(1)トナー
本発明者らは、トナーに使用される構成材料に関して検討を進め、トナー中における樹脂成分の構成、即ちポリエステルユニット及びビニル系共重合ユニットを特定の混合比で使用すること並びに樹脂成分を分子量により高軟化点温度樹脂及び低軟化点温度樹脂として規定し、高軟化点温度樹脂のみ又は、好ましくは高軟化点温度樹脂及び低軟化点温度樹脂を特定の混合比で使用すること、さらに高架橋部分(ゲル)の構造を制御することで、定着に有効な低軟化成分を保存性を悪化させることなく効果的に樹脂中に取り込むことが可能となることを見出した。
また、本発明者らは、各反応性基の分解温度の異なる2官能性重合開始剤を使用し、2段階で樹脂を製造することで、低軟化成分を保存性を悪化させることなしに取り込むことが可能な高架橋部分を容易に設計することが出来ることを見出した。
本発明のトナーは、トナー中の結着樹脂が少なくともポリエステルユニット及びビニル系共重合ユニットを含有し、該トナーをテトラヒドロフラン(THF)によるソックスレー抽出により16時間抽出した時のTHF可溶分Aのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布において、分子量2000〜7000(好ましくは3000〜7000)の領域にメインピークMpAを有し、該トナーを25℃で24時間THF溶媒に放置させた時のTHF可溶分BのGPCにより測定される分子量分布において、分子量5000〜10000の領域にメインピークMpBを有し、分子量100000以下の割合が70〜100質量%であり、THF可溶分Aのピーク分子量MpAとTHF可溶分Bのピーク分子量MpBが、0.50<MpA/MpB<0.95、好ましくは、0.55<MpA/MpB<0.90を満足することが良い。
このようにトナー中のTHF可溶分のピーク分子量が、抽出される温度によって変わるということは、トナー中に含まれる結着樹脂成分のTHF可溶分の溶解量に熱量による差が生じているといえる。これは即ち、トナー中に、溶媒の温度上昇により分子のからまりが解け、可溶成分となる成分が存在することを示している。本発明のトナーよりソックスレー抽出により抽出される成分は、本発明のトナーにおいて特有の作用を発現する。即ち、上記成分は非常に低分子量で且つ低軟化温度の樹脂成分であるため、低温領域において熱的な挙動を起こしやすく、低温定着性を向上させることが可能となる。
以上述べてきたように、THFの沸点(ソックスレー抽出)で、樹脂中、特に高架橋成分中から抽出される成分が低温定着性を大きく左右し、この成分を保存性を悪化させることなく樹脂中に取り込んでおくためには、トナーのTHF可溶分Aのピーク分子量MpAとTHF可溶分Bのピーク分子量MpBが、0.50<MpA/MpB<0.95の式を満足する必要があることが見出された。
即ち、MpA/MpB≧0.95の場合、ソックスレー抽出により、樹脂中、特に高架橋成分中から、低分子量で且つ低軟化温度の樹脂成分がほとんど抽出されないあるいは、熱によりより高分子量の成分が溶出したことを示す。
これは、(1)樹脂、特に高架橋成分が熱によって絡み合いがほぐれるような成分ではなく、非常に硬い成分から成っていることを示す。あるいは(2)樹脂、特に高架橋成分は熱により絡み合いがほぐれる成分であるが、低分子量で且つ低軟化温度の樹脂成分が樹脂中にあまり存在していないことを示す。これらいずれの場合も低温領域において熱的な挙動を起こし易い成分が減少するために、ハーフトーン画像や厚紙に対する定着性が悪化する。さらに、(1)のような場合、定着性が悪化するだけでなく、着色剤や離型剤などの分散性を向上させることが出来なくなり、その結果、高温高湿下での耐久現像性が悪化する。さらにこのような場合、強い脆性を有する成分が相対的に増加するために粉砕性に影響が現われる。
また、MpA/MpB≦0.50の場合、(3)樹脂、特に高架橋成分中に存在する低分子量で且つ低軟化温度の成分の割合が多いことを示す。あるいは(4)樹脂、特に高架橋成分の絡み合いが熱によって相当量ほどけることを示す。
いずれの場合も定着性は向上するものの、熱的安定性に優れた樹脂、特に高架橋成分が相対的に減少するために、耐高温オフセット性を満足させることが困難になる。さらに(3)のような場合、低分子量で且つ低軟化温度の成分が増加することにより保存性が悪化する。また、熱的に不安定な成分が増加するため機械的シェアに弱くなり、トナー劣化が
進みやすくなる。その結果、長期間に渡って画像品質を安定に得ることが困難となる。また、(4)のような場合、からみ合いによる柔軟性があり且つ粘りのある成分がほとんど存在しないため、転写材との接着性が弱くなり擦りには耐えられるが、剥がれに対しては弱くなる傾向があり、特に、トランスペアレンシーからトナーが剥離しやすくなる。さらに、樹脂、特に高架橋成分によって生じるトナー粒子製造時の溶融混練時における混練シェアをかけることが出来なくなるため、トナー粒子中における離型剤、磁性体、荷電制御剤等の原料の分散性が悪化し、現像性に影響を及ぼすようになる。
本発明では、トナーのTHF可溶分Aのメインピークのピークトップ分子量MpAが2000より小さいと、定着性は向上するものの、熱的安定性に優れた樹脂、特に高架橋成分が相対的に少なくなるために、耐高温オフセット性を満足させることが困難になる。また、からみ合いによる柔軟性があり且つ粘りのある成分がほとんど存在しないため、転写材との接着性が弱くなり、擦りには耐えられるが、剥がれに対しては弱くなる傾向があり、特に、トランスペアレンシーからトナーが剥離しやすくなる。メインピークのピークトップ分子量MpAが7000より大きいと、ハーフトーン画像や厚紙に対する定着性が悪化する。さらに、着色剤や離型剤などの分散性を向上させることが出来なくなり、その結果、高温高湿下での耐久現像性が悪化する。また、トナーのTHF可溶分Bのメインピークのピークトップ分子量MpBが5000より小さいと、低分子量で且つ低軟化温度の成分が相対的に多くなることにより保存性が悪化する。また、熱的に不安定な成分が増加するため機械的シェアに弱くなり、トナー劣化が進みやすくなる。その結果、長期間に渡って画像品質を安定に得ることが困難となる。メインピークのピークトップ分子量MpBが10000より大きいと、低温領域において熱的な挙動を起こし易い成分が相対的に少なくなるために、定着性が悪化する。また、強い脆性を有する成分が相対的に増加するために粉砕性に影響が現われる。
また、THF可溶分BのGPCにより測定される分子量分布において、分子量100000以下の割合が70質量%未満であると、十分な定着性を達成することができないだけではなく、低分子量で且つ低軟化温度の成分を効果的に取り込むことの出来る架橋成分を得られにくくなる。
また、本発明のトナーは16時間抽出した時の結着樹脂成分のTHF不溶分が好ましくは10質量%〜50質量%、より好ましくは15質量%〜50質量%、さらに好ましくは15質量%〜45質量%である。
THF不溶分は定着ローラーなどの加熱部材からの良好な離型性を発現するために有効な成分であるため、高速機に適用された場合、定着ローラーなどの加熱部材へのトナーのオフセット量が低減する効果がある。10質量%未満の場合には、上記効果が発現しにくく、50質量%を超える場合には、定着性が悪化するだけでなく、トナー中での原材料の分散性が悪化し、帯電性が不均一になる傾向にある。また、本発明においてはこのTHF不溶分量が定着に効果のある低軟化温度成分の取り込み量と大きく関わってくるために、本発明のトナーがより優れた効果を発揮するためには上記不溶分量を制御することが非常に重要となる。
以上のように、トナー中における樹脂成分の構成、即ちポリエステルユニット及びビニル系共重合ユニットを特定の混合比で使用すること並びに樹脂成分を分子量により高軟化点温度樹脂及び低軟化点温度樹脂として規定し、高軟化点温度樹脂のみ又は、好ましくは高軟化点温度樹脂及び低軟化点温度樹脂を特定の混合比で使用すること、さらに高架橋部分(ゲル)の構造を制御することで、定着に有効な低軟化成分を保存性を悪化させることなく効果的に樹脂中に取り込むことが可能となり、その結果、定着器の構成に関わらず低温定着が可能であり、耐オフセット性、保存性に優れ、高湿下及び低湿下で使用しても高
い画像品質が安定して得られ、経時において画像欠陥を生じないトナーを得ることが出来る。
(2)トナー成分
(i)結着樹脂
