JP4700395B2 - 酸性条件下で使用するためのプロモーター及びその利用 - Google Patents

酸性条件下で使用するためのプロモーター及びその利用 Download PDF

Info

Publication number
JP4700395B2
JP4700395B2 JP2005116016A JP2005116016A JP4700395B2 JP 4700395 B2 JP4700395 B2 JP 4700395B2 JP 2005116016 A JP2005116016 A JP 2005116016A JP 2005116016 A JP2005116016 A JP 2005116016A JP 4700395 B2 JP4700395 B2 JP 4700395B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
promoter
dna
organic acid
gene
protein
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2005116016A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006288318A (ja
Inventor
亘広 石田
健郎 徳弘
英二 長森
登美子 毛利
崇 松山
治雄 高橋
徹 大西
聡志 齋藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Toyota Central R&D Labs Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp, Toyota Central R&D Labs Inc filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP2005116016A priority Critical patent/JP4700395B2/ja
Publication of JP2006288318A publication Critical patent/JP2006288318A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4700395B2 publication Critical patent/JP4700395B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Description

本発明は、酸性条件下で使用するためのプロモーター、遺伝子組換え用DNA構築物、形質転換体、物質生産方法に関する。
組換えDNA技術の進歩により、微生物、カビ、動植物および昆虫などの宿主で外来遺伝子を発現させ、その形質転換体を増殖させることによって、目的遺伝子産物を取得する技術が発展してきた。例えば、遺伝子組換え酵母などの培養によれば、発酵生産により大量の目的遺伝子産物を生産させることも可能である。L−乳酸などの有用な有機酸の生産については、L−乳酸脱水素酵素遺伝子を酵母サッカロマイセス・セレビシエ属に導入し、L−乳酸を生産させる試みが多数報告されている。
組換え体において目的産物の高生産性を確立するには、安定した遺伝子高発現系を構築することが必要である。本発明者らは、既に、染色体中のPDC1遺伝子プロモーターの下流に目的とする有用遺伝子(この場合は、L−乳酸脱水素酵素遺伝子)を結合させると同時に、酵母染色体中のPDC1遺伝子を破壊することによって、本来のPDC1遺伝子プロモーター機能を利用してL−乳酸脱水素酵素遺伝子を発現させつつ、本来の当該プロモーターによって発現されるPDC1タンパク質の発現を排除するシステムを開発した。このシステムを用いることで、従来困難であった安定した遺伝子高発現系を確立できることを見出している(特許文献1)。
かかる安定した遺伝子高発現系が確立されたといえども、このシステムにおいても組換え産物の生産性をより一層高める要請は依然として存在する。例えば、遺伝子組換え微生物を利用して乳酸を製造する場合、生成する乳酸によって培養液中のpHが低下するために、アルカリで中和しつつ培養して乳酸塩として採取するのが一般的である。乳酸塩として採取すると、これを脱塩しフリー乳酸とするプロセスが別途必要になる。乳酸の大量生産を考慮すると、こうしたプロセスを排除することが望まれる。また、中和剤の投入そのものを回避することも望まれる。
また、生産性の向上のためには、新たなプロモーターの探索も必要である。酵母においては、グリセルアルデヒド三リン酸脱水素酵素1遺伝子(TDH1遺伝子)プロモーター(非特許文献1)、トリオースリン酸イソメラーゼ1遺伝子(TPI1遺伝子)プロモーター(非特許文献2)、細胞壁関連タンパク質12遺伝子(CCW12遺伝子)プロモーター(非特許文献3)及びリボゾーマルタンパク質S31遺伝子(RSP31遺伝子)プロモーター(非特許文献4)などが知られているが、これらのプロモーター活性の特徴についてはよく知られていない。
特開2003−164295号 Applied and Environmental Microbiology, Jan. 2003, p.495-503 Applied and Environmental Microbiology, June 2002, p.3024-3030 Journal of Bacteriology, May 1999, p. 3076-3086 Journal of Biological Chemistry, vol.273, No.49, Issue of December 4, pp. 32870-32877(1998)
上記したPDC1遺伝子プロモーターは中和剤を用いての有機酸生産においては有効なプロモーターであるが、本発明者らは、酸性条件下ではその発現能が低下するという知見を得ている。また、一層の製造工程の簡略化を考慮すれば、酸性条件下において特異的に高発現する新たなプロモーターが必要となってきていた。
そこで、本発明は、酸性条件下において高発現されるプロモーターを提供することを一つの目的とする。また、本発明は、組換え産物としてフリーの有機酸を培地から取得できる発酵生産に適したプロモーター、遺伝子組換えDNA構築物、形質転換体及び物質生産方法を提供することを他の一つの目的とする。また、本発明は、中和剤を使用することなく有機酸発酵させることができるプロモーター、遺伝子組換えDNA構築物、形質転換体及び物質生産方法を提供することをさらに他の一つの目的とする。さらに、本発明では、酵母のピルビン酸脱炭酸酵素遺伝子の発現を抑制した状態で有機酸生産するのに適したプロモーター、遺伝子組換えDNA構築物、形質転換体及び物質生産方法を提供することをさらに他の一つの目的とする。
本発明者らは、組換え生物に非中和条件で乳酸発酵させることで培地からフリーの有機酸を取得することに着目し、こうした乳酸発酵が可能なプロモーターを探索した。すなわち、非中和条件下、有機酸生産においては酸性条件下で酵母に乳酸を生産させたときに高発現している遺伝子を探索した。この結果、数十種類の高発現遺伝子を見出し、さらにこれらについて選抜を行い、最終的に、これらの高発現遺伝子のプロモーターの下流に乳酸脱水素酵素遺伝子を結合したとき、非中和条件下において乳酸を高効率で生産する4種類のプロモーターを見出した。これらのプロモーターは、いずれも高発現プロモーターとして知られているものでもないが、特異的に酸性条件に耐性があるプロモーターであるといえる。本発明によれば、以下の手段が提供される。
本発明の一つの態様によれば、以下の配列(a)〜(c)から選択されるポリヌクレオチドであって、酸性条件下においてプロモーター活性を有する、酸性条件下で使用するためのプロモーターが提供される。なお、この態様のプロモーターは、上記ポリヌクレオチドの一部分を有し、酸性条件下での発現用プロモーター活性を有する酸性条件下で使用するためのプロモーターであってもよい。
(a)配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b)配列番号1に記載の塩基配列若しくはその一部に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド
(c)配列番号1に記載の塩基配列において1あるいは複数個の塩基が欠失、置換及び/又は付加された塩基配列からなるポリヌクレオチド
また、本発明の他の一つの態様によれば、以下の配列(a)〜(c)から選択されるポリヌクレオチドであって、酸性条件下でプロモーター活性を有する酸性条件下で使用するためのプロモーターが提供される。なお、この態様のプロモーターは、上記ポリヌクレオチドの一部分を有し、酸性条件下での発現用プロモーター活性を有する酸性条件下で使用するためのプロモーターであってもよい。
(a)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列若しくはその一部に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド
(c)配列番号2に記載の塩基配列において1あるいは複数個の塩基が欠失、置換及び/又は付加された塩基配列からなるポリヌクレオチド
また、本発明の他の一つの態様によれば、以下の配列(a)〜(c)から選択されるポリヌクレオチドであって、酸性条件下でプロモーター活性を有する酸性条件下で使用するためのプロモーターが提供される。なお、この態様のプロモーターは、上記ポリヌクレオチドの一部分を有し、酸性条件下での発現用プロモーター活性を有する酸性条件下で使用するためのプロモーターであってもよい。
(a)配列番号3に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b)配列番号3に記載の塩基配列若しくはその一部に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド
(c)配列番号3に記載の塩基配列において1あるいは複数個の塩基が欠失、置換及び/又は付加された塩基配列からなるポリヌクレオチド
また、本発明のほかの一つの態様によれば、以下の配列(a)〜(c)から選択されるポリヌクレオチドであって、酸性条件下でプロモーター活性を有する酸性条件下で使用するためのプロモーターが提供される。なお、この態様のプロモーターは、上記ポリヌクレオチドの一部分を有し、酸性条件下での発現用プロモーター活性を有する酸性条件下で使用するためのプロモーターであってもよい。
(a)配列番号4に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b)配列番号4に記載の塩基配列若しくはその一部に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド
(c)配列番号4に記載の塩基配列において1あるいは複数個の塩基が欠失、置換及び/又は付加された塩基配列からなるポリヌクレオチド
さらにまた、本発明の他の一つの態様によれば、微生物における有機酸生産用プロモーターである、上記いずれかのプロモーターが提供される。特に、これらのプロモーターは、酵母による有機酸生産用プロモーターとすることができる。また、非中和条件下で有機酸を生産する有機酸生産用プロモーターとしてもよいし、pHが1.0〜3.0において有機酸を生産する有機酸生産用プロモーターとしてもよい。さらに、宿主のピルビン酸脱炭酸酵素遺伝子の発現が抑制された状態でピルビン酸に由来する有機酸を生産するための有機酸生産用プロモーターとしてもよい。
また、上記いずれかのプロモーターは酸性条件誘導的プロモーターとして用いることができる。この酸性条件は乳酸酸性条件とすることができる。
また、本発明の他の一つの態様によれば、グリセルアルデヒド三リン酸脱水素酵素1遺伝子(TDH1遺伝子)、トリオースリン酸イソメラーゼ1遺伝子(TPI1遺伝子)、細胞壁関連タンパク質12遺伝子(CCW12遺伝子)及びリボゾーマルタンパク質S31遺伝子(RSP31遺伝子)から選択されるいずれかの遺伝子のプロモーター活性を有する酸性条件下で使用するためのプロモーターが提供される。
本発明の他の一つの態様によれば、上記いずれかのプロモーターに機能的に結合された有機酸生産に関与するタンパク質をコードするDNAを備える、DNA構築物が提供される。
この態様においては、前記タンパク質は乳酸脱水素酵素活性を有するタンパク質とすることができる。また、前記タンパク質は、ウシ由来の乳酸脱水素酵素とすることができる。さらに、オートレギュレーション機構を備える酵母遺伝子の遺伝子破壊のための相同組換え用のDNAを備える構築物とすることができる。なお、この酵母遺伝子は、ピルビン酸脱炭酸酵素遺伝子とすることができる。
