請求項1記載の発明は、グランドに接続するためのグランド接点と、前記グランド接点と第1の接点で接続する第1のリード線及び第2のリード線と、前記第1のリード線に第2の接点で接続した複数の第1の導電体と、前記第2のリード線に第2の接点で接続した複数の第2の導電体とを備え、複数の前記第2の接点は前記第1の導電体及び前記第2の導電体の一方の端部であり、前記第1の導電体及び前記第2の導電体は互いに複数の点で交差し、この交差した点では互いに電気的に接続されておらず、複数の前記第1の導電体及び複数の前記第2の導電体の線幅は0.05mmから5mmの範囲で、前記リード線のうち前記第2の接点が位置する領域の辺の長さを、前記第2の接点の数で除して得られる複数の前記導電体の平均間隔が、4mmから50mmの範囲からなることを特徴とする電界シールドであるから、高周波の電磁波発生器から放出される電磁波の近傍磁界と電界シールドとの磁気的結合を小さくできて、近傍磁界の減衰を抑制したまま遠方電界を減衰できる。
以下に本発明の実施の形態を、図面を参照にしながら述べる。
(実施の形態1)
本発明の参考例として図1に電界シールドの概略斜視図を示す。電界シールド1は、複数の導電体2と、複数の導電体2を接地するためのグランド接点3と、複数の導電体2とグランド接点3とを接続するリード線4と、複数の導電体2とグランド接点3とリード線4とを保持するための支持体5とから構成されている。なお、図中の黒丸印は、導電体2の間で電気的に接続されていることを示している。従って、複数の導電体2が交差している部分で、黒丸印の無い部分は、電気的な接続が無い互いに絶縁されている状態を示している。複数の導電体2は、絶縁被覆を施した線を用いた。
図1に示したように、複数の導電体2はそれぞれ1箇所で、グランド接点3につながるリード線4と、電気的に接触している。これは、電気的に見た場合、複数の導電体2の何れにおいても、導電体2上の任意の点からグランド接点3へ、導電体2上をたどる場合の経路が一意に定まることを示している。また、これは複数の導電体2の各々又は個々で電気的に接続された閉ループを形成しないことを意味する。複数の導電体2とリード線4とは半田付けにより電気的な接触を得た。リード線4には複数の導電体2との半田付けが容易な様に絶縁被覆なしの銅線を用いた。グランド接点3は、実機で使用する際に、実機のグランドと電気的接続を得るための接点である。グランド接点3は、実機のグランドと電気的な接続を取ることができれば良く、その方法には、機械的な接続による方法や、半田付けによる方法などがあり、その方法に応じた構成をとれば良いが、半田付けでグランドと電気的な接触を得る方法を選定し、半田付けがやり易い金属板で構成した。複数の導電体2とリード線4、及びグランド接点3は、樹脂基板からなる支持体5上に接着固定して電界シールドを形成した。
図2は参考例として、電界シールドの部分断面図を示す。電界シールドは、複数の導電体2の線幅6、複数の導電体2の平均間隔7とで規定されている。平均間隔7は、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する辺の長さを、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する点の数で、除して得られるものである。
複数の導電体2の線幅6と複数の導電体2の平均間隔7を変えて電界シールド1を作成して、複数の導電体2の線幅6と複数の導電体2の平均間隔7による電界シールド1の特性の変化について調べた。なお、複数の導電体2にバルク線を用いたが、バルク線の場合の線幅2は、バルク線の最大幅、即ちバルク線の直径を意味する。
評価試験は次のようにして行った。参考例として、評価試験装置の構成概略図を図3に示す。評価試験装置は、電磁波を放出させるためのループアンテナ8、ループアンテナ駆動用電源9、磁界強度計測器10、電界強度計測器11とから構成される。試験体である電界シールド1は、ループアンテナ8と磁界強度計測器10との間の所定の位置に配置される。ループアンテナ8を10mhzの周波数で駆動し、磁界強度と電界強度とを計測した。なお、電界シールド1を評価試験装置に取りつける際に、電界シールド1のグランド接点3は、評価試験装置のグランドと電気的接続を取った。
