JP4739566B2 - 電気炉用還元溶解促進剤及び電気炉の操業方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は化石燃料等に代わる安全な燃料であって、地球資源の消費を抑えることのできる燃料、すなわち新しい電気炉用還元溶解促進剤及びそれを用いた電気炉の操業方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図8は従来の電気炉の原理図であり、電気炉100は、アーク放電によりスクラップを溶解する設備であって、基礎101に立てた架構102に、耐火物103を内張りしたカップ形状の炉体104を図面表裏方向に傾動可能に載せ、この炉体104の上部開口を炉蓋106で塞ぎ、この炉蓋106に3本の電極107・・・(・・・は複数を示す。以下同じ)を貫通させ、電極107・・・にケーブル108を繋ぎ、給電装置109からケーブル108を通じて電極107・・・に給電してアーク放電させる設備である。
【0003】
なお、炉蓋106は炉蓋昇降旋回機構110にて上昇し旋回させることで開けることができ、蓋開時にスクラップを炉内へ投入することができる。また、電極107・・・は電極昇降機構111により昇降させることができ任意の高さに保持させることができる。これにより、電極107・・・とスクラップ並びに炉体104との間にアーク放電を発生させることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
図9は図8の9−9線断面図であり、炉体104の中央に配置した3本の電極107・・・の回りはアーク放電に直接晒されて高温域Aになるが、耐火物103の近傍はアーク放電から離れているため低温域Bになる。この低温域Bではスクラップの溶解は遅れるため、電気炉の操業時間が延び、電気炉の生産率が低下する。
【0005】
図10は従来の低温域解消法の原理図であり、従来は、炉蓋から若しくは炉体開口からランス111,111と称する耐熱製管を通し、このランス111,11を介して酸素ガス、コークス粉又は重油を炉体104内の低温な箇所へ吹込むことで、低温域を解消する試みがなされている。しかし、酸素ガスは爆発しやすく取扱いが難しいガスである。また、コークス粉は石炭を原料とするものであるから、化石燃料を消費することになる。同様に、重油も化石燃料を消費することになる。近年の地球規模の環境問題並びに貴重な資源の消費を抑制するという観点からは、コークス粉や重油を大量に消費することは好ましくない。
従って、本発明の目的は、化石燃料等に代わる安全な燃料であって、地球資源の消費を抑えることのできる燃料、すなわち新しい電気炉用還元溶解促進剤を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、電気炉に投入するスクラップに混ぜることでスクラップの溶解を促進すると共に還元作用を発揮させる電気炉用還元溶解促進剤において、この電気炉用還元溶解促進剤は、古紙、熱軟化性廃プラスチック、熱硬化性廃プラスチック、可燃廃棄物及び不燃性廃棄物のうちの複数を、混合し、圧縮して固めた、一辺若しくは径が8〜40mmのピースであり、電気炉用還元溶解促進剤の配合割合は、1〜10重量%の古紙と、10重量%を下限値とする熱軟化性プラスチックとを含み、熱硬化性廃プラスチックの重量に熱軟化性プラスチックの重量を加えた、廃プラスチック総計が80〜99重量%であることを特徴する。
【0007】
ピースは廃プラスチックを主成分とし、廃プラスチックは炭素を豊富に含み、この炭素がスクラップの鉄元素に結合する酸素に結びつく。この結果、スクラップを還元させることができる。また、廃プラスチックは炭素及び水素を豊富に含む良質な燃料であるから、スクラップ溶解に必要な熱の一部を提供する。特に、低温になりやすい領域ではピースの熱量は有用であり、低温域の解消に寄与する。
