JP4699357B2 - 生物分子の生成方法及び装置 - Google Patents
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Description
最近、最も革新的な進歩の幾つかが診断薬、遺伝子治療及び核酸ワクチンの分野でポリヌクレオチドでなされていた。診断効果、治療効果又は予防効果の目的で細胞へのDNA又はRNAの導入がこれらの適用に共通している。
ポリヌクレオチドはサイズ、形状及び生物学的機能に関して分子の不均一なグループである。それらのビルディングブロック(アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)、ウラシル(U)としてのヌクレオチド)及び生理条件下のそれらの高い負の電荷がそれらの全てに共通している。ポリヌクレオチドの代表的な員はRNA(メッセンジャーRNA、トランスファーRNA、リボソームRNA)、ゲノムDNA(gDNA)又は染色体DNA(cDNA)、及びプラスミドDNA(pDNA)である。これらの巨大分子は一本鎖又は二本鎖であってもよい。タンパク質と同様に、それらは特有の条件下で三次元構造及び凝集物を構築することができる。ポリヌクレオチドはそれらのサイズ及び形状に応じて、酵素分解(DNase及びRNase)及びせん断力に感受性である。特に、染色体DNAは、その変性され、からみ合った形態で、機械的応力に高度に感受性であり、pDNAと同様の性質を有するフラグメントを生じる。これはせん断力暴露の期間につれてますます重要になる(Ciccolini LAS, Shamlou PA, Titchener-Hooker N, Ward JM, Dunnill P (1998) Biotechnol Bioeng 60:768; Ciccolini LAS, Shamlou PA, Titchener-Hooker N (2002) Biotechnol Bioeng 77:796)。
プラスミド(pDNA)は二本鎖の染色体外の環状ポリヌクレオチドである。典型的なプラスミドは3x106-13x106Da及び数千Åに相当する1〜20キロベースペアを含む。pDNAの異なるトポロジー形態は区別し得る。スーパーコイル(sc)形態又は共有結合閉環状(ccc)形態が治療適用のために最も安定と考えられ、それ故、所望の形態である。その他のトポロジーpDNA形態は一本鎖ニック(開環状又はoc)又は二本鎖ニック(線状)によりcccから誘導される。ストランドの切断は物理的、化学的又は酵素的活性により生じられる。治療上の使用について、ccc形態の%がpDNA製剤の品質を評価するための主なパラメーターである。
従来、バイオテクノロジー的生産方法の大半は精製された組換えタンパク質の製造のために開発されていた。ポリヌクレオチドとタンパク質の間の物理化学的性質の相違のために、これらの方法はポリヌクレオチドの生産に容易には適し得ない。こうして、ポリヌクレオチドに適用し得る方法、特に製造規模のプラスミドDNAの生産についての要望がある。
簡単に言えば、組換え生物分子(これらは宿主により分泌されない)、特にDNA及び大きいタンパク質の生産方法は下記の工程に従う。
a) 発酵(目的とする生物分子を有する細胞の培養及び必要により発酵ブロースからの細胞の回収)、
b) 細胞の崩壊(細胞からの目的とする生物分子の放出)、
c) 単離及び精製(不純物からの目的とする生物分子の分離)。
現在、E.coliがpDNA生産に最も普通に使用される宿主である。その他のバクテリア、酵母、哺乳類及び昆虫の細胞がまた発酵工程における宿主細胞として使用されてもよい。好適な宿主株の選択がpDNA品質に大いに重要である。高い細胞密度及びプラスミドコピー数並びに発酵中のその安定な管理が強い経済的方法に重要である。この目的のために、良く特定された培地が必要とされる。発酵の終点及び細胞回収(これは通常発酵に続く)中の条件が、ポリヌクレオチドの品質に寄与する(Werner RG, Urthaler J, Kollmann F, Huber H, Necina R, Konopitzky K (2002) Contract Services Europe, Pharm. Technol. Eur.の補遺 34頁)。
発酵後に、細胞が、たいていは遠心分離により、通常回収される。回収された湿潤バイオマスが適当な緩衝液中で再懸濁される。タンパク質、gDNA、RNA及びその他の宿主関連不純物からの目的とするポリヌクレオチドの最終の単離(例えば、カラムクロマトグラフィー、超ダイアフィルトレーション、抽出又は沈殿)の前に、細胞が直接に、又は凍結そして解凍後に、プロセシングされる必要がある。更なるプロセシングの前に細胞を回収し、再懸濁させることとは別に、発酵ブロースそれ自体が更なるプロセシングにかけられてもよい(WO 97/29190)。
プロセシングは細胞の崩壊で始まり、目的とするポリヌクレオチドの最初の単離工程(これはまた“捕捉工程”と称される)で終了する。
通常、バクテリア細胞からのプラスミドDNAの崩壊及び放出はBirnboim及びDoly(Birnboim HC, Doly J (1979) Nucl Acids Res 7:1513)により記載されたようにアルカリ溶解(化学的方法)により行なわれる。
そこに記載された崩壊/放出方法は二つの工程に分けられ、最初の工程は固有の細胞崩壊又は溶解工程であり、第二の工程は中和工程である。
