以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係わるトルク制御装置を備えた建設機械用3ポンプシステムの全体を示す構成図である。本実施の形態は建設機械として油圧ショベルを対象としたものである。
図1において、本実施の形態に係わる建設機械用3ポンプシステムは、原動機1と、この原動機1によって駆動される可変容量型の第1油圧ポンプ2、第2油圧ポンプ3、第3油圧ポンプ4の3つの主ポンプと、原動機1によって駆動される固定容量型のパイロットポンプ5と、第1、第2及び第3油圧ポンプ2,3,4に接続されたコントロールバルブユニット6と、コントロールバルブユニット6に接続された複数の油圧アクチュエータ7,8,9,10,11,12,…とを備えている。
コントロールバルブユニット6は第1、第2及び第3油圧ポンプ2,3,4に対応した3つの弁グループ6a,6b,6cを有しており、3つの弁グループ6a,6b,6cはそれぞれ複数の流量制御弁からなり、これら流量制御弁により第1、第2及び第3油圧ポンプ2,3,4から複数の油圧アクチュエータ7,8,9,10,11,12,…に供給される圧油の流れ(方向及び流量)が制御される。また、3つの弁グループ6a,6b,6cの流量制御弁は公知のセンタバイパスタイプであり、対応する油圧アクチュエータの操作手段(操作レバー装置)が操作されておらず、流量制御弁が中立位置にあるときは第1、第2及び第3油圧ポンプ2,3,4の吐出ライン2a,3a,4aをタンクに連通させている。このとき、第1、第2及び第3油圧ポンプ2,3,4の吐出圧力はタンク圧に低下する。
複数の油圧アクチュエータ7,8,9,10,11,12,…は例えば油圧ショベルの旋回モータ、アームシリンダ、左右走行モータ、バケットシリンダ、ブームシリンダを含み、例えば油圧アクチュエータ7が旋回モータであり、油圧アクチュエータ8がアームシリンダであり、油圧アクチュエータ9が左走行モータであり、油圧アクチュエータ10が右走行モータであり、油圧アクチュエータ11がバケットシリンダであり、油圧アクチュエータ12がブームシリンダである。
第1、第2及び第3油圧ポンプ2,3,4の吐出ライン2a,3a,4aにはメインリリーフ弁15,16,17が設けられ、パイロットポンプ5の吐出ライン5aにはパイロットリリーフ弁18が設けられている。メインリリーフ弁15,16,17は第1、第2及び第3油圧ポンプ2,3,4の吐出圧力を規制し、主回路の最大圧力を設定するものである。パイロットリリーフ弁18はパイロットポンプ5の最大吐出圧力を規制し、パイロット油圧源の圧力を設定するものである。
原動機1はディーゼルエンジンであり、このディーゼルエンジン(以下単にエンジンという)1に、ダイヤル式の回転数指令操作装置21とエンジン制御装置22とが設けられている。回転数指令操作装置21はエンジン1の目標回転数を指令する指令手段であり、エンジン制御装置22はコントローラ23と、ガバナモータ24と、燃料噴射装置(ガバナ)25とを有している。コントローラ23は回転数指令操作装置21からの指令信号を入力し、所定の演算処理を行い、ガバナ制御モータ24に駆動信号を出力する。ガバナ制御モータ24は、その駆動信号に応じて回動し、回転数指令操作装置21が指令する目標回転数が得られるように燃料噴射装置25の燃料噴射量を制御する。
本実施の形態に係わるトルク制御装置はこのような3ポンプシステムに設けられるものであり、第1及び第2油圧ポンプ2,3の容量(押しのけ容積或いは斜板の傾転)を制御することで第1及び第2油圧ポンプ2,3の吸収トルク(消費トルク)を制御する第1レギュレータ31と、第3の油圧ポンプ4の容量(押しのけ容積或いは斜板の傾転)を制御することで第3油圧ポンプ4の吸収トルク(消費トルク)を制御する第2レギュレータ32と、第3油圧ポンプ4の吐出圧力がバネ33aにより設定される所定圧力(図3のP2)以下にあるときは、第3油圧ポンプ4の吐出圧力をそのまま出力し、第3油圧ポンプ4の吐出圧力がバネ33aにより設定される所定圧力(図3のP2)を超えると、第3油圧ポンプ4の吐出圧力をその所定圧力に減圧して出力する減圧弁33と、第1〜第3油圧ポンプ2,3,4の吐出圧力をそれぞれ検出する圧力センサ34a,34b,34cと、電磁比例弁35と、上記のコントローラ23とを備えている。
第1レギュレータ31は、第1及び第2油圧ポンプ2,3の容量増加方向に作用するバネ31a,31bと、第1及び第2油圧ポンプ2,3の容量減少方向に作用する4つの受圧部31c,31d,31e,31fとを有している。受圧部31c,31dには第1及び第2油圧ポンプ2,3の吐出圧力がパイロットライン37,38を介して導入され、受圧部31eには電磁比例弁35の出力圧力(制御圧力)が油路39aを介して導入され、受圧部31fには減圧弁33の出力圧力が油路39bを介して導入される。バネ31a,31bと受圧部31e,31fは、第1及び第2油圧ポンプ2,3の最大吸収トルクを設定する機能を有している。このような構成により第1レギュレータ31は、第1及び第2油圧ポンプ2,3の吸収トルクがバネ31a,31bと受圧部31e,31fに導かれる制御圧力とにより設定される最大吸収トルク(割り当て最大吸収トルク)を超えないよう第1及び第2油圧ポンプ2,3の容量を制御する。
また、バネ31a,31bは第1及び第2油圧ポンプ2,3のトルク制御特性を設定する機能を有し、減圧弁33及び受圧部31fは、第3油圧ポンプ4の吐出圧力が減圧弁33に設定される所定圧力(図3のP2)以下にあるとき、第3油圧ポンプ4の吐出圧力が上昇するにしたがって第1及び第2油圧ポンプ2,3の最大吸収トルク(割り当て最大吸収トルク)を減らすよう第1レギュレータ31を制御する機能を有し、受圧部31eは、バネ31a,31bにより設定されるトルク制御特性とトルク一定曲線との差を補正する機能(トルク補正制御)を有している。
第2レギュレータ32は、第3油圧ポンプ4の容量増加方向に作用するバネ32aと、第3油圧ポンプ4の容量減少方向に作用する受圧部32bとを有し、受圧部31bには第3油圧ポンプ4の吐出圧力がパイロットライン40を介して導入される。バネ32aは、第3油圧ポンプ4の最大吸収トルク(割り当て最大吸収トルク)を設定する機能を有している。このような構成により第2レギュレータ32は、第3油圧ポンプ4の吸収トルクがバネ32aにより設定される最大吸収トルクを超えないよう第3油圧ポンプ4の容量を制御する。
圧力センサ34a,34b,34cはそれぞれ第1〜第3油圧ポンプ2,3,4の吐出圧力に応じた検出信号を出力し、これらの検出信号はコントローラ23に入力される。コントローラ23は所定の演算処理を行い、電磁比例弁35に駆動信号を出力する。電磁比例弁35はパイロットポンプ5の吐出圧力を元圧としてコントローラ23からの駆動信号に応じた制御圧力を生成し、この制御圧力は信号ライン39を介して第1レギュレータ31の受圧部31eへと導かれる。これにより第1レギュレータ31は、受圧部31eに導かれる制御圧力に応じて第1及び第2油圧ポンプの最大吸収トルクを調整する。
図2は、本発明のトルク補正制御を行わない場合の第1レギュレータ31による第1及び第2油圧ポンプ2,3の吐出圧力(平均値)と第1及び第2油圧ポンプ2,3の容量(押しのけ容積或いは斜板の傾転)との関係を示す図である。
図2において、折れ線A,B,Cは、バネ31a,31bにより設定されたトルク制御特性であり、折れ線Aは、第3油圧ポンプ4に係わる油圧アクチュエータ、例えば油圧アクチュエータ12が作動しておらず、第3油圧ポンプ4の吐出圧力が最小圧力P0(図3参照)に低下しているときのもの、折れ線Bは、第3油圧ポンプ4の吐出圧力が最小圧力P0(図3参照)と、第2レギュレータ32による吸収トルク制御の開始圧力(第2レギュレータ32による吸収トルク制御が実施される第3油圧ポンプ4の最小吐出圧力)P2(図3参照)との中間の圧力P1(図3参照)にあるときのもの、折れ線Cは、第3油圧ポンプ4の吐出圧力が前記P2にあるときのものである。
第3油圧ポンプ4の吐出圧力が最小圧力P0にあるとき、折れ線Aのトルク制御特性(以下、適宜、特性線Aという)に基づいて第1及び第2油圧ポンプの容量は次のように変化する。
第1及び第2油圧ポンプ2,3の吐出圧力の平均値がP0〜P1Aの範囲内にあるときは吸収トルク制御は実施されず、第1及び第2油圧ポンプ2,3の容量は最大容量特性線L1上にあり、最大(一定)である。このとき、第1及び第2油圧ポンプ2,3の吸収トルクはそれらの吐出圧力の上昇に応じて増大する。第1及び第2油圧ポンプ2,3の吐出圧力の平均値がP1Aを超えると吸収トルク制御が実施され、第1及び第2油圧ポンプ2,3の容量は特性線Aに沿って減少する。これにより第1及び第2油圧ポンプ2,3の吸収トルクはトルク一定曲線TAで表される規定トルクTa(第1及び第2油圧ポンプ2,3の割り当て最大吸収トルク)を超えないよう制御される。この場合、圧力P1Aが第1レギュレータ31による吸収トルク制御の開始圧力であり、P1A〜Pmaxは第1レギュレータ31による吸収トルク制御が実施される第1及び第2油圧ポンプ2,3の吐出圧力範囲である。また、Pmaxは第1及び第2油圧ポンプ2,3の吐出圧力の平均値の最大値であり、メインリリーフ弁15,16のリリーフ設定圧力に相当する値である。第1及び第2油圧ポンプ2,3の吐出圧力がPmaxまで上昇すると、メインリリーフ弁15,16が作動し、それ以上のポンプ吐出圧力の上昇は制限される。
ここで、第1レギュレータ31の受圧部31fに減圧弁33の出力圧力が油路39bを介して導入される。減圧弁33は、第3油圧ポンプ4の吐出圧力がバネ33aにより設定される所定圧力に達するまでは、第3油圧ポンプ4の吐出圧力をそのまま出力し、第3油圧ポンプ4の吐出圧力が当該所定圧力を超えると、第3油圧ポンプ4の吐出圧力をその所定圧力に減圧して出力する。この減圧弁33の出力圧力は、受圧部31fにおいて、第1及び第2油圧ポンプ2,3の最大吸収トルクの設定値を減らす方向に導入される。これにより第3油圧ポンプ4の吐出圧力が上昇すると、吸収トルク制御の特性線は折れ線A,B,Cのように横軸方向にシフトし、それに応じて第1レギュレータ31による吸収トルク制御の開始圧力はP1AからP1B,P1Cへと変化(低下)し、第1レギュレータ31による吸収トルク制御が実施される吐出圧力範囲はP1A〜PmaxからP1A〜Pmax,P1A〜Pmaxへと変化する。また、それに応じて、第1及び第2油圧ポンプ2,3の割り当て最大吸収トルクはTaからTb,Tcへと減少する。
また、減圧弁33において、バネ33aにより設定される所定圧力は、第2レギュレータ32による吸収トルク制御が実施される第3油圧ポンプ4の最小吐出圧力であるP2に一致するよう設定されている。
図3は第2レギュレータ32による第3油圧ポンプ4の吐出圧力と第3油圧ポンプ4の容量(押しのけ容積或いは斜板の傾転)との関係を示す図である。図3において、実線Dは、バネ32aにより設定されるトルク制御特性である。
第3油圧ポンプ4の吐出圧力がP0〜P2の範囲内にあるときは吸収トルク制御は実施されず、第3油圧ポンプ4の容量は最大容量特性線L2上にあり、最大(一定)である。このとき、第3油圧ポンプ4の吸収トルクはその吐出圧力の上昇に応じて増大する。第3油圧ポンプ4の吐出圧力がP2を超えると吸収トルク制御が実施され、第3油圧ポンプ4の容量は実線Dの特性線に沿って減少する。これにより第3油圧ポンプ4の吸収トルクはトルク一定曲線TDで表される規定トルクTd(第3油圧ポンプの割り当て最大吸収トルク)を超えないよう制御される。この場合、圧力P2が第2レギュレータ32による吸収トルク制御の開始圧力であり、P2〜Pmaxは第2レギュレータ32による吸収トルク制御が実施される第3油圧ポンプ4の吐出圧力範囲である。Pmaxは第3油圧ポンプ4の吐出圧力の最大値であり、メインリリーフ弁17のリリーフ設定圧力に相当する値である。第3油圧ポンプ4の吐出圧力がPmaxまで上昇すると、メインリリーフ弁17が作動し、それ以上のポンプ吐出圧力の上昇は制限される。
図4は、コントローラ23のトルク制御装置に係わる処理機能を示す機能ブロック図である。コントローラ23は、ポンプベーストルク演算部42と、平均ポンプ吐出圧力演算部43aと、補正トルク選択部43bと、第1補正トルク演算部44a、第2補正トルク演算部44b、第3補正トルク演算部44cと、第1加算部45及び第2加算部46と、電磁弁出力圧力演算部47と、電磁弁駆動電流演算部48とを備えている。
ポンプベーストルク演算部42は、上述した第1、第2及び第3油圧ポンプ2,3,4の3つのポンプで使用可能な合計の最大吸収トルクをポンプベーストルク(基準トルク)Trとして算出するものであり、回転数指令操作装置21から目標回転数の指令信号を入力し、これをメモリに記憶してあるテーブルに参照させ、その目標回転数に対応するポンプベーストルクTrを演算する。メモリのテーブルには、目標回転数が低くなるにしたがってポンプベーストルクTrが減少するよう、目標回転数とポンプベーストルクTrの関係が設定されている。
ここで、第3油圧ポンプ4の吐出圧力がP1にあるときの第3油圧ポンプ4の吸収トルクをTb2、第3油圧ポンプ4の吐出圧力がP2にあるときの第3油圧ポンプ4の吸収トルクをTc2とすると、ポンプベーストルク(基準トルク)Trは、上記規定トルクTa,Tb,Tcとその吸収トルクTb2,Tc2に対して次のような関係にある。
Tr=Ta
=Tb+Tb2
=Tc+Tc2
図5は、エンジン出力トルクTeとポンプベーストルク(ポンプ最大吸収トルク)Trの関係を示す図である。エンジン1の出力トルクTeはエンジン回転数が低くなるにしたがって低くなる。ポンプ最大吸収トルクTrはエンジン1の出力トルクTeの範囲内である必要がある。したがって、ポンプ最大吸収トルクTrも目標回転数が低くなるにしたがって減少する。
平均ポンプ吐出圧力演算部43aは、圧力センサ34a,34bから第1及び第2油圧ポンプ2,3の吐出圧力の検出信号を入力し、第1及び第2油圧ポンプ2,3の吐出圧力の平均値を演算する。
補正トルク選択部43bは、第3油圧ポンプの吐出圧力(以下符号Pp3を付す)に応じて第1〜第3補正トルク演算部44a,44b,44cの1つを選択し、その選択した補正トルク演算部に平均ポンプ吐出圧力演算部43aで演算した第1及び第2油圧ポンプ2,3の吐出圧力の平均値(以下、適宜、平均吐出圧力といい、符号Pp12を付す)を出力する。補正トルク選択部43bは、第3油圧ポンプの吐出圧力Pp3に応じて第1〜第3補正トルク演算部44a,44b,44cの1つを次のように選択する。
(1)P0≦Pp3≦P01 → 第1補正トルク演算部44aを選択
(2)P01<Pp3≦P12 → 第2補正トルク演算部44bを選択
(3)P12<Pp3 → 第3補正トルク演算部44cを選択
ここで、P01はP0<P01<P1の範囲にある任意の圧力であり、P12はP1<P12<P2の範囲にある任意の圧力である。
第1補正トルク演算部44aは、第3油圧ポンプ4の吐出圧力Pp3がP0≦Pp3≦P01の範囲にあるときに、図2に示したトルク一定曲線TAで表される規定トルクTaに対する折れ線Aのトルク制御特性に基づく吸収トルクの差の値をトルク補正値として算出するものである。
すなわち、第1補正トルク演算部44aは、第1及び第2油圧ポンプ2,3の平均吐出圧力Pp12を入力し、これをメモリに記憶してある第1トルク補正テーブルT1に参照させ、その平均吐出圧力Pp12に対応する第1トルク補正値Tm1を演算する。第1トルク補正テーブルT1には、下記のような平均吐出圧力Pp12と第1トルク補正値Tm1との関係が設定されている。
図6(a)は、図2に示したトルク一定曲線TAで表される規定トルクTaと折れ線Aのトルク制御特性に基づく吸収トルクとの関係を示す図である。
図6(a)に示すように、第1及び第2油圧ポンプ2,3の平均吐出圧力Pp12がP0〜P1Aの範囲にあるとき、第1及び第2油圧ポンプ2,3の最大吸収トルクは平均吐出圧力Pp12の増加に応じて比例的に増加する(直線E1)。第1及び第2油圧ポンプ2,3の平均吐出圧力Pp12がP1Aを超えると図2の折れ線Aに基づく吸収トルク制御が実施され、第1及び第2油圧ポンプ2,3の最大吸収トルクは図2の折れ線Aで表されるトルク制御特性に基づいて制御される(曲線E2)。
第1レギュレータ31において、図2の折れ線Aで表されるトルク制御特性はバネ31a,31bにより設定されており、このトルク制御特性の折れ線Aは双曲線で表されるトルク一定曲線TAとは一致しない。このため折れ線Aに対応する曲線E2の吸収トルクとトルク一定曲線TAの吸収トルクTaとの間には斜線部E3で示される領域があり、この斜線部E3の領域は第1及び第2油圧ポンプ2,3が使い切っていないトルク部分であって、補正可能な領域である。
図6(b)は、図6(a)の斜線部E3の平均吐出圧力Pp12と吸収トルクの関係を示す図であり、曲線M1は図6(a)の曲線E2に対応している。第1トルク補正テーブルT1には、図6(b)に示される曲線M1が平均吐出圧力Pp12と第1トルク補正値Tm1との関係として設定されている。
第2補正トルク演算部44bは、第3油圧ポンプ4の吐出圧力Pp3がP01<Pp3≦P12の範囲にあるときに、図2に示したトルク一定曲線TBで表される規定トルクTbに対する折れ線Bのトルク制御特性に基づく吸収トルクの差の値をトルク補正値として算出するものである。
すなわち、第2補正トルク演算部44bは、第1及び第2油圧ポンプ2,3の平均吐出圧力Pp12を入力し、これをメモリに記憶してある第2トルク補正テーブルT2に参照させ、その平均吐出圧力Pp12に対応する第2トルク補正値Tm2を演算する。第2トルク補正テーブルT2には、下記のような平均吐出圧力Pp12と第2トルク補正値Tm2との関係が設定されている。
図7(a)は、図2に示したトルク一定曲線TBで表される規定トルクTbと折れ線Bのトルク制御特性に基づく吸収トルクとの関係を示す図である。
図7(a)に示すように、第1及び第2油圧ポンプ2,3の平均吐出圧力Pp12がP0〜P1Bの範囲にあるとき、第1及び第2油圧ポンプ2,3の最大吸収トルクは平均吐出圧力Pp12の増加に応じて比例的に増加する(直線F1)。第1及び第2油圧ポンプ2,3の平均吐出圧力Pp12がP1B超えると図2の折れ線Bに基づく吸収トルク制御が実施され、第1及び第2油圧ポンプ2,3の最大吸収トルクは図2の折れ線Bで表されるトルク制御特性に基づいて制御される(曲線F2)。
第1レギュレータ31において、図2の折れ線Aの場合と同様、トルク制御特性の折れ線Bも双曲線で表されるトルク一定曲線TBとは一致せず、折れ線Bに対応する曲線F2の吸収トルクとトルク一定曲線TBの吸収トルクTbとの間にも斜線部F3で示される、第1及び第2油圧ポンプ2,3が使い切っていない補正可能な領域がある。
また、図2において、第3油圧ポンプ4の吐出圧力Pp3がP1であるときに設定されるトルク制御特性の折れ線Bは、第3油圧ポンプ4の吐出圧力Pp3がP0であるときに設定されるトルク制御特性の折れ線Aを横軸方向にシフトした特性であるのに対して、最大吸収トルクTa,Tbの曲線TA,TBは双曲線であり、最大吸収トルクがTaからTbに変化したとき、縦軸と横軸に対する位置関係は均等に変化する。このため、折れ線Aが設定されたときと折れ線Bが設定されたときとでは、トルク一定曲線TA,TBとの差も変化する。すなわち、図7(a)の曲線F2は図6(a)の曲線E2と一致せず、斜線部F3も斜線部E3と一致しない。
図7(b)は、図7(a)の斜線部F3の平均吐出圧力Pp12と吸収トルクの関係を示す図であり、曲線M2は図7(a)の曲線F2に対応している。第2トルク補正テーブルT2には、図7(b)に示される曲線M2が平均吐出圧力Pp12と第2トルク補正値Tm2との関係として設定されている。
第3補正トルク演算部44cは、第3油圧ポンプ4の吐出圧力Pp3がP13<Pp3の範囲にあるときに、図2に示したトルク一定曲線TCで表される規定トルクTcに対する折れ線Cのトルク制御特性に基づく吸収トルクの差の値をトルク補正値として算出するものである。
すなわち、第3補正トルク演算部44cは、第1及び第2油圧ポンプ2,3の平均吐出圧力Pp12を入力し、これをメモリに記憶してある第3トルク補正テーブルT3に参照させ、その平均吐出圧力Pp12に対応する第3トルク補正値Tm3を演算する。第3トルク補正テーブルT3には、下記のような平均吐出圧力Pp12と第3トルク補正値Tm3との関係が設定されている。
図8(a)は、図2に示したトルク一定曲線TCで表される規定トルクTcと折れ線Cのトルク制御特性に基づく吸収トルクとの関係を示す図である。
図8(a)に示すように、第1及び第2油圧ポンプ2,3の平均吐出圧力Pp12がP0〜P1Cの範囲にあるとき、第1及び第2油圧ポンプ2,3の最大吸収トルクは平均吐出圧力Pp12の増加に応じて比例的に増加する(直線G1)。第1及び第2油圧ポンプ2,3の平均吐出圧力Pp12がP1C超えると図2の折れ線Cに基づく吸収トルク制御が実施され、第1及び第2油圧ポンプ2,3の最大吸収トルクは図2の折れ線Cで表されるトルク制御特性に基づいて制御される(曲線G2)。
第1レギュレータ31において、図2の折れ線Cで表されるトルク制御特性はバネ31a,31bにより設定されており、このトルク制御特性の折れ線Cは双曲線で表されるトルク一定曲線TCとは一致しない。このため折れ線Cに対応する曲線G2の吸収トルクとトルク一定曲線TCの吸収トルクTbとの間には斜線部G3で示される領域があり、この斜線部G3の領域は第1及び第2油圧ポンプ2,3が使い切っていないトルク部分であって、補正可能な領域である。
また、図2において、第3油圧ポンプ4の吐出圧力Pp3がP2であるときに設定されるトルク制御特性の折れ線Cは、第3油圧ポンプ4の吐出圧力Pp3がP1であるときに設定されるトルク制御特性の折れ線Bを更に横軸方向にシフトした特性であるのに対して、最大吸収トルクTb,Tcの曲線TB,TCは双曲線であるため、折れ線Bの場合と同様、曲線G2は図6(a)及び図7(a)のの曲線E2,F2と一致せず、斜線部G3も図6(a)及び図7(a)の斜線部E3,F3と一致しない。
図8(b)は、図8(a)の斜線部G3の平均吐出圧力Pp12と吸収トルクの関係を示す図であり、曲線M3は図8(a)の曲線G2に対応している。第3トルク補正テーブルT3には、図8(b)に示される曲線M3が平均吐出圧力Pp12と第3トルク補正値Tm3との関係として設定されている。
第1加算部45は第1〜第3補正トルク演算部44a,44b,44cの演算値を加算することにより、補正トルク選択部43bで選択した補正トルク演算部にて演算したトルク補正値をトルク補正値Tmとして出力する。
第2加算部46は、ポンプベーストルク演算部42で演算したポンプベーストルクTrに第1加算部45から出力されたトルク補正値Tmを加算し、第1及び第2油圧ポンプ2,3の吸収トルクを制御するための目標吸収トルクTnを算出する。つまり、
Tn=Tr+Tm
電磁弁出力圧力演算部47は、第1レギュレータ31において、第1及び第2油圧ポンプ2,3の最大吸収トルクとして目標トルクTnを設定するための制御圧力を算出するものであり、第2加算部46で求めた目標吸収トルクTnをメモリに記憶してあるテーブルに参照させ、その目標吸収トルクTnに対応する電磁比例弁35の出力圧力Pcを演算する。メモリのテーブルには、目標吸収トルクTnが増大するにしたがって出力圧力Pcが小さくなるよう、目標吸収トルクTnと出力圧力Pcとの関係が設定されている。
電磁弁駆動電流演算部48は、電磁弁出力圧力演算部47で求めた電磁比例弁35の出力圧力Pcを得るための電磁比例弁35の駆動電流Icを算出するものであり、電磁弁出力圧力演算部47で求めた電磁比例弁35の出力圧力Pcをメモリに記憶してあるテーブルに参照させ、その出力圧力Pcに対応する電磁比例弁35の駆動電流Icを演算する。メモリのテーブルには、出力圧力Pcが増大するにしたがって駆動電流Icが増大するよう、出力圧力Pcと駆動電流Icとの関係が設定されている。この駆動電流Icは図示しないアンプにより増幅され、電磁比例弁35に出力される。
以上において、減圧弁33及び第1レギュレータ31の受圧部31fは、第3油圧ポンプ4の吐出圧力が所定圧力P2以下にあるとき、第3油圧ポンプ4の吐出圧力が上昇するにしたがって第1及び第2油圧ポンプ2,3の割り当て最大吸収トルクを減らすよう第1レギュレータ31を制御する第1制御手段を構成し、コントローラ23、電磁比例弁35及び第1レギュレータ31の受圧部31eは、圧力センサ34a,34b,34c(第1〜第3圧力センサ)により検出した第1〜第3油圧ポンプ2,3,4の吐出圧力に基づいて、第1及び第2油圧ポンプ2,3の最大吸収トルクが割り当て最大吸収トルクに近づくよう、第1及び第2油圧ポンプ2,3のトルク制御特性により得られる吸収トルクを補正するための第1トルク補正値を求め、この第1トルク補正値に基づいて第1レギュレータ31を制御する第2制御手段を構成する。
次に、以上のように構成した本実施の形態の動作を説明する。
第1及び第2油圧ポンプ2,3に係わる油圧アクチュエータの1つ、例えば、油圧アクチュエータ7を作動させた場合、第1油圧ポンプ2からの圧油がコントロールバルブユニット6の弁グループ6aに含まれる対応する流量制御弁を介して油圧アクチュエータ7に供給される。このとき、第1油圧ポンプ2の吐出圧力は油圧アクチュエータ7の負荷圧により増大し、この第1油圧ポンプ2の吐出圧力が第1レギュレータ31の受圧部31cに導かれ、第1及び第2油圧ポンプ2の平均吐出圧力が所定の値を超えると第1油圧ポンプ2の容量を減少するよう制御することで、第1及び第2油圧ポンプ2の最大吸収トルクが第1及び第2油圧ポンプ2の割り当て最大吸収トルクを超えないように制御される。
また、第3油圧ポンプ4に係わる油圧アクチュエータ、例えば油圧アクチュエータ12を作動させた場合は、第3油圧ポンプの吐出圧力が減圧弁33を介して第1レギュレータ31の受圧部31fに導かれ、第3油圧ポンプ4の吐出圧力が減圧弁33に設定される所定圧力P2以下にあるときは、第3油圧ポンプ4の吐出圧力が上昇するにしたがって第1及び第2油圧ポンプ2,3の最大吸収トルク(割り当て最大吸収トルク)を減らすよう第1レギュレータ31を制御する。これにより第3油圧ポンプ4の吐出圧力が所定圧力P2より低いときは、第3油圧ポンプ4で使用していない吸収トルクを第1及び第2油圧ポンプ2,3で使用できるようになり、その分、エンジン1の出力トルクを有効利用することができる。
更に、上記のように第1レギュレータ31が第1及び第2油圧ポンプ2,3の吸収トルクを制御するとき、コントローラ23は圧力センサ34a,34b,34cにより検出した第1〜第3油圧ポンプ2〜4の吐出圧力に基づいて電磁比例弁35を制御し、第1レギュレータ31の受圧部31eに電磁比例弁35の出力圧力を導くことで第1レギュレータ31を制御し、これにより第1及び第2油圧ポンプ2,3の割り当て最大吸収トルクを効率良く利用することができる。
すなわち、第3油圧ポンプ4の吐出圧力Pp3がP0≦Pp3≦P01の範囲内にあるときは、コントローラ23の補正トルク選択部43bは第1補正トルク演算部44aを選択し、第1補正トルク演算部44aでは、第1及び第2油圧ポンプ2,3の平均吐出圧力Pp12を第1トルク補正テーブルT1に参照させ、その平均吐出圧力Pp12に対応する第1トルク補正値Tm1を演算する。コントローラ23の第2加算部46では、目標吸収トルクTnとして、ポンプベーストルクTrにその第1トルク補正値Tm1を加算した値を演算し、この目標吸収トルクTnに基づいて電磁比例弁35を駆動し、第1レギュレータ31の受圧部31eに対応する制御圧力を導く。この制御圧力は第1レギュレータ31のバネ31a,31bの付勢力に対向して作用し、図6(a)の斜線部E3の吸収トルク分、第1及び第2油圧ポンプ2,3の吸収トルクを増やすよう制御する。これにより 第1及び第2油圧ポンプ2,3の最大吸収トルク(例えば図2の折れ線Aのトルク制御特性に基づく最大吸収トルク)は割り当て最大吸収トルク(例えば図2のトルク一定曲線TAの規定トルクTa)に近づくよう補正され、第1及び第2油圧ポンプ2,3の割り当て最大吸収トルクを効率良く利用することができる。
第3油圧ポンプ4の吐出圧力Pp3がP01<Pp3≦P12の範囲内にあるときは、コントローラ23の補正トルク選択部43bは第2補正トルク演算部44bを選択し、第2補正トルク演算部44bでは、第1及び第2油圧ポンプ2,3の平均吐出圧力Pp12を第2トルク補正テーブルT2に参照させ、その平均吐出圧力Pp12に対応する第2トルク補正値Tm2を演算する。コントローラ23の第2加算部46では、目標吸収トルクTnとして、ポンプベーストルクTrにその第2トルク補正値Tm2を加算した値を演算し、この目標吸収トルクTnに基づいて電磁比例弁35を駆動し、第1レギュレータ31の受圧部31eに対応する制御圧力を導く。この制御圧力は第1レギュレータ31のバネ31a,31bの付勢力に対向して作用し、図7(a)の斜線部F3の吸収トルク分、第1及び第2油圧ポンプ2,3の吸収トルクを増やすよう制御する。これにより 第1及び第2油圧ポンプ2,3の最大吸収トルク(例えば図2の折れ線Bのトルク制御特性に基づく最大吸収トルク)は割り当て最大吸収トルク(例えば図2のトルク一定曲線TBの規定トルクTb)に近づくよう補正され、第1及び第2油圧ポンプ2,3の割り当て最大吸収トルクを効率良く利用することができる。
第3油圧ポンプ4の吐出圧力Pp3がP13<Pp3の範囲内にあるときは、コントローラ23の補正トルク選択部43bは第3補正トルク演算部44cを選択し、第3補正トルク演算部44cでは、第1及び第2油圧ポンプ2,3の平均吐出圧力Pp12を第3トルク補正テーブルT3に参照させ、その平均吐出圧力Pp12に対応する第3トルク補正値Tm3を演算する。コントローラ23の第2加算部46では、目標吸収トルクTnとして、ポンプベーストルクTrにその第3トルク補正値Tm3を加算した値を演算し、この目標吸収トルクTnに基づいて電磁比例弁35を駆動し、第1レギュレータ31の受圧部31eに対応する制御圧力を導く。この制御圧力は第1レギュレータ31のバネ31a,31bの付勢力に対向して作用し、図8(a)の斜線部G3の吸収トルク分、第1及び第2油圧ポンプ2,3の吸収トルクを増やすよう制御する。これにより 第1及び第2油圧ポンプ2,3の最大吸収トルク(例えば図2の折れ線Cのトルク制御特性に基づく最大吸収トルク)は割り当て最大吸収トルク(例えば図2のトルク一定曲線TCの規定トルクTc)に近づくよう補正され、第1及び第2油圧ポンプ2,3の割り当て最大吸収トルクを効率良く利用することができる。
以上のように本実施の形態によれば、第3油圧ポンプ4の吐出圧力に応じて第1及び第2油圧ポンプ2,3の割り当て最大吸収トルクを増減する3ポンプシステムにおいて、第1及び第2油圧ポンプ2,3の割り当て最大吸収トルクを効率良く利用することができ、エンジン1の出力トルクを一層有効利用することができる。
本発明の第2の実施の形態を図9〜図11を用いて説明する。図9は、本実施の形態に係わるトルク制御装置を備えた建設機械用3ポンプシステムの全体を示す構成図であり、図10は、コントローラのトルク制御装置に係わる処理機能を示す機能ブロック図である。図中、図1及び図4に示す部分と同等のものには同じ符号を付している。本実施の形態は、第1の実施の形態におけるトルク制御機能を利用し、そのトルク制御機能にいわゆるスピードセンシング制御の機能を付加したものである。
図9において、本実施の形態に係わるトルク制御装置は、コントローラ23B、第1レギュレータ31、第2レギュレータ32、圧力センサ34a,34b,34c、減圧弁33、電磁比例弁35に加えて、更に、エンジン1の回転数を検出する回転数センサ51を備えている。
図10において、本実施の形態に係わるコントローラ23Bは、図4に示した構成要素(ポンプベーストルク演算部42、総ポンプ吐出圧力演算部43a、補正トルク選択部43b、第1補正トルク演算部44a、第2補正トルク演算部44b、第3補正トルク演算部44c、第1加算部45、第2加算部46、電磁弁出力圧力演算部47、電磁弁駆動電流演算部48)に加えて、減算部52と、ゲイン乗算部53と、第3加算部54とを更に備えている。
減算部52は、回転数センサ51で検出したエンジン1の実回転数から目標回転数を減算し、回転数偏差ΔNを演算する。
ゲイン乗算部53は、減算部52で演算した回転数偏差ΔNにスピードセンシング制御の補正トルクゲイン(スピードセンシング制御ゲイン)KTを掛けてスピードセンシング制御のトルク補正値ΔNを演算する。
第2加算部46は、ポンプベーストルク演算部42で演算したポンプベーストルクTrに第1加算部45から出力されたトルク補正値Tmを加算し、第1及び第2油圧ポンプ2,3の吸収トルクを制御するための第1目標吸収トルクTn0を算出する。つまり、
Tn0=Tr+Tm
第3加算部54は、第2加算部46で演算した第1目標吸収トルクTn0にゲイン乗算部53で演算したスピードセンシング制御のトルク補正値ΔNを加算し、第2目標吸収トルクTnを演算する。
このように演算した第2目標吸収トルクTnは、第1の実施の形態と同様、電磁弁出力圧力演算部47及び電磁弁駆動電流演算部48により電磁比例弁35の駆動信号に変換し、電磁比例弁35より目標吸収トルクTnに応じた制御圧力を出力し、第1レギュレータの受圧部31eに導く。第1レギュレータ31は最大吸収トルクをTnに設定し、第1及び第2油圧ポンプ2,3の吸収トルクがTnを超えないように制御する。
スピードセンシング制御による減トルク制御及び増トルク制御の効果を図11を用いて説明する。
図11は、エンジン出力トルク及びポンプ吸収トルクとスピードセンシング制御との関係を示す図である。図中、直線DRは、目標エンジン回転数が定格回転数Nratedにあるときに燃料噴射装置25により燃料噴射量が制御される領域であるレギュレーション領域の特性線であり、P点はレギュレーション領域の最大燃料噴射点である。また、図示の例では、燃料噴射装置25は、最大燃料噴射点Pからエンジン負荷が減少するにしたがってエンジン回転数が増大するよう制御するドループ特性を有している。また、直線Gは、図10のゲイン乗算部53におけるスピードセンシング制御ゲインKTの特性線である。
<減トルク制御>
エンジン1の出力トルクと第1〜第3油圧ポンプ2〜4の吸収トルクが図11のM1点でバランスした状態でエンジン1と第1〜第3油圧ポンプ2〜4が動作しているとする。この状態から第1及び第2油圧ポンプ2,3或いは第3油圧ポンプ4の負荷(吐出圧力)が急激に増大すると、燃料噴射装置25の制御の応答遅れによってエンジン1の回転数が過渡的に低下する。このような場合、図10の減算部52では回転数偏差ΔNを負の値として演算し、ゲイン乗算部53でもスピードセンシング制御のトルク補正値ΔTを負の値として演算し、加算部54では、第1目標吸収トルクTn0に負の値としてのトルク補正値ΔTを加算することで、第1目標吸収トルクTn0よりもトルク補正値ΔTの絶対値分だけ小さい第2目標吸収トルクTnを演算する。これにより第1レギュレータ31に設定される最大吸収トルクもΔT分だけ減少し、第1レギュレータ31により制御される第1及び第2油圧ポンプの吸収トルクも同様に減少する(減トルク制御)。すなわち、図11において、第1〜第3油圧ポンプ2〜4に対する吸収トルク制御の動作点は、エンジン1の出力トルクと第1〜第3油圧ポンプ2〜4の吸収トルクのバランス点M1からスピードセンシング制御ゲインKTの特性線Gに沿ってM2点へと移動する。このように第1〜第3油圧ポンプ2〜4の吸収トルクが減少する結果、エンジン1の回転数は速やかに上昇してエンジン性能の低下を防止し、作業性能を向上することができる。
<増トルク制御>
エンジン1の出力トルクと第1〜第3油圧ポンプ2〜4の吸収トルクがバランスする図11のM1点では、図10の減算部52では、回転数偏差ΔNが正の値として演算され、ゲイン乗算部53で演算されるスピードセンシング制御のトルク補正値ΔTも正の値として演算され、加算部54において演算される第2目標吸収トルクTnは第1目標吸収トルクTn0よりもトルク補正値ΔTの絶対値分だけ増大する。その結果、第1レギュレータ31に設定される最大吸収トルクもΔT分だけ増大し、第1レギュレータ31により制御される第1及び第2油圧ポンプの吸収トルクもそれに応じて増大する(増トルク制御)。これによりベースポンプトルクTrをエンジン出力トルクTeに対して余裕を持って設定した場合でも、定常状態でのバランス点M1において、第1レギュレータ31の最大吸収トルク(第1及び第2油圧ポンプの吸収トルク)をベースポンプトルクTrよりも増大させた制御が可能となり、これによりエンジン出力の有効利用が可能となる。また、エンジン1の動作点が最大燃料噴射点Pに近づくため、燃費を向上することができる。
このように構成した本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様、第3油圧ポンプ4の吐出圧力に応じて第1及び第2油圧ポンプ2,3の割り当て最大吸収トルクを増減する3ポンプシステムにおいて、第1及び第2油圧ポンプ2,3の割り当て最大吸収トルクを効率良く利用することができ、エンジン1の出力トルクを一層有効利用することができる。
また、本実施の形態においては、回転数センサ51を設け、コントローラ23Bに減算部52、ゲイン乗算部53及び加算部54の演算機能を追加したので、3ポンプトルク制御に対してスピードセンシング制御を実施することが可能となり、原動機の過負荷時は減トルク制御によりエンジン性能の低下を防止し、作業性能を向上することができるとともに、回転数偏差ΔNが正の動作時は増トルク制御によりエンジン出力の有効利用が可能となり、かつ燃費を向上することができる。
更に、本実施の形態においては、同じ制御手段(コントローラ23B)を用いて、3ポンプトルク制御とスピードセンシング制御の演算を行い、1つの制御信号により両方の制御を行うので、電磁比例弁35、電磁比例弁35からの制御圧力が導かれる第1レギュレータ31の受圧部31e等の機器が1セットで済み、簡単な構成で、3ポンプトルク制御においてスピードセンシング制御を実施することができる。
本発明の第3の実施の形態を図12を用いて説明する。図12は第3の実施の形態に係わるトルク制御装置のレギュレータ部分を示す図である。図中、図1に示した部材と同等のものには同じ符号を付している。本実施の形態は、第1レギュレータ及び第2レギュレータに対し、要求流量に応じて第1〜第3油圧ポンプの容量(吐出流量)を制御する機能を持たせた場合のものである。
図12において、第1及び第2油圧ポンプ2,3は第1レギュレータ131を備え、第3油圧ポンプ4は第2レギュレータ132を備えている。第1及び第2油圧ポンプ2,3は第1レギュレータ131により押しのけ容積可変部材である斜板2b,3bの傾転角を調整することで押しのけ容積(容量)を調整し、要求流量に応じてポンプ吐出流量を制御するとともに、ポンプ吸収トルクを調整する。第3油圧ポンプ4は第2レギュレータ131により押しのけ容積可変部材である斜板4bの傾転角を調整することで押しのけ容積(容量)を調整し、要求流量に応じてポンプ吐出流量を制御するとともに、ポンプ吸収トルクを調整する。
第1レギュレータ131は、斜板2b,3bを作動する傾転制御アクチュエータ112と、このアクチュエータ112を制御するトルク制御サーボ弁113とポジション制御弁114とを有している。傾転制御アクチュエータ112は、斜板2b,3bに連係されかつ両端に設けられた受圧部の受圧面積が異なるポンプ傾転制御スプール112aと、このポンプ傾転制御スプール112aの小面積受圧部側に位置する傾転制御増トルク受圧室112bと、大面積受圧部側に位置する傾転制御減トルク受圧室112cとを備えている。傾転制御増トルク受圧室112bはパイロットポンプ5の吐出ライン5aに油路135を介して接続され、傾転制御減トルク受圧室112cはパイロットポンプ5の吐出ライン5aに油路135と、トルク制御サーボ弁113及びポジション制御弁114を介して接続されている。
トルク制御サーボ弁113は、トルク制御スプール113aと、トルク制御スプール113aの一端側に位置するバネ113b1,113b2と、トルク制御スプール113aの他端側に位置するPQ制御受圧室113c、第1減トルク制御受圧室113d及び第2減トルク制御受圧室113eとを備えている。第1及び第2油圧ポンプ2,3の吐出ライン2a,2bには第1及び第2油圧ポンプ2,3の高圧側の吐出圧力を検出するシャトル弁136が設けられ、PQ制御受圧室113cは信号ライン115を介してシャトル弁136の出力ポートに接続され、第1減トルク制御受圧室113dは電磁比例弁35出力ポートに油路39を介して接続され、第2減トルク制御受圧室113eは減圧弁33の出力ポートに制御油路39bを介して接続されている。電磁比例弁35は前述したとおり、コントローラ23(図1)からの駆動信号(電気信号)により作動し、減圧弁33は、第3油圧ポンプ4の吐出圧力がバネ33aにより設定される所定圧力(P2)を超えると、第3油圧ポンプ4の吐出圧力をその所定圧力に減圧して出力する。
ポジション制御弁114は、ポジション制御スプール114aと、ポジション制御スプール114aの一端側に位置する位置保持用の弱いバネ114bと、ポジション制御スプール114aの他端側に位置する制御受圧室114cとを備えている。制御受圧室114cには第1及び第2油圧ポンプ2,3に係わる操作系の操作量(要求流量)に応じた油圧信号116が導かれる。この油圧信号116は、公知の種々の方法で生成することができる。例えば、操作レバー装置により生成される操作パイロット圧のうちの最も高圧の操作パイロット圧を選択し、油圧信号116としてもよい。また、流量制御弁がセンタバイパスタイプのバルブである場合、センタバイパスラインの下流側に絞りを設け、その絞りの上流側の圧力をネガコン圧として取り出し、このネガコン圧力を反転して油圧信号116としてもよい。
ポンプ傾転制御スプール112aは受圧室112b,112cの圧油の圧力バランスで、第1及び第2油圧ポンプ2,3の斜板の傾転角(容量)を制御する。トルク制御サーボ弁113のPQ制御受圧室113cに第1及び第2油圧ポンプ2,3の高圧側の吐出圧力が導かれ、その圧力が高くなる程、トルク制御スプール113aが図示左方に移動する。これにより受圧室112cにパイロットポンプ5の吐出油が流れ込み、ポンプ傾転制御スプール112aを図示右方に移動し、第1及び第2油圧ポンプ2,3の斜板2b,3bをポンプ押しのけ容積減少方向に駆動し、ポンプ容量を小さくしてポンプ吸収トルクを減少させる。第1及び第2油圧ポンプ2,3の吐出圧力が低くなる程、上記の逆動作が行われ、第1及び第2油圧ポンプ2,3の斜板2b,3bをポンプ押しのけ容積増加方向に駆動し、ポンプ押し除け容積を大きくしてポンプ吸収トルクを増加させる。
また、トルク制御サーボ弁113の第1及び第2油圧ポンプ2,3に対するトルク制御特性はバネ113b1,113b2と第1及び第2減トルク制御受圧室113d,113eに導かれる圧力によって定まり、減圧弁33の出力圧に応じて前述したようにトルク制御特性がシフトする(図2参照)。また、電磁比例弁35を制御し、その出力圧力を変えることによって、前述したように、図6(a)の斜線部E3、図7(a)の斜線部F3、図8(a)の斜線部G3の吸収トルク分、第1及び第2油圧ポンプ2,3の吸収トルクを増やすよう制御する。これにより 第1及び第2油圧ポンプ2,3の最大吸収トルク(例えば図2の折れ線Aのトルク制御特性に基づく最大吸収トルク)は割り当て最大吸収トルク(例えば図2のトルク一定曲線TAの規定トルクTa)に近づくよう補正され、第1及び第2油圧ポンプ2,3の割り当て最大吸収トルクを効率良く利用することができる。
第2レギュレータ131は、斜板4bを作動する傾転制御アクチュエータ212と、このアクチュエータ212を制御するトルク制御サーボ弁213とポジション制御弁214とを有している。傾転制御アクチュエータ212、トルク制御サーボ弁213及びポジション制御弁214は、第1レギュレータ131の傾転制御アクチュエータ112、トルク制御サーボ弁113及びポジション制御弁114と同様に構成されており、図中、同等の部分には、10番台の数字を200番台の数字に変えた符号を付して示している。ただし、トルク制御サーボ弁113では設定トルクの調整は不要であるため、第1及び第2減トルク制御受圧室113d,113eに相当するものは設けられていない。
第2レギュレータ132の動作も、第1レギュレータ131の動作と実質的に同じである。ただし、その吸収トルク制御の特性はトルク制御サーボ弁213のバネ213bによって定まり、一定である(図3参照)。
以上のように構成した本実施の形態においては、第1レギュレータ131及び第2レギュレータ132に、要求流量に応じて第1〜第3油圧ポンプ2〜4の容量(吐出流量)を制御する機能を持たせたもので、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
以上に本発明の幾つかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は本発明の精神の範囲内で種々の変形が可能である。
例えば、上記実施の形態では、第1〜第3補正トルク演算部44a〜44cの第1〜第3トルク補正テーブルT1〜T3に設定される第1及び第3トルク補正値Tm1〜Tm3を第1及び第2油圧ポンプの平均吐出圧力の関数としたが、第1及び第2油圧ポンプの吐出圧力の和(合計吐出圧力)の関数としてもよい。
また、上記の実施の形態では、減圧弁33及び受圧部31fを設け、第3油圧ポンプ4の吐出圧力が所定圧力(図3のP2)以下にあるとき、第3油圧ポンプ4の吐出圧力が上昇するにしたがって第1及び第2油圧ポンプ2,3の最大吸収トルク(割り当て最大吸収トルク)を減らすよう第1レギュレータ31を制御したが、コントローラ23(又は23B)内で演算される目標吸収トルクTn(又はTn1)にその情報を含め、電磁比例弁を制御し、その出力圧を受圧部31eに導くことで、同様の機能を持たせてもよい。例えば、図4に示す第1の実施の形態において、コントローラ23内で、圧力センサ34cにより検出した第3油圧ポンプ4の吐出圧力に基づいて第3油圧ポンプの吸収トルクを演算し、この吸収トルクをポンプベーストルク演算部42で演算したポンプベーストルクTrから減算して第1及び第2油圧ポンプの割り当て最大吸収トルクを求め、この割り当て最大吸収トルクに第1加算部45から出力されたトルク補正値Tmを加算し、第1及び第2油圧ポンプ2,3の吸収トルクを制御するための目標吸収トルクTnを算出する。これにより減圧弁33及び受圧部31fを設けなくても同様の制御を行うことができ、しかも、回路構成を簡素化することができる。
更に、上記の実施の形態では、コントローラ23(又は23B)において第3油圧ポンプ4の吐出圧力を3つの圧力範囲に分け、これに対応して3つの補正トルク演算部44a,44b,44cを設けたが、第3油圧ポンプ4の吐出圧力の分割数及び補正トルク演算部の数は3つに限らず、2つでもよいし、4以上であってもよい。第3油圧ポンプ4の吐出圧力の分割数及び補正トルク演算部の数を2つにした場合は、上記実施の形態の3つの場合に比べ、トルク一定曲線とトルク制御特性との差の吸収トルクを利用するための補正精度は低下するが、何もしない従来技術に比べ割り当て最大吸収トルクの利用効率は向上する。第3油圧ポンプ4の吐出圧力の分割数及び補正トルク演算部の数を4以上にした場合は、トルク一定曲線とトルク制御特性との差の吸収トルクを利用するための補正精度は更に向上し、割り当て最大吸収トルクを更に効率良く利用することができる。