JP4775985B2 - 重合体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性を有し、安全性に優れ、かつ親水性と疎水性を兼ね備えた界面作用型重合体及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、親水性部分として特定の親水性置換基を有する繰り返し単位を含み、疎水性部分として特定の疎水性置換基を有する繰り返し単位を含む界面作用型重合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
[分解性樹脂の技術的背景]
一般に、生分解性を有しない通常の樹脂は、使用後の廃棄処理が問題となる。
このような樹脂は、廃棄時には、焼却処理する方法と埋め立てする方法が行われている。焼却炉で処理する方法では、焼却時に発生する熱による炉材の損傷のほかに、地球の温暖化や酸性雨の原因となることが指摘されている。また、埋め立て処理する方法では、プラスチックは容積がかさばる、腐らないため地盤が安定しない等の問題があるうえ、埋め立てに適した場所がなくなってきたことが大きな問題となっている。すなわち、これらの樹脂は生分解性に乏しく、水中や土壌中では半永久的に存在するので、廃棄物処理における環境保全を考えると非常に重大な問題である。
【0003】
例えば、紙おむつ、生理用品等の衛生材料に代表される使い捨て用途の樹脂の場合、それをリサイクルすれば多大な費用がかかり、焼却するにも大量であるため地球環境への負荷が大きい。また、ポリアクリル酸ナトリウムの水溶液を土壌に散布した場合、土壌中でCa2+等の多価イオンとコンプレックスを形成し、不溶性の層を形成することが報告されている(松本ら、高分子、42巻、8月号、1993年)。
【0004】
このような層は、そのもの自体の毒性は低いと言われているが、自然界には全くないものであり、長期に渡るそれら樹脂の土中への蓄積による生態系への影響は不明であり、十分に調べる必要がありその使用には慎重な態度が望まれる。
【0005】
非イオン性の樹脂の場合には、コンプレックスは形成しないが、非分解性のため土壌中へ蓄積する恐れがあり、その自然界への影響は疑わしい。
【0006】
さらに、これらの重合系の樹脂は、単量体原料として、哺乳類動物の肌や粘膜に対して毒性の高いものを使用しており、重合後の製品からこれを除去するために多くの検討がなされてきた。通常、重合後の製品から未反応重合体を完全に除去することは困難であり、特に、工業的規模での製造ではより困難となることが予想される。
【0007】
また、廃棄処理を行わないが、環境中に放出される樹脂も同様な問題を有する。例えば、薬剤用担体、化粧品、香粧品、界面活性剤、食品添加物(増粘剤、安定剤、保湿剤、麺質改良剤、凝着剤、pH調整剤、抗菌剤等)等に利用される樹脂は、その大半は安全性に優れた樹脂が使用されているが、環境中への放出、蓄積については考慮されていないのが現状である。
【0008】
一方、近年、「地球にやさしい素材」として生分解性ポリマーが注目されており、盛んに研究されている。このような生分解性を有する親水性の樹脂としては、例えばポリエチレンオキシド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、澱粉系樹脂、キトサン系樹脂、アルギン酸系樹脂、ポリアミノ酸系樹脂等が知られている。この中で、ポリエチレンオキシド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂は、特殊な菌のみしか生分解することができないので、一般的な条件では生分解性は遅かったり、もしくは全く分解しなかったりする。さらに分子量が大きくなると極端に分解性が低下する。
【0009】
また、セルロース系樹脂、澱粉系樹脂、キトサン系樹脂、アルギン酸系樹脂等は、その純度を上げるためには複雑な工程を要し、各種用途に使用される性能特性が十分でない場合が多く、性能特性を向上させるのが難しい。また、キトサン系樹脂、アルギン酸系樹脂等は天然物を採取して、それを加工することにより樹脂を得るために、多量の採取は自然界のバランスを崩すことが懸念される。
【0010】
一方、ポリアミノ酸は生分解性を有するために地球環境にやさしく、また生体内に吸収されても酵素作用により消化吸収され、しかも生体内での抗原性を示さず、分解生成物も毒性がないことが明らかにされているので、哺乳類動物に対してもやさしい素材である。しかし、ポリアミノ酸そのものは、各種用途に使用するには十分な性能特性を具備しているとは必ずしも言えなかった。
【0011】
そこで本発明者らは、安全性を維持しつつも性能特性を向上する目的の下、生体や環境に対して安全な化合物を使用する観点に立ち、鋭意検討を進めた結果、生体適合性及び生体への安全性が極めて高いアミン類であるα−アミノ酸エステルを用いて、ポリこはく酸イミドを開環することにより、生体(例えば、眼、皮膚等)への刺激惹起性が実質的になく、生体に対する安全性が極めて高い樹脂を得た(特開平8−48766号公報)。これらは安全性に優れた樹脂ではあるが、界面活性作用が必要な用途に使用した場合、必ずしも要求特性を満たしてはおらず、さらなる改良が望まれていた。また、使用するアミノ酸はエステルとして用いるので、使用する原料が高価であり、またそれを製造するにしても工程数が多くなることも問題であった。
【0012】
また、ポリアスパルチミド類と長鎖アミン類との反応により製造された界面活性剤(DE−A−2253190号)、一部の繰り返し単位にメルカプト基あるいはスルホン酸基を含むペンダント基を有するポリアスパラギン酸誘導体(米国特許第4363797号)、芳香族スルホン酸残基をペンダント基として有するポリアスパラギン酸誘導体(特開平8−67752号公報)が報告されている。しかし、いずれにおいても性能が満足いくものでなかったり、製造方法が効率的なものではなかった。
【0013】
また、使用する用途において要求特性を高めるために、安全性を維持しつつも、性能特性を向上すべく、少なくとも一部の繰り返し単位にベタイン構造を含むペンダント基を有するポリアスパラギン酸誘導体(特開平10−25344号公報)が報告されている。さらに、グリシノ基をペンダント基として含有する重合体(特開2000−44679号公報)、親水性基を含有するペンダント基と疎水性基を含有するペンダント基を有する酸性ポリアミノ酸誘導体(特開2000−44680号公報)も報告されている。これらの樹脂は安全性に優れ、毛髪処理剤及び香粧品用途等に優れた特性を示す樹脂である。ただし、界面活性剤として使用する場合、さらなる界面活性能の改良が求められていた。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、樹脂が親水性を必要とされる用途分野において、より具体的な用途や使用方法に応じて、さらに好適な特性を有するように樹脂を改良しようとするものである。
【0015】
すなわち本発明の目的は、生分解性に優れ、安全性に優れ、しかも幅広い用途において各種要求特性を満たすことのできる重合体及びその有効な製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、生体や環境に対して安全な化合物を使用する観点に立ち鋭意検討を進めた結果、酸性ポリアミノ酸に、(1)生体適合性及び生体への安全性が高い特定の親水性置換基を含むペンダント基、及び(2)界面活性能を引き出す特定の疎水性置換基を併有するペンダント基、を導入すると、非常に優れた特性を示す親水性と疎水性を有する酸性ポリアミノ酸の両親媒性誘導体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
より具体的には、本発明者らは、界面作用型高分子の界面作用をより効果的に発現するためには、親水性/疎水性のバランスに加え、疎水性部分の構造を工夫することにより、より優れた機能が発現できることを見出した。特に本発明は、界面作用型高分子の界面作用のち、水中ミセル形成あるいは物質の表面での吸着等を有効に働かせるために、また、常温での水への溶解性を向上させるために、重合体の疎水性部分を改良したものである。これにより、重合体の水溶性を維持しつつ、できるだけ多くの量の疎水性基の導入が可能となった。
【0018】
すなわち本発明は、親水性部分として、分子内に、下記一般式(1a)で表される繰り返し単位及び/又は下記一般式(1b)で表される繰り返し単位と、下記一般式(2a)で表される繰り返し単位及び/又は下記一般式(2b)で表される繰り返し単位との、両方または一方を、分子を構成する全ての繰り返し単位の総数に対して、50〜90%含有し、
疎水性部分として、分子内に、
(i)下記一般式(3a)で表される繰り返し単位及び/又は下記一般式(3b)で表される繰り返し単位
(ii)下記一般式(4a)で表される繰り返し単位及び/又は下記一般式(4b)で表される繰り返し単位
(iii)下記一般式(5a)で表される繰り返し単位及び/又は下記一般式(5b)で表される繰り返し単位
のうちの、(i)と(ii)、(i)と(iii)、(ii)と(iii)、或いは、(i)と(ii)と(iii)の繰り返し単位を含有し、この繰り返し単位を、分子を構成する全ての繰り返し単位の総数に対して、10〜50%含有し、
一般式(1a)〜一般式(5b)で表される全ての繰り返し単位は、重量平均分子量1000以上100万以下のポリコハク酸イミドに対してペンダント基導入反応を行い得られることを特徴とする重合体である。
【0019】
【化6】
【0020】
[式(1a)(1b)中、R1は、スルホン酸基、並びにその塩、水酸基、及び、トリアルキルアンモニオ基から成る群より選ばれる少なくとも1つの官能基を有する炭化水素基からなるペンダント基であり、X1は、NHであり、n1は1又は2である。]
【0021】
【化7】
【0022】
[式(2a)(2b)中、Mはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はアンモニウムイオンであり、n2は1又は2である。]