アルカリ溶解中に、細胞が洗剤(好ましくはSDS)と組み合わせてアルカリ溶液(好ましくはNaOH)に暴露される。この環境では、細胞壁構造が分解され、それにより目的とするポリヌクレオチド及びその他の細胞関連化合物を放出する。最後に、その溶液が酸性塩、好ましくは酢酸塩、特に酢酸カリウム(KAc)又は酢酸ナトリウム(NaAc)の溶液の添加により中和される。アルカリ条件はスーパーコイル構造を巻き戻すことによりpDNAの変性をもたらす。12〜12.5のpH値まで、相補ストランドの完全分離が防止される。これは、pHが再度低下される場合に、プラスミド分子の完全再生を可能にする。pH値が再生限界を超える場合、分離されなかった領域が失われ、pDNAが不可逆的に変性される。この段階で、ポリヌクレオチドは一本鎖物質の大きいドメインを含む(疎水性塩基の大きい暴露により)(Diogo MM, Queiroz JA, Monteiro GA, Prazeres DMF (1999) Analytical Biochemistry 275:122)。
アルカリ溶解及び中和に続く次の工程において、沈殿がプラスミド含有溶液から分離されるべきである(この工程は、本発明の意味において、“清澄化工程”と称される)。樹脂による更なる精製に鑑みて、樹脂による所望のポリヌクレオチドの結合を保証するために溶液のパラメーター(塩組成、導電率、pH値のような)を調節することがしばしば必要である(この工程は、本発明の意味において、“状態調節工程”と称される)。続いて、溶液が最初のクロマトグラフィー工程(捕捉工程)にかけられる。
細胞の再懸濁が高せん断力を回避するとともにできるだけ速く行なわれるべきである(特に細胞が先に凍結されていた場合)。均一性が得られるまで、幾つかの市販の型の撹拌機が細胞ペーストをバッチ様式で容器中で再懸濁緩衝液と混合するのに利用でき、最も普通に使用される装置はマグネチックスターラー又は羽根車式撹拌機である。別法が米国特許第2001 0034435 A1号に記載されている。ここで、細胞ペーストが再懸濁緩衝液で希釈され、細胞/緩衝液混合物がポンプ付近の様式でスタチックミキサー中で循環される。また、発酵ブロースを溶解の前にスタチックミキサー中で再懸濁緩衝液で直接希釈することが示唆されていた(WO 97/23601 A1)。
ポリヌクレオチドを得るための細胞の崩壊(溶解)について、幾つかの異なる方法、例えば、熱処理又は化学処理を使用する方法が示唆されていた。熱溶解について、通気熱交換器(70-100℃)を使用する方法(この方法では、細胞が洗剤及び必要によりリゾチームの存在下で再懸濁された細胞のインキュベーション後に連続的に崩壊される)が、記載されている(WO 96/02658 A1)。別の物理的方法(これは70-90℃の温度で行なわれる)がWO 02/057446 A2に示されている。第一工程で、回収された細胞がフィルター助剤を利用して濾過され、得られる混合物が第二工程で熱溶解される。また、崩壊は熱溶解緩衝液をフィルターケーキにポンプ輸送することにより、又は通気熱交換器により行ない得る。化学溶解方法はアルカリpH値で行なわれ、それ故、それらは“アルカリ溶解”と称される。固有溶解溶液の普通に使用される組成がBirnboim及びDolyにより記載されているが、この溶液の多くの別型が存在する。溶解溶液の一部である洗剤として、通常SDSが使用されるが、トゥイーン(登録商標)又はトリトン(登録商標)のようなその他の(例えば、ノニオン性の)洗剤がまた好適である(例えば、WO 95/21250 A2)。EP 0376080 A1によれば、SDSがデスオキシ葉酸塩(DOC)により置換され、一方、米国特許第5,637,687号の3相抽出方法は細胞可溶化のための新規組成物(ベンジルアルコール+ヨウ化ナトリウム+グアニジニウムチオシアネート及び/又はグアニジニウムクロリド)を使用する。アルカリ溶解のための殆どの方法がバッチ様式で行なわれる。例えば、アルカリ処理が指数増殖中(この場合には、細胞の回収が行なわれない)又は適当な緩衝液中の細胞の再懸濁後にNaOH/SDS溶液をバクテリア細胞培養液に添加することにより直接行ない得る。それにより、pDNA分子が完全に変性されるpH値(夫々の単一プラスミドについて実験で測定され、夫々異なっているpH値)よりも0.2単位低いpH値に達するまで、アルカリ溶液が添加される(WO 97/29190 A1)。別法は溶液を保持し、吸引によりそれを透過することができる膜フィルターでキャリヤーを含むカラムを利用する。キャリヤーに吸着された場合、或る量の細胞がこのカラム中でリゾチームにより溶解され、更にプロセシングし得る(EP 0814156 A2)。ビルトイン濾過層とともに中空ボディ(管)からなる同様の装置がEP 0616638 B1、EP 0875271 A2、及びWO 93/11218 A1に開示されている。アルカリ溶解が濾過部分より上の管の一部中で行なわれる。細胞懸濁液及び使用された溶液が分配され、非連続様式で混合される。
上記連続方法は流れの簡単な連結又は、スタチックミキサーを使用する場合には、種々の取付具(例えば、らせん構造)で行なわれる。
