JP4702902B2 - 立て削り用工具および立て削り加工方法 - Google Patents
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Description
図5(c)〜(e)は、同(a)に示す金属製のワーク(被削材)に、同(b)のように小さなコーナR(1.5mm前後)を介し鋭角をはさんで二つの面が連続する内側峡間部12等を切削加工にて形成する際の、従来の一般的な手順を示している。まず、図5(c)のように、やや大径のエンドミル(回転工具)によって峡間部12の入口部分の粗加工を行い、つぎに図5(d)のように、より小径のエンドミルによって峡間部12の奥の方の粗加工を行う。峡間部12のうち、図5(e)に示す最も奥の部分12xと、上記の各エンドミルで加工した部分の周辺12yとは、ヤスリ等を用いる手作業によって仕上げる。
なお、ワークに対し工具を縦に移動させることにより加工を行う、いわゆるスロッティング加工については、下記の特許文献1に記載がある。
また、図5(e)に示す内側峡間部12の深い箇所12x等を手仕上げするには、熟練技能者による時間をかけた作業が必要になる。
また、上記の特許文献1に示されたスロッティング加工は、板状のワークにプレス加工を行うためのもので、ブロック状のワークに対して内側峡間部等を切削加工する際に利用できるものではない。
こうした立て削り用工具には、つぎのような作用的特徴がある。すなわち、
i) 切れ刃を有する工具先端部と工具保持部とをそれぞれ円柱形状にして同一軸心上に一体に設けるというシンプルな構成であるため、低コストで比較的簡単に製造することが可能である。
ii) 工具保持部にて工作機械に保持させたうえ上記切れ刃の一部をワークに当て、工具先端部を前方にして、回転させずに上記軸心に沿って移動させる、という動作を、逆方向への戻しを含めて繰り返すことにより、ブロック状のワークに切削加工を行うことができる。工具先端部を前方にして移動させるときワークを切削するが、その間、この工具には軸方向の力のみが作用するので、エンドミル等による場合と違って工具に曲がりが生じにくい。それにより、工具先端部が工具保持部よりも細い小径の長い工具であっても、加工面の逃げや食い込みが発生しないことになるので、深さ/半径比の大きい(半径/深さ比の小さい)加工をも円滑に行うことができる。そのため、コーナR寸法が小さくて加工深さが深い内側峡間部を含む種々の輪郭を、精度よく能率的に切削加工することが可能になる。手仕上げの作業についても、その量をゼロまたは僅かにすることができる。
iii) 工具先端部も工具保持部も円柱形状であるうえ、先端部の全周縁に連続して切れ刃が存在するため、向きや角度の調整をすることなくエンドミルと同様にマシニングセンタに取り付けることができ、当該機械によって能率的に切削加工を進めることができる。また、先端部の全周縁に切れ刃があるので、切れ刃のうちの特定箇所のみがワークに当たることがないように使用すること等により、補修や交換等をせずに長期間連続的に使用することも可能である。先端部を再加工して切れ刃を再生することも難しくない。
そのようにすれば、他の一般的な工具と同様に、きわめて円滑にワークを切削することができる。
上記のような移動を、逆方向への戻しを含めて繰り返すことにより、前述のようにブロック状のワークに切削加工することができる。前述したとおり、上記移動の間にこの工具には軸方向の力のみが作用するので、工具に曲がりが生じにくく、したがって、加工面の逃げや食い込みを発生させることなく、半径/深さ比の小さい内側峡間部等の切削加工を精度よく能率的に行うことが可能になる。手仕上げの作業を少なく(またはゼロに)できるという効果もある。
上記の立て削り用工具は、工具先端部も工具保持部も円柱形状であるうえ、先端部の全周縁に連続して切れ刃が存在することから、マシニングセンタに取り付けることによって能率的に切削加工を行うことができる。すなわち、前述のとおり上記工具は、特定箇所にて特定方向にのみ突出した切れ刃(チップ)が存在するバイト等を加工用工具とする場合とは違って、エンドミルと同様に、向きや角度(位相)の調整をせずに簡単にマシニングセンタに保持させ、特別な制御をすることなく切削加工を進めることができる。
