JP4756628B2 - 水系itoインク - Google Patents

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本件発明は、ITOインクに関する。より具体的には、回路形成に用いるITOインクであって、ガラス基板上に、透明性に優れ、高密度なITO配線や電極を低温で形成させることが可能な水系ITOインクに関するものである。
従来、ガラス基板上に透明導電回路を形成する方法として、特許文献1及び特許文献2に開示されているように、スパッタリング法がある。これらの方法は、ITOターゲット表面に磁界を印加してプラズマを安定化させるマグネトロンスパッタリング法や反応性ガスを基板近傍に供給して成膜組成を制御する反応性スパッタリング法等として知られ、広く普及してきた。
そして、近年では、携帯情報機器や薄型ディスプレイ等の爆発的な需要増加により、透明導電性膜の使用が拡大し、透明導電性膜の原料であるInの値段が高騰しているにもかかわらず、スパッタリング法を上回る回路形成技術が存在しないため、透明導電性回路の形成は、従来のスパッタリング法を採用せざるを得ないのである。
スパッタリング法においては、真空ラインを必要とするため、設備投資額や維持コストが高くなる。また、原料であるITOターゲットから、最終的に電極として利用できるITOの割合は、概して4〜6%程度であり、歩留まりが著しく低く経済性に欠け、資源節約の観点に劣るものである。さらに、スパッタリング法により透明導電性回路を形成するためには、レジスト塗布工程、エッチング工程、洗浄工程等が必要不可欠であり、それらの工程から排出されるエッチング液等の産業廃棄物の処理も必要となり、製造コストの増大みならず、対環境の面からも問題となっている。
これらの問題に鑑み、スパッタリング法に替わる透明導電膜性膜の形成技術として、特許文献3及び特許文献4に示すように、ITO粉をスラリーもしくはインク状の組成物とし(以下、ITOインク)、スピンコートにより透明導電膜性膜を形成し、帯電防止や電磁波シールド用途に使用する報告がなされているが、スパッタ法の代替技術としてフラットパネルディスプレイ内部の微細な回路を形成することはできないのが現状である。
特開平5−239641 特開平5−343716 特開平6−232586 特開平5−279597
しかしながら、近年、極微細配線形成方法としてインクジェット印刷技術が注目されており、このインクジェット印刷技術にITOインクが適用できた場合、単に真空ラインを必要としないだけではなく、所望の位置に所望の量を印刷できるため、原料の使用率が飛躍的に向上すると同時に、レジスト塗布、エッチング、洗浄等の工程が不必要となる。このことを考えるに、インクジェット印刷技術に使用可能なITOインクが存在すれば、透明導電性回路の製造において大幅なコストダウンが可能となる。
ところが、インクジェット印刷に適したITOインクは実用に至っておらず、市場に殆ど供給されていないというのが現実である。よって、インクジェット印刷に適したITOインクを提供することにより、フラットパネルディスプレイ内部の透明導電性回路を安価に形成することができる技術が、市場から要求されている。
そこで、本件発明者等は、鋭意検討を行った結果、溶媒としての水、ITO粉、表面張力調整剤、密着性向上剤を含む水系ITOインクであれば、上記目的を達成し得ることを見出し、本件発明を完成するに至った。
本件発明に係るITOインクの基本的構成は、溶媒としての水、ITO粉、表面張力調整剤、密着性向上剤を含む水系ITOインクであって、当該水系ITOインク重量を100重量%としたとき、当該溶媒としての水を30重量%以上含有し、前記密着性向上剤としてチタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤からなる群より選択される1種又は2種以上を0.3重量%〜20重量%含有する組成を備えることを特徴とするものである。
本件発明に係るITOインクにおいて、前記表面張力調整剤は溶媒としての水と相溶性のあるアルコール類、グリコール類からなる群より選択される1種または2種以上を組み合わせたものを用いることが好ましい。
そして、本件発明に係るITOインクにおいて、前記溶媒としての水は、イオン交換水又は蒸留水であり、水道水程度の純度の水は用いないことが好ましい。
本件発明に係る水系ITOインクにおいて、前記ITO粉の粉粒の一次粒子径は100nm以下であるものを用いることが好ましい。
本件発明に係る水系ITOインクは、ガラス基板との密着性に優れ、且つ、透明性が高く微細な配線や電極の形成が可能なものである。従って、当該ITOインクは、TFTパネルに使用するガラス基板への保護電極や画素電極の形成等に好適なものとなる。