中和工程において、通常酢酸カリウムを含む酸性溶液が使用される。RNAの同時の沈殿のために、塩化ナトリウム、塩化カリウム又は酢酸アンモニウム(7Mまで)を更に含む組成物が示唆されていた(米国特許第2001/0034435 A1号)。中和後に混合物に添加されるCaCl2のような2価のアルカリ土類金属イオンを含む溶液がRNA及び染色体DNAの沈殿をもたらすことがまた示されていた(米国特許第6,410,274 B1号)。
溶解された細胞溶液の中和はバッチ様式で単一工程としてしばしば行なわれる。EP 0814156 A2、WO 93/11218 A1、EP 0616638 B1、及びEP 0875271 A2では、溶解された細胞溶液が溶解工程(既に上記された)に先に使用されたような同じ装置(インライン濾材を含むカラム又は管)中で中和/沈殿溶液と接触される。再度、これらの技術は医薬等級ポリヌクレオチドの製造規模の生産に転用される場合に幾つかの重大な制限を受けるであろう(その問題はまた非連続開放系のための可能な汚染、ユーザー依存性であり、スケールアップ可能性を欠いている)。
中和工程について、溶解された細胞溶液を既に含む撹拌タンク反応器が示唆されており、これに中和溶液が500rpmの速度で撹拌機による連続混合のもとに充満される(WO 02/26966)。同様の方法が米国特許第2001/0034435 A1号に特許請求されており、それによれば中和が冷却ジャケット付き保持タンク中で、又は前にインラインスタチックミキサー中で溶液を羽根車で混合することにより達成される。二つの非常に簡単な連続接触技術がWO 99/37750 A1及びWO 00/09680 A1に開示されている。両方の方法は二つのポンプ輸送された流れを出会い位置で得られる管の減少された内径(WO 99/37750)又は簡単な“Y”コネクター及び管(WO 00/09680)で連結する溶解工程について既に上記されたのと同じセットアップを使用する。両方の方法について、スタチックミキサーが中和工程で使用されてもよい(WO 97/23601 A1、WO 00/05358 A1)。これらのミキサーが溶解工程について既に上記されたのと同じ様式で利用される。
透明にされた溶解産物を得るために、沈殿した物質がポリヌクレオチド含有溶液から分離されるべきである。通常この清澄化工程は濾過又は遠心分離のような当業界で知られている技術を使用してバッチ様式で行なわれる(例えば、米国特許第2001/0034435 A1、WO 02/04027 A1)。最も普通には、フィルターがデプスフィルターである(WO 00/09680)。マクロフィルトレーションのためのその他のフィルター装置は、例えば、圧縮ゲージ又は均等濾材からなるマクロ細孔隔膜である(EP 0376080 A1)。或るプロトコルによれば、濾過がフィルター助剤の存在下で行なわれる(WO 95/21250 A2、WO 02/057446 A2、米国特許第2002/0012990 A1号)。WO 96/21729 A1は遠心分離工程後にケイソウ土を使用する濾過工程を含み、それによりRNA含量を減少する付加的な効果を得る方法を開示している。更に、ゆるいマトリックス(ガラス、シリカゲル、陰イオン交換樹脂又はケイソウ土)(これは同時にDNAのキャリヤーとして作用する)との膜フィルターの組み合わせが記載されていた(EP 0814156 A2)。WO 96/08500 A1、WO 93/11218 A1、EP 0616638 B1及びEP 0875271 A2によれば、清澄化が溶解及び中和工程について上記された装置により達成され、その濾過部分はゆるい粒子、層又はフィルタープレート(特に非対称細孔サイズ分布を有する)の形態の異なる材料(例えば、ガラス、シリカゲル、酸化アルミニウム等)からなってもよい。フィルター中のフラックスは重力、真空、圧力又は遠心分離により達成される。連続清澄化方法として、遠心分離(例えば、ディスクスタック遠心分離機又はデカント遠心分離機)が挙げられる(WO 99/37750 A1、WO 96/02658 A1)。また、遠心分離、続いて濾過の組み合わせが清澄化目的のために記載されている(WO 02/26966 A2、WO 96/02658 A1)。
一般に、通常のフィルターは制限されたキャパシティを有し、多量のかさばったフロックによりやがてふさがれる。加えて、材料により保持される沈殿上の一定のフラックスがフロックの分解及び不純物の再溶解をもたらすことがあり、これが再度下記の工程に負の影響を有するであろう。多量のpDNAについて、或る装置についてそれらを多種多様にする(例えば、それらを平行に運転する)ことが示唆されており、これは製造規模で操作するのに不十分である。遠心分離が連続的に適用し得るが、せん断力に対するポリヌクレオチドの感受性のために、この処理はまたプラスミドDNA及びゲノムDNAの分解並びにフロックの破壊による沈殿した不純物の脱着を生じるかもしれない。
更に、最終の精製の前の前処理として、“エンドトキシン除去(ER)緩衝液”(キアゲン(登録商標))(WO 00/09680 A1)又はトリトンX-114(登録商標)(WO 99/63076 A1)の添加が示唆されていた。
操作工程を連結しないそれらの操作の非連続かつ非自動化様式が記載された方法の全てに共通である。
