JP4743078B2 - 脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法およびそれを用いた溶銑の脱燐処理方法 - Google Patents

脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法およびそれを用いた溶銑の脱燐処理方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4743078B2
JP4743078B2 JP2006288520A JP2006288520A JP4743078B2 JP 4743078 B2 JP4743078 B2 JP 4743078B2 JP 2006288520 A JP2006288520 A JP 2006288520A JP 2006288520 A JP2006288520 A JP 2006288520A JP 4743078 B2 JP4743078 B2 JP 4743078B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
slag
dephosphorization
hot metal
concentration
improving
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2006288520A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2008106296A (ja
Inventor
剛徳 宮沢
隆智 遠藤
政樹 宮田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Metal Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP2006288520A priority Critical patent/JP4743078B2/ja
Publication of JP2008106296A publication Critical patent/JP2008106296A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4743078B2 publication Critical patent/JP4743078B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Refinement Of Pig-Iron, Manufacture Of Cast Iron, And Steel Manufacture Other Than In Revolving Furnaces (AREA)
  • Carbon Steel Or Casting Steel Manufacturing (AREA)

Description

本発明は、転炉形式の炉を用いて、実質的にフッ素を含まない脱燐剤を使用して溶銑を脱燐処理する際に、脱燐処理後のスラグの排滓性を向上させる方法、およびその排滓性向上方法を用いることにより、炉内付着地金の成長を抑制し、安定した操業を可能とする溶銑の脱燐処理方法に関する。
転炉を用いて、溶銑中の炭素と燐を同時に精錬していた従来の製鋼精錬方法に対し、最近では、溶銑鍋、トーピード等を用いて、溶銑段階で燐を事前に除去する溶銑の予備脱燐処理が行なわれており、その中でも、転炉を用いた溶銑予備脱燐が盛んに行われている。
一般に、転炉精錬において、溶鋼中の燐濃度を適正に制御するために、石灰を投入する方法が行われており、石灰の媒溶剤としては、蛍石(CaF2)を添加する方法が知られている。しかし、滓化促進剤として蛍石を使用すると、吹錬後のスラグがフッ素を含有することから、スラグを土木原料等として利用する場合に、フッ素の溶出が懸念されるという問題がある。
このように、フッ素が環境に及ぼす影響を考慮して、溶銑の予備脱燐処理においても、フッ素含有物の使用量を極力削減することが求められている。このため、フッ素含有物を極力削減した溶銑の予備脱燐処理において、脱燐処理後の燐濃度を低下させる技術が種々提案されている。
例えば、特許文献1では、フッ素含有物の減少に伴うスラグの滓化性の低下を補うために、酸素をキャリアーガスとして、CaOおよびマンガン酸化物を含有する脱燐剤を溶銑に吹き付ける方法が開示されている。この方法によれば、マンガン酸化物を火点に供給することにより、滓化性が向上することから、フッ素含有物を使用しなくても、脱燐効率の上昇およびMn歩留まりの向上を図ることができる。
