JP4734688B2 - 電極およびその製造方法、膜−電極複合体およびその製造方法並びにこれらを用いた電気化学装置、水電解装置、燃料電池およびこれを用いた移動体および自動車 - Google Patents

電極およびその製造方法、膜−電極複合体およびその製造方法並びにこれらを用いた電気化学装置、水電解装置、燃料電池およびこれを用いた移動体および自動車 Download PDF

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  • Electrolytic Production Of Non-Metals, Compounds, Apparatuses Therefor (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池あるいは種々の電気化学装置に用いられる電極あるいは膜−電極複合体とそれらの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、低排出物、高エネルギー効率で環境への負担の低い発電装置である。このため、近年の地球環境保護への高まりの中で再び脚光を浴びている。従来の大規模発電施設に比べ比較的小規模の分散型発電施設、自動車や船舶など移動体の発電装置として、将来的にも期待されている発電装置である。
【0003】
燃料電池には、用いられる電解質の種類により、固体高分子型、リン酸型、固体酸化物型、溶融炭酸塩型、アルカリ型などの種類がある。なかでも固体高分子型燃料電池は、他の燃料電池に比べて、運転温度が低温で起動時間が短く、高出力が得やすい、小型軽量化が見込める、振動に強いなどの特徴を有し移動体の電力供給源に適している。
【0004】
燃料電池は、発電を担う反応の起こるアノードとカソードの電極と、アノードとカソード間のイオン伝導体となる電解質とがそれぞれの間でセパレータで挟まれたセルをユニットとして構成されている。電極は、ガス拡散の促進と集(給)電を行う電極基材(集電体とも云う)と、実際に電気化学反応場となる電極触媒層とから構成されている。たとえば固体高分子型燃料電池のアノード電極では、燃料ガスが触媒表面で反応してプロトンと電子を生じ、電子は電極基材に伝導し、プロトンは電解質のプロトン交換膜へと伝導する。このため、アノード電極には、ガス拡散性、電子電導性、イオン電導性が良好なことが要求される。一方、カソード電極では、酸化ガスが触媒層表面で、電解質から伝導してきたプロトンと、電極基材から伝導してきた電子とが反応して水を生成する。このため、ガス拡散性、電子電導性、イオン電導性とともに、生成した水を効率よく排出することも必要となる。
【0005】
このような点から、電極基材(集電体)には導電性を有しガス透過性の良好な多孔質導電シートが用いられてきた。たとえば、特開平6−20710号公報、特開平7−326362号公報、あるいは、特開平7−220735号公報のものが提案されている。これらに開示された集電体は、短い長さの炭素繊維が炭素で結着されてなる多孔質炭素板からなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の多孔質導電シートはガス透過性は良好であるが、そのシート上に電極触媒層を塗工すると空孔内への触媒塗液の浸み込み現象が見られた。この触媒浸み込み現象により、有効に利用されない触媒が増すこととなる。燃料電池においては貴金属の触媒が用いられるために、有効に使われない触媒が増すことは電極のコストアップに繋がるものである。特に、固体高分子型燃料電池は自動車用途への期待が高い。自動車用途への適応には、性能と共にコストも重要な因子となる。現在の固体高分子型燃料電池は、低コスト化がなされればより一層の普及が見込まれている。このため、触媒浸み込みの少ない電極が求められていた。
【0007】
本発明は、上記課題を解決し、触媒浸み込みの少ない電極が得られることにより、触媒の利用効率が向上し、触媒量低減による低コスト化電極が得られることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
本発明において、上記課題を解決するため下記構成を有する。
【0008】
すなわち、本発明の電極は、少なくとも電極基材と電極触媒層とから構成される電極において、該電極基材の中に該電極触媒層が浸み込んで混合層を形成しているとともに、該混合層の厚さが3μm以上20μm以下であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の電極の製造方法は、電極基材上に電極触媒層を設けることにより製造されるものであるが、電極触媒塗液を該電極基材上に塗布して該電極触媒層を設けることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の電極は、膜-電極複合体(MEA)に適用されるほか、通常の電気化学装置、特に固体高分子型燃料電池にも適用され、この燃料電池を用いた移動体や自動車にも適用されるものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態を説明する。
【0012】
本発明は、少なくとも電極基材と電極触媒層とから構成される電極において、該電極基材の中に該電極触媒層が浸み込んでいる混合層の厚さが3μm以上20μm以下であることを特徴とするものであり、ここで用いられる電極基材や電極触媒層はとくに限定されるものではない。
【0013】
本発明における混合層とは電極基材の中に電極触媒層が浸み込んでいる層であるので、電極基材を含まない電極触媒層の構成成分(例えば、触媒金属、触媒粒子、カーボンブラック、フッ素原子を含有するポリマ等)のみにより構成される層(以下、純電極触媒層という)は、前記混合層には含まれない。従って、純電極触媒層の厚さは、本発明の混合層の厚さに算入されることはなく、除外して計算される。但し、本発明の電極において、前記純電極触媒層も有することを妨げるものではない。よって、本発明の電極触媒層には、混合層とともに純電極触媒層も含まれることがある。
【0014】
本発明において、電極基材の中に電極触媒層が浸み込んでいるとは、電極基材の少なくと一部の層乃至は領域において、電極基材の構成材が存在しない空隙部分に電極触媒の構成材が存在している状態を意味する。確かに、既に形成されている電極基材に対して固体化乃至は固定化されていない液体状態の電極触媒構成材料が侵み込んで形成されるという製造方法は、本発明の混合層乃至は電極触媒層の好適な製造法の1つではある。しかし、本発明の混合層乃至は電極触媒層は、必ずしもこの製造方法で形成されたものであると限定していることを意味するものではない。
【0015】
本発明における混合層の厚さとは、平均厚さであり、従って、局所的に本発明の数値範囲を満たさない箇所があっても、平均値で満たしている限り、本発明の技術範囲内であることは言うまでもない。前記混合層の厚さは、好ましくは15μm以下、さらに好ましくは、10μm以下である。尚、3μm以上であることが必要であり、5μm以上であることがより好ましい。前記上限値を上回ると浸み込みが多く有効に用いられる触媒量が低下することとなり、前記下限値を下回ると膜-電極複合体を作成したときに抵抗が大きくなることがあり好ましくないからである。
【0016】
本発明において、電極基材中に電極触媒層が浸み込んでいる混合層の厚さは、電極断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって確認できる。一般的には、電極基材は多孔質構造であり、電極触媒層は粒子を充填した構造であるため、多孔質の電極基材中への電極触媒粒子の浸み込んだ混合層が観察される。また、電極基材が炭素粉末などの導電性微粒子を含む場合のように、電極基材に電極触媒層が浸み込んでいる混合層がはっきり観察できない場合がある。このような場合には、SEMとX線マイクロアナリシス(XMA)を併用(SEM−XMA)することで、電極触媒に含まれる白金などの貴金属触媒が電極基材のどこまで浸み込んでいるかを観察することにより混合層の厚さを求めることが可能である
【0017】
SEM−XMAにおいては、以下の手順で純電極触媒層と混合層を測定する。まず、SEM観察から導電性シートと純電極触媒層の界面を確認し、純電極触媒層の厚さを測定する。次に、XMA測定により電極触媒に用いられるPtの存在を画面の濃淡で確認し、純電極触媒層と導電性シートに浸み込んだ混合層の合計の厚さを測定する。両者の差から混合層の厚みを求めることが可能となる。
【0018】
本発明に用いられる電極基材としては、電気抵抗が低く、集(給)電を行えるものであればとくに限定されることなく用いることが可能であるが、特に多孔質導電シートにおいて本発明の特徴が発現されるものである。電極基材の構成材としては、たとえば、導電性無機物質を主とするものが挙げられ、この導電性無機物質としては、ポリアクリロニトリルからの焼成体、ピッチからの焼成体、黒鉛及び膨張黒鉛などの炭素材、ステンレススチール、モリブデン、チタンなどが例示される。導電性無機物質の形態は繊維状あるいは粒子状など特に限定されないが、燃料電池などのように電極活物質に気体を用いる電気化学装置に用いる場合、ガス透過性の点から繊維状導電性無機物質(無機導電性繊維)特に炭素繊維が好ましい。無機導電性繊維を用いた多孔質導電シートとしては、織布あるいは不織布いずれの構造も使用可能である。たとえば、東レ(株)製カーボンペーパーTGPシリーズ、SOシリーズ、E−TEK社製カーボンクロスなどが用いられる。
【0019】