目的とするポリヌクレオチドの捕捉について、幾つかの技術、例えば、接線流濾過(WO 01/07599 A1)、サイズ排除クロマトグラフィー(WO 96/21729 A1、WO 98/11208)、陰イオン交換クロマトグラフィー(WO 00/09680 A1、米国特許第6,410,274 B1号、WO 99/16869)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(WO 02/04027 A1)が当業界で知られている。
例えば、EP 081456 A2、WO 93/11218 A1、EP 0616638 B1及びEP 0875271に記載された方法について、上記工程の幾つかを組み合わせることが既に示唆されており、これらによれば、細胞溶解、中和、清澄化、洗浄、必要により状態調節及び捕捉が同じ装置中で行なわれる。典型的には、これらの方法は幾つかの保持工程を含む非自動化/非連続様式で操作される開放系である。装置は実験規模についてのみ好適であり、製造規模に転用し得ない。また、これらの技術はcGMP大規模生産について再現性及び適性を欠如している。
また、異なる装置を利用する組み合わせが記載されており、この場合、個々の工程が互に直接連結される。
二つ以上の工程の連続の組み合わせが幾つかの特許明細書に記載されていた。WO 96/02658 A1は熱溶解と遠心分離による清澄化の組み合わせを記載し、WO 00/09680 A1及びWO 02/26966 A2はアルカリ溶解と中和を組み合わせることを示唆している。米国特許第2001/0034435 A1号及びWO 97/23601 A1に記載された方法は三つの工程、細胞の再懸濁、アルカリ溶解及び中和を組み合わせる。WO 00/05358 A1及びWO 99/37750 A1はアルカリ溶解、中和及び遠心分離による清澄化の組み合わせを記載している。
これらの方法のいずれもが単離操作の三つより多い工程を組み合わせておらず、最初の工程が再懸濁工程であり、最後の工程が捕捉工程である。溶解及び中和中に溶液を接触させるためにこれらの方法に使用される装置は均一な混合を保証しないし、又は不利なせん断力を溶質に適用するかもしれない。
特に、本発明の目的は、細胞崩壊工程として、改良されたアルカリ溶解方法を含む製造規模で、目的とするポリヌクレオチド、特にプラスミドDNAを単離するための自動化可能かつスケールアップ可能な方法を提供することであった。アルカリ溶解工程に加えて、その方法は中和工程、清澄化工程、及び必要により状態調節工程及び/又は濃縮工程を含むべきである。
溶解産物の清澄化は連続かつ自動化された方法で目的とする生物分子を単離する方法を行なうのに制限工程であると考えられたので、一連の実験において、幾つかの異なる方法が清澄化の問題に取り組むために研究された。驚くことに、或るレベルまでガラスビーズで充填され、下部に出口を有するタンクが、優れた清澄化結果を与え、全プロセスの自動化を可能にすることがわかった。
更に、改良された清澄化工程と組み合わされてもよいアルカリ溶解によりバクテリア細胞の崩壊を達成するための改良された方法を提供することが探究された。この目的のために、幾つかの混合技術が異なって着色された試験溶液を使用する予備実験で試験された。
驚くことに、ガラスビーズで充填された管がこの管中をポンプ輸送することにより一緒にされる場合に2種の溶液の充分な混合及び接触をもたらすことがわかった。この知見は、2種の溶液として、再懸濁された細胞懸濁液及び溶解溶液を使用する場合に確かめられた。
溶解された細胞溶液を中和溶液と混合するための操作が試験された場合に、更に予期されない結果が得られた。ポンプ輸送された溶解された細胞溶液の流れを通常のTコネクターによりポンプ輸送された中和溶液の流れと連結した後に、特別に延伸された管が溶液の満足な混合及びコンパクトな容積の大きいフロックの形成をもたらし、これらが強いせん断力により影響されないことがわかった。
これらの知見が単一工程を連続様式で操作でき、かつ自動化し得る系に組み合わせることにより更に発展された。
本発明は
a)細胞を培養して目的とする生物分子を生成し、必要により細胞を回収し、再懸濁させる工程、
b)細胞をアルカリ溶解により崩壊する工程、
c)溶解産物を中和することにより細胞デブリ及び不純物を沈殿させる工程、
d)溶解産物を工程c)で得られた沈殿から分離する工程、
e)目的とする生物分子を精製する工程
を含み、
工程d)で、沈殿及び溶解産物を含む混合物を、下部で保持材料で部分的に充填されている清澄化反応器中を下方に穏やかに流し、それにより沈殿を保持材料の層の上部及びその中に保持し、透明にされた溶解産物が反応器の下部中の出口を通って反応器から出ることを特徴とする、宿主細胞により分泌されない生物分子の生成方法に関する。
a) 発酵/培養
本発明の方法において、特に目的とする生物分子がpDNAである場合に、E.coliが宿主として使用されることが好ましい。
本発明の一実施態様において、連続運転される装置、例えば、管遠心分離機又はセパレーターが、細胞を培地から分離するのに使用される。細胞(バイオマス)が更なるプロセシングの前に凍結される場合、細胞が回収後に直接に、又は好適な緩衝液、典型的にはpH 8で0.05Mトリス、0.01M EDTAを含む緩衝液中の細胞の再懸濁後に凍結し得る。この場合、再懸濁緩衝液はアルカリ溶解の前に添加されるべきではなく、又はそれは一層低い量で必要とされる。