本発明の他の一つの態様によれば、これらのいずれかのDNA構築物を保持する形質転換体が提供される。
この態様においては、前記プロモーター及び前記タンパク質をコードするDNAは、宿主染色体上に組み込まれていることが好ましい。また、宿主は酵母であることが好ましい。さらに、酵母はサッカロマイセス属に属するものであることが好ましい。また、宿主染色体上のオートレギュレーション機構を備える酵母遺伝子の発現が抑制されていてもよく、前記オートレギュレーション機構を備える酵母遺伝子は、ピルビン酸脱炭酸酵素遺伝子であることが好ましい。さらにまた、前記タンパク質は、乳酸脱水素酵素活性を有することが好ましい。
本発明の他の一つの態様によれば、上記いずれかの形質転換体を準備する工程と、この形質転換体を有機酸を含む培地において培養する工程と、を備える、有機酸生産方法が提供される。
この態様においては、前記培養工程では、前記宿主細胞による有機酸生産により前記培地に有機酸を供給することとしてもよい。また、前記培養工程では、前記培地に有機酸を添加するようにしてもよい。また、前記タンパク質は、乳酸脱水素酵素活性を有するタンパク質であり、前記培養工程は、乳酸を生産する工程とすることができる。さらにまた、前記培養工程は、培地を中和することなく前記形質転換体を培養する工程とすることができる。また、前記培養工程は、培地のpHが1.0〜3.0の範囲で前記形質転換体を培養する工程とすることもできる。
(プロモーター)
本発明のプロモーターは、本プロモーターに対して機能的に結合されたタンパク質をコードするDNAの発現を、有機酸の存在下においてはじめて活性化するか、有機酸の存在しないときよりも促進するか、あるいは有機酸の濃度が高まると促進するプロモーター活性を有する(以下、当該活性を本プロモーター活性という。)。ここで、「機能的な結合」とは、結合されたタンパク質をコードするDNAの発現を本プロモーターの影響下あるいは支配下におくような結合をいう。なお、「有機酸」とは、酸性を示す有機化合物であるが、有機酸が備える酸性基としては好ましくはカルボン酸基である。また、有機酸は、遊離の酸の他、有機酸塩を含む。このような有機酸として、具体的には、乳酸、酪酸、酢酸、ピルビン酸、コハク酸、ギ酸、リンゴ酸、クエン酸、マロン酸、プロピオン酸、アスコルビン酸、アジピン酸などを挙げることができ、好ましくは、乳酸である。乳酸には、L−乳酸、D−乳酸、及びDL−乳酸があるが、これらのいずれをも含む。「有機酸の存在下」とは、有機酸が本発明のプロモーター保持する宿主の成育環境において存在することを意味し、該有機酸は本発明のプロモーターを保持する宿主が生産するものであってもよいし、培地に対して添加されるなど宿主以外から供給されるものであってもよいし、これらの双方であってもよい。有機酸の培地における濃度は特に限定されず、本発明のプロモーターに機能的に結合されたDNAが発現されあるいは促進される範囲であればよい。
本発明の酸性条件下で使用するためのプロモーターは、配列番号1に記載される塩基配列からなるポリヌクレオチドであって酸性条件下においてプロモーター活性を有するものが挙げられる。さらに、このようなプロモーターと相当的なプロモーターとしては以下のプロモーターを使用できる。
一つの相同的プロモーターとしては、配列番号1に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドが挙げられる。このようなポリヌクレオチドは、配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAあるいはその一部をプローブとして、一般的なハイブリダイゼーション技術(Southern,EM., J Mol Biol, 1975,98,503.)により得ることができる。また、かかるDNAは、配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAに特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCR技術(Saiki,RK.Science,1985,230,1350., et al.,Saiki, RK.et al.,Science,1988,239,487)により合成することもできる。こうしたDNAの単離に好ましく用いられるストリンジェントな条件としては、50%ホルムアミド存在下でハイブリダイゼーション温度が37℃であるハイブリダイゼーション条件あるいはこれと同様のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件を意味している。よりストリンジェンシーの高い条件によれば、より相同性の高いDNAを単離できる。かかるハイブリダイゼーション条件としては、例えば、50%ホルムアミド存在下でハイブリダイゼーション温度が約42℃、さらにストリンジェンシーの高い条件としては、50%ホルムアミド存在下で約65℃のハイブリダイゼーション条件を挙げることができる。
他の一つの相同的プロモーターとしては、配列番号1に記載の塩基配列において1あるいは複数個の塩基が欠失、置換及び/又は付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドであって酸性条件下でプロモーター活性を有するものが挙げられる。このようなDNAは、既に述べたハイブリダイゼーション技術やPCR技術等によって得ることもできるし、また、Site−directedmutagenesis法(Kramer, W.& Fritz,HJ.,Method Enzymol.,1987,154,350)によって、配列番号1に記載の塩基配列に人工的に変異を導入することによっても得ることができる。
なお、これらの相同的プロモーターにおける配列番号1記載の塩基配列との相同性は、単離されたDNAにおいて70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。なお、DNAの塩基配列のホモロジーは、公知の遺伝子解析プログラムBLASTなどによって決定することができる。なお、DNAの塩基配列のホモロジーは、遺伝子解析プログラムBLAST(http://blast.genome.ad.jp),FASTA(http://fasta.genome.ad.jp/SIT/FASTA.html)などによって決定することができる。
本発明のプロモーターとしては、配列番号2〜4に記載される塩基配列から選択されるいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドであって、本プロモーター活性を有するものが挙げられる。これらの各配列番号2〜4については、配列番号1に記載したのと同様の相同的プロモーターを使用できる。
本発明のこれらのプロモーターの配列番号1〜4の記載された塩基配列で示されるプロモーターは、それぞれ、酵母サッカロマイセスセレビジエのグリセルアルデヒド三リン酸脱水素酵素1遺伝子(TDH1遺伝子)、トリオースリン酸イソメラーゼ1遺伝子(TPI1遺伝子)、細胞壁関連タンパク質12遺伝子(CCW12遺伝子)及びリボゾーマルタンパク質S31遺伝子(RSP31遺伝子)プロモーター活性を有するDNA断片として取得されたものである。したがって、本発明のプロモーターは、酵母、あるいはサッカロマイセス属酵母のこれらの遺伝子のプロモーター活性を有するDNAあるいはかかるプロモーター領域に相同性を有し、本プロモーター活性を有するDNAであってもよい。このようなDNAは、配列番号1〜4のいずれかに記載の塩基配列の少なくとも一部からなるプローブを用いたハイブリダイゼーション技術や、該塩基配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブを用いたPCR技術を利用して、酵母から取得することができる。さらに、上述したストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAを選択することができる。
なお、本発明のプロモーターは、本プロモーター活性を有する限りこのような各種形態のDNAの一部分であってもよい。
なお、配列番号1〜4に記載の塩基配列からなる各DNAは、PDC1遺伝子が破壊されるとともにPDC1遺伝子プロモーターの制御下に乳酸脱水素酵素遺伝子を導入した乳酸生産酵母において中和剤を添加しない条件(非中和条件;pH1.0〜pH3.0)での乳酸発酵下におけるスクリーニングを経て選択されたものである。スクリーニングは、乳酸生産酵母を用いて前記中和条件下において乳酸発酵を行い、発酵開始後一定期間後において採取されたmRNAから得られるcDNAを、定量的PCR技術等により定量することにより高い発現量を示した遺伝子を選抜するものである。このようなスクリーニングにより、前記したような乳酸生産酵母において乳酸生産時(有機酸存在時)において、高発現する遺伝子を探索することができ、かかる遺伝子のプロモーターを単離することで、乳酸生産時(有機酸存在時)において高い転写活性を有するプロモーターを得ることができる。
かかるスクリーニングによって得られるプロモーターは、同時に乳酸などの有機酸による酸性条件を含む酸性条件に対して耐性があるプロモーターであるとともに、こうした酸性条件下において遺伝子の発現を活性化する酸性条件誘導的プロモーターであるといえる。したがって、かかるプロモーターに乳酸脱水素酵素などの有機酸生産に関与する酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを機能的に結合することで、有機酸の生産量の増大によって有機酸の生産が抑制されない、あるいは逆に有機酸の生産量の増大によって酸性度が高まるとさらに有機酸の生産が促進される実用的な有機酸生産酵母などの形質転換体を得ることがおおいに期待される。また、PDC1プロモーターは恒常的プロモーターであって、酸性下においても一定の乳酸生産能を有するが、乳酸生産が進行して培地中の酸性度が高まるにつれ、プロモーター活性が停滞あるいは低下することが考えられるが、本プロモーターによれば、そうしたプロモーター活性の低下傾向は抑制又は回避される。
このような本発明のプロモーターの活性は、いずれも知られていない特徴である。また、こうしたスクリーニングによって得られるプロモーターは、宿主のピルビン酸脱炭酸酵素遺伝子の発現が抑制されたいわば酵母にとって異常な状態での転写を活性化するプロモーターであるといえるが、本発明者らが見出したこれらの公知のプロモーターは、こうした特定の異常時において強いプロモーター活性を有するプロモーターであると推測される。
したがって、本プロモーターは、微生物における有機酸生産用プロモーターとして使用することができる。また、特に、酵母による有機酸生産用プロモーターとして使用することができる。なお、微生物としての酵母については後段で詳細に説明する。また、本発明のプロモーターは、非中和条件下で有機酸を生産する有機酸生産用プロモーターとして使用することができる。さらに、本発明のプロモーターは、pHが1.0〜3.0において有機酸を生産する有機酸生産用プロモーターとして使用できる。さらに、本発明のプロモーターは、宿主のピルビン酸脱炭酸酵素遺伝子(典型的には、ピルビン酸脱炭酸酵素1遺伝子)の発現が抑制された状態でピルビン酸に由来する有機酸を生産するための有機酸生産用プロモーターとして使用できる。
なお、取得したDNAが本プロモーター活性を有するか否かは、当業者において公知のレポーター遺伝子を用いたレポーターアッセイにより確認することもできる。レポーター遺伝子としては、特に制限することなく公知の遺伝子を用いることができ、例えば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子(CAT)、β−ガラクトシダーゼ遺伝子(LacZ)、ルシフェラーゼ遺伝子(LUC)、β−グルクロニダーゼ及びグリーンフロッセントプロテイン遺伝子(GFP)等を挙げることができる。この他、遺伝子の発現の確認を該遺伝子によってコードされるタンパク質量や該タンパク質(酵素)の活性(例えば、代謝産物の量)を測定可能な遺伝子を用いて、本プロモーター活性の存否を確認することも可能である。さらに他には、遺伝子が発現されることにより得られるmRNAを利用したノーザンハイブリダイゼーション法や定量的PCR法等を用いて遺伝子の転写レベルを測定することによっても本プロモーター活性を確認することができる。なお、本プロモーター活性は、有機酸の存在下において発現を活性化あるいは促進するものであるため、本プロモーター活性の確認にあたっては、有機酸が存在する培地あるいは有機酸を生産する宿主を用いることが好ましい。
