JP4736164B2 - 電池用積層フィルムおよびそれを用いた電池用容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池の外装材に使用する積層フィルム、およびそれを用いた電池用容器に関し、更に詳しくは、薄型化と軽量化に対するニーズの大きいリチウムポリマー電池などの外装材にも好適に使用できるよう、薄くて軽く、高度の水蒸気その他のバリヤー性を有し、また、電解液や酸などに対する耐性、ヒートシール時などの熱に対する耐熱性に優れると共に、トレー状容器などへの成形性も備えた電池用積層フィルム、およびそれを用いてなる電池用容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電池の外装材となる容器には、大抵の場合、金属製の容器が用いられていた。しかし、ノート型パソコン、携帯電話など各種の電子機器の発達、普及に伴い、その薄型化と軽量化が進められると共に、これらに使用される電池についても、その重量をできるだけ軽くし、また、使用機器における電池用スペースをできるだけ少なくできるよう薄型化、軽量化が求められている。
【0003】
このような要望に応えるために、例えば、電池の電極や電解質などに、高分子材料を導入し、シート状などに薄型化、軽量化した種々のポリマー電池が研究開発されている。
このようなポリマー電池の代表的な例として、例えば、リチウムポリマー電池が挙げられるが、これらのポリマー電池は、電池自体の厚さを薄くするため、その外装材についても積層フィルムを用いて薄型化する方法が採られている。
【0004】
ポリマー電池の外装材に積層フィルムを使用する場合、その形態、使用方法としては、例えば、積層フィルムを、三方シール形式、四方シール形式、ピローパウチ形式などで、一端が開口する袋状に製袋し、内部に電池の構成材料を収納すると共に、電極端子を内部から開口部を通して外側に延長し、その開口部を熱接着により封止して電池を形成する方法、或いは、積層フィルムを周囲にフランジ部を備えたトレー状に成形し、その凹部に電池の構成材料を収納すると共に、電極端子を外側に延長し、その上部を積層フィルム製の蓋材で覆って、フランジ部で熱接着して密封し、電池を形成する方法などがある。
【0005】
このような電池の外装材に用いる積層フィルムには、その軽さおよび薄さと共に、各種の機械的強度や電解液などに対する耐性、水蒸気その他のバリヤー性、ヒートシール時などの熱に対する耐熱性、熱封緘性、更に電極端子との熱接着性など様々な性能が必要であり、特に、前記フランジ付きのトレー状に成形して用いる場合は、その成形性も必要となる。
また、電池が、リチウムポリマー電池などの場合は、水分が内部に侵入すると、電解質成分と反応してフッ化水素を発生し、これが熱接着性樹脂層を通して金属箔層の内面を侵すため、その接着面を剥離させてしまうことがある。従って、その積層フィルムには、高度の防湿性が必要となる。
【0006】
このような電池の外装材に用いる積層フィルムは、外装の形状として、製袋による袋形式を採るか、或いは成形加工を施したトレー状容器形式を採るかにより、積層材料の材質や厚さなどを若干変える必要があるが、できるだけ積層フィルムの厚さを薄くするためには、外側から、基材層、金属箔層、熱接着性樹脂層が順に積層された構成を基本とし、必要に応じて、これに中間層などを付加した構成を採ることができる。
【0007】
そして、上記基材層には、例えば、各種の機械的強度に優れた2軸延伸ナイロンフィルムを使用することができ、金属箔層には、アルミニウム箔を、そして、熱接着性樹脂層には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレンなどのうちのいずれか一種の単層、または二種以上を適宜に積層した複合層を使用することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、積層フィルムを上記のように構成した場合でも、最外層の2軸延伸ナイロンフィルムが、機械的強度には優れるが、耐熱性にやや劣りヒートシール時の熱で白化しやすいこと、電解液に対する耐性が不足すること、また、積層フィルムを、例えば雄型と雌型などでフランジ付きトレー状容器に絞り成形する場合は、2軸延伸ナイロンフィルムの表面の摩擦係数がやや高く、成形性にやや劣ること、そして、金属箔層のアルミニウム箔が、そのままでは前記フッ化水素が発生した場合には、熱接着性樹脂層を通過して侵されやすいことなどの問題があった。