なお、上記の工具は、マシニングセンタ以外の単能型の立て削り盤等に取り付けて使用することも可能である。ただし、単能型の工作機械には大型のワークを取り扱えるものが少ないため、加工深さの深い場合にも高精度の加工ができるという上記工具の能力を十分には発揮させ得ないことが多い。
そのようにすると、ワークに対したとえば長い直線に沿った大きな平面を形成する切削加工を行う場合であっても、先端部の全周縁に形成されている切れ刃のうち特定箇所のみが切削を担って局部的に激しく摩耗する、といった不都合が避けられる。つまり、上記のように所定角度ずつ回転させるなら、切れ刃の各部が切削加工を分担することになって摩耗の偏在が防止され、切れ刃の再研磨をしないで工具を連続使用できる期間が長くなる。それは、上記工具による加工の能率とコストとをともに低減できることにほかならない。
なお、上記工具の回転は、切削加工のための上記の移動中でない時期に行うので、その回転にともなって上記工具に曲げが生じたり、無理な力が作用したり、または加工面に逃げや食い込みが発生したりすることがない。
そうすれば、切削加工を行わない戻しの際には切れ刃がワークに接触しないため、ワークの加工面に無駄な接触痕が残らないうえ、切れ刃において摩耗の進行を遅らせることができる。
1) マシニングセンタに取り付けたエンドミルまたはドリルによって当該内側峡間部の一部を切削加工したのち、
2) エンドミルまたはドリルによる上記加工の切削残りを、エンドミルまたはドリルに代えてマシニングセンタに取り付ける上記の立て削り用工具を使用して上記のとおり切削加工する
こととするのが好ましい。図3(d)〜(g)には、そのような手順の一例を示している。
上記工具は、小さなコーナRを介し鋭角をはさんで二つの面が連続する内側峡間部を、その工具のみによって切削加工することも可能である。しかし、上記1)・2)に沿った手順で切削すれば、エンドミルまたはドリルによる粗加工を迅速に行えるため、さらに能率的に加工をい行うことができる。また、何の加工も施されていないワークの中ほどの部分に穴を開けることは上記工具によっては困難であるため、周囲が囲まれた閉じた輪郭の一部として内側峡間部を加工する場合等には、上記の手順をとることが概ね不可欠であるとも言える。
2 工具先端部
3 切れ刃
4 すくい面
6 工具保持部
θ 逃げ角
10 ワーク(被削材)
11 切削部
12 内側峡間部
Claims (5)
- 円柱形状をした工具先端部の全周縁に連続して切れ刃が形成されているとともに、マシニングセンタに保持される円柱形状の工具保持部を、上記の工具先端部と軸心を同一にして一体に有すること、および工具先端部が上記の工具保持部よりも細いことを特徴とする立て削り用工具を、
上記の工具保持部にてマシニングセンタに保持させたうえ上記切れ刃の一部をワークに当て、工具先端部を前方にして、回転させずに上記軸心に沿って移動させることにより、切削加工を行うこととし、
連続する2面にはさまれた内側峡間部をワークに形成するために、
1) マシニングセンタに取り付けたエンドミルまたはドリルによって当該内側峡間部の一部を切削加工したのち、
2) エンドミルまたはドリルによる上記加工の切削残りを、エンドミルまたはドリルに代えて上記の立て削り用工具を、その工具先端部も工具保持部も円柱形状で両者の軸心が同一であるうえ先端部の全周縁に連続して切れ刃が存在するために、向きや角度の調整をすることなくエンドミルと同様に上記マシニングセンタに取り付け、上記切削加工すること
を特徴とする立て削り加工方法。 - 切削加工のための上記の移動中でないいずれかの時期に、上記の立て削り用工具を上記軸心まわりに所定角度回転させることを特徴とする請求項1に記載の立て削り加工方法。
- 切削加工のための上記の移動の後、戻す際には、上記切れ刃をワークから離して戻すことを特徴とする請求項1または2に記載の立て削り加工方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の立て削り加工方法に使用することを特徴とする立て削り用工具。
- 工具先端部における切れ刃の内側にすくい面が形成されていて、切れ刃に続く側面部分に逃げ角が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の立て削り用工具。
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