本発明に用いられる電極基材としては、厚み方向に2.9MPaの一様な面圧を加えたときの厚みが0.02〜0.3mmであるものが好ましい。より好ましくは0.04〜0.2mmである。0.02mmより薄い場合、燃料電池に用いる際にセパレータのガス流路に電極基材が埋没し、面方向への拡散・透過性が低くなり、強度が弱く作業性に乏しくなる。0.3mmよりも厚い場合、厚み方向の電気抵抗が増えてくる。なお、厚みは、電極基材を均一な厚みで平滑な表面を有する2枚のガラス状炭素板で挟み、2.9MPaの一様の面圧で加圧し、電極基材を挟まないときと挟んだときとの上下の圧子の間隔の差から求める。圧子の間隔の測定においては、圧子の中心点を挟む両端で微小変位検出装置により圧子の間隔を測定し、両端の間隔の平均値として圧子の間隔を算出する。一様な面圧とするために、一方の圧子は球座で受けて上下の圧子の加圧面のなす角度を可変にする。
【0020】
厚み方向に2.9MPaの一様な面圧を加えたとき上記の厚みとなる電極基材の、13kPaの面圧で測定した厚みは0.1〜2.0mmが好ましく、0.2〜1.2mmがより好ましい。2mmを超えると電極基材が嵩高になり、電極基材が厚み方向へ向いたり、電極機材の強度が弱くなる。0.1mm未満の厚みにするためには、多量の高分子物質によって電極基材の結着を強固に行う必要がでてくる。
【0021】
電極基材の目付としては10〜220g/m2であるのが好ましい。より好ましくは20〜120g/m2である。10g/m2未満では電極基材の強度が低くなる。また、高分子電解質膜、触媒層、電極基材の一体化時や電池に組んだときに電極基材が薄くなり面方向への拡散・透過効果が不十分になる。220g/m2を超えると電池に組んだ時に電極基材が厚くなり抵抗が大きくなる。
【0022】
電極基材の密度は、厚み方向に2.9MPaの一様な面圧を加えたときに0.3〜0.8g/cm3であるのが好ましい。より好ましいのは0.35〜0.7g/cm3であり、さらに好ましいのは0.4〜0.6g/cm3である。厚み方向に2.9MPaの一様な面圧を加えたときの電極基材の密度は、電極基材の目付と厚み方向に2.9MPaの一様な面圧を加えたときの電極基材の厚みから計算によって求める。電極基材は、拡散・透過性を高くするためには気孔率を高くする必要があるが、厚み方向に2.9MPaの一様な面圧を加えたときの密度が0.8g/cm3よりも大きくなると気孔率が下がり、拡散・透過性が不十分になる。また、0.3g/cm3よりも小さいと、厚み方向の抵抗値が大きくなる。
【0023】
電極基材は、厚み方向への面圧による加圧を行わない状態で、厚み方向に14cm/秒の空気を透過させたときの圧力損失が、98Pa(10mmAq)以下であるのが電極基材のガス拡散性の点で好ましい。より好ましいのは29Pa(3mmAq)以下であり、さらに好ましいのは9.8Pa(1mmAq)以下である。
【0024】
電極基材の引っ張り強さは、0.49N/10mm幅以上が好ましく、1.96N/10mm幅以上がより好ましく、4.9N/10mm幅以上が更に好ましい。引っ張り強さが低いと、電極機材の高次加工において、シートが破損する可能性が増すという問題がある。
【0025】
電極基材は、高分子電解質膜、触媒層、電極基材の一体化時や電池として使用する際に厚み方向に加圧されて壊れることがある。また、電池として使用するときには溝付セパレータと向かい合った状態で厚み方向に加圧されるため、溝付セパレータの山と向かい合う部分に大きな圧力がかかるのに加えて、山と谷の境と向かい合う部分が壊れやすい。電極基材が壊れると、壊れた無機導電性物質の脱落、電極基材の強度低下、面方向の電気抵抗増大等が起こり、電極性能が低下することがある。
【0026】
上記のことから、電極基材は、厚み方向に2.9MPaの一様な面圧を2分間加え、その面圧を解除した後の重量減少率が3%以下であるのが好ましい。重量減少率が3%より高い電極基材は面圧解除後弱くなっており、ハンドリングで壊れやすいという問題があるからである。これにより、加圧時に壊れにくく、電極基材の破壊により燃料電池が使用できなくなるのを防止できる。好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下である。
【0027】
なお、重量減少率の測定は、以下のようにして行う。まず、電極基材を直径46mmの円形にカットし、重量を測定する。次に、その電極基材よりも大きく、平滑表面を有する2枚のガラス状炭素板でカットした電極基材を挟み、電極基材の面積当たり2.9MPaの圧力になるよう加圧し、2分保つ。圧力を取り除いて電極基材を取り出し、その面方向を垂直方向に向けて30mmの高さから落下させる。この落下を10回行った後に重量を測定し、重量減少率を算出する。
【0028】
電極基材の電気抵抗Rの測定は、次による。幅50mm、長さ200mm、厚み1.5mmの表面が平滑な平面を有するガラス状炭素板の片面に、幅50mm、長さ200mm、厚み0.1mmの銅箔が貼着された試験電極板が、2枚用意される。2枚の試験電極板は、実質的に均一な間隔を保ち、ガラス状炭素板の面同士が対向して位置せしめられる。2枚の試験電極板のそれぞれの一端には、電流用の端子が、それぞれの他端には、電圧用の端子が、設けられている。直径46mmの円形に切り出されたシートが、前記間隙に挿入され、2枚の試験電極板の中央部に、載置される。載置されたシートに0.98MPaの圧力が作用するように、試験電極板が移動される。電流用の端子にて、2枚の試験電極板間に1Aの電流が流される。電圧用の端子にて、この時の電圧V(V)が測定される。測定された電圧Vの値が用いられ、次式により、抵抗R(mΩ・cm2)が求められる。
R=V×2.3×2.3×π×1000
ここで、πは円周率である。
【0029】
多孔質導電性シートの電気抵抗は、100mΩ・cm2以下であることが好ましく、50mΩ・cm2以下であることがより好ましく、15mΩ・cm2以下であることが更に好ましい。後述のように撥水性のフッ素樹脂を含む電極基材の電気抵抗は、150mΩ・cm2以下であることが好ましく、70mΩ・cm2以下であることがより好ましく、30mΩ・cm2以下であることが更に好ましい。
【0030】
電極基材には、上記の電極基材に加えて、実質的に二次元平面内において無作為な方向に配向された無機導電性繊維を高分子物質で結着してなる紙状シートを含み、無機導電性繊維の長さが、少なくとも3mmで、かつ、シートの厚みの少なくとも5倍である多孔質導電シートを用いることもできる。ここで、シートの厚みはJIS P8118に準じて測定する。測定時の面圧は13kPaとする。無機導電性繊維が実質的に二次元平面内において配向されているということの意味は、無機導電性繊維がおおむね一つの面を形成するように横たわっているという意味である。このことにより無機導電性繊維による対極との短絡や無機導電性繊維の折損を防止することができる。
【0031】
電極基材の強度やハンドリング性を高くし、無機導電性繊維を実質的に二次元平面内において配向させるために、無機導電性繊維の長さは少なくとも3mm以上であるが、好ましくは4.5mm以上、さらに好ましくは6mm以上とする。3mm未満では、強度、ハンドリング性を保つのが難しくなる。また、無機導電性繊維を実質的に二次元平面内において無作為な方向に配向させるために、無機導電性繊維の長さは電極基材の厚みの5倍以上、好ましくは8倍以上、さらに好ましくは12倍以上とする。5倍未満では、二次元への配向の確保が難しくなる。無機導電性繊維の長さの上限は、実質的に二次元平面内において無作為な方向に配向させるためには30mm以下が好ましく、15mm以下がより好ましく、8mm以下がさらに好ましい。無機導電性繊維が長すぎると分散不良を発生しやすく、多数の繊維が束状のまま残る場合がある。その場合、束状の部分は空隙率が低く、加圧時の厚みが厚くなるために加圧時に高い圧力がかかり、電極基材の破壊や、高分子電解質膜や電極触媒層の局部的な薄層化等の問題が起こりやすくなる。
【0032】
また、無機導電性繊維の形態は、繊維による対極との短絡をより完全に防止できるように、直線状であるのが好ましい。ここで、直線状の無機導電性繊維とは、無機導電性繊維を曲げる外力を取り除いた状態で繊維の長さ方向にある長さL(mm)をとったときに、長さLに対する直線性からのずれΔ(mm)を測定し、Δ/Lがおおむね0.1以下であるものをいう。一方、非直線状の繊維は、実質的に二次元平面内において無作為な方向に配向させるときに三次元方向を向きやすいという欠点がある。
【0033】
電極基材の作成において、無機導電性繊維を実質的に二次元平面内において無作為な方向に配向させる方法としては、液体の媒体中に無機導電性繊維を分散させて抄造する湿式法や、空気中で無機導電性繊維を分散させて降り積もらせる乾式法がある。無機導電性繊維を確実に実質的に二次元平面内において配向させるため、また、無機導電性繊維の強度を高くするためには、湿式法、特にいわゆる抄紙法が好ましい。
【0034】
電極基材において、加圧時の無機導電性物質の折損を防止し、前述のように電極基材の重量減少率を3%以下とするために、使用する繊維は、炭素繊維をカットした炭素短繊維が好ましく、熱処理時に張力をかけたものがより好ましく、熱処理時に延伸したものがさらに好ましい。
【0035】
炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、フェノール系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などが例示される。なかでも、PAN系炭素繊維が好ましい。PAN系炭素繊維はピッチ系炭素繊維にくらべて圧縮強さ、引張破断伸度が大きく、折れにくい。このことは、炭素繊維を構成する炭素の結晶化の相異によると考えられる。折れにくい炭素繊維を得るためには、炭素繊維の熱処理温度は2,500℃以下が好ましく、2,000℃以下がより好ましい。
【0036】
本発明の電極基材中に用いられる炭素短繊維は、直径D(μm)と、引張強さσ(MPa)と、引張弾性率E(MPa)との関係が次式を満足しているのがよい。そのような炭素短繊維からなる電極基材は、壊れにくいためである。すなわち、炭素短繊維の直径が細く、引張強さが強く、引張弾性率が低いほうが炭素短繊維は折れにくく、加圧時に電極基材が壊れにくくなる。
σ/(E×D)≧0.5×10-3
ここで、炭素繊維の引張強さ、引張弾性率はJIS R7601に準じて測定する。偏平な断面の炭素繊維の場合、長径(a)と短径(b)の平均値((a+b)/2)を直径とする。種類の異なる炭素短繊維が混合されている場合、D、σ、Eについてそれぞれ重量平均した値を用いる。好ましくはσ/(E×D)≧1.1×10-3であり、より好ましくはσ/(E×D)≧2.4×10-3である。
【0037】
炭素短繊維の引張破断伸度は、電極基材の強度のため、0.7%以上であるのが好ましく、より好ましくは1.2%以上であり、さらに好ましくは1.8%以上である。引張破断伸度は引張強さ(σ)を引張弾性率(E)で除した値である。
【0038】
また、炭素短繊維の折損は様々な状況で発生するため、炭素短繊維の引張強さは500MPa以上であるのが好ましく、1,000MPa以上であるのがより好ましく、2,000MPa以上であるのがさらに好ましい。
【0039】
電極基材に用いられる無機導電性繊維の直径は、20μm以下であるのが好ましい。より好ましいのは12μm以下、さらに好ましいのは8μm以下である。電極基材の表面には、無機導電性繊維の直径の5〜10倍の直径の空隙が観察される。この空隙は繊維径が太くなると大きくなる。本発明の導電性中間層は、電極触媒層がこの空隙に浸み込むことにより電極性能が低下することを抑制するものである。この空隙が大きすぎると導電性中間層を厚くする必要が生じ、ガス透過性や水の排出性を阻害するので、繊維径は細い方が好ましい。また、無機導電性繊維は細いほど厚み方向の加圧時に折れにくい。一方、無機導電性繊維の直径が細くなりすぎると、一体化時に触媒層の電極基材への浸入が起こりにくくなるため、繊維径は2μm以上であるのが好ましい。直径の異なる繊維が混合されている場合は、重量平均によって直径を求める。
【0040】
電極基材に用いられる無機導電性繊維の体積抵抗率は、電極基材の低抵抗化のため200μΩ・m以下が好ましく、50μΩ・m以下がより好ましく、15μΩ・m以下がさらに好ましい。無機導電性繊維の体積抵抗率の測定はJIS R7601に準じて行う。前記測定処方で定められた繊維長さが得られない場合、得られた繊維長さで測定を行う。
【0041】
電極基材に炭素繊維を用いる場合、X線光電子分光分析法による表面の酸素原子と炭素原子との原子数比(酸素原子数/炭素原子数)が0.35以下、好ましくは0.20以下、さらに好ましくは0.10以下であるものがよい。湿式抄紙法によって電極基材を得る場合、酸素原子と炭素原子との原子数比が高いと炭素短繊維の分散が難しくなって分散不良が増加するためである。0.35を超えると均一な電極基材を得ることが難しくなる。酸素原子と炭素原子との原子数比を低くするためには、炭素繊維の表面処理やサイジング剤の付与をやめたり、不活性または還元雰囲気中での熱処理によって表面の酸素原子を取り除く方法がある。
【0042】
電極基材は、水の滞留によるガス拡散・透過性の低下を防ぐために行う撥水処理、水の排出路を形成するための部分的撥水、親水処理や、抵抗を下げるために行われる炭素質粉末の添加等を行うことも好ましい実施態様である。
【0043】
本発明の電極基材は、上述のように導電性無機繊維からなる多孔質導電シートを用いる場合、圧縮時の厚み低下抑制、密度の向上、電気抵抗の低減などの点から、導電性粒子、特に導電性無機粒子を含むことも好ましい実施態様である。このような導電性無機粒子としては、電気抵抗や耐食性の点から炭素材、特に炭素粒子が好ましい。
【0044】
特に、柔軟性を有する導電性無機粒子がシート状に配列されてなる多孔質導電シートを電極基材に用いることも好ましい。これにより構成成分の脱落が少ない、あるいは、機械的力が作用しても壊れ難く、電気抵抗が低く、かつ、安価な電極基材を提供するという目的が可能となる。特に、柔軟性を有する導電性無機粒子として、膨張黒鉛粒子を用いることで上記目的が達成可能である。
【0045】
ここで、膨張黒鉛粒子とは、黒鉛粒子が、硫酸、硝酸などにより層間化合物化された後、急速に加熱することにより膨張せしめられて得られる黒鉛粒子をいう。通常、膨張黒鉛粒子の結晶構造における層間距離は、原料黒鉛粒子のそれの約50〜500倍である。
【0046】
膨張黒鉛粒子は、それ自体、形状の変形性に富む。この性質は、柔軟性と云う言葉で表現される。この柔軟性は、膨張黒鉛粒子とそれに隣接する他の物体に対する膨張黒鉛粒子の形態的融和性により観察される。この形態的融和性は、膨張黒鉛粒子同士が、少なくとも一部が重なり合った状態で加圧作用を受けると、加圧状態に応じて、互いに変形し、粒子同士が少なくとも部分的に接合することにより観察される。また、この形態的融和性は、膨張黒鉛粒子と、気体透過性が確保される状態でそれらがシート状に配列せしめられる場合に用いられる補助材(例えば、カーボンブラックなどの従来用いられている柔軟性を有しない導電性無機粒子、あるいは、炭素繊維などの従来用いられている無機導電性繊維)とが、共に加圧された場合、膨張黒鉛粒子が、補助材の外形状に沿って、変形され、この補助材に接合されることにより観察される。
【0047】
本発明の電極基材は、柔軟性を有する導電性微粒子に加えて、他の導電性粒子や導電性繊維を含むことも好ましい実施態様であるが、この導電性繊維と導電性粒子の双方が、無機材料からなることにより、耐熱性、耐酸化性、耐溶出性に優れた電極基材が得られる。柔軟性を有しない導電性無機粒子としては、例えば、カーボンブラック粉末、黒鉛粉末、金属粉末、セラミックス粉末などを含んでも良いが、電子電導性と耐触性の点から、カーボンブラック、黒鉛質や炭素質の炭素材が好ましく挙げられる。このような炭素材としては、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが、電子電導性と比表面積の大きさから好ましいものである。オイルファーネスブラックとしては、キャボット社製バルカンXC−72、バルカンP、ブラックパールズ880、ブラックパールズ1100、ブラックパールズ1300、ブラックパールズ2000、リーガル400、ライオン社製ケッチェンブラックEC、三菱化学社製#3150、#3250などが挙げられ、アセチレンブラックとしては電気化学工業社製デンカブラックなどが挙げられる。またカーボンブラックのほか、天然の黒鉛、ピッチ、コークス、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、フラン樹脂などの有機化合物から得られる人工黒鉛や炭素などがある。また、これら炭素材を後処理加工した炭素材も用いることが可能である。このような炭素材の中でも、特に、キャボット社製のバルカンXC−72、電気化学工業社製のデンカブラック、ライオン社製のケッチェンブラックなどが電子電導性の点から好ましく用いられる。
【0048】
なお、電極基材に対する導電性粒子の添加量としては、要求される電極特性や用いられる物質の比表面積や電子抵抗などに応じて適宜決められるべきものであるが、電極基材中の重量比率として1〜80%が好ましく、20〜60%がさらに好ましい。電子伝導体は、少ない場合は電子抵抗が低くなり、多い場合はガス透過性を阻害するなど、いずれも電極性能を低下させる。
【0049】
本発明の電極基材は、上記の導電性粒子のほか、高分子物質を添加することも可能である。これにより圧縮や引張りに強くなり、強度、ハンドリング性を高め、無機導電性物質が電極基材から外れたり、電極基材の厚み方向を向くのを防止できる。特に、無機導電性短繊維を抄紙して多孔質導電シートからなる電極基材を作成する際には、高分子物質を結着剤として用いることは必須である。高分子物質を結着させる方法としては、無機導電性物質を実質的に二次元平面内において無作為な方向に配向させるときに繊維状、粒状、液状の高分子物質を混合する方法と、無機導電性物質が実質的に二次元平面内において無作為な方向に配向された集合体に繊維状、液状の高分子物質を付着させる方法等がある。液状の概念には、エマルジョン、ディスパージョンやラテックス等、液体中に高分子物質の微粒子が分散して実質的に液体として取り扱うことができるものも含まれる。無機導電性物質の結着を強くしたり、電極基材の電気抵抗を低くしたりするためには、無機導電性物質を結着する高分子物質は繊維状、エマルジョン、ディスパージョン、ラテックスであるのが好ましい。繊維状の高分子物質の場合、含有率を低くするため、フィラメント糸を使用することが好ましい。
【0050】