本発明のトナーは、特定の結着樹脂を含んでなる。本発明に使用される結着樹脂は、少なくともポリエステルユニットとビニル系共重合ユニットを含有する。一般的に低温定着性に優れるポリエステルユニットと、耐高温オフセット性に優れ、且つ離型剤との相溶性の高いビニル系共重合ユニットを含有させることで、低軟化成分を保存性を悪化させることなしに取り込むことが可能な高架橋部分を容易に設計することが出来る。
本発明のトナーが所望の効果を得るためには、トナーに用いられる結着樹脂(高軟化温度樹脂)は、ポリエステルユニットとビニル系共重合ユニットの混合物であってもよく、ポリエステルユニットとビニル系共重合ユニットが化学的に結合したハイブリッド樹脂であってもよい。しかし、ポリエステルユニットとビニル系共重合ユニットが化学的に結合したハイブリッド樹脂である方が、架橋点間距離の長い、絡み合いに効果的な樹脂を容易に設計できるため、好ましい。
ポリエステルユニットとビニル系共重合ユニットの存在比は、好ましくは50/50〜90/10、より好ましくは60/40〜90/10(質量比)である。ポリエステルユニットが50質量%より少ない場合には求める低温定着性が得られず、またポリエステルユニットが90質量%より多い場合には保存性が悪化するだけでなく、離型剤の分散状態を制御するのが困難であるため好ましくない。
また、上記結着樹脂は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPCによるピーク分子量Mptが5000〜10000、重量平均分子量Mwtが5000〜300000、重量平均分子量Mwtと数平均分子量Mntとの比Mwt/Mntが5〜50であることが好ましい。Mpt、Mwtが小さく分布がシャープである場合には、高温オフセットが発生してしまう。また、Mpt、Mwtが大きく分布がブロードである場合には、求める低温定着性が得られない。
また、該結着樹脂は、定着性と高温オフセット性のバランスを取るためにフローテスターによる軟化温度が、好ましくは120〜145℃、より好ましくは120℃〜135℃である。
また、該結着樹脂のガラス転移温度は、定着性、保存性の観点から53〜62℃が好ましい。
結着樹脂として上記のような樹脂を単独で使用しても良いが、軟化点の異なる2種以上の結着樹脂を混合して使用しても良い。その場合、上記樹脂に効果的に取り込むことが出来る低分子量で且つ低軟化温度の樹脂が好ましい。その低軟化温度の樹脂としては、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPCによるピーク分子量MpLが2000〜8000、重量平均分子量MwLが5000〜50000、重量平均分子量MwLと数平均分子量MnLとの比MwL/MnLが1〜10であることが好ましい。また、低軟化温度の樹脂のフローテスターによる軟化温度は、保存性と定着性のバランスを取るために、好ましくは80〜105℃、より好ましくは85℃〜98℃である。
また、該結着樹脂のガラス転移温度は、定着性、保存性の観点から好ましくは45〜60℃、より好ましくは45〜58℃である。
また、これら2種類の樹脂を混合して使用する場合、高軟化温度樹脂と低軟化温度樹脂の比率は、保存性、トナーのオフセット性、低軟化温度樹脂の高架橋成分への取り込まれ度合いの観点から、好ましくは90/10〜30/70、より好ましくは80/20〜30/70の質量比である。
本発明のトナーにおける結着樹脂の含有量としては、トナーに対して、好ましくは40〜80質量%、より好ましくは45〜80質量%である。
以下に本発明で用いられる結着樹脂中のポリエステルユニットに用いられるモノマーについて説明する。
本発明の結着樹脂に用いられるポリエステルユニットに用いられる脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体としては、HOOC−(CH2)n−COOH〔n=0〜8〕で表されるジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、及びこれらの誘導体及びそれらの酸無水物などが挙げられる。上記式で表されるジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸などが挙げられる。これらのうち、マレイン酸、フマル酸、アルケニルコハク酸及びそれらの酸無水物、HOOC−(CH2)n−COOH〔n=4〜8〕が架橋点間距離の長い絡み合いに最適なフレキシブルな樹脂を得るためには好ましく、これらのうち、特にアジピン酸が良い。
また、脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールなどが挙げられ、好ましくは1,4−ブタンジオールである。
3価以上の多価カルボン酸又はその無水物としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸及びこれらの酸無水物又は低級アルキルエステル等が挙げられ、3価以上の多価アルコールとしては、例えば、1,2,3−プロパントリオール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等が挙げられるが、好ましくは1,2,4−ベンゼントリカルボン酸及びその無水物である。
次に、ポリエステルユニットに用いられる2価のアルコール成分としては、前述の脂肪族ジオールの他に、水素化ビスフェノールA、又は下記式(ア)で示されるビスフェノール誘導体、及び下記式(イ)で示されるジオール類が挙げられる。
また2価のカルボン酸としては、前述の脂肪族ジカルボン酸の他にフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸等の芳香族ジカルボン酸又はその誘導体が挙げられる。
本発明の結着樹脂に用いられるポリエステルユニットは、上記のようなポリエステルモノマーの一種又は二種以上を、通常の方法により重合して製造することができる。
本発明の結着樹脂に用いられるビニル系共重合ユニットを生成するためのビニル系モノマーとしては、例えば、次のようなスチレン系モノマー及びアクリル酸系モノマーが挙げられる。
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレンの如きスチレン及びその誘導体が挙げられる。
アクリル酸系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸及びアクリル酸エステル類や、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸及びそのエステル類や、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体等が挙げられる。
さらに、ビニル系共重合ユニットのモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシルエチルアクリレート、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシルプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸エステル類、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンの如きヒドロキシル基を有するモノマーが挙げられる。
ビニル系共重合ユニットには、ビニル重合が可能な種々のモノマーを必要に応じて併用することができる。このようなモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きエチレン不飽和モノオレフィン類、ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルの如きハロゲン化ビニル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル
類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物、ビニルナフタリン類、さらに、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物、マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和塩基酸のハーフエステル、ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和塩基酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸の酸無水物、該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物、アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。