発酵で得られるバイオマスは、更にプロセシング(再懸濁、溶解等)される前に、凍結、特に低温ペレット化されてもよい。低温ペレット化は細胞を貯蔵のために調製するのに有利な方法である。この方法は細胞の速い凍結を保証するので、バイオマス内の、望ましくない温度勾配が回避し得る。通常の冷蔵庫中の遅い凍結は不均一な凍結及び氷結晶の構築をもたらすことがあり、これは細胞を損傷し、それらの貯蔵寿命及び目的とするポリヌクレオチドの品質を低下し得る。バイオマスが再度解凍される場合に、同じことが観察されるかもしれない。
本発明の実施態様において、細胞の回収及び再懸濁は省かれてもよく、この場合には、発酵ブロースが細胞及び培養上澄みの分離をしないで溶解工程b)で直接更にプロセシングし得る。
工程a)の回収された細胞は直接にプロセシングされ、又は先に凍結された場合には解凍される。回収された細胞が固有の細胞崩壊工程b)の前にa)に記載された再懸濁緩衝液中で再懸濁されることが両方の操作に共通である。
また、工程a)で得られた発酵ブロースは細胞の回収及び再懸濁をしないで直接更にプロセシングされる。この場合、細胞が発酵槽中でアルカリ溶解(そして必要によりその後の中和)を直接行なうことにより、又は発酵ブロースを溶解反応器に導入することにより崩壊されてもよい。
(以下において、工程b)における細胞崩壊に関して、“細胞懸濁液”という用語は回収後の再懸濁された細胞及び発酵ブロースの両方について使用される)
原則として、工程b)はそれ自体知られている方法、好ましくは穏やかであり、連続かつ自動化された様式で実施し得る方法に従って行ない得る。
好ましい実施態様において、工程b)で、細胞懸濁液及びアルカリ溶解溶液が粒状材料で実質的に完全に充填されている溶解反応器に流され、それにより細胞懸濁液をアルカリ溶解溶液と接触させ、混合する。
細胞懸濁液及びアルカリ溶解溶液は、溶解反応器に入る前に、更に混合しないで、合わされることが好ましく、こうして溶解反応器中で粒状材料中を流れる時に充分に混合される単一流を生成し、非常に穏やかな溶解を達成する。不利なせん断力を避けることにより、プラスミドDNA品質が非常に高いレベルに維持される。更に、超コイルプラスミドDNAの収率が通常の方法に較べて高い。これは二つの理由による。第一に、分解(これは激しい混合条件及び装置を使用する場合に生じ得る)が、減少される。第二に、均一な混合のために、細胞が完全に崩壊され(全pDNA量を放出する)、局所pH極値(これはまた標的プラスミドDNA分子の分解をもたらし得る)を回避する。
また、細胞懸濁液は、好ましくは互にできるだけ近くにある入口を通って、溶解溶液と同時に反応器に導入される。
好ましくは、両方の実施態様において、細胞懸濁液及び溶解溶液が、例えば、ポンプ又は加圧ガスにより、流量の特定の比で輸送され、それにより細胞懸濁液と溶解溶液の容積の一定の比を得る。
溶解反応それ自体に関して、本発明の好ましい実施態様における工程b)は、当業界で知られている方法に従って、洗剤を含むアルカリ溶解溶液を使用して行なわれる。典型的な溶解溶液はNaOH(0.2M)及びSDS(1%)からなるが、その他のアルカリ溶液及びその他の洗剤がまた使用し得る(例えば、WO 97/29190を参照のこと)。
工程b)のパラメーター及び本明細書に使用される装置の寸法は均一な混合が保証され、かつ所望のポリヌクレオチドの変性を避けるために接触時間が5秒から5分以上までの或る範囲、好ましくは1〜3分に保たれるように設計されることが有利である。これらのパラメーターは装置の寸法、詰められたビーズ間の自由体積及び流量により調節し得る。細胞の適当なアルカリ溶解に関する接触時間は宿主株に依存し、目的とする生物分子とは独立であり、pDNAの場合には、それはプラスミドサイズ又はプラスミドコピー数(PCN)とは独立である。
また、この工程は、原則として、それ自体知られている方法、好ましくは穏やかであり、かつ連続かつ自動化された様式で実施し得る方法に従って行なわれてもよい。
好ましい実施態様において、中和工程c)で、溶解された細胞溶液が連続の、好ましくは自動化された様式で中和溶液と混合される。これは溶解された細胞溶液と中和溶液を、流量の一定の比で合わせ(例えば、Tコネクター又はYコネクターにより)、溶解反応器とその後の清澄化反応器の間の反応混合物の輸送中の混合及び中和/沈殿を確実にすることにより達成される。
この目的のために、新規中和反応器(これはまた本発明の主題である)が、使用される。この反応器はコネクター装置及び管系からなり、これは溶解された溶液と中和溶液の均一な混合が保証され、かつ沈殿の新たに形成されたフロックがせん断力により破壊されないように設計される。管系は剛性又は可撓性であってもよく、それはコイルの形態であることが好ましく、その寸法(管の直径及び全長並びにコイルの直径)はその方法の規模に依存する。管は生物医薬製造に許されるあらゆる材料、好ましくはプラスチック又はステンレス鋼からつくられてもよい。
好ましい実施態様によれば、溶解された溶液及び中和溶液の流路が通常のコネクター、例えば、Tコネクター又はYコネクターにより合わされる。溶解された細胞溶液が中和溶液と一旦接触されると、フロックの形成が始まる。次いで得られる混合物が管系中を、好ましくはポンプ又は加圧ガスにより、輸送される。その方法の規模に応じて、管の内径は管壁におけるフロックのせん断を避けるために約3mmから約100mmまでの範囲であり、好ましくは8mmより大きい。流れの配向は上向き、下向き、水平又はあらゆるその他の方向、好ましくはらせんの形態であってもよい。30cmから数メートルまでの混合距離が溶液の穏やか、かつ完全な混合を可能にし、こうして細胞由来不純物を沈殿させる。混合距離、管の内径だけでなく、混合装置中の保持時間が混合の品質及び沈殿の形成に影響する。
