ところが、従来技術に基づいて細径で四角形状などにおける隅角部など曲率半径の小さな湾曲部を有する蛍光ランプを製造すると、当該湾曲部において蛍光体層のひび割れや剥がれが生じやすく、したがって蛍光ランプの外観が悪くなるという問題があることが分かった。本発明者の調査によれば、ガラスバルブを加熱軟化させて成形する際に、当該湾曲部におけるガラスが伸縮しても保護膜がこれに応じて伸縮しないことが影響しているものと推測される。なお、特許文献3に示す保護膜についても湾曲部形成時に発生する蛍光体層のひび割れと保護膜の構成との関係については十分に検討されていなかった。
本発明は、蛍光体層を形成した後にガラスバルブを湾曲する構成において、曲率半径の小さな湾曲部においても蛍光体層にひび割れや剥がれが生じにくい、したがって外観の良好な蛍光ランプおよびこれを備えた照明装置を提供することを目的とする。
本発明の蛍光ランプは、湾曲部を有するガラスバルブと;平均粒径100nm以下の微粒子からなりガラスバルブの内面に付着して形成された微粒子層および平均粒径1μm以上で一部が微粒子層に埋没し、残部が微粒子層から突出した状態の径大粒子を有する保護膜と;ガラスバルブの保護膜の上に形成された蛍光体層と;ガラスバルブの内部に封入された放電媒体と;ガラスバルブの内部に放電を生起させる放電生起手段と;を具備していることを特徴としている。
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
<ガラスバルブについて> ガラスバルブは、ガラス管を主体として構成されていて、曲率半径の小さな湾曲部(以下、便宜上「屈曲部」という。)を有していることを許容する。このようなガラスバルブの一例として、いずれも一つまたは複数の屈曲部および直管部を含み、かつ、全体としてほぼ閉じた形状を備えている構成を採用することができる。このような形状は、具体的には例えば四角形、D字状部分がその直線部を平行に離間して向かい合っている変形環状など、またこれらの形状部分がさらに多重でありながら単一の放電路を形成するように連絡した形状など多様な形状であることを許容する。
ガラス管は、その管長が特段限定されないので、任意所望により適当な長さの管長に設定することができる。
ガラスバルブが屈曲部を有している場合、当該屈曲部は、以下の方法によりこれを形成することができる。すなわち、1本の直管状をなしたガラス素管の内面に後述する保護膜および蛍光体層を順次形成した後、ガラス素管の両端に一対の電極を封装してガラスバルブを形成してから、ガラスバルブの屈曲部の形成予定部のみを局部的に加熱して曲げ加工することにより形成することができる。屈曲部の長さは、ガラスバルブの中心軸長の15〜50%の範囲内にあるように構成することができる。また、屈曲部における内側の曲率半径は、ガラス管の外径の3倍以下、好ましくは2倍以下であることが許容される。さらに、屈曲部は、直管状のガラス管を単純に曲げ加工しただけのものだけでなく、要すれば、曲げ加工後に成形型を用いたモールド成形を行って整形することが許容される。なお、上記1本の直管状のガラス管は、素管状態のときに1本であってもよいし、複数の直管状のガラス素管を接合して1本のガラス管を得てもよい。後者の場合、複数のガラス素管を接合する前にガラス素管を曲げ加工してから、ガラス素管の端部同士を接合することができる。
また、ガラスバルブは、上述の屈曲部に加えて1つまたは複数の直管部を含んでいることが許容される。この場合の直管部は、その管内径が12〜20mmの範囲内にあるようにすることができるが、ランプ効率などのランプ特性や製造条件を考慮したときの最適範囲は14〜18mmである。なお、直管部であっても、屈曲部近傍の部分については、屈湾曲部の形成時に若干管外径が変化して部分的に上記範囲から外れることが許容される。なお、ガラスバルブの肉厚は、直管部ないし緩やかな、したがって曲率の大きな湾曲部において約0.8〜1.2mm程度とするのがよい。
蛍光ランプの管径を小さくすればランプ効率が向上すること既知であるが、好ましくは直管部ないし緩やかな湾曲部において管外径を20mm以下に設定することができる。上記の管外径が20mm以下であれば、従来技術の細径の環形蛍光ランプと同等またはそれ以上のランプ効率を達成することが可能となる。これに対して、管外径が12mm未満であると、屈湾曲部を有するガラスバルブとしての機械的強度を確保するのが困難となるとともに、同サイズの従来の環形蛍光ランプと同等の光出力が得られないので実用的ではない。