無機導電性物質を結着する高分子物質としては、炭素またはケイ素を主鎖に持つ高分子物質が好ましく、たとえば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル(酢ビ)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル樹脂、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂のほか、熱可塑性エラストマー、ブタジエン・スチレン共重合体(SBR)、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体(NBR)等のエラストマー、ゴム、セルロース、パルプ等を用いることができる。フッ素樹脂等の撥水性の樹脂を用い、無機導電性物質の結着と同時に電極基材の撥水化処理を行ってもよい。
【0051】
電極基材を加圧時に壊れにくくするためには、無機導電性物質を結着する高分子物質は軟らかいほうがよく、高分子物質を繊維状または粒状の形態で用いる場合には、高分子物質は、熱可塑性樹脂、エラストマー、ゴム、セルロース、パルプなどの柔らかい高分子物質を用いると電極基材が加圧時に壊れることが少なくなるので好ましい。また、高分子物質を液状の形態で用いる場合には、高分子物質は、熱可塑性樹脂、エラストマー、ゴムや、熱可塑性樹脂、エラストマー、ゴム等の軟質材料で変性した熱硬化性樹脂が好ましく、前記の熱可塑性樹脂、エラストマー、ゴムにより電極基材は加圧時に壊れにくくてより好ましい。
【0052】
高分子物質は、23℃における圧縮弾性率が4,000MPa以下であることが好ましく、2,000MPa以下であるのがより好ましく、1,000MPa以下であるのがさらに好ましい。圧縮弾性率の低い高分子物質は結着部にかかる応力を緩和して結着を外れにくくし、また、無機導電性物質にかかる応力を緩和して壊れにくくするためである。
【0053】
固体高分子型燃料電池は、カソード(空気極、酸素極)において、電極反応生成物としての水や、電解質を浸透した水が発生する。また、アノード(燃料極)においては、高分子電解質膜の乾燥防止のために燃料を加湿して供給する。これらの水の結露と滞留、水による高分子物質の膨潤が電極反応物を供給する際の妨げになるので、高分子物質の吸水率は低いほうがよい。好ましくは20%以下、より好ましくは7%以下である。
【0054】
このような点から、電極基材には撥水性の高分子を含むことも好ましい実施態様である。特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素原子を含有するポリマ(フッ素樹脂)が高い撥水性を有するため好ましく用いられる。電極基材を燃料電池用の集(給)電体として用いる場合は、撥水処理が必須であり、その際の撥水性の高分子は、電極基材を構成する導電性無機物質間の接着効果ももたらす。このことは、電極基材の強度、電気抵抗の点から有用である。PTFE、FEP、PFAは、燃料電池集電体に求められる撥水性や耐酸化性が高く、PTFEとPFAは、電気抵抗が低い効果をもたらすためさらに好ましい。
【0055】
上記のような高分子物質の電極基材に対する含有率は、0.1〜50重量%の範囲にあるのが好ましい。電極基材の電気抵抗を低くするためには、高分子物質の含有率は少ないほうがよいが、0.1重量%未満ではハンドリングに耐える強度が不足し、無機導電性物質の脱落も多くなる。逆に、40重量%を超えると電極基材の電気抵抗が増えてくるという問題が生じる。より好ましくは、10〜30重量%の範囲である。
【0056】
電極基材に添加した高分子物質は、200℃以上で焼成することも好ましい実施態様である。撥水処理に用いられる上記のフッ素樹脂は、融点以上に加熱することで、撥水性と結着性が向上する。また、フッ素樹脂以外の高分子物質においても、焼成により結着力が向上するほか、電気抵抗の低下、耐食性の向上が見られる。特にフッ素樹脂以外の高分子物質においては、耐酸化性に乏しい場合があり、燃料電池などの電気化学装置用電極として用いる際には、使用中に電極性能の低下をもたらす可能性がある。このため、電極作成時には結着剤として高分子物質物質を用い、電極として使用する前に焼成しておくことが好ましい。
【0057】
本発明の電極における電極触媒層は、特に限定されることなく公知のものを利用することが可能である。電極触媒層とは、電極反応に必要な触媒や電極活物質を含み、さらに好ましくは電極反応を促進する電子伝導やイオン伝導に寄与する物質も含んでいる。また電極活物質(酸化あるいは還元する物質)が気体の場合には、その気体が透過しやすい構造を有していることが必要であり、電極反応に伴う生成物質の排出も促す構造が必要である。本発明の電極を燃料電池に用いる場合には、電極活物質は水素あるいは酸素、触媒は白金などの貴金属粒子、電子伝導体はカーボンブラック、イオン伝導体はプロトン交換樹脂、反応生成物質は水である。電極触媒層は、触媒、電子伝導体、イオン伝導体が互いに接触して、活物質と反応生成物が効率よく出入りする構造が求められる。
【0058】
本発明の電極を燃料電池に用いる場合には、電極触媒層に含まれる触媒は公知の触媒を用いることができ、特に限定されるものではないが、白金、パラジウム、金、ルテニウム、イリジウムなどの貴金属触媒が好ましく用いられる。また、これらの貴金属触媒の合金、混合物など、2種以上の元素が含まれていても構わない。
【0059】
電極触媒層に含まれる電子伝導体(導電材)としては、特に限定されるものではないが、電子伝導性と耐蝕性の点から無機導電性物質が好ましく用いられる。なかでも、カーボンブラック、黒鉛質や炭素質の炭素材、あるいは金属や半金属が挙げられる。このような炭素材としては、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが、電子電導性と比表面積の大きさから好ましいものである。オイルファーネスブラックとしては、キャボット社製バルカンXC−72、バルカンP、ブラックパールズ880、ブラックパールズ1100、ブラックパールズ1300、ブラックパールズ2000、リーガル400、ライオン社製ケッチェンブラックEC、三菱化学社製#3150、#3250などが挙げられ、アセチレンブラックとしては電気化学工業社製デンカブラックなどが挙げられる。またカーボンブラックのほか、天然の黒鉛、ピッチ、コークス、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、フラン樹脂などの有機化合物から得られる人工黒鉛や炭素などがある。これらの炭素材の形態としては、粒子状のほか繊維状も用いることができる。また、これら炭素材を後処理加工した炭素材も用いることが可能である。このような炭素材の中でも、特に、キャボット社製のバルカンXC−72が電子電導性の点から好ましく用いられる。
【0060】
これら電子伝導体の添加量としては、要求される電極特性や用いられる物質の比表面積や電子抵抗などに応じて適宜決められるべきものであるが、電極触媒層中の重量比率として1〜80%が好ましく、20〜60%がさらに好ましい。電子伝導体は、少ない場合は電子抵抗が低くなり、多い場合はガス透過性を阻害したり触媒利用率が低下するなど、いずれも電極性能を低下させる。
【0061】
電子伝導体は、触媒粒子と均一に分散していることが電極性能の点で好ましいものである。このため、触媒粒子と電子伝導体は予め塗液として良く分散しておき、この塗液を導電性中間層を設けた多孔質導電シート上に塗布する方法が好ましく用いられる。
【0062】
電極触媒層を燃料電池に用いる場合、触媒と電子伝導体とが一体化した触媒担持カーボンを用いることも好ましい実施態様である。この触媒担持カーボンを用いることにより、触媒の利用効率が向上し、低コスト化に寄与する。電極触媒層に触媒担持カーボンを用いた場合においても、さらに導電剤を添加することも可能である。このような導電剤としても、上述のカーボンブラックが好ましく用いられる。
【0063】
電極触媒層に用いられるイオン伝導体としては、公知のものが特に限定されることなく用いることが可能である。イオン伝導体としては、種々の有機・無機材料が公知であるが、燃料電池に用いる場合には、プロトン電導性を向上するスルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基などのイオン交換基を有するポリマが好ましく用いられる。なかでも、フルオロアルキルエーテル側鎖とフルオロアルキル主鎖とから構成されるプロトン交換基を有するポリマが好ましく用いられる。たとえば、DuPont社製のNafion、旭化成社製のAciplex、旭硝子社製Flemionなどが好ましい。これらのイオン交換ポリマを溶液または分散液の状態で電極触媒層中に設けることができる。この際に、プロトン交換樹脂を溶解あるいは分散化する溶媒は特に限定されるものではないが、プロトン交換樹脂の溶解性の点から極性溶媒が好ましい。プロトン交換基を有する上述のフッ素原子を含むポリマや、エチレンやスチレンなどの他のポリマ、これらの共重合体やブレンドであっても構わない。
【0064】
イオン伝導体は、電極触媒層を作成する際に電極触媒粒子と電子伝導体を主たる構成物質とする塗液に予め添加し、均一に分散した状態で塗布することが電極性能の点から好ましいものであるが、電極触媒層を塗布した後にイオン導電体を塗布してもかまわない。電極触媒層にイオン導電体を塗布する方法としては、スプレーコート、刷毛塗り、ディップコート、ダイコート、カーテンコート、フローコートなど特に限定されるものではない。
【0065】
電極触媒層に含まれるイオン伝導体の量としては、要求される電極特性や用いられるイオン伝導体の電導度などに応じて適宜決められるべきものであり、特に限定されるものではないが、重量比で1〜80%が好ましく、5〜50%がさらに好ましい。イオン伝導体は、少ない場合はイオン伝導度が低く、多い場合はガス透過性を阻害する点で、いずれも電極性能を低下させる。
【0066】
電極触媒層には、上記の触媒、電子伝導体、イオン伝導体の他に、種々の物質を含んでいてもかまわない。特に電極触媒層中に含まれる物質の結着性を高めるために、上述のプロトン交換樹脂以外のポリマを含むことも好ましい実施態様である。このようなポリマとしては、フッ素原子を含有するポリマが挙げられ、特に限定されるものではないが、たとえば、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリパーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)など、あるいはこれらの共重合体、これらモノマ単位とエチレンやスチレンなどの他のモノマとの共重合体、さらには、ブレンドなども用いることができる。これらポリマの触媒層中の含有量としては、重量比で5〜40%が好ましい。ポリマ含有量が多すぎる場合、電子およびイオン抵抗が増大し電極性能が低下する。
【0067】
電極触媒層は、触媒−ポリマ複合体が三次元網目微多孔質構造を有することも好ましい実施態様である。触媒−ポリマ複合体は、触媒粒子を含んだポリマ複合体であって、この複合体が三次元網目微多孔質構造となっていることが特徴である。なお、「三次元網目微多孔構造」とは、触媒−ポリマ複合体が立体的に繋がった三次元状の網目構造をしている状態をいう。
【0068】
電極触媒層が三次元網目微多孔質構造を有している場合、その微多孔径が0.05〜5μmであることが好ましい。より好ましくは、0.1〜1μmである。微多孔径は、走査型電子顕微鏡(SEM)などで、表面を撮影した写真から、20個以上好ましくは100個以上の平均から求めることができ、通常は100個で測定できる。湿式凝固法によって製造された場合の本発明の微多孔質構造の触媒層は、微多孔径の分布が広いのでできるだけ多くの孔径の平均をとることが好ましい。
【0069】
三次元網目微多孔質構造の空孔率は、10〜95%であることが好ましい。より好ましくは50〜90%である。空孔率は、触媒層全体積から触媒−ポリマ複合体の占める体積を減じたものを触媒層全体積で除した百分率(%)である。触媒層は、電極基材、プロトン交換膜、それ以外の基材に塗布した後に湿式凝固を行うが、触媒層を単独で空孔率を求めることが困難な場合には、電極基材、プロトン交換膜、それ以外の基材の空孔率を予め求めておき、これら基材と触媒層とを含む空孔率を求めた後に、触媒層単独での空孔率を求めることも可能である。
【0070】
電極触媒層は、特に湿式凝固法に得られた三次元網目微多孔質構造のものは、空孔率が大きくガス拡散性や生成水の排出が良好であり、かつ電子伝導性やプロトン伝導性も良好である。従来の多孔化では、触媒粒子径や添加ポリマの粒子径を増大させたり、造孔剤を用いて空孔を形成するなどが行われているが、このような多孔化方式では触媒担持カーボン間やプロトン交換樹脂間の接触抵抗が電極触媒層に比べて大きくなってしまう。それに対して、湿式凝固法による三次元網目微多孔質構造では、触媒担持カーボンを含んだポリマ複合体が三次元網目状になっているので、このポリマ複合体を電子やプロトンが伝導しやすく、さらに微多孔質構造のためガス拡散性や生成水の排出も良好な構造となっている。
【0071】
電極触媒層が三次元微多孔質構造を有している場合においても、触媒や電子伝導体、イオン伝導体に用いられる物質は従来と同様の物質を用いることが可能である。ただし、三次元網目微多孔質構造を有する電極触媒層を作成する際に湿式凝固法によることが好ましい。従って、前記の場合、この湿式凝固法に適したポリマを用いることが好ましく、また、触媒粒子を良く分散し、燃料電池内の酸化−還元雰囲気で劣化しないポリマを用いるが好ましい。このようなポリマとしては、フッ素原子を含有するポリマが挙げられ、特に限定されるものではないが、たとえば、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン(FEP)、ポリパーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)など、あるいはこれらの共重合体、これらモノマ単位とエチレンやスチレンなどの他のモノマとの共重合体(例えば、ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン共重合体)、さらには、ブレンドなども用いることができる。
【0072】
この中でも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン共重合体は、非プロトン性極性溶媒を用い、プロトン性極性溶媒などを凝固溶媒とする湿式凝固法により、三次元網目微多孔質構造を有する触媒−ポリマ複合体が得られる点で、特に好ましいポリマである。これらポリマの溶媒としてはN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルイミダゾリジノン(DMI)などが挙げられ、凝固溶媒としては水や、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール類などのほか、酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル類、芳香族系あるいはハロゲン系の種々の有機溶剤が用いられる。
【0073】
触媒−ポリマ複合体のポリマとしては、上記のポリマに加えて、プロトン伝導性を向上させるためにプロトン交換基を有するポリマも好ましいものである。このようなポリマに含まれるプロトン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基などがあるが特に限定されるものではない。また、このようなプロトン交換基を有するポリマも、特に限定されることなく選ばれるが、フルオロアルキルエーテル側鎖とフルオロアルキル主鎖とから構成されるプロトン交換基を有するポリマが好ましく用いられる。たとえば、DuPont社製のNafionなども好ましいものである。また、プロトン交換基を有する上述のフッ素原子を含有するポリマや、エチレンやスチレンなどの他のポリマ、これらの共重合体やブレンドであっても構わない。
【0074】
Nafionのポリマ溶液は、市販のNafion膜を非プロトン性極性溶媒に溶かしても良いし、Aldrich社製の水−メタノール−イソプロパノール混合溶媒のNafion溶液、あるいはこのNafion溶液を溶媒置換したもの用いても良い。この場合、湿式凝固の際の凝固溶媒は、Nafion溶液の溶媒により適宜決められるべきものであるが、Nafion溶液の溶媒が非プロトン性極性溶媒である場合には、凝固溶媒としては水やアルコール類、エステル類のほか、種々の有機溶媒などが好ましく、水−メタノール−イソプロパノール混合溶媒などの場合には、酢酸ブチルなどのエステル類、種々の有機溶媒が好ましく用いられる。
【0075】
触媒−ポリマ複合体に用いられるポリマは、上記のフッ素原子を含有するポリマやプロトン交換基を含むポリマを共重合あるいはブレンドして用いることも好ましいものである。特にポリフッ化ビニリデン、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン)共重合体などと、プロトン交換基にフルオロアルキルエーテル側鎖とフルオロアルキル主鎖を有するNafionなどのポリマを、ブレンドすることは電極性能の点から好ましいものである。
【0076】
触媒−ポリマ複合体の主たる成分は触媒担持カーボンとポリマであり、それらの比率は必要とされる電極特性に応じて適宜決められるべきもので特に限定されるものではないが、触媒担持カーボン/ポリマの重量比率で5/95〜95/5が好ましく用いられる。特に固体高分子型燃料電池用電極触媒層として用いる場合には、触媒担持カーボン/ポリマ重量比率で40/60〜85/15が好ましいものである。
【0077】
触媒−ポリマ複合体には、種々の添加物を加えることも好ましい実施態様である。たとえば、電子伝導性向上のための炭素などの導電剤や、結着性向上のためのポリマ、三次元網目微多孔質構造の孔径を制御する添加物などがあるが、特に限定されることなく用いることができる。これら添加物の添加量としては、触媒−ポリマ複合体に対する重量比率として0.1〜50%が好ましく、1〜20%がさらに好ましい。
【0078】
三次元網目微多孔質構造を有する触媒−ポリマ複合体の製造方法としては、湿式凝固法によるものが好ましい。この湿式凝固法は、触媒−ポリマ溶液組成物を塗布した後に、この塗布層をポリマに対する凝固溶媒と接触させて、触媒−ポリマ溶液組成物の凝固析出と溶媒抽出とが同時に行なわれる。
【0079】
この触媒−ポリマ溶液組成物は、ポリマ溶液中に触媒担持カーボンが均一に分散したものである。触媒担持カーボンとポリマは前述のものが好ましく用いられる。ポリマを溶かす溶媒については、用いられるポリマに応じて適宜決められるべきもので、特に限定されるものではない。ポリマ溶液は触媒担持カーボンを良く分散していることが重要である。分散状態が悪い場合には、湿式凝固の際に、触媒担持カーボンとポリマとが複合体を形成することができず好ましくない。
【0080】
塗布方法については、触媒−ポリマ溶液組成物の粘度や固形分などに応じた塗布方法が選択され、特に限定されるべきものではないが、ナイフコーター、バーコーター、スプレー、ディップコーター、スピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーターなどの一般的な塗布方法が用いられる。