【0023】
【化8】
【0024】
[式(3a)(3b)中、R3は、炭素数8〜12の直鎖炭化水素基であり、X3は、NHであり、n3は1又は2である。]
【0025】
【化9】
【0026】
[式(4a)(4b)中、R4は、炭素数16〜18の直鎖炭化水素基であり、X4は、NHであり、n4は1又は2である。]
【0027】
【化10】
【0028】
[式(5a)(5b)中、R5は、−CH 2 CH(C 2 H 5 )C 4 H 9 であり、X5は、NHであり、n5は1又は2である。]
【0029】
さらに、本発明は、上記重合体を製造するための方法であって、少なくともペンダント基導入反応を行う工程を有し、
前記工程は一般式(1a)〜一般式(5b)で表される繰り返し単位を形成する為に、重量平均分子量1000以上100万以下のポリコハク酸イミドに対して、アミノ基を有する化合物を反応させてペンダント基を導入する工程であることを特徴とする重合体の製造方法である。
【0030】
【発明の実施の形態】
(1)重合体の構造
本発明の重合体は、疎水性部分としての特定の繰り返し単位と、親水性部分としての特定の繰り返し単位を有する重合体である。また、この重合体は、構造的にはポリマー基本骨格と側鎖部分からなり、特に限定されないが、疎水性と親水性の界面活性機能は、各繰り返し単位の側鎖部分が役割を担い、生分解性等の発現はポリマー基本骨格が役割を担う。以下、ポリマー基本骨格と、側鎖部分とに分けて説明する。
【0031】
(1−1)ポリマー基本骨格
本発明の重合体は、前記各一般式で表される繰り返し単位を有するものであり、その基本骨格は、各一般式から明らかなように、酸性ポリアミノ酸のうちのポリグルタミン酸又はポリアスパラギン酸からなる。以下の説明においては、工業的生産の点でより有用なポリアスパラギン酸系の重合体を中心に説明する。また、本発明では、結合の様式に関わらず、ポリマー中のアスパラギン酸からなる単量体部分を「ポリアスパラギン酸残基」、ポリマー中のグルタミン酸からなる単量体部分を「ポリグルタミン酸残基」、両者を併せて「酸性ポリアミノ酸残基」と呼ぶ。
【0032】
これらは、他のアミノ酸を繰り返し単位として含んでいても構わない。他のアミノ酸成分の具体例としては、例えば、20種類のタンパク質構成アミノ酸、L−オルニチン、一連のα−アミノ酸、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、中性アミノ酸、酸性アミノ酸、酸性アミノ酸のω−エステル、塩基性アミノ酸、塩基性アミノ酸のN置換体、アスパラギン酸−L−フェニルアラニン2量体(アスパルテーム)等のアミノ酸及びアミノ酸誘導体、L−システイン酸等のアミノスルホン酸等を挙げることができる。α−アミノ酸は、光学活性体(L体、D体)であっても、ラセミ体であってもよい。また、重合体は、アミノ酸以外の繰り返し単位を含む共重合体であってもよい。
【0033】
共重合体の繰り返し単位の例としては、アミノカルボン酸、アミノスルホン酸、アミノホスホン酸、ヒドロキシカルボン酸、メルカプトカルボン酸、メルカプトスルホン酸、メルカプトホスホン酸等の脱水縮合物が挙げられる。
【0034】
また、多価アミン、多価アルコール、多価チオール、多価カルボン酸、多価スルホン酸、多価ホスホン酸、多価ヒドラジン化合物、多価カルバモイル化合物、多価スルホンアミド化合物、多価ホスホンアミド化合物、多価エポキシ化合物、多価イソシアナート化合物、多価イソチオシアナート化合物、多価アジリジン化合物、多価カーバメイト化合物、多価カルバミン酸化合物、多価オキサゾリン化合物、多価反応性不飽和結合化合物、多価金属等の脱水縮合物、付加物、置換体が挙げられる。
【0035】
共重合体である場合は、ブロック・コポリマーであっても、ランダム・コポリマーであっても構わない。また、グラフト・コポリマーであっても構わない。これらの中で、重合度が高くなり、生分解性にも優れる点から、ポリアスパラギン酸及びポリグルタミン酸を基本骨格とした場合が好ましく、さらに工業的生産に適したポリアスパラギン酸のホモポリマーが特に好ましい。
【0036】
ポリマー基本骨格がポリアスパラギン酸の場合は、主鎖中のアミド結合が、α結合である場合と、β結合である場合がある。ポリグルタミン酸の場合は、主鎖中のアミド結合が、α結合である場合と、γ結合である場合がある。
【0037】
すなわち、ポリアスパラギン酸及びその共重合体の場合は、アスパラギン酸もしくは共重合体単量体のアミノ基等と、アスパラギン酸のα位のカルボキシル基と結合した場合がα結合であり、アスパラギン酸のβ位のカルボキシル基と結合した場合がβ結合である。ポリグルタミン酸及びその共重合体の場合は、グルタミン酸もしくは共重合体単量体のアミノ基等と、グルタミン酸のα位のカルボキシル基と結合した場合がα結合であり、グルタミン酸のγ位のカルボキシル基と結合した場合がγ結合である。このポリアスパラギン酸の場合のα結合とβ結合、ポリグルタミン酸の場合のα結合とγ結合の結合様式は特に限定されない。
【0038】
(1−2)重合体の側鎖構造
本発明の重合体は、前記各一般式から明らかなように、ポリマー主鎖である酸性ポリアミノ酸のカルボキシ基を誘導する等して、各々に特定の側鎖構造をとるものである。すなわち、一般式(1a)(1b)〜(5a)(5b)は、基本骨格は同じであるが側鎖構造が異なっている。本発明の重合体の界面作用、特に疎水性部分と親水性部分による界面活性の機能発現は、この側鎖構造の寄与が大きい。
【0039】
また、本発明の重合体は、非架橋体又は微架橋体であることが好ましい。微架橋体とは、重合体の本来の物性、特に溶解性を損ねない範囲内で架橋されたものをいう。すなわち、本発明の重合体は、非架橋体、又は、水溶性若しくは油溶性を保つ程度に架橋度が低いことが好ましい。
【0040】
本発明の重合体の分子を構成する全ての繰り返し単位の総数に対して、親水性部分である一般式(1a)(1b)(2a)(2b)の繰り返し単位の総数は50〜90%であり、疎水性部分である一般式(3a)(3b)(4a)(4b)(5a)(5b)の繰り返し単位の総数は10〜50%である。一般式(1a)(1b)〜(5a)(5b)の繰り返し単位の数は、重合体を使用する用途に応じて適宜決めればよく、この範囲内であれば特に限定されない。ただし、前者は55〜85%であることが好ましく、後者は15〜45%であることが好ましい。特に、前者は60〜80%であることがより好ましく、後者は20〜40%であることがより好ましい。また、分子を構成する全ての繰り返し単位の総数に対して、一般式(1a),(1b)で表される繰り返し単位の数が5〜90%であることが好ましい。同様に、分子を構成する全ての繰り返し単位の総数に対して、一般式(2a),(2b)で表される繰り返し単位の数が5〜90%であることが好ましい。
【0041】
また、本発明の重合体を界面作用型高分子薬剤として使用する為には、一般的に親水基と疎水基との適度なバランス(すなわち両者の合計数に対する各々の適切な比率)が必要であり、水に対する溶解性が重要である。例えば、25℃における水への溶解性については、水100質量部に対し重合体0.1〜50質量部が溶解することが好ましい。この溶解する量は、さらに1〜50質量部が好ましく、5〜50質量部が特に好ましい。
【0042】
本発明の重合体の分子量は特に限定されず、その用途によって適宜決定すればよい。例えば、膜形成能等が必要な場合は分子量は高い方がよく、分解性を速くすること等が必要な場合は分子量は低い方が好ましい。一般的に、ペンダント基を導入する前の原料重合体の重量平均分子量は、1000〜100万程度であり、好ましくは5000〜100万程度、より好ましくは1万〜20万程度である。
【0043】
次に、一般式(1a)(1b)(2a)(2b)の親水性の側鎖構造と、一般式(3a)(3b)(4a)(4b)(5a)(5b)の疎水性の側鎖構造とを、各々分けて説明する。
【0044】
ただし、ここでの説明は、あくまでも典型的な親水性、疎水性を発現するための側鎖構造の説明であり、本発明の重合体の構造を制限するものではない。詳しくは、本発明の重合体の側鎖構造中の親水性部分が必ずしも親水性基のみで、疎水性部分が疎水性基のみで構成しなければならないわけではない。親水性部分に疎水性部分が混在する場合も、疎水性部分に親水性部分が混在する場合も有り得る。すなわち、本発明の重合体の界面作用発現のためには全体的な親水基と疎水基との適度なバランスがとれればよい。
【0045】
(1−2−1)親水性部分の重合体側鎖構造
本発明の重合体の親水性部分は、一般式(1a)(1b)、及び/又は、一般式(2a)(2b)で表わされる。
【0046】
一般式(1a)(1b)において、その側鎖構造は、ポリマー主鎖と結合するX1と、特定の官能基を有するペンダント基(R1)とからなる。ペンダント基(R1)は、スルホン酸基、並びにその塩、水酸基、及び、トリアルキルアンモニオ基から成る群より選ばれる少なくとも1つの官能基(以下「特定官能基」と称す)を有する炭化水素基からなる。X1は、−NH−である。
【0047】
側鎖基は、ポリマー主鎖のアミド結合に対して、アスパラギン酸残基の場合は、α位に置換されていても、β位に置換されていても構わず、グルタミン酸残基の場合は、α位に置換されていても、γ位に置換されていても構わない。
【0048】
一般式(1a)(1b)において、ペンダント基(R1)は、上述した特定官能基を有するが、それ以外の部分は主に炭素と水素から成る。本発明では、それ以外の部分を便宜的に炭化水素基と呼ぶ。ここでは、本発明の重合体側鎖の親水基部分の説明をしているが、このペンダント基(R1)中の炭化水素基にて疎水性を発現しても構わない。
【0049】
この炭化水素基としては、特に限定されないが、アルキレン、アラルキレン、フェニレン、ナフチレン基等が挙げられる。これらは直鎖であっても分岐構造であっても、環状構造であっても構わない。