参考例として、図4に作製した電界シールド1の遠方電界強度の減衰特性を示した。図4から、複数の導電体2の平均間隔7が狭くなるにつれて、遠方電界強度の減衰量は大きくなっていくことがわかる。即ち、遠方電界強度を減衰させるためには、複数の導電体2の平均間隔7を狭くしていけば良いことがわかる。また、遠方電界強度の減衰量と複数の導電体2の平均間隔7との関係は複数の導電体2の平均間隔7が50mm近辺に変曲点があることがわかる。すなわち、複数の導電体2の平均間隔7が50mm程度よりも広くなると、遠方電界強度の減衰量の変化は小さくなってくる。今、求められるのは、遠方電界強度を減衰させることである。従って、遠方電界強度の減衰を効果的に大きく取れるような複数の導電体2の平均間隔7は、50mm程度以下とすることが必要であることがわかる。
また、参考例として、図5に電界シールド1の近傍磁界強度の減衰特性を示した。近傍磁界強度は複数の導電体2の平均間隔7が広い領域では安定しているが、複数の導電体2の平均間隔7が10mm程度よりも小さくなってくると、徐々に近傍磁界強度の減衰量が大きくなってくることがわかる。複数の導電体2の平均間隔7が3mm程度となると急激に近傍磁界強度の減衰量は大きくなることが示される。今、電界シールド1に求められる特性は、近傍磁界強度の減衰ができるだけ小さいことである。従って、近傍磁界強度の減衰量を小さく保つためには、複数の導電体2の平均間隔7を4mm程度以上とすることが必要であることがわかる。
また、参考例として、複数の導電体2の線幅6を変えた場合の近傍磁界強度の変化についての計算機シミュレーション結果を図6に示した。複数の導電体2の線幅6が狭くなるにつれて近傍磁界強度は大きくなることが示される。逆に、複数の導電体2の線幅6が広がると近傍磁界強度は減少してくることが示される。今、電界シールド1に求められる特性は、近傍磁界強度の減衰が小さいことである。図6より複数の導電体2の線幅6が5mm程度以上となると、複数の導電体2の線幅6に対して磁界強度の変化は小さくなることが示される。従
って、近傍磁界強度の減衰を小さく抑えるためには、複数の導電体2の線幅6は、5mm程度より小さいことが必要である。なお、複数の導電体2の線幅6は、電界シールド1の法線方向から導電体を見た場合の導電体の線幅6である。例えば、導電体が円柱状の線である場合は、その直径に相当することになる。
この結果より、近傍磁界強度の減衰を大きくすることなく透過させるためには、電界シールド1の複数の導電体2の線幅6は、小さい方が好ましいこととなる。しかしながら、例えばバルク線で線幅6、即ち線径を小さくしていった場合、切れ易いなど取り扱い上の問題が発生する。この点を考慮した場合、複数の導電体2の線幅6は、0.05mm程度より大きい方が望ましいことになる。なお、線幅6が小さい場合は、あらかじめ、細線を集合線としたリッツ線を用いると、細線の特性、即ち近傍磁界強度を効率良く透過する特性を保持したままで、電界シールド1を作製する際の線の取り扱いは容易になるので、生産性の向上には有効である。
以上より、近傍磁界を透過し遠方電界を遮蔽する電界シールド1の、複数の導電体2が満足すべき複数の導電体2の線幅6の範囲と、複数の導電体2の平均間隔7の範囲の満たすべき条件が明確になった。即ち、近傍磁界を透過し遠方電界を遮蔽する電界シールド1の、複数の導電体2は、複数の導電体2の線幅は0.05mm程度から5mm程度の範囲で、複数の導電体2の平均間隔7は4mmから50mmの範囲にあれば良い。
なお、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する辺の長さを、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する点の数で、除して得られる平均間隔7を用いたのは以下の理由による。即ち、複数の導電体2の配置は、隣接する導電体同士が平行に配置されていなくても、殆ど問題の無いシールド特性を示すことがわかったためである。シールドすべき面に対して、複数の導電体2を配する場合、導電体2の配置は、極端に偏らせて配置しない限りは、ここで用いた平均間隔の7範囲で複数の導電体2を配置すれば良いことになる。
なお、前記した電界シールドの条件から外れて電界シールドを作製した場合、以下のような問題が発生することになる。
例えば、複数の導電体2に線幅6を0.05mm程度以下とした場合は、近傍磁界の透過性に関しては何等の問題を発生しないが、導電体2は非常に断線し易いものとなるため、取り扱いが困難で、量産性上の問題が発生することになる。また、複数の導電体2に線幅6を5mm程度より大きいものを使用すると、複数の導電体2と近傍磁界とが結合するようになり、電界シールド1の近傍磁界の透過性が劣化したものとなってくる。また、複数の導電体2の線幅5mm程度以上では、複数の導電体2の平均間隔7を変えたとしても複数の導電体2自体が近傍磁界と結合し易くなるために、近傍磁界の透過性を向上させることは困難となってくる。