管外径が29mmである従来の環形蛍光ランプ(形名「FCL」)のランプ効率を10%以上向上させるためには、管外径を65%以下に小さくする必要がある。すなわち、ガラスバルブの管外径は18mm以下であればよい。この管外径であれば、蛍光ランプとしての薄形化も十分満足できる。また、光出力やランプ効率などの特性面を考慮すると、直管部の管外径は14mm以上とするのが好ましい。
本発明における好適な形状である多角形状をなすガラスバルブの場合、直管部は3つ以上有している。また、直管部間をつなぐ屈曲部は、ガラスバルブの両端部を向かい合わせて一つの隅角部とするような形状の場合には、直管部よりも1個少なくなるように形成されている。さらに、屈曲部は、直管部がほぼ同一平面状に位置するように屈曲形成されている。そして、ガラスバルブには、両側に位置する直管部の屈曲部がつながっていない自由端部がステムを封着したり、ピンチシール部を端部に形成したりするなどの構成により封止され、かつ、この両端部が近接するように配置されることにより、全体として多角形に構成されている。なお、蛍光ランプが有電極形の場合、上記ステムやピンチシール部に電極を支持した電極マウントを気密に支持させることができる。
また、多角形状をなすガラスバルブが多重でありながら単一の放電路を形成するように連絡する構成としては次の2つの態様が許容される。すなわち、第1の態様は、外側の環状部と内側の環状部とがほぼ同一平面内で同心状に配置される態様である。第2の態様は、ほぼ同一サイズの複数の環状部が上下に重なる態様である。上記いずれの態様であっても、直管上のガラス素管の状態で後述する保護膜および蛍光体層を形成し、次に一対の電極をガラス素管の両端に封装して直管状のガラスバルブを形成した後に、これを加熱軟化させた状態で環状に加工、成形される。そして、連結管を用いて複数の環状部を連絡して単一の放電路を形成する。
ガラスバルブは、ソーダライムガラス、バリウムシリケートガラスおよび鉛ガラスなどの軟質ガラスで形成されるが、要すればホウケイ酸ガラスや石英ガラスなどの硬質ガラス製であってもよい。ガラスバルブの直管部の肉厚は0.8〜1.2mm程度が望ましいがこれに限定されない。なお、ガラスバルブの内部を排気し、放電媒体を封入するために、一つまたは一対の細管を付設することができる。
<保護膜について> 保護膜は、微粒子層および径大粒子を有している。微粒子層は、平均粒径100nm以下、好ましくは加えて平均粒径10nm以上の微粒子からなり、ガラスバルブの内面に付着して形成されている。微粒子は、従来から一般的な保護膜構成材料として用いられている1次粒径の平均粒径が100nm以下、好適には平均粒径が約10〜50nm程度の金属酸化物、例えばシリカ、γアルミナなどである。微粒子の平均粒径が100nm以下であれば、ガラスバルブへの水銀の打ち込みを抑制させる保護膜としての作用を奏することができる。なお、微粒子の平均粒径が10nm未満になると、製造が困難であるため、入手が困難になるか、またはコストアップになるとともに、保護膜塗布用の懸濁液に分散させたときに凝集しやすくなって緻密な被膜にすることが難しくなる。
微粒子層を形成するのに用いる微粒子は、球状またはそれに近似している形状を備えているのが好ましい。特に、微粒子の正投影像の面積をS1とし、当該正投影像の外接円の面積をS2としたとき、式0.7≦S1/S2≦1.0を満足するものであるのがよい。
また、微粒子を形成するための手段は、特段限定されない。例えば、微粒子にシリカを用いる場合、PVS( Physical Vapor Synthesis )法などによって酸素を含む雰囲気中でガス状または液状化したケイ素またはケイ素化合物から形成した微粒子を用いるのが好ましい。このような方法で形成されたSiO2は、不純ガスの残留が少なく結着性が高いので、これを保護膜材料に用いることにより、保護膜の強度に優れ、光束維持率の高い蛍光ランプを提供することができる。