【0050】
この炭化水素基は、その炭素原子の一部をO、N、S、P、B、Si等を含む置換基にて置換されていても構わない。すなわち、環構造の場合は、炭素原子の一部をO、N、S、P、B、Si等で置換されていてもよく、また、O、N、S、P、B、Si等が導入された、エーテル基、エステル基、カルボニル基、ウレア基、チオエステル基、チオカルボニル基、スルホン基、スルホニル基、スルホンアミド基、二級アミノ基、三級アミノ基、アミド基、ホスホン基、ホスホンアミド基等の置換基にて置換されていても構わない。
【0051】
また、炭化水素基に対する特定官能基の置換位置も特に限定されない。炭化水素基の具体的な例を以下に挙げる。なお、以下の例は、便宜的に、ペンダント基の炭化水素基の部分を例示したものである。実際のペンダント基は、これらの炭化水素基の水素が特定官能基で置換された構造を有する。
【0052】
例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ツジャニル基、カラニル基、ボルナニル基、ノルボルナニル基、ピナニル基、デカリニル基等のシクロアルキル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクタテトラエニル基、フルベニル基等のシクロポリエニル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等のアラルキル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基、ペンチルオキシエチル基、ヘキシルオキシエチル基、ヘプチルオキシエチル基、オクチルオキシエチル基、デシルオキシエチル基、ウンデシルオキシエチル基、ドデシルオキシエチル基、トリデシルオキシエチル基、テトラデシルオキシエチル基、ペンタデシルオキシエチル基、ヘキサデシルオキシエチル基、ヘプチルデシルオキシエチル基、オクチルデシルオキシエチル基等のアルコキシアルキル基、フェノキシエチル基等のアリールオキシアルキル基、ベンジルオキシエチル基、トリルオキシエチル基等のアラルキルオキシアルキル基、メチルチオエチル基、エチルチオエチル基、プロピルチオエチル基、ブチルチオエチル基、ペンチルチオエチル基、ヘキシルチオエチル基、ヘプチルチオエチル基、オクチルチオエチル基、ノニルチオエチル基、デシルチオエチル基、ウンデシルチオエチル基、ドデシルチオエチル基、トリデシルチオエチル基、テトラデシルチオエチル基、ペンタデシルチオエチル基、ヘキサデシルチオエチル基、ヘプチルデシルチオエチル基、オクチルデシルチオエチル基等のアルキルチオアルキル基、フェニルチオエチル基、トリルチオエチル基等のアリールチオアルキル基、ベンジルチオエチル基等のアラルキルチオアルキル基、メチルオキシカルボニルエチル基、エチルオキシカルボニルエチル基、プロピルオキシカルボニルエチル基、ブチルオキシカルボニルエチル基、ペンチルオキシカルボニルエチル基、ヘキシルオキシカルボニルエチル基、ヘプチルオキシカルボニルエチル基、オクチルオキシカルボニルエチル基、ノニルオキシカルボニルエチル基、デシルオキシカルボニルエチル基、ウンデシルオキシカルボニルエチル基、ドデシルオキシカルボニルエチル基、トリデシルオキシカルボニルエチル基、テトラデシルオキシカルボニルエチル基、ペンタデシルオキシカルボニルエチル基、ヘキサデシルオキシカルボニルエチル基、ヘプチルデシルオキシカルボニルエチル基、オクチルデシルオキシカルボニルエチル基等のアルキルオキシカルボニルアルキル基、メチルカルボニルオキシエチル基、エチルカルボニルオキシエチル基、プロピルカルボニルオキシエチル基、ブチルカルボニルオキシエチル基、ペンチルカルボニルオキシエチル基、ヘキシルカルボニルオキシエチル基、ヘプチルカルボニルオキシエチル基、オクチルカルボニルオキシエチル基、ノニルカルボニルオキシエチル基、デシルカルボニルオキシエチル基、ウンデシルカルボニルオキシエチル基、ドデシルカルボニルオキシエチル基、トリデシルカルボニルオキシエチル基、テトラデシルカルボニルオキシエチル基、ペンタデシルカルボニルオキシエチル基、ヘキサデシルカルボニルオキシエチル基、ヘプチルデシルカルボニルオキシエチル基、オクチルデシルカルボニルオキシエチル基等のアルキルカルボニルオキシアルキルオキシ基、フェニル基、ビフェニル基、インデニル基、インダニル基、ナフチル基、1,4−ジヒドロナフチル基、テトラリニル基、ビナフチル基、アズレニル基、ビフェニレニル基、アセナフチル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、フルオランテンニル基、アセアントレニル基、トリフェニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ルビセニル、コロネル基、オパレニル基等のアリール基、オキセタニル基、チエタニル基、アゼチジン基、フラニル基、テトラヒドロフラニル基、ジオキソラニル基、チオフェニル基、チオラニル基、ピロール基、ピロリン基、ピロリジン基、ピラゾール基、ピラゾリン基、ピラゾリジン基、イミダゾール基、イミダゾリン基、イミダゾリジン基、トリアゾール基、テトラゾール基、イソオキサゾール基、オキサゾール基、フラザン基、イソチアゾール基、チアゾール基、ピラニル基、オキサニル基、ジオキサニル基、チアニル基、ジチアニル基、ピリジニル基、ピペリジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピペラジニル基、トリアジニル基、テトラジニル基、オキサジニル基、モルホリニニル基、チアジニル基、チエノチオフェニル基、ベンゾフラニル基、ジヒドロベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドール基、インドリン基、イソインドール基、イソインドリン基、インドリジン基、インダゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾトリアゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾチアゾリン基、プリン基、クロメン基、クロマン基、イソクロメン基、イシクロマン基、キノリン基、イソキノリン基、キノリジン基、シンノリン基、キナゾリン基、キノキサリン基、フタラジン基、ナフチリジン基、プテリジン基、ジベンゾフラン基、カルバゾール基、キサンテン基、ジベンゾチオピラン基、アクリジン基、チアントレン基、フェナジン、フェノキサジン基、フェノキサジン基、フェノチアジン基、フェナントリジン基、フェナントロリン、ベンゾシンノリン基、キヌクリジン基等の複素環、ベンゾキノン基、トロポロン基、ベンゾフェノン基、ベンジジン基、ナフトキノン、フェナントレンキノン基、アントロン基、アントラキノン基、ベンゾアントロン基、ピロン基、ピラゾロン基、ヒダントイン基、バルビツル酸基、フタリド基、クマリン基、イソクマリン基、クロモン基、フラボン基、キサンチン基、尿酸基、トロポン基等の環式基等が挙げられる。
【0053】
次に、ペンダント基(R1)に含まれる特定官能基の具体例について説明する。
【0054】
ペンダント基(R1)に含まれるスルホン酸基の塩の対イオンとしては、特に限定されないが、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ペンチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、トリエチルプロピルアンモニウム、トリエチルブチルアンモニウム、トリエチルペンチルアンモニウム、トリエチルヘキシルアンモニウム、シクロヘキシルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム等のアンモニウム塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン、トリヘキサノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、メチルペンチルアミン、メチルヘキシルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン等のアミン塩等が挙げられる。
【0055】
これらの中で、高い親水性を発現するためには、対イオンの分子量は小さい方が好ましい。また、人の肌等に触れる可能性がある場合は、刺激性が低い方が良く、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、アンモニウムが好ましい。
【0056】
ペンダント基(R1)に含まれるトリアルキルアンモニオ基は、アルキル基が3つ窒素原子に結合した四級アンモニウムの構造を取る。上記アルキル基以外の基は炭化水素基と結合している。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。アルキル基は、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。また、アルキル基は分岐、直鎖のものであっても、ヘテロ原子、置換基を含むものであっても構わない。
【0057】