また、例えば、複数の導電体2の平均間隔7を4mm程度よりも小さくした場合、複数の導電体2と近傍磁界との結合が、影響を与える程度に大きくなり、電界シールド1の近傍磁界の透過性が劣化したものとなってくる。更に例えば、複数の導電体2の平均間隔7を50mm程度よりも広くした場合、遠方電界の透過性が大きくなり、本来遮蔽すべき遠方電界のシールド性が劣化することになる。
以上をまとめると、遠方電界を遮蔽して、近傍磁界を透過するような電界シールド1は、複数の導電体2の何れにおいても、導電体2上の任意の点からグランド接点3へ、導電体2上をたどる場合の経路が一意に定まる電界シールド1、もしくは複数の導電体2が、閉ループを形成しないようにグランド接点3に結合されている電界シールド1であって、複数の導電体の線幅は0.05mmから5mmの範囲で、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する辺の長さを、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する点の数で、除して得られる複数の導電体の平均間隔が、4mmから50mmの範囲でなければならないのである。
なお、ここで得られた条件に基づき、線径が0.35mmで導電体の平均間隔を20mmの電界シールドを作製して、一辺が150mmのループアンテナを有する実機通信機にセットして近傍磁界の強度と遠方電界の減衰量とを調べた結果を(表1)に示す。
(表1)より、実機通信機においても、近傍磁界を透過し遠方電界を遮蔽できる電界シールドとして機能することが確認できる。
なお、電界シールド1をバルク線を用いて作製したが、電界シールドは1、複数の導電体2と、グランドに接続するためのグランド接点3と、複数の導電体2とグランド接点3とを接続するリード線4とを備え、複数の導電体2はリード線4を介してグランド接点3と電気的に接続されて構成され、複数の導電体2は各々の導電体2の任意の点からリード線4を経てグランド接点3へ至る経路が一意的に定まる様に配されて、複数の導電体の線幅は0.05mmから5mmの範囲で、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する辺の長さを、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する点の数で、除して得られる複数の導電体の平均間隔が、4mmから50mmの範囲であれば複数の導電体2はバルク線にこだわるものではない。
例えば、プリント配線基板を用いて作製しても、電界を遮蔽して磁界を透過するという電界シールド特性は何等変わらない。プリント配線板にエッチング処理を用いて電界シールド1を作製する製法は生産性に優れたものである。しかしながら、複数の導電体2の線幅6は、バルク線のように0.05mmと細くするのは工法上厳しいものとなってくる。プリント配線板にエッチング処理により安定して作製できる複数の導電体2の線幅は、0.2mm程度以上となるが、これは複数の導電体2が満たすべき条件を十分満たすものであり、電界を遮蔽し磁界を減衰なく透過する特性を満足する。
なお、導電体2の線幅が5mm以下の条件に対して、線径5mm程度の導電体2を用いても、磁界の透過性及び電界の遮蔽性は問題ないのであるが、線径5mm程度の導電体2の場合は導電体自体の剛性が大きくなり取り扱い性に問題が出てくることになる。このような場合は、線幅5mm程度の、例えば導電性の箔体等を用いて電界シールド1を構成すれば、磁界の透過性及び電界の遮蔽性を維持したまま、取り扱い性も向上する。
なお、複数の導電体2とグランド接点3とリード線4を樹脂製の支持体5上に配置、接着固定して電界シールド1を形成したが、支持体5上への固定の方法は、接着に限るものではなく、例えば支持体5上に導電体2をからげ固定ができる、からげピンを設けておけば、複数の導電体2はこのからげピンに巻きつけ固定することで電界シール1ドを形成することができる。この際、複数の導電体2の配置は、複数の導電体2を電気的に見た場合、複数の導電体2の何れにおいても、導電体2上の任意の点からグランド接点3へ導電体2上をたどる場合の経路が一意に定まる配置、或いは複数の導電体2の各々又は個々で電気的に接続された閉ループを形成しない配置とし、複数の導電体の線幅は0.05mmから5mmの範囲で、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する辺の長さを、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する点の数で、除して得られる複数の導電体の平均間隔が、4mmから50mmの範囲であれば何等問題はない。