なお、本発明のプロモーターを構成するポリヌクレオチドは、ゲノムDNAであってもよく、また、化学的な手法等により人工的に得られたDNAであってもよい。
(DNA構築物)
本発明は、本プロモーターを含むDNA構築物も提供する。本発明のDNA構築物は、特に限定しないでプラスミド(DNA)、ウイルス(DNA)、バクテリオファージ(DNA)、レトロトランスポゾン(DNA)、人工染色体(YAC、PAC、BAC、MAC等)を、外来遺伝子の導入形態(染色体外あるいは染色体内)や宿主細胞の種類に応じて選択してベクターとしての形態をとることができる。したがって、本DNA構築物は、本プロモーターDNAの他、これらのいずれかの態様のベクターとしてのDNA等を備えることができる。本DNA構築物は、好ましくは、プラスミドベクター又はウイルスベクターの形態を採る。また、好ましい原核細胞性ベクター、真核細胞性ベクター、動物細胞性ベクター、植物細胞性ベクターは当該分野において周知である。本DNA構築物は、細胞質あるいは宿主細胞において宿主染色体外において保持されていてもよいし、また、宿主染色体に組み込まれて保持されていてもよい。
本DNA構築物は、本プロモーターに対して機能的に結合された所望のタンパク質をコードするDNA(以下、コードDNAともいう。)を備えている。コードDNAは、cDNAのみならず、転写されても翻訳されないDNA配列を含むものであってもよい。タンパク質は特に限定しないが、コードDNAは乳酸等の有機酸生産のためのDNA、すなわち、有機酸生産に関連する酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAとすることができる。かかるタンパク質をコードするDNAを本プロモーターに対して機能的に結合させることで、相乗的に有機酸生産が促進されることが期待される。このような酵素としては、乳酸生産の場合には、L−乳酸脱水素酵素、D−乳酸脱水素酵素等の酵素、ピルビン酸生産の場合にはピルビン酸キナーゼ等、酢酸生産の場合にはピルビン酸オキシダーゼ等、コハク酸生産の場合にはスクシニルCoAシンテターゼ等、リンゴ酸の場合にはフマル酸ヒドラターゼ等、クエン酸生産の場合にはクエン酸シンテターゼ等を例示できる。
乳酸脱水素酵素(LDH)としては、生物の種類に応じてあるいは生体内においても各種同族体が存在する。本発明において使用する乳酸脱水素酵素としては、天然由来のLDHの他、化学合成的あるいは遺伝子工学的に人工的に合成されたLDHも包含している。LDHとしては、好ましくは、乳酸菌などの原核生物もしくはカビなどの真核微生物由来であり、より好ましくは、植物、動物、昆虫などの高等真核生物由来であり、さらに好ましくは、ウシを始めとする哺乳類を含む高等真核生物由来である。L−LDHとしては、好ましくは、ウシ由来のLDH(L−LDH)である。例えば、ウシ由来のLDHとして配列番号:6に示すアミノ酸配列からなるタンパク質を挙げることができる。また、かかるLDHをコードするDNAとしては、配列番号:5に記載される塩基配列からなるDNAを挙げることができる。さらに、本発明におけるLDHは、これらのLDHのホモログも包含している。LDHホモログは、天然由来のLDHのアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸でありかつLDH活性を有しているタンパク質、および、天然由来のLDHとアミノ配列の相同性が少なくとも70%、好ましくは80%以上を有しかつLDH活性を有しているタンパク質を含んでいる。
本DNA構築物においては、相同組換えにより本プロモーター及びコードDNAを宿主染色体に組み込むための相同組換え用のDNA配列を備えることができる。このようなDNAを備えることにより、宿主染色体の所望の部位にこれらのDNAの組み込みを達成する他、所望の遺伝子の破壊を同時に達成することができる。相同組換え用DNA配列は、宿主染色体において本DNAを導入しようとするターゲット部位あるいはその近傍のDNA配列と相同なDNA配列である。相同組換え用DNA配列は、一つのターゲット遺伝子あるいはその近傍の少なくとも1箇所に相同である1の配列を有しており、好ましくは、ターゲット遺伝子あるいはその近傍の少なくとも2箇所にそれぞれ相同な配列を備えている。例えば、2個の相同組換え用DNA配列を、染色体上のターゲット部位の上流側と下流側のDNAとのそれぞれに相同なDNA配列とし、これらの相同組換え用DNA配列の間に本プロモーターやコードDNAを連結することが好ましい。
本DNA構築物は、宿主染色体上に相同組換えにより宿主染色体に本DNAを導入する場合であって、適切な相同組換え用DNAを選択することで、宿主染色体上の所望の部位において、本プロモーター及びコードDNAを組み込んで、本プロモーターDNAによりコードDNAの発現を制御することができるようになる。このような染色体上への組み込みを実現するための相同組換え用DNAの選択は、当業者において周知であり、当業者であれば必要に応じて適切な相同組換え用DNAを選択して相同組換え用DNA構築物を構成することができる。
なお、相同組換え用DNAの選択により、本プロモーターDNAの染色体組み込みと同時に宿主染色体上の所望の遺伝子を破壊することができる。破壊する遺伝子は、オートレギュレーション機構が存在する遺伝子であることが好ましいが、これについては後述する。例えば、サッカロマイセス属酵母などの酵母において、有機酸生産に関与するタンパク質をコードするDNAを用いて有機酸を生産する場合、ピルビン酸脱炭酸酵素遺伝子(特に、ピルビン酸脱炭酸酵素1遺伝子)を破壊することが好ましい。ピルビン酸脱炭酸酵素1遺伝子のプロモーターは強力であるからであり、後述するようにオートレギュレーション機構を備えているからである。該遺伝子を破壊する染色体組み込みにより、ピルビン酸脱炭酸酵素の発現を抑制すると同時に外来DNAによってコードされたタンパク質を発現させることができる。さらに、本プロモーターによって、外来コードDNAの発現は酸性条件下において発現が活性化されるため、発現されたタンパク質により有機酸生産が促進されることで一層外来コードDNAの発現が促進される。
特に、乳酸脱水素酵素をコードするDNAを用いて乳酸を生産する場合には、当該破壊形態が一層有効である。ピルビン酸脱炭酸酵素1遺伝子は、乳酸脱水素酵素の基質であるピルビン酸を基質とし乳酸脱水素酵素に対して競合的に作用するからである。該遺伝子を破壊することで、ピルビン酸脱炭酸酵素の発現を抑制し乳酸脱水素酵素を発現させることができ、同時に乳酸脱水素酵素は本プロモーターDNAにより有機酸(乳酸)存在下において発現が活性化されるため、乳酸生産がより一層促進されるものと期待される。このような染色体上への組み込みを達成するにあたっては、本DNA構築物は、例えば、ピルビン酸脱炭酸酵素の構造遺伝子の一部あるいはその近傍の配列(開始コドンの近傍の配列、開始コドンの上流域の配列(この構造遺伝子のプロモーターを含む)、構造遺伝子内の配列等)、あるいはさらに染色体上の該遺伝子の上流域及び/又は下流側と相同なDNA配列を含むことができる。好ましくは、サッカロマイセス属(特にセレビシエ)を宿主として、この宿主のピルビン酸脱炭酸酵素1遺伝子をターゲットとするDNA構築物とする。
ピルビン酸脱炭酸酵素遺伝子のプロモーターは強力なプロモーターであることから、本プロモーターDNAと組み合わせて使用することができる。すなわち、酵母染色体上のピルビン酸脱炭酸酵素遺伝子(好ましくはピルビン酸脱炭酸酵素1遺伝子)の内在部位において、当該遺伝子プロモーターによって本来制御されるべき構造遺伝子に替えて乳酸脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを導入する相同組換え用DNA構築物と、酵母染色体上の本DNAプロモーターに内在部位において本DNAプロモーターによって本来制御されるべき構造遺伝子に替えて乳酸脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを導入する相同組換え用DNA構築物とを用いることができる。PDC(好ましくはPDC1)遺伝子プロモーターと本プロモーターとの双方による発現促進効果と、PDC(好ましくはPDC1)構造遺伝子の破壊によるピルビン脱炭酸酵素遺伝子の発現抑制とによって、一層効果的な乳酸製造が期待される。また、PDC1遺伝子が破壊されていても、代替的に他のPDC5遺伝子等によりピルビン酸脱炭酸酵素は生合成されるため、酵母の増殖性能は担保されている。なお、このようなDNA構築物には、PDC1プロモーター活性を有するDNAを、プロモーターDNA及び相同組換え用DNAの双方の機能を発揮するものとして保持することができる。PDC1プロモーターDNAとしては、配列番号:9に記載の塩基配列からなるDNAの他、該DNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA、該塩基配列において1あるいは2以上の塩基が置換、欠失、付加、及び/又は挿入された配列からなるDNAを用いることができる。このようなDNAは、本プロモーターDNAと同様にして単離することができる。
PDC1遺伝子は、本発明者らが既に開示しているように、オートレギュレーション機構が存在する遺伝子である(特開2003−164295号)。オートレギュレーション機構とは、同じ機能を有する遺伝子が同一生物において複数存在し、通常、そのうちの少なくとも一つは発現しているが、残りは抑制されており、通常発現している遺伝子が破壊などにより機能しなくなった場合にのみ、残りの遺伝子が発現されてその機能を継続する機構を意味している。かかる機構が存在するため、例えば、酵母のPDC1遺伝子が破壊されたとしても、PDC5遺伝子が活性化され、酵母のエタノール生産機能は維持され、生理的機能が維持されることになる。このようなオートレギュレーション機構が存在する遺伝子を破壊することで、生物自体の生存、増殖機能を維持することができて、結果として、外来DNAを保持する形質転換体の増殖を維持しながら目的産物を効果的に生産させることができる。
なお、宿主が本プロモーターを内在遺伝子のプロモーターとして宿主染色体上に備えている場合には、適切な相同組換え用DNAを選択することで、宿主染色体上において本プロモーターが本来的に存在する部位において、本プロモーター及びコードDNAを組み込むこともできる。こうすることで、染色体上の本プロモーターが本来制御すべき内在性コードDNAに替えて、本プロモーターによって外来性コードDNAを制御させることができる。この結果、本来発現が活性化されるべき内在性コードDNAの発現を抑止する一方、本プロモーターDNAが本来的に存在する染色体上の部位において、本プロモーターDNAによって外来性のコードDNAの発現を活性化させることができる。このようなDNA構築物は、本プロモーターと、本プロモーターによって制御される内在する構造遺伝子の少なくとも一部を相同組換え用DNAとして備えることでこのような宿主染色体上への組み込みが可能となる。
なお、DNA構築物には、ターミネーター他、必要に応じてエンハンサーなどのシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)を連結することができる。選択マーカーとしては、特に限定しないで、薬剤抵抗性遺伝子、栄養要求性遺伝子などを始めとする公知の各種選択マーカー遺伝子を利用できる。例えば、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性G418遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ブレオマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、シクロヘキサミド耐性遺伝子等を使用することができる。
(形質転換体)
本DNA構築物は、適当な宿主細胞に、トランスフォーメーション法や、トランスフェクション法、接合法、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、酢酸リチウム法、パーティクルガン法、リン酸カルシウム沈殿法、アグロバクテリウム法、PEG法、直接マイクロインジェクション法等の各種の適切な手段のいずれかにより、これを導入することができる。これにより本発明の形質転換体を得ることができる。本DNA構築物の導入後、その宿主細胞は、選択培地で培養される。