トリアルキルアンモニオ基の具体例としては、トリメチルアンモニオ基、トリエチルアンモニオ基、トリプロピルアンモニオ基、トリブチルアンモニオ基、トリペンチルアンモニオ基、トリヘキシルアンモニオ基、トリヘプチルアンモニオ基、トリオクチルアンモニオ基、トリノニルアンモニオ基、トリウンデシルアンモニオ基、トリドデシルアンモニオ基、トリデシルアンモニオ基、トリテトラデシルアンモニオ基、トリペンタデシルアンモニオ基、トリヘキサデシルアンモニオ基、トリヘプチルデシルアンモニオ基、トリオクチルデシルアンモニオ基、ジメチルエチルアンモニオ基、ジメチルシクロヘキシルアンモニオ基、ジメチルベンジルアンモニオ基、メチルジベンジルアンモニオ基、ジメチル(メチルオキシカルボニルメチル)アンモニオ基、ジメチル(エチルオキシカルボニルメチル)アンモニオ基、ジメチル(プロピルオキシカルボニルメチル)アンモニオ基、ジメチル(ブチルオキシカルボニルメチル)アンモニオ基、ジメチル(ペンチルオキシカルボニルメチル)アンモニオ基、ジメチル(ヘキシルオキシカルボニルメチル)アンモニオ基、ジメチル(オクチルオキシカルボニルメチル)アンモニオ基、ジメチル(フェニルオキシカルボニルメチル)アンモニオ基、ジメチル(ベンジルオキシカルボニルメチル)アンモニオ基、ジメチル(シクロヘキシルオキシカルボニルメチル)アンモニオ基、ジメチル(ナフチルオキシカルボニルメチル)アンモニオ基、メチル−ビス(メチルオキシカルボニルメチル)アンモニオ基、トリス(メチルオキシカルボニルメチル)アンモニオ基、ジメチル(メチルオキシエチル)アンモニオ基、ジメチル(エチルオキシエチル)アンモニオ基、ジメチル(ブチルオキシエチル)アンモニオ基、ジメチル(ヘキシルオキシエチル)アンモニオ基、ジメチル(フェニルオキシエチル)アンモニオ基、ジメチル(シクロヘキシルオキシエチル)アンモニオ基、ジメチル(ナフチルオキシエチル)アンモニオ基、ジメチル(メチルオキシプロピル)アンモニオ基、ジメチル(メチルオキシブチル)アンモニオ基、ジメチル(メチルオキシオクチル)アンモニオ基、ジメチル(メチルオキシエチルオキシエチル)アンモニオ基、ジメチル(メチルオキシエチルオキシブチル)アンモニオ基、ジメチル(メチルチオエチル)アンモニオ基、ジメチル(メチルチオブチル)アンモニオ基、ジメチル(メチルアミノエチル)アンモニオ基、ジメチル(ジメチルアミノエチル)アンモニオ基、ジメチル(メチルアミノエチル)アンモニオ基、ジメチル(メチルカルボニルオキシエチル)アンモニオ基、ジメチル(メチルカルボニルチオエチル)アンモニオ基、ジメチル(メチルチオカルボニルエチル)アンモニオ基、ジメチル(N−アセチルアミノエチル)アンモニオ基、ジメチル(N,N−ジアセチルアミノエチル)アンモニオ基、ジメチル(メチルカルボニルチオエチル)アンモニオ基、ジメチル(カルバモイルエチル)アンモニオ基、ジメチル(N−メチルカルバモイルエチル)アンモニオ基、ジメチルフェニルアンモニオ基、メチルジフェニルアンモニオ基等が挙げられる。
【0058】
これらトリアルキルアンモニオ基が高い親水性を発現するためには、対イオンの分子量は小さい方が好ましい。また、人の肌等に触れる可能性がある場合は、刺激性が低い方が良く、カチオン基の分子量が小さく、親水性が高い、トリメチルアンモニオ基、トリエチルアンモニオ基、トリプロピルアンモニオ基、トリブチルアンモニオ基、ジメチル(メチルオキシカルボニルメチル)アンモニオ基、ジメチル(エチルオキシカルボニルメチル)アンモニオ基が好ましい。
【0059】
また、トリアルキルアンモニオ基は陰イオンとイオン対をなし、塩を形成するが、その陰イオンの具体例として、以下に共役酸の状態にて例示する。例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、亜硫酸、二亜硫酸、アミド硫酸、チオ硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、メタリン酸、次リン酸、ピロリン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸、炭酸、過炭酸、ホウ酸、オルトホウ酸、メタホウ酸、塩素酸、過塩素酸、次亜塩素酸、臭素酸、過臭素酸、次亜臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、次亜ヨウ素酸、ケイ酸、オルトケイ酸、メタケイ酸、アルミン酸、テルル酸、イソシアン酸、チオシアン酸、マンガン酸、過マンガン酸、過ヨウ素酸、クロム酸、ニクロム酸、メタ亜アンチモン酸、メタバナジン酸、モリブデン酸等の無機鉱酸、有機ホスホン酸、有機スルホン酸、有機カルボン酸、シュウ酸、有機フェノール等の有機酸等が挙げられる。
【0060】
これらの中では、安全性に優れ、酸化還元性が無く、低コストであり、水への溶解性が高いものが好ましい。例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸、炭酸、ホウ酸、オルトホウ酸、メタホウ酸、ケイ酸、オルトケイ酸、メタケイ酸、シュウ酸、有機ホスホン酸、有機スルホン酸、有機カルボン酸等が好ましい。さらに、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸、ホウ酸、有機ホスホン酸、有機スルホン酸、有機カルボン酸等が、特に好ましい。
【0062】
一般式(2a)(2b)において、その側鎖構造は、ペンダント基を含まない単純酸性ポリアスパラギン酸残基の塩であり、式中、Mはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、あるいはアンモニウムイオンを表わす。
【0063】
このアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、あるいはアンモニウムイオンの具体例としては、ペンダント基(R1)に含まれるカルボキシル基、スルホン酸基、並びにそれらの塩の対イオンの具体例として先に挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0064】
なお、一般式(1a)(1b)で表されるような特定官能基を有するペンダント基(R1)を含む繰返し単位は、及び/又は、ペンダント基を含まない単純酸性ポリアミノ酸残基からなる繰返し単位を分子内に含むものであるが、本発明の重合体は、それ以外に、他の置換基を有する繰り返し単位を分子内に含んでいても構わない。他の置換基としては、例えば、ホルミル基、カルボン酸アルキルアミド基、カルボン酸ジアルキルアミド基、チオカルボン酸基が挙げられる。
【0065】
(1−2−2)疎水性の重合体側鎖構造
本発明の重合体の特徴の一つは重合体の疎水性側鎖構造、すなわち疎水性部分である一般式(3a)(3b)〜(5a)(5b)の繰り返し単位の側鎖構造にある。本発明の重合体は、例えばミセルを形成して界面活性能を発現する際に、疎水性部分が相互作用し、集合した構造を取る。このとき、上記側鎖構造を有する故に、疎水性基同士のスタッキングが阻害されて高機能が発現でき、また、クラフト点が下がるために溶解性が下がり、疎水性基を多く導入したまま水に対する溶解性を高めることができる。
【0066】
一般式(3a)(3b)〜(5a)(5b)において、その側鎖構造は、X3、R3、X4、R4、X5、R5も含めて、酸性ポリアミノ酸の疎水性アミド構造、疎水性エステル構造、又は、疎水性チオエステル構造などを構成する。本発明では、便宜的にこれらの基を「疎水性側鎖基」と呼ぶ。この疎水性側鎖基は、例えば、ポリマー主鎖のカルボキシル基と、反応試剤のアミノ基、水酸基又はチオール基との脱水縮合反応により形成される。
【0067】
疎水性側鎖基は、ポリマー主鎖のアミド結合、エステル結合あるいはチオエステル結合に対して、アスパラギン酸残基の場合は、α位に置換されていても、β位に置換されていても構わず、グルタミン酸残基の場合は、α位に置換されていても、γ位に置換されていても構わない。
【0068】
一般式(3a)(3b)〜(5a)(5b)において、X3は−NH−である。
【0069】
本発明においては、疎水性部分において疎水性基が複数種存在することが重要な役割を果たす。すなわち、鎖長の異なる疎水性基及び/又は直鎖と分岐の疎水性基が併存することにより、疎水性部分同士のスタッキングを効率良くする点で効果的に働く。例えば、ミセル中などの疎水性部分同士のスタッキング時に長鎖炭化水素基がつくる隙間を短鎖の炭化水素基が埋めることができる。また例えば、分岐炭化水素基がつくる隙間を直鎖炭化水素基が同様に埋めることができる。これにより分散性が著しく向上し、優れた分散剤、乳化剤などの働きが発現する。さらに、複数種の疎水性基により分子の対称性が著しく崩れるので、水に対する溶解性が向上する。
【0070】
一般式(3a)(3b)において、R3は炭素数8〜12の直鎖炭化水素基である。具体的には、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基である。
【0071】
一般式(4a)(4b)において、R4は炭素数16〜18の直鎖炭化水素基である。具体的には、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基である。
【0072】
一般式(5a)(5b)において、R5は−CH 2 CH(C 2 H 5 )C 4 H 9 、具体的には、2−エチルヘキシル基である。
【0073】
(2)重合体の製造方法
本発明の重合体の製造方法は、特に限定されないが、ここでは、より有用なポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法を中心に説明する。
【0074】
本発明のポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法としては、ポリアスパラギン酸に特定官能基を含むペンダント基を導入する方法と、特定官能基を含むペンダント基を導入したモノマーを重合する方法がある。また、ポリアスパラギン酸単位からさらに水1分子が脱水した構造を有するポリコハク酸イミドを用いる方法がある。さらに、特定官能基となりうる前駆体を含むペンダント基を上記の各方法にて導入し、これを特定官能基に変換する方法もある。特に、ポリコハク酸イミドに特定官能基を含むペンダント基を導入する方法は、温和な条件にて反応が進行し、副生物もないので特に好ましい。
【0075】
一般的には、ポリコハク酸イミドを用いるか、もしくはこれを加水分解したポリアスパラギン酸を用いた製造方法が工業的な生産を行う場合に適しているので、以下においては、これらの方法について説明する。
【0076】