しかし、特許文献1で開示される方法では、酸素ガスをキャリアーガスとして、マンガン酸化物を浴面に吹き付ける際に、硬度の高いマンガン酸化物による粉体供給ラインの配管またはフレキシブルホースの摩耗により、配管またはホースに孔が開き、酸素および粉体が外部へ噴出する事態が発生するおそれがある。また、このような酸素ガスの漏洩は防災上も好ましくないことから、特別な防止策が必要になる。
また、特許文献2では、上吹きランスを通じてCaO源を溶銑浴面に吹き付けるとともに、脱燐処理後のスラグ塩基度を2.5超とすることにより、またはそれに加えて、脱燐処理前の溶銑の温度を1280℃以上とすること等により、CaF2添加量を削減しても、低燐溶銑を安定して製造する方法が開示されている。
このように、スラグ塩基度を高め、さらに温度を高めた場合には、CaF2添加量を削減しても、低燐溶銑を得ることが可能である。しかしながら、特許文献2で開示される方法では、スラグの融点が高くなることから、脱燐後の溶銑を出湯してから残スラグを排出する工程までの間の温度降下によって、スラグの流動性が低下するので、残スラグを全て排出することは困難となる。
このため、特許文献2で開示される方法には、残スラグの影響によって次の吹錬時の脱燐能力が低下するという問題や、転炉の耐火物面にスラグが付着することから、付着スラグを除去するために稼働率が低下するという問題がある。さらに、耐火物面へのスラグの付着が進行すると、転炉内へスクラップを装入できなくなるおそれもある。
特開2001−192724号公報 特開2003−328025号公報
前述の通り、溶銑の予備脱燐処理においては、地球環境に対する負荷の低減を目的としてフッ素含有物の使用量の削減が求められると同時に、製品の燐濃度の低減も要求されている。また、安定した脱燐炉の操業を可能とするには、脱燐精錬後の残スラグの排出性を向上させるとともに、転炉内のスラグ付着量を減少させる必要がある。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、実質的にフッ素を含まない脱燐剤を使用して溶銑を脱燐処理する場合であっても、効率的な脱燐処理を維持しつつ、安定した操業を可能とする脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法、およびそれを用いた溶銑の脱燐処理方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、前述した従来技術の課題を解決するため、最適な操業条件について検討を行った。その結果、脱燐精錬後の残スラグの排出性を向上させるとともに、転炉内の耐火物面へのスラグの付着を抑制するには、残スラグ中に未反応のCaO分を残留させないことが重要であることを知得した。
さらに、残スラグの化学組成を制御することにより、残スラグの融点を低下させることが、脱燐精錬後の残スラグの排出性を向上させ、転炉内の耐火物面へのスラグの付着を抑制するには必要であることを見出した。
一方、フッ素含有物を使用しない脱燐精錬において、低燐鋼を安定して製造するには、スラグ塩基度は2.5以上にする必要があることは周知であり、塩基度の高いスラグの融点を低下させるためには、スラグ中の酸化鉄濃度を高めることが有効であることも、周知である。
しかしながら、本発明者らは、溶銑中の炭素濃度が高いことから、スラグ中の酸化鉄濃度を高めることは困難であることを見出した。すなわち、脱燐工程では、溶銑中の炭素濃度は一般に3〜4質量%程度であり、吹錬中のスラグの酸化鉄濃度を高めることは可能であるが、吹錬終了から出湯までの間に、溶銑中の炭素によって酸化鉄は還元されるので、スラグを排出する段階においてはスラグ中の酸化鉄濃度は低下し、スラグの融点は上昇することが判明した。
このため、スラグの融点を低下させるべく、種々の検討を重ねた結果、スラグ中の酸化鉄濃度を可能な限り増加させ、スラグ排出時においてもスラグ中の酸化鉄濃度を高く維持できる方法を知得した。すなわち、溶銑の炭素とスラグ中の酸化鉄が反応しにくくするには、溶銑の攪拌を弱くすることが有効であり、また、投入した酸化鉄は炉内条件に応じた速度で滓化することから、投入する時期を調整することがスラグ中の酸化鉄濃度を制御するには有効であるという知見を得た。
また、これらの知見は、CaO源を上吹きランスから酸素と共に溶銑に吹き付ける方法を採用することにより、そのCaOの滓化促進効果と相俟って一層効果的であることが判明した。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、下記(1)および(3)〜(5)の脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法、並びに(2)および(6)の溶銑の脱燐処理方法を要旨としている。
(1)転炉形式の炉を用いて、実質的にフッ素を含まない脱燐剤を使用して溶銑を脱燐処理するに際し、脱燐処理後のCaOとSiO2の質量濃度比で定義されるスラグ塩基度を2.5以上、3.5以下にし、かつ脱燐処理後の鍋中の溶銑温度を1320℃以上、1380℃以下にするとともに、全吹錬時間の60%が経過する前から吹錬終了まで、底吹きガス流量を溶銑1tあたり0.18Nm3/min(以下、「0.18Nm3/min/t」とも記す)以下に保つことにより、脱燐処理後のスラグ中のT.Fe濃度を5質量%以上にすることを特徴とする脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法。
(2)上記(1)に記載の脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法を用いることを特徴とする溶銑の脱燐処理方法。
(3)上記(1)に記載の脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法では、上吹きランスと溶銑の静止湯面との間の距離を3m以上とすることにより、溶銑の攪拌が弱まることから、溶銑中の炭素による酸化鉄の還元反応が遅くなり、スラグ中の酸化鉄濃度を高く保つことができるので望ましい。
(4)上記(1)または(3)に記載の脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法では、吹錬中に酸化鉄を10kg/t以上投入し、その投入時期を脱Si外O2原単位が3Nm3/t以上となった後にすることにより、吹錬終了時のスラグ中の酸化鉄濃度を高く保つことができるので望ましい。
(5)上記(1)、(3)および(4)に記載の脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法では、前記脱燐剤として使用するCaO源のうち、CaOの50質量%以上を気体酸素源とともに、上吹きランスを介して溶銑の浴面に吹き付けることが望ましい。
(6)上記(3)〜(5)に記載の脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法を用いることを特徴とする溶銑の脱燐処理方法。
本発明において、「転炉形式の炉」とは、脱燐剤などの粉体を上吹きランスにより溶銑に吹き付けて脱燐処理を行うことのできる充分なフリーボード(上部空間)を有する転炉形式の脱燐炉を意味し、溶銑をガス攪拌するための底吹き機構を有するのが望ましい。
また、「実質的にフッ素を含まない脱燐剤」とは、蛍石などのように高濃度のフッ素を含むものを使用しない脱燐剤を意味し、例えば、脈石成分として1質量%未満のフッ素が含有される物質や、製鋼工程で発生する転炉スラグおよび取鍋スラグなどを使用する場合であっても、最終的にスラグ中のフッ素濃度が0.4質量%未満となるような物質を用いた脱燐剤であれば該当する。
また、「脱燐処理後のスラグ中の成分濃度(質量%)」とは、脱燐処理後の溶銑を出湯した後(すなわち排滓時)のスラグ成分分析値を意味し、「スラグ中のT.Fe濃度」とは、スラグ中に酸化鉄として存在するFe成分の濃度(質量%)を意味する。
また、「脱Si外O2原単位」とは、吹錬中に供給された酸素ガス量から、溶銑中に含有されているSiを全てSiO2に酸化するために化学量論的に必要な酸素量を除いた後の酸素ガス原単位を意味する。
本発明によれば、転炉形式の脱燐炉を用いて溶銑を脱燐処理する際に、実質的にフッ素を含まない脱燐剤を使用した場合であっても、脱燐処理後のスラグの排滓性を向上させることができる。さらに、脱燐精錬後の残スラグの排出性を向上させるとともに、炉内付着地金の成長を抑制することにより、安定して低燐溶銑を得ることができる。
したがって、本発明の排滓性向上方法および脱燐処理方法によれば、地球環境に対する負荷を低減できると同時に、低燐溶銑を得ることのできる脱燐炉の操業を、安定かつ継続的に実施することが可能となる。
本発明のスラグの排滓性向上方法および溶銑の脱燐処理方法では、200t乃至350tの溶銑を対象として、転炉形式の脱燐炉を用いて、実質的にフッ素を含まない脱燐剤を使用して溶銑を脱燐処理する。特に、粉体生石灰を上吹きランスから酸素と共に溶銑に吹き付けて低燐溶銑(脱燐処理後の溶銑中のP濃度が0.020質量%以下)を製造する方法であって、処理後の脱燐スラグを炉外へ排出し易くし、かつ、脱燐炉の炉口部を中心として付着し易い地金の成長を抑制する方法である。以下に、本発明を上記のように規定した理由および好ましい範囲について説明する。それらの調査の対象とした溶銑の脱燐処理前および処理後の成分を表1に示す。
Figure 0004743078
(1)排滓性向上方法
本発明では、脱燐処理後のスラグ塩基度が2.5以上、3.5以下であって、T.Fe濃度を5質量%以上、かつ脱燐処理後の鍋中での溶銑温度を1320℃以上、1380℃以下とすることによって、脱燐処理後のスラグの排滓性を向上させ、かつ、溶銑脱燐を安定して促進させる。
(1)−1.脱燐処理後のスラグ塩基度が2.5以上、3.5以下
本発明のスラグの排滓性向上方法および溶銑の脱燐処理方法は、実質的にフッ素を含まない脱燐剤を使用するものであり、脱燐処理後のCaO/SiO2で定義されるスラグ塩基度が、2.5〜3.5の範囲となるように、溶銑中のシリコン濃度の値に応じて、生石灰や石灰石などのCaO含有物質を投入する。
本発明者らは、前記表1に示した溶銑200〜300tを対象として、調査および検討を行なった結果、スラグ塩基度が2.5未満では、スラグの脱燐能力が低下し、脱燐処理後の燐濃度が0.020質量%以下の低燐溶銑を安定して得られないばかりでなく、吹錬中のスラグの粘度が上昇することによって、スラグのフォーミングが発生し、過度なフォーミングの場合には、スラグが炉外へ溢れるスロッピングや、出湯中の炉口からのスラグ横溢などが発生することを確認した。
また、スラグ塩基度が3.5を超えて高くなると、スラグ中の未反応のCaO分(以下、「遊離CaO」ともいう)を減少させることが困難となり、排滓性が低下するとともに、炉内スラグ付着量の増加を招くことになる。
図1は、遊離CaO濃度と残スラグの排出性との関係を示す図である。同図に示すように、転炉内のスラグの排出性は、スラグ中の遊離CaO濃度と良い相関がある。このため、全量排滓できることが望ましいが、残スラグが20質量%以上炉内に残留すると、操業性が著しく悪化することから、炉内残スラグが20質量%を超えるような脱燐処理の比率を極力少なくするような精錬操作が実際上重要となる。遊離CaO濃度が2〜3質量%では、炉内残スラグが20質量%を超えた比率は2%程度と低い値であったが、遊離CaO濃度が3〜4質量%では、その比率は9%程度と高くなっていた。このことから、スラグ中の遊離CaO濃度は3質量%以下にすることが有効である。
(1)−2.スラグ中のT.Fe濃度が5質量%以上
スラグ塩基度が2.5〜3.5の条件下で、遊離CaO濃度とスラグ中のT.Fe濃度との関連性を調べた結果を図2に示し、全量排滓不可比率とスラグ中T.Fe濃度との関係を表2に示す。
ここで、全量排滓不可比率とは、排滓処理後に脱燐スラグが炉内に残留していることが明確に視認できたチャージの比率である。
図2は、遊離CaO濃度とスラグ中のT.Fe濃度の関係を示す図である。図2に示すように、スラグ中T.Fe濃度が5〜6%では、遊離CaO濃度が3質量%を超える比率は15%であったが、スラグ中T.Fe濃度が4〜5%では、その比率が46%に増加していた。
Figure 0004743078
このように、T.Fe濃度を5質量%以上にすることで、遊離CaO濃度が3質量%を超える比率が少なくなる結果、表2に示すように、全量排滓不可比率が13.8%以下に減少した。この「全量排滓不可比率」には、前記図1に示した「炉内残スラグが20質量%以下」のチャージも含まれているので、単にスラグ塩基度を2.5〜3.5にするだけでなくスラグ中T.Fe濃度を5%以上とすることで、全量排滓不可比率を大幅に低下できていることが分かる。
全量排滓不可比率が20%を超えると残スラグによる炉底羽口詰り等が発生し、操業性が著しく悪化するので、スラグ中のT.Fe濃度を5質量%以上にすることが重要である。なお、スラグ中のT.Fe濃度が15質量%を超えると、鉄分歩留の悪化によってコストが上昇することから、15質量%以下にするのが望ましい。
(1)−3.脱燐処理後の鍋中での溶銑温度が1320℃以上、1380℃以下
脱燐処理後の鍋中での溶銑温度が1320℃未満の場合には、スラグの滓化が阻害され、遊離CaOが増加する。また、溶銑温度が1380℃を超える場合には、高温による脱燐不良が生じる。したがって、脱燐処理後の鍋中での溶銑温度は、1320℃以上、1380℃以下に制御する必要がある。
脱燐処理後の鍋中での溶銑温度を制御する方法としては、吹錬前の溶銑成分および温度情報に基づいて、当該溶銑に吹き込む酸素量から計算される温度上昇分に見合う冷材量を計算により求める方法が一般的である。
また、本発明の溶銑の脱燐処理方法では、溶銑温度を脱燐後の脱燐炉内における温度に替えて、脱燐後の鍋中での溶銑温度で規定している。このように規定する理由は、脱燐処理後の溶銑温度を脱燐炉内で測定することは、脱燐炉の操業能率を低下させるので好ましくないからである。このように、本発明は、次工程の脱炭精錬処理における必要性から測定される、脱燐処理後の溶銑出湯完了直後の溶銑温度を用いて、本発明の範囲を規定することにより、脱燐炉の操業能率向上をも達成することができる。
(2)スラグ中のT.Fe濃度の上昇方法
(2)−1.底吹きガス流量
前述のとおり、本発明では、全吹錬時間の60%が経過する前から吹錬終了まで、底吹きガス流量を0.18Nm3/min/t以下に保つことにより、脱燐処理後のスラグ中のT.Fe濃度を5質量%以上に制御することを特徴の一つとしている。
図3は、スラグ中のT.Fe濃度と底吹き不活性ガス流量との関係を示す図である。図3に示すように、スラグ中のT.Fe濃度の平均値を5質量%以上にするためには、攪拌用の底吹きガス流量を0.18Nm3/min/t以下とする必要がある。このように規定する理由は、溶銑の攪拌用の底吹きガス流量を低くして撹拌を弱めることにより、生成した酸化鉄または投入した酸化鉄が溶銑中の炭素によって還元される速度を遅くして、スラグ中の酸化鉄濃度を高く保つことができるからである。
吹錬時間としては、全吹錬時間の約50%経過後から吹錬終了まで、底吹きガス流量を0.18Nm3/min/t以下の低流量とすれば、全吹錬時間において低流量にした場合と同程度の酸化鉄濃度を保つことができる。実質的には、全吹錬時間の60%が経過する前から吹錬終了まで、ガス流量を上記のように低流量とするだけでよい。このとき、少なくとも底吹き羽口への溶銑の侵入を防止できるだけのガス流量を確保する必要がある。
また、吹錬初期においては、スクラップを溶解させる必要があること、初期のスラグ滓化を促進させること等から、底吹きガス流量は0.20〜0.40Nm3/min/t程度にするのが望ましい。なお、本発明方法においては、上吹きランスからの送酸速度は1.0〜3.0Nm3/min/t程度で、脱燐吹錬における酸素供給時間は5〜15分間程度である。
(2)−2.上吹きランスと溶銑の静止湯面との間の距離が3m以上
本発明では、上吹きランスと溶銑の静止湯面との間の距離は、3m以上とするのが望ましい。このように規定する理由は、ランスと静止湯面との間の距離を大きくすることにより、すなわち、溶銑の攪拌を弱めることにより、生成した酸化鉄または投入した酸化鉄が溶銑中の炭素によって還元される反応速度を遅くして、スラグ中の酸化鉄濃度を高く保つことができるからである。
図4は、スラグ中のT.Fe濃度とランス−湯面間距離との関係を示す図である。図4に示すように、ランスと静止湯面との間の距離を3m以上とすれば、安定してスラグ中のT.Fe濃度を5質量%以上とすることができる。
しかし、ランスと静止湯面との間の距離を必要以上に大きくすると、酸素の反応効率の悪化、耐火物の溶損、およびスロッピングの増加等を招くため、ランスと静止湯面との間の距離は4.0m以下とすることが望ましい。また、吹錬初期においては、酸素の反応効率を高めることを目的として、ランスと静止湯面との間の距離は小さくする方が望ましい。
なお、調査に用いた溶銑量は200〜300tであるが、溶銑量が350tになっても溶銑深さは300tの場合と同程度であることから、本発明におけるランスと静止湯面との間の距離の好適な範囲は変わらない。
(2)−3.吹錬中に酸化鉄を10kg/t以上投入し、その投入時期を脱Si外O2原単位が3Nm3/t以上となった後にすること
図5は、スラグ中のT.Fe濃度と吹錬中における酸化鉄の投入時期との関係を示す図である。投入された酸化鉄は吹錬条件に応じた滓化速度で滓化し、溶銑中の炭素により還元されることから、吹練終了時のスラグ中の酸化鉄濃度を高く保つには、酸化鉄の投入時期および投入量も重要な要素となる。
酸化鉄の投入時期および投入量に関しては、図5に示すように、酸化鉄投入量が増加するとスラグ中のT.Fe濃度が上昇する傾向がある。この上昇効果は、脱Si外O2原単位が3Nm3/t以上となった後に、酸化鉄を投入する方が、それ以前に投入するよりも大きい。
スラグ中のT.Fe濃度を、安定して5質量%以上にするためには、底吹きガス流量を0.18Nm3/min/t以下の低流量とした上で、酸化鉄を10kg/t以上投入する必要があり、その投入時期を脱Si外O2原単位が3Nm3/t以上となった後にするのが更に望ましい。同図は上吹きO2原単位1.54Nm3/min/t、溶銑中C濃度が4.7%から3.5%に、また溶銑中Si濃度が0.3%から0.0%になる条件で脱燐吹錬を実施したときのものである。
一般的に酸化鉄としては、表3に示される組成を有するスケールや鉄鉱石を使うのが望ましい。
Figure 0004743078
(3)粉体CaO利用との相乗効果
本発明におけるスラグ中のT.Fe濃度の上昇効果は、脱燐剤として供給されるCaO源のうち、CaOの50質量%以上を気体酸素源とともに上吹きランスから溶銑に吹付ける溶銑の脱燐方法において、一層明確に現われる。
上吹きランスから、CaO源を酸素と共に溶銑浴面に吹き付けると、酸素火点の高温箇所にCaO源が供給されるため、更に反応効率が向上し、遊離CaO濃度を減少させることが可能となる。この場合のCaO粒径は、2.8mm以下であれば反応効率上では大きな相違はないが、搬送性などの観点から150μm以下とするのが一層望ましい。