宿主細胞は、Eshrichia coli、Bacillus subtilisなどの細菌、サッカロマイセス・セレビシエ、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Saccharomyces pombe)などのサッカロマイセス属酵母、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などの酵母、sf9、sf21等の昆虫細胞、COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)などの動物細胞、サツマイモ、タバコなどの植物細胞などとすることができる。好ましくは、酵母などのアルコール発酵を行う微生物あるいは耐酸性微生物であり、例えば、サッカロマイセス・セレビシエなどのサッカロマイセス属を始めとする酵母である。具体的には、サッカロマイセス・セレビシエIFO2260株や同YPH株を例示できる。
なお、本DNA構築物が宿主に導入されたか否か、あるいは染色体上の所望の部位に本DNA構築物が導入されたか否かの確認は、PCR法やサザンハイブリダイゼーション法により行うことができる。例えば、形質転換体からDNAを調製し、導入部位特異的プライマーによりPCRを行い、PCR産物について、電気泳動において予期されるバンドを検出することによって確認できる。あるいは蛍光色素などで標識したプライマーでPCRを行うことでも確認できる。これらの方法は、当業者において周知である。
本DNA構築物によって形質転換された形質転換体においては、DNA構築物の構成成分である本プロモーターやコードDNA等が染色体上あるいは染色体外因子(人工染色体を含む)上に存在することになる。上述のDNA構築物であって、相同組換えを達成できる相同組換え用DNA構築物が導入されると、宿主染色体上の所望の位置に本プロモーターと該DNAに対して機能的に結合されたコードDNAを保持する形質転換体が得られる。
宿主染色体に対する相同組換えにより得られる形質転換体の好ましい一形態は、本プロモーターが本来内在する染色体上の部位において、本プロモーターに対して機能的に結合されたコードDNAを備える形態である。かかる形質転換体によれば、酸性条件下において本プロモーターによりコードDNAの発現が活性化されるため、酸性条件下にて目的産物を効果的に得ることができる。この形態においては、好ましくは、コードDNAは、乳酸脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードしている。かかる形質転換体は、当該乳酸脱水素酵素活性により乳酸を製造し、さらに該乳酸製造によりさらなる該酵素活性の発現が促進され、乳酸製造が促進される。
また、本発明の形質転換体の好ましい他の一形態は、宿主(酵母等)染色体上のオートレギュレーション機構を備える遺伝子の発現が抑制されているとともに、該遺伝子のプロモーターに替えて本プロモーターと該DNAに機能的に結合されたコードDNAを備える形態である。かかる形質転換体によれば、特に、これらのDNAによって、宿主に致命的な機能障害を与えることなく、コードDNAを発現させることができる。コードDNAとして乳酸脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを用いる場合、宿主の増殖性等に障害を及ぼすことを抑制して乳酸を製造することができる。なお、遺伝子の発現が抑制されているとは、該遺伝子が外来遺伝子の導入によって破壊されるか、あるいは該遺伝子において人工的あるいは天然の変異によって転写物や発現産物の活性が低下している場合などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明の形質転換体の好ましい他の一形態は、宿主(酵母等)染色体上のPDC遺伝子(好ましくはPDC1遺伝子)が破壊されているとともに、該遺伝子のプロモーターに替えて本プロモーターDNAと該DNAに機能的に結合されたコードDNAを備える形態である。かかる形質転換体によれば、特に、コードDNAとして乳酸脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを用いる場合、競合するピルビン酸脱炭酸酵素の発現を抑制して、本プロモーターDNAにより乳酸脱水素酵素を発現させることができ、乳酸製造に適した形質転換体を得ることができる。既に述べたようにPDC1遺伝子を破壊しても、該遺伝子には、オートレギュレーション機構が存在するため、宿主の増殖性等が保持されている。
さらに他の好ましい形質転換体の一形態としては、宿主染色体上に本プロモーターDNAと該DNAに機能的に結合したコードDNAを備えるとともに(例えば、上記した好ましい三形態のいずれかあるいはこれらの組み合わせで)、宿主染色体上あるいは宿主染色体外において、PDC1プロモーターと該DNAに機能的に結合したコードDNAを備える形態である。かかる形態によれば、コードDNAをいずれも乳酸等の有機酸の生合成に関連する酵素活性を有するタンパク質をコードするものとしたとき、PDC1プロモーターにより構成的に有機酸の生合成酵素の発現が活性化される一方、本プロモーターにより有機酸誘導的に有機酸生合成酵素の発現が活性化されるため、高効率な有機酸生産が期待される。特に、PDC1プロモーターとして宿主染色体上に内在するものを利用する形態であることが好ましい。この場合、PDC1プロモーターによる安定的な発現が可能となる。
なお、これらの形質転換体においては、宿主は酵母であることが好ましく、なかでも、サッカロマイセス属酵母であることが好ましく、さらに、サッカロマイセスセレビジエであることが好ましい。さらに、コードDNAは、乳酸脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAであることが好ましく、より好ましくは、ウシ由来の乳酸脱水素酵素をコードするDNAである。
本発明においては、宿主染色体において本プロモーターによりコードDNAを発現させることが重要である。特に、本来有機酸を生産しないあるいは本来の有機酸生産量より当該生産量を増大させるような形質転換体として取得しようとするとき、2μmDNAを利用したYEPタイプのプラスミドベクターによる方法がよく用いられているが、この場合、かかるコードDNAは保持されにくいことが報告されている。しかしながら、本発明においては、このようなDNA保持率が単に高いことのみによるとは思えない高い発現活性が見出されている。したがって、本発明によれば、酸性条件下で本プロモーターを染色体上において利用し、該DNAに機能的に結合したコードDNAの発現を活性化することでコードDNAの安定かつ予想を超える高発現性を備える遺伝子発現系を構築することができる。さらに、コードDNAが乳酸脱水素酵素のように有機酸の生合成に関連する酵素活性を有するタンパク質をコードするものとした場合には、本プロモーターによって発現が活性化されたコードDNAの最終産物たる有機酸によってさらに本プロモーターによるコードDNAの発現の活性化が期待できる。すなわち、相乗的かつ連続的なタンパク質の生合成及び最終産物の生合成の促進が期待できる。
また、コードDNAとして乳酸脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを用いた場合において、本プロモーターとコードDNAを宿主染色体のPDC1遺伝子に導入し破壊することにより、上記した効果に加えて、PDC1遺伝子の破壊によるピルビン酸脱炭酸酵素発現の抑制効果によって、効果的に乳酸製造を促進することができる。
本発明のプロモーターの下流に乳酸脱水素酵素をコードするDNAを結合させて染色体中に導入するのにあたり、乳酸生産量の増大を目的として、この遺伝子導入断片を染色体中に複数個導入した形質転換体を作ることができる。この場合、本プロモーターは単一の種類を使用することができる他、本プロモーターを2種類以上組み合わせて使用することもできる。ここで、本プロモーターを2種類以上組み合わせて使用する形態とは、それぞれのプロモーターにコードDNAを結合させてそれぞれのプロモーターにより乳酸脱水素酵素を発現させる形態をいう。例えば、本プロモーターのうち2種類以上のプロモーターDNAのそれぞれに乳酸脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを結合させて作製した1種あるいは2種類以上の遺伝子導入断片を導入した形質転換体を作ることができる。より具体的に例示すると、TDH1遺伝子プロモーターの下流にコードDNAを結合させた遺伝子導入断片と、TPI1遺伝子プロモーターの下流にコードDNAを結合させた遺伝子導入断片とを宿主に導入することで、CCW12遺伝子プロモーターによる乳酸脱水素酵素活性を有するタンパク質の発現と、RPS31遺伝子プロモーターによる乳酸脱水素酵素活性を有するタンパク質の発現とが同一形質転換体内で組み合わされて発現される形質転換体を得ることができる。
本発明を拘束するものではないが、このように宿主染色体上で該染色体上に本来的に内在するプロモーター(本プロモーターやPDC1プロモーター)を用いて乳酸脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAの発現を活性化することにより、予測を超えた乳酸生産量の増大が得られたことは、染色体上のこれらのプロモーターの本来内在される部位において、これらのプロモーターにより本来制御されるべき構造遺伝子に替えて乳酸脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを発現させたことに主たる起因があると考えられる。すなわち、染色体上のこれらのプロモーター部位において該プロモーターを利用して他の乳酸脱水素酵素を代替的に発現させるか、あるいは該プロモーター及び構造遺伝子に替えて他のプロモーターにより乳酸脱水素酵素を代替的に発現させることが重要であると考えられる。さらに、これらの起因事項に加え、PDC1プロモーターについては、PDC1プロモーターが強力な構成的プロモーターであり、かつオートレギュレーション機構を備える遺伝子のプロモーターであることも乳酸生産量の増大に寄与していると考えられ、また、本プロモーターについては、有機酸(乳酸)の存在下において発現を活性化する誘導的プロモーターであることが寄与していると考えられる。
(有機酸などの物質生産方法)
本発明の物質生産方法は、これらの形質転換体のいずれかを準備する工程と、この形質転換体を有機酸を含む培地において培養する工程と、を備えている。本DNA構築物が導入されて得られる形質転換体を培養することにより、培養液などの培地中に外来遺伝子の発現産物であるタンパク質を生成させることができる。このような物質生産方法によれば、酸性条件下においてコードDNAの発現が促進されるため、培地に有機酸を添加するなどにより有機酸を培地に存在させることで、有用タンパク質の生産を促進することができる。また、コードDNAが有機酸生産に関与するタンパク質をコードするものである場合には、形質転換体による有機生産によって有機酸を培地に供給して有機酸を培地に存在させることができる。この結果、該コードDNAの発現が促進されて有機酸が生産されれば、それによって、さらにコードDNAの発現が促進される。なお、コードDNAが有機酸生産に関与するタンパク質をコードするものであっても、培地に外部から有機酸を添加することができる。
本発明の方法において、前記培養工程は、培地を中和することなく前記形質転換体を培養することができる。培地を中和しないことで、中和操作を省略できる。また、本発明方法によって乳酸等の有機酸を製造する場合には、中和によって生じた有機酸の塩を再び脱塩してフリーの有機酸とする工程を省略できる。こうした培養工程は、例えば、有機酸としての乳酸の生産方法の場合には中和剤を使用しない場合には、pHは1.0〜3.0の範囲となることが通常であり、この範囲になるように有機酸や無機酸を添加することもできる。この範囲は、本発明のプロモーターが特異的に高発現するpH条件だからである。また、より好ましいpHは2.0以上であり、さらに好ましくは、2.5以上である。また、3.0以下であることが好ましく、より好ましくは、2.8以下である。
その他の培養条件として、静置培養、振とう培養、または通気攪拌培養等の通気条件を適宜選択して行うことができる。温度は、25℃〜40℃程度とし、また、培養時間は24〜120時間程度とすることができる。なお、培養中は、必要に応じてアンピシリン、テトラサイクリンなどの抗生物質を培地に添加することができる。