径大粒子は、その一部が微粒子層に埋没し、残部が微粒子層から放電空間側へ粒子間に適度の隙間を形成して突出した状態となって保護膜の構成要素として作用する。このように、放電空間側の径大粒子間には微粒子が多く存在することなく多孔質な被膜を形成しているので、この径大粒子間の隙間に蛍光体粒子が入り込むことで、蛍光体層の剥がれ防止となる。また、径大粒子の一部が単独で、または微粒子とともに上記微粒子層から遊離して蛍光体層の主として基底層内へ入り込むこともあり、径大粒子が蛍光体粒子との結合を強化するように作用する。径大粒子としては、1次粒径の平均粒径が1μm以上の粒子を用いる。好適には平均粒径が約1〜10μmであり、さらに好適には平均粒径が約2〜7μmである。したがって、径大粒子は、一般的な蛍光体粒子の粒径範囲であること、さらには蛍光体粒子を径大粒子として用いることを許容する。
また、径大の粒子は、アルカリ土類金属塩、αアルミナおよび蛍光体などから選択して単独または混合して用いることができる。アルカリ土類金属塩は、アルカリ土類金属リン酸塩およびアルカリ土類金属アルミン酸塩から選択して単独または混合して用いることができる。
径大粒子として蛍光体を用いる場合、後述する蛍光体層を形成する蛍光体と同種であってもよいし、異種であってもよい。しかし、保護膜として作用する径大粒子は、上述のように一部が微粒子層に埋没し、残部が微粒子層から放電空間側へ突出した状態となっている部分を備えているから、たとえ蛍光体層の蛍光体と同種であったとしても区別できる。
保護膜をガラスバルブの内面に形成する手段は、特段限定されない。例えば、微粒子および径大粒子を所定比率で含む懸濁液を調整してガラス素管内に流下させて、ガラス素管に付着した微粒子および径大粒子を乾燥させることで、ガラス素管の内面に微粒子層が形成されるとともに、径大粒子の一部が微粒子層に埋没し、残部が微粒子層から適度の隙間を形成して突出した状態の本発明の保護膜を得ることができる。なお、後述するように、保護膜をガラス素管の内面に形成した後に、蛍光体層を形成してから、電極付けを行ってガラスバルブを形成し、次にガラスバルブを曲成して屈曲部を形成することができる。
したがって、保護膜における好ましい微粒子および径大粒子の平均粒径の組み合わせは、微粒子の平均粒径が50nm以下で、かつ径大粒子の平均粒径が1〜10μmの範囲である。より好適には微粒子の平均粒径が10〜40nmで、かつ径大粒子の平均粒径が2〜7μmの範囲である。
次に、上記懸濁液を調整する際に、径大粒子および微粒子の質量の総量に対して、径大粒子を好ましくは50〜90%、より好ましくは85%以下または/および55%以上、したがって微粒子が上記と同様な比率で50〜10%、より好ましくは15%以上または/および45%以下にすることができる。微粒子の質量をWg、径大粒子の質量をWpとして上記の範囲を整理すれば、質量比がWg:Wp=15〜45:85〜55の範囲である。
径大粒子の含有比率が上記範囲より小さくなるにしたがって蛍光ランプの光束が低下する傾向がある。また、径大粒子の含有比率が上記範囲より大きくなっても塗布量にもよるが蛍光ランプの光束が低下しやすくなる。
また、保護膜の膜厚の好ましい範囲は、ガラスバルブの内面に位置する微粒子層部分の膜厚をt(μm)、径大粒子の平均粒径をp(μm)としたとき、数式0<t/p<1を満足する範囲である。この範囲であれば、径大粒子の一部が微粒子層に埋没し、残部が微粒子層から突出する構造を確実、かつ、容易に形成することができるので、好ましい態様となる。上記数式の範囲内において、比t/pが1に近づくにしたがって保護膜の表面が滑らかになる。また、比t/pが0に近づくにしたがって保護膜の表面に隙間が多く形成されて凹凸が顕著になる。比t/pが1になると、本発明の効果を得ることができなくなる。さらに、保護膜厚の絶対値が大きくなると、当該膜のひび割れ、剥がれおよび不純ガス放出が増大する傾向がある。
<蛍光体層について> 蛍光体層は、ガラスバルブの内面に形成された保護膜のさらに内面側すなわち放電空間側に形成されている。したがって、蛍光体層は、以上の説明から明らかなように屈曲部の形成前に直管状バルブ内面に塗布、形成される。また、蛍光体層は、蛍光体粒子間および保護膜への結着剤として約1〜3%程度の微粒子を含有していることが許容される。この場合の微粒子は、好適には金属酸化物からなる。金属酸化物としては、例えばγアルミナ、イットリア、シリカ、酸化亜鉛、チタニアおよびセリアからなるグループの中から一種または複数種を選択して用いることができる。ただし、保護膜の微粒子と蛍光体層中の微粒子とは、同一種であってもよいし、また異種であってもよい。