低温域が解消できれば、生産時間の短縮が図れる。そしてピースで必要熱の一部を賄ったことにより、電気炉へ供給する電力の節約も図れる。
【0008】
廃プラスチックは従来は埋立て若しくは焼却されていたが、本発明では電気炉用還元溶解促進剤に利用するため、地球資源の有効利用を促すことができる。
従って、請求項1によれば、地球資源の有効利用を促しつつ、電気炉の生産性向上、並びに電気代の節約が図れる。
【0009】
なお、ピースのサイズが8mm未満であれば、燃焼持続時間が短くなり過ぎる。また、ピースのサイズが40mm超であれば、ピース間に隙間ができてピースの充填密度が高めにくくなる。そこで、ピースのサイズを8〜40mmにすることとした。
【0010】
請求項2は、電気炉内に吹込むことでスクラップの溶解を促進すると共に還元作用を発揮させる電気炉用還元溶解促進剤において、この電気炉用還元溶解促進剤は、古紙、熱軟化性廃プラスチック、熱硬化性廃プラスチック、可燃廃棄物及び不燃性廃棄物のうちの複数を、混合し、圧縮して固めてピースにし、このピースを更に破砕処理により0.01〜3.0mmの大きさにした粉末であり、電気炉用還元溶解促進剤の配合割合は、1〜10重量%の古紙と、10重量%を下限値とする熱軟化性プラスチックとを含み、熱硬化性廃プラスチックの重量に熱軟化性プラスチックの重量を加えた、廃プラスチック総計が80〜99重量%であることを特徴とする。
【0011】
請求項1と異なる点は、ピースを更に破砕処理したことにある。廃プラスチックなどを直接破砕処理して粉末化することは従来技術で可能である。しかし、この従来技術によれば、空隙を多く含んだ軽い粉末しか得られない。これに対して、請求項2によれば、ピース化する段階で減容処理、すなわち押し固めることで密度を高めたので、これを破砕して得た粉末も緻密になり、重い粉末となる。重い粉末であるから、吹込み方向が定まり、飛散の心配がない。
【0012】
そして、粉末は廃プラスチックを主成分とし、廃プラスチックは炭素を豊富に含み、この炭素がスクラップの鉄元素に結合する酸素に結びつく。この結果、スクラップを還元させることができる。また、廃プラスチックは炭素及び水素を豊富に含む良質な燃料であるから、スクラップ溶解に必要な熱の一部を提供する。特に、低温になりやすい領域では粉末の熱量は有用であり、低温域の解消に寄与する。
低温域が解消できれば、生産時間の短縮が図れる。そして粉末で必要熱の一部を賄ったことにより、電気炉へ供給する電力の節約も図れる。
【0013】
廃プラスチックは従来は埋立て若しくは焼却されていたが、本発明では電気炉用還元溶解促進剤に利用するため、地球資源の有効利用を促すことができる。
従って、請求項2によれば、地球資源の有効利用を促しつつ、電気炉の生産性向上、並びに電気代の節約が図れる。
【0014】
なお、粉末の粒径が0.01mm未満であると微細過ぎて製造が困難となり、製造コストが嵩む。また、粉末の粒径が3.0mm超であると燃焼時間が長くなり、目的の箇所で燃焼させることが困難になる。そこで、粉末は0.01〜3.0mmの大きさにした。
【0015】
請求項3の電気炉の操業方法は、電気炉内に、スクラップ層と、請求項1に記載の電気炉用還元溶解促進剤からなるピース層と、を交互に積層した後にアーク放電による溶解を開始することを特徴とする。
【0016】
ピースは廃プラスチックを主成分とし、廃プラスチックは炭素を豊富に含み、この炭素がスクラップの鉄元素に結合する酸素に結びつく。この結果、スクラップを還元させることができる。また、廃プラスチックは炭素及び水素を豊富に含む良質な燃料であるから、スクラップ溶解に必要な熱の一部を提供する。特に、低温になりやすい領域ではピースの熱量は有用であり、低温域の解消に寄与する。
低温域が解消できれば、生産時間の短縮が図れる。そしてピースで必要熱の一部を賄ったことにより、電気炉へ供給する電力の節約も図れる。
【0017】