【0009】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、電池の外装材に用いられる積層フィルムであって、薄くて軽く、高度の水蒸気その他のバリヤー性を有し、電解液や酸などに対する耐性、ヒートシール時などの熱に対する耐熱性にも優れると共に、良好な熱接着性、および、袋状への製袋適性はもとより、トレー状容器などへの成形性も備え、各種の性能に対する要求の厳しいリチウムポリマー電池などの外装にも好適に使用することのできる電池用積層フィルムと、それを用いた性能に優れた電池用容器を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、以下の本発明により解決することができる。即ち、請求項1に記載した発明は、電池の外装材に用いられる積層フィルムであって、該積層フィルムが、少なくとも外側から、2軸延伸ポリエステルフィルム層、2軸延伸ナイロンフィルム層、金属箔層、熱接着性樹脂層が順に積層された積層体で形成され、前記2軸延伸ポリエステルフィルム層の厚さが6〜12μmであって、前記2軸延伸ポリエステルフィルム層の外側の面が、シリコーン処理により、動摩擦係数0.3以下に維持されていることを特徴とする電池用積層フィルムからなる。
【0011】
このような構成を採ることにより、本発明の電池用積層フィルムは、2軸延伸ナイロンフィルム層の外側に、2軸延伸ポリエステルフィルム層が積層されているので、表面が電解液に対する耐性に優れると共に、耐熱性にも優れており、表面に電解液が付着しても膨潤したり溶解することがなく、また、ヒートシール時の熱で表面が白化することも防止できる。
そして、2軸延伸ナイロンフィルム層により強靱性、高衝撃強さ、高破裂強さ、耐ピンホール性など各種の優れた機械的強度と優れた低温特性が付与され、金属箔層により高度の水蒸気その他のバリヤー性が付与され、熱接着性樹脂層により熱封緘性が付与される。また、該積層フィルムの最外層の2軸延伸ポリエステルフィルム層は、その下層の2軸延伸ナイロンフィルム層と比較して、滑り性に優れているので、積層フィルムを例えば薄型のフランジ付きトレー状容器に成形する際も、しわなどが発生することもなく、均一に成形することができる。
【0012】
従って、薄くて軽く、機械的強度、水蒸気その他のバリヤー性、熱封緘性など電池の外装材としての基本的な性能を備えると共に、表面が、ヒートシール時の熱で白化することもなく、誤って電解液が付着しても膨潤、或いは溶解など侵されることがなく、更に、トレー状容器などへの成形性も備えた電池用積層フィルムを提供することができる。尚、上記動摩擦係数は、JIS K7125 プラスチックフィルム及びシートの摩擦係数試験方法に準じて測定した動摩擦係数である。
【0013】
請求項2に記載した発明は、前記金属箔層がアルミニウム箔であって、且つ、少なくともその内側の面がクロメート処理されていることを特徴とする請求項1記載の電池用積層フィルムである。
【0014】
前記金属箔層としては、アルミニウム箔のほか、銅箔、錫箔、ニッケル箔などを使用することができるが、中でもアルミニウム箔は、軽量で展延性に富み、成形およびラミネートなどの加工性に優れると共に、水蒸気その他のバリヤー性にも優れ、更に、汎用性金属箔として比較的安価で経済性にも優れている。
また、アルミニウム箔層の少なくとも内側の面をクロメート処理することにより、前述の電解質に由来するフッ化水素に対する耐性を向上させることができる。
代表的なクロメート処理としては、フェノール樹脂、リン酸、フッ化クロム(III) 化合物の水溶液をロールコート法などで塗布した後、アルミニウム箔の温度が170〜200℃になるように加熱して皮膜形成するものである。
このようなクロメート処理は、アルミニウム箔層の内側の面のみに行ってもよいが、両側の面に行うことが更に好ましい。
【0015】
このような構成を採ることにより、前記請求項1に記載した発明の作用効果に加えて、ラミネートなどの加工が容易で、プレス成形などの成形性もよく、水蒸気その他のバリヤー性に優れると共に、フッ化水素などに対する耐性、更には経済性にも優れた電池用積層フィルムを生産性よく製造することができる。
【0017】
前記2軸延伸ポリエステルフィルム層は、その下層の2軸延伸ナイロンフィルム層の弱点である電解液に対する耐性、および耐熱性を向上させるために積層したものであり、その厚さは6〜12μmとすることが好ましい。
2軸延伸ポリエステルフィルム層の厚さが、6μm未満の場合は、電解液に対する耐性は向上できるが、耐熱性の向上効果、即ち、ヒートシール時の熱による2軸延伸ナイロンフィルムの白化に対する防止効果が充分に得られないため好ましくない。また、12μmを超える厚さは、電解液に対する耐性および耐熱性の両者共、既に充分な向上効果があり、その必要性がなく、むしろ積層フィルムの厚さをできるだけ薄くするという主旨にも反するため好ましくない。
【0018】
また、前記積層フィルムの外側の面、即ち、2軸延伸ポリエステルフィルム層の外側の面の摩擦係数に関しては、積層フィルムを電池用容器に加工する際、例えば、雄型と雌型を用いるプレス成形などにより、深さが3mm以上、5mm程度のフランジ付きトレー状容器に成形して用いる場合、表面の滑り性が不足すると均一に成形することが難しくなる。そのため、2軸延伸ポリエステルフィルム層の外側の面は、前記動摩擦係数を0.3以下に維持することが好ましく、0.1程度であることが更に好ましい。
このような動摩擦係数は、2軸延伸ポリエステルフィルムの外側の面にシリコーン処理を施すことにより一層確実に得ることができる。
【0019】
このような構成を採ることにより、前記請求項1または2に記載した発明の作用効果に加えて、積層フィルムの外側の面の電解液に対する耐性、耐熱性、滑り性が一層確実に向上されるので、積層フィルムの表面が、電解液で侵されることがなく、また、ヒートシール時の熱で白化することもなく、更に、積層フィルムをプレス成形などで薄型のフランジ付きトレー状容器に成形する際も、厚さむらやしわなどが発生することもなく、均一なトレー状容器を生産性よく製造することができる。
【0020】
次に、請求項3に記載した発明は、内部に電池の構成材料を収納し、電池を形成するために用いる電池用容器であって、該容器が、前記請求項1、2のいずれかに記載の電池用積層フィルムで形成されていることを特徴とする電池用容器。
【0021】
このような構成をとることにより、前記請求項1、2のいずれかに記載した発明の電池用積層フィルムを用いて電池用容器を作製することができるので、容器の形式が、四方シール形式などの袋形状、または、フランジ付きトレー状容器と蓋材からなる成形容器形式のいずれであっても、ヒートシール時の熱で表面が白化することもなく、また、良好に成形することができ、容易に製袋または成形して電池用容器を作製することができる。そして、作製された電池用容器は、薄くて軽く、各種の機械的強度に優れると共に、高度の水蒸気その他のバリヤー性を有し、電解液やフッ化水素などに対する耐性、耐熱性などにも優れており、総合的に優れた性能の電池用容器を得ることができる。
【0022】
請求項4に記載した発明は、前記容器が、プレス成形により形成されたフランジ付きトレー状容器に蓋材を重ねて、そのフランジ部で熱接着する形式、または、前記フランジ付きトレー状容器を、その内面同士が対向するように上下に重ねてフランジ部で熱接着する形式のいずれかであることを特徴とする請求項3に記載の電池用容器である。
【0023】
このような構成をとることにより、前記請求項3に記載した発明の作用効果に加えて、フランジ付きトレー状容器に電池の構成材料を収納して電池を形成する際、大きく開口したトレー状容器の上部から電池の構成材料を装着し、フランジ部で蓋材を熱接着して密封し、電池を形成することができるので、操作が簡単でし損じも少なく、生産性よく電池を製造することができる。また、電池用容器を、その身蓋両方にフランジ付きトレー状容器を用いて構成した場合は、身のみにフランジ付きトレー状容器を用いて、蓋材はフラットな積層フィルムで構成した場合と比較して、成形凹部の深さを1/2に浅くすることができるので、その分、積層フィルムの2軸延伸ナイロンフィルム層や金属箔層の厚さを薄くできる利点がある。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の電池用積層フィルムに用いる材料、およびその積層方法、また、その積層フィルムを用いた電池用容器の製造方法など発明の実施の形態について説明する。
本発明の電池用積層フィルムは、先に説明したように、電池の外装材に用いられる積層フィルムであって、少なくとも外側から、2軸延伸ポリエステルフィルム層、2軸延伸ナイロンフィルム層、金属箔層、熱接着性樹脂層が順に積層された積層体で形成された構成を基本とする。