なお、親水性部分と疎水性部分の導入方法は、モノマー単位で導入した後に重合する方法でも構わないが、本発明では、酸性ポリアミノ酸、ポリコハク酸イミド等の上記重合体を用いて親水性と疎水性に誘導していく方法が好ましいので、これについて説明する。
【0077】
また、重合体の一部を親水性へ誘導化する方法と、疎水性部分を構成する方法は、厳密には同じ製造条件ではないが、基本的には同じ原理で反応を行うことができるので同時に説明する。つまり、反応条件としては、親水性と疎水性の場合にて、使用するペンダント基となりうる反応試剤の極性、反応性、反応を受ける重合体の極性、反応性、反応を受けていく過程、及び反応後の重合体の極性が異なるために、反応溶媒、反応温度、反応時間等が異なってくる。この親水性基の導入、疎水性基の導入の順序は特に限定されない。同時に行ってもよく、片方を導入後、もう一つの方を導入する方法でも構わない。これらは使用する反応試剤の反応性、使用する反応溶媒の極性等によって適宜選べばよい。
【0078】
(2−1)ポリコハク酸イミドの製造方法
ポリコハク酸イミドの製造方法は特に限定されないが、例えば、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(J.Amer.Chem.Soc.)、80巻、3361頁〜(1958年)等に記載の方法にて容易に製造することができる。本発明に使用するためのポリコハク酸イミドの製造時に、アスパラギン酸以外の他のアミノ酸や、アミノ酸以外の単量体成分を添加して共重合体を製造することもできる。
【0079】
共重合体を製造する場合は、ポリコハク酸イミドの製造時に他の共重合可能な単量体をアスパラギン酸に加えて重合する。
【0080】
アスパラギン酸、グルタミン酸以外の他のアミノ酸成分の具体例としては、20種類のタンパク質構成アミノ酸、L−オルニチン、一連のα−アミノ酸、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、中性アミノ酸、酸性アミノ酸、酸性アミノ酸のω−エステル、塩基性アミノ酸、塩基性アミノ酸のN置換体、アスパラギン酸−L−フェニルアラニン2量体(アスパルテーム)等のアミノ酸及びアミノ酸誘導体、L−システイン酸等のアミノスルホン酸等を挙げることができる。α−アミノ酸は、光学活性体(L体、D体)であっても、ラセミ体であってもよい。
【0081】
また重合体は、アミノ酸以外の繰り返し単位を含む共重合体であってもよい。その他の共重合の例としては、アミノカルボン酸、アミノスルホン酸、アミノホスホン酸、ヒドロキシカルボン酸、メルカプトカルボン酸、メルカプトスルホン酸、メルカプトホスホン酸等の脱水縮合物が挙げられる。
【0082】
また、多価アミン、多価アルコール、多価チオール、多価カルボン酸、多価スルホン酸、多価ホスホン酸、多価ヒドラジン化合物、多価カルバモイル化合物、多価スルホンアミド化合物、多価ホスホンアミド化合物、多価エポキシ化合物、多価イソシアナート化合物、多価イソチオシアナート化合物、多価アジリジン化合物、多価カーバメイト化合物、多価カルバミン酸化合物、多価オキサゾリン化合物、多価反応性不飽和結合化合物、多価金属等の脱水縮合物、付加物、置換体が挙げられる。
【0083】
ただし、これらの多価化合物を共重合体成分として使用する場合、使用量が多すぎる場合は、架橋状態となり、水又は有機溶媒に対して不溶性となり本発明の本来の目的に合わなくなるので好ましくない。本発明で用いる架橋は、本来の樹脂の特性が失われない微架橋状態を示すことが好ましい。
【0084】
(2−2)ペンダント基導入反応
本発明の重合体は、親水性部分と疎水性部分をもつが、ここでは親水性、疎水性を問わず、(1a)(1b)及び(3a)(3b)〜(5a)(5b)中のペンダント基として導入するものについて説明する。
【0085】
重合体にペンダント基を導入する為の方法は特に限定されないが、例えば、ポリコハク酸イミドに、少なくとも1個の特定官能基を有する、アミン、アルコール及びチオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を反応させる方法、酸性ポリアミノ酸に、上記化合物を脱水縮合反応させる方法、酸性ポリアミノ酸エステルに、上記化合物をエステル/アミド交換反応させる方法などが挙げられる。なお、使用するポリコハク酸イミドの分子量は、例えば、膜形成能等が必要な場合は分子量は高い方が好ましく、分解性を速く実現するためには分子量は低い方が好ましい。本発明おいては、その重量平均分子量は、1000以上100万以下である。
【0086】
導入されるペンダント基となりうる反応試剤は、親水性置換基を持つもの、疎水性のもの共に、同様な方法によって導入することができる。
【0087】
ペンダント基導入反応に使用する反応試剤は、特定官能基を含んでいても、特定官能基となりうる置換基(前駆体)を含んだものであっても構わない。本発明では、便宜上、特定官能基となり得る置換基を前駆体と呼ぶ。
【0088】
反応試剤の代表例としては、少なくとも1個の特定官能基又はその前駆体を持つアミン、チオール、アルコール等が挙げられる。その基本骨格は、各一般式中の側鎖基に相当する。また、ペンダント基導入反応は、1段階でペンダント基を導入してもよいし、一旦ある置換基を導入し、次いでその置換基に別の置換基を反応させてペンダント基とする多段階方式であっても構わない。
【0089】
以下に、ペンダント基を導入する方法の具体例を列挙して説明する。
【0090】
(2−2−2)ポリコハク酸イミドと特定官能基を含むアミン等を反応させる方法
ポリコハク酸イミドと特定官能基を含むアミン等を反応させる場合、使用する溶媒は特に限定されず、ポリコハク酸イミドもしくはポリコハク酸イミド誘導体を溶解できるもの、もしくはペンダント基となりうる反応試剤を溶解できるものであればよく、化学反応に用いられる一般的な溶媒はいずれも使用できる。
【0091】
特に、酸性基を含む反応試薬は極性が高いので、極性溶媒を用いることが好ましい。極性溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン等が好ましく、特に水が好ましい。これらの溶媒は、単独でも、2種以上を混合して用いても構わない。
【0092】
特に、酸性基を含む反応試薬は極性が高いので、極性溶媒を用いることが好ましい。極性溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン等が好ましく、特に水が好ましい。これらの溶媒は、単独でも、2種以上を混合して用いても構わない。
【0093】
ポリコハク酸イミドへのペンダント基導入反応時のポリコハク酸イミドの濃度は、特に限定されないが、0.1〜50質量%が好ましく、特に1〜40質量%が好ましい。ペンダント基導入反応は、必要により触媒を用いてもよい。触媒としては、一般的に、塩基触媒が用いられる。
【0094】
塩基触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のアルカリ金属酢酸塩、シュウ酸ナトリウム等のアルカリ金属塩、アンモニア等の無機系塩基試剤;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン、トリヘキサノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、メチルペンチルアミン、メチルヘキシルアミン、ピリジン、ピコリン、キノリン等のアミン;等の有機系塩基試剤が挙げられる。
【0095】
ペンダント基導入反応における反応温度は、特に限定されないが、0〜120℃が好ましく、特に10〜60℃が好ましい。
【0096】
(2−2−3)酸性ポリアミノ酸又はその誘導体と特定官能基を有するアミン等を脱水縮合反応させる方法
酸性ポリアミノ酸にペンダント基を導入する方法としては、反応試剤と酸性ポリアミノ酸を脱水縮合する方法が一般的である。
【0097】
しかし、酸性基を有するアミン等を脱水縮合させる方法では、脱水縮合の反応条件によっては、酸性基そのものがアミン等と反応してしまう場合がある。この場合、側鎖基の伸長が起こるが、その結果、親水性基が少なくなる。したがって、場合によっては酸性基を保護する方法を取る必要がある。
【0098】
脱水縮合を行う場合は、生成する水を溶媒との共沸によって除く方法、脱水剤としてモレキュラシーブを加えておく方法、脱水縮合剤を用いて反応させる方法、酵素を用いる方法のいずれの方法をとっても構わない。
【0099】
縮合剤の例としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、N−エチル−N'−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド等のカルボジイミド、1−アシルイミダゾリド、2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン、トリフェニルホスフィン/四塩化炭素、トリフェニルホスフィン/ブロモトリクロロメタン、フェニルホスホン酸ビス(2−ニトロフェニルエステル)、シアノホスホン酸ジエチル、ジフェニルホスホロアジド等の含リン化合物、2−フルオロ−1−エチルピリジウム・テトラフルオロボレート、トリフェニルホスフィン/ビス(ベンゾチアゾール)ジスルフィド、トリブチルホスフィン/ビス(ベンゾチアゾール)ジスルフィド等の酸化還元縮合剤等が挙げられる。
【0100】
脱水縮合時の反応温度は、20〜250℃が好ましく、100〜180℃がより好ましい。
【0101】
また、酸性ポリアミノ酸をエステル化、アミド化、又は、チオエステル化した酸性ポリアミノ酸の誘導体を、脱水縮合反応させる方法を用いても構わない。このエステル化等には、従来より知られる有機化学上の通常の反応条件を用いることができる。例えば、酸性アミノ酸残基のカルボキシル基と、エステル、アミド又はチオエステルを形成する為の試薬を反応させてもよいし、あらかじめ酸性ポリアミノ酸を誘導体として反応性を高めてから、エステル、アミド又はチオエステルを形成する為の試薬と反応させてもよい。