また、前記ビニル系共重合ユニットは、必要に応じて以下に例示するような架橋性モノマーで架橋された重合体であってもよい。架橋性モノマーには、例えば芳香族ジビニル化合物、アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、ポリエステル型ジアクリレート類、及び多官能の架橋剤等が挙げられる。
芳香族ジビニル化合物としては、例えばジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等が挙げられる。
アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えばエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの等が挙げられる。
エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えばジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの等が挙げられる。
芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えばポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの等が挙げられる。
ポリエステル型ジアクリレート類としては、例えば商品名MANDA(日本化薬)が挙げられる。
多官能の架橋剤としては、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロ
ールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート等が挙げられる。
これらの架橋性モノマーは、他のモノマー成分100質量部に対して、0.01〜10質量部(さらに好ましくは0.03〜5質量部)用いることができる。またこれらの架橋性モノマーのうち、定着性、耐オフセット性の点から好適に用いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)や、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が挙げられる。
本発明の結着樹脂に用いられるビニル系共重合ユニットは、上記のようなビニル系共重合ユニットのモノマーの一種又は二種以上を、通常の方法により重合して製造することができる。また、ビニル系共重合ユニットは、重合開始剤を用いて製造された樹脂であっても良い。これらの開始剤は、効率の点からモノマー100質量部に対し0.05〜2質量部で用いるのが好ましい。
このような重合開始剤としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−カーバモイルアゾイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドの如きケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロビルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレートが挙げられる。
本発明における結着樹脂としてより好ましく用いられるハイブリッド樹脂は、ポリエステルユニット及びビニル系共重合ユニットが直接及び/又は間接的に化学的に結合している樹脂である。ハイブリッド樹脂を得る方法としては、ポリエステルユニットの原料モノマーとビニル系共重合ユニットの原料モノマーを同時に、もしくは順次反応させることにより得ることができる。
本発明においては、ハイブリッド樹脂は、ポリエステルユニットの原料モノマーを縮重合反応した後に、重合開始剤を使用しビニル系共重合ユニットモノマーを重合し、ビニル系共重合ユニットを不飽和又は飽和ポリエステル樹脂と付加重合反応させることにより、製造することができる。また、ポリエステルユニットの原料モノマーを縮重合反応した後に溶媒に溶解させ、各反応性基の分解温度の異なる2官能性重合開始剤を使用し、1段階目でビニル系共重合ユニットモノマーを重合し、2段階目でビニル系共重合ユニットを不飽和ポリエステル樹脂と付加重合反応させることができる。このような方法によりハイブリッド樹脂を製造することにより架橋点間距離の長い、絡み合いに効果的な樹脂を容易に設計することが可能となるため、このような方法が低軟化温度の樹脂を効果的に架橋構造中に取り込む上で好適な方法である。なお、これらの方法を適宜組合せてハイブリッド樹脂を製造することも可能である。
このようなハイブリッド樹脂の製造に使用する2官能性重合開始剤としては、例えば下記開始剤であることが好ましい。
それらの中でも1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−n−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが絡み合い易い高架橋成分を製造する上で最も好ましい重合開始剤である。
尚、1段目で反応させて得られるビニル系共重合体は、ピーク分子量(Mp)が、好ましくは10000〜100000のもの、より好ましくは15000〜70000、更に好ましくは20000〜60000である。Mpが10000未満の場合、絡み合いによる高架橋成分の形成が減少し、耐オフセット性への効果が少なくなる。さらに、高架橋成分中への低軟化成分の取り込み量が減少し、低温領域において熱的な挙動を起こし易い成分が減少するために、ハーフトーン画像や厚紙に対する定着性が悪化する。Mpが100000を超える場合には、2段階目で不飽和ポリエステル樹脂との付加重合反応性が低下しフリーのビニル重合体が増加する。そのため、絡み合いによる高架橋成分の形成が減少し、耐オフセット性への効果が少なくなる。
本発明のトナーは、上記のような結着樹脂の他、着色剤を含んで成る。着色剤としては、カーボンブラックやその他従来より知られているあらゆる顔料や染料の一種又は二種以上を用いることができる。
染料としては、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C
.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントトブルー7、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6等がある。
顔料としては、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。
本発明のトナーをフルカラー画像形成用トナーとして使用する場合には、次の様な着色剤が挙げられる。マゼンタ用着色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、202、206、207、209、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35等が挙げられる。
上記マゼンタ顔料を単独で使用しても構わないが、染料と顔料を併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。マゼンタ用染料としては、C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27、C.I.ディスパースバイオレット1などの油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40、C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28などの塩基性染料が挙げられる。