また、蛍光体層は、適当な膜厚に形成されるが、好適にはガラスバルブの内面の主要部において平均値で約3〜7mg/cm2程度の被着量である。また、屈曲部においては、好適には被着量の偏差が平均値に対して±15%になるように蛍光体層が形成される。さらに、蛍光体層は、その塗布液を内面に保護膜を形成したガラス素管の一端側から塗布液を流入して、保護膜の上に形成することができる。この場合、保護膜の塗布液を流入した素管の端部に対して反対側の端部から蛍光体塗布液を流入して蛍光体層を形成すれば、保護膜と蛍光体層との合計膜厚を素管の全長にわたり均一化しやすくなる。また、蛍光体層を2層などの多層に形成することも許容される。この場合には、塗布液の流入端を素管の両端とし、流入端を交互に切り換えることにより、蛍光体層の膜厚が素管の長手方向に均一化する。
なお、保護膜中における径大粒子の少なくとも一部として蛍光体が用いられている場合、本発明における保護膜と蛍光体層の間の境界が不鮮明になるが、前述のように保護膜は、その微粒子層がガラスバルブの内面に付着して形成され、径大粒子の一部が微粒子層内に埋設し、残部が微粒子層から突出した状態となっているので、これを識別することができる。
<放電生起手段について> 放電生起手段は、ガラスバルブの内部に放電すなわち放電媒体の放電を生起させる手段である。本発明においては、いずれも既知の有電極形および無電極形の各放電生起手段手段を適宜選択的に採用することができる。また、有電極形の場合、電極がガラスバルブの内部に配設される内部電極形および電極がガラスバルブの外面に配設される外部電極形のいずれであってもよい。さらに、外部電極形には、対をなす電極がともにガラスバルブの外面に対向して配設される態様と一方の電極が外部電極で、他方の電極が内部電極として配設される態様とがあるが、本発明はそのいずれであってもよい。しかし、有電極形の放電生起手段が一般照明用の蛍光ランプとしては好適である。
<放電媒体について> 放電媒体は、ガラスバルブの内部に封入されて放電生起手段の作用により放電し、放射を生じる。放電媒体の具体的な構成は、所望の放射を生じさせるために既知の各種放電媒体を適宜選択的に採用することができる。しかし、一般的には始動ガス、例えば希ガスおよび主として所望の放射を得るための発光媒体、例えば水銀などの組み合わせが用いられる。
<本発明の作用について> 例えば外径16mmのガラスバルブの場合、屈曲部の内側の曲率半径が30mmになると、屈曲部の外側の伸張率は1.6倍以上になるが、本発明においては、保護膜が上述のように形成されているので、保護膜中の径大粒子が蛍光体層の蛍光体粒子と連結しやすくなり、全体として曲率半径の小さな湾曲部において蛍光体層にひび割れや剥がれが生じにくくなる。その結果、曲率半径の小さな湾曲部におけるひび割れや剥がれが防止される。
なお、保護膜中の径大粒子に蛍光体粒子を用いた場合には、所望の発光効率を実現するために多くの蛍光体を塗布する必要がなくなるので、経済的である。
本発明によれば、平均粒径100nm以下の微粒子の微粒子層および平均粒径1μm以上で一部が微粒子層に埋没し、残部が微粒子層から突出した状態の径大粒子を有する保護膜を具備していることにより、曲率半径の小さな湾曲部においても蛍光体層にひび割れや剥がれが生じにくくなり、したがって外観の良好な蛍光ランプおよびこれを備えた照明装置を提供することができる。
また、保護膜中の微粒子層の厚さが径大粒子の平均粒径より小さいことにより、径大粒子の一部が微粒子層に埋没し、残部が微粒子層から突出した状態を形成しやすい蛍光ランプおよびこれを備えた照明装置を提供することができる。
以下、図面を参照して本発明の蛍光ランプおよび照明装置を実施するための形態を説明する。
図1ないし図3は、本発明の蛍光ランプを実施するための第1の形態を示し、図1はその一部の断面を拡大して示す正面図、図2は保護膜および蛍光体層を模式的に示す要部拡大断面図、図3は保護膜の製造工程を模式的に示す要部拡大分解断面図である。図において、蛍光ランプFLは、ガラスバルブ1、保護層2、蛍光体層3、放電生起手段4、4、放電媒体および口金Bを具備している。
ガラスバルブ1は、1本のガラス素管を局部的に加熱、軟化させることにより曲率の小さな湾曲部すなわち屈曲部が形成され、全体としてほぼ正方形をなしている。そして、正方形の3辺をなす3つの比較的長い直管部1aと、一対の比較的短い直管部1bと、それぞれ隅角部を形成する4つの屈曲部1cとで形成されている。また、上記一対の比較的短い直管部1bは、その端部1dが一直線状をなし、かつ、先端が接近して対向するとともに、図示を省略しているが細管が形成されている。
3つの直管部1aと一対の直管部1b、1bとは、正方形の隣接する4辺を構成し、一対の直管部1b、1bの先端部間を橋絡するように後述する口金Bが装着されることによって、閉鎖された正方形を構成している。屈曲部1cは、隣接する一対の直管部1a同志を直角につないでいる。一対の直管部1b、1bのそれぞれの端部1dは、ガラス素管を後述の屈曲加工をする前に、それぞれ図示しない電極マウントのフレアステムをガラス素管の端部に封着することにより、封止されている。
なお、電極マウントは、フレアステム、細管、放電生起手段4およびリードワイヤからなる組立体であり、予め一体に組み立てられていて、ガラス素管の端部にフレアステムのフレア部分がガラス溶着される態様によって、それら一対が封着されている。そうして、ガラスバルブ1の封止、後述する細管のガラスバルブ1への接続、後述する放電生起手段4の封装およびそこからのリードワイヤの導出が行われる。また、ガラスバルブ1の両方の端部1dには、フレアステムを封着した際のモールド成形により図示しない絞り部が形成されている。しかし、所望により既知の他の封着構造、例えばステムガラスを備えない電極マウントを直接封着するピンチシール構造、ボタンステムやビードステムを備えた電極マウントを、当該ステムガラスを介して封着する構造などを用いて封着することができる。
そうして、ガラスバルブ1は、直管状のガラス素管のときにその内面に後述する保護膜2および蛍光体層3が重ねて形成され、一対の電極4、4が封装されてから、局部的に加熱軟化されることによって4つの屈曲部1cと3つの直管部1aと一対の直管部1bとが略正方形を形成するように成形される。そして、同一平面状に連接配置されている。このときのガラスバルブ2の1辺の長さLは200mm以上とするのが好ましく、本形態の場合、Lは約300mmである。また、直管部1bの管外径は12〜20mm、肉厚は0.8〜1.5mmであり、本実施の形態の場合は管内径が約16mm、肉厚が約1.2mmである。
保護膜2は、図2に示すように、微粒子層2aおよび径大粒子2bにより構成されている。微粒子層2aは、平均粒径数十nmのシリカからなり、ガラスバルブ1の内面に緻密な被膜として付着して形成されていて、例えば膜厚が2〜3μmである。径大粒子2bは、平均粒径5μmの蛍光体粒子からなり、その一部が微粒子層2aの内部に埋没し、残部が微粒子層2aから突出している。放電空間側(蛍光体層3側)の径大粒子2b間には、シリカ微粒子が殆ど存在していないので、径大粒子2b間にはその平均粒径と同寸法程度の間隙が形成されている。この間隙に蛍光体粒子が入り込むようにして蛍光体層3が形成されている。
また、保護膜2は、図3に示すように、蛍光体層3を形成する前工程において、予め調整された懸濁液をガラス管内に流下、乾燥させて形成される。なお、上記懸濁液は、後述する蛍光体層3と同種の蛍光体とその重量の10〜60%の割合で微粒子とが混合して水などの溶媒中に懸濁している構成とすることができる。なお、実施例としてシリカ微粒子を蛍光体粒子に対して質量比で30%混合した懸濁液を用いて良好な保護膜2を得ることができた。微粒子層2aは、上記懸濁液をガラス管内面に塗布したときに表面張力によりガラス管内に被着することによって形成される。また、保護膜2上に蛍光体層3を塗布形成する際に、径大粒子2b間のシリカ微粒子がガラス管内面側に流出されることで径大粒子2b間に上記隙間が形成されることになる。
蛍光体層3は、保護膜3の上すなわち放電空間側に配設され、三波長発光形の蛍光体粒子に2質量%の保護膜と同様の微粒子を添加した懸濁液を調整し、これを塗布、乾燥してから、保護膜2と一緒に焼成して形成されていて、約10〜30μmの膜厚を有している。三波長発光形の蛍光体としては、450nm付近に発光ピーク波長を有する青系蛍光体としてBaMg2Al16O27:Eu2+、540nm付近に発光ピーク波長を有する緑系蛍光体として(La,Ce,Tb)PO4、610nm付近に発光ピーク波長を有する赤系蛍光体としてY2O3:Eu3+などが適用可能であるが、本発明はこれらに限定されない。
そうして、後述する放電媒体の水銀蒸気放電によって放射される主として波長254nmの紫外光によって励起されたときに、蛍光体層3は、例えば相関色温度5000Kの白色光を発生する。しかし、蛍光ランプ3は、所望によりハロ燐酸塩蛍光体など周知の他の蛍光体を用いて構成することもできる。
放電生起手段4、4は、本形態において内部電極形の一対の電極からなる。放電生起手段4を構成する電極は、電子放射性物質が塗布されたタングステンのトリプルコイルからなるフィラメント形であり、それぞれガラスバルブ1の両端部1d、1dに封装されている。また、放電生起手段4、4は、フレアステムに封着された一対のリードワイヤの内端間に継線されることによって支持されている。
放電媒体は、希ガスおよび水銀蒸気からなり、希ガスとしてアルゴン(Ar)が低圧、例えば約320Paの圧力で封入されている。希ガスは、アルゴン(Ar)に代えるか付加してネオン(Ne)およびクリプトン(Kr)などの一種または複数種を選択して封入することができる。水銀蒸気は、主アマルガム6から供給されるように構成されている。主アマルガム6は、ビスマス(Bi)−錫(Sn)−鉛(Pb)系からなる水銀蒸気圧制御用のアマルガムであり、細管1e内に留置される。なお、所望により主アマルガムに加えて補助アマルガムを用いることができる。なお、補助アマルガムは、ステンレス鋼の基板にめっきされたインジウム(In)膜からなり、ガラスバルブ1内の水銀蒸気と反応してアマルガムを形成し、主として始動時に水銀蒸気を供給して光束立ち上がりを早めるように作用する。なお、本形態においては、放電媒体としての水銀蒸気を所定圧力に維持するために、水銀蒸気圧制御用の主アマルガム6を用いているが、ガラスバルブ1の屈曲部2cの断面形状を、略三角形状や略四角形形状に成形することによって、当該部分に最冷部が形成されるようにすれば、液体水銀を用いることもできる。すなわち、屈曲部2cが外側方向に突出する形状であると、放電路が内側に形成されるため非放電領域を大きくなって冷却効果の高い最適な最冷部を得ることが可能となり、水銀蒸気圧制御用のアマルガムを使用しなくても温度特性を向上させることができる。
口金Bは、4つの口金ピン7を備えていて、ガラスバルブ1の一対の直管部1b、1bの両端部1d間を橋絡して、四角形の一辺を形成している。口金ピン7は、電極4から外部へ導出された図示していないリードワイヤに接続している。
本形態において、蛍光ランプFLを以下の寸法とすることができる。すなわち、従来の30W形の環形蛍光ランプに相当するものは、ガラスバルブ2の全長Lが225mm、内側最大幅が192mm、管外径が16mm、ガラスバルブ2の肉厚が1.0mmに形成される。この蛍光ランプは、定格ランプ電力が20W、高出力特性時のランプ電力が27Wである。また、従来の32W形の環形蛍光ランプに相当するものは、ガラスバルブ2の全長Lが299mm、内側最大幅が267mm、管外径が16mm、ガラスバルブ2の肉厚が1.0mmに形成される。この蛍光ランプの定格ランプ電力は27W、高出力特性のランプ電力38Wで点灯される。従来の40W形の環形蛍光ランプに相当するものは、ガラスバルブ2の全長Lが373mm、内側最大幅が341mm、管外径が16mm、ガラスバルブ2の肉厚が1.0mmに形成される。この蛍光ランプは、定格ランプ電力が34W、高出力特性時のランプ電力が48Wである。
次に、本形態における動作について説明する。蛍光ランプFLは、口金Bを経由して放電生起手段4、4間に高周波電圧が印加されると、放電容器DV内に発生する低圧水銀蒸気放電により点灯する。そして、蛍光ランプFLは、ランプ電力が20W以上、ランプ電流が200mA以上、管壁負荷が0.05W/cm2以上、ランプ効率が50lm/W以上となるように点灯される。また、直管部1bの断面積あたりのランプ電流であるランプ電流密度は、75mA/cm2以上である。本形態の場合には、ランプ電力は50W、ランプ電流は380mA、ランプ効率は90lm/Wである。
図4および図5は、本発明の実施例各部における保護膜および蛍光体層の断面を示す電子顕微鏡写真で、図4は直管部、図5は屈曲部である。これらの写真は、いずれも倍率が2000倍で、下部の直線の長さが10μm、写真下部から上へガラスバルブ、保護膜および蛍光体層の順に重なっている。本実施例において、保護膜は、微粒子がγ−アルミナ(γ-Al2O3)、径大粒子がリン酸ストロンチウム(Sr2P2O7)である。また、保護膜は、ガラスバルブに接する部位が微粒子層を形成し、この微粒子層の中に径大粒子が分散し、径大粒子の上部が微粒子層から上方へ突出している。さらに、保護膜中の径大粒子および微粒子の一部が上記微粒子層に連続しながら蛍光体層中に埋設されていたり、上記微粒子層から遊離して蛍光体層中に埋設されていたりしている。
次に、表1を参照して、上記実施例において保護膜を構成する微粒子と径大粒子のサイズを変えたときの、それらの組み合わせと剥がれおよび光束維持率との関係について説明する。表1は、微粒子と径大粒子のサイズの異なった組み合わせを有する蛍光ランプ20本について点灯試験を行った結果をまとめたものである。なお、蛍光体粒子は平均粒径3μm、微粒子および径大粒子の混合質量比は1:4である。また、表中、「微粒子」および「径大粒子」の数値は平均粒径を、「剥がれ」は主にガラスバルブ1の屈曲部1cにおいて保護膜と蛍光体層との界面に生じる剥がれの有無を、「光束維持率」は点灯12000時間における値(%)を、それぞれ示している。また、表中の記号は、○が剥がれなし、△が微小な剥がれあり、×が剥がれが顕著なため点灯試験不実施、を示す。
表1から理解できるように、保護膜は、微粒子が本発明の範囲であればよいことが分かる。なお、微粒子が500nmおよび1000nmの場合には、分子間力による結着力が低下して主に屈曲部1cにおいて剥がれが生じるものと考えられる。また、表1に示す保護膜の構成の場合、径大粒子が0.5μmでは剥がれが顕著になり、10μmでは径大粒子が脱落しやすくなった。
さらに、表2を参照して、前記実施例において保護膜中の微粒子と径大粒子の混合比および蛍光体付着量を変化させたときの、それらの組み合わせと剥がれとの関係について説明する。表2において、γ−アルミナおよびリン酸ストロンチウムの欄の数値は、混合割合を示し、剥がれの欄の記号は表1におけるのと同じ評価である。また、表中の空欄部分は、当該空欄の上の欄に記入されている数値と同じ数値であるが、その記入が省略されている。なお、γ−アルミナは水溶性スラリーを用いて形成した。
図6は、本発明の実施例において保護膜の径大粒子/微粒子の配合比と全光束の関係について蛍光体付着量をパラメータとして示すグラフである。図において、横軸は径大粒子/微粒子の配合比(質量%)を、縦軸は相対光束を、それぞれ示す。なお、このときの保護膜2の付着量は0.46mg/cm
2である。
図から理解できるように、径大粒子/微粒子の配合比が67〜88質量%の範囲が特に好適であった。
図7は、本発明の蛍光ランプを実施するための第2の形態を示す正面図である。本形態は、ガラスバルブ1が同心2重環構造を備えている。
すなわち、ガラスバルブ1は、同一平面内に配置された外側環状部1A、内側環状部1Bおよび連通部1Cを備えて1本の屈曲した放電路を形成して構成されている。外側環状部1Aおよび内側環状部1Bは、それぞれの管外径が同じであることを除けば相似のほぼ正方形状をなしている。連通部1Cは、外側環状部1Aおよび内側環状部1Bを連通していて、ガラスバルブ1の内部に1本の放電路を形成している。放電路は、一端が外側環状部1Aにおける直管部1a1の一方の端部1dで口金B内に挿入されている部分から反時計回りに直管部1a2、1a3を通過して直管部1a4の他方の端部1dへ通じ、さらに連通部1Cを経由して内側環状部1Bの他方の端部1d´に入り、時計回りに直管部1a4´、1a3´、1a2´を通過して直管部1a1´の一方の端部1d´で口金B内に挿入されている部分に至る。
連通部1Cは、外側環状部1Aおよび内側環状部1Bの図において左側の端部1d側から吹き破りによってそれぞれの環状部1A、1Bから突出して形成された管体を互いに溶着して接続することによって形成されている。連通部1Cが配設される位置は、外側環状部1Aおよび内側環状部1Bの端部1dの内部に放電アークが進入しない空間が形成されるように先端から10〜40mmの距離を残すように設定されている。なお、連通部1Cを上記の方法によって製造しやすくするために、外側環状部1Aおよび内側環状部1Bの間に形成される隙間gを5.0〜10.0mmに設定するのが好ましい。また、連通部1Cは、図において口金Bから少し離間した位置に配置されているが、要すれば口金Bの内部に配設されて外部から見えないように構成することができる。また、連通部1Cが口金Bに隣接する位置または一部が口金B内に位置するように構成することもできる。
ガラスバルブ1における外側環状部1Aの正方形の1辺の大きさは250mm以上、内側環状部1Bの正方形の1辺の大きさは200mm以上にするのがよい。また、両環状部1A、1Bの管外径が12〜20mm、肉厚が0.8〜1.5mmである。実施例としては、外側環状部1Aの正方形の1辺の大きさが300mm、内側環状部1B同様の大きさが250mm、管外径が14mm、肉厚が1.2mmである。さらに、外側環状部1Aおよび内側環状部1Bの屈曲部1c、1c´は、次の範囲であるのがよい。すなわち、外側環状部1Aの外側曲率半径が45〜70mm(実施例56.5mm)、同内側曲率半径が30〜55mm(実施例40mm)、内側環状部1Bの外側曲率半径が25〜45mm(実施例31.5mm)、同内側曲率半径が13〜20mm(実施例15mm)に設定するのがよい。なお、屈曲部1c、1c´における管外径は、直管部1a1〜1a4、1a1´〜1a4´における管外径にほぼ等しくなるように成型するのが望ましい。
口金B内においては、上記放電路の両端になる外側環状部1Aの図において上側から口金B内に挿入されている一方の端部1dと内側環状部1Bの一方の端部1d´に封着された一対の電極(図示しない。)から導出されたリードワイヤを口金ピンに接続している。
なお、所望により外側環状部1Aおよび内側環状部1Bの間の隙間gにシリコーン樹脂などの緩衝性物質を充填して両環状部1A、1B間を固定することにより、ガラスバルブ1の耐振強度を高めることができる。
次に、本形態における蛍光ランプの点灯動作について説明する。ランプ入力電力40W以上(実施例60W)、ランプ電流200mA以上(実施例380mA)、管壁負荷0.05W/cm2以上、ランプ効率50lm/W以上(実施例90lm/W)になるように点灯される。また、直管部1a1〜1a4、1a1´〜1a4´における断面積当たりのランプ電流密度75mA/cm2以上である。また、点灯中のガラスバルブ1の温度は、80℃まで上昇するが、最適温度の最冷部が形成されるので、ガラスバルブ1内の水銀蒸気圧が適正となり、高いランプ効率を得ることができる。
図8は、本発明の照明装置を実施するための一形態としての天井取付形照明器具を示す側面図である。なお、図において、図1と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。天井取付形照明器具は、照明器具本体11、蛍光ランプFLおよび高周波点灯回路からなる。
照明器具本体11は、天井に取り付けられて使用され、白色反射体11a、ランプソケット(図示を省略している。)およびランプホルダ11bなどを備えている。白色反射体11aは、照明器具本体11の下面中央部に配置され、四角錐形状すなわちピラミッド形をなしている。ランプソケットは、蛍光ランプFLに給電するための接続手段であり、蛍光ランプFLの口金Bに対向する位置に配設されていて、口金ピンpに装着される。ランプホルダ11bは、蛍光ランプのガラスバルブ1を横断的に包持して蛍光ランプFLを保持する。
蛍光ランプFLは、図7に示す蛍光ランプであり、口金Bがランプソケットに接続され、ガラスバルブ1がランプホルダ11bに保持されることにより、照明器具本体11の所定の位置に装着されている。
高周波点灯回路(図示を省略している。)は、低周波交流電源から入力を得てこれを高周波電力に変換し、ランプソケット11bを経由して高周波出力を蛍光ランプFLに供給する手段であるが、照明器具本体11内の白色反射体11aの背方に形成された空間に配設されている。
そうして、照明器具本体11の四角錐形状の白色反射体11aが四角形をなす蛍光ランプFLの中心に配設されているので、器具下側方向への配光特性が四角形になり、四角い部屋内の均一な照明に好適である。