本件発明に係るITOインクは、溶媒としての水、ITO粉、表面張力調整剤、密着性向上剤を含む水系ITOインクであって、溶媒として純水を用い、密着性向上剤としてシランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、アルミニウムカップリング剤からなる群より選択される1種または2種以上を組み合わせて用いる点に特徴を有している。以下、構成要素ごとに説明する。
溶媒: まず、溶媒に関して説明する。本件発明では、溶媒として水を用いる点が大きな特色となっている。そして、ここで言う水とは、水道水程度の純度の水を含む意味ではなく、イオン交換水、蒸留水等のレベルの純度を有するものである。このような品質レベルの水を用いるのは、溶媒としての品質を安定化させ、インクとしての性能を安定化させるためである。ここで水を主体的に用いることで、沸点が100℃と低く、高温ガス化することなく脱媒が可能であるため、緻密な電極が形成でき、形成した電極が下地に対して高い密着強度を示すからである。
そして溶媒である水と組みあわせて有機溶媒等を微量に混合して用いることも可能であり、少なくとも上記水、密着性向上剤と相溶性のあるものであり、所定のインク粘度等に調製出来るものであれば、特に限定は要さない。このときの有機溶媒等は、水を100重量部としたときに、3重量部〜50重量部、より好ましくは3重量部〜20重量部を混合し、ITOインクの粘度調整、ITO粉の分散性等を細かく調整するのである。即ち、ITOインクとして見たときの、ここで言う有機溶媒の含有率は、ITOインク中の水の含有量が30重量%であるとすれば、その内の0.9重量%〜15重量%、ITOインク中の水の含有量が50重量%であるとすれば、その内の0.9重量%〜25重量%程度となるのである。このときの有機溶媒等を、水を100重量部としたときに3重量部未満とすると、有機溶媒を添加した効果が得られず、粘度調整等が不可能となるのである。そして、有機溶媒等を、水を100重量部としたときに50重量部を超えて添加すると、水を主溶媒として用いた利点であるインク中でのITO粉の分散性、インクジェット法での使用特性が劣化するのである。特に、用いるITO粉の種類との組み合わせを考慮して選択使用することが求められる。従って、この有機溶媒等を限定するとすれば、常圧での沸点が100℃〜300℃である水、アルコール類、グリコール類からなる群より1種又は2種以上を組み合わせたものである。
ここで、「常圧での沸点が100℃〜300℃」という限定を行ったのは、沸点が300℃を超える温度領域では、有機樹脂成分をバインダー樹脂に利用したITOインクが還元焼成工程でバインダー樹脂の分解を起こしガス化した時と同じように、高温で溶媒がガス化するため、緻密な電極が形成できないばかりか、結果的に各種基板との高い密着強度を発揮し得ないのである。そして、100℃以上としたのは、水の沸点以上であり、溶媒に必然的に含まれる水の除去が確実に可能となる加熱温度範囲の選択が可能となるからである。
溶媒の一部として、アルコール類を用いるには1−ブタノール、1−ペンタノール、グリシドール、ベンジルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−n−ブトキシエタノール、2−フェノキシエタノール、カルビトール、エチルカルビトール、n−ブチルカルビトール、ジアセトンアルコールから選ばれた1種又は2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。中でも、常圧での沸点が100℃以上で且つ、室温の常圧下で気化しづらいものが良く、1−ブタノール、1−ペンタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−n−ブトキシエタノール、2−フェノキシエタノール、ジアセトンアルコールを用いることがより好ましい。
溶媒の一部としてグリコール類を用いるには、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、へキシレングリコールから選ばれた1種又は2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。中でも、常温での粘度が100cP以下であるものが良く、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、トリエチレングリコールを用いることが好ましい。粘度が高すぎる場合、ディスペンサー法やインクジェット法に適した粘度調整が困難となるからである。
密着性向上剤: 本件発明に係る導電性インクは、密着性向上剤として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、アルミニウムカップリング剤からなる群より選択されるものを用いるのであり、好ましくは0.3重量%〜20重量%含ませて用いるのである。導電性インクの密着性向上剤の含有量が0.3重量%未満では、基材との密着性向上効果は得られず、当該含有量が20重量%を超えても、基材への密着性向上効果は向上しないのである。このとき前記群より選択した1種の成分を用いる場合のみならず、2種以上を組み合わせて用いることが可能である。即ち、複数種の成分を含有させることで、回路等の形成を行う基板の性質に合わせた密着性の制御が可能となるのである。