なお、ピースのサイズが8mm未満であれば、燃焼持続時間が短くなり過ぎる。また、ピースのサイズが40mm超であれば、ピース間に隙間ができてピースの充填密度が高めにくくなる。そこで、ピースのサイズを8〜40mmにすることとした。
【0018】
請求項4の電気炉の操業方法は、スクラップの溶解中に、電極から離れた炉内低温域、覗き窓、出鋼口、出滓口の少なくとも1つに向って、ランスを用いて請求項2に記載の電気炉用還元溶解促進剤を吹込むことを特徴とする。
【0019】
粉末は廃プラスチックを主成分とし、廃プラスチックは炭素を豊富に含み、この炭素がスクラップの鉄元素に結合する酸素に結びつく。この結果、スクラップを還元させることができる。また、廃プラスチックは炭素及び水素を豊富に含む良質な燃料であるから、スクラップ溶解に必要な熱の一部を提供する。
【0020】
この様な粉末を、電極から離れた炉内低温域、覗き窓、出鋼口、出滓口の少なくとも1つに向って、ランスを用いて吹込むことにより、低温域が解消できて生産時間の短縮が図れる。そして粉末で必要熱の一部を賄ったことにより、電気炉へ供給する電力の節約も図れる。
【0021】
なお、粉末の粒径が0.01mm未満であると微細過ぎて製造が困難となり、製造コストが嵩む。また、粉末の粒径が3.0mm超であると燃焼時間が長くなり、目的の箇所で燃焼させることが困難になる。そこで、粉末は0.01〜3.0mmの大きさにした。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1(a),(b)は本発明に係る電気炉用還元溶解促進剤の製造フロー図である。ST××はステップ番号を示す。なお、各工程を実施するための装置の例は図2〜図4で説明する。
【0023】
電気炉用還元溶解促進剤はピースと粉末の2形態があるので、ピース及び粉末の製造工程を説明する。
図左の(a)は本発明に係るピースの製造工程図である。
ST01(混合工程):古紙、熱軟化性廃プラスチック、熱硬化性廃プラスチック、その他の可燃廃棄物及び不燃性廃棄物のうちの一つ又は複数を、混合する。
【0024】
古紙の代表例はダンボールや雑誌や製紙原料にならない古紙である。
熱硬化性廃プラスチックとは、温度を上げると一時は流動体になるが、次第に化学変化を起こして固まり、固い物質に変化してしまうもので、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂などがこれにあたる。
【0025】
その他の可燃廃棄物とは、布、紙、木材、FRP(繊維強化プラスチック)、ラミネート紙などの廃棄物をいう。
その他の不燃性廃棄物とは、グラスウール、石灰、鉱滓などの廃棄物をいう。
【0026】
熱軟化性廃プラスチックとは、常温では固体であるが、熱を加えると溶けて軟化し、流動体となり、また冷えると固まって固体になるもので、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレンなどがこれにあたる。
【0027】
配合例(%は全て重量%)としては、古紙を10%、熱硬化性廃プラスチックを70%、その他の可燃廃棄物を5%、熱軟化性廃プラスチックを10%とする。又は、古紙を1〜5%、残りの95〜99%を廃プラスチック総計(熱硬化性廃プラスチック+熱軟化性廃プラスチック)とする。配合例であるから、種類及び配合割合を適宜変更することは差支えない。
【0028】
古紙は成形性を高める上で混入することが望ましい。ただし、古紙の割合が増すに連れて発熱量が低下し、電気炉用還元溶解促進剤としての価値が低下する。従って、発熱量その他を勘案して前記価値が低下しない範囲で古紙を混入する。
【0029】
熱軟化性廃プラスチックは、燃料の機能と接着剤の機能の双方を有する。従って、熱軟化性廃プラスチックの配合割合は大きい分には差支えない。
【0030】
ST02(破砕工程):得られた混合物を8〜80mmの大きさに破砕する。
破砕物の大きさが80mmを超えると、ピース造粒に影響し、8〜40mmのピースが製造困難になるからである。従って、破砕物の大きさは80mm以下であれば小さいほど良い。しかし、小さくするほど製造コストが嵩むので、8mmに止める。8〜80mmの大きさに破砕すればよいが、好ましくは40mm程度とする。造粒(整粒)並びに破砕コストの双方を十分に満足するからである。
【0031】
ST03(圧縮工程):得られた破砕物を、熱軟化性廃プラスチックが軟化するまで圧縮する。熱軟化性廃プラスチックは高圧で圧縮すると、摩擦熱が発生し、この熱で軟化し、粘性がでるため、接着作用が発生する。特に、後述するダイ孔を通じて破砕物を押出すときに、ダイ孔の押出し抵抗により大きな摩擦熱が発生する。
【0032】
ST04(整粒工程):得られた圧縮物を8〜40mmのピースにする。ピースのサイズが8mm未満であれば、燃焼持続時間が短くなり過ぎる。また、ピースのサイズが40mm超であれば、ピース間に隙間ができてピースの充填密度が高めにくくなる。そこで、ピースのサイズを8〜40mmにすることとした。
【0033】
以上の工程から明らかなように、格別に乾燥工程を要しないこと、原材料が廃棄物であるため入手が容易であることを特徴とする。
【0034】
図2は本発明の電気炉用還元溶解促進剤を製造するのに適した破砕装置の原理図であり、破砕装置10は、上から投入した混合物11を、固定刃12と回転刃13とで切断し、8mm〜80mmの目のスクリーン14を通じて落下させる装置である。スクリーン14を替えることで破砕物21の大きさを変更することができる。15はプッシャであり、回転刃13の回転速度に応じて混合物11を押出す作用をなす。16は排出コンベアである。
この破砕装置10で混合物11を8〜80mmの破砕物21にすることができる。なお、破砕装置10の構成は一例を示すものであり、8〜80mmの破砕物21が得られれば他の構造ものでも差支えない。
【0035】
図3は本発明の電気炉用還元溶解促進剤を製造するのに適した圧縮・整粒装置の原理図であり、この圧縮・整粒装置30は、破砕物21を回転ドラム状のダイ31に投入する投入ダクト32と、ダイ31を支えるとともに回転させるローラ33,34と、ダイ31に開けた多数のダイ孔35・・・(・・・は複数個を示す。以下同様。)と、ダイ31の外周面に沿って配置したカッタ36と、ケーシング37とからなり、投入ダクト32を通じてダイ31に投入した破砕物21は前記ローラ33で強く押された結果、ダイ孔35・・・に進入する。その後にカッタ36で切断することでピース41・・・になる。この作用は分かりにくいので次図で詳しく説明する。
【0036】
図4は図3に示した圧縮・整粒装置の作用原理図であり、便宜上、円筒形状のダイ31は展開して平板形状にした。
ダイ孔35には前の破砕物21が入っており、そこへローラ33で別の破砕物21を押し込むと、「ところてん」の様にダイ31の厚さに相当するだけダイ31から破砕物21Aが食み出す。そこで、この食み出した破砕物21Aをカッタ36で切断すれば、一定の径で、一定の長さのピース41を切出すことができる。
【0037】
図1の(b)は、ST05を追加したものであり、ST01〜ST04の説明は省略する。
すなわち、整粒工程(ST04)で得た8〜40mmの大きさのピースを、ST05では破砕し、0.01〜3.0mmの大きさにした粉末にする。この粉末化工程で用いる装置は説明を省略するが、破砕機、切断機、圧潰機の何れか又はこれらの組合わせにより適宜細粒化し、分級ふるいで粒子を分級すればよい。
【0038】
(b)ではピースを更に破砕処理したことを特徴とする。廃プラスチックなどを直接破砕処理して粉末化することは従来技術で可能である。しかし、この従来技術によれば、空隙を多く含んだ軽い粉末しか得られない。これに対して、(b)によれば、ピース化する段階で減容処理、すなわち押し固めることで密度を高めたので、これを破砕して得た粉末も緻密になり、重い粉末となる。
【0039】
以上の方法で製造したピース又は粉末を用いて行う電気炉の操業方法を次に説明する。
図5は本発明のピースを利用する電気炉の断面図であり、電気炉50内に、スクラップ層51・・・と、一辺若しくは径が8〜40mmで廃プラスチックを主原料としたピース層52・・・と、を交互に積層した後にアーク放電による溶解を開始する。
【0040】
廃プラスチックを主原料とするピースをスクラップに混ぜることで、本発明の目的を達成することは可能である。しかし、スクラップとピースとを予め混合したものをスクラップコンベアで電気炉へチャージ使用とすると、スクラップとピースの大きさが著しく異なるため、ピースがスクラップコンベアからこぼれるなどの不具合が発生する。そこで、図5ではスクラップとピースを別々にチャージすることで、ピースの飛散を防止するようにした。
すなわち、ピースはチューブやホースで炉内へ吹込むことができる。そこで、スクラップは従来のコンベア又はバケットをそのまま用いてチャージし、ピースはチューブ又はホースでチャージする如くに、スクラップとピースを別々にチャージすることで、原料投入作業を簡単にすることができる。
【0041】
ピース層52を構成するピースは廃プラスチックを主成分とし、廃プラスチックは炭素を豊富に含み、この炭素がスクラップの鉄元素に結合する酸素に結びつく。この結果、スクラップを還元させることができる。また、廃プラスチックは炭素及び水素を豊富に含む良質な燃料であるから、スクラップ溶解に必要な熱の一部を提供する。ピースで必要熱の一部を賄ったことにより、電気炉へ供給する電力の節約も図れる。
【0042】
なお、ピースのサイズが8mm未満であれば、燃焼持続時間が短くなり過ぎる。また、ピースのサイズが40mm超であれば、ピース間に隙間ができてピースの充填密度が高めにくくなる。そこで、ピースのサイズを8〜40mmにすることとした。
【0043】
図6は本発明の粉末を利用する電気炉の操業方法の第1説明図であり、炉体53に被せた蓋54を貫通させることでランス55・・・の先を、電極56・・・から離れた炉内低温域、具体的には耐火壁57の近傍が低温域であるために、この辺りに向けて、0.01〜3.0mmの大きさで廃プラスチックを主原料とした粉末59・・・を吹込む。この粉末59・・・は廃プラスチックを予め減容処理、すなわち押し固めることで密度を高めたので、これを破砕して得た粉末も緻密になり、重い粉末となる。重い粉末であるから、吹込み方向が定まり、飛散の心配がない。
【0044】
そして、粉末は廃プラスチックを主成分とし、廃プラスチックは炭素を豊富に含み、この炭素がスクラップの鉄元素に結合する酸素に結びつく。この結果、スクラップを還元させることができる。また、廃プラスチックは炭素及び水素を豊富に含む良質な燃料であるから、スクラップ溶解に必要な熱の一部を提供する。特に、低温になりやすい領域では粉末の熱量は有用であり、低温域の解消に寄与する。
低温域が解消できれば、生産時間の短縮が図れる。そして粉末で必要熱の一部を賄ったことにより、電気炉へ供給する電力の節約も図れる。
【0045】
図7は本発明の粉末を利用する電気炉の操業方法の第2説明図であり、ランス55・・・の先を出鋼口61や出滓口62に向けて0.01〜3.0mmの大きさで廃プラスチックを主原料とした粉末59・・・を吹込む。
粉末59・・・は微細粒であるため、迅速に燃焼し、その熱で出鋼口61や出滓口62の附近を温める。一般に、出鋼口61や出滓口62は断熱させにくく、他の部分より低温になりやすい。そこで、この様な低温域を温めれば、低温域が解消でき、生産時間の短縮が図れる。そして粉末で必要熱の一部を賄ったことにより、電気炉へ供給する電力の節約も図れる。
【0046】
図示しないが炉外から炉内を覗く覗き窓の附近も低温域になる。そこで、覗き窓へもランスで本発明の粉末59・・・を吹き付けることは望ましい。従って、粉末59・・・は炉内の低温域(出鋼口61や出滓口62や覗き窓若しくはこれに類する箇所)に吹込めばよく、吹込む場所は例示した場所に限定するものではない。
【0047】
尚、電気炉は電極が3本である交流電気炉を例示したが、電極が1本である直流電気炉であっても本発明は適用できる。
【0048】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、電気炉用還元溶解促進剤を、古紙、熱軟化性廃プラスチック、熱硬化性廃プラスチック、その他の可燃廃棄物及び不燃性廃棄物のうちの一つ又は複数を、混合して固めた、一辺若しくは径が8〜40mmのピースとした。
ピースは廃プラスチックを主成分とし、廃プラスチックは炭素を豊富に含み、この炭素がスクラップの鉄元素に結合する酸素に結びつく。この結果、スクラップを還元させることができる。また、廃プラスチックは炭素及び水素を豊富に含む良質な燃料であるから、スクラップ溶解に必要な熱の一部を提供する。特に、低温になりやすい領域ではピースの熱量は有用であり、低温域の解消に寄与する。
低温域が解消できれば、生産時間の短縮が図れる。そしてピースで必要熱の一部を賄ったことにより、電気炉へ供給する電力の節約も図れる。
【0049】
廃プラスチックは従来は埋立て若しくは焼却されていたが、本発明では電気炉用還元溶解促進剤に利用するため、地球資源の有効利用を促すことができる。
従って、請求項1によれば、地球資源の有効利用を促しつつ、電気炉の生産性向上、並びに電気代の節約が図れる。
【0050】
請求項2は、電気炉用還元溶解促進剤を、古紙、熱軟化性廃プラスチック、熱硬化性廃プラスチック、その他の可燃廃棄物及び不燃性廃棄物のうちの一つ又は複数を、混合して固めてピースにし、このピースを更に破砕処理により0.01〜3.0mmの大きさにした粉末とした。
【0051】
請求項1と異なる点は、ピースを更に破砕処理したことにある。廃プラスチックなどを直接破砕処理して粉末化することは従来技術で可能である。しかし、この従来技術によれば、空隙を多く含んだ軽い粉末しか得られない。これに対して、請求項2によれば、ピース化する段階で減容処理、すなわち押し固めることで密度を高めたので、これを破砕して得た粉末も緻密になり、重い粉末となる。重い粉末であるから、吹込み方向が定まり、飛散の心配がない。
【0052】
そして、粉末は廃プラスチックを主成分とし、請求項1と同様にスクラップを還元させることができる。また、廃プラスチックは炭素及び水素を豊富に含む良質な燃料であるから、スクラップ溶解に必要な熱の一部を提供する。特に、低温になりやすい領域では粉末の熱量は有用であり、低温域の解消に寄与する。
低温域が解消できれば、生産時間の短縮が図れる。そして粉末で必要熱の一部を賄ったことにより、電気炉へ供給する電力の節約も図れる。
【0053】
廃プラスチックは従来は埋立て若しくは焼却されていたが、本発明では電気炉用還元溶解促進剤に利用するため、地球資源の有効利用を促すことができる。
従って、請求項2によれば、地球資源の有効利用を促しつつ、電気炉の生産性向上、並びに電気代の節約が図れる。
【0054】
請求項3の電気炉の操業方法は、電気炉内に、スクラップ層と、請求項1に記載の電気炉用還元溶解促進剤からなるピース層と、を交互に積層した後にアーク放電による溶解を開始することを特徴とする。
ピースは廃プラスチックを主成分とし、廃プラスチックは炭素を豊富に含み、この炭素がスクラップの鉄元素に結合する酸素に結びつく。この結果、スクラップを還元させることができる。また、廃プラスチックは炭素及び水素を豊富に含む良質な燃料であるから、スクラップ溶解に必要な熱の一部を提供する。特に、低温になりやすい領域ではピースの熱量は有用であり、低温域の解消に寄与する。
