっても、単位領域内のフェーズ状態が統一されるように、搬送量や使用ノズルの位置およびマスクパターンなどが設定されていれば、本発明は有効である。
更に、余白無し記録を行わない場合であっても本発明は有効である。余白の有無に関わらず、記録状態が不安定になりがちな記録媒体の先後端部領域に対しては、記録に用いるノズル数や記録媒体の搬送量を変動させながら画像を記録する方法が採用されている。いかなる目的であれ、同一ページ内において、記録に用いるノズル数および搬送量を制御させながら画像を形成するシリアル型のインクジェット記録装置であれば、本発明は有効に機能することが出来る。
また、以上の実施形態では定常領域の記録を行うために記録ヘッドに備えられた全ノズルを用いているが、必ずしも全ノズルを用いなくとも本発明の効果を得ることは出来る。すなわち、定常領域を記録する際に用いる記録ヘッド上の領域とその他の領域を記録する際に用いる記録ヘッド上の領域とを変更することにより、フェーズ状態を整えることが出来れば、本発明の範疇に含まれると言える。
以上の実施形態では、簡単のためにブラックインクを吐出する記録ヘッドを用いて説明してきたが、無論他のインク色であっても、また複数のインク色を同時に記録する場合であっても、同様の効果を得ることが出来る。
更に、図2を用いて説明したように、上記3つの実施形態ではいずれも同一色を吐出するノズルが所定のピッチで一列に並んだ構成の記録ヘッドを用いて説明してきたが、無論このようなノズル配列でなくとも、本発明は有効に機能する。例えば、所定のピッチで配列するノズル列を主走査方向に2列配し、各ノズル列が副走査方向に半ピッチ分ずれているような記録ヘッドであっても良い。このような記録ヘッドの場合、1回の記録走査で副走査方向には上記所定ピッチの倍のピッチでドットを記録することが出来、インターレス記録を行うことによって、更に記録解像度を増大させることが出来る。