【0102】
より具体的には、例えば、酸性アミノ酸残基のカルボキシル基を、アルコール、アミン、チオール等で脱水縮合反応させる方法、酸性アミノ酸残基のカルボキシル基を、酸無水物、酸ハロゲン化物、酸アジド等にして活性化して、アルコール、アミン、チオール等と反応させる方法、酸性アミノ酸残基のカルボキシル基を、活性化したアルコール(例えば、アルコールのハロゲン化物、エステル、スルホン酸エステル、硫酸エステル)、活性化したアミン(例えば、アミンのケイ素誘導体)と反応させる方法、酸性アミノ酸残基のカルボキシル基を、エポキシ化合物、イソシアナート化合物、アジリジン化合物、アルキル金属等と反応させる方法、酸性アミノ酸残基のカルボキシル基を塩として、ハロゲン化物等と反応させる方法、酸性アミノ酸残基のカルボキシル基を活性なエステル基として、エステル交換、アミド交換によって反応させる方法等がある。
【0103】
(2−2−4)酸性ポリアミノ酸エステルと特定官能基を有するアミン等をエステル/アミド交換反応させる方法
酸性ポリアミノ酸エステルを反応させる方法としては、特に限定されないが、有機溶媒中で酸性ポリアミノ酸エステルと反応試剤を反応させる方法が一般的である。用いるエステルは、メチル、エチル等の分子が小さいアルコール成分、クロロメチル、ジクロロメチル等の電子吸引基を含むアルコール成分、N−ヒドロキシコハク酸イミド等のアルコールでエステル化したものが挙げられる。
【0104】
場合によっては、酸触媒、塩基触媒等の触媒を用いても構わない。また、反応系が不均一になる場合、もしくは用いる原料が不溶性の場合、相間移動触媒を用いても構わない。また、この方法においても、エステル/アミド交換反応の反応条件によっては、酸性基そのものがアミン等と反応して、(2−2−3)の方法の場合と同様に、側鎖基の伸長が起こり、親水性基の割合が少なくなる場合がある。
【0105】
(2−2−5)前駆体を用いる方法
ペンダント基導入反応においては、特定官能基の前駆体を有するペンダント基を上記の各方法に従い導入した後、さらにその前駆体を特定官能基にすることができる。特に、トリアルキルアンモニオ基については、この方法を行なうことが好ましい。前駆体を含むペンダント基を導入した後の反応生成物は、系外に取り出しても、必要により、そのまま連続的にカルボキシル基への置換反応、カチオン化反応を行ってもよい。ここで、系外に反応生成物を取り出す場合は、場合によっては反応生成物を乾燥して用いても構わない。
【0106】
以上説明した各方法(2−2−2)乃至(2−2−5)のうち、温和な条件にて効率よく反応できる方法が好ましく、特に、ポリコハク酸イミドと特定官能基を含むアミン等を反応させる方法、もしくは、前駆体を含むペンダント基を導入し、さらに前駆体を特定官能基へ誘導化する方法が好ましい。
【0107】
(2−2−6)ペンダント基導入後の処理
ペンダント基導入反応、前駆体の特定の官能基への変換反応の終了後の処理は特に限定されず、化合物製造にて用いられる一般的な手法を使用することができる。例えば、反応終了後の反応液から生成重合体を単離する方法は、実質的に、反応生成物を所望の純度で単離できる方法であればよく、従来より知られる何れの方法によってもよい。一般的には、濃縮、再結晶、再沈澱等の単離操作を採用できる。
【0108】
例えば、反応終了後、適当な温度において、反応生成物が溶解している反応液に、過剰の貧溶媒(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール)を加え、析出した反応生成物を、デカンテーション、濾過又は吸引濾過等により単離し、沈殿物を溶解しない貧溶媒で充分に洗浄し、乾燥する方法が挙げられる。また、その他の例として、反応終了後、適当な温度において、反応生成物が溶解している反応液を、前記と同じ過剰の貧溶媒に加え、析出した反応生成物の沈殿物を、前記と同様にして単離し、洗浄し、乾燥する方法が挙げられる。
【0109】
樹脂の乾燥温度は、特に限定されないが、一般的には、20〜150℃が好ましく、特に40〜100℃が好ましい。樹脂の乾燥方法も特に限定されず、熱風乾燥、特定蒸気での乾燥、マイクロ波乾燥、減圧乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶剤中での共沸脱水による乾燥等、各種の手法により乾燥できる。
【0110】
(3)重合体の用途
本発明の重合体は界面作用型重合体であるが、その使用用途は特に限定されない。例えば、従来の表面作用型高分子薬剤、界面作用型高分子薬剤、内部作用型高分子薬剤、結合作用型高分子薬剤が使用可能な用途の何れにも使用できる。
【0111】
界面作用型高分子薬剤としては、例えば、分散を主目的としたものとして、顔料分散剤、農薬粒剤用分散剤、微粉炭用分散剤、セメント分散剤、スケール防止剤、潤滑油用清浄分散剤、流動点降下剤、プラスチック着色助剤、相溶化剤が挙げられ、凝集を主目的としたものとして、高分子凝集剤、ろ水性・歩留り向上剤等が挙げられ、接着を主目的としたものとして、印刷インキ用バインダー、へアセット用高分子、不織布用バインダー、プラスチック強化繊維用バインダー、電子写真トナー用バインダー、磁気テープ用バインダー、レジンコンクリート用バインダー、鋳物砂用バインダー、ファインセラミック用バインダー、シーラント、接着剤等が挙げられ、その他の目的のものとして、泡安定化剤、消泡剤、エマルジョンブレーカー、滑剤等が挙げられる。
【0112】
表面作用型高分子薬剤としては、例えば、表面保護を主目的としたものとして、塗料用高分子、フロアポリッシュ用高分子、錠剤コーティング剤、マスキング剤、光ファイバー用コーティング剤、プラスチック・ハードコート剤、フォトレジスト用高分子、プリント配線板用防湿コーティング剤等が挙げられ、表面改質を主目的としたものとして、紙用サイズ剤、紙力増強剤、つや出しコーティング剤、繊維用防染加工剤、帯電防止剤・導電剤、電磁波シールド用コーティング剤、コンクリート用防水剤、プライマー等が挙げられる。
【0113】
内部作用型高分子薬剤としては、例えば、増粘を主目的とするものとして、捺染用のり剤、原油増産用高分子、土木用高分子、焼き入れ油用高分子、作動液用高分子、粘度指数向上剤等が挙げられ、減粘を主目的とするものとして、可塑剤等が挙げられ、ゲル化を主目的としたものとして、吸油性高分子等が挙げられる。
【0114】
結合作用型高分子薬剤としては、例えば、ビルダー、キレート高分子、染料固着剤、エポキシ樹脂硬化剤等が挙げられる。
【0115】
また、本発明の重合体は、医薬、農薬、肥料等の薬剤徐放性の基材として用いることもできる。さらに、上記各用途以外でも、使用目的、使用用途に応じて、親水性/疎水性のバランスをとることにより、広い範囲で有効な重合体として使用できる。
【0116】
(4)化粧品(料)及び香粧品(料)の用途
本発明の重合体は、各種用途のうち、特に、化粧品及び香粧品にも有用に使用できる。
【0117】
本明細書において用いる「化粧品」、「化粧料」、「香粧品」及び「香粧料」なる語の概念には、例えば、「第26回新入社員化粧品技術講習会テキスト」(東京化粧品工業会・東京化粧品技術者会共同主催、財団法人日本粧業会共催、平成6年6月、朝日生命ホール)第34頁及び第35頁記載の「表−化粧品の種類と効能の範囲」記載の種別及び品目を包含する。ここで、「化粧品」及び「化粧料」なる語の概念には、例えば乳液、エマルジョン、クリーム、クレンジングクリーム、おしろい、口紅、化粧水、ローション、ぬれティッシュー、マニキュア、ペディキュア、保湿料、パック、ムース、シェービングクリーム、アフターシェービングローション、ヘアトニック、ヘアリキッド、ヘアスプレー、デオドラント、消臭剤、消香剤等をも包含する。また、「香粧品」及び「香粧料」なる語の概念には、例えば整髪料、香水、オーデコロン、オードトアレ、フレグランス、入浴剤、芳香剤等をも包含する。
【0118】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。以下において「部」とは「質量部」を意味する。また、採用した各評価(1)〜(8)における具体的な評価方法を次に示す。
【0119】
(1)重量平均分子量の測定
ポリコハク酸イミドの重量平均分子量(以下「Mw」と記す)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(ゲル濾過クロマトグラフィー、以下「GPC」と記す)により、ポリスチレンを標準として、以下の条件で評価した。
【0120】
装置 :日本分光880−PU
検出器:Shodex RID−300
カラム:Shodex KD−804+KD−80M
溶媒 :0.01M・LiBr/DMF
濃度 :0.5質量%
注入量:20μl
流速 :1.0ml/min。
【0121】
(2)重合体組成の分析(NMR分析)
重合体の組成を調べるために、得られた重合体をD2Oに溶解し、日本電子(株)製の分析装置(GSX−270)を用いて、1H−NMRと13C−NMRで測定した。
【0122】
(3)重合体組成の分析(加水分解物の分析−1)
重合体の組成を調べるために、加水分解して得られたモノマー及びペンダント部分を高速液体クロマトグラフィー(以下「HPLC」と記す)で測定した。重合体の加水分解反応は、重合体0.5部を6規定塩酸20部中に加え、100℃にて8時間行った。こうして得られた分解物を以下の条件で評価した:
アスパラギン酸又はカチオン基含有ペンダント成分の分析;
装置 :日本分光880−PU
検出器:570nmカラム:Shodex CXpak P−421
溶媒 :クエン酸ナトリウム緩衝液(A)0.2N Na+/12%C2H5OH(pH3.32)
(B)0.2N Na+(pH4.20)
(C)1.0N Na+(pH6.98)
(D)1.8N Na+(pH7.50)
グラジエント:(A)15分→(B)13分→(C)13分→(D)27分
流速:0.5ml/min.