典型的には、酸性pH及び高い塩濃度を有する緩衝液が中和に使用される。この溶液はpH 5.5の3M酢酸カリウム(KAc)からなることが好ましい。しかし、その他の中和塩がまた使用又は添加し得る。
工程d)において、沈殿及び溶解産物を含む工程c)で得られた混合物(これはpDNAの場合、通常タンパク質の場合には目的とする生物分子を含む)が、下部に、保持層を含む清澄化反応器に下向きに穏やかに流され、それにより沈殿が保持層の上及び中に保持され、透明にされた溶解産物が反応器の下部中の出口を通って反応器から出る。清澄化反応器の上部の通気弁が、通常の場合には、完全に閉じられている場合、清澄化反応器中の自由体積がフロック/溶解産物混合物の増大するレベルのためにその方法の経過中に減少する。それ故、反応器中の圧力が時間につれて絶えず増大する。これが更に取り扱わないで得られる一定の流出をもたらす。
好ましい実施態様において、工程d)では、清澄化反応器中の保持層が粒状材料を含む。
別の実施態様において、その方法を促進するために、増大する圧力が、例えば、加圧ガス、特に空気を反応器の上部から適用することにより、清澄化反応器中の混合物に適用される。通常、圧力の適用はその方法の開始時に必要とされないが、その方法が進行する時に必要とされる。通常、圧力は段階的に、例えば、0.2バールの範囲で増大され、その間隔は沈殿/溶解産物混合物の前もって決めたアリコートが反応器に入った時点により特定される。また、圧力は連続的に増大されてもよい。
清澄化反応器〔その中で、フロック(これらは、pDNAの場合には、gDNA、タンパク質、細胞デブリ及びSDSの共沈である)を含む混合物が更にプロセシングされ、またこれは本発明の主題である〕は、ガラス、ステンレス鋼、プラスチック又は医薬製造に許されるあらゆるその他の材料からつくられてもよい。好ましい形状は円筒形であるが、原則として夫々のその他の中空ボディが可能である。本発明の方法における工程d)は反応器の形状とは独立である。
好ましい実施態様において、分配装置は保持層の表面に達し、かつその中央にロッドを有する孔あき管である。保持層が粒状充填材料からなる場合、これは規則的(例えば、球形、円筒形、プレートの形態)又は不規則(砂状、グリット状等)の形状、好ましくは、ビーズの形態であってもよい。
ビーズは0.1mmから10mmまでの範囲の、同じ又は異なる直径のものであってもよい。好ましい実施態様において、ビーズの直径は1mmである。
保持要素がビーズである場合、それらはガラスからつくられることが好ましいが、それらはまたステンレス鋼、プラスチック又は生物医薬製造に許されるその他の材料からつくられてもよい。粒子は或る高さまでランダムな方法で反応器に詰められて、充分な清澄化を与える。
粒状保持材料の場合、粒子が出口中の装置、例えば、フリットにより保持される。当然、このフリットは反応器中に使用される粒子よりも小さい細孔を有する必要がある。フリットは10〜200μm、好ましくは30-100μmの平均細孔サイズを有するポリプロピレン又はあらゆるその他の好適な材料からつくられてもよい。
清澄化反応器の出口は管により延長されてもよい。この場合、フリットは管内の出口から離れて配置されてもよく、こうしてフリットの上の管が保持材料で充填される。
粒状保持要素に代えて、清澄化反応器の下部は硬質保持材料、例えば、好ましくはガラスからつくられ、約100μmから約500μmまでの細孔サイズを有する、焼結プレートで充填されてもよい。特別な実施態様において、一層大きい細孔を有する焼結プレートが一層小さい細孔を有するものの上に置かれる。
好ましい実施態様において、圧縮ガス、例えば、空気の供給のための連結部分は清澄化反応器の上部に配置される。この場合、清澄化反応器は耐圧性であるべきである(上部の通気弁が閉じられる場合に、圧縮ガスがたとえ供給されなくても、反応器中の圧力が増大するので、反応器は6バールまで耐圧性であるべきである)。圧縮ガスを適用することにより、清澄化プロセスが促進でき、これは出口の流れを増大すると、同時に生物分子を損傷し得るせん断力を回避する非常に穏やかな方法である。
圧力はフロックが、特に操作の終了時に、保持材料中に押しやられないような範囲であるべきである。適用圧力は好ましくは0.1〜3バール、最も好ましくは2バールまでの範囲である。得られる中和された溶解産物は目視で透明であり、通常クロマトグラフィー技術により直接に更に捕捉され、プロセシングし得る。
分離/清澄化工程d)の終了時に、フロック(これらは、特に一層大きい粒状材料又は一層大きい細孔を有する硬質保持材料を使用する場合に、保持層の上そしておそらくまたその中に存在する)の間の残留液体が、圧力を適用することにより回収し得る。これはフロックの排出をもたらす。
これは目的とする生物分子、例えば、プラスミドDNAを含み、通常回収し得ず、又はほんの不十分に回収し得るフロック間の残留液体が、最大の収率で得られる点で利点を与える。こうして、実際に全溶解産物が透明な溶液として得られる。