【0081】
一方、ポリマを湿式凝固させる凝固溶媒についても特に限定されるものではないが、用いられるポリマを凝固析出しやすく、かつポリマ溶液の溶媒と相溶性がある溶媒が好ましい。湿式凝固が実際に行われる凝固溶媒との接触方法についても、特に限定されるものではないが、凝固溶媒に基材ごと浸漬する、塗布層のみを凝固溶媒の液面に接触させる、凝固溶媒を塗布層にシャワリングあるいはスプレーする、など特に限定されるものではない。
【0082】
この触媒−ポリマ溶液組成物が塗布される基材については、電極基材あるいは固体電解質の何れにおいても塗布、その後に湿式凝固を行うことが可能であるが、電極基材に塗布の直後に湿式凝固を行うことで電極基材への触媒層の浸み込みを抑制することが可能となり、本発明の好ましい実施態様となる。また、電極基材や固体電解質以外の基材(転写基材)に塗布し、その後に湿式凝固を行い、三次元網目微多孔質構造を作成した後に、この触媒層を電極基材や固体電解質に転写あるいは挟持させても良い。この場合の転写基材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のシート、あるいは表面をフッ素やシリコーン系の離型剤処理したガラス板や金属板なども用いられる。
【0083】
本発明の電極は、電極基材の中に電極触媒層が浸み込んでいる混合層を20μm以下の厚さにすることによって、有効利用されない無駄な触媒低減することを目的とするものであり、その製造方法は特に限定されるものではない。電極基材に多孔質導電シートを用いる場合、電極触媒層塗液が電極基材に浸み込みやすいため、本発明の電極とするためには浸み込まない工夫が必要である。例えば、電極触媒層塗液の粘度を高くする、電極基材および含まれる高分子材料と電極触媒層塗液の表面エネルギーの差を大きくするなどの方法がある。
【0084】
電極触媒層塗液の粘度を高くすると、多孔質導電シートへの浸み込みが抑制される。粘度を高めるには、触媒層塗液の溶媒以外の固形分比率を高くする、触媒層塗液に含まれる高分子物質の分子量を高くする、触媒層塗液に種々の増粘剤を添加するなどの方法がある。増粘剤の例としては、グリセリンなどの多価アルコール類、オクタノールなどの高級アルコール類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの高分子化合物、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック類などが好ましいが、特に限定されるものではない。
【0085】
電極基材および含まれるポリマと電極触媒層塗液との表面エネルギー差を利用する場合は、電極基材と電極触媒層塗液との静的接触角が50°以上(より好ましくは70°以上)とすることで、浸み込みを抑制することが可能である。電極基材は、燃料電池に用いる場合は撥水処理を行うためにフッ素樹脂を含み、表面自由エネルギーが低くなっている。このため、表面自由エネルギーの大きな溶媒を含む電極触媒層塗液を用いることで、静的接触角が増大し浸み込み抑制がなされる。電極触媒層にはイオン伝導体としてプロトン交換樹脂が含まれている。このためイオン交換樹脂を含む触媒層塗液は水を含んでおり、このような場合、静的接触角が大きくなることで浸み込み抑制がなされる。電極基材にフッ素樹脂が含まれる場合には、水のほかN−メチルピロリドンを電極触媒層塗液の溶媒に用いると、静的接触角が大きくなり浸み込み抑制がなされる。静的接触角の測定は、基材上に触媒層塗液をマイクロシリンジで一滴落とし、側面から顕微鏡で測定するという、一般的な測定法でよい。
【0086】
本発明の電極は、固体電解質層とを組み合わせることにより膜−電極複合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)とすることも好ましい実施態様である。
【0087】
固体電解質層を構成している固体電解質としては、通常の燃料電池に用いられる固体電解質であれば特に限定されるものではないが、プロトン交換膜が本発明の燃料電池性能を発現するうえで好ましく用いられる。プロトン交換膜のプロトン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基など特に限定されるものではない。
【0088】
このプロトン交換膜は、上記のプロトン交換基、特にスルホン酸基を有する、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体などの炭化水素系と、フッ素原子含有ポリマ、特にフルオロアルキルエーテル側鎖とフルオロアルキル主鎖とから構成される共重合体のパーフルオロ系に大別され、燃料電池が用いられる用途や環境に応じて適宜選択されるべきものであるが、フッ素原子含有ポリマ、特にパーフルオロ系が燃料電池寿命の点から好ましいものである。また、部分的にフッ素原子置換した部分フッ素膜も好ましく用いられる。パーフルオロ膜では、DuPont社製Nafion、旭化成製Aciplex、旭硝子製Flemion、ジャパンゴアテックス社製Goa-selectなどが例示され、部分フッ素膜では、トリフルオロスチレンスルホン酸の重合体やポリフッ化ビニリデンにスルホン酸基を導入したものなどがある。また、プロトン交換膜は1種のポリマばかりでなく、2種以上のポリマの共重合体やブレンドポリマ、2種以上の膜を貼り合わせた複合膜、プロトン交換膜を不織布や多孔フィルムなどで補強した膜なども用いることができる。
【0089】
膜−電極複合体の製造方法としては、特に限定されるものではない。一般的には、電極基材上に電極触媒層を設けて電極を作成し、この電極をプロトン交換膜などの固体電解質と接合するが、この接合条件についても電極触媒層あるいは電気化学装置の特性に応じて適宜決められるべきものである。
【0090】
本発明の電極の特性を活かす上では、電極基材と電極触媒層とから構成される電極を予め2枚作成し、これらの2枚の電極の間にプロトン交換膜を各電極の電極触媒層側がプロトン交換膜に対面するように配置し、前記2枚の電極で該プロトン交換膜を狭持させて接合することによるMEAの製造方法が好ましいものである。この接合は加温プレスとなるが、この条件についても特に限定されるものではない。一般的には、プレス温度は20℃〜200℃、プレス圧力は1MPa〜20MPaである。
【0091】
その他の膜-電極複合体製造方法としては、プロトン交換膜の表裏両面に前記電極触媒層を設ける工程(工程A)、該電極触媒層の両外側面に電極基材を設ける工程(工程B)をこの順で行うことも好ましい製造方法である。この方法は、電極基材への触媒層塗布を行わないため、基材への触媒層浸み込みを抑制する点で本発明の電極からなるMEAを作成可能とする方法である。
【0092】
特に、電極触媒層塗液をプロトン交換膜上に塗工し、その後に電極基材を設けるMEA製造方法も好ましいものである。この場合においては、触媒塗液を塗布するプロトン交換膜は水や有機溶媒により膨潤しやすいため、触媒層塗液に用いる溶媒は、プロトン交換膜を膨潤しにくい溶媒を選択する必要がある。しかしながら、触媒層塗液にはプロトン交換樹脂が含まれおり、このプロトン交換樹脂を溶解する溶媒ではプロトン交換膜を膨潤あるいは溶かしてしまうことになる。このため、触媒層塗液においては、含まれるプロトン交換樹脂を溶解することなく、エマルジョンなどの形態で分散させる溶媒を用いることが好ましい。例えば、プロトン交換樹脂溶液を溶媒除去、乾燥、粉砕し、得られたプロトン交換樹脂粉末と触媒担持カーボンとをプロトン交換膜を膨潤させない溶媒中で混合・分散する方法、あるいは、プロトン交換樹脂溶液と触媒担持カーボンとの分散液を溶媒除去、乾燥、粉砕し、得られた粉末をプロトン交換樹脂と膨潤しない溶媒に再分散する方法、などが挙げられるが特に限定されるものではない。
【0093】
さらに、上記の工程Aにおいて、電極触媒塗液を電極基材やプロトン交換膜以外の転写基材上に塗布して電極触媒層を形成し、これをプロトン交換膜上に転写することも好ましいMEA製造方法である。この際の転写基材としては、各種の樹脂、あるいはPTFE、PFA、FEPなどのフッ素樹脂からなるシートやフィルムなどの転写基材や、ガラス板などを用いることが可能である。特にシートやフィルムに電極触媒層を塗工して、それをプロトン交換膜とロールプレスすることで、プロトン交換膜上に転写することが可能である。
【0094】
また、上記工程Bにおいて、電極基材を構成する物質をプロトン交換膜に塗工することで電極基材を設けることも好ましいMEA製造方法である。電極基材を構成する無機導電性繊維や粒子を液状あるいは固体状で、電極触媒層を設けたプロトン交換膜に吹き付けることによりMEAが作成される。特に、電極基材を構成する無機導電性物質が炭素短繊維の場合には、これとフッ素原子含有ポリマを含む分散液を予め作成し、この分散液を電極触媒層を設けたプロトン交換膜上に吹き付けることにより塗工することも好ましい。
【0095】
本発明の電極基材と電極触媒層とからなる電極、あるいは該電極と固体電解質膜からなる膜−電極複合体(MEA)は、種々の電気化学装置に適応することができる。なかでも燃料電池や水電解層が好ましく、さらに燃料電池のなかでも固体高分子型燃料電池に好適である。燃料電池には、水素を燃料とするものとメタノールなどの炭化水素を燃料とするものがあるが、特に限定されることなく用いることができる。
【0096】
さらに、本発明の電極触媒層を用いた燃料電池の用途としては、特に限定されることなく考えられるが、固体高分子型燃料電池において有用な用途である移動体の電力供給源が好ましいものである。特に、乗用車、バス、トラックなどの自動車や船舶、鉄道なども好ましい移動体である。