低温域が解消できれば、生産時間の短縮が図れる。そしてピースで必要熱の一部を賄ったことにより、電気炉へ供給する電力の節約も図れる。
【0055】
請求項4の電気炉の操業方法は、スクラップの溶解中に、電極から離れた炉内低温域、覗き窓、出鋼口、出滓口の少なくとも1つに向って、ランスを用いて請求項2に記載の電気炉用還元溶解促進剤を吹込むことを特徴とする。
粉末は廃プラスチックを主成分とし、廃プラスチックは炭素を豊富に含み、この炭素がスクラップの鉄元素に結合する酸素に結びつく。この結果、スクラップを還元させることができる。また、廃プラスチックは炭素及び水素を豊富に含む良質な燃料であるから、スクラップ溶解に必要な熱の一部を提供する。
この様な粉末を、電極から離れた炉内低温域、覗き窓、出鋼口、出滓口の少なくとも1つに向って、ランスを用いて吹込むことにより、低温域が解消できて生産時間の短縮が図れる。そして粉末で必要熱の一部を賄ったことにより、電気炉へ供給する電力の節約も図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電気炉用還元溶解促進剤の製造フロー図
【図2】本発明の電気炉用還元溶解促進剤を製造するのに適した破砕装置の原理図
【図3】本発明の電気炉用還元溶解促進剤を製造するのに適した圧縮・整粒装置の原理図
【図4】図3に示した圧縮・整粒装置の作用原理図
【図5】本発明のピースを利用する電気炉の断面図
【図6】本発明の粉末を利用する電気炉の操業方法の第1説明図
【図7】本発明の粉末を利用する電気炉の操業方法の第2説明図
【図8】従来の電気炉の原理図
【図9】図8の9−9線断面図
【図10】従来の低温域解消法の原理図
【符号の説明】
41…電気炉用還元溶解促進剤(ピース)、50…電気炉、51…スクラップ層、52…ピース層、55…ランス、56…電極、57…耐火壁、59…電気炉用還元溶解促進剤(粉末)、61…出鋼口、62…出滓口、B…低温域。
Claims (4)
- 電気炉に投入するスクラップに混ぜることでスクラップの溶解を促進すると共に還元作用を発揮させる電気炉用還元溶解促進剤において、
この電気炉用還元溶解促進剤は、古紙、熱軟化性廃プラスチック、熱硬化性廃プラスチック、可燃廃棄物及び不燃性廃棄物のうちの複数を、混合し、圧縮して固めた、一辺若しくは径が8〜40mmのピースであり、
前記電気炉用還元溶解促進剤の配合割合は、1〜10重量%の前記古紙と、10重量%を下限値とする前記熱軟化性プラスチックとを含み、
前記熱硬化性廃プラスチックの重量に前記熱軟化性プラスチックの重量を加えた、廃プラスチック総計が80〜99重量%であることを特徴とした電気炉用還元溶解促進剤。 - 電気炉内に吹込むことでスクラップの溶解を促進すると共に還元作用を発揮させる電気炉用還元溶解促進剤において、
この電気炉用還元溶解促進剤は、古紙、熱軟化性廃プラスチック、熱硬化性廃プラスチック、可燃廃棄物及び不燃性廃棄物のうちの複数を、混合し、圧縮して固めてピースにし、このピースを更に破砕処理により0.01〜3.0mmの大きさにした粉末であり、
前記電気炉用還元溶解促進剤の配合割合は、1〜10重量%の前記古紙と、10重量%を下限値とする前記熱軟化性プラスチックとを含み、
前記熱硬化性廃プラスチックの重量に前記熱軟化性プラスチックの重量を加えた、廃プラスチック総計が80〜99重量%であることを特徴とした電気炉用還元溶解促進剤。 - 電気炉内に、スクラップ層と、請求項1に記載の電気炉用還元溶解促進剤からなるピース層と、を交互に積層した後にアーク放電による溶解を開始することを特徴とする電気炉の操業方法。
- スクラップの溶解中に、電極から離れた炉内低温域、覗き窓、出鋼口、出滓口の少なくとも1つに向って、ランスを用いて請求項2に記載の電気炉用還元溶解促進剤を吹込むことを特徴とする電気炉の操業方法。
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