JP4730703B2 - 厚膜化α型酸化アルミニウム層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 - Google Patents
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Description
(a)下部層として、いずれも化学蒸着形成されたTiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなり、かつ0.5〜10μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層として、1〜15μmの平均層厚を有するα型Al2O3層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆サーメット工具が知られており、この被覆サーメット工具が、例えば各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削に用いられることは良く知られている。
(a)工具基体の表面に、硬質被覆層としてのα型Al2O3層を蒸着形成するに際して、例えばこれの蒸着形成に先だって、通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:3〜10%、CO2:0.5〜3%、C2H4:0.01〜0.3%、H2:残り、
反応雰囲気温度:750〜900℃、
反応雰囲気圧力:3〜13kPa、
の低温条件で、下部層であるTi化合物層の表面にAl2O3核を形成し、この場合前記Al2O3核は30〜200nmの平均層厚を有するAl2O3核薄膜であるのが望ましく、引き続いて、反応雰囲気を圧力:3〜13kPaの水素雰囲気に変え、反応雰囲気温度を1100〜1200℃に昇温した条件で前記Al2O3核薄膜に加熱処理を施した状態で、硬質被覆層としてのα型Al2O3層を通常の条件で、平均層厚で15μmを越えた16〜28μmの層厚に形成すると、この結果の前記加熱処理Al2O3核薄膜上に蒸着形成された厚膜化α型Al2O3層(以下、厚膜化改質α型Al2O3層という)においては、平均層厚で16〜28μmの層厚に厚膜化したにもかかわらず、Al2O3結晶粒の粗大化が著しく抑制され、かつ層自体の緻密性も保持されたものになるので、高温強度の低下が抑制されるようになること。
以上(a)〜(c)に示される研究結果を得たのである。
(a)下部層として、いずれも化学蒸着形成された、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなり、かつ0.5〜10μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層として、化学蒸着形成した状態でα型の結晶構造を有し、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射し、電子後方散乱回折像装置を用い、所定領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、1.25〜10.00度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45〜98%の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示し、かつ16〜28μmの平均層厚を有する厚膜化改質α型Al2O3層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆サーメット工具に特徴を有するものである。
(a)Ti化合物層
Ti化合物層は、基本的には厚膜化改質α型Al2O3層の下部層として存在し、自身の具備するすぐれた高温強度によって硬質被覆層の高温強度向上に寄与するほか、工具基体と厚膜化改質α型Al2O3層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性を向上させる作用を有するが、その平均層厚が0.5μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が10μmを越えると、切削時の発生熱による熱塑性変形量が許容範囲を越えて大きくなり、この結果上部層である厚膜化改質α型Al2O3層に割れが発生し易くなることから、その平均層厚を0.5〜10μmと定めた。
上記の通り加熱処理Al2O3核薄膜上に形成された厚膜化改質α型Al2O3層には、Al2O3自体のもつすぐれた高温硬度と耐熱性によって硬質被覆層の耐摩耗性を向上させると共に、厚膜化通常α型Al2O3層に比して、一段とすぐれた高温強度を有するので、厚膜化した硬質被覆層にチッピングが発生するのを抑制する作用があるが、その平均層厚が16μm未満では厚膜化の要求に十分満足に対応することができず、一方その平均層厚が28μmを越えて厚くなりすぎると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を16〜28μmと定めた。
この発明の被覆サーメット工具の硬質被覆層を構成する厚膜化改質α型Al2O3層に関して、傾斜角度数分布グラフで最高ピークを示す傾斜角区分と加熱処理Al2O3核薄膜の平均層厚との間には密接な関係があり、この場合試験結果によれば、前記加熱処理Al2O3核薄膜の平均層厚を30〜200nmの範囲で変化させると、最高ピークが1.25〜10.00度の範囲内の傾斜角区分に現れると共に、0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45〜98%の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すようになるものであり、したがって、前記加熱処理Al2O3核薄膜の平均層厚が、30nm未満では、これの上に蒸着形成される厚膜化改質α型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフの1.25〜10.00度の範囲内に現れるピーク高さが不十分、すなわち、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計割合が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%未満となる場合が生じ、この場合上記の通り、前記厚膜化改質α型Al2O3層の高温強度を、上記の従来被覆サーメット工具の硬質被覆層の上部層を構成するα型Al2O3層、すなわち1〜15μmの平均層厚を有するα型Al2O3層の具備する高温強度と同等の高温強度を保持することができず、この結果耐チッピング性が低下するようになり、一方その平均層厚が、200nmを越えると最高ピークの現れる傾斜角区分が1.25〜10.00度の範囲から外れる場合が生じ、この場合も前記厚膜化改質α型Al2O3層の高温強度の低下が避けられなくなることから、硬質被覆層の下部層であるTi化合物層上に形成される前記Al2O3核薄膜の平均層厚を30〜200nm、望ましくは同30〜150nmとしたのである。
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:6.5%、CO2:1.6%、C2H4:0.13%、H2:残り、
反応雰囲気温度:820℃、
反応雰囲気圧力:8kPa、
時間:5〜80分の範囲内のAl2O3核薄膜の層厚に対応した時間、
の低温条件で表4に示される目標層厚のAl2O3核薄膜を形成した後(前記Al2O3核薄膜の層厚と処理時間の関係は上記Ti化合物層の場合と同様に実験により予め調査されている)、反応雰囲気を圧力:8kPaの水素雰囲気に変え、反応雰囲気温度を1135℃に昇温した条件で前記Al2O3核薄膜に加熱処理を施して加熱処理Al2O3核薄膜とし、
この時点で前記試験片を装置から取り出し、引続いて、同じく表3に示される通常の条件で、同じく表4に示される目標層厚の厚膜化改質α型Al2O3層を硬質被覆層の上部層として蒸着形成することにより本発明被覆サーメット工具1〜12をそれぞれ製造した。
すなわち、上記傾斜角度数分布グラフは、上記の各種厚膜化α型Al2O3層の表面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射し、電子後方散乱回折像装置を用いて、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定結果に基づいて、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計することにより作成した。
なお、図2は、本発明被覆サーメット工具7の厚膜化改質α型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフ、図3は、比較被覆サーメット工具7の厚膜化通常α型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフをそれぞれ示すものである。
被削材:JIS・SCM440の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:250m/min、
切り込み:2mm、
送り:0.3mm/rev、
切削時間:10分、
の条件(切削条件Aという)での合金鋼の乾式断続切削試験、
被削材:JIS・S45Cの丸棒、
切削速度:280m/min、
切り込み:2mm、
送り:0.35mm/rev、
切削時間:15分、
の条件(切削条件Bという)での炭素鋼の乾式連続切削試験、さらに、
被削材:JIS・FC300の丸棒、
切削速度:300m/min、
切り込み:2.5mm、
送り:0.3mm/rev、
切削時間:15分、
の条件(切削条件Cという)での鋳鉄の乾式連続切削試験を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表6に示した。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層として、いずれも化学蒸着形成されたTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ0.5〜10μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層として、化学蒸着形成された状態でα型の結晶構造を有し、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射し、電子後方散乱回折像装置を用い、所定領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、1.25〜10.00度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45〜98%の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示し、かつ16〜28μmの平均層厚を有する厚膜化改質α型酸化アルミニウム層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる、厚膜化α型酸化アルミニウム層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具。
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JP2004122269A (ja) * | 2002-10-01 | 2004-04-22 | Mitsubishi Materials Corp | 高速重切削ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 |
JP2004188500A (ja) * | 2002-06-28 | 2004-07-08 | Mitsubishi Materials Corp | 硬質被覆層がすぐれた耐熱衝撃性を有する表面被覆サーメット製切削工具 |
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