加えて、一つ以上の洗浄工程が工程d)とe)の間に挿入されてもよい。この場合、工程d)の終了時に、フロックが溶液を二つの方向のいずれか又は両方の方向で、即ち、反応器の入口及び/又は出口からフロック中に連続的又は同時にポンプ輸送することにより、フロックを再溶解しない好適な緩衝液、例えば、pH 5.5の3M酢酸カリウム、又は再懸濁、溶解(SDSを用いない)及び中和工程に使用された溶液の、例えば、1:1:1の比の混合物で洗浄される。ポンプ輸送が入口から行なわれる場合、洗浄工程は連続的又はバッチ式であってもよい。それが出口から行なわれる場合(これが好ましい)、洗浄緩衝液が入口までのタンクにポンプ輸送されてもよいが、これを必要としない。次いで溶液が上記されたのと同じ方法(圧縮空気)を適用して、出口で回収される。
本発明の工程a)〜d)後のプロセスはその後のクロマトグラフィー工程における目的とする生物分子の単離(捕捉)及び精製を促進する。
樹脂による捕捉/精製の前に、溶液のパラメーター(塩組成、導電率、pH値のような)を調節してクロマトグラフィー支持体、通常樹脂への所望の生物分子の結合を確実にすることが必要であるかもしれない(この工程が、本発明の意味で、“状態調節工程”と称される)。最も簡単な状態調節操作は、特にその後の捕捉工程におけるクロマトグラフィー樹脂が陰イオン交換クロマトグラフィーにより得られる場合(WO 97/29190 A1)、水又は低塩緩衝液による透明にされた溶解産物の希釈である。更に、特に疎水性相互作用クロマトグラフィーが最初の精製工程として使用される場合には、高濃度の塩溶液が添加されてもよく、おそらく得られる沈殿(これは溶液中の或る塩濃度が越えられる場合に存在する)が濾過又は遠心分離により分離される(WO 02/04027 A1)。硫酸アンモニウムが高濃度で使用される場合には、この処理はRNA含量を低下する(WO 98/11208 A1)。
捕捉及び精製について、幾つかの工程が適用されて医薬に関する要件を満足する高度に精製された生物分子を得る。先の工程について、酵素、洗剤及び有機溶媒が避けられるべきである。単離及び精製は当業界で知られている方法に従って、特に異なるクロマトグラフィー技術(陰イオン交換クロマトグラフィーAIEC、疎水性相互作用クロマトグラフィーHIC、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC))、限外濾過(ダイアフィルトレーション)、濾過又は沈殿及び抽出の組み合わせにより行なわれる。特に治療適用のためのpDNAを得るための、有利に使用し得る方法は、異なるクロマトグラフィー原理に基づく二つの工程の組み合わせを含み、その二つの工程のいずれかは疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、極性相互作用クロマトグラフィー(PIC)及び陰イオン交換クロマトグラフィー(AIEC)から選ばれ、二つの工程の少なくとも一つ、好ましくは両方の工程において、クロマトグラフィー支持体は多孔性モノリス床、好ましくはモノリスカラムの形態の硬質メタクリレートをベースとするモノリスである。好適なモノリスカラムがトレードマークCIM(登録商標)としてBIAセパレーションズから市販されている。この精製プロセスは管中管系を含む単一モノリス床の形態のクロマトグラフィー支持体で有利に行なわれてもよく、その外管及び内管は異なる機能性部分を有する。このような系では、モノリス管の一つが一つの工程のクロマトグラフィー原理のための支持体に相当し、別の管が別の工程のクロマトグラフィー原理のための支持体に相当する。好ましくは、捕捉/精製工程は環状クロマトグラフィー、カロセル(carousel)クロマトグラフィー又は模擬移動床方法の如き技術を使用して、バッチ様式又は準連続様式もしくは連続様式で行ない得る。
本発明の方法は目的とするあらゆる生物分子について使用し得る。タンパク質の生成について、それは目的とするタンパク質の特別な要望が満足されるように設計されてもよい。本発明の方法は発酵方法及びタンパク質の起源(例えば、バクテリア、酵母)とは独立である。
細胞崩壊及びその後のプロセシング工程に適した特別な方法の選択は発酵後の細胞中のタンパク質の状態により強く影響される。
タンパク質が過剰発現される場合、それは所謂“封入体”の形態で存在してもよい。この場合、例えば、溶解中の還元剤(例えば、DTT)と組み合わせて強アルカリによる処理がタンパク質(これは、この段階では、変性された形態である)の再可溶化をもたらす。
タンパク質の自然構造を再生するために、再折り畳みが中和反応器中又は溶解反応器と同様の第二反応器中で中和(例えば、リン酸の添加による)により達成し得る。不溶性成分が清澄化反応器中でタンパク質含有溶液から分離される。
溶解反応器中で、条件(接触時間、溶解溶液の濃度)はタンパク質が可溶性に留まるような方法で選ばれてもよく、又は、パラメーターがタンパク質を特別に変性し、沈殿させるように設定される。最初の場合には、溶液が中和反応器(これは、構造に関して、溶解反応器又はポリヌクレオチドに使用された中和反応器と同様である)及び可溶化封入体について記載されたような清澄化反応器中で更にプロセシングされる。タンパク質がその変性状態である場合、沈殿が既に溶解反応器中で、又はその後に中和反応器(中和剤及び/又は沈殿剤の添加による)中で行ない得る。両方の場合、沈殿に関する条件は目的とするタンパク質を特別に沈殿させるように選ばれることが好ましい(一方、例えば、RNA、エンドトキシン、及びDNAのような望ましくない不純物は可溶性に留まる)。沈殿は続いて清澄化反応器中で溶液から分離される。その後、沈殿は清澄化反応器から除去され(例えば、吸引又は適当な緩衝液によるフラッシングアウトにより)、又はこの装置中で直接に更にプロセシングされる。それが反応器から除去された後に、沈殿が好適な緩衝液(これはケースバイケース基準で実験により決められる)を使用してセパレート容器中で再可溶化される。沈殿が清澄化反応器中に残る場合、再可溶化がそこで行なわれる(好適な緩衝液の添加及び必要により混合による)。沈殿(特に目的とするタンパク質)が再可溶化されるとすぐに、それが下部中の出口を通って清澄化反応器から容易に除去し得る。