以下、脱燐剤として使用するCaO源のうち、CaOが粉状原料として供給される比率(粉状原料中のCaO質量×100/脱燐剤として使用するCaO源全体中のCaO質量)を「粉体CaO比率」と記述する。
本発明者らは、脱燐処理後のスラグ塩基度を2.5〜3.5とし、脱燐処理後の鍋中の溶銑温度を1320〜1380℃とし、かつ脱燐処理後のT.Fe濃度を5質量%以上とする条件下において、吹錬を行い、粉体CaO比率と遊離CaO濃度との関係を調査した。
図6は、CaO源中の粉体CaO比率と遊離CaO濃度との関係を示す図である。図6に示すように、吹錬に使用した全CaO成分のうち、粒径150μm以下の粉体生石灰を溶銑に吹き付けることにより供給したCaO成分の比率が50%以上の場合には、安定してスラグ中の遊離CaO濃度を2質量%以下にできることが確認できた。
さらに、粉体CaO比率を80%以上とすると、スラグ中の遊離CaO濃度は1.5質量%以下となり、粉体CaO比率を90%以上にすると、スラグ中の遊離CaO濃度は0.3質量%以下となって、実質的に遊離CaOがスラグ中に残存しなくなることも確認できた。このように、遊離CaOがスラグ中に残存しなくなれば、排滓および脱燐処理が安定するとともに、CaO成分を有効活用できるほか、スラグの水漬膨張率を抑制してスラグを副製品として骨材等に利用する場合に一層望ましい。
本発明の溶銑の脱燐処理方法の効果を確認するため、下記の試験を行い、排滓性、炉内スラグ付着性等の評価を行った。
(試験条件)
脱燐処理前の溶銑成分が、[C]:4.2〜4.8質量%、[Si]:0.15〜0.45質量%、[P]:0.095〜0.120質量%、[Mn]:0.20〜0.35質量%であり、脱燐処理前の温度が1300〜1370℃である溶銑約264tおよびスクラップ約29tを、上底吹き転炉に注銑し、吹錬した。
脱燐炉の溶銑率は89〜91質量%であった。生石灰は、CaO純分が約92%であり、粒径30mm以下の塊状および150μm以下の粉体を使用した。
(評価方法)
評価は、脱燐性能、排滓性および炉内スラグ付着性の3項目について行った。脱燐性能の評価は、脱燐後の溶銑中の燐濃度が0.020質量%以下の場合を○とし、0.020質量%を超えた場合を×とした。排滓性の評価は、完全排滓の場合を1、若干スラグが残る場合を2および不完全排滓の場合を3とした。総合評価は、上記の3項目の評価が全て○(排滓性の評価については1)の場合を○とし、それ以外の場合を×とした。
(試験結果)
表4に実施例の試験条件および試験結果を示す。
Figure 0004743078
本発明で規定する脱燐処理後のスラグ塩基度、T.Fe濃度および溶銑温度についての条件を満足する本発明例T9〜T17では、表4に示すように、脱燐性能、排滓性および炉内スラグ付着性のいずれにおいても良好な結果が得られた。さらに、脱燐剤として使用するCaO源を粉体として添加した本発明例T13〜T17では、スラグ中の遊離CaO濃度の低減効果があった。
これに対し、本発明で規定する条件のいずれかを満足しなかった比較例T2、T3およびT5〜T8では、排滓性が低下するとともに、炉内スラグ付着量が増加した。脱燐処理後のスラグ塩基度が本発明で規定する条件を満足しなかった比較例T1では、排滓性および炉内スラグ付着性においては良好な結果が得られたが、脱燐不良が生じた。
また、脱燐処理後の鍋中での溶銑温度が本発明で規定する条件を満足しなかった比較例T4でも、排滓性および炉内スラグ付着性においては良好な結果が得られたが、鍋中での溶銑温度が1380℃を超えたことから、高温による脱燐不良が生じた。
本発明によれば、転炉形式の脱燐炉を用いて溶銑を脱燐処理する際に、実質的にフッ素を含まない脱燐剤を使用した場合であっても、脱燐処理後のスラグの排滓性を向上させることができる。さらに、脱燐精錬後の残スラグの排出性を向上させるとともに、炉内付着地金の成長を抑制することにより、安定して低燐溶銑を得ることができる。
上記のとおり、本発明の排滓性向上方法および脱燐処理方法によれば、地球環境に対する負荷を低減できると同時に、低燐溶銑を得ることのできる脱燐炉の操業を、安定かつ継続的に実施することが可能となる。これにより、本発明は操業能率の大幅な向上を可能とする溶銑の脱燐処理方法として溶銑処理工程において広く適用できる。
遊離CaO濃度と残スラグの排出性との関係を示す図である。 遊離CaO濃度とスラグ中のT.Fe濃度の関係を示す図である。 スラグ中のT.Fe濃度と底吹き不活性ガス流量との関係を示す図である。 スラグ中のT.Fe濃度とランス−湯面間距離との関係を示す図である。 スラグ中のT.Fe濃度と吹錬中における酸化鉄の投入時期との関係を示す図である。 CaO源中の粉体CaO比率と遊離CaO濃度との関係を示す図である。