なお、この他、培養工程においては、形質転換体の種類に応じて培養条件を選択することができる。このような培養条件は、当業者においては周知である。乳酸などの有機酸の生産にあたっては、必要に応じて産物である乳酸等の中和を行うかあるいは、連続的に乳酸を除去する等の処理を行うこともできる。大腸菌や酵母等の微生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、微生物が資化可能な炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれも使用することができる。炭素源としては、グルコース、フルクトース、スクロース、デンプン、セルロース等の炭水化物、エタノール、プロパノール等のアルコールを用いることができる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩またはその他の含窒素化合物の他、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー等を用いることができる。無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウムなどを用いることができる。なお、有機酸としては、必ずしも添加する必要はないが、酢酸、プロピオン酸、乳酸等の有機酸を添加することができる。
培地から有機酸を分離する工程を実施することにより、有機酸を得ることができる。なお、本発明において培地とは、培養上清の他、培養細胞あるいは菌体、細胞若しくは菌体の破砕物を包含している。本方法においてアルカリの中和剤を使用することなく培養工程を実施して乳酸などの有機酸を生産する場合には、有機酸がフリーの状態で培地に含まれるので容易に分離でき、このため脱塩プロセス及びその後の回収プロセスを省略できる。
培養終了後、培養物から遺伝子産物を分離するには、通常の乳酸精製手段を使用することができる。例えば、形質転換細胞内に生産された場合は、常法により菌体を超音波破壊処理、摩砕処理、加圧破砕などに細胞を破壊して、遺伝子産物を細胞と分離することができる。この場合、必要に応じてプロテアーゼを添加する。また、培養上清に遺伝子産物が生産された場合には、この溶液を、ろ過、遠心分離などにより固形分を除去する。
これらの粗抽出画分に対しては、従来公知の各種精製分離法等を利用して、乳酸を精製することができる。また、必要に応じて、当該粗抽出画分及びその精製物に対してエステル化等を行うことにより、各種の乳酸誘導体を得ることができる。
以下に、本発明の具体例を記載するが、本発明を以下の具体例に限定する趣旨ではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の態様で実施できる。
(定量的PCR法によるプロモーターの発現解析)
乳酸生産能をもつ組換え酵母として、特開2003−259878(特願2002−65879)で作製した組換え酵母を用い、中和剤を使用しない非中和条件下(pH1.0〜pH3.0)で乳酸発酵を行い、発酵開始6時間後と、30時間後の菌体を採取し、これよりRNAを調整した。RNAの調整にはRneasyMiniキット(キアゲン社製)を用いた。得られたRNAをファーストストランドcDNA合成キット(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)に従って、cDNA合成を行った。
なお、使用した前記組換え酵母は、酵母IFO2260株(社団法人発行研究所登録株)のトリプトファン合成欠損株を10mlYPD培地にて30℃で対数増殖期まで培養を行い、集菌およびTEバッファーによる洗浄を行い、ついで、0.5mlTEバッファーと0.5mM酢酸リチウムを加え、30℃で振盪培養を行った後に、後述するpBTrp−PDC1−LDHKCBベクターを制限酵素ApaIおよびSacI(いずれも宝酒造製)で処理して添加し、得られたコロニーをトリプトファン選択培地にて培養して安定性が確認できた選抜株について安定したトリプトファン合成能と所定の染色***置への前記DNA断片の導入を確認した株として取得することができる。
上記試料と、後述する標的遺伝子のプライマー、およびライトサイクラーDNAマスターSYBRグリーンI(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を混合させた後、定量的PCR解析装置ライトサイクラー(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)によって発現解析を行った。詳細は付属のプロトコールに従い行った。また、各遺伝子断片量4fM、20fM、100fMを同様にセットし、これをコントロールとして発現量の測定を行った。
DNAマイクロアレイ等によって一次スクリーニングして得られた合計で15種類の遺伝子を標的遺伝子としてその発現について解析を行った。なお、高発現する遺伝子としてのコントロールとして、PDC1遺伝子についても解析した。定量的PCRの結果、TDH1遺伝子プロモーター、TPI1遺伝子プロモーター、CCW12遺伝子プロモーター、RSP31遺伝子プロモーターが選択された。乳酸生産酵母におけるこれらの遺伝子は、PDC1遺伝子と比較して、高い発現を示していた。これらの遺伝子は、いずれも非組換え株における発現量よりも高い発現量を示すことができる。以上のことから、これらの遺伝子は、酸性条件下において誘導的に発現されるプロモーターによって発現が活性化されていることがわかった。
最終的に有効な発現を確認できた高発現候補遺伝子4種類について、使用したプライマー配列とライトサイクラーで解析した際のTm値を表1に示す。また、コントロールとして用いたPDC1遺伝子についても、同様にプライマー配列とTm値を示す。
Figure 0004700395
(プロモーターの取得と塩基配列決定)
実施例1において有効な発現を示した高発現候補プロモーターとして、上記4種類の遺伝子のプロモーターのDNA断片をクローニングした。またプロモーター評価のコントロールとして、高発現プロモーターとして知られるPDC1遺伝子プロモーターも取得した。
プロモーター取得における当該遺伝子資源としては、酵母IFO2260株(社団法人・発酵研究所に登録されている菌株)のゲノムDNAを鋳型とするPCR増幅法によって単離した。本株をYPD培養液2mlで一晩培養し、これにゲノムDNA調整キット、Genとるくん(商標)−酵母用−(タカラバイオ社製)を用いて、ゲノムDNAを調整した。また、調整したゲノムDNAは、分光光度計Urtro spec 3000(Amersham Pharmacia Biotech社製)によりDNA濃度を測定した。
PCR反応には増幅酵素として、増幅断片の正確性が高いとされるKOD plus DNA polymerase (東洋紡社製)を使用した。調製した酵母IFO2260株のゲノムDNA 50ng、プライマーDNA 50pmol×2、10倍濃縮KOD酵素反応用バッファー 5μl、25mM MgSO4 2μl、2mM dNTPmix 5μl、KOD plus DNA polymerase 1.0ユニットを加えた合計で50μlの反応溶液を、PCR増幅装置Gene Amp PCR system 9700(PE Applied Biosystems社製)によってDNA増幅した。PCR増幅装置の反応条件は、96℃ 2分の熱処理を行った後、96℃で30秒、53℃で30秒、72℃で60秒の3つの温度変化を1サイクルとし、これを25サイクル繰り返し、最後に4℃とした。本反応試料5μlを1% TBEアガロースゲル(0.5μg/mlのエチジウムブロマイド含有)にて電気泳動し、本ゲルを254nmの紫外線照射(フナコシ社製)によってDNAのバンドを検出し、遺伝子増幅の確認を行った。
プライマー配列は以下の表2に示す。
Figure 0004700395
取得したPCR断片を、pBluescriptII SK+ベクター(東洋紡社製)へサブクローニングした。一連の反応操作は、一般的なDNAサブクローニング法に準じて行った。すなわち、制限酵素NotIおよびSpeI(いずれもタカラバイオ社製)処理した上記ベクターに、同様の制限酵素で処理した各プロモーター断片をT4 DNA Ligaseによって連結した。T4 DNA Ligase反応には、LigaFast Rapid DNA Ligation(プロメガ社製)を用い、詳細は付属のプロトコールに従った。
次に、ligation反応液を大腸菌コンピテント細胞に導入して大腸菌を形質転換した。大腸菌コンピテント細胞はJM109株(東洋紡社製)を使用し、詳細な取り扱いは付属のプロトコールに従った。抗生物質アンピシリン100μg/mlを含有したLBプレート下でコロニー選抜を行い、各選抜コロニーからプラスミドDNAを調整し、これに表2に記載のプライマーDNAを用いてコロニーPCRで確認することにより、それぞれのプロモーター配列をサブクローニングした。なお、エタノール沈殿処理、制限酵素処理等の一連操作の詳細なマニュアルは、Molecular Cloning 〜A Laboratory Manual second edition 〜 (Maniatis et al., Cold Spring Harbor Laboratory press. 1989)に従った。
単離したプロモーター配列を含む各ベクターを、アルカリ抽出法によって調製し、これをGFX DNA Purification kit (Amersham Pharmacia Biotech社製)にてカラム精製した。次に、分光光度計Ultro spec 3000(Amersham Pharmacia Biotech社製)にてDNA濃度を測定し、DNA塩基配列キットBigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit (PE Applied Biosystems社製)に従ってシークエンシング反応を行った。反応試料を塩基配列解析装置ABI PRISM 310 Genetic Analyzer (PE Applied Biosystem社製)にセットし、6種類のプロモーターの塩基配列を決定した。なお、機器の使用方法の詳細は本装置付属のマニュアルに従った。配列解析によって決定したDNA配列を配列番号:1〜4に示す。
(組換えベクターの構築)
新たに構築したこの染色体導入型ベクターをそれぞれ、pBTRP−TDH1P−LDHベクター、pBTRP−TPI1P−LDHベクター、pBTRP−CCW12P−LDHベクター、pBTRP−RSP31P−LDHベクターと名付けた。また、プロモーター比較のコントロールとして、PDC1遺伝子プロモーター下でL−LDH遺伝子が発現可能なベクターについても構築し、これをpBTRP−PDC1P−LDHベクターと名づけた。以下に、本実施例におけるベクター構築工程の詳細を図1に基づいて説明するが、ベクター構築の手順はこれに限定されるものではない。なお、ベクター構築における一連の反応操作は、一般的なDNAサブクローニング法に準じて行い、一連の酵素類はタカラバイオ社製のものを使用した。
(プレベクターの構築)
一般的なDNAサブクローニング法に従って、プレベクターpBTRP−LDHの構築を行った。本発明者らが既に構築したpBTrp−PDC1−LDHKCBベクター(特開2003−259878号公報に記載)を制限酵素ApaI、PstI処理して得られた断片を、同様の制限酵素で処理したpBluescriptII SK+ベクター(東洋紡社製)に導入し、pBTRP−PDC1Dベクターを構築した。続いて本ベクターに、PCR増幅によって取得しこれを制限酵素SacI、NotI処理したTRX1断片(700bp)と、PCR増幅によって取得しこれを制限酵素SpeI、BamHI処理したLDHKCB断片(2000bp)とを順次連結し、プレベクターpBTRP−LDHを構築した。
なお、pBTrp−PDC1P−LDHKCBベクターは、以下の方法で構築したものである。すなわち、高等真核生物であるウシ由来のタンパク質であるL−乳酸脱水素酵素を、酵母サッカロマイセス・セレビシエ属において効率的に生産するために、ウシ由来L−乳酸脱水素酵素のアミノ酸配列をコードするDNAに対して、以下の項目を設計指針として、天然にない新規な遺伝子配列(配列番号:27)を設計し、長鎖DNAの合成方法として知られている藤本らの手法(藤本英也、合成遺伝子の作製法、植物細胞工学シリーズ7植物のPCR実験プロトコール、1997、秀潤社、p95−100)を用いて該DNAを合成した(合成したDNAをLDHKCB配列と称した)。全合成したLDHKCB配列を用いて、酵母染色体導入型ベクターpBTRP−PDC1−LDHKCBを構築した。なお、LDHKCB配列をEcoRIにて酵素処理し、同様に、EcoRIにて酵素処理したpCR2.1TOPOVector(Invitrogen)に常法により連結し、pBTOPO−LDHKCBベクターと称した。