また、縦方向に導電体2を配置して電界シールド1を構成したが、導電体2の配置は、縦方向に限る必要性は無く、例えば、図7〜図9に示したような構成でも構わない。要は電磁波発生部から発生される電磁波の強度と所望のシールド特性に応じて導電体2を配置すれば良く、その際に複数の導電体2を電気的に見た場合、複数の導電体2の何れにおいても、導電体2上の任意の点からグランド接点3へ導電体2上をたどる場合の経路が一意に定まる配置、或いは複数の導電体2の各々又は個々で電気的に接続された閉ループを形成しない配置とし、複数の導電体の線幅は0.05mmから5mmの範囲で、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する辺の長さを、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する点の数で、除して得られる複数の導電体の平均間隔が、4mmから50mmの範囲とすれば、磁界を透過し電界を遮蔽する電界シールドの基本的特性に対して何等の問題はない。
また、複数の導電体2とグランド接点3とリード線4とを樹脂製の支持体5上に配置、接着固定して電界シールド1を形成したがこれは、電界シールド1を取り扱い易くするために支持体5上に配置、接着固定したのであり、電界シールド1としての特性への影響に関して支持体5は必ずしも必要なものではない。例えば、参考例として図10に模式的に示したように、縦と横に導電体が交差するような導電体2の配置の場合、導電体を編んで構成しても、複数の導電体2を電気的に見た場合、複数の導電体2の何れにおいても、導電体2上の任意の点からグランド接点3へ導電体2上をたどる場合の経路が一意に定まる配置、或いは複数の導電体2の各々又は個々で電気的に接続された閉ループを形成しない配置とし、複数の導電体の線幅は0.05mmから5mmの範囲で、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する辺の長さを、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する点の数で、除して得られる複数の導電体の平均間隔が、4mmから50mmの範囲とすれば何等の問題はない。支持体5を有しない場合、リード線4とグランド接点3の取り扱いは、例えば複数の導電体2と共に編みこんで構成すれば良い。リード線4の機能は、複数の導電体2とグランド接点3とを電気的に接合する機能を有していれば良く、またグランド接点3は電界シールド1を取りつける実機のグランドと電界シールド1とのグランド接点3とを電気的に接合できれば良いのである。このような構成では、支持体5がないことから曲げ易く、電磁波発生部を覆い易くなる等の特徴を有することになる。図10では、縦と横が導電体からなる場合について示したが、例えば、縦方向のみが導電体で横方向は縦方向の導電体を保持するための導電性のない部材を用いて編んで構成してもシールド特性に何等問題はない。
また、複数の導電体2とグランド接点3とを接続するリード線4を電界シールド1の一方の辺側に配置したが、リード線4の配置はこれにこだわるものではない。例えば、電界シールド1の面積が広くなり、複数の導電体2の長さが長くなるような場合、複数の導電体2のリード線4と電気的に接触させた端と他方の端とのあいだで電位差が生じるようになる。この様な場合に、リード線4を電界シールド1の面上で非対称の位置に配置した場合、シールド特性、例えば遠方での遠方電界強度の非対称性が大きくなるようなことがある。このような場合は、電界シールド1のリード線4をほぼ対称な位置に配置すれば良い。この場合、導電体2の配置の方法は、例えば図11に示したような例が考えられるが、複数の導電体2を電気的に見た場合、複数の導電体2の何れにおいても、導電体2上の任意の点からグランド接点3へ導電体2上をたどる場合の経路が一意に定まる配置、或いは複数の導電体2の各々又は個々で電気的に接続された閉ループを形成しない配置であり、複数の導電体の線幅は0.05mmから5mmの範囲で、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する辺の長さを、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する点の数で、除して得られる複数の導電体の平均間隔が、4mmから50mmの範囲であれば何等の問題はない。なお、リード線4自体も閉ループを形成しないように引き回しには注意を要する。