シアン用着色顔料としては、C.I.ピグメントブルー2、3、15、16、17、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45又は下記構造を有するフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料などである。
イエロー用着色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、35、73、83、C.I.バットイエロー1、3、20などが挙げられる。
着色剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.1〜60質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜50質量部である。
(ii)任意成分
本発明のトナーは、上記必須成分の他に、従来トナーに使用されている任意成分を含有することができる。
本発明のトナーは、示差走査型熱量計(DSC)測定による昇温時の吸熱ピーク温度で規定される融点が60〜120℃である離型剤を含有することができる。離型剤の融点は好ましくは70〜115℃である。融点が60℃未満の場合はトナーの粘度が低下して離型効果が低下し、耐久による現像部材・クリーニング部材への汚染が発生してしまい、融点が120℃を超える場合は求める低温定着性が得られにくい。
該離型剤は結着樹脂100質量部に対して、1〜20質量部添加することが好ましい。1質量部未満の場合は望まれる離型効果が十分に得られず、20質量部を超える場合はトナー中での分散も悪く、感光体へのトナー付着や、現像部材・クリーニング部材の表面汚染などが起こり、トナー画像が劣化するなどの問題を引き起こし易くなる。
該離型剤としては、例えば、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス及びパラフィンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス、酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、それら脂肪族炭化水素系ワックスのブロック共重合物、カルナバワックス、サゾールワックス及びモンタン酸エステルワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したものが挙げられる。さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類の如き飽和直鎖脂肪酸類、ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸類、ステアリンアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコール類の如き飽和アルコール類、ソルビトールの如き多価アルコール類、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの)、脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類、ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物、植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物、炭素数12以上の長鎖アルキルアルコール又は長鎖アルキルカルボン酸等が挙げられる。
本発明において特に好ましく用いられる離型剤としては、脂肪族炭化水素系ワックスが挙げられる。このような脂肪族炭化水素系ワックスとしては、上記例示をさらに詳細に説明すれば、例えば、アルキレンを高圧下でラジカル重合し、又は低圧下でチーグラー触媒を用いて重合した低分子量のアルキレンポリマー、高分子量のアルキレンポリマーを熱分解して得られるアルキレンポリマー、一酸化炭素及び水素を含む合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分から得られる合成炭化水素ワックス及びそれを水素添加して得られる合成炭化水素ワックス、これらの脂肪族炭化水素系ワックスをプレス発汗法、溶剤法、真空蒸留の利用や分別結晶方式により分別したものが挙げられる。
前記脂肪族炭化水素系ワックスの母体としての炭化水素としては、例えば、金属酸化物系触媒(多くは二種以上の多元系)を使用した一酸化炭素と水素の反応によって合成されるもの(例えばジントール法、ヒドロコール法(流動触媒床を使用)によって合成された炭化水素化合物)、ワックス状炭化水素が多く得られるアーゲ法(同定触媒床を使用)により得られる炭素数が数百ぐらいまでの炭化水素、エチレン等のアルキレンをチーグラー触媒により重合した炭化水素が挙げられる。このような炭化水素の中でも、本発明では、分岐が少なくて小さく、飽和の長い直鎖状炭化水素であることが好ましく、特にアルキレンの重合によらない方法により合成された炭化水素がその分子量分布からも好ましい。
離型剤として、使用できる具体的な例としては、ビスコール(登録商標)330−P、550−P、660−P、TS−200 (三洋化成工業社)、ハイワックス400P、200P、100P、410P、420P、320P、220P、210P、110P(三井化学社)、サゾールH1、H2、C80、C105、C77(シューマン・サゾール社)、HNP−1、HNP−3、HNP−9、HNP−10、HNP−11、HNP−12(日本精鑞株式会社)、ユニリン(登録商標)350、425、550、700、ユニシッド(登録商標)、ユニシッド(登録商標)350、425、550、700(東洋ペトロライト社)、木ろう、蜜ろう、ライスワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス(株式会社セラリカNODAにて入手可能)等があげられる。
該離型剤を添加するタイミングは、トナー製造中の溶融混練時において添加しても良いが、結着樹脂製造時であっても良く、既存の方法から適宜選ばれる。また、これらの離型剤は単独で使用しても併用しても良い。
本発明のトナーは磁性トナーであっても非磁性トナーであっても良いが、高速機における耐久安定性などの点から磁性トナーであることが好ましい。
本発明で用いられる磁性材料としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトなどの酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む磁性酸化鉄、Fe、Co、Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl、Co、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bf、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W、Vのような金属との合金、及びこれらの混合物等が挙げられる。従来、四三酸化鉄(Fe3O4)、三二酸化鉄(γ−Fe2O3)、酸化鉄亜鉛(ZnFe2O4)、酸化鉄イットリウム(Y3Fe5O12)、酸化鉄カドミウム(Cd3F
e2O4)、酸化鉄ガドリニウム(Gd3Fe5O12)、酸化鉄銅(CuFe2O4)、酸化鉄鉛(PbFe12O19)、酸化鉄ニッケル(NiFe2O4)、酸化鉄ネオジム(NdFe2
O3)、酸化鉄バリウム(BaFe12O19)、酸化鉄マグネシウム(MgFe2O4)、酸
化鉄マンガン(MnFe2O4)、酸化鉄ランタン(LaFeO3)、鉄粉(Fe)、コバ
ルト粉(Co)、ニッケル粉(Ni)等が知られている。特に好適な磁性材料は、四三酸化鉄又はγ三二酸化鉄の微粉末である。また上述した磁性材料を単独で或いは2種以上の組合せで選択使用することもできる。
これらの磁性体は795.8kA/m印加での磁気特性が抗磁力Hc1.6〜12.0kA/m、飽和磁化σs50〜200Am2/kg(好ましくは50〜100Am2/kg)
、残留磁化σr2〜20Am2/kgのものが好ましい。磁性材料の磁気特性は、例えば25℃、外部磁場769kA/mの条件下において振動型磁力計、例えばVSM P−1−10(東英工業社製)を用いて測定することができる。
該磁性体は、結着樹脂100質量部に対して、10〜200質量部添加するのが好ましい。
本発明のトナーには、その帯電性を安定化させるために電荷制御剤を用いることができる。電荷制御剤は、その種類や他のトナー粒子構成材料の物性等によっても異なるが、一般に、トナー粒子中に結着樹脂100質量部当たり0.1〜10質量部含まれることが好ましく、0.1〜5質量部含まれることがより好ましい。このような電荷制御剤としては、トナーを負帯電性に制御するものと、正帯電性に制御するものとが知られており、トナーの種類や用途に応じて種々のものを一種又は二種以上用いることができる。
トナーを負帯電性に制御するものとしては、例えば有機金属錯体、キレート化合物が有効で、その例としては、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ヒドロキシカルボン酸又は芳香族ジカルボン酸の金属錯体又は金属塩、が挙げられる。その他にも、トナーを負帯電性に制御するものとしては、例えば芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩や無水物、エステル類やビスフェノール等のフェノール誘導体等が挙げられる。
トナーを正帯電性に制御するものとしては、例えば、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン酸、フェロシアン化合物等)、高級脂肪酸の金属塩、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド、ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート等が挙げられる。本発明ではこれらの一種又は二種以上組み合わせて用いることができる。トナーを正帯電性に制御するものとしては、これらの中でもニグロシン系化合物、四級アンモニウム塩等の電荷制御剤が特に好ましく用いられる。
使用できる具体的な例としては、負帯電用として好ましいものとしては、Spilon
Black TRH、T−77、T−95(保土谷化学社)、BONTRON(登録商標)S−34、S−44、S−54、E−84、E−88、E−89 (オリエント化学社)があげられ、正帯電用として好ましいものとしては、例えばTP−302、TP−415 (保土谷化学社)、BONTRON(登録商標) N−01、N−04、N−07、P−51(オリエント化学社)、コピーブルーPR(クラリアント社)が例示できる。
また、電荷制御樹脂も用いることができ、上述の電荷制御剤と併用することもできる。
本発明のトナーの帯電性は正負どちらでも構わないが、結着樹脂であるポリエステル樹脂自体は負帯電性が高いため、負帯電性トナーであることが好ましい。
本発明のトナーに流動性向上剤として無機微粉末を使用しても良い。該流動性向上剤としては、トナー粒子に外添することにより、流動性が添加前後を比較すると増加し得るものならば使用可能である。例えば、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末等のフッ素系樹脂粉末、湿式製法シリカ、乾式製法シリカ等の微粉末シリカ、それらシリカをシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等により表面処理を施した処理シリカ等がある。好ましい流動性向上剤としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるもので、従来公知の技術によって製造されるものである。例えば、四塩化ケイ素ガスの酸素、水素中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次の様なものである。
また、この製造工程において、例えば塩化アルミニウム又は塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、それらもシリカとして包含する。その粒径は、平均の一次粒径として、0.001〜2μmの範囲内であることが好ましく、特に好ましくは、0.002〜0.2μmの範囲内のシリカ微粉体を使用するのが良い。
ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば以下の様な商品名で市販されているものがある。
AEROSiL(日本アエロジル杜)
AEROSiL 130
AEROSiL 200
AEROSiL 300
AEROSiL 380
AEROSiL TT600
AEROSiL MOX170
AEROSiL MOX80
AEROSiL COK84
Ca−O−SiL(CABOT Co.社)
Ca−O−SiL M−5
Ca−O−SiL MS−7
Ca−O−SiL MS−75
Ca−O−SiL HS−5
Ca−O−SiL EH−5
Wacker HDK N 20(WACKER−CHEMIE GNBH社)
Wacker HDK N 20 V15
Wacker HDK N 20 N20E
Wacker HDK N 20 T30
Wacker HDK N 20 T40
D−CFine Silica(ダウコーニングCo.社)
Fransol(Francil社)
さらには、該ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたシリカ微粉体に疎水化処理した処理シリカ微粉体を用いることが好ましい。該処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって滴定された疎水化度が30〜80の範囲の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。
疎水化方法としては、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する。そのような有機ケイ素化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフエニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシ
シラン、ジフェニルジエトキシシラン、1−ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のSiに結合した水酸基を含有するジメチルポリシロキサン等が挙げられる。これらは1種あるいは2種以上の混合物で用いられる。
該無機微粉体は、シリコーンオイル処理されても良く、また、上記疎水化処理と併せて処理されても良い。
好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度が30〜1000mm2/s
のものが用いられ、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が特に好ましい。
シリコーンオイル処理の方法としては、例えばシランカップリング剤で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサーの如き混合機を用いて直接混合する方法、べースとなるシリカ微粉体にシリコーンオイルを噴霧する方法、あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、シリカ微粉体を加え混合し溶剤を除去する方法を用いることが可能である。シリコーンオイル処理シリカは、シリコーンオイルの処理後にシリカを不活性ガス中で200℃以上(より好ましくは250℃以上)に加熱し表面のコートを安定化させることがより好ましい。
窒素原子を有するアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシン、ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジプロピルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、モノブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジオクチルアミノプロピルジメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルジメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルモノメトキシシラン、ジメチルアミノフェニルトリエトキシシラン、トリメトキシシリル−γ−プロピルフェニルアミン、トリメトキシシリル−γ−プロピルベンジルアミンの如きシランカップリング剤も単独あるいは併用して使用される。好ましいシランカップリング剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)が挙げられる。
本発明においては、シリカをあらかじめ、カップリング剤で処理した後にシリコーンオイルで処理する方法、又は、シリカをカップリング剤とシリコーンオイルで同時に処理する方法によって処理されたものが好ましい。
流動性向上剤は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m2/g以上、好
ましくは50m2/g以上のものが良好な結果を与える。トナー粒子100質量部に対し
て流動性向上剤0.01〜8質量部、好ましくは0.1〜4質量部使用するのが良い。
また、本発明中のトナーには、必要に応じてそれ以外の外部添加剤を添加してもよい。例えば帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、滑剤、研磨剤等の働きをする樹脂微粒子や無機微粒子である。例えばテフロン(登録商標),ステアリン酸亜鉛,ポリ弗化ビニリデンの如き滑剤、中でもポリ弗化ビニリデンが好ましい。或いは酸化セリウム,炭化ケイ素,チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、中でもチタン酸ストロンチウムが好ましい。或いは例えば酸化チタン,酸化アルミニウム等の流動性付与剤、中でも特に疎水性のものが好ましい。ケーキング防止剤、或いは例えばカーボンブラック,酸化亜鉛,酸化アンチモン,酸化スズ等の導電性付与剤、また逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。
トナーと混合される樹脂微粒子又は無機微粉体又は疎水性無機微粉体などは、トナー100質量部に対して、0.1〜5質量部使用するのが好ましい。
(iii)物性の測定方法
以下に、本発明に係る物性の測定方法例を示す。
[THF不溶分の測定]
樹脂約1.0gを秤量(W1g)し、円筒ろ紙(例えばNo.86Rサイズ28×100mm東洋ろ紙社製)に入れてソックスレー抽出器にかけ、溶媒としてTHF200mlを用いて、16時間抽出する。このとき、溶媒の抽出サイクルが約4分〜5分に一回になるような還流速度で抽出を行う。抽出終了後、円筒ろ紙を取り出し、40℃で8時間真空乾燥し、抽出残分を秤量する(W2g)。次にトナー中の焼却残灰分の重さを求める(W3g)。焼却残灰分は以下の手順で求める。予め精秤した30mlの磁性るつぼに約2gの試料を入れ精秤し、試料の質量(Wag)を精秤する。るつぼを電気炉に入れ約900℃で約3時間加熱し、電気炉中で放冷し常温下でデシケーター中に1時間以上放冷しるつぼの質量を精秤する。ここから焼却残灰分(Wbg)を求める。
この含有率から試料の焼却残灰分の質量(W3g)が求められる。
THF不溶分は下記式から求められる。
尚、結着樹脂等の樹脂以外の成分を含まない試料のTHF不溶分の測定は、所定量(W1g)を秤量した樹脂を上記と同じ工程で抽出残分(W2g)を求め、下記式より求められる。
[GPCによる分子量分布の測定]
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、THF試料溶液を約100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント値との関係から算出した。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては例えば、102〜107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。例えば、東ソー社製TSK標準ポリスチレン(F−850,F−450,F−288,F−128,F−80,F−40,F−20,F−10,F−4,F−2,F−1,A−5000,A−2500,A−1000,A−500)を使用することが出来る。また、検出器はRI(屈折率)検出器を用いる。尚、カラムとしては市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807、800Pの組み合せや、東ソー社製のTSKgel
G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TS
Kgurd columnの組み合せを挙げることができる。
また、試料は以下のようにして作製する。
試料をTHF中に入れ、25℃で数時間放置した後、十分振とうしTHFとよく混ぜ(試料の合一体が無くなるまで)、更に12時間以上静置する。その時THF中への放置時間が24時間となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2〜0.5μm、例えばマイショリディスクH−25−2(東ソー社製)など使用できる。)を通過させたものをGPCの試料とする。また、試料濃度は、樹脂成分が0.5〜5mg/mlとなるように調整する。この25℃で24時間放置した試料溶液の測定によって得られた分子量分布におけるメインピークをMpBとする。
また、上記THF不溶分測定の際に得られたTHFにより抽出された溶液のサンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2〜0.5μm、例えばマイショリディスクH−25−2(東ソー社製)など使用できる。)を通過させたものをGPCの試料とし、その測定によって得られた分子量分布におけるメインピークをMpAとする。
[磁性トナーの粒度分布]
磁性トナーの粒度分布は種々の方法によって測定できるが、本発明においてはコールターカウンターを用いて行う。測定装置としては、コールターマルチサイザーIIE(コールター社製)を用いる。電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて、約1%NaCl水溶液を調整する。例えば、ISOTON(R)−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定方法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として、界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を、0.1〜5ml加え、さらに測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子の体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出する。このとき、測定されたデータは粒径1.59〜64.0μmを256分割したチャンネルで得られる。その256Chで得られたデータを16分割で処理し、本発明に係るところの体積分布から求めた重量平均粒径(D4)(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)、個数分布から求めた個数平均粒径(D1)、及び体積分布から求めた重量基準の粗粉量(10.1μm以上)、個数分布から求めた個数基準の微粉個数(4.00μm以下)を求める。
[樹脂の軟化点測定方法]
JIS K 7210にのっとり、高化式フローテスターにより測定されるものを指す。具体的な測定方法を以下に示す。高化式フローテスター(島津製作所製)を用いて1cm3の試料を昇温速度4℃/minで加熱しながら、プランジャーにより980N/m2(10kg/cm2)の荷重を与え
、直径1mm、長さ1mmのノズルを押し出すようにし、これにより、プランジャー降下量(流れ値)−温度曲線を描き、そのS字曲線の高さをhとするとき、h/2に対応する温度(樹脂の半分が流出した温度)を軟化点とする。
[樹脂のガラス転移温度(Tg)及びワックスの融点の測定]
測定装置 :示差走査型熱量計(DSC)、MDSC−2920(TA Instruments社製)ASTM D3418-82に準じて測定する。
測定試料は2〜10mg、好ましくは3mgを精密に秤量する。これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用いて、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10
℃/minで常温常湿下測定を行う。2回目の昇温過程で得られる、温度30〜200℃の範囲に
おけるDSC曲線をもって解析を行う。
ガラス転移温度(Tg)については、得られたDSC曲線より中点法で解析を行った値を用
いる。また、ワックスの融点ついては、得られたDSC曲線の吸熱メインピークの温度値を
用いる。
(3)製造方法
本発明のトナーを作製するには、上記したような特定の構成を有する結着樹脂、着色剤、その他の添加剤等を、通常のトナーの製造方法に従って処理することにより、製造することができる。具体的には、ヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機により十分混合してから、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのような熱混練機を用いて溶融混練し、冷却固化後粉砕及び分級を行い、更に必要に応じて所望の添加剤をヘンシェルミキサー等の混合機により十分混合し、本発明のトナーを得ることができる。
例えば、混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)、スーパーミキサー(カワタ社製)、リボコーン(大川原製作所社製)、ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製)、スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製)、レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられる。
例えば、混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製)、ブス・コ・ニーダー(Buss社製)、TEM型押し出し機(東芝機械社製)、TEX二軸混練機(日本製鋼所社製)、PCM混練機(池貝鉄工所社製)、三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製)、ニーデックス(三井鉱山社製)、MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製)、バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられる。
例えば、粉砕機としては、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製)、IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製)、クロスジェットミル(栗本鉄工所社製)、ウルマックス(日曹エンジニアリング社製)、SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製)、クリプトロン(川崎重工業社製)、ターボミル(ターボ工業業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)が挙げられる。
例えば、分級機としては、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製)、ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製)、ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチックエ業社製)、YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられる。
例えば、粗粒などをふるい分けるために用いられる篩い装置(分級機)としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製)、レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社)、バイブラソニックシステム(ダルトン社製)、ソニクリーン(新東工業社製)、ターボスクリーナー(ターボエ業社製)、ミクロシフター(槙野産業社製)、円形振動篩い等が挙げられる。
また、本発明のトナー粒子は、画像濃度、解像度などの点から、重量平均粒径が3〜9μmであることが好ましい。
以上、本発明の基本的な構成と特色について述べたが、以下、実施例にもとづいて具体的に本発明について説明する。しかしながら、これによって本発明の実施の態様がなんら限定されるものではない。実施例中の部数は特にことわらない限り質量部である。
<結着樹脂1の製造例>
表1に記載のポリエステルモノマーを四つ口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び攪拌装置を装着して窒素雰囲気下にてポリエステル重合触媒と共に230℃に昇温して縮重合反応を行った。反応終了後、反応物を容器から取り出し、冷却、粉砕してポリエステル樹脂を得た。
このポリエステル樹脂70質量部を再度フラスコに入れ、140℃に昇温して溶解したところに、表1に記載のビニル系共重合モノマー30質量部と重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.2質量部を混合したものを、滴下ロートから8時間かけて滴下した。140℃に保持したまま4時間反応を行った後、180℃で4時間かけて減圧蒸留することで、残存するモノマーを除去すると同時にスチレンアクリル樹脂と不飽和ポリエステル間のラジカル反応による結合及びエステル結合によるハイブリッド化を行った。反応終了後、反応物を容器から取り出し、冷却、粉砕して結着樹脂1を得た。
この結着樹脂1の諸物性については表2に示した通りである。
<結着樹脂2の製造例>
四つ口フラスコ内にキシレン200質量部を投入し、攪拌しながら容器内を充分に窒素で置換した後、100℃に昇温する。この温度下で、表1に記載のビニル系共重合モノマー(第一段階重合用モノマー)100質量部及び2官能性重合開始剤として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン2質量部の混合液を4時間かけて滴下した後、4時間保持し重合を完了し、末端にパーオキサイドを有するピーク分子量25000のスチレンアクリルポリマーを得た。
次に、表1に記載のポリエステルモノマーを重合触媒と共に四つ口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び攪拌装置を装着して窒素雰囲気下にて230℃に昇温して縮重合反応を行った。反応終了後、反応物を容器から取り出し、冷却、粉砕してポリエステル樹脂を得た。
このポリエステル樹脂70質量部を再度フラスコに入れ、120℃に昇温して溶解したところに、表1に記載のビニル系共重合モノマー15質量部と先に得られた末端にパーオキサイドを有するスチレンアクリルポリマー15質量部と重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.1質量部を混合したものを、滴下ロートから1時間かけて滴下した。120℃に保持したまま7時間反応を行った後、常圧蒸留によりキシレン溶媒を除去し、その後180℃で4時間かけて減圧蒸留することで残存するモノマーを除去すると同時にスチレンアクリル樹脂と不飽和ポリエステル間のラジカル反応による結合及びエステル結合によるハイブリッド化を行った。反応終了後、反応物を容器から取り出し、冷却、粉砕して結着樹脂2を得た。
この結着樹脂2の諸物性については表2に示した通りである。
<結着樹脂3の製造例>
表1に記載のポリエステルモノマーを重合触媒と共に四つ口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び攪拌装置を装着して窒素雰囲気下にて230℃に昇温して縮重合反応を行った。反応終了後、反応物を容器から取り出し、冷却、粉砕してポリエステル樹脂を得た。
このポリエステル樹脂70質量部を再度フラスコに入れ、180℃に昇温して溶解したところに、表1に記載のビニル系共重合モノマー30質量部と重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.2質量部を混合したものを、滴下ロートから4.8時間かけて滴下した。180℃に保持したまま2時間反応を行った後、150℃で3時間かけて減圧蒸留することで、残存するモノマーを除去すると同時にスチレンアクリル樹脂とポリエステル間のエステル結合によるハイブリッド化を行った。反応終了後、反応物を容器から取り出し、冷却、粉砕して結着樹脂3を得た。
この結着樹脂3の諸物性については表2に示した通りである。
<結着樹脂4の製造例>
表1に記載のポリエステルモノマーを重合触媒と共に四つ口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び攪拌装置を装着して窒素雰囲気下にて135℃で攪拌する。そこに、表1に記載のビニル系共重合モノマーと重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド2mol%を混合したものを、滴下ロートから4時間かけて滴下した。その後、135℃で5時間反応した後、230℃に昇温して縮重合反応を行った。反応終了後、反応物を容器から取り出し、冷却、粉砕して結着樹脂4を得た。
この結着樹脂4の諸物性については表2に示した通りである。
<結着樹脂5〜9の製造例>
表1に記載の結着樹脂5〜9のモノマーをそれぞれ用い、結着樹脂4の製造方法と同様にして、結着樹脂5〜9を得た。これらの樹脂の諸物性については表2に示した通りである。
<結着樹脂10の製造例>
表1に記載のモノマーを用い、結着樹脂1の製造方法と同様にして、結着樹脂10を得た。この樹脂の諸物性については表2に示した通りである。
<結着樹脂11の製造例>
表1に記載のモノマーを用い、結着樹脂3の製造方法と同様にして、結着樹脂11を得た。この樹脂の諸物性については表2に示した通りである。
<結着樹脂12の製造例>
表1に記載のモノマーを用い、結着樹脂2の製造方法と同様にして、結着樹脂12を得た。ただし、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−n−ブチルシクロヘキサンを重合開始剤として使用した。この樹脂の諸物性については表2に示した通りである。
<結着樹脂13の製造例>
表1に記載のモノマーを用い、結着樹脂2の製造方法と同様にして、結着樹脂13を得た。ただし、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを重合開始剤として使用した。この樹脂の諸物性については表2に示した通りである。
[実施例1]
・結着樹脂1 70質量部
・結着樹脂3 30質量部
・磁性酸化鉄粒子A(平均粒径0.14μm、抗磁力Hc=11.5kA/m、飽和磁化σs=90Am2/kg、残
留磁化σr=16Am2/kg)
90質量部
・ワックスc 4質量部
・荷電制御剤−1 2質量部
上記材料をヘンシェルミキサーで前混合した後、二軸混練押し出し機によって、溶融混練した。この時、混練された樹脂の温度が150℃になるように滞留時間をコントロールした。
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、ターボミルで粉砕し、得られた微粉砕粉末を、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径7.3μmのトナー粒子を得た。トナー粒子100質量部に対し、疎水性シリカ微粉体(BET140m2/g)を1.0質量部とチタン酸ストロンチウム3.0質量部を外添混合し、目開き150μmのメッシュで篩い、トナー1を得た。
トナー内添処方及び物性値を表3、4に記す。荷電制御剤の構造を以下に示す。
市販の複写機(IR−105 キヤノン社製)の定着器(熱ローラー定着器)を外部へ取り出し、複写機外でも動作し、定着ローラー温度、プロセススピード、加圧力を任意に設定可能になるように改造した外部定着器を用い、トナー1の定着性、耐オフセット性、OHT定着性の評価を行った。
定着性はプロセススピード600mm/sec、ローラー温度150℃、加圧力30kgf/cm2の条件で90g/m2紙を用い、ベタ黒とハーフトーンの2種類の未定着画像を通紙し、シルボン紙により定着画像を摺擦し、摺擦前後での画像濃度の低下率(%)で評価した。
定着性の評価基準は以下のとおりである。
A(良) :10%未満
B(可) :10%以上20%未満
C(劣る):20%以上
評価結果を表5に示す。
耐オフセット性はプロセススピード50mm/sec、ローラー温度240℃、加圧力50kgf/cm2の条件で50g/m2紙を用い、画像面積率約5%の未定着画像を通紙し、定着画像上の汚れの程度により評価した。
耐オフセット性の評価基準は以下のとおりである。
A:良好
B:わずかに汚れる程度
C:画像に影響する汚れ発生
評価結果を表5に示す。
OHT定着性は、プロセススピード600mm/sec、ローラー温度180℃、加圧力50kgf/cm2の条件でPPC用OHPフィルムタイプA(キヤノン製)を用い、ベタ黒の未定着画像を通紙し、シルボン紙により定着画像を摺擦し、摺擦前後での画像濃度の低下率(%)で評価した。
OHT定着性の評価基準は以下のとおりである。
A(良) :10%未満
B(可) :10%以上20%未満
C(劣る):20%以上
評価結果を表5に示す。
また、フィルムを介して記録材を加熱体に密着させる加圧部材からなる定着装置を使用している市販のLBPプリンター(Laser Jet 4300、HP社製)の定着器(低消費電力定着器)を外部へ取り出し、プリンター外でも動作し、定着フィルム温度を任意に設定可能にし、プロセススピードを350mm/secとなるように改造した外部定着器を用い、定着性、耐オフセット性、OHT定着性の評価を行った。
定着性は、加熱体温度140℃で75g/m2紙を用い、ベタ黒とハーフトーンの2種類の未定着画像を通紙し、シルボン紙によりその定着画像を摺擦し、摺擦前後での画像濃度の低下率(%)で評価した。評価基準は上記のとおりである。評価結果を表5に示す。
耐オフセット性は、加熱体温度240℃で50g/m2紙を用い、画像面積率約5%の未定着画像を通紙し、定着画像上の汚れの程度により評価した。評価基準は上記のとおりである。評価結果を表5に示す。
OHT定着性は、加熱体温度170℃、加圧力50kgf/cm2の条件でPPC用OHPフィルムタイプA(キヤノン製)を用い、ベタ黒の未定着画像を通紙し、シルボン紙によりその定着画像を摺擦し、摺擦前後での画像濃度の低下率(%)で評価した。評価基準は上記のとおりである。評価結果を表5に示す。
また、保存性についてはトナー10gを50ccのポリカップに計りとり、50gの重りを載せた状態で50℃の恒温槽に7日間放置した後のブロッキング性を以下の評価基準を用いて目視評価を行った。
A : 全く固まっている様子がない
B : カップを回すとすぐほぐれる
C : 塊があるが、カップを回すうちに小さくなってほぐれてくる
D : カップを回してほぐしても塊が残る
E : 大きな塊があり、カップを回してもほぐれない
評価結果を表5に示す。
市販の複写機(IR−6010 キヤノン社製)をプロセススピードを410mm/sec)となるように改造し、23℃、5%RHの環境と23℃、60%RHの環境と32℃、80%RHの環境で、印字比率4%のテストチャートを用いて、トナー1の20万枚の連続プリント試験を行い、画像濃度及びカブリについて評価した。
画像濃度はマクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して、反射濃度測定を行い、5mm角の画像を測定した。評価結果を表6〜8に示す。
カブリは反射濃度計(リフレクトメーター モデル TC−6DS 東京電色社製)を用いて濃度測定を行い、画像形成後の白地部反射濃度最悪値をDs、画像形成前の転写材の反射平均濃度をDrとし、Ds−Drをカブリ量として評価を行った。数値の少ない方がカブリ抑制が良い。これらの評価を、初期(1枚時)と、20万枚時に行った。評価結果を表6〜8に示す。
[実施例2〜9]
表4に記載の実施例2〜9の処方にそれぞれ従い、実施例1と同様にして、トナー2〜9を作製した。得られたトナー2〜9の物性値を表4に示す。定着性、耐オフセット性、OHT定着性、保存性について実施例1と同様の試験をした結果を表5に示す。連続プリント試験について実施例1と同様の試験をした結果を表6〜8に示す。
[比較例1〜4]
表4に記載の比較例1〜4の処方にそれぞれ従い、実施例1と同様にして、トナー10〜13を作製した。得られたトナー10〜13の物性値を表4に示す。定着性、耐オフセット性、OHT定着性、保存性について実施例1と同様の試験をした結果を表5に示す。連続プリント試験について実施例1と同様の試験をした結果を表6〜8に示す。