反応試剤:ニンヒドリン(0.4ml/min.)。
【0123】
(4)重合体組成の分析(加水分解物の分析−2)
生成した重合体を加水分解して得られた脂肪族アミン成分を、ガス・クロマトグラフィー(以下「GC」と記す)を用いて測定した。重合体の加水分解反応は前記「加水分解物の分析−1」と同じ条件にて行い、液のpHを9に調整して以下の条件にて評価した:
脂肪族アミンの分析;
装置 :Shimadzu GC−14A
カラム:Unisole10T+KOH(20+4)%UniportC80/100 GlassCol.I.D.3φ×3m
カラム温度:60℃/15分、60〜180℃:Prog.7.5℃/min
移動相:N220ml/min.
検出器:FID103×8
サンプルサイズ:0.4μL。
【0124】
(5)皮膚刺激性
ドレイズ法(OECDガイドライン;No.404)に従って、各重合体当たり3匹の白色ウサギを用いて試験した。有効成分濃度を5質量%にしてウサギに塗布し、一定時間経過後の皮膚の様子からドレイズスコアにより、下記4段階で評価した。
◎:Non−irritant
○:Mild−irritant
△:Moderate−irritant
×:Severe−irritant。
【0125】
(6)生分解性の測定
生分解性はコンポスト法にて測定した。コンポスト法は、ASTM D−5338.92の応用であるISO CD 14855に準じて行った。すなわち、まず試験サンプルに含まれる炭素量を元素分析にて測定した。次に、15部の試験サンプルを800部のイノキュラムに加え、58℃にて40日間生分解を行い、生成した二酸化炭素の量を測定して、試験サンプルに含まれる炭素量を二酸化炭素に換算した量に対する発生二酸化炭素量を生分解率(%)として表した。
【0126】
(7)溶解性の評価
溶解性の評価は、蒸留水に対する重合体の溶解度を測定して評価した。25℃において、蒸留水100部に対して重合体5部を溶解し、完全に溶解するものを○、一部不溶物が残るものを△、溶解しないものを×と評価した。
【0127】
(8)表面張力の測定
本発明の重合体の用途は限定されるものでないが、ここでは表面張力を測定することにより界面作用性を評価した。測定は重合体が溶解できる範囲にて最小の表面張力値を示した。ここで、測定装置としては、協和界面化学(株)製CBVP式A−3型を使用した。
【0128】
[実施例1]
本実施例は、親水基としてポリアスパラギン酸残基を有する場合の実施例である。
【0129】
Mw10.8万のポリコハク酸イミド10部をDMF40部に溶解した溶液に、ステアリルアミン0.83部を加え、60℃にて2時間反応後、ラウリルアミン5.35部を加え、2時間反応し、さらに2−エチルヘキシルアミン0.67部を加え、4時間反応させた。反応後、室温へ冷却し、反応液をアセトン500部に排出し、沈殿物を吸引濾過にて集め、アセトン50部にて洗浄した。得られたウエットケーキを蒸留水50部へ懸濁し、25%水酸化ナトリウム水溶液10.55部を反応液のpHが11を超えないように滴下した。反応後、反応液をアセトン500部に排出し、沈殿物を吸引濾過にて集め、アセトン50部にて洗浄し、60℃にて乾燥すると、17.55部の重合体が得られた。
【0130】
得られた重合体の分解物をNMR、HPLC及びGCにて分析すると、その組成は、アスパラギン酸:ステアリルアミン:ラウリルアミン:2−エチルヘキシルアミン=100:3:28:5(モル/モル/モル/モル)であった。得られた重合体の皮膚刺激性は○であり、生分解率は94%と良好な生分解性を示した。また、溶解性試験は○であり、表面張力は47.0dyne/cmまで低下した。
【0131】
【化11】
【0132】
上記は、実施例1で得られた重合体の各繰り返し単位の構造及び割合を、NMR、HPLC及びGCの分析結果から推測したものである。
【0133】
[実施例2]
本実施例は、親水基としてポリアスパラギン酸残基を有する場合の実施例である。
【0134】
実施例1において、ステアリルアミン、ラウリルアミン、2−エチルヘキシルアミンの代わりに、それぞれセチルアミン1.24部、ラウリルアミン4.97部、オクチルアミン0.67部を用いた以外は実施例1と同様に処理した。得られた重合体の組成は、アスパラギン酸:セチルアミン:ラウリルアミン:オクチルアミン=100:5:25:4(モル/モル/モル/モル)であった。得られた重合体の皮膚刺激性は○であり、生分解率は98%と良好な生分解性を示した。また、溶解性試験は○であり、表面張力は47.5dyne/cmまで低下した。
【0135】
【化12】
【0136】
上記は、実施例2で得られた重合体の各繰り返し単位の構造及び割合を、NMR、HPLC及びGCの分析結果から推測したものである。
【0137】
[実施例3]
本実施例は、親水基としてポリアスパラギン酸残基を有する場合の実施例である。
【0138】
実施例1において、ステアリルアミン、ラウリルアミン、2−エチルヘキシルアミンの代わりに、それぞれステアリルアミン0.83部、セチルアミン1.24部、2−エチルヘキシルアミン2.01部を用い、25質量%水酸化ナトリウム水溶液を9.89部用いた以外は実施例1と同様に処理した。
【0139】
得られた重合体の組成は、アスパラギン酸:セチルアミン:ラウリルアミン:オクチルアミン=100:5:25:4(モル/モル/モル/モル)であった。得られた重合体の皮膚刺激性は○であり、生分解率は98%と良好な生分解性を示した。また、溶解性試験は○であり、表面張力は46.5dyne/cmまで低下した。
【0140】
【化13】
【0141】
上記は、実施例3で得られた重合体の各繰り返し単位の構造及び割合を、NMR、HPLC及びGCの分析結果から推測したものである。
[実施例4]
本実施例は、親水基として水酸基を有する場合の実施例である。
【0142】
Mw10.6万のポリコハク酸イミド10部をDMF40部に溶解した溶液に、ステアリルアミン0.83部を加え、60℃にて2時間反応後、ラウリルアミン5.35部を加え、2時間反応し、さらに2−エチルヘキシルアミン0.67部を加え、2時間反応させた。さらに、エタノールアミン4.03部を加え、60℃にて4時間反応させた。反応後、室温へ冷却し、反応液をアセトン400部に排出し、沈殿物を吸引濾過にて集め、アセトン50部にて洗浄し、60℃にて乾燥すると、22.0部の重合体が得られた。
【0143】
得られた重合体の分解物をNMR、HPLC及びGCにて分析すると、重合体の組成は、アスパラギン酸:ラウリルアミン:2−エチルヘキシルアミン:エタノールアミン=100:3:28:5:63(モル/モル/モル/モル)であった。得られた重合体の皮膚刺激性は○であり、生分解率は99%と良好な生分解性を示した。また、溶解性試験は○であり、表面張力は48.9.0dyne/cmまで低下した。
【0144】
【化14】
【0145】
上記は、実施例4で得られた重合体の各繰り返し単位の構造及び割合を、NMR、HPLC及びGCの分析結果から推測したものである。
【0146】
[実施例5]
本実施例は、親水基としてスルホン酸基を有する場合の実施例である。
【0147】
Mw12.6万のポリコハク酸イミド10部をDMF40部に溶解した溶液に、セチルアミン1.24部を加え60℃にて2時間反応し、次にラウリルアミン4.97部を加え2時間反応した。さらに、オクチルアミン0.67部を加え、60℃にて4時間反応後、室温へ冷却し、反応液をアセトン400部に排出し、沈殿物を吸引濾過にて集め、アセトン50部にて洗浄した。得られたウエット・ケーキを蒸留水50部に懸濁し、タウリン8.25部と25質量%水酸化ナトリウム水溶液10.55部に溶解した溶液を加え、60℃にて6時間反応させた。反応後、冷却し、500部のアセトンへ排出し、沈殿物を吸引濾過にて集め、アセトン100部にて洗浄し、60℃にて乾燥すると、25.5部の重合体が得られた。
【0148】