Claims (6)

  1. 転炉形式の炉を用いて、実質的にフッ素を含まない脱燐剤を使用して溶銑を脱燐処理するに際し、
    脱燐処理後のCaOとSiO2の質量濃度比で定義されるスラグ塩基度を2.5以上、3.5以下にし、かつ脱燐処理後の鍋中の溶銑温度を1320℃以上、1380℃以下にするとともに、全吹錬時間の60%が経過する前から吹錬終了まで、底吹きガス流量を溶銑1tあたり0.18Nm3/min以下に保つことにより、脱燐処理後のスラグ中のT.Fe濃度を5質量%以上にすることを特徴とする脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法。
  2. 請求項1に記載の脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法を用いることを特徴とする溶銑の脱燐処理方法。
  3. 上吹きランスと溶銑の静止湯面との間の距離を3m以上とすることを特徴とする請求項1に記載の脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法。
  4. 吹錬中に酸化鉄を10kg/t以上投入し、その投入時期を脱Si外O2原単位が3Nm3/t以上となった後にすることを特徴とする請求項1または3に記載の脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法。
  5. 前記脱燐剤として使用するCaO源のうち、CaOの50質量%以上を気体酸素源とともに、上吹きランスを介して溶銑の浴面に吹き付けることを特徴とする請求項1、3および4のいずれか1項に記載の脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法。
  6. 請求項3〜5のいずれか1項に記載の脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法を用いることを特徴とする溶銑の脱燐処理方法。
JP2006288520A 2006-10-24 2006-10-24 脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法およびそれを用いた溶銑の脱燐処理方法 Active JP4743078B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006288520A JP4743078B2 (ja) 2006-10-24 2006-10-24 脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法およびそれを用いた溶銑の脱燐処理方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006288520A JP4743078B2 (ja) 2006-10-24 2006-10-24 脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法およびそれを用いた溶銑の脱燐処理方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008106296A JP2008106296A (ja) 2008-05-08
JP4743078B2 true JP4743078B2 (ja) 2011-08-10

Family

ID=39439907

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006288520A Active JP4743078B2 (ja) 2006-10-24 2006-10-24 脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法およびそれを用いた溶銑の脱燐処理方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4743078B2 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010084154A (ja) * 2008-09-29 2010-04-15 Sumitomo Metal Ind Ltd 溶銑の脱燐処理方法
JP5338251B2 (ja) * 2008-10-20 2013-11-13 新日鐵住金株式会社 溶銑の脱燐方法
JP5412994B2 (ja) * 2009-06-29 2014-02-12 新日鐵住金株式会社 溶銑の脱りん方法
BR112016001198B1 (pt) 2013-07-25 2020-10-13 Jfe Steel Corporation método para processo de desfosforização de ferro fundido
WO2018135351A1 (ja) 2017-01-18 2018-07-26 Jfeスチール株式会社 溶銑の脱燐方法
JP7348519B2 (ja) * 2019-12-17 2023-09-21 日本製鉄株式会社 溶銑の脱りん方法

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH01147012A (ja) * 1987-12-01 1989-06-08 Sumitomo Metal Ind Ltd 製鋼方法
JP3525766B2 (ja) * 1998-10-23 2004-05-10 住友金属工業株式会社 溶銑の脱りん方法
JP2002069525A (ja) * 2000-09-01 2002-03-08 Nippon Steel Corp 溶銑脱燐用上吹きランス及び溶銑脱燐方法
JP2002212620A (ja) * 2001-01-11 2002-07-31 Nippon Steel Corp 溶銑脱燐方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2008106296A (ja) 2008-05-08

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5408369B2 (ja) 溶銑の予備処理方法
JP4743078B2 (ja) 脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法およびそれを用いた溶銑の脱燐処理方法
JPWO2013012039A1 (ja) 溶銑の精錬方法
JP6011728B2 (ja) 溶銑の脱燐処理方法
JP5343506B2 (ja) 溶銑の脱燐方法
JP2004190101A (ja) 溶銑の予備処理方法
JP5408379B2 (ja) 溶銑の予備処理方法
JP4743072B2 (ja) 脱燐処理後のスラグの排滓性向上方法およびそれを用いた溶銑の脱燐処理方法
JP6311466B2 (ja) 真空脱ガス設備を用いる溶鋼の脱燐処理方法
JP5904238B2 (ja) 転炉における溶銑の脱燐処理方法
JP5967139B2 (ja) 溶銑の予備処理方法
JP4894325B2 (ja) 溶銑の脱燐処理方法
JP5061545B2 (ja) 溶銑の脱燐処理方法
JP2008063645A (ja) 製鋼方法
JP2006249568A (ja) 低燐溶銑の製造方法
JP2006009146A (ja) 溶銑の精錬方法
JP5272378B2 (ja) 溶銑の脱燐処理方法
JP2009256727A (ja) 溶鋼の精錬方法
JP5493911B2 (ja) 溶銑の脱燐処理方法
JP5689024B2 (ja) ダストを使用した溶銑の脱りん方法
JP4513340B2 (ja) 溶銑の脱燐処理方法
JP4305127B2 (ja) 溶銑の脱燐処理方法
JP2011058046A (ja) 溶銑の脱燐処理方法
JP4423927B2 (ja) 溶銑の脱燐処理方法
JP2002275521A (ja) 高炭素溶鋼の脱燐精錬方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20081022

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20110301

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110412

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110425

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140520

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4743078

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140520

Year of fee payment: 3

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140520

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350