ここで言うシランカップリング剤とは、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシランのいずれかを用いる事が好ましい。中でも、基板への密着性の安定化を図るという観点から、安定した性能を発揮するメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルトリエトキシシラン等を用いることが好ましい。
ここで言うチタンカップリング剤とは、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトラメチルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、チタンオクタンジオレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートのいずれかを用いることが好ましい。中でも、基板への密着性の安定化を図るという観点から、安定した性能を発揮するテトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、チタンラクテート等を用いることが好ましい。
ここで言うジルコニウムカップリング剤とは、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジルコニウムモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムモノステアレートのいずれかを用いることが好ましい。中でも、基板への密着性の安定化を図るという観点から、安定した性能を発揮するジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジルコニウムモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート等を用いることが好ましい。
ここで言うアルミニウムカップリング剤とは、アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、アルミニウムエチレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノイソプロポキシモノオレオキシエチルアセトアセテート、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、環状アルミニウムオキサイドオクチレート、環状アルミニウムオキサイドステアレートのいずれかを用いることが好ましい。中でも、基板への密着性の安定化を図るという観点から、安定した性能を発揮するエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等を用いることが好ましい。
表面張力調整剤: そして、本件発明で用いる表面張力調整剤とは、少なくとも水と相溶性のあるものであり、アルコール類、グリコール類からなる群より選択される1種または2種を組み合わせたものである。
ここでいう表面張力調整剤を具体的に例示すれば、1−ブタノール、1−ペンタノール、4−メチルー2−ペンタノール、2−エトキシエタノール、2−n−ブトキシエタノール、n―ブチルカルビトール、エチレングリコール等が挙げられる。本件発明では、上記表面張力調整剤のうち、2−n−ブトキシエタノールやエチレングリコール等を用いることが、ITOインクとしての長期間の品質安定性を維持するという観点から好ましい。
更に、前記表面張力調整剤は、その表面張力が40mN/m以下の添加剤を用いることが、より好ましいのである。このような表面張力を備える表面張力調整剤を用いることがインクジェット装置での使用に適したインクの表面張力調整が最も容易であり、インクジェット装置の設計に合致させた粘度調整が簡単に可能であり且つ容易となるのである。微細な配線回路の形成が可能となるのである。ここで言う、表面張力調整剤には、溶媒としても使用可能なアルコール、グリコールであって、かつ、表面張力が40mN/m以下であり、25℃における粘度が100cP以下からなる群より選択される1種又は2種以上を組み合わせたものを用いることが好ましい。
当該表面張力調整剤のうち、表面張力が40mN/m以下であり、25℃における粘度が100cP以下のアルコール等としては、例えば、1−ブタノール、1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エトキシエタノール、2−n−ブトキシエタノール、n−ブチルカルビトール等が挙げられる。従って、表面張力の調整能力とインクとしての長期間の品質安定性維持を両立させるという観点から考えると、2−n−ブトキシエタノールを用いることが最も好ましい。
本件発明に係るITOインクにおいて、配合される表面張力調整剤の量はITOインクの表面張力を適宜調整する量とすればよく、特に限定されるものではない。しかし、一般的にはITOインク重量を基準として、通常1重量%〜43重量%、好ましくは5重量%〜30重量%である。表面張力調整剤の量が1重量%未満の場合には、表面張力の調整が出来ないのである。また、表面張力調整剤の量を43重量%を超える量を添加すると、表面張力調整剤を添加する前後で、ITOインク中に含有されるITO粉の分散形態が大きく変化し、結果的にITO粉が凝集をはじめ、ITOインクで最も重要なITO粉の均一分散が阻害されてしまうため、ITOインクとして使用できなくなる。
ITO粉: そして、ここで言うITO粉とは、インクジェット方式で使用することを考慮すると、傾向として、ITO粉の粉粒の平均一次粒径が微細であるほど、インクジェットのノズルの目詰まりを引き起こす可能性は低く、微細回路の形成に適してくる。一方、現行の技術レベルでも、ITO粉自体は比較的微細な粒径を持つ製品が市場に供給されている。その中でも、粉粒の平均一次粒径が100nm以下のITO粉を用いることが好ましいのである。当該平均一次粒子径が100nmを超えると、40μm幅レベルのファイン回路を形成しようとしたときに、導電性に優れた回路形成が可能だとしても、透過率が低下してしまう問題が生じる、しかもインクジェットノズルにITOインクが目詰まりしやすくなる傾向が高まるからである。そして、本件発明では、ITO粉の平均一次粒径の下限値を定めていないが、現段階で工業的に生産可能な製品の下限値としては10nm程度である。
更に言えば、形成する回路のファイン化レベルに応じて、適正な一次粒径を持つITO粉を適宜選択使用すればよいのである。そして、上述の下限値を加味して考えれば、10nm〜100nm、好ましくは10nm〜80nm、さらに好ましくは10nm〜50nmの範囲の選択的使用が好ましい。ITO粉の粉粒の平均一次粒径が10nm未満の場合は、現段階ではその製法が確立されておらず、実験による検証ができない。一方、平均一次粒径が100nmを超えると、上述したように導電性に優れた回路形成が可能だとしても、透過率が低下してしまう問題が生じる、しかもインクジェットノズルにITOインクが目詰まりしやすくなる傾向が高まるからである。本件発明において平均一次粒径とは、透過型電子顕微鏡で観察したときの、一視野中に含まれた最低200個の粉粒の粒径を観察し、これらを積算し平均することにより求められる粒径を意味する。
ITO粉の平均一次粒径が小さな事は、細かな粉粒であるという根拠になるが、微粒であってもITOインク中の粉粒同士の凝集が進行し、二次構造体としての粒径が大きくなると、やはりインクジェットノズルの目詰まりを引き起こしやすくなるのである。従って、ITOインク中の二次構造体としての凝集粒は、インクジェットノズルの目詰まりを引き起こさない大きさ以下とする必要があり、これは実験的に確認されたもので、凝集粒の最大粒子径を0.8μm以下とすれば、ほぼ確実にインクジェットノズルの目詰まりを防止出来るのである。又、この凝集粒の確認方法としては、レーザー式粒度分布測定装置を用いている。
以上のことから、本件発明に係る水系ITOインクの最も良好な組成は、水系ITOインク重量を基準として、溶媒としての水を30重量%以上含むことを前提に、ITO粉を5重量%〜40重量%、密着性向上剤を0.3重量%〜20重量%、表面張力調整剤1重量%〜43重量%の組成範囲内で合計100重量%となるものとして用いることが好ましい。この範囲において、インクジェット法での微細回路の形成が極めて容易となり、基材との良好な密着性を安定して得ることが出来るのである。そして、インクジェット法でのより安定的な使用を考慮すると、溶媒としての水を30重量%以上含むことを前提に、ITO粉を5重量%〜20重量%、密着性向上剤を0.3重量%〜10重量%、表面張力調整剤1重量%〜25重量%の組成範囲内で合計100重量%となるものとして用いることがより好ましい。なお、水単独ではなく、上述の水と有機溶媒との混合溶媒を用いる場合にも、水を30重量%以上含むことを前提とすることが好ましい。以下に実施例を示すが、本件発明はこれらに限定されて解釈されるものではない。
(ITOインクAの調製)
容量1Lの容器中でITO粉(三井金属鉱業社製、一次粒子の平均粒径20nm)180gと溶媒としての純水378gを混合し、さらに表面張力調整剤として2−n−ブトキシエタノール42gを添加したものを、湿式メディアミル(メデイア:φ0.8mmジルコニアビーズ)により、湿式解砕処理を行いスラリーを得た。
次に、該スラリー中へジルコニア系カップリング剤(松本純薬工業社製ZB120)120.8gを添加し、さらに湿式メディアミル(メデイア:φ0.8mmジルコニアビーズ)により、湿式解砕処理を行いスラリーを得た。
次に、該スラリーを、高速旋回薄膜法を用いた高速乳化分散機であるT.K.フィルミックス(特殊機化工業社製)にて、線速50m/sで混合しながら、分散化処理を行った。
次に該スラリーに含有される1μm以上の粒子をカートリッジ式フィルター(アドバンテック東洋株式会社製MCP−JX−E10S、平均孔径1μm以下)に通液濾過することで除去し、ITOの濃度が24重量%で、水分含有率が52.4重量%のITOインクAを得た。この通液濾過処理は使用するITO粉の粉体特性に応じて採用すれば足りる任意の処理である。
(印刷性の評価)
前記ITOインクAについて、市販のインクジェットプリンター(セイコー・エプソン社製PM−G700)を用い、無アルカリガラス基板OA−10(日本電気硝子社製)へ配線パターン(ライン&スペース100μm、長さ2cm)の作製を行ったところ、ITOインクAはインクジェットノズルに目詰まりすること無く印刷可能であった。連続50回の印刷後、ノズルの目詰まりを確認するため、ノズルチェックパターン印刷を実施したところ、ノズル詰まりは確認されなかった。また、得られた配線パターンを光学顕微鏡で観察したところ、配線パターンに断線やインクの飛散は観察されず、良好な配線パターンであった。
(電極形成及びその評価)
ITOインクAを、10cm角の無アルカリガラス基板OA−10(日本電気硝子社製)上に、スピンコーターを用い回転数800rpmの条件で塗膜した。次に、塗膜したガラス基板を、250℃×30分の条件によりホットプレート上で大気焼成を行った後、水素含有量が1容量%の水素−窒素混合雰囲気で、250℃×30分の条件で還元焼成を行い、ガラス基板上にITO電極膜を形成した。電極厚みをSEM観察により測定したところ、約1μmであった。ITO電極膜の比抵抗を四探針抵抗測定機ロレスタGP(三菱化学社製)にて測定し、また、ガラス基板との密着性をJIS K 5600 パラグラフ5−6に準じ、クロスカット法により評価した。比抵抗は1.8×10−1Ω・cmであり、密着性の評価は、分類0であり、良好な密着性が得られている。
(水系ITOインクBの調製)
容量1Lの容器中にITO粉72gと溶媒としての純水442gを混合し、さらに表面張力調整剤として2−n−ブトキシエタノール56gとエチレングリコール56gを添加し、湿式メディアミル(メデイア:φ0.65mmジルコニアビーズ)により、湿式解砕処理を行いスラリーを得た。
次に、該スラリー中へジルコニア系カップリング剤(松本純薬工業社製ZB120)96gを添加し、さらに湿式メディアミル(メデイア:φ0.65mmジルコニアビーズ)により、湿式解砕処理を行い、ITO濃度が10重量%、水分含有率が58.4重量%のITOインクBを得た。
以下、実施例1と同様にして配線パターンの印刷を行ったところ、導電性インクBはインクジェットノズルに目詰まりすることなく印刷可能であった。また、50回以上の印刷が可能であった。また、得られた配線パターンを光学顕微鏡で観察したところ配線パターンに断線やインクの飛散は観察されず、良好な配線パターンが得られた。また、実施例1と同様にして電極膜を作製し、比抵抗を測定したところ5.8×10−1Ω・cmであった。また、上記電極膜の密着性を実施例1と同様に評価したところ、密着性の評価は、分類0であり、良好な密着性が得られていた。
本件発明に係るITOインクは、溶媒として取り扱いの容易な純水を使用し、ガラスとの密着性に優れ、且つ、透明性が高く微細な配線や電極の形成が可能な水系ITOインクである。従って、液晶ディスプレイ等の製造過程において有用であり、溶媒として取り扱いの容易な純水を使用していることから廃液等の問題が無く、安全面、環境面からも有利である。このように密着性が高く、溶媒として取り扱いの容易な純水を用いたITOインクは市場に供給されておらず、本件発明に係るITOインクによって水系ITOインクの使用の場が飛躍的に広がるものとなる。

Claims (4)

  1. 溶媒としての水、ITO粉、表面張力調整剤、密着性向上剤を含む水系ITOインクであって、
    当該水系ITOインク重量を100重量%としたとき、当該溶媒としての水を30重量%以上含有し、前記密着性向上剤としてチタンカップリング剤、ジルコニアカップリング剤からなる群より選択される1種又は2種以上を0.3重量%〜20重量%含有する組成を備えることを特徴とする水系ITOインク
  2. 前記表面張力調整剤はアルコール類、グリコール類からなる群より選択される1種または2種以上を組み合わせたものである請求項1に記載の水系ITOインク
  3. 前記溶媒としての水は、イオン交換水又は蒸留水であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水系ITOインク
  4. 前記ITO粉は、当該粉粒の一次粒子径が100nm以下である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の水系ITOインク
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