1.pBTrp−PDC1−LDHKCB構築のためのPDC1P断片は、サッカロマイセス・セレビシエYPH株(Stratagene社)のゲノムDNAを鋳型として使用したPCR増幅法によって単離を行った。サッカロマイセス・セレビシエYPH株のゲノムDNAは、ゲノム調製キットであるFast DNA Kit(Bio 101社)を用い、詳細は、附属のプロトコールに従い、調製した。DNA濃度は分光光度計Ultro spec 3000(Amersham Pharmacia Biotech社)にて測定した。PCR反応には、増幅酵素として、増幅断片の正確性が高いとされるPyrobest DNA Polymerase(宝酒造)を使用した。上記手法にて調製したサッカロマイセス・セレビシエYPH株のゲノムDNA50ng/サンプル、プライマーDNA50pmol/サンプル、及びPyrobestDNApolymerase0.2ユニット/サンプルを合計で50μlの反応系に調製した。反応溶液を、PCR増幅装置 Gene Amp PCRsystem 9700(PE AppliedBiosystems社)によってDNA増幅を行った。PCR増幅装置の反応条件は、96℃で2分の熱処理を行った後、96℃で30秒と、53℃で30秒と、72℃で60秒とのサイクルを25サイクル行い、その後4℃とした。PDClプライマーの増幅断片を1%TBEアガロースゲル電気泳動にて遺伝子増幅断片の確認を行った。なお反応に使用したプライマーDNAは、合成DNA(サワデーテクノロジー社)を用い、このプライマーのDNA配列は以下の通りであった。
・PDCIP−LDH−U(31mer,Tm値58.3℃)未端に制限酵素BamH1サイトを付加:ata tat ggatcc gcg tttatt tac ctatctc (配列番号:28)
・PDClP−LDH−D(31mer、Tm値54.4℃)末端に制限酵素EcoRIサイトを付加:atatatgaat tctttgattg atttgactgt g(配列番号:29)
2.遺伝子断片であるPDCl遺伝子のプロモーター断片(PDCIP)971bpと、PDCl遺伝子下流領域断片(PDC1D)518bpは、上述のように、サッカロマイセス・セレビシエYPH株のゲノムDNAを鋳型として使用したPCR増幅法によって単離を行った。PCR増幅の手順は上記の通りであるが、PDCl遺伝子下流領域断片の増幅には、以下のプライマーを使用した。
・PDC1D−LDH−U(34mer、Tm値55.3℃)未端に制限酵素XhoIサイトを付加:ata tat ctc gag gcc agctaa ctt cttggtcga c (配列番号:30)
・PDCID−LDH−D(31mer、Tm値54.4℃)末端に制限酵素ApaIサイトを付加:ata tat gaa ttc tttgat tga ttt gac tgtg (配列番号:31)
3.上記反応にて取得したPDC1P及びPDC1D各遺伝子増幅断片をそれぞれ、エタノール沈殿処理によって精製した後、PDC1P増幅断片を制限酵素BamHI/EcoRI及びPDC1D増幅断片を制限酵素XhoI/ApaIにて制限酵素反応処理を行った。なお、以下に用いた酵素類はすべて宝酒造社製のものを用いた。また、エタノール沈殿処理、制限酵素処理の一連操作の詳細なマニュアルはMolecularCloning A Laboratory Manual second editlon(Maniatis et al.,Cold Spring Harbor Laboratorypress.1989)に従った。制限酵素BamHI/EcoRI(宝酒造社)及び脱リン酸化酵素Alkaline Phosphatase(BAP、宝酒造社)を施したpBluescriptII SK+ベクター(東洋紡社)に、上記PCR法にて増幅し制限酵素処理を施したPDC1P断片をT4DNA Ligase反応によって連結させた。T4 DNA Ligase反応には、LigaFast Rapid DNA LigationSystem(プロメガ社)を用い、詳細は付属のプロトコールに従った。
4.次にLigation反応を行った溶液を用いて、コンピテント細胞への形質転換を行った。コンピテント細胞は大腸菌JM109株(東洋紡社)を用い、詳細は付属のプロトコールに従って行った。得られた培養液は抗生物質アンピシリン100μg/mlを含有したLBプレートにまいて一晩培養した。生育したコロニーにつき、インサート断片のプライマーDNAを用いたコロニーPCR法による確認、及びミニプレップによるプラスミドDNA調製溶液に対する制限酵素処理による確認を行い、ベクターpBPDC1Pを単離した。
5.ついで、先に構築されたpBTOPO−LDHKCBベクターを制限酵素EcoRI処理及び末端修飾酵素T4DNA polymerase処理することで得られるLDHKCB遺伝子断片を、同じく制限酵素EcoRI処理、末端修飾酵素T4DNA polymerase処理を行ったpBPDC1Pベクター中に、上述と同様の操作でサブクローニングを行い、pBPDC1P−LDHKCBベクターを作製した。
6.一方、既に構築されたpYLDlベクターを制限酵素EcoRI/AatII処理及び末端修飾酵素T4DNApolymerase処理することで得られるLDH遺伝子(ビフィドバクテリウム・ロンガム由来)断片を、同じく制限酵素EcoRI処理、末端修飾酵素T4DNA polymerase処理を行ったpBPDC1Pベクター中に、上述と同様の操作でサブクローニングを行い、pBPDC1P−LDH1ベクターを作製した。なお、上記のpYLDlベクターは大腸菌に導入され(名称:「E.coll pYLD1」)、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1)に、受託番号FERMBP−7423としてブダベスト条約に基づき国際寄託されている(原寄託日:平成11(1999)年10月26日)。
7.続いて、このベクターをXhoI/ApaI処理し、同様に制限酵素処理を施した増幅PDC1D断片を連結させてpBPDC1P−LDHベクターを作製した。最後にpBPDC1P−LDHIIベクターをEcoRV処理したものに、pRS404ベクター(Stratagene社)をAatII/SspI処理、T4DNApolymerase処理して得られたTrpマーカー断片を連結させて、pBTrp−PDCl−LDHベクターを構築した。
8.次に、pBPDC1P−LDHKCBベクターをApaI/EcoRIにて制限酵素処理し、一方、pBTrp−PDC1−LDHベクターを、制限酵素ApaIおよびStuIで処理したTrpマーカーを含む断片に処理し、増幅させた断片を連結させて、最終コンストラクトである染色体導入型pBTrp−PDC1−LDHKCBベクターを構築した。
(最終ベクターの構築及び確認)
プレベクターpBTRP−LDHを制限酵素NotI、SpeI処理し、これに上記実施例3において取得したプロモーター配列を同様の制限酵素にて処理後、それぞれ連結させた最終ベクターを作製した。今回作製したpBTRP−TDH1P−LDHベクター、pBTRP−TPI1P−LDHベクター、pBTRP−CCW12P−LDHベクター、pBTRP−RSP31P−LDHベクターおよび比較コントロールとして作製したpBTRP−PDC1P−LDHベクターについての詳細なマップを図2〜図5に示す。
なお、上記の一連のDNA連結反応は、LigaFast Rapid DNA Ligation(プロメガ社製)を用い、詳細は付属のプロトコールに従った。また、Ligation 反応溶液のコンピテント細胞への形質転換には、大腸菌JM109株(東洋紡社製)を使用した。いずれの場合も、抗生物質アンピシリン100μg/mlを含有したLBプレート下でコロニー選抜を行い、各コロニー用いたコロニーPCRを行うことで、目的のベクターであるかを確認した。なお、エタノール沈殿処理、制限酵素処理等の一連操作の詳細なマニュアルは、Molecular Cloning “A Laboratory Manual second edition”(Maniatis et al., Cold Spring Harbor Laboratory press. 1989)に従った。
(形質転換酵母の作製)
宿主である酵母IFO2260株(社団法人・発酵研究所に登録されている菌株)のトリプトファン合成能を欠損した株をYPD培養液10mlにて、30℃で対数増殖期(OD600nm=0.8)まで培養した。これにFrozen−EZ Yeast TransformationIIキット(ZYMO RESEARCH社製)を用いてコンピテントセルを作製した。キット添付のプロトコールに従い、このコンピテントセルに上述の実施例4にて構築した染色体導入型ベクターを制限酵素PvuII処理し、遺伝子導入した。なお、具体的な導入ベクターは、pBTRP−TDH1P−LDHベクター、pBTRP−TPI1P−LDHベクター、pBTRP−CCW12P−LDHベクター、pBTRP−RSP31P−LDHベクターおよび比較コントロールとして作製したpBTRP−PDC1P−LDHベクターの5種類である。これらの形質転換試料を洗浄後、100μlの滅菌水に溶解させてトリプトファン選抜培地に塗沫し、それぞれについて30℃静置培養下で形質転換体の選抜を行った。
得られたそれぞれのコロニーを新たなトリプトファン選抜培地で再度単離し、生育能を安定に保持している株を形質転換候補株とした。次に、これらの候補株をYPD培養液2mlで一晩培養し、これにゲノムDNA調整キット、Genとるくん(商標)−酵母用−(タカラバイオ社製)を用いてゲノムDNAを調整した。調整した各ゲノムDNAを鋳型としてPCR解析を行い、導入遺伝子の有無が確認できたものを形質転換株とした。
(発酵試験による各プロモーターの検証)
作製した形質転換体におけるL−乳酸生産量を測定し、高発現プロモーターとして知られるPDC1プロモーターを用いた乳酸生産量と比較することで、取得した4種類のプロモーターの非中和条件下での活性を検証した。得られた4種類の形質転換酵母をYPD液体培地5mlに植菌し、30℃、130rpmで一晩、振盪培養を行い、OD600nm=1.2のものを初発菌体とした。このうちの2mlを10%グルコース含有YPD培養液20ml、および10%相当のショ糖を含有したケーンジュース培養液20mlにそれぞれ植菌し(全量22ml)、中和剤として炭酸カルシウム(ナカライテスク社製)1gを添加したものを、30℃で、4日間静置培養した。乳酸生産量の測定には、多機能バイオセンサBF−4装置(王子計測機器社製)を用い、仕様の詳細は付属のマニュアルに従った。これらの結果を図6に示す。
図6に示すように、TDH1遺伝子プロモーター、TPI1遺伝子プロモーター、RSP31遺伝子プロモーター及びCCW12遺伝子プロモーターについては、対照としたPDC1プロモーター以上の発現強度を確認できた。特に、TDH1遺伝子プロモーターについては、平均して114%(105〜117%)、TPI1遺伝子プロモーターについては、平均で117%(113〜126%)という高い発現強度を確認できた。
これらのプロモーターは、いずれも、強力な構成的プロモーターであるPDC1プロモーターと同等以上の活性を有するともに、酸性条件下において高い転写活性を有するプロモーターであることから、乳酸などの有機酸が培地中に蓄積しても高い転写活性を維持することのできる有機酸生産に適した高発現プロモーターであることがわかった。また、これらのプロモーターはいずれも、宿主酵母のPDC1遺伝子を破壊し当該遺伝子座においてLDH遺伝子を発現するものであることから、酵母における当該遺伝子の発現が抑制された状態で乳酸などの有機酸を生産するのに適したプロモーターであることがわかった。
配列番号:7〜26 合成プライマー
配列番号:27 修飾されたウシ由来L−乳酸脱水素酵素をコードするDNA
配列番号:28〜31 合成プライマー
染色体導入型ベクター構築工程を示す図である。 pBTRP−TDH1P−LDHベクターのマップを示す図である。 pBTRP−TPI1P−LDHベクターのマップを示す図である。 pBTRP−CCW12P−LDHベクターのマップを示す図である。 pBTRP−RSP31P−LDHベクターのマップを示す図である。 各種形質転換酵母株における乳酸発酵試験の結果(YPD培養液)を示すグラフ図である。

Claims (24)

  1. 以下の配列(a)〜(c)から選択されるポリヌクレオチドであって、酸性条件下において有機酸生産用プロモーター活性を有する、酸性条件下で使用するためのプロモーター。
    (a)配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド
    (b)配列番号1に記載の塩基配列若しくはその一部に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、配列番号1に記載の塩基配列との相同性が90%以上であるポリヌクレオチド
    (c)配列番号1に記載の塩基配列において1あるいは複数個の塩基が欠失、置換及び/又は付加された塩基配列からなり、配列番号1に記載の塩基配列との相同性が90%以上であるポリヌクレオチド
  2. 微生物における有機酸生産用プロモーターである、請求項1に記載のプロモーター。
  3. 酵母による有機酸生産用プロモーターである、請求項に記載のプロモーター。
  4. 非中和条件下で有機酸を生産する有機酸生産用プロモーターである、請求項2又は3に記載のプロモーター。
  5. pHが1.0〜3.0において有機酸を生産する有機酸生産用プロモーターである、請求項2〜4のいずれかに記載のプロモーター。
  6. 宿主のピルビン酸脱炭酸酵素遺伝子の発現が抑制された状態でピルビン酸に由来する有機酸を生産するための有機酸生産用プロモーターである、請求項2〜5のいずれかに記載のプロモーター。
  7. 酸性条件誘導的プロモーターである、請求項1〜のいずれかに記載のプロモーター。
  8. 前記酸性条件は乳酸酸性条件である、請求項1〜のいずれかに記載のプロモーター。
  9. 請求項1〜のいずれかに記載のプロモーターに機能的に結合された有機酸生産に関与するタンパク質をコードするDNAを備える、DNA構築物。
  10. 前記タンパク質は乳酸脱水素酵素活性を有するタンパク質である、請求項に記載のDNA構築物。
  11. 前記タンパク質は、ウシ由来の乳酸脱水素酵素である、請求項10に記載のDNA構築物。
  12. さらに、オートレギュレーション機構を備えるピルビン酸脱炭酸酵素遺伝子の遺伝子破壊のための相同組換え用のDNAを備える、請求項9〜11のいずれかに記載のDNA構築物。
  13. 請求項に記載のDNA構築物を保持する形質転換体。
  14. 前記プロモーター及び前記タンパク質をコードするDNAは、宿主染色体上に組み込まれている、請求項13に記載の形質転換体。
  15. 酵母である、請求項13又は14に記載の形質転換体。
  16. 前記酵母はサッカロマイセス属に属するものである、請求項15に記載の形質転換体。
  17. 宿主染色体上のオートレギュレーション機構を備えるピルビン酸脱炭酸酵素遺伝子の発現が抑制されている、請求項15又は16に記載の形質転換体。
  18. 前記タンパク質は、乳酸脱水素酵素活性を有する、請求項13〜17のいずれかに記載の形質転換体。
  19. 請求項13〜17のいずれかに記載の形質転換体を準備する工程と、
    この形質転換体を有機酸を含む培地において培養する工程と、
    を備える、有機酸生産方法。
  20. 前記培養工程は、前記宿主細胞による有機酸生産により前記培地に有機酸を供給することを含む工程である、請求項19に記載の物質生産方法。
  21. 前記培養工程は、前記培地に有機酸を添加することを含む工程である、請求項19又は20に記載の方法。
  22. 前記タンパク質は、乳酸脱水素酵素活性を有するタンパク質であり、
    前記培養工程は、乳酸を生産する工程である、請求項19〜21のいずれかに記載の方法。
  23. 前記培養工程は、培地を中和することなく前記形質転換体を培養する工程である、請求項19〜22のいずれかに記載の方法。
  24. 前記培養工程は、培地のpHが1.0〜3.0の範囲で前記形質転換体を培養する工程である、請求項19〜23のいずれかに記載の方法。
JP2005116016A 2005-04-13 2005-04-13 酸性条件下で使用するためのプロモーター及びその利用 Active JP4700395B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005116016A JP4700395B2 (ja) 2005-04-13 2005-04-13 酸性条件下で使用するためのプロモーター及びその利用

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005116016A JP4700395B2 (ja) 2005-04-13 2005-04-13 酸性条件下で使用するためのプロモーター及びその利用

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006288318A JP2006288318A (ja) 2006-10-26
JP4700395B2 true JP4700395B2 (ja) 2011-06-15

Family

ID=37409615

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005116016A Active JP4700395B2 (ja) 2005-04-13 2005-04-13 酸性条件下で使用するためのプロモーター及びその利用

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4700395B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2019203435A1 (ko) 2018-04-17 2019-10-24 에스케이이노베이션 주식회사 유기산 내성 효모 유래 신규 프로모터 및 이를 이용한 목적유전자의 발현방법
US11680270B2 (en) 2019-10-08 2023-06-20 Sk Innovation Co., Ltd. Recombinant acid-resistant yeast with inhibited lactate metabolism and alcohol production and method of producing lactic acid using the same
US11898173B2 (en) 2020-06-24 2024-02-13 Sk Innovation Co., Ltd. Recombinant acid-resistant yeast having improved lactic-acid-producing ability

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100789274B1 (ko) 2007-01-15 2008-01-02 씨제이 주식회사 코리네박테리움 글루타미쿰에서 유래한 신규한 프로모터핵산 분자, 그 프로모터를 포함하는 재조합 벡터, 그재조합 벡터를 포함하는 숙주 세포 및 그 숙주 세포를이용하여 유전자를 발현하는 방법
JP5118899B2 (ja) * 2007-06-25 2013-01-16 株式会社豊田中央研究所 高乳酸生産微生物及びその利用
WO2009072593A1 (ja) * 2007-12-07 2009-06-11 Toray Industries, Inc. 乳酸脱水素酵素発現カセット、形質転換酵母および乳酸の製造方法
WO2010001862A1 (ja) * 2008-06-30 2010-01-07 トヨタ自動車株式会社 有機酸の製造方法

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001204468A (ja) * 2000-01-27 2001-07-31 Toyota Motor Corp 耐酸性乳酸生成微生物
JP2003164295A (ja) * 2001-09-20 2003-06-10 Toyota Motor Corp 遺伝子高発現系

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001204468A (ja) * 2000-01-27 2001-07-31 Toyota Motor Corp 耐酸性乳酸生成微生物
JP2003164295A (ja) * 2001-09-20 2003-06-10 Toyota Motor Corp 遺伝子高発現系

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2019203435A1 (ko) 2018-04-17 2019-10-24 에스케이이노베이션 주식회사 유기산 내성 효모 유래 신규 프로모터 및 이를 이용한 목적유전자의 발현방법
US11655478B2 (en) 2018-04-17 2023-05-23 Sk Innovation Co., Ltd. Promoter derived from organic acid-resistant yeast and method for expression of target gene by using same
US11680270B2 (en) 2019-10-08 2023-06-20 Sk Innovation Co., Ltd. Recombinant acid-resistant yeast with inhibited lactate metabolism and alcohol production and method of producing lactic acid using the same
US11898173B2 (en) 2020-06-24 2024-02-13 Sk Innovation Co., Ltd. Recombinant acid-resistant yeast having improved lactic-acid-producing ability

Also Published As

Publication number Publication date
JP2006288318A (ja) 2006-10-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR102229968B1 (ko) 메틸영양성 효모를 유전적으로 조작하는 발현 구축물 및 방법
JP2021101708A (ja) Fdcaのデヒドロゲナーゼ触媒による生産
JP4700395B2 (ja) 酸性条件下で使用するためのプロモーター及びその利用
US7964382B2 (en) DNA encoding a protein having D-lactate dehydrogenase activity and uses thereof
JP5803106B2 (ja) D−乳酸脱水素酵素活性を有するポリペプチド、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドおよびd−乳酸の製造方法
WO2009131179A1 (ja) 変異体酵母及びこれを用いた物質生産方法
CN112292452B (zh) 生产霉孢菌素样氨基酸的微生物及利用其生产霉孢菌素样氨基酸的方法
JP2008029329A (ja) 酵母及びl−乳酸の製造方法
US7977083B1 (en) Method for microbial production of xylitol from arabinose
JP4460876B2 (ja) 有機酸存在下におけるプロモーター及びその利用
JP2010075171A (ja) キャンディダ・ユティリスによる高効率乳酸製造法
WO2003076616A1 (fr) Adn codant lactate deshydrogenase et son utilisation
JP4095889B2 (ja) 高光学純度な乳酸の製造方法
JP2006006271A (ja) 乳酸生産酵母および乳酸生産方法
JP2006296377A (ja) 有機酸生産用形質転換体
AU2003211896B8 (en) Method of controlling ethanol production and mass production of lactic acid and transformant therefor
AU2002330401B2 (en) Gene overexpression system
JP4109489B2 (ja) 遺伝子高発現系
JP5118899B2 (ja) 高乳酸生産微生物及びその利用
JP2006230329A (ja) 酢酸発酵能が増強された酢酸菌、及び該酢酸菌を用いた食酢の製造方法
WO2010095751A1 (ja) キャンディダ・ユティリスによる高効率乳酸製造法
JP2008237024A (ja) ガラクトース誘導系を有する形質転換体及びその利用
CN116601300A (zh) 阿魏酸生物转化为香草醛
JP2010068773A (ja) C3−c4アルコール耐性真核細胞
JP2005013113A (ja) 酢酸耐性に関与する遺伝子、該遺伝子を用いて育種された酢酸菌、及び該酢酸菌を用いた食酢の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20061024

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090929

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20091126

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100126

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100325

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20100325

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20100513

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20100531

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20100824

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20101124

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20101206

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110301

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110304

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4700395

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313532

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140311

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250