【0097】
【実施例】
以下本発明の詳細につき実施例を用いてさらに説明する。
【0098】
実施例1
(1)電極基材の作成
多孔質導電シートとしてカーボンペーパー(東レ製TGP−H−060)を用い、これをPTFE分散液(ダイキン工業製:ポリフロンTFE D−1、ディスパージョン平均粒径0.2−0.4μm、60重量%、水溶液)に含浸し、乾燥後、370℃にて焼成した。PTFEの付き量は20重量%であった。
【0099】
(2)触媒層塗液の調製
市販のAldrich社製Nafion溶液(5重量%)を濃縮して15重量%とした。この濃縮Nafion溶液10gに触媒担持カーボン(触媒;Pt、カーボン;Cabot社製VulcanXC-72、白金担持量;50wt%)3gを加え、良く攪拌して触媒−ポリマ組成物からなる触媒層塗液を調製した。
【0100】
(3)電極触媒層塗液の塗布、乾燥による電極の作成
前記(1)で作成した多孔質導電シート上に、前記(2)で調製した触媒層塗液を塗布、乾燥し、電極基材と電極触媒層とから構成される電極を作成した。得られた電極は、白金付き量0.5mg/cm2、Nafionの付き量0.3mg/cm2であった。
【0101】
この電極の断面SEM写真を図1(1)に、またX線マイクロアナリシスによる白金の分布を図1(3)に示す。電極触媒層が電極基材へ浸み込んだ混合層の厚さは10μm、混合層を含まない純触媒層は15μmであった。
【0102】
比較例1
(1)電極基材の作成
実施例1と同様に、多孔質導電シートとしてカーボンペーパー(東レ製TGP−H−060)を用い、これをPTFE分散液(ダイキン工業製:ポリフロンPTFEディスパージョン)に含浸し、乾燥後、370℃にて焼成した。PTFEの付き量は20重量%であった。
【0103】
(2)触媒層塗液の調製
市販のAldrich社製Nafion溶液(5重量%)をそのまま用いて、触媒担持カーボン(触媒;Pt、カーボン;Cabot社製VulcanXC-72、白金担持量;50wt%)を加え、良く攪拌して触媒−ポリマ組成物からなる触媒層塗液を調製した。
【0104】
(3)電極触媒層塗液の塗布、乾燥による電極の作成
前記(1)で作成した多孔質導電シート上に、前記(2)で調製した触媒層塗液を塗布、乾燥し、電極基材と電極触媒層とから構成される電極を作成した。得られた電極は、白金付き量0.5mg/cm2、Nafionの付き量0.3mg/cm2であった。
【0105】
この電極の断面SEM写真からは、電極触媒層が電極基材へ浸み込んだ混合層の厚さは、40μmであった。
【0106】
実施例2
(1)電極基材の作成
多孔質導電シートとしてカーボンペーパー(東レ製TGP−H−060)を用い、これをPFA分散液(ダイキン工業製:ネオフロンPFA AD−2CR)に含浸し、乾燥後、320℃にて焼成した。PFAの付き量は20重量%であった。
【0107】
(2)触媒層塗液の調製
市販のAldrich社製Nafion溶液(5重量%)に増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを0.1重量%添加した。これに、触媒担持カーボン(触媒;Pt、カーボン;Cabot社製VulcanXC-72、白金担持量;50wt%)を加え、良く攪拌して触媒−ポリマ組成物からなる触媒層塗液を調製した。
【0108】
(3)電極触媒層塗液の塗布、乾燥による電極の作成
前記(1)で作成した多孔質導電シート上に、前記(2)で調製した触媒層塗液を塗布、乾燥し、電極基材と電極触媒層とから構成される電極を作成した。得られた電極は、白金付き量0.5mg/cm2、Nafionの付き量0.3mg/cm2であった。
【0109】
この電極の断面SEM写真からは、電極触媒層が電極基材へ浸み込んだ混合層の厚さは、10μmであった。
【0110】
実施例3
(1)電極基材の作成
実施例2と同様に、多孔質導電シートとしてカーボンペーパー(東レ製TGP−H−060)を用い、これをPFA分散液(ダイキン工業製:ネオフロンPFAディスパージョン)に含浸し、乾燥後、320℃にて焼成した。PFAの付き量は20重量%であった。
【0111】
(2)触媒層塗液の調製
市販のAldrich社製Nafion溶液(5重量%)を濃縮しながらN−メチルピロリドンを添加して、溶媒置換を行った。得られたNafion溶液は10重量%であった。これに触媒担持カーボン(触媒;Pt、カーボン;Cabot社製VulcanXC-72、白金担持量;50wt%)を加え、良く攪拌して触媒−ポリマ組成物からなる触媒層塗液を調製した。
【0112】
(3)触媒−ポリマ組成物の塗布、乾燥による電極触媒層の作成
前記(1)で作成した多孔質導電シート上に、前記(2)で調製した触媒層塗液を塗布、乾燥し、電極基材と電極触媒層とから構成される電極を作成した。得られた電極は、白金付き量0.5mg/cm2、Nafionの付き量0.3mg/cm2であった。
【0113】
この電極基材上に触媒層塗液を一滴静置した際の静的接触角は、90°であった。
【0114】
この電極の断面SEM写真からは、電極触媒層が電極基材へ浸み込んだ混合層の厚さは、15μmであった。
【0115】
実施例4
(1)電極基材の作成
実施例1と同様に、多孔質導電シートとしてカーボンペーパー(東レ製TGP−H−060)を用い、これをPTFE分散液(ダイキン工業製:ポリフロンPTFEディスパージョン)に含浸し、乾燥後、370℃にて焼成した。PTFEの付き量は20重量%であった。
【0116】
(2)触媒層塗液の調製
市販のAldrich社製Nafion溶液(5重量%)を濃縮して10重量%とした。これに触媒担持カーボン(触媒;Pt、カーボン;Cabot社製VulcanXC-72、白金担持量;50wt%)を加え、良く攪拌して触媒−ポリマ組成物からなる触媒層塗液を調製した。
【0117】
(3)電極触媒層の塗布、湿式凝固、乾燥による微多孔構造電極の作成
前記(1)で作成した多孔質導電シート上に、前記(2)で調製した触媒層塗液を塗布後、直ちに酢酸ブチルに浸漬、乾燥することにより、電極基材と微多孔構造電極触媒層とから構成される電極を作成した。得られた電極は、白金付き量0.5mg/cm2、Nafionの付き量0.3mg/cm2であった。
【0118】
この電極の断面SEM写真からは、電極触媒層が電極基材へ浸み込んだ混合層の厚さは、10μmであった。
【0119】
実施例5
(1)多孔質導電シートの作成
長さ12mmにカットされたPAN系炭素繊維の短繊維と膨張黒鉛粉末(東洋炭素(株)製、かさ密度0.14g/cm3、平均粒径100乃至200μm)を、重量比で1:1に混合し、ナトリウムカルボキシメチルセルロース水溶液中に分散した。この分散液を用い、炭素繊維の短繊維に膨張黒鉛粉末が付着したシートを金網上に抄造した。水分を除去する目的で、シートを2枚の濾紙に挟み軽く加圧した。その後、濾紙を外してシートを乾燥した。乾燥後、シートをロールプレスし、多孔質導電シートを製造した。得られたシートは80g/m2であった。
【0120】
(2)電極基材の作成
前記(1)で作成した多孔質導電シートを空気中で200℃、30分の熱処理を行った後、PFAディスパージョン(ネオフロンPFAディスパージョン、ダイキン工業株式会社製)を含浸し、2枚の濾紙に挟んで軽く加圧、乾燥した。さらにこのシートを、14.7kPa(0.15kgf/cm2)で加圧しながら400℃、3時間の熱処理を行い、多孔質導電シートを製造した。PFAの付き量は15重量%であった。
【0121】
(3)電極触媒層の作成
市販のAldrich社製Nafion溶液(5重量%)を濃縮しながらN−メチルピロリドンを添加して、溶媒置換を行った。得られたNafion溶液は10重量%であった。これに触媒担持カーボン(触媒;Pt、カーボン;Cabot社製VulcanXC-72、白金担持量;50wt%)を加え、良く攪拌して触媒−ポリマ組成物からなる触媒層塗液を調製した。
【0122】
(4)電極触媒層塗液の塗布、乾燥による電極の作成
前記(2)で作成した多孔質導電シート上に、前記(3)で調製した触媒層塗液を塗布、乾燥し、電極基材と電極触媒層とから構成される電極を作成した。得られた電極は、白金付き量0.5mg/cm2、Nafionの付き量0.3mg/cm2であった。
【0123】
この電極基材上に触媒層塗液を一滴静置した際の静的接触角は、90°であった。
【0124】
この電極の断面SEM写真からは、電極触媒層が電極基材へ浸み込んだ混合層の厚さは、15μmであった。
【0125】
実施例6
(1)電極の作成
実施例2と同様に電極を作成した。
【0126】
(2)膜−電極複合体(MEA)
前記(1)において作成した電極を2枚用意し、プロトン交換膜(DuPont社製ナフィオン112)の両側から電極触媒層面を対向させて狭持した。これを150℃、150MPaでホットプレスを行い、MEAを作成した。
【0127】
このMEAの断面をSEM観察したところ、電極触媒層が電極基材へ浸み込んだ混合層の厚さは10μmであった。
【0128】
(3)MEAの燃料電池性能評価
前記(2)において作成したMEAは、電流−電圧(I−V)測定により燃料電池性能評価を行った。評価セル温度は70℃、アノード(燃料)ガスを水素、カソード(酸化)ガスを空気、ガス圧力は常圧において最高出力450mW/cm2であり良好な性能を示した。
【0129】
比較例2
比較例1において作成した電極を用い、実施例6と同様にMEAを作成した。
【0130】
このMEA断面のSEM観察では、電極触媒層が電極基材に浸み込んだ混合層の厚さは30μであった。
【0131】
さらに、このMEAを実施例6と同じ条件でI−V測定したが、最高出力250mW/cm2と実施例6に比べて低出力であり、劣った性能であった。
【0132】
実施例7
(1)電極触媒層塗液の作成
市販のプロトン交換樹脂溶液(Aldrich社製Nafion溶液)を凍結乾燥、凍結粉砕を行い、プロトン交換樹脂粉末を作成した。この粉末1.5gと触媒担持カーボン(触媒;Pt、カーボン;Cabot社製VulcanXC-72、白金担持量;50wt%)3gを酢酸ブチル10gに加えて、混合・分散を充分に行い、触媒層塗液を作成した。
【0133】
(2)MEAの作成
前記(1)において作成した電極触媒層塗液を用い、市販のプロトン交換膜(DuPont社製ナフィオン112)の両面に塗布、乾燥した。この両側から、電極基材としてカーボンクロス(E−TEK社製ELAT)を狭持させてMEAを作成した。
【0134】
得られたMEAの断面SEM観察を行ったところ、電極触媒層が電極基材へ浸み込んだ混合層の厚さは5μmであった。
【0135】
(3)MEAの燃料電池性能評価
前記(2)において作成したMEAは、電流−電圧(I−V)測定により燃料電池性能評価を行った。評価セル温度は70℃、アノード(燃料)ガスを水素、カソード(酸化)ガスを酸素、ガス圧力は常圧において最高出力800mW/cm2であり良好な性能を示した。
【0136】
実施例8
(1)電極触媒層塗液の作成
市販のプロトン交換樹脂溶液(Aldrich社製Nafion溶液5%)10gに触媒担持カーボン(触媒;Pt、カーボン;Cabot社製VulcanXC-72、白金担持量;50wt%)を1g加えて、充分に混合・分散を行った後、溶媒を乾燥除去、粉砕して粉末を得た。この粉末にジオキサン8gを加えて、混合・分散を充分に行い、触媒層塗液を作成した。
【0137】
(2)MEAの作成
実施例7(2)と同様に、前記(1)において作成した電極触媒層塗液と実施例5(1)で作成した電極基材を用いてMEAを作成した。得られたMEAの断面SEM観察からは、混合層の厚さは5μmであった。
【0138】
(3)MEAの燃料電池性能評価
前記(2)において作成したMEAは、電流−電圧(I−V)測定により燃料電池性能評価を行った。評価セル温度は80℃、アノード(燃料)ガスを水素、カソード(酸化)ガスを空気、ガス圧力は0.2MPaにおいて最高出力850mW/cm2であり良好な性能を示した。
【0139】
実施例9
(1)電極基材の作成
実施例5(1)(2)と同様に電極基材を作成した。
【0140】
(2)電極触媒層の作成
市販のAldrich社製Nafion溶液(5重量%)に触媒担持カーボン(触媒;Pt、カーボン;Cabot社製VulcanXC-72、白金担持量;50wt%)を加え、良く攪拌して触媒−ポリマ組成物からなる触媒層塗液を調製した。この触媒層塗液を厚さ100μmのテフロンシート上に、塗布、乾燥し、電極触媒層を作成した。得られた電極触媒層は、白金付き量0.5mg/cm2、Nafionの付き量0.3mg/cm2であった。
【0141】
(3)プロトン交換膜への電極触媒層の転写
前記(2)において作成した電極触媒層を2枚用意し、プロトン交換膜(DuPont社製ナフィオン112)の両側から電極触媒層面を対向させて狭持した。これをロールプレスして、プロトン交換膜へ電極触媒層を転写し、電極触媒層つきプロトン交換膜を作成した。
【0142】
(4)MEAの作成
前記(3)で作成した電極触媒層つきプロトン交換膜を用い、前記(1)で作成した電極基材2枚を両側から狭持させてMEAを作成した。このMEAの断面SEM観察からは、混合層の厚さは5μmであった。
【0143】
(5)MEAの性能評価
前記(4)において作成したMEAは、電流−電圧(I−V)測定により燃料電池性能評価を行った。評価セル温度は60℃、アノード(燃料)ガスを水素、カソード(酸化)ガスを空気、ガス圧力は常圧において最高出力350mW/cm2であり良好な性能を示した。
【0144】
実施例10
(1)電極触媒層塗液の作成
市販のプロトン交換樹脂溶液(Aldrich社製Nafion溶液)を凍結乾燥、凍結粉砕を行い、プロトン交換樹脂粉末を作成した。この粉末1.5gと触媒担持カーボン(触媒;Pt、カーボン;Cabot社製VulcanXC-72、白金担持量;50wt%)3gを酢酸ブチル10gに加えて、混合・分散を充分に行い、触媒層塗液を作成した。
【0145】
(2)電極基材塗液の作成
長さ12mmにカットされたPAN系炭素繊維の短繊維と膨張黒鉛粉末(東洋炭素(株)製、かさ密度0.14g/cm3、平均粒径100乃至200μm)を、重量比で1:1に混合し、PFAディスパージョン(ネオフロンPFAディスパージョン、ダイキン工業株式会社製)に充分に混合・分散し、電極基材塗液を作成した。PFAの付き量は15重量%であった。
【0146】
(3)MEAの作成
前記(1)において作成した電極触媒層塗液を用い、市販のプロトン交換膜(DuPont社製ナフィオン112)の両面に塗布、乾燥した。この両側から、前記(2)で作成した電極触媒層塗液を塗布、乾燥してMEAを作成した。
【0147】
得られたMEAの断面SEMからは、混合層の厚さは5μmであった。
【0148】
(4)MEAの性能評価
前記(3)において作成したMEAは、電流−電圧(I−V)測定により燃料電池性能評価を行った。評価セル温度は70℃、アノード(燃料)ガスを水素、カソード(酸化)ガスを酸素、ガス圧力は常圧において最高出力500mW/cm2であり良好な性能を示した。
【0149】
【発明の効果】
本発明により触媒浸み込みの少ない電極が得られ、したがって、触媒の利用効率が向上し、触媒量低減による低コスト化電極が得られる。
【0150】
本発明の電極は、膜-電極複合体(MEA)に適用されるほか、通常の電気化学装置、特に固体高分子型燃料電池にも適用され、この燃料電池を用いた移動体や自動車にも適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例の断面図である。
【符号の説明】
1:本発明実施例の断面の走査型電子顕微鏡写真
2:断面区分表示
3:本発明実施例の断面のX線マイクロアナリシスによる白金の分布図

Claims (27)

  1. 少なくとも、電極基材と電極触媒層とから構成される電極において、該電極基材の中に該電極触媒層が浸み込んで混合層を形成しているとともに、該混合層の厚さが3μm以上20μm以下であることを特徴とする電極。
  2. 混合層の厚さが10μm以下である請求項1記載の電極。
  3. 電極基材が多孔質導電シートである請求項1または2に記載の電極。
  4. 多孔質導電シートが無機導電性繊維を用いた織布構造あるいは不織布構造のものである請求項3に記載の電極。
  5. 無機導電性繊維が炭素繊維である請求項4に記載の電極。
  6. 電極基材が導電性粒子を含む請求項1〜5のいずれかに記載の電極。
  7. 導電性粒子が炭素材である請求項6に記載の電極。
  8. 電極基材がフッ素原子を含有するポリマを含む請求項1〜7のいずれかに記載の電極。
  9. 電極触媒層が、少なくとも、白金、パラジウム、金、ルテニウム、及びイリジウムからなる群から選ばれる一種以上の元素を含む請求項1〜8のいずれかに記載の電極。
  10. 電極触媒層がカーボンブラックを含む請求項1〜9のいずれかに記載の電極。
  11. 電極触媒層がフッ素原子を含有するポリマを含む請求項1〜10のいずれかに記載の電極。
  12. 電極触媒層がプロトン交換基を有するポリマを含む請求項1〜11のいずれかに記載の電極。
  13. 電極触媒塗液を電極基材上に塗布することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の電極の製造方法。
  14. 電極基材と電極触媒塗液との静的接触角が50°以上である請求項13に記載の電極の製造方法。
  15. 請求項1〜12のいずれかに記載の電極と、プロトン交換膜とから構成される膜−電極複合体。
  16. プロトン交換膜がフッ素原子含有ポリマである請求項15記載の膜−電極複合体。
  17. フッ素原子含有ポリマがスルホン酸基を有するフルオロアルキルエーテル側鎖とフルオロアルキル主鎖からなるポリマである請求項16に記載の膜−電極複合体。
  18. 請求項1〜12のいずれかに記載の電極2枚の間にプロトン交換膜を前記各電極の電極触媒層側が該プロトン交換膜に対面するように配置し、前記2枚の電極で該プロトン交換膜を挟持させて接合することを特徴とする膜−電極複合体の製造方法。
  19. 請求項1〜12のいずれかに記載の電極を用いた電気化学装置。
  20. 請求項15〜17のいずれかに記載の膜−電極複合体を用いた電気化学装置。
  21. 請求項1〜12のいずれかに記載の電極を用いた水電解装置。
  22. 請求項15〜17のいずれかに記載の膜−電極複合体を用いた水電解装置。
  23. 請求項1〜12のいずれかに記載の電極を用いた燃料電池。
  24. 請求項15〜17のいずれかに記載の膜−電極複合体を用いた燃料電池。
  25. 固体高分子型電解質を用いる請求項23または24に記載の燃料電池。
  26. 請求項2325のいずれかに記載の燃料電池を電力供給源とする移動体。
  27. 請求項2325のいずれかに記載の燃料電池を電力供給源とする自動車。
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