そして、このような積層フィルムを、例えば、四方シール形式などで一端が開口する袋状に製袋し、或いは、身蓋形式などで周囲にフランジ部を設けた浅いトレー状容器に成形して電池用容器を製造し、その電池用容器の内部に電池の構成材料を収納すると共に、内部から外側に電極端子を延長して、開口部を熱接着により封止して、薄型などの電池を製造するものである。
【0025】
前記積層フィルムの構成において、2軸延伸ポリエステルフィルム層には、引張り強度のほか、耐熱性、耐薬品性(酸、アルカリなど)、耐溶剤性などに優れた2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(O−PET)または2軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(O−PEN)を好適に使用することができる。
また、2軸延伸ナイロンフィルム層には、ナイロン6、66、12、MXD6などの2軸延伸フィルムを使用することができる。
【0026】
そして、金属箔層は、積層フィルムに高度の水蒸気その他のバリヤー性を付与するために設けるものであり、この金属箔層には、先に説明したように、アルミニウム箔を好適に使用することができる。そして、少なくともその内側の面(熱接着性樹脂層が積層される側の面)には、前記フッ化水素などに対する耐性、即ち、防食性を向上させるために、化成処理、具体的には前述のクロメート処理を施すことが好ましい。このクロメート処理はアルミニウム箔の両面に施すことが更に好ましい。
上記クロメート処理を施した場合、アルミニウム箔の防食性が向上されるだけでなく、2軸延伸ナイロンフィルムや熱接着性樹脂層をラミネートした時、その耐熱接着強度も強くすることができる。
【0027】
尚、2軸延伸ポリエステルフィルム層と2軸延伸ナイロンフィルム層とのラミネート、および2軸延伸ナイロンフィルム層と金属箔層とのラミネートは、公知のドライラミネーション法により、ポリウレタン系などの2液硬化型接着剤を用いて容易に行うことができる。
上記各層の積層面には、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理などの易接着性処理を施して接着性を向上させることができる。
【0028】
そして、積層フィルムの最内層となる熱接着性樹脂層は、熱接着性のほか、耐内容物性、即ち、電解質を含む電解液に対する耐性や、積層フィルムをトレー状容器に成形して用いる場合は、その成形性なども必要である。
このような熱接着性樹脂層には、各種のポリオレフィン系樹脂を使用することができるが、なかでも直鎖状低密度ポリエチレン(L・LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレンなどを好適に使用することができる。
これらは単独で用いてもよく、ブレンドして用いることもできる。また、二種以上の層を積層し、多層化して用いることもできる。
【0029】
上記酸変性ポリプロピレンとしては、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸、または、その無水物でグラフト重合変性したポリプロピレン、或いは、前記酸成分が共重合されたポリオレフィン樹脂をブレンドしたポリプロピレンなどを使用することができる。これらは単独で用いてもよく、また、二種以上をブレンドして用いてもよい。
酸変性ポリプロピレンは、自己同士の熱接着性のほか、金属に対する熱接着性にも優れているので、例えば、電池用容器の内部から外側に延長して設けられる電極端子の表面が裸の金属の場合でも、容器のフランジ部など端縁部において、それと良好に熱接着し密封することができる。
【0030】
このような熱接着性樹脂層を金属箔層の内側の面に積層する方法は、
▲1▼予めフィルム状に製膜された熱接着性樹脂層のフィルムを、2液硬化型のドライラミネート用接着剤を用いて、ドライラミネーション法で積層する方法。
▲2▼予めフィルム状に製膜された熱接着性樹脂層のフィルムを、熱ラミネーション法と呼ばれる方法で、加熱加圧のみで積層する方法、但し、この場合、金属箔層の積層面に、一種のプライマーコートとして、酸変性ポリプロピレンなどの塗膜層を形成しておくことが好ましい。
▲3▼予めフィルム状に製膜された熱接着性樹脂層のフィルムを、押し出しラミネーション法(通称、サンドイッチラミネーション法)で、金属箔層と熱接着性樹脂層のフィルムとの間に、酸変性ポリプロピレン、L・LDPEなどの熱接着性樹脂を膜状に押し出して、両側から加圧し、密着させて積層する方法。この場合、必要に応じて、金属箔の積層面に、プライマーコートを施し、或いは、オゾン処理を施しながら積層することにより接着性を向上させることができる。
▲4▼金属箔層の積層面に、▲2▼と同様、一種のプライマーコートとして、酸変性ポリプロピレンなどの塗膜層を形成しておいて、その上に直接、熱接着性樹脂層の樹脂を押し出しコートする方法、または、▲3▼のように、金属箔層の積層面にオゾン処理を施しながら、その上に直接、熱接着性樹脂層の樹脂を押し出しコートする方法などがあり、積層フィルムの使用条件などに応じて、適する方法を適宜選択して使用することができる。
【0031】
そして、積層フィルムの外側の面、即ち、2軸延伸ポリエステルフィルム層の外側の面に施すシリコーン処理は、滑り剤としてシリコーンオイルを薄く塗布するだけでもよいが、シロキサンのほか、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのストレートシリコーンオイルやアミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性などの反応性シリコーンオイルを塗布し、硬化させることが好ましい。
このようなシリコーン処理は、積層前の2軸延伸ポリエステルフィルムに行ってもよく、2軸延伸ナイロンフィルムや金属箔など一部を積層した中間段階の積層フィルムの2軸延伸ポリエステルフィルム面に行ってもよく、更には、最内層の熱接着性樹脂層まで積層を終わった後の2軸延伸ポリエステルフィルム面に行ってもよい。
また、積層フィルムの各層の積層順序も、生産性や歩留りを考慮して自由に行うことができる。
【0032】
【実施例】
以下に、図面を用いて本発明を更に具体的に説明する。
但し、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の図面に限定されるものではない。
図1は、本発明の電池用積層フィルムの一実施例の構成を示す模式断面図であり、図2、図3、図4は、それぞれ本発明の電池用積層フィルムを用いて作製される電池用容器の一実施例の構成を示す模式平面図または模式断面図である。
また、図5は、本発明の電池用容器を用いて作製される電池の一例の構成を示す斜視図である。
【0033】
図1に示した電池用積層フィルム50は、外側(図において上側)から、2軸延伸ポリエステルフィルム層1、2軸延伸ナイロンフィルム層2、金属箔層3、熱接着性樹脂層4が順に積層された構成であり、また、該積層フィルム50の外側の面、即ち、2軸延伸ポリエステルフィルム層1の外側の面には、必要に応じてシリコーン処理(図示せず)を施すことができる。
尚、上記各層の間に、それぞれの積層方法に応じて設けられる接着剤層や、プライマーコート層などは省略して示した。
【0034】
上記の構成において、2軸延伸ポリエステルフィルム層1は、先に説明したように、その下層の2軸延伸ナイロンフィルム層2の弱点である電解液に対する耐性およびヒートシール時の熱に対する耐熱性をカバーするために設けたものであり、そのためには、先に説明したように、厚さが6〜12μmであることが好ましい。
そして、2軸延伸ナイロンフィルム層2の厚さは、積層フィルム50を、四方シール形式などの袋状の電池用容器に加工して用いる場合は、15μm程度の厚さでもよいが、例えば、深さが3〜5mm程度のフランジ付きトレー状容器に成形して用いる場合は、25μm程度の厚さが好ましい。
【0035】
金属箔層3については、クロメート処理の施されたアルミニウム箔を用いる場合、その厚さは、積層フィルム50を、袋状の電池用容器に加工して用いる場合は、20〜30μm程度の厚さでよく、前記深さのフランジ付きトレー状容器に成形して用いる場合は、30〜50μm程度の厚さが好ましい。
また、最内層の熱接着性樹脂層4の厚さは、積層フィルム50を電池用容器に加工して使用する際、電極端子が介在する部分の構成にもよるが、袋状容器の場合もトレー状容器の場合も30〜40μm程度の厚さが適当である。
【0036】
上記2軸延伸ポリエステルフィルム層1と2軸延伸ナイロンフィルム層2との積層、および2軸延伸ナイロンフィルム層2と金属箔層3との積層は、公知のドライラミネーション法により、ポリウレタン系などの2液硬化型接着剤を用いて行うことが、接着性能に優れる点で好ましい。
また、金属箔層3の内側の面に、熱接着性樹脂層4を積層する方法に関しては、先に▲1▼ドライラミネーション法、▲2▼熱ラミネーション法、▲3▼押し出しラミネーション法、▲4▼押し出しコート法の4種類の方法を詳しく説明しており、積層フィルム50をどのような種類の電池の容器として使用するかにより、適宜選択して使用することができる。
特に、リチウムポリマー電池の容器として、積層フィルム50を使用する場合は、前記フッ化水素に対する耐性の問題があるため、その耐性に優れた▲2▼の熱ラミネーション法を採ることが好ましい。
【0037】
このような構成を採ることにより、薄くて軽く、各種の機械的強度、水蒸気その他のバリヤー性、熱封緘性など、電池の外装材としての基本的な性能に優れると共に、表面が、耐熱性、耐電解液性、滑り性に優れ、ヒートシール時の熱で白化することもなく、誤って電解液が付着しても膨潤、或いは溶解など侵されることがなく、更に、トレー状容器への成形性にも優れた電池用積層フィルムを提供することができる。
【0038】
図2は、本発明の電池用積層フィルムを用いて作製される電池用容器の第1の実施例の構成を示す模式平面図である。
図2に示した電池用容器100は、前記図1に示したような構成の電池用積層フィルム50を用いて、四方シール形式の袋状に製袋して構成したものである。
即ち、積層フィルム50を、その熱接着性樹脂層同士が対向するように重ね合わせて、周囲三方の端縁部を熱接着部8でヒートシールし、一端が開口部9で開口する袋状に製袋して構成したものである。
【0039】
このような電池用容器100を用いて電池を作製する場合、開口部9から電池の構成材料を挿入し、内部から開口部9を通して外側に電極端子を延長した後、開口部9を電極端子と共にヒートシールして密封することにより、薄型の電池を作製することができる(図5参照)。
この時、電極端子のヒートシール部に、予め酸変性ポリプロピレンなどの被覆を施すか、或いは、電極端子の両側に酸変性ポリプロピレンのフィルムを挿入してヒートシールすることにより、電極端子の通過部のヒートシールを一層良好に行うことができる。このような電極端子のヒートシール方法は、以下の図3、図4に示す電池用容器においても同様に適用することができる。
【0040】
また、電池用容器を四方シール形式の袋状容器に形成する場合、必ずしも図示したような一端が開口する袋状容器を予め形成する必要はなく、例えば、専用の充填シール装置を用意することにより、一方の電池用積層フィルムの上に、電池の構成材料を配置し、電極端子を一端から外側に延長した後、その上にもう一方の積層フィルムを重ねて周囲四方の端縁部を、逐次または同時にヒートシールして密封し、薄型の電池を作製することもできる。
【0041】
次に、図3は、本発明の電池用積層フィルムを用いて作製される電池用容器の第2の実施例の構成を示す模式断面図である。
図3に示した電池用容器200は、プレス成形により形成されたフランジ付きトレー状容器5と、その上に被せられるフラットな蓋材7とで構成されており、それぞれが、前記図1に示したような構成の電池用積層フィルム50で形成されている。
【0042】
このような電池用容器200は、フランジ付きトレー状容器5の成形凹部に電池の構成材料を装着し、内部から外側に電極端子を延長した後、その上部に蓋材7を被せて、周囲のフランジ部6で両者を熱接着して密封することにより、薄型の電池を作製することができる(図5参照)。
尚、この電池用容器200は、フランジ付きトレー状容器5と蓋材7とが別々に切り離された2ピース構成としたが、この場合、蓋材7はフラットな形状で成形加工が行われないので、積層フィルムの2軸延伸ナイロンフィルム層や金属箔層の厚さを薄くすることができる。
また、電池用容器200は、フランジ付きトレー状容器5と蓋材7とが、フランジ部6の一端でヒンジ状につながった1ピース構成とすることもできる。
【0043】
図4は、本発明の電池用積層フィルムを用いて作製される電池用容器の第3の実施例の構成を示す模式断面図であり、図4に示した電池用容器300は、前記図3に示した電池用容器200の構成において、蓋材7にも下側のフランジ付きトレー状容器5と同様なフランジ付きトレー状容器5を用いて構成したものである。
このような構成を採った場合、身蓋両方のフランジ付きトレー状容器5に成形凹部が形成されているので、それぞれの成形凹部の深さは、例えば、1/2に浅くすることができる。従って、フランジ付きトレー状容器5の成形に用いる積層フィルムは、その2軸延伸ナイロンフィルム層や金属箔層の厚さを、絞り深さが浅くなった分、薄くすることができる。
また、この場合も、上下のフランジ付きトレー状容器5が、周囲のフランジ部6の一端でヒンジ状につながった1ピース構成にすることもできる。
【0044】
図5は、本発明の電池用容器を用いて作製される電池の一例の構成を示す斜視図である。但し、電池自体が薄型であるため、その厚さは省略して示した。
図5に示した電池500は、上面がフラットな形状になっているので、前記図3に示した電池用容器200を用いて作製した電池に相当するが、図2、図4に示した電池用容器100、300を用いて電池を作製した場合も、上面に僅かな膨らみ部が形成される以外は、略同様な形状となる。
【0045】
このような薄型の電池500は、例えば、図3に示した電池用容器200を用いて、そのフランジ付きトレー状容器5の成形凹部に、上部から電池の構成材料を装着し、内部から一端のフランジ部6の上を経由して外側に、正極および負極の電極端子10a 、10b を延長して設けた後、その上に蓋材7を被せて、周囲のフランジ部6、即ち、熱接着部8で両者を熱接着して密封することにより作製することができる。
この場合、フランジ付きトレー状容器5への電池の構成材料の装着は、成形凹部の上部が大きく開口しているので、操作が極めて容易であり、生産性よく電池を製造することができる。
【0046】
【発明の効果】
以上詳しく説明したように、本発明によれば、電池の外装材に用いられる積層フィルムであって、薄くて軽く、各種の機械的強度に優れると共に、高度の水蒸気その他のバリヤー性を備え、電解液や酸などに対する耐性、耐熱性にも優れ、また、トレー状などへの成形性もよく、熱シールの際、表面が白化するようなこともなく、各種の性能に対する要求の厳しいリチウムポリマー電池などの外装にも好適に使用することのできる電池用積層フィルムと、それを用いた各種の性能に優れた電池用容器を生産性よく提供できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電池用積層フィルムの一実施例の構成を示す模式断面図である。
【図2】本発明の電池用積層フィルムを用いて作製される電池用容器の第1の実施例の構成を示す模式平面図である。
【図3】本発明の電池用積層フィルムを用いて作製される電池用容器の第2の実施例の構成を示す模式断面図である。
【図4】本発明の電池用積層フィルムを用いて作製される電池用容器の第3の実施例の構成を示す模式断面図である。
【図5】本発明の電池用容器を用いて作製される電池の一例の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 2軸延伸ポリエステルフィルム層
2 2軸延伸ナイロンフィルム層
3 金属箔層
4 熱接着性樹脂層
5 フランジ付きトレー状容器
6 フランジ部
7 蓋材
8 熱接着部
9 開口部
10a 、10b 電極端子
50 電池用積層フィルム
100、200、300 電池用容器
500 電池
Claims (4)
- 電池の外装材に用いられる積層フィルムであって、該積層フィルムが、少なくとも外側から、2軸延伸ポリエステルフィルム層、2軸延伸ナイロンフィルム層、金属箔層、熱接着性樹脂層が順に積層された積層体で形成され、前記2軸延伸ポリエステルフィルム層の厚さが6〜12μmであって、前記2軸延伸ポリエステルフィルム層の外側の面が、シリコーン処理により、動摩擦係数0.3以下に維持されていることを特徴とする電池用積層フィルム。
- 前記金属箔層が、アルミニウム箔であって、且つ、少なくともその内側の面がクロメート処理されていることを特徴とする請求項1記載の電池用積層フィルム。
- 内部に電池の構成材料を収納し、電池を形成するために用いる電池用容器であって、該容器が、前記請求項1、2のいずれかに記載の電池用積層フィルムで形成されていることを特徴とする電池用容器。
- 前記容器が、プレス成形により形成されたフランジ付きトレー状容器に蓋材を重ねて、そのフランジ部で熱接着する形式、または、前記フランジ付きトレー状容器を、その内面同士が対向するように上下に重ねてフランジ部で熱接着する形式のいずれかであることを特徴とする請求項3に記載の電池用容器。
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