なお、例えば図11に示したように、グランド接点3が電界シールド1に2ヶ所ある場合に、電界シールド1の対象の実機に設置して、実機のグランドと電界シールド1とのグランド接点3とを接続した場合、2ヶ所のグランド接点3は、実機を介して閉ループを形成するようになる。この場合も、本発明の電界シールド1上では、複数の導電体2を電気的に見た場合、複数の導電体2の何れにおいても、導電体2上の任意の点からグランド接点3へ導電体2上をたどる場合の経路が一意に定まる配置、或いは複数の導電体2の各々又は個々で電気的に接続された閉ループを形成しない配置は保持され、電界シールド1と実機からの近傍磁界との磁気的結合は殆ど発生しない。しかしながら、2ヶ所のグランド接点3が、実機を介して閉ループを形成するようになる場合は、実機から発生される近傍磁界が設置によって形成される閉ループと鎖交しないように注意して、電界シールド1のグランド接点3と実機のグランドとを接続する必要が有る。
このように、本発明の電界シールド1は、近傍磁界の減衰を抑えて、遠方電界強度を低減できるので、主として近傍磁界をその動作に利用する高周波加熱器や、無電極放電ランプ、通信機器などの高周波応用機器の不要輻射対策が容易にできるようになるとともに、高周波の電磁波発生器から発生される近傍磁界を有効に使うことができるようになる。
(実施の形態2)
通常電磁波は3次元的に放出されるため、不要な電磁波を遮蔽しようとする場合、電磁波の発生源を3次元的に遮蔽しなければならない。電界シールド1は電磁波の発生源を覆うような構成とすることでこの問題点に対処するものである。
参考例として、電界シールド1の概略斜視図を図12に示す。電界シールド1は、複数の導電体2と、複数の導電体2を接地するためのグランド接点3と、複数の導電体2とグランド接点3とを接続するリード線4と、複数の導電体2とグランド接点3とリード線4とを保持するための箱状の支持体5とから構成されている。なお、図中の黒丸印は、複数の導電体2とリード線4とが電気的に接続されていることを示している。
図12に示したように、複数の導電体2の銅線はそれぞれ1箇所で、グランド接点3につながるリード線4と電気的に接触している。これは、電気的に見た場合、複数の導電体2の何れにおいても、導電体2上の任意の点からグランド接点3へ導電体2上をたどる場合の経路が一意に定まることを示している。また、これは複数の導電体2の各々又は個々で、電気的に接続された閉ループを形成しないことを意味する。複数の導電体2のバルク線とリード線4とは半田付けにより電気的な接触を得た。リード線4には複数の導電体2の銅線との半田付けが容易な絶縁被覆なしの銅線を用いた。グランド接点3は、実機で使用する際に、実機のグランドと電気的接続を得るための接点である。グランド接点3は実機のグランドと電気的な接続を取ることができれば良く、その方法には、機械的な接続による方法や、半田付けによる方法などがあり、その方法に応じた構成をとれば良いが、半田付けでグランドと電気的な接触を得る方法を選定し、半田付けがやり易い金属板で構成した。複数の導電体2とリード線4、グランド接点3は、樹脂材からなる箱状支持体5上に接着固定して電界シールド1を形成した。
複数の導電体2の線幅6と複数の導電体2の平均間隔7を変えて電界シールド1を作成して、複数の導電体2の線幅6と複数の導電体2の平均間隔7による電界シールド1の特性の変化について調べた。なお、複数の導電体2にバルク線を用いたが、バルク線の場合の線幅6は、バルク線の最大幅、即ちバルク線の直径を意味するものである。
次に電界シールド特性について調べた。
参考例として、評価試験は次のようにして行った。評価試験装置の構成概略図を図13に示す。評価試験装置は、電磁波を放出させるためのループアンテナ8、ループアンテナ駆動用電源9、磁界強度計測器10、電界強度計測器11とから構成される。ここで、試験体である電界シールド1は、ループアンテナ8を覆うように配置する。ループアンテナ8を10mhzの周波数で駆動し、磁界強度と電界強度とを計測した。なお、電界シールド1を評価試験装置に取りつける際に、電界シールド1のグランド接点3は、評価試験装置のグランドと電気的接続を取った。
参考例として、図14に作製した電界シールドの遠方電界強度の減衰特性を示した。近傍磁界を大きく低減させることなく遠方電界強度を更に低減できることを確認できる。これは、平面的な電磁界の遮蔽であったのに対して励磁コイル8全体を覆うことになるために、従って、平面的な電界シールド1を回りこんで放射される電磁波成分も遮蔽されることになり、遠方電界強度は更に低減するのである。
図14から、複数の導電体2の平均間隔7が狭くなるにつれて、遠方電界強度の減衰量は大きくなっていくことがわかる。即ち、遠方電界強度を減衰させるためには、複数の導電体2の平均間隔7を狭くしていけば良いことがわかる。また、遠方電界強度の減衰量と複数の導電体2の平均間隔7との関係は複数の導電体2の平均間隔7が50mm近辺に変曲点があることがわかる。すなわち、複数の導電体2の平均間隔7が50mm程度よりも広くなると、電界強度の減衰量の変化は小さくなってくる。今、求められるのは、遠方での電界強度を減衰させることである。従って、遠方電界強度の減衰を効果的に大きく取れるような複数の導電体2の平均間隔7は、複数の導電体2の平均間隔7を50mm程度以下とすることが必要であることがわかる。
また、参考例として、図15に電界シールド1の近傍磁界強度の減衰特性を示した。近傍磁界強度は複数の導電体2の平均間隔7が広い領域では安定しているが、複数の導電体2の平均間隔7が10mm程度よりも小さくなってくると、徐々に近傍磁界強度の減衰量が大きくなってくることがわかる。複数の導電体2の平均間隔が3mm程度となると急激に近傍磁界強度の減衰量は大きくなることが示される。今求められる特性は、近傍磁界強度の減衰はできるだけ小さくすることが要求される。従って、近傍磁界強度の減衰量を小さく保つためには、複数の導電体の平均間隔を4mm程度以上とすることが必要であることがわかる。
また、参考例として、複数の導電体2の線幅を変えた場合の近傍磁界強度の変化についての計算機シミュレーション結果を図16に示した。複数の導電体2の線幅6が狭くなるにつれて近傍磁界強度は大きくなることがわかる。逆に、複数の導電体2の線幅7が広がると近傍磁界強度は減少してくることがわかる。今電界シールド1に求められているのは、近傍磁界強度の減衰が少ないことである。図16より複数の導電体2の線幅が5mm程度以上となると、複数の導電体2の線幅6に対して近傍磁界強度の変化は小さくなることがわかる。従って、近傍磁界強度の減衰を小さく抑えるためには、複数の導電体2の線幅6は、5mm程度より小さい領域にあることが必要であることがわかる。なお、導電体2の線幅6は、電界シールド1の法線方向から導電体2を見た場合の導電体2の幅である。例えば、導電体が円柱状の線である場合は、その直径に相当することになる。
この結果より、近傍磁界強度の減衰を少なく透過するためには、電界シールド1の複数の導電体2の線幅6は、小さい方が好ましいこととなる。しかしながら、例えばバルク線で線幅6を小さくしていった場合、切れ易いなど取り扱いが困難と成ってくる。この点を考慮した場合、複数の導電体2の線幅は、0.05mm程度より大きい方が望ましいことになる。なお、線幅6が小さい場合は、あらかじめ、細線を集合線としたリッツ線を用いると、細線の特性、即ち近傍磁界強度を効率良く透過する特性は保持されたままで、電界シールド1を作製する際の線の取り扱いは容易になるので、生産性の向上には有効である。
以上より、近傍磁界を透過し遠方電界を遮蔽する電界シールドの、複数の導電体2が満足すべき複数の導電体2の線幅6の範囲と、複数の導電体2の平均間隔7の範囲の満たすべき条件が明確になった。即ち、近傍磁界を透過し遠方電界を遮蔽する電界シールド1の、複数の導電体2は、複数の導電体2の線幅は0.05mm程度から5mm程度の範囲で、複数の導電体2の平均間隔7は4mmから50mmの範囲にあれば良い。
なお、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する辺の長さを、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する点の数で、除して得られる平均間隔7を用いたのは以下の理由による。
即ち、複数の導電体2の配置は、隣接する導電体2同士が平行に配置されていなくても、殆ど問題の無いシールド特性を示すことがわかったためである。シールドすべき面に対して、複数の導電体2を配する場合、導電体2の配置は、極端に偏らせて配置しない限りは、ここで用いた平均間隔の7範囲で複数の導電体2を配置すれば良いことになる。
