図5は本発明の情報表示システムの原理構成ブロック図である。同図においてシステムは表示装置1と、表示データ保持装置2とから構成される。
表示装置1は、例えば電源が切断されてもデータ表示を継続できる表示部3と、外部から表示すべきデータを受け取るために近距離での通信を行なう近距離通信部4と、近距離通信部4によって受け取った任意のデータに対応して、表示部3の表示を制御する表示制御部5とを備える。
表示データ保持装置2、例えば携帯端末は表示データを保持する記憶部6と、少なくとも近距離の範囲で、記憶部6の記憶内容に対応して、表示データを表示装置1側に送信する通信部7とを備える。
表示データ保持装置2は、通信部7と異なって遠距離通信が可能で、外部から表示データを獲得するための遠距離通信部を更に備え、通信部7が遠距離通信部によって獲得された表示データを表示装置1側に送信することもできる。
表示装置1は、自装置を人体あるいは衣服に取り付けるための機械的脱着部を更に備えることもできる。
また表示データ保持装置2は、表示装置1上の表示部3よりも小さい表示領域を有する表示部と、自装置に表示装置1を取り付けるための機械的脱着部を更に備えることもでき、あるいは表示データ保持装置2が前述と同様の表示部を更に備えると共に、表示装置1が自装置に表示データ保持装置2を取り付けるための機械的脱着部を更に備えることもできる。
また表示装置1上の近距離通信部4は、表示データ保持装置2側から、表示すべきデータに加えて、表示のための電力、表示制御情報を更に受け取ることもできる。
本発明の表示素子は、2板の基板の間に注入される複数色の液晶を相互に接触させないための構造を持つ隔壁を備える。
隔壁の基板と対向する面が基板との接着力を有することも、複数色の液晶がコレステリック液晶であることも、また複数色の液晶の加法色が白色となることもできる。
また本発明の表示装置は、透過モードと反射モードとを有し,表示内容の切換え可能な第1の表示素子と、固定画像または固定文字を表示し、第1の表示素子を通して表示内容を視認可能な反射型の第2の表示素子とを備える。
第2の表示素子が、印刷物または文字や画像が手書きされた物体であって、第1の表示素子に着脱可能であることも、また第1の表示素子が、着脱可能な第2の表示素子上の固定画像または固定文字の位置、および形状に応じて、表示範囲を変化可能とする機能を有することもできる。
また本発明の表示装置は、液晶の2つの安定状態に対応する2種類の駆動電圧波形の波高値を、温度に応じて変化させる温度補償部を備える。
この液晶がコレステリック液晶であり、フォーカルコニック状態に対応する駆動波形の波高値を、温度範囲下限での駆動波形の波高値の上限値と下限値との平均値と、範囲上限での駆動波形の波高値の上限値と下限値との平均値とを結ぶ直線に対応して変化させることもできる。
また本発明の表示装置は、外部から高周波磁界を受信するために設置されたコイルを有し、そのコイルに誘起される高周波電圧を整流して表示用の電圧を与える表示用電源部と、コイルに誘起される高周波電圧を整流して表示用以外の回路に対する電圧を与えるロジック用電源部とを備える。
この場合、コイルが中間タップを備え、コイルの一端がアースされ、中間タップとアースの間に共振用コンデンサが接続され、ロジック用電源部が共振用コンデンサの両端の電圧を整流し、表示用電源部がコイルの他端と中間タップとの間の電圧を整流することもできる。
また表示装置は外部から非接触で電力の供給を受け、その電力を用いてデータ表示を行なう表示部を備えるものであり、外部からの電力供給量に対応して、表示部の表示機能を制限する表示機能制御部を備える。
また表示装置は外部から非接触で電力の供給を受け、その電力の1部を用いる表示用電源と、その1部を用いて表示部以外の回路に電力を供給するロジック電源とを備えるものであり、ロジック電源の電圧低下に対応して、表示用電源の出力電流を制限する電流制御部を備える。
本発明の表示素子駆動方法では、コレステリック液晶を用いたマトリクス型表示装置において、走査電極の1部を選択状態のリセットラインと書き込みライン、非選択状態の休止ラインにそれぞれ設定し、リセットライン、休止ライン、書き込みラインをそれぞれシフトさせながら、信号電極側に書き込みデータ信号を与える。
この場合、選択状態のリセットラインと書き込みラインに対する書き込み交流信号が、1ラインに対応する時間内で極性反転すると共に、2ラインに対応する時間の周期を持つこともできる。
次に本発明の表示素子駆動方法は、マトリクス型表示装置において、表示画面上の複数ラインのうちで表示すべきデータパターンが同一である複数のラインを検出し、検出された複数のラインを同時に選択し、同一パターンのデータを信号電極に与えて、同一パターンデータの一括書き込みを行うものであり、一括書き込みが行われる複数のラインの数の最大値は、同一パターンデータの空間周波数と、反比例の関係にあるようにすることもできる。
更に本発明の表示素子駆動方法においては、液晶素子に書き込むべき画像データをn階調の画像データに変換するステップ、変換後に各階調レベルの画素を抽出するステップ、抽出した画素に対して、1番目に輝度の低い階調レベル1(即ち黒レベル)とn番目に輝度の低い階調レベルn(即ち白レベル)をそれぞれ黒レベルと白レベルに変換して形成したサブ画像1、1番目に輝度の低い階調レベル1から2番目に輝度の低い階調レベル2までを黒レベルに変換して階調レベルnと組み合わせて形成したサブ画像2、・・・、1番目に輝度の低い階調レベル1から(n−1)番目に輝度の低い階調レベル(n−1)までを黒レベルに変換して階調レベルnと組み合わせて形成したサブ画像(n−1)を形成するステップを有し、サブ画像1の書き込みから初めて,順次サブ画像2、・・・サブ画像(n−1)の順番に書き込んでn階調の表示を得る書き込み方法が用いられる。
また,該液晶素子に書き込むべき画像データをn階調の画像データに変換するステップ、変換後に各階調レベルの画素を抽出するステップ、該抽出した画素に対して、1番目に輝度の高い階調レベル1とn番目に輝度の高い階調レベルnをそれぞれ白レベルと黒レベルに変換して形成したサブ画像1、1番目に輝度の高い階調レベル1から2番目に輝度の高い階調レベル2までを白レベルに変換して階調レベルnと組み合わせて形成したサブ画像2、・・・、1番目に輝度の高い階調レベル1から(n−1)番目に輝度の高い階調レベル(n−1)までを白レベルに変換して階調レベルnと組み合わせて形成したサブ画像(n−1)までを形成するステップを有し、サブ画像1の書き込みから初めて、順次サブ画像1、サブ画像2、・・・、サブ画像(n−1)の順番に書き込んでn階調の表示を得る書き込み方法が用いられる。
図6は本発明の表示装置の原理構成ブロック図である。同図において表示装置10は、データ表示を行なう表示部11と、表示すべきデータの獲得方法に関する情報と、表示データの表示様式に関する情報とを記憶する記憶部12と、記憶部12の記憶内容に従った、外部からの表示データの獲得と、表示データの表示部11上での表示とを制御する制御部13とを備える。表示部11としては、電源が切断されても半永久的に、あるいはある程度の時間はデータ表示継続可能なものを使用可能である。
図10の表示装置10において、制御部13が外部、または内部から与えられる指令に対応して表示装置10の自動起動を行なうことも、また外部からの表示データの獲得と、その表示との終了後に、表示装置10を自動的に待機状態とすることもできる。
また表示装置10は、外部からの表示データの獲得の途中で外部との通信が途切れた時、通信再開時に獲得未了分の表示データを獲得するデータ獲得部を、また表示部11に表示されているデータの書き換えを禁止する書き換え禁止部を、更に表示部11が表示できるデータとしての1ページ分以上のデータを記憶する不揮発記憶部を更に備えることもできる。
以下本発明の実施の形態についていくつかの実施例にわけて説明する。まず実施例1として情報表示装置、すなわち表示器側には電源を持たず、非接触のICカードのように、例えば無線端末側からデータとともに送られる電力を用いて表示装置側で表示が行われる情報表示システムについて説明する。
図7はこのような表示システムの第1の例の構成ブロック図である。同図においてシステムは無線端末機20、ワイヤレス表示器21によって構成され、無線端末機20は外部無線送受信部23を備え、無線送受信端末局22との間で外部無線情報をやりとりすることができる。外部無線送受信部23は無線LAN送受信部でもよい。
無線端末機20は電源部25、制御部26、ワイヤレス表示器21側との近距離通信を行うためのアンテナ27、アンテナ27を用いる通信を制御する非接触送受信部28、ワイヤレス表示器21側に送るべき表示データなどを格納するメモリ部29、無線端末機20側でのデータ表示を制御する表示部駆動回路30、表示部31及びスピーカー32を備えている。
ワイヤレス表示器21は無線端末機20側との近距離通信のためのアンテナ36、その通信を行う送受信部37、全体を制御する制御部35、表示用データ、制御用データを格納するメモリ部38、データ表示を行うための表示部駆動回路39、メモリ性表示部40、および無線端末機20にワイヤレス表示器21を機械的に脱着可能とさせるための機械的取付機構41を備えている。
一般に無線端末機20、例えば携帯電話には小さなディスプレイがついている。その画面表示を拡大したり、全体的に大画面に表示するために、無電源表示カードとしてのワイヤレス表示器21を用い、携帯電話にワイヤレス表示器21を取り付けるための機械的脱着部としての機械的取付機構41を備え、一体化可能とする。この時、機械的取付機構41の近くに近距離通信のための送受信部37が設けられ、その近距離通信システムは表示データの通信と同時にワイヤレス表示器21側での表示のための電力を供給する機能を持っている。その例としてはICカード、あるいはRF(ラジオ・フリケンシー)タグのような近距離無線通信機能を利用することができる。
メモリ性表示部40としては、例えば電源を切断しても半永久的に表示状態を保持する、例えば後述するコレステリック液晶を用いることもでき、また必ずしも半永久的ではないが、ある程度の期間表示状態を保持することのできるメモリ表示媒体、あるいは一般的なバッファメモリとその内容の表示部を用いることもできる。
図8は、第1の実施例における情報表示システムの第2の例の構成ブロック図である。同図においてはワイヤレス表示器21側でデジタルカメラ43から送られる画像データの表示が行われる。すなわち画像44が撮像器45によって撮影され、デジタルカメラ43の後ろ側の面にある背面表示器46に、背面表示器駆動回路47の制御によって画像44が表示されるとともに、アンテナ27を介してそのデータがワイヤレス表示器21側に送られる。
図9および図10は、図7のシステムにおける画面表示モードの説明図である。図9では、無線端末機20、すなわち携帯電話のディスプレイ上の表示データ、すなわち表示Aがワイヤレス表示器21側に、例えば携帯電話20に表示器21が機械的に取り付けられた状態で送信され、ワイヤレス表示器21を携帯電話20から取り外した状態でもその表示はそのまま行われる。
図10は無線端末機20側の表示データとワイヤレス表示器21側での表示データが異なる異画面モードの説明図である。無線端末機20側では表示Aが行われるのに対して、ワイヤレス表示器21側では表示Bが行われる。
図11は、図7のシステムにおける画面選択送信モードの説明図である。まず無線端末機20側で、ワイヤレス表示器21側に送るべき画面Aが選択され、送信ボタンが押されることによって選択された画面Aのデータがワイヤレス表示器21側に送信されるが、無線端末機20側ではそのデータ送信前には送信可能、送信中には表示送信中、また送信が終了すると表示終了がディスプレイ上に表示される。
図12は、デジタルカメラを含む様々な端末から無電源表示カード、すなわちワイヤレス表示器上へのデータ表示の説明図である。デジタルカメラに限らず、携帯電話あるいはPDAの表示データを無電源表示カード上に表示させることができる。例えば携帯電話は図7で説明したように無線基地局から受信したデータや、インターネットを介して取得したデータを無電源表示カード上に表示させることもできる。
図13は、無線端末機20、例えば携帯端末とワイヤレス表示器、すなわち無電源表示カードとの機械的脱着部としての機械的取付機構41の説明図である。同図においてはワイヤレス表示器21上に板ばね50が固定されており、その部分を携帯端末側の挿入部に挿入して、ワイヤレス表示器21に固定することができる。板ばね50は携帯端末の挿入部側に固定することもでき、ワイヤレス表示器21側には機械的な補強板を設けることもできる。接合部は電気的な接触を行うものではなく、摩擦などによって多少傷ついても問題はない。取付部付近に、例えば図7で説明した近距離通信用のアンテナ27に相当する電磁コイル51を設けることができる。
図14は、図13の板ばね50の替わりにスプリング52、53を用いたものであり、このスプリングの間にワイヤレス表示器21を挿入することによって機械的取付が行われる。
図15、および図16はワイヤレス表示器21、すなわち無電源表示カード側の機械的な取付部の説明図である。表示カードを縦、または横にして取り付け可能なようにカードに2つの取付部54が設けられ、図15では縦に取り付けられる場合の表示状態が示されている。2つの取付部の近くには、例えば図7のアンテナ36に相当するコイルが備えられ、またカード上には表示を行うためのドライバ55と制御用のIC56が備えられている。図16には、ワイヤレス表示器21、すなわち無電源表示カードが横に取り付けられる場合の表示状態が示されている。
図17、および図18は、図13〜16とは異なる機械的取付機構の例である。ここでは取付機構として磁石・マジックテープ(登録商標)57が用いられ、図17は無電源表示カードが無線端末機(携帯端末)20に取り付けられた状態を示している。図18は、無電源表示カードが、無線端末機20から取り外された状態を示し、図15の取付部54の替わりに磁石・マジックテープ57が用いられている。
図19は、ワイヤレス表示器21を、例えば洋服などに取り付けるウエラブル表示システムの例である。ワイヤレス表示器21、すなわち無電源表示カードの裏側にマジックテープ58を張ったり、表示カード自体を腕に巻きつけるような形式で人体に取り付け、この表示カードに無線端末機20を近づけることによって、必要な時点で人体に取り付けた表示カードに画面表示を行うことができる。
例えば腕に表示カードを取り付け、携帯電話を耳に近づけた状態で音声を聞き、さらに腕を携帯電話に近づけることによってカード上の画面表示を見ながら会話をすることもできる。この場合、表示は大画面であり、また無電源カードのためバッテリーが必要なく、軽くかさばらないという利点がある。例えば胸のポケットに携帯電話を入れたままで表示カードを胸に近づけた時に、表示カードが検知され、データの送信が行われて画面表示が行われるようにすることもできる。
ここでワイヤレス表示器21、すなわち無電源表示カード側での画面表示については静止画像の表示を行うことが好ましい。その理由は例えば電源を切断しても表示が継続されるような素子は一般に書き込み速度が遅いことにもよるが、大画面表示自体情報量が多いため、静止画像として利用する場合が多くなるためであり、また大画面情報を動画で扱うと多大な消費電力を要するためである。さらに一般的に消費電力を小さくするために無電源表示カードへの送信の表示は間欠的に行うことが望ましい。例えば50msでデータを送信表示し、100秒間は送信を停止することにすれば表示電力を大幅に削減することができる。
なお本発明の特徴請求の範囲、第1項の表示手段は図7のメモリ性表示部40、近距離通信手段はアンテナ36と送受信部37、表示制御手段は制御部35と表示部駆動回路39とに相当し、また記憶手段はメモリ部29、通信手段はアンテナ27と非接触送受信部28に相当する。
また請求項2の遠距離通信手段は外部無線送受信部23に相当する。請求項3における機械的脱着手段は機械的取付機構41に相当し、また請求項4の表示手段は表示部31に相当し、機械的脱着手段は例えば図13における取付部50に相当する。
以上のように実施例1によれば、通常はモバイル機器などと切り離された無電源の大画面表示器を、使用時には携帯端末や、ディジタルカメラなどのモバイル機器に一体化して取り付けることによって、ハンズフリーでモバイル機器の画面を大画面化あるいは、多画面化することができると共に、使用後は切り離し、メモリ機能を利用して表示が残っている大画面の表示結果を利用することができる。
特にコレステリック液晶表示素子を用いることによって、コストが低く、かつフィルム化が容易なパッシブ駆動型の高精細でカラーのメモリ性表示が得られる。プリンタを利用することなく、モバイルプリンタで印字した結果と同様の効果を実現でき、モバイルプリンタでは実現しにくいカラー表示や大画面化が可能となる。特に携帯電話のように小型化が要求される端末においては、大画面表示の実質的な効果が極めて大きい。
また携帯端末の無線通信機能を利用して資料やカタログの情報をインターネットを通じて獲得し、大画面の表示記録として残すことができる。メモリ性表示機能のある表示器をカバンやポケットに入れておけば、即時に大画面の見やすい表示が可能となる。また無電源表示カードを人体に取り付けることによって、従来のバッテリーなどを利用したウェラブル表示の欠点である重量やかさ張り、あるいは充電の手間なども解消可能となる。
続いて本発明の実施形態における実施例2として、電源が切断された状態で表示が継続される代表的な表示媒体としてのコレステリック液晶表示素子、およびその表示素子を用いた表示装置を説明する。
まずコレステリック液晶の性質について一般的に説明する。コレステリック液晶はある波長範囲の光を選択的に反射するものであり、その一種としてのカイラルネマティック液晶は、ネマティック液晶にキラル性物質(カイラル材)を添加することによってコレステリック相を形成させた液晶である。コレステリック液晶は電気的な制御によって反射状態としてのプレーナ状態と、透過状態としてのフォーカルコニック状態の2つの安定状態が得られ、このプレーナ状態とフォーカルコニック状態とは、何らかの外力が加えられない限り、半永久的に保持されるメモリ性を持っている。
図20、および図21は、コレステリック液晶のプレーナ状態とフォーカルコニック状態との説明図である。コレステリック液晶を用いた表示装置では、液晶分子の配向状態のスイッチングを行うことによって2つの状態の制御が行われる。図20は、特定の波長領域の光を選択的に反射するプレーナ状態を示す。このプレーナ状態では液晶分子の螺旋ピッチと、螺旋の回転方向に沿った円偏光が選択的に反射される。反射が最大となる波長λは液晶の平均屈折率n、螺旋ピッチpを用いて以下の式によって与えられる。
λ = n × p
反射帯域Δλは液晶の屈折率異方性Δnの増加につれて大きくなる。
図21はフォーカルコニック状態を示す。この状態では入射光のほとんどが透過し、透明状態となる。したがって液晶層の下に任意の色の層を設けると、フォーカルコニック状態ではその色を表示させることができる。そこで例えばプレーナ状態の反射光の波長帯域を550nm付近とし、液晶層の下に光吸収層(黒)を設けることにより、背景色黒の上で緑色の単色表示を行うことができる。
図22は、コレステリック液晶の反射スペクトルの例である。反射帯域の異なる複数種類の液晶素子(青、緑、赤)を併用することによって、フルカラー表示も原理的に可能となる。また反射率は左右のいずれかの円偏光の反射であるために理論上50%近くなる。
図23、図24は、コレステリック液晶に対する一般的な駆動波形の説明図である。コレステリック液晶に対してはパルス電圧の印加によって駆動が行われる。強い電界を与えると液晶分子の螺旋構造がほどけ、すべての分子が電界の向きに従うホメオトロピック状態となる。
図23において例えば±40Vのパルスを与えた後に電界を除去することによって、液晶分子の螺旋軸が電極に垂直になる螺旋構造が形成され、螺旋ピッチに応じた光を選択的に反射するプレーナ状態となる。
図24において例えば±24Vのパルスを与えた後に電界を除去する、すなわち液晶分子の螺旋軸が完全にほどけない程度の弱い電界を加えた後に電界を除去する場合には、液晶の螺旋軸は電極に平行となり、入射光を透過するフォーカルコニック状態が得られる。これに対して中間的な強さの電界を与えた後にその電界を除去するとプレーナ状態とフォーカルコニック状態が混在した状態が得られ、中間調の表示を可能とすることができる。
図25は、コレステリック液晶の応答特性をまとめたものである。同図においてVF0はフォーカルコニック状態への遷移が始まる閾値の電圧であり、VF100aからVF100bまでは完全なフォーカルコニック状態となる電圧範囲、VP0はプレーナ状態への遷移が始まる閾値電圧、VP100は完全にプレーナ状態となる閾値電圧である。初期状態がプレーナ状態の場合には、パルス電圧を上げていくとある範囲まではフォーカルコニック状態への駆動帯域となり、さらにパルス電圧を上げると再度プレーナ状態への駆動帯域となる。初期状態がフォーカルコニック状態の場合には、パルス電圧を上げるにつれて次第にプレーナ状態への駆動帯域となる。
図26はコレステリック液晶を用いた反射型液晶表示素子の構成例である。同図において基板60の内側にITO(インジューム・ティン・オキサイド)電極61、表示層62、および光吸収層63が挿入され、表示層62、すなわち液晶層はシール材64によってその両端がシールされている。
図27はコレステリック液晶を用いたセグメント表示の例の説明図である。例えば最終桁の“3”の表示において(2)と(5)の部分をフォーカルコニック状態に、その他の(1)、(3)、(4)、(6)および(7)の部分をプレーナ状態に駆動することによって表示が行われる。
コレステリック液晶を用いた表示素子の構成について説明する。コレステリック液晶は基本的にある色調の単色表示を示し、2つの液晶が混在すると容易に混合してしまい、所望の色調を反射することができなくなる。すなわち2つ以上の液晶が混合すると中間色または無反射状態となる。そこで対向する1対のマトリクス基板内に隔壁を設け、隣接画素またはドットの単位で複数の液晶が混合しないような分離構造とし、それぞれの液晶を異なる注入口から注入する必要がある。
液晶を分離する方法としては液晶をカプセル内に封じ込めるカプセル構造も用いられているが、カプセルの界面、およびカプセルの厚さの影響によって、ノイズ光によるコントラスト低下と駆動電圧の上昇を招き、表示装置としては好ましくない。また所望の画素に所望のカプセルを配置することも困難であり、実施例2では隔壁による分離構造を採用することによって高いコントラストと低いコストとを実現することができる。
図28に,マトリクス基板における液晶分離構造を示す。パッシブ型の単純マトリクス基板と、TFTなどのアクティブ型マトリクス基板とのどちらにも適用可能である。実施例2では、パッシブ型の単純マトリクス基板での例として、2つの液晶を挿入するための分離構造例を示す。隣り合うドットに2つの液晶を挿入するため、下側の基板60側の電極61のライン毎に隔壁62を形成する。上側の対向基板60は、直交した電極ラインを持ち、マトリクス駆動が実現される。隔壁62は液晶に溶解しない樹脂であり、フォトリソ法により形成することができる。隔壁62は、セル内部を減圧させておくことで、対向基板に密着させることができるが、隔壁材料に接着性を与え、対向基板を強力に固定させることにより、耐久性を向上させることが望ましい。隔壁材料は樹脂であり、加圧、加熱処理により、対向基板との接着が可能である。
図29は、2つの液晶63、64の分離図を示す。各液晶を混合させないように、注入口を2つ設けている。液晶の注入方法は、一般的に、真空中で液晶溜り容器に浸漬し、大気圧に戻して注入を完了させる。そのため、2つの注入口は、液晶空セルの異なる端辺に形成しなければならない。注入手順としては、一方の液晶を注入後、封止材65で封止処理し、もう一方の液晶を注入する。図に示すように、隣接する電極ライン毎に異なる液晶を挿入することが可能となる。所定のラインを駆動することで、マルチカラー表示と加法混色を表示することが可能となる。
図30に、図29における2つの液晶63、64を用いた場合の画素構成を示す。表示素子として、白と黒の表示が望まれているため、2つの液晶は、加法混色で白色となるように、補色の関係とする。例えば、オレンジ色と青色をコレステリック液晶の反射光とすることで、白色となる。図30では、オレンジ色と青色の2つのドット66(サブピクセル)で画素(ピクセル)67を形成している。コレステリック液晶の反射光は、印加電圧の調整で中間的な反射率とし、階調表示も可能であるが、安定的な駆動形式は2値表示(反射率maxとmin)である。2値表示ならば、液晶の厚さの差による明暗や、2つの液晶の駆動条件の精度を緩和させることができる。なお、液晶のピクセル67の区分に対応する横方向の分割は、図28では上側の基板60側の電極61のラインによる駆動の単位に相当する。
そこで、図31に示すように、ドットをさらに分割し、サブドット68を形成する。サブドットを個別に駆動することで、階調表示が可能となる。図30では、白、黒、オレンジ、青の4色であったが、図31では、9色表示が可能となる。
また、図30、図31において、各ドットまたはサブドットの駆動可能な最小単位を仮想的な画素単位として駆動表示することができる。なにも処理しなければ、高精細な画像が形成されるが、画像によっては、片方の色ドットが連続し、オレンジ色または青色系のムラが形成されてしまう。そこで、画像を表示させる場合に、ある面積、例えば、数mm角の範囲で、点灯させる2つの色の個数が同程度となるように画像処理することで、高精細な白黒画像を表示することが可能となる。例えば、オレンジ色が連続する場合、オレンジ色のドットの近傍を青色ドットの表示に変換する。本手法により、ドットを仮想的な画素に見立て、白黒表示のモードで、高精細表示モードに変換することが可能となる。
図32は、3つの液晶69、70、71を用いた時の実施例を示す。3原色のR色、G色、B色の反射を呈するコレステリック液晶の挿入例である。1つの平面の基板内に3種類の液晶を分離して挿入することは困難であったが、図32に示すドット配列を実現するために、1つの液晶(Y)70が、他の2つの液晶(Z)69と(X)71間に交互に注入されるX,Y,Z,Z,Y,Xの周期を持つドット配列のライン構造であるならば、3種類の液晶を1平面の基板内に挿入することが可能となることが判った。ドット配列は、RGBで1画素と、BGRで1画素の2種類が交互に配置される。G色は、人間の知覚の解像力が高く、G色ドットのみ、等間隔で配置する。R色、B色は、知覚的解像力が低いため、等間隔に配置されなくても問題は少ない。注入口は、混合を防止するため、各々異なる端辺に配置する。
図33、34に、ドットをさらに分割し、サブドット68を形成し、高解像度と階調表示を実現した例を示す。図30と同様に2値表示を行なうことを想定すると、図33では8色表示、図34では64色表示が可能となる。また、図33、図34において、各ドットまたはサブドットの駆動可能な最小単位を仮想的な画素単位として駆動表示すれば、図30、31と同様に高精細な画像が形成される。画像処理によって、白黒画像の高精細表示モードに変換することも可能となる。
次にコレステリック液晶を用いた表示素子と、紙や写真を用いた印刷媒体とを組み合せた表示装置について説明する。前述のようにコレステリック液晶は選択反射状態としてのプレーナ状態と、実質的に透明状態のフォーカルコニック状態との2つの安定状態が存在する。一般には液晶素子の下に光吸収層(黒層)をおいて、反射状態の明と透過状態の暗の表示が行われていた。
しかしながらコレステリック液晶では光吸収層を設けなければ透明状態、すなわちフォーカルコニック状態では液晶素子の背景を視認することができる。そこでこのフォーカルコニック状態での透明状態を利用し、印刷媒体、一般的には紙媒体との融合を図ることによって、 応用範囲の広い液晶表示装置を提供することができる。
例えば、半永久性表示のできる電子ペーパの応用例としてレストランのメニュー表示などが提案されているが、メニューの全領域について表示を可変させる必要はない。例えば商品画像は一般的に固定した表示で良いが、画質を良くするためには写真を用いることが望ましい。一緒に表示されるべき価格や、本日の特売物の案内などについては可変表示を用いることが望ましい。そこで実施例2では印刷媒体としての写真などと、電子ペーパ媒体、例えばコレステリック液晶を用いた表示素子とを重ね合わせ、全体として重畳された表示形式を実現する。商品画像は印刷物としてリアリティ性が高く、価格や特価案内などは、電子ペーパを用いて容易にその内容を変化させることが可能となり、紙と電子ペーパの融合を図ることができる。
例えばコレステリック液晶を用いる電子ペーパをマトリクス表示型とすることによって、印刷物に対する表示内容に応じた適正な表示を実現することができる。印刷物はテンプレート化することによってより多くの応用形態が考えられる。例えば、印刷物としてカレンダーを用いることによって、そのカレンダーに重畳された電子ペーパの表示を用いて、可変型のスケジュール帳が実現される。
図35に,固定表示した印刷物(写真)とコレステリック液晶を用いた可変型表示素子の重畳表示例を示す。印刷物74の表面に可変型表示素子75を重ねる。この可変型の表示素子は、光吸収層を形成していない。図36に、表示状態を示す。印刷物74の上にある表示素子75において、透過モード(フォーカルコニック状態)(左)と反射モード(プレーナ状態)(右)を示している。照明光である入射光77が表示素子に照射されると、透過モード(左)では、そのまま印刷物に照明され、印刷物の画像に応じた反射光78が反射され、透過モードの表示素子を通過して、そのまま視認される。つまり、印刷物がそのまま視認される。反射モード(右)では、コレステリック液晶の層ピッチに応じた波長の光が反射され、他の光は液晶を透過し、印刷物に照射される。印刷物の画像に応じた反射光が反射され、反射モードの液晶を透過する。そのため、液晶の反射光79と印刷物の反射光78が重畳され、表示光80となる。画像品質の良い紙媒体の印刷物と可変表示媒体の表示素子の融合が計られる。
液晶は、層ピッチに応じた色を呈する。そのため、下層の印刷物の色によっては視認し辛いことがあり、可変表示を行なう印刷物の領域に対しては、考慮が必要である。もっともコントラストを高くして視認性を上げるためには、印刷物のこの領域は黒色が良い。または、灰色などのように反射率を低くすることで、視認性を向上させることが可能となる。また、この領域を着色し、反射光78を特定の色とすることで、表示素子反射光79と加法混色となり、色を変化させることが可能である。例えば、表示素子の反射光79をオレンジ色に設定し、印刷物を青色とすることで、表示色は白色となる。印刷物の様々な工夫で、領域ごとに色の変化を与えることも可能である。白は最も望まれる表示色である。白表示実現のためには、印刷物の色と表示素子の反射光の色を補色の関係に設定することで実現できる。オレンジ色と青色は、補色の関係にある。
図37に、メニューまたはカタログなどの商品販売を目的とした一例を示す。商品画像としては、表示品質に優れた印刷物を使用する。例えば、レストランでは、美味しそうに見える画像を印刷し、固定表示とする。その他の表示、主にキャラクタ表示は、可変型の表示素子で行なう。可変型の表示素子75の下層部の印刷物の部分は、黒色など、視認性が良くなるような印刷柄としている。キャラクタ表示としては、価格、特売品、ランチメニューの指定、営業時間の案内、広告など様々な表示が想定できる。可変型の表示素子の表示を、オンラインで可変することにより、様々な応用が考えられる。例えば、時間帯に合わせた価格設定、在庫量の調整、特売品の変更、お客に合わせた広告表示、団体割引、女性割引、家族割引表示、会員割引、ポイント割引など、お客に合わせたカスタムメニューがその場で提供できる。お年寄り向けに、その場で、拡大表示も可能である。商品画像としては、リアリティの良い画像を表示する。
図38に示す例は、そのレストランメニューの例である。画像の下方に、可変表示領域を設定し、価格を表示している。図38は、印刷部と可変表示部の分解図である。商品の入れ替えなどで、画像を変更する場合は、印刷物のみを差し替えれば良い。印刷物は、容易に着脱可能としている。可変表示素子は、マトリクス型の表示素子としているため、印刷物のレイアウト変更にも容易に対応できる。
図39は、図37、38の印刷物を差し替え、スケジュール表とした例である。印刷物は、カレンダーである。可変型の表示素子には、オンラインで予定を記入する。オンラインであれば、予定変更も随時記入できるとともに、複数人の予定を見ることも可能である。予定変更があっても、すぐに反映することが可能である。共通化も図られ、情報共有が可能となり、効果的な管理が実現される。月が変われば印刷物を着脱し、入れ替えて新しいスケジュール表となる。また、手書きで記入したければ、着脱して、印刷物に手書き追記も可能である。可変型の表示素子は、図35〜38と同様にマトリクス表示素子なので、印刷物に合わせたレイアウト変更が容易にできる。印刷物には、表示領域を考慮して、柄を印刷している。スケジュール表示部は、黒色または灰色、または補色などの視認し易い柄としている。
図40は、地図表示に使用する応用例を示す。構造は、図39などと同じである。印刷物は、道路地図、会場案内図、建屋平面図などのレイアウト図であり、可変表示部は、現在位置、目的地指示、通過履歴などを表示することができる。目的地に合わせた広告を表示することも可能である。オンラインならではの、通過予定時刻も表示することができる。目的地が大きく変更されるときは、印刷物を着脱して、新しい印刷物の地図をセットする。この表示装置を使用すれば、とても便利な案内板となる。図40では、イベントなどの会場案内の例を示している。お客に合わせて印刷物を変更し、配布することができる。無線表示システムを搭載しておけば、各ゲートを通過するごとに現在位置を表示することが可能である。現在地近くの有用な情報を表示させることも可能である。
図41は、参考書、問題集に対応させた例である。印刷物には問題を印刷しておき、解答、解説を後から表示する。その場で解答、解説をよむことができるため、理解し易い。問題を変更する場合、印刷物を着脱させ、入れ替えれば良い。図41は、問題集の例である。パソコンのモニタ表示とは異なり、反射型の表示装置であって、長時間勉強しても疲労が少なく、効率的に理解することが可能となる。
図42は、銀行または保険などの金融機関などで用いられるシミュレーション用表示に対応させた例である。印刷物には共通項目を印刷しておき、お客のカスタムな数値は、オンラインで表示する。その場でシミュレーション結果が得られるので、判りやすく説明することができる。商品を変更する場合、印刷物を着脱させ、入れ替えれば良い。図42は、銀行のローンのシミュレーション例である。生命保険の説明員の場合、ノートパソコンを持って、お客に出むくことがある。パソコンの表示をお客に説明することがあるが、とても視認し辛く、お客を納得させることが難しい。実施例2の表示装置を使用すれば、視認性が良く、お客は容易に説明を理解できることとなる。
以上のように実施例2によれば、コレステリック液晶を用いるマトリクス表示素子などにおいて、複数色の液晶を注入してマルチカラー化を実現することができる。積層構造と比較して、界面が少なく、高いコントラストを持ち、簡素化された部材を用いることによって、コストの低減が実現される。
またコレステリック液晶マトリクス表示素子を可変の表示素子とし、固定表示素子としての印刷物と組み合わせることによって、電子ペーペーと紙の融合が図られ、電子ペーパの特徴と紙の特徴を最大限に引き出すことが可能となる。印刷物をテンプレート化し、可変表示素子と着脱しテンプレートの内容を入れ変えるだけで、様々な応用形態に発展させることが可能となる。印刷物のテンプレートをデータベース化することによって、表示素子のレイアウト変更、内容変更、更新が即座に可能となる。可変表示素子は多数回の使用が可能であり、コストも低くなる。固定表示素子は印刷物の代わりに手書きでもよく、また建物の壁に描かれた絵の上にコレステリック表示素子を重ねて、重畳表示を行なうこともできる。
次に実施例3について説明する。本実施形態においては、例えば半永久的なデータ表示を実現するために実施例1におけるような無電源表示カードを用いる場合には、例えば非接触ICカードリーダ/ライタなどから供給される電力量が小さいため、電源回路に対する様々な制御方式を用いる必要がある。このような電源回路の制御を実施例3として説明する。
図23、図24で説明したようにコレステリック液晶の駆動のためにはプレーナ状態、およびフォーカルコニック状態にそれぞれ対応して、2種類の電圧の値が必要となる。しかもプレーナ駆動の電圧は40V程度と他の表示素子に比べてかなり高い値となる。例えば一般的なDC−DCコンバータを用いることにすると、μFオーダの静電容量の大きいコンデンサが必要となり、電源回路を厚さ1mm程度以内、すなわち無電源表示カードの厚さ以内とすることは極めて困難である。
そこで実施例3ではDC−DCコンバータを使用することなく、非接触ICカードやRFタグにおいて、信号および電力の供給に用いられている高周波磁界を利用し、超薄型の回路で40V程度の高電圧を発生する電源回路を使用する。
図43はそのような電源回路の例である。この電源回路は表示用の、例えば液晶ドライバに対するロジック用の電源と、素子そのもの、すなわちコレステリック液晶に対する表示用の電源とを兼ねるものである。
図43において、例えば非接触ICカード側からの高周波磁界によって電圧が誘起される、インダクタンスLを持つコイルに中間タップTを設け、コイルの一端をアースし、中間タップTとアースとの間に共振用のコンデンサC1を接続し、半波整流回路を介してロジック用の電圧を供給し、またコイルの他端と中間タップTとの間には共振用のコンデンサを接続せず、半波整流によって表示用の電圧が供給される。このようにロジック用の電圧を取り出す中間タップとアースとの間にのみ共振用のコンデンサを接続することにより、製造ばらつきの影響を少なくでき、安定した直流電力を供給することが可能となる。
図44は、図43において中間タップを設ける替わりに、ロジック用と表示用の電源をそれぞれ独立に設けたものである。図で上の回路はロジック用の電源回路であり、図43の下の部分を独立させたものと考えることができる。一般的な非接触ICカードにおいて電力供給を受けるためのL1の値は、例えば1.4μH程度であり、C1として例えば100pFを用いることによって、ロジック用の電圧として5Vを得ることができる。DC−DCコンバータを使用すれば、この電圧を昇圧して表示用電源電圧を得ることが出来るが、そのためには前述のようにμFオーダのコンデンサを必要とする。そこで、例えばL2=4〜5μH程度として表示用電源電圧を得るものとする。
次に例えばパッシブマトリクス駆動回路では選択レベルの走査線上にある液晶セルに対してはプレーナ、およびフォーカルコニック駆動に対応する電圧を印加する必要があり、また非選択レベルの走査線上にある液晶セルには、セグメント線のレベルに関係なく、選択時に書き込まれた状態が変化しないような電圧を印加する必要がある。すなわち一般にクロストークを抑えるような電圧を印加する必要があり、例えば市販のSTN液晶ドライバLSIでは5種類の電圧の値を必要とする。
図45はそのような場合に対応する電源回路の構成例である。ロジック用の電源回路は図44におけると同様であるが、表示用の電源回路としては図44の下側に示した電源回路の代わりに、倍電圧整流を用いた電源回路が多段に直列に接続された回路が用いられる。この多段接続の回路において、必要な電圧の値に応じて適当な個所の電圧を取り出すことによって、例えば5種類の電圧を供給することが可能となる。またこの整流回路としては半波整流回路、全波整流回路を用いることもできる。なお、図43〜図45の回路において過電圧の防止が必要な場合には、電圧出力端子と並列にアースとの間にツェナーダイオードを挿入することによって、電源の信頼性を高めることができる。また図45では表示用電源側の4つのコイルのうち、L2とL4とは同一方向に巻かれているのに対して、L3とL5とはその方向と逆方向に巻かれている。実験の結果、このように巻き方の異なるコイルを用いることによって高い電圧の発生が可能となることが判明した。
次に例えば非接触ICカードを無電源表示カードとして用いる場合に、非接触ICカードリーダ/ライタからの供給電力量は、リーダ/ライタの機種、リーダ/ライタとカードとの間の距離などによって大きく変化する。このため、カード上の表示部を常時稼動させると、表示部を持たない通常の非接触ICカードに比べて通信距離が著しく短くなったり、通信中に電力不足のために動作が不安定になる可能性がある。そこで実施例3ではそのような場合に対応して電力供給量に応じて表示器能を制限することにする。
図46は、例えばリーダ/ライタ側からの電力供給量に対応する表示用電源入力電圧の値に応じて、表示部への電力供給を全面的に遮断する回路の構成例である。同図において表示用電源入力電圧を分圧したVR1からの電圧が、コンパレータ(CMP1)によって基準電圧と比較され、表示用電源入力電圧が高い場合にはCMP1の出力はハイレベル(H)となる。TR1、TR2およびR1によって構成される回路は一般的な電流制限回路であり、CMP1の出力がHの場合には表示用電源出力が供給されるが、CMP1の出力がローレベル(L)の場合には表示用電源出力は全面的に遮断されることになる。基準電圧を適当に設定することによって電力供給量、すなわち表示用電源入力電圧が、非接触ICカードチップが動作するが、その必要値に近いぎりぎりの値の場合には、この回路を利用して表示部への電力供給が全面的に遮断される。
図47は、例えば非接触ICカードへの電力供給量に応じて、表示部の駆動周期を平均的に延長するためのクロック出力回路の構成例である。この回路は電力供給量が非接触ICカードチップが必要とする最小値、すなわち動作のための必要値よりは十分大きいが、定常状態における表示部稼動時の平均的必要量よりは小さい場合に、電力供給量に応じてクロックの周期を平均的に延長し、表示部の駆動周期を遅くする回路である。
図47においてVR2によって分圧された表示用電源電圧が小さい場合には、CMP2の出力はLとなり、ゲートAND1の出力としてのクロック出力は停止する。例えば、図44で説明した表示用電源回路において、クロックが停止し、電力供給が遮断されるとコンデンサC3が充電され、表示用電源電圧が回復することによって、クロックは再び出力される。このような動作が繰り返されることによってクロック周期、すなわち表示部の駆動周期が平均的に遅くなる。
図48は電力供給量に応じて、表示部において文字データのみを表示し、イメージデータを表示させないためのイメージ表示禁止信号の出力回路の構成例である。この回路は電力供給量が非接触ICカードチップの必要値よりは大きいが、定常状態における表示部稼動時の平均的必要値よりはかなり小さい場合に、表示部に文字データのみを表示し、イメージデータを表示しないことによって表示機能を制限する回路である。同図においてVR3によって分圧された表示用電源電圧が基準電圧より小さい場合にはCMP3の出力はHとなり、イメージ表示禁止信号が出力される。
次に表示用電源の電流制限について説明する。パッシブマトリクス型のコレステリック液晶表示パネルに対しては、前述のような電源回路を利用することによって既存のパッシブマトリクス型STN液晶ドライバLSIで駆動することができる。起動時を除けば、消費電力は比較的小さく、微弱出力の非接触ICカードリーダ/ライタなどから供給される電力で十分に動作可能である。しかし、このような既存のドライバLSIは動画表示を前提としているために、最終段のトランジスタの導通インピーダンスが低く、起動時の過渡状態では極めて大きな瞬時電流(定常動作時の5〜10倍)が流れる。このため、定常動作時の数倍の電力を供給しても、既存ドライバLSIを起動できない可能性がある。
しかしながら起動時だけのために供給能力の大きな電源を用意することはコストの上で極めて不利である。また、既存の微弱出力非接触ICカードリーダ/ライタなどでは、定常動作時の5〜10倍の電力供給を行うことは不可能である。このため、実施例3では、できる限り定常動作時の消費電力に近い供給電力で、既存のドライバLSIを安定に起動するために表示用電源の電流制限を行う。
図49は、表示用電源の電流制限回路の構成例である。同図においてロジック電源の電圧が所定値以下となった場合に電流制限が行われるようにVR1の値などをあらかじめ設定することによって、例えば、ロジック電源の電圧低下の値が標準値の5%を超えた場合には、表示用電源に対する電流制限が行われる。
また起動時においては、表示用電源電圧は一般に時間的に単調に増加するため、図47と同じ回路を用いて表示用電源の電圧値が所定の値を超えるまではクロック出力を停止させることによって、既存ドライバLSIを安定かつ迅速に起動することができる。この場合には図47に対する説明と異なり、表示用電源電圧が単調に増加するだけであるため、その値が所定の値、例えば標準値の95%を超えるまではクロックが停止される。
既存の一般的な液晶ドライバLSIでは、起動時でなくても表示パターンによっては表示電源電流が定常動作時の平均電流を大きく超える場合がある。この時にも起動時と同様に電流を制限し、表示電源電圧が所定値に回復するまで表示パネルの駆動を中断することによって、既存のドライバLSIを安定に動作させることが可能となる。
続いて、実施例3におけるコレステリック液晶の駆動特性における温度補償について説明する。コレステリック液晶に対してはプレーナ、およびフォーカルコニック状態に対応する波高値の異なる2種類の駆動波形が必要である。しかもその波高値は温度によって変化する。このため、動作温度範囲を広げるためには、温度に応じて波高値を変化させる温度補償が必要となる。実施例3においては、駆動波形の波高値を温度に応じて直線的に変化させることによって、広い動作温度範囲での波高値のマージンを確保する。
図50はパルス幅10msの場合のコレステリック液晶のプレーナ、およびフォーカルコニック駆動波形における波高値の例である。ある波高値以上では必ずプレーナ状態になるため、プレーナ状態に対応する波高値は、下限値に対応する一本の曲線で表される。これに対してフォーカルコニック状態への変化は、ある波高値の電圧範囲でのみ行われるために、フォーカルコニック駆動に対応する波高値は、下限値と上限値に対応する2本の曲線で表される。
図50においてフォーカルコニック状態に対応する波高値は温度によって大きく変化するため、温度に関係なく、フォーカルコニック状態への駆動を行うための波高値のマージンは小さくなる。
これに対してパルス幅を広くすれば、フォーカルコニック駆動に対応する波高値のマージンは大きくなることが知られている。図51は、パルス幅50msでのプレーナ、およびフォーカルコニック駆動に対応する波高値の例を示す。波高値のマージンは図50のパルス幅10msの場合に比べて数倍となるが、表示速度は1/5に低下する。
図52は、実施例3においてプレーナ駆動、およびフォーカルコニック駆動における2種類の駆動波形の波高値を、それぞれ温度に応じて、動作範囲内で直線的に変化させた例を示す。図50と比較すると、フォーカルコニック状態の上限と下限の間に3本の線が示されているが、その中央の線は動作温度範囲の下限値、すなわち0℃におけるフォーカルコニック状態に対応する波高値の上限値と下限値の平均と、動作温度範囲の上限、すなわち50℃での波高値の上限値と下限値との平均とを結んだ直線である。
実施例3においては温度に対応して、基本的にこの中央の直線によってフォーカルコニック状態に対応する駆動波形の波高値を変化させることにするが、そのマージンはそれぞれの温度において、元々図50におけるフォーカルコニック状態に対応する上限値と下限値との間に入れば良いことになり、図50におけるマージンに比べて新しいマージンは大きくなる。すなわち、フォーカルコニック状態に対応する前述の3本の直線の内で、上側の直線はマージン内における波高値の最大値、下側の直線はマージン内における波高値の最小値を示すことになる。この3本の直線に対応するマージン内の値は0℃で、最小25.4V、最大32.6V、平均29.0Vとなる。50℃では最小15.9V、最大23.7V、平均19.8Vとなる。
図52において、実施例3におけるプレーナ状態での駆動波形の波高値としては、例えば同一温度でのフォーカルコニック状態に対応する駆動波形の波高値に所定値を加えるか、または所定値を乗算した値として温度に対応して変化させることができる。その特性が図52において、プレーナ状態の上側にある線で示されている。なお、この線の0℃における値は、49.3Vであり、これはフォーカルコニック状態に対応する3本の線の内の平均値29.0Vの1.7倍である。また50℃における値は33.66Vであり、フォーカルコニック状態に対応する平均値19.8Vの1.7倍である。
図53は、図52で説明したプレーナ駆動、およびフォーカルコニック駆動の電圧波高値の温度補償回路の構成例である。同図においてAMP1、すなわち温度センサ出力が与えられる増幅器の増幅率はR2/R1に等しく、その値は1.7である。
ある温度におけるセンサ出力は図示しない演算回路によって演算され、0℃、および50℃における出力値が図52で説明したフォーカルコニック駆動に対応する3本の線の内で平均値を示す線の値と等しくなるように設定されている。すなわち、センサ出力値は0℃においては29.0V、50℃においては19.8Vである。そこでAMP1出力は0℃で49.3V、50℃で33.66Vとなる。これらの値は図52で説明したプレーナ状態に対する温度補償特性直線の値に等しい。
TR1とTR2とは、出力インピーダンスを十分低くするためのエミッタフォロア回路を構成し、それぞれのエミッタ電圧、すなわちプレーナ電圧とフォーカルコニック電圧の出力値はそれぞれのトランジスタのベース電圧より約0.7V低くなる。したがってプレーナ電圧出力値は0℃で約48.6V(=49.3−0.7)、50℃においては約33.0V(=33.66−0.7)であり、これらはプレーナ状態に対応する駆動電圧波形の波高値の最低値、すなわち図50で説明したプレーナ状態に対応する最低電圧、0℃で43.3V、50℃で30.9Vより十分に高い値である。
TR2のベース電圧は、AMP1の出力電圧のR4倍を(R3+R4)で割った値となる。この係数の値は1/1.7に等しく、TR2のエミッタ電圧、すなわちフォーカルコニック電圧の出力値は0℃において28.3V(=29.0−0.7)、50℃においては約19.1V(=19.8−0.7)である。これらの値は図52で説明した3本の直線によって表され、フォーカルコニック状態に対応する最小電圧(25.4V、および15.9V)より十分大きく、かつ最大電圧(32.6V、および23.7V)より十分小さくなっている。
また、前述のようにフォーカルコニック状態に対応する駆動波形の波高値を、液晶セルの動作温度に対応して、このように直線的に変化させることによってパルス幅10msでも、パルス幅50msの場合と同等のマージンが確保できる。すなわち、表示速度を5倍にしているにもかかわらず、波高値のマージンとして同等の値が確保でき、コレステリック液晶を用いた表示装置において広い温度範囲で安定な動作が可能となる。
以上において実施例3として、例えば非接触ICカードに対する電源回路や、表示機能制限回路、表示用電源電流制限回路、コレステリック液晶駆動電圧の温度補償回路などについて説明したが、これらの回路は実際にはそれぞれ独立して用いられるよりも、いくつかが組み合わされて使用されることになる。その組み合わせについては、必要に応じていくつかの回路を取捨選択して、組み合わせる形式とすることが可能である。
また各回路における素子の値や、基準電圧の値は比較的容易に決定することができる。図53の温度補償回路に対しては、抵抗の値の決定などについて詳細に説明したが、例えば図49で説明した電流制限回路の動作については一般的なハンドブックなどに記述されており、素子の値などを容易に決定することができる。
以上のように実施例3によれば、例えばコレステリック液晶を用いた表示パネルに対する電源回路の大幅なコスト削減、および薄型化が実現でき、また供給される電力量に対応して表示機能を制限することによって通信距離の短縮や動作不安定を回避することができ、さらに起動時の表示用電源の電流を制限することによって既存のドライバLSIを安定かつ迅速に起動できるため、モバイル機器応用の範囲が大幅に拡大される。
続いて半永久メモリ性表示素子、例えばコレステリック液晶を用いる表示装置における液晶素子の駆動方法、および画像表示方法などを実施例4として説明する。実施例4においては例えばコレステリック液晶素子が用いられる表示装置を無電源で使用するために、液晶素子の駆動や画像表示をできるだけ電力消費が少ない形式で行うための駆動方式、および画像表示方法について説明する。
図54は、実施例4における液晶表示素子、例えばマトリクス型の液晶素子を駆動するためのドライバの構成ブロック図である。このドライバ自体は、例えば市販されている既存のSTNコモンドライバとその構成はほぼ同じである。本発明に特有の構成ではなく、実施例4においてはその駆動方法に特徴がある。
図54において電力やデータを発信する無線端末機20、あるいはICカードリーダ/ライタなどから送られる電力およびデータは、電力/データ受信部81によって受信され、その受信結果に対応して信号制御回路82によって信号変換回路83の制御が行われ、マトリクス型液晶素子84の駆動表示が行われる。
マトリクス型液晶素子84は、一般的にラインを選択するための走査電極、およびデータを与えるための信号電極を備えており、走査電極側には液晶素子の駆動信号を交流とするための極性反転信号FR、ライン選択信号としてのEio信号、および信号電極側におけるデータのラッチとともに走査ラインのシフトを行うためのLp信号などが与えられる。信号電極側には、FR信号、Lp信号に加えて、書き込みに用いられるデータ信号などが与えられる。
走査電極側には、一般に一番上のラインから1ラインずつデータの書き込みを行うために走査電極の選択を行うEio信号が与えられ、ここではそのモードをコモンモードと呼ぶ。これに対して一番上から1ラインずつ書き込みを行うのではなく、任意のラインにデータ書き込みを行うためにラインを選択するセグメントモードと呼ばれるための信号を与えることもでき、この2つのモードを切り替えるための切り替え信号も与えられる。
図55は、実施例4における画面書き換え方式の説明図である。従来は画面書き換え時には前の表示画面が一括リセットされる方式が一般的であったが、この方式ではリセット時に少なくとも数十mWの電力が消費され、例えば非接触ICカードにおいてICカードリーダ/ライタ側から供給される電力の5〜10mWよりかなり大きくなり、電源を持たない表示装置側で一括リセットを行うことは困難である。
そこで実施例4では数ラインずつ、例えば4ラインずつリセットを行い、同時に1ラインのデータ書き込みを行うという動作をライン数だけ繰り返して画面書き換えを行うことによって、消費電力を抑制することにし、またリセット用データとして、例えば全部の画素を白にするというような特別のリセットデータを用いることなく、書き込みデータ自体をリセットに使用することにする。
図55において画面の下半分は前回表示分の画面を示し、上半分は新規表示の画面を示す。ここでは一番上のラインから始めて書き込み先頭ライン、すなわち前述の1ラインずつの書き込みラインがほぼ画面の中央付近にきた状態を示し、このライン上のデータの書き込みが行われるとともにリセットライン、例えば4ラインについては書き込みデータを用いたリセットが行われている。この動作について図56を用いてさらに説明する。
図56において、まずリセットラインとして4つのラインを設定する動作が行われる。同図においてEio信号とLp信号とが同時に入力されると、まず図55における画面上の上から一番目のラインが選択され、そのラインにデータを書き込み可能な状態となる。次にEioとLp信号との2つめのパルスが共に入力されると、最初に選択された1ライン目は、Lp信号によってシフトされ、2ライン目が選択されるとともに、同時に入力されるEio信号によって、1ライン目も同時に選択され、1ライン目と2ライン目の2つのラインが選択された状態となる。この動作が繰り返されてリセットライン設定区間では1ライン目から4ライン目が選択状態となって、その4つのラインにデータ書き込みが可能な状態となる。
次の休止ライン設定区間ではLp信号のみが入力されており、このパルスによって1ラインのシフトが行われ、画面上の2ライン目から5ライン目までが選択された状態となる。
その次の書き込み区間の最初で、Eio信号とLp信号とが同時に入力され、その前に選択されている2ライン目から5ライン目は1ラインずつシフトされ、3ライン目から6ライン目が選択された状態となるとともに、Eio信号の入力によって画面上の最初のライン、すなわち1ライン目も選択された状態となる。この状態で1ライン目のデータを与えることによって、1ライン目には本来書き込まれるべきデータが書き込まれるとともに、3ライン目から6ライン目までには1ライン目のデータがリセットのためのデータとして与えられ、前回表示されたデータのリセットが行われる。この時、2ライン目は休止ライン設定区間で設定された休止ラインとなっており、データの書き込みは行われない。
その次のLpパルスの入力に対応して、その前に選択されていたラインはシフトされ、2ライン目と4ライン目から7ライン目までが選択状態となる。この状態で2ライン目のデータが与えられ、2ライン目に本来書き込まれるデータが書き込まれるとともに、4ライン目から7ライン目までの前回表示データのリセットが行われる。
さらにその次のLpパルスの入力によって、同様に3ライン目と5ライン目から8ライン目が選択され、3ライン目のデータの書き込みが行われる。3ライン目にはその2つ前のLpパルスの入力時に1ライン目のデータが書き込まれているが、一般にコレステリック液晶の応答時間は材料の物性にもよるが、数十msオーダーである。2ライン目のデータが書き込まれるタイミングとしてのLpパルスの入力時点では、3ライン目は休止区間となっており、この区間(例えば50ms以下)において2ライン目の画素はフォーカルコニック状態、あるいはプレーナ状態への遷移の途中の過渡的な状態となっており、3ライン目のデータが実際に与えられる時点で、実際の書き込み状態としてのフォーカルコニック状態、またはプレーナ状態のいずれかが決定されることになる。そしてこのような動作が、例えば240ライン目まで、すなわち画面上の最も下のラインのデータの書き込みが行われるまで繰り返される。
次に実施例4における異なる消費電力抑制方式について図57を用いて説明する。図57は、図54で説明した液晶素子の駆動波形における極性反転を決定する信号であるが、一般にコレステリック液晶では1ラインのデータ書き込みパルスの中で、パルスの極性を反転させることが望ましい。これは液晶の劣化や画質の劣化(残像やクロストークなど)の問題を解決するためであり、例えば数ラインごとや1フレームごとに極性を反転する手法もあるが、液晶内のイオンの変動などによる残像や表示ノイズの原因となり、あまり好ましい方式ではない。
図57の上側は従来の駆動信号の極性反転方式を示し、それぞれのラインに対しては、最初は正のパルス、次に負のパルスが与えられて極性反転が行われる方式が用いられていた。図57の下側の波形が実施例4における極性反転方式である。例えば1ライン目には最初に正のパルス、次に負のパルスを加え、2ライン目には逆に最初に負のパルス、次に正のパルスを加えるような形式で駆動信号の極性反転を行うことにより、1ラインの中での極性は反転されているが、反転周期自体は2倍になるため消費電力を抑制できるととにも、表示の品質に問題を生ずることはない。
図58から図60は、図55から図57で説明した駆動方式の効果の説明図である。図58、図59は、従来技術として説明した図3、図4に対応する実施例4の効果を示すものである。前述のような駆動方式を用いることにより、数十msの周期を持つ長いパルスを用いる替わりに、例えば8ms程度の周期を持つ短いパルスを用いてもコントラストの低下が発生せず、5mW程度の微弱な電力を用いた駆動回路によってQVGAサイズ(横320ドット×縦240ドット)の画面に対して、高品位のデータ書き込みを実行することができる。
図60は、実施例4において一括リセットを行うことなく、数ライン、図56では4ラインずつリセットを行うことによる消費電力抑制効果の説明図である。一括リセットを行う場合には、駆動開始時の消費電力が極端に大きくなるが、実施例4ではそのような消費電力の増大を抑制することができる。
次に実施例4における画像書き込み方式としてのスキップ駆動方式について図61、図62を用いて説明する。この駆動方式、すなわちスキップ駆動方式では走査電極側にも前述のコモンモードでなく、セグメントモードの信号を与えることにより、マトリクス上の任意の位置の画素に対してデータ書き込みを行うことができるものとする。
図61において、まず表示画面の全体のリセットが行われる。このリセットにおいては全体を同時にフォーカルコニック状態に遷移させても良いが、消費電力が大きくなるため、3ms以下の周期の短いパルスによる不完全なフォーカルコニック状態への簡易リセットでもリセットの効果がある。あるいは表示部全体を複数のブロックに分け、ブロックごとにリセットしても良い。
次に走査電極側で同一パターン、ここでは白べたのパターンが書き込まれるべき部分が選択され、その部分の電極に対する一括書き込みが行われる。これによって複数のラインに同時に白べたのパターンを描くことができ、駆動時間の短縮を計ることができる。
ここでは同一パターンとして白べたのパターンをあげたが、同一パターンについては特に限定はないが、市松模様のように空間周波数が高いパターンは消費電力が大きくなるため、パターンに応じて一括書き込みを行うラインの数に制限を持たせる必要がある。すなわち、空間周波数が高いパターンほど一括選択するライン数を少なくする。
画像処理においてある画素に対する誤差を周囲の画素に拡散させる誤差拡散法で処理されたランダムパターンの画像であれば同一パターンの存在する確率は低くなるが、階調画像の濃度信号に雑音を加えて、閾値処理により2値化する2値ディザ法の一種としての組織的ディザ法や、網点によるハーフトーン画像においては同一パターンが存在することがある。しかしながら、このスキップ駆動方式はテキスト表示のように白べた部などが多い場合に特に効果的である。
図61において、同一パターンの一括書き込みの後に、通常の順次ライン駆動(パッシブ駆動)が行われ、同一パターン以外の残りの部分の順次書き込みが行われる。この時、インターレース走査とすれば、なお早く画像全体を認識することができる。このスキップ駆動は、MLA駆動のように複雑な方式を用いることなく、簡易な駆動回路で実現でき、パターンによって一括駆動するラインの数を異ならせることに特徴がある。
図62は、このスキップ駆動方式の処理フローチャートである。同図において左側は駆動前処理としての同一パターン検出処理フローチャートである。この処理では、例えば8ビットの原画像を用いてステップS1で誤差拡散法などによる2値スクリーニングが行われ、ステップS2においてループ1としてデータの比較元としての走査電極が選択され、ステップS3でデータの比較先としての走査電極が選択され、ステップS4でそれぞれの電極に対するデータのパターン比較が行われ、ステップS5で同一パターンが検出されたか否かが判定され、検出された場合にはステップS6で同一パターンが存在する座標、あるいはアドレスが同一パターンのアドレス保存メモリ86に格納された後に、また検出されなかった場合は直ちにステップS3で比較先の走査電極が変更されて処理が続けられ、ステップS2で選択された比較元としての走査電極のデータに対する比較が終了した時点で、ステップS2で比較元としての走査電極が変更されて処理が続けられ、すべてのデータの比較が行われた後に処理を終了する。
図62の右側のフローチャートは、駆動時、すなわち書き込み処理のフローチャートである。同図において処理が開始されると、ステップS10で例えば表示部全面の一括リセット処理が行われ、ステップS11で同一パターンのアドレス保存メモリ86から同一パターンが1つ取り出され、ステップS12でそのパターンを書き込むべき複数の走査電極が同時選択され、ステップS13でデータの一括書き込みが行われ、その次のパターンについてステップS11からS13の処理が行われる。同一パターンの書き込みが終了するとステップS14で未書き込みのラインに対する書き込みループが実行され、ステップS15で同一パターンが書き込まれた以外の残りの部分に対し、データのパッシブ書き込みが1ラインずつ行われて表示処理が完了する。
次に実施例4における多値書き込み方式について図63、図64を用いて説明する。一般にコレステリック液晶を用いた表示装置では、書き込みが高速になるとフォーカルコニック状態への遷移が不十分になるために画像全体が薄くなるという問題点があるが、実施例4ではこれを利用して中間調の書き込みを行い、それを繰り返して明確な画像を表示する多値書き込みを実行することができる。
まず3値書き込みの場合について説明する。最初に原画像を3値、例えば8ビット256階調の場合には、0、128、および255の3つのレベルでスクリーニング処理を行う。この処理の種類は特に限定する必要はないが、前述の誤差拡散法や、より広い面積での画像処理としてのブルーノイズマスク法などを用いることによって、解像度の高い擬似中間調画像を生成することができる。
この3値スクリーニングの処理の後に、黒(0)レベルの画素を抽出し、抽出された画素、すなわち本来黒が書き込まれる画素だけを抽出して、その画素だけに初回スキャンとして中間調の画像の書き込みを行う。すなわち、通常時よりも高速で液晶素子を駆動することによって、ドライバからの出力電圧を固定した状態で中間階調レベルの画像の書き込みが行われる。駆動速度の調整によって、図63のように本来黒が書き込まれるべき画素に中間調データが書き込まれた画像が得られる。
その後図64に示すように2回目のスキャン、すなわち黒(0)レベルと中間(128)レベルを黒(0)レベルに変換したデータの書き込みを行うことによって、図63においては中間階調であった画素が黒階調となり、それ以外の部分に中間階調、あるいは白階調のデータが書き込まれ、最終的に3値画像が形成される。これによって多値階調の画像を簡単に表示することができるとともに、ユーザにとっては表示の全体イメージを早くつかむこともできる。すなわち、最初はぼやけた画像が徐々にはっきりと表示されていくことになり、3値以上の多値表示も、走査速度を適切にしてより多数回の書き込みを行うことによって実現可能である。またこの手法とは逆に、中間階調から白階調としたい画素を累積的に書き込む手法も可能である。
以上のように実施例4によれば、コレステリック液晶のような半永久メモリ性を有する表示素子を用いた電源を持たない表示装置において、駆動時の消費電力を大幅に抑えることができ、また残像やコントラストの低下の発生しない高品位な表示を短時間で行うことが可能となる。
続いて実施例5を説明する。この実施例5においては例えばコレステリック液晶のような半永久メモリ性を有する表示装置のより詳細な構成とより広範な応用について説明する。実施例5において自動表示装置は電源が切断されても表示内容を保持する半永久メモリ性を有する表示媒体と、表示すべきデータの獲得方法に関する情報と、獲得した表示データの表示様式に関する情報を保持するメモリと、データ獲得方法にしたがって表示データを獲得するための、例えばインターネット接続部と、保持されている表示様式にしたがって獲得したデータの表示を行う制御部とを少なくとも備え、外部または内部から与えられる指令に応答して起動された後に表示データを獲得し、表示様式を整えて半永久メモリ性を持つ表示媒体にデータ表示を行うものである。
図65は、そのような自動表示装置の構成例を示す。同図において自動表示装置90は、例えば図7に示すワイヤレス表示器21と比較すると制御部35、表示部駆動回路39、およびメモリ性表示部40に加えて電源91、インターネット接続部92、電池93、タイマ94、不揮発性メモリ95を備えている。
図65において自動表示装置90は、ホスト機能とインターネットへの接続機構を搭載しており、電源91が投入されると不揮発性メモリ95に格納されたURLを用いてインターネット接続部92の動作によってページデータを獲得し、不揮発性メモリ95に格納された表示様式情報にしたがってメモリ性表示部40にページデータを表示し、自動的に電源切断状態となる。不揮発性メモリ95の内容は外部、例えば無線端末機側から自由に書き換え可能である。また、電池93によってバックアップされたタイマ94によって自動表示装置90を自動的に起動させることもできる。
なお請求の範囲の請求項25における表示手段は図65のメモリ性表示部40、記憶手段は不揮発性メモリ95、制御手段は制御部35と表示部駆動回路39とに相当する。また請求項30における不揮発記憶手段も不揮発性メモリ95に相当し、このメモリ95に複数ページ分の表示データを格納し、メモリ性表示部40の表示内容を書き換えることも、またメモリ性表示部40に表示されていた内容が何らかの原因で消去された場合にも、メモリ95の内容を用いてその内容を復旧することができる。
図66は、PC、あるいはPDAなどの通信端末97と有線接続された自動表示装置の構成例である。同図において自動表示装置90と通信端末97は、共にUSBや接触型ICカードのような有線インタフェース96、98を備えている。自動表示装置90は、パソコンやスロットイン型、あるいはクレードル型のICカードリーダ/ライタに接続されると、電源供給が開始されて起動し、図65におけると同様の動作の後に自動的に待機状態となる。パソコンなどとの接続が切断されると電源が切断される。不揮発性メモリ95の内容は有線インタフェース98、96を経由してホスト側、すなわち通信端末97側から自由に書き換え可能である。自動表示装置90を通信端末97側と常時接続しておき、例えばタイマ94によって自動的に起動することもできる。
図67は、通信端末と無線接続される自動表示装置の構成例である。自動表示装置90、および通信端末97は、ともに無線LAN、またはBluetoothなどに対応する無線インタフェース100、101を備えており、自動表示装置90は通信端末97からの起動コマンドの受信に対応して起動し、図65におけると同様の動作を実行する。図示しない電池バックアップされたモニタで常時通信端末97側からの起動コマンドを監視し、通信端末97側に搭載された図示しないタイマのタイムアップ時に発行される起動コマンドによって自動的に起動することもできる。
図68は、非接触ICカードインタフェースを持つ自動表示装置の構成例である。自動表示装置90は非接触ICカードインタフェース102、またはRF(ラジオ・フリケンシ)IDインタフェースを備え、通信端末97、例えばICカードリーダ/ライタも非接触ICカードインタフェース103を備えている。
通信端末97との距離が所定値以下になると自動表示装置90は自動的に起動され、図65におけると同様の動作を実行する。非接触ICカードには、通信距離は約10cmと短いが通信速度の速い近接型と、通信距離は約1mと長いが通信速度の遅い近傍型とがある。自動表示装置90には両方の型のICカードチップを搭載することも可能である。その場合、近傍型のみが動作可能な距離の長い状態では通信端末97側から得られる電力が小さくなるため、表示部への電力供給を全面的に遮断し、通信速度の制限から画像データは転送せず、文字データのみ転送するのが現実的である。
図69は、例えば図65の揮発性メモリ95に格納されている表示すべきデータの獲得方法の情報と、獲得した表示データの表示様式情報の例である。同図においてアドレス0−255には表示すべきデータの獲得方法としてURL、またはファイルへのパス名が格納されている。その内容は、例えば×××××.comのURLである。
アドレス256以降は表示様式に関するデータであり、表示画面の画素数、縦長、あるいは横長の指定、等倍、拡大、あるいは縮小の指定など、一般の印刷様式データに類似した表示様式データが格納されている。
実施例5においてデータ表示を行うだけでなく、データの更新日時を表示することもできる。図70、図71は、更新日時表示様式の説明図である。図70では、表示装置側にデータそのものの表示部とは独立してセグメント画素を用いた更新日時表示部が設けられており、この表示部としてもコレステリック液晶を用いることができる。
図71は、データの表示部内に更新日時も表示するものであり、この表示はホスト(通信端末)側から表示データ内に追記された形で送信されて表示される。これに対して図70では、例えばホスト側から表示データと更新日時情報が独立して送信される。更新日時が表示されるため、ユーザはいつの情報か即座に判断することができる。
実施例5における自動表示装置の構成例についてさらに説明する。まず図65などに示されたメモリ性表示部40は、前述のようにコレステリック液晶のような半永久メモリ性を持つものが最適であるが、そのような性質を持たない、例えば数時間とか1日というような単位でメモリ内容を保持できる素子や、全くメモリ性のない素子と不揮発メモリとを組み合せることもできる。
この場合、不揮発バッファメモリの1ページ分、または複数ページ分を持つこともできる。表示素子が半永久メモリ性を持つ場合、バッファメモリは必ずしも必要ではないが、1ページ分のバッファメモリを搭載することによって、表示素子の表示内容の1部、または全部が、例えばメモリ性保持温度上限を越えたために消えてしまったような場合にも、即座に表示内容を復旧することができる。また複数ページ分のバッファメモリを搭載することによって、表示内容を即時に切り替えることもできる。
また自動表示装置は、例えば図65のメモリ性表示部40に表示されたデータの書き換えを禁止することもできる。この書き換え禁止の方法は、例えばフレキシブルディスクにおける書き込み禁止方式のようにハードウェア的なものでもよいが、ソフトウェア的なものでもよいことは当然である。
また自動表示装置が外部から表示データを獲得している動作の途中で、何らかの原因で外部との通信が切断された場合に、外部との通信再開時に表示データのうち獲得が終了していない未了分のデータを獲得することもできる。このような手法は、例えばフリーウェアなどのダウンロード支援ツールにおいて広く用いられている。このような支援ツールにおけるRESUME機能は、獲得未了分のデータの獲得に利用可能である。
さらに実施例5における自動表示装置は、表示データの獲得方法に関する履歴の保存機能を備えてもよい。このような機能は必ずしも必要ではないが、このような機能を備えることによって過去に表示したデータの参照が容易になる。このような履歴を図65の不揮発性メモリ95に保存してもよく、ホストを経由して外部に保存してもよいことは当然である。
最後に実施例5における自動表示装置の広範な応用について説明する。このような応用例をまず簡単に述べると、モバイル端末画面をそのまま自動表示装置に転送することもできるが、モバイル端末画面に対応する高精細、大画面のデータを別途に構築し、自動表示装置に転送することもできる。
またモバイル端末上の自動表示装置ドライバを自動表示装置からインストールするために、自動表示装置がモバイル端末用のインストーラを備えることもできる。一般にモバイル端末はメモリ量が小さく、ドライバを必要時にインストールし、必要がなくなった時点で消去することによって、メモリを有効に利用することができる。
また自動表示装置は、システム手帳における差し替え可能なページに相当するリフィルの形状を持ち、そのリフィルの両面においてデータの表示を可能とすることもできる。この場合、両面にアンテナを設置し、中間に磁気シールド層を備えて、2つのアンテナに生じた電圧を比較し、電圧の高いアンテナが設置されている面の表示データを先に書き替えることもできる。
さらに自動表示装置において、表示パネル+ドライバLSIを含む表示部だけを取り外すことができ、また表示パネルおよびバッファメモリのデータを消去する機能を備えることもでき、表示画面の1部が固定的な広告表示領域となっていて、表示データ更新時に所定の手順で広告データをダウンロードして、そこに表示することもできる。
このような応用例について図面を用いてさらに説明する。図72の自動表示装置(ワイヤレス表示シートおよびワイヤレス表示カード)は非接触型ICカードインタフェース(アンテナ、ICチップ)を搭載している。自動表示装置をICカードリーダ/ライタが搭載された携帯電話やディジタルカメラ、PDAに近づけると、自動表示装置は画面データの転送を要求する。携帯電話等には自動表示装置ドライバがインストールされており、携帯画面データをそのまま、あるいは携帯画面データに対応する高精細・大画面データを構築して、自動表示装置に転送する。自動表示装置は、前述と同様に携帯電話から供給される電力に応じた表示駆動制御を行って、表示パネルに画面データを表示し、自動的に待機状態となる。
シート状のものを携帯電話に近づけるだけで、地図を拡大表示したり、長いメール全体を表示したり、メモしたい内容を表示したりでき、非常に便利である。携帯電話の自動表示装置ドライバは、自動表示装置からインストールすることもできる。
図72の自動表示装置をICカードリーダ/ライタが搭載されたノートパソコンに近づけると、自動表示装置は印刷データの転送を要求する。ノートパソコンには自動表示装置ドライバがインストールされており、通常の印刷手順で印刷データを自動表示装置に転送する。自動表示装置は、ノートパソコンから供給される電力に応じた表示駆動制御を行って、表示パネルに印刷データを表示し、自動的に待機状態となる。
自動表示装置をシステム手帳のリフィルの形状としてもよい。その場合、両面を表示可能としてもよい。アンテナを両面に設置し、中間に磁気シールド層を設けることで、ICカードリーダ/ライタがどちらの表示面側にあるかを識別できる。ICカードリーダ/ライタがある側の表示データ処理を優先するのが好ましい。
図73のPC用セカンドディスプレイとしての自動表示装置はUSBインタフェースを搭載している。自動表示装置をデスクトップパソコンに接続すると、自動表示装置は2台目以降のディスプレイとして、画面データの転送を要求する。デスクトップパソコンには自動表示装置ドライバがインストールされており、通常のディスプレイと同様に画面データを自動表示装置に転送する。自動表示装置は、表示パネルに画面データを表示し、自動的に次の画面データの転送を要求し、一連の動作を繰り返す。
ディスプレイを複数台使用すると、作業効率がアップすることはよく知られている。自動表示装置は、通常のディスプレイよりも薄く軽くて場所をとらず、自由なレイアウトで使うことができ、しかも通常のディスプレイより廉価なので、4〜5枚同時に使ってもよい。ネスティングの深いオンラインマニュアルを快適に読むためには、必須アイテムといえる。
次に本実施例における自動表示装置は無線LANインタフェースおよび電池を搭載している。自動表示装置は、所有者のデスクトップパソコンが起動され、所有者の認証が完了すると自動的に起動する。デスクトップパソコンに部員スケジュール表データの転送を要求する。デスクトップパソコンには自動表示装置ドライバがインストールされており、部員スケジュール表データを転送する。自動表示装置は、表示パネルに部員スケジュールを表示し、自動的に待機状態となる。待機状態では、自動表示装置の表示部だけを取り外すことができる。
部員スケジュール表を毎日印刷している人は多い。一人あたり、年間250枚程度の紙を消費する。自動表示装置を用いることで、部員スケジュール表を毎日印刷する手間が省けるとともに、紙の消費量削減および紙ゴミ発生量削減ができる。
本実施例における自動表示装置は非接触型ICカードインタフェース(アンテナ、ICチップ)を搭載している。自動表示装置をICカードリーダ/ライタが搭載された携帯電話に近づけると、自動表示装置は新聞記事の転送を要求する。携帯電話には自動表示装置ドライバがインストールされており、新聞社のホームページから新聞記事をダウンロードし、自動表示装置に転送する。自動表示装置は、携帯電話から供給される電力に応じた表示駆動制御を行って、表示パネルに新聞記事を表示し、自動的に待機状態となる。
シート状のものを携帯電話に近づけるだけで、最新の新聞記事を読むことができ、非常に便利である。これと同様の技術を、電子書籍に応用することもできる。あらかじめダウンロードする必要はないので、たとえば電車のつり革広告で目についた文庫本や雑誌を、その場で読み始めることもできる。あらかじめ著作権保護などのためのSD(セキュア・ディジタル)カード等にダウンロードする方式の電子書籍に比べて、格段に便利でかつ快適である。
本実施例における自動表示装置は無線LANインタフェースおよび電池を搭載している。自動表示装置は、所有者のデスクトップパソコンが起動されると自動的に起動する。デスクトップパソコンに新聞記事の転送を要求する。デスクトップパソコンには自動表示装置ドライバがインストールされており、新聞社のホームページから新聞記事をダウンロードし、自動表示装置に転送する。自動表示装置は、表示パネル(A6〜A3判見開き)のサイズに応じて新聞記事を表示し、自動的に待機状態となる。待機状態では、自動表示装置の表示部だけを取り外すことができる。
自動表示装置を用いることで、印刷・配送・各家庭への配達が不要となるため、購読料は従来の新聞より安く、しかも従来の新聞よりはるかに新しい記事が読める。紙の消費量および紙ゴミ発生量も削減できる。
図74に示す自動表示装置は電車車両内に多数貼付されており、各々Bluetoothインタフェースおよび電池を搭載している。車両内に持ち込まれたBluetooth搭載ノートパソコンからの起動指令によって、自動表示装置のうちの1台がICによってその指令を識別して起動し、広告データの転送を要求する。ノートパソコンには自動表示装置ドライバがインストールされており、起動している自動表示装置に表示すべき広告データを転送する。自動表示装置は、表示パネルに広告を表示し、自動的に待機状態となる。全ての自動表示装置の表示内容更新が完了するまで、一連の動作が繰り返される。
自動表示装置を用いることで、印刷コスト、貼付コスト、および紙の消費量、紙ゴミ発生量が削減できる。パソコンを車両内に常設し、時間帯・電車の走行地域に応じて、広告内容を全面的に切り替えることもできる。これと同様の技術を、スーパ等の店頭の価格表示器に応用することもできる。
次にビルの壁面広告に使用される自動表示装置はビルの壁面に多数貼付されており、各々Bluetoothインタフェースおよび電池を搭載している。Bluetooth搭載パソコンはビル内に設置され、壁面の複数箇所に設置されたアンテナに接続されている。パソコンからの起動指令によって、自動表示装置のうちの1台が起動し、広告データの転送を要求する。ノートパソコンには自動表示装置ドライバがインストールされており、起動している自動表示装置に表示すべき広告データを転送する。自動表示装置は、表示パネルに広告を表示し、自動的に待機状態となる。全ての自動表示装置の表示内容更新が完了するまで、一連の動作が繰り返される。複数台の自動表示装置で大きな画面を表示する場合に、一台一台がそれぞれの担当する部分の画像データのみを要求するため、画像の切り出し処理は容易である。
自動表示装置を用いることで、印刷コスト、貼付コストが削減できる。時間帯に応じて、広告内容を全面的に切り替えることもできる。これと同様の技術を、駅の時刻表に応用することもできる。
図75に示す会議配布資料として用いられる自動表示装置は会議室内に多数設置されており、各々Bluetoothインタフェースおよび電池を搭載している。会議室内に持ち込まれたBluetooth搭載ノートパソコンからの起動指令によって、自動表示装置のうちの1台が起動し、会議資料の転送を要求する。ノートパソコンには自動表示装置ドライバがインストールされており、起動している自動表示装置に表示すべき会議資料を転送する。自動表示装置は、表示パネルに会議資料を表示し、自動的に待機状態となる。全ての自動表示装置の表示が完了するまで、一連の動作が繰り返される。
自動表示装置を用いることで、印刷コスト、製本コスト、および紙の消費量、紙ゴミ発生量が削減できる。会議中に急遽必要になった資料も、速やかに配布できる。さらに、機密資料は会議終了時に表示パネルおよびバッファメモリのデータを消去することができるため、自動表示装置を用いることでセキュリティを高めることができる。
次に広告表示機能付のモバイル表示への使用例を説明する。モバイル機器の画面拡大表示(図72)と同様であるが、表示画面の一部が固定的な広告表示領域となっていることが異なる。表示データ更新時に、所定のURLから広告データをダウンロードし、広告表示領域に表示する。販売促進ツールとして効果的であるため、企業が自動表示装置を大量に無料配布する可能性が高い。
このように実施例5によれば、パソコンなどを操作することなく、自動表示装置を起動すること、例えばパソコンやPDAに内蔵されたICカードリーダ/ライタに非接触ICカードを近づけることによって、最新情報を表示させることができ、電源を切断しても表示が消えないという特徴と、表示内容を任意に書き替え可能という特徴とを高度に融合した便利な電子ペーパを用いた自動表示装置が実現される。
本発明は、ICカードや電子ペーパ、液晶表示素子、および携帯端末やディジタルカメラを含むモバイル機器の製造産業は当然のこととして、これらの表示装置、表示素子、およびモバイル機器を用いるすべての産業において利用可能である。