得られた重合体の組成は、アスパラギン酸:セチルアミン:ラウリルアミン:オクチルアミン:タウリン=100:5:25:4:60(モル/モル/モル/モル/モル)であった。得られた重合体の皮膚刺激性は○であり、生分解率は100%と良好な生分解性を示した。また、溶解性試験は○であり、は95%と良好な生分解性を示した。また、溶解性試験は○であり、表面張力は50.2dyne/cmまで低下した。
【0149】
【化15】
【0150】
上記は、実施例5で得られた重合体の各繰り返し単位の構造及び割合を、NMR、HPLC及びGCの分析結果から推測したものである。
【0151】
[実施例6]
本実施例は、親水基としてトリメチルアンモニオ基を有する場合の実施例である。
【0152】
Mw5.5万のポリコハク酸イミド10部をDMF40部に溶解した溶液に、ステアリルアミン0.83部を加え60℃にて4時間反応し、セチルアミン1.24部を加え同温にて4時間反応し、ラウリルアミン4.20部を加え、4時間反応した。さらに、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン6.32部を加え、60℃にて4時間反応させた。反応後、室温へ冷却し、ヨウ化メチル8.78部を加え、室温にて6時間反応させた。反応後、500部のアセトンへ排出し、沈殿物を吸引濾過にて集め、アセトン100部にて洗浄し、60℃にて乾燥すると、22.57部の重合体が得られた。
【0153】
得られた重合体の組成は、アスパラギン酸:セチルアミン:ラウリルアミン:オクチルアミン:ジ及びトリメチルアンモニオプロピルアミン=100:5:25:4:60(モル/モル/モル/モル/モル)であった。得られた重合体の皮膚刺激性は○であり、生分解率は96%と良好な生分解性を示した。また、溶解性試験は○であり、は98%と良好な生分解性を示した。また、溶解性試験は○であり、表面張力は49.4dyne/cmまで低下した。
【0154】
【化16】
【0155】
上記は、実施例6で得られた重合体の各繰り返し単位の構造及び割合を、NMR、HPLC及びGCの分析結果から推測したものである。
【0156】
[比較例1]
Mw10.6万のポリコハク酸イミド10部をDMF40部に溶解した溶液に、ラウリルアミン2.86部を加え、60℃にて4時間反応させた。反応後、室温へ冷却し、反応液をアセトン200部に排出し、沈殿物を吸引濾過にて集め、アセトン50部にて洗浄した。得られた反応物を蒸留水50部へ懸濁し、25%水酸化ナトリウム水溶液14.01部を反応液のpHが11を超えないように滴下した。反応後、反応液をアセトン500部に排出し、沈殿物を吸引濾過にて集め、アセトン50部にて洗浄し、60℃にて乾燥すると、14.9部の重合体が得られた。
【0157】
得られた重合体の皮膚刺激性は○であり、生分解率は98%と良好な生分解性を示し、溶解性試験は○であったが、表面張力は56.0dyne/cmまでしか低下しなかった。
【0158】
[比較例2]
比較例1において、ラウリルアミン2.86部をステアリルアミン88.33部に変え、25%水酸化ナトリウム水溶液の量を14.01部から11.53部に変えた以外は比較例1と同様に処理すると21.5部の重合体が得られた。得られた重合体の溶解性試験は×であり、表面張力は測定できなかった。
【0159】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、生分解性に優れ、生体に対して刺激惹起性がなく、分解した後の安全性にも優れ、幅広い用途において各種要求特性を満たすことのできる重合体及びその製造方法を提供できる。
【0160】
すなわち、本発明により得られる、生体適合性及び生体への安全性が高い特定の親水性置換基を含むペンダント基と、生体適合性及び生体への安全性が高い特定の疎水性置換基をペンダント基として併せ持つ酸性ポリアミノ酸誘導体は、生体(例えば、眼、皮膚等)に対して刺激性を惹起しない。従って、生体に対して刺激惹起性がなく、生分解性を有するので、例えば、化粧品、香粧品、界面活性剤、食品添加物(増粘剤、安定剤、保湿剤、麺質改良剤、凝着剤、pH調整剤、抗菌剤等)、薬剤用担体、医薬品、医薬部外品等の分野において非常に有用である。
Claims (11)
- 親水性部分として、分子内に、下記一般式(1a)で表される繰り返し単位及び/又は下記一般式(1b)で表される繰り返し単位と、下記一般式(2a)で表される繰り返し単位及び/又は下記一般式(2b)で表される繰り返し単位との、両方または一方を、分子を構成する全ての繰り返し単位の総数に対して、50〜90%含有し、
疎水性部分として、分子内に、
(i)下記一般式(3a)で表される繰り返し単位及び/又は下記一般式(3b)で表される繰り返し単位
(ii)下記一般式(4a)で表される繰り返し単位及び/又は下記一般式(4b)で表される繰り返し単位
(iii)下記一般式(5a)で表される繰り返し単位及び/又は下記一般式(5b)で表される繰り返し単位
のうちの、(i)と(ii)、(i)と(iii)、(ii)と(iii)、或いは、(i)と(ii)と(iii)の繰り返し単位を含有し、この繰り返し単位を、分子を構成する全ての繰り返し単位の総数に対して、10〜50%含有し、
一般式(1a)〜一般式(5b)で表される全ての繰り返し単位は、重量平均分子量1000以上100万以下のポリコハク酸イミドに対してペンダント基導入反応を行い得られることを特徴とする重合体。
- 一般式(1a)及び(1b)中のn1、一般式(2a)及び(2b)中のn2、一般式(3a)及び(3b)中のn3、一般式(4a)及び(4b)中のn4、並びに、一般式(5a)及び(5b)中のn5が、1である請求項1記載の重合体。
- 分子を構成する全ての繰り返し単位の総数に対して、一般式(1a),(1b)で表される繰り返し単位の数が5〜90%である請求項1又は2記載の重合体。
- 分子を構成する全ての繰り返し単位の総数に対して、一般式(2a),(2b)で表される繰り返し単位の数が5〜90%である請求項1又は2記載の重合体。
- 一般式(3a)で表される繰り返し単位及び/又は一般式(3b)で表される繰り返し単位と、一般式(4a)で表される繰り返し単位及び/又は一般式(4b)で表される繰り返し単位とを含む請求項1〜4の何れか一項記載の重合体。
- 一般式(3a)で表される繰り返し単位及び/又は一般式(3b)で表される繰り返し単位と、一般式(5a)で表される繰り返し単位及び/又は一般式(5b)で表される繰り返し単位とを含む請求項1〜4の何れか一項記載の重合体。
- 一般式(4a)で表される繰り返し単位及び/又は一般式(4b)で表される繰り返し単位と、一般式(5a)で表される繰り返し単位及び/又は一般式(5b)で表される繰り返し単位とを含む請求項1〜4の何れか一項記載の重合体。
- 一般式(3a)で表される繰り返し単位及び/又は一般式(3b)で表される繰り返し単位と、一般式(4a)で表される繰り返し単位及び/又は一般式(4b)で表される繰り返し単位と、一般式(5a)で表される繰り返し単位及び/又は一般式(5b)で表される繰り返し単位とを含む請求項1〜4の何れか一項記載の重合体。
- ポリグルタミン酸又はポリアスパラギン酸からなる繰り返し単位を基本骨格として主鎖を形成した酸性ポリアミノ酸系重合体である請求項1〜8の何れか一項記載の重合体。
- 25℃において、水100質量部に対し、0.1〜50質量部溶解する請求項1〜9の何れか一項記載の重合体。
- 請求項1記載の重合体を製造するための方法であって、少なくともペンダント基導入反応を行う工程を有し、
前記工程は一般式(1a)〜一般式(5b)で表される繰り返し単位を形成する為に、重量平均分子量1000以上100万以下のポリコハク酸イミドに対して、アミノ基を有する化合物を反応させてペンダント基を導入する工程であることを特徴とする重合体の製造方法。
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