例えば、複数の導電体2に線幅6を0.05mm程度以下とした場合は、近傍磁界の透過性に関しては何等の問題を発生しないが、導電体2は非常に断線し易いものとなるため、取り扱いが困難で、量産性上の問題が発生することになる。また、複数の導電体2に線幅6を5mm程度より大きいものを使用すると、複数の導電体2と近傍磁界とが結合するようになり、電界シールド1の近傍磁界の透過性が劣化したものとなってくる。また、複数の導電体2の線幅5mm程度以上では、複数の導電体2の平均間隔7を変えたとしても複数の導電体2自体が近傍磁界と結合し易くなるために、近傍磁界の透過性を向上させることは困難となってくる。
また、例えば、複数の導電体2の平均間隔7を4mm程度よりも小さくした場合、複数の導電体2と近傍磁界との結合が、影響を与える程度に大きくなり、電界シールドの近傍磁界の透過性が劣化したものとなってくる。更に例えば、複数の導電体2の平均間隔7を50mm程度よりも広くした場合、遠方電界の透過性が大きくなり、本来遮蔽すべき遠方電界のシールド性が劣化することになる。
以上をまとめると、遠方電界を遮蔽して、近傍磁界を透過するような電界シールド1は、複数の導電体2の何れにおいても、導電体2上の任意の点からグランド接点3へ、導電体2上をたどる場合の経路が一意に定まる電界シールド1、もしくは複数の導電体2が、閉ループを形成しないようにグランド接点3に結合されている電界シールド1であって、電界シールドは袋状に形成されており、複数の導電体の線幅は0.05mmから5mmの範囲で、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する辺
の長さを、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する点の数で、除して得られる複数の導電体の平均間隔が、4mmから50mmの範囲でなければならないのである。なお、これらの条件は、袋状に形成された電界シールドの各面で対応するものである。
なお、ここで得られた条件に基づき、線径が0.08mmで30芯のリッツ線を導電体に用い、導電体の平均間隔が10mmの電界シールドを作製して、250mm×500mmのループアンテナを有する実機通信機にセットして近傍磁界の強度と遠方電界の減衰量とを調べた結果を(表2)に示す。
(表2)より、実機通信機においても、近傍磁界を透過し遠方電界を遮蔽できる電界シールドとして機能することが確認できる。
なお、複数の導電体2とグランド接点3とリード線4を樹脂製の箱状の支持体5上に配置、接着固定して電界シールド1を形成したが、支持体5上への固定の方法は、接着に限るものではなく、例えば支持体5上に導電体2をからげ固定ができるからげピンを設けておけば、複数の導電体2はこのからげピンにからげ固定することで電界シールド1を形成することができる。この際、複数の導電体2の配置は、複数の導電体2を電気的に見た場合、複数の導電体2の何れにおいても、導電体2上の任意の点からグランド接点3へ導電体2上をたどる場合の経路が一意に定まる配置、或いは複数の導電体2の各々又は個々で電気的に接続された閉ループを形成しない配置とし、複数の導電体の線幅は0.05mmから5mmの範囲で、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する辺の長さを、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する点の数で、除して得られる複数の導電体の平均間隔が、4mmから50mmの範囲であれば何等問題はない。
また、複数の導電体2とグランド接点3とリード線4を樹脂製の箱状の支持体5上に配置、接着固定して電界シールド1を形成したがこれは、電界シールド1を取り扱い易くするために箱状の支持体上に配置、接着固定したのであり、電界シールド1としての特性への影響に関して箱状の支持体5は必ずしも必要なものではない。例えば、図17に模式的に示したように、縦と横に導電体2が交差するような導電体2を編んで構成しても、複数の導電体2を電気的に見た場合、複数の導電体2の何れにおいても、導電体2上の任意の点からグランド接点3へ導電体2上をたどる場合の経路が一意に定まる配置、或いは複数の導電体2の各々又は個々で電気的に接続された閉ループを形成しない配置とし、複数の導電体の線幅は0.05mmから5mmの範囲で、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する辺の長さを、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する点の数で、除して得られる複数の導電体の平均間隔が、4mmから50mmの範囲であれば何等問題はない。
支持体5を有しない場合、リード線4とグランド接点3の取り扱いは、例えば複数の導電体2と共に編みこんで構成すれば良い。リード線4の機能は、複数の導電体2とグランド接点3とを電気的に結合する機能を有していれば良く、またグランド接点3は電界シールド1を取りつける実機のグランドと電界シールド1とのグランド接点3とを電気的に接合できれば良いのである。このような構成では、支持体5がないことから曲げ易く、電磁波発生部を覆い易くなる等の特徴を有することになる。
また、縦方向に導電体2を配置して電界シールド1を構成したが、導電体2の配置は、縦方向に限る必要性は無い。要は電磁波発生部から発生される電磁波の強度と所望のシールド特性に応じて導電体2を配置すれば良く、その際に複数の導電体2を電気的に見た場合、複数の導電体2の何れにおいても、導電体2上の任意の点からグランド接点3へ導電体2上をたどる場合の経路が一意に定まる配置、或いは複数の導電体2の各々又は個々で電気的に接続された閉ループを形成しない配置とし、複数の導電体の線幅は0.05mmから5mmの範囲で、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する辺の長さを、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する点の数で、除して得られる複数の導電体の平均間隔が、4mmから50mmの範囲であれば何等問題はない。
また、複数の導電体2とグランド接点3とを接続するリード線4を電界シールド1の一方の辺側に配置したが、リード線4の配置はこれにこだわるものではない。例えば、電界シールド1の面積が広くなり、複数の導電体2の長さが長くなるような場合、複数の導電体2のリード線4と電気的に接触させた端と他方の端とのあいだで電位差が生じるようになる。この様な場合に、リード線4を電界シールド1の面上で非対称の位置に配置した場合、シールド特性、例えば遠方電界強度の非対称性が大きくなるようなことがある。このような場合は、電界シールド1のリード線4をほぼ対称な位置に配置すれば良い。その際に、複数の導電体2を電気的に見た場合、複数の導電体2の何れにおいても、導電体2上の任意の点からグランド接点3へ導電体2上をたどる場合の経路が一意に定まる配置、或いは複数の導電体2の各々又は個々で電気的に接続された閉ループを形成しない配置とし、複数の導電体の線幅は0.05mmから5mmの範囲で、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する辺の長さを、複数の導電体と、複数の導電体が配されて形成される領域の外周とが交差する点の数で、除して得られる複数の導電体の平均間隔が、4mmから50mmの範囲であれば何等問題はない。
また、グランド接点3が電界シールド1に複数箇所ある場合に、電界シールド対象の実機に設置して、実機のグランドと電界シールド1とのグランド接点3とを接続した場合、複数箇所のグランド接点3は、実機を介して閉ループを形成するようになる。この場合も、本発明の電界シールド1上では、複数の導電体2を電気的に見た場合、複数の導電体2の何れにおいても、導電体2上の任意の点からグランド接点3へ導電体2上をたどる場合の経路が一意に定まる配置、或いは複数の導電体2の各々又は個々で電気的に接続された閉ループを形成しない配置は保持され、電界シールド1と実機からの近傍磁界との磁気的結合は殆ど発生しない。しかしながら、複数のグランド接点3が、実機を介して閉ループを形成するようになる場合は、実機から発生される近傍磁界が設置によって形成される閉ループと鎖交しないように注意して電界シールド1のグランド接点3と実機のグランドとを接続する必要が有る。
このように、本発明の電界シールド1は、近傍磁界の減衰を抑えて、遠方電界強度を低減できるので、主として近傍磁界をその動作に利用する高周波加熱器や、無電極放電ランプ、通信機器などの高周波応用機器の不要輻射対策が容易にできるようになるとともに、高周波の電磁波発生器から発生される近傍磁界を有効に使うことができるようになる。しかも、電界シールド1の形状が箱状であるために、電磁界の発生源を中に入れるだけで良く、設置が容易になる。