得られるタンパク質溶液を更にプロセシングすることに関する選択肢がタンパク質の生成における本発明の方法の全ての変化に共通である。付加的な再折り畳み工程の他に、ポリヌクレオチド溶液のプロセシングについて記載されたのと同じ工程(連続又は非連続の濃縮、状態調節、濾過、捕捉)が行なわれてもよい。
本発明の方法は多量のポリヌクレオチド含有細胞をプロセシングするのにスケールアップでき、それは典型的には100グラム以上の湿潤細胞をプロセシングするために“製造規模”で行なわれてもよく、臨床試験だけでなく、市場供給のための要望を満足する関係するポリヌクレオチド0.1gから数100g〜数kgまでの量を生じる。
その方法の適用可能性は関係する生物分子のサイズ、配列又は機能に関して制限又は限定されない。関係するポリヌクレオチドは0.1kbから約100kb以上までの範囲のサイズを有するDNA分子又はRNA分子であってもよい。関係するポリヌクレオチドは好ましくは1〜20kbpのサイズを有する環状DNA、即ち、プラスミドDNAであることが好ましい。
本発明の方法及び装置は関係する生物分子が得られるべきである細胞起源に関して制限されない。
その方法は容易に実施でき、自動化及び所望の規模に関して融通性である。流れ及び反応時間の調節が定常流及び機械的応力の低い影響を確実にする市販のポンプ及び加圧系により達成し得る。
本発明の別の利点は装置が衛生的、脱発熱原的であり、適所の洗浄(CIP)及び適所のスチーム処理(SIP)を可能にすることである。
本発明の方法において、工程a)がバッチ式又は連続様式で行なわれるかどうかにかかわらず、夫々のその後の工程は連続かつ自動化された様式で行なわれてもよい。工程b)〜e)から選ばれた二つの工程の組み合わせが少なくとも個々の工程を連結して連続的に行なわれることが好ましい。
溶解工程b)が自動化された工程である場合、それは細胞懸濁液が得られた方法(バッチ式又は連続操作、発酵ブロースの直接の使用又は回収及び、必要により凍結後の、再懸濁)とは独立である。それはまた溶解産物が得られた宿主とは独立である。
中和工程c)が自動化された工程である場合、その適用はプロセシングされたアルカリ溶解された細胞溶液が調製された方法(例えば、バッチ式又は連続的)とは独立である。好ましい実施態様において、コレクタータンクが清澄化工程について記載されたのと同じ方法で設計される。
清澄化工程d)が自動化された工程である場合、その適用はフロックを含むプロセシングされた中和された溶解された細胞溶液が調製された方法(例えば、バッチ式又は連続的)とは独立である。それはまた得られる清澄化された溶解産物が更にプロセシングされる方法とは独立である。
別の実施態様において、第二溶液の流量のみが清澄化反応器を出る溶解産物の流量に調節される。この目的のための混合装置は自動化された溶解工程について記載されたもののようなビーズで充填された装置又は中和工程について記載されたもののような管系であってもよい。最初のクロマトグラフィー工程のための溶解産物の状態調節が必要である場合に、このようなセットアップが使用されてもよい。例えば、硫酸アンモニウムの溶液(又は単に水)がこの方法で添加し得る。
別の実施態様において、その方法はまた中間の濃縮工程を含む。清澄化反応器を出る十分な容積の溶解産物が存在するとすぐに、溶解産物が状態調節及び/又はクロマトグラフィーカラムへの装填の前に、例えば、限外濾過により濃縮される。濃縮は1回以上の通過で行なわれてもよい。後者の場合、濃縮工程そのものが連続様式又はバッチ様式であってもよい。1回のみの通過が行なわれる場合、レテンテート(例えば、pDNAを含む)が続いて直接状態調節されてもよく、又はクロマトグラフィーカラムに装填されてもよい。数回の通過の場合、所望の最終容積/濃度に達するまで、レテンテートが循環され、続いて更にプロセシングされる。この濃縮工程について、通常の装置、例えば、カセット又は中空繊維の形態の膜が使用し得る。好適な膜のカットオフはプロセシングされた生物分子のサイズに依存する。pDNAについて、通常10〜300kDaのカットオフを有する膜が使用される。
好ましい実施態様において、溶解反応器及び中和反応器が組み合わされて2工程自動化系を形成する。この場合、溶解反応器の流出物が自動化された中和工程について記載された様式で中和溶液の流れと連結され、混合される。これにより、ポンプ輸送される中和溶液の流量が溶解反応器の流出物の流量に調節される。
別の好ましい実施態様において、中和反応器及び清澄化反応器が組み合わされて2工程自動化系を形成する。この場合、中和反応器の流出物が本発明の自動化された清澄化反応器と連結される。この場合、圧縮空気の圧力は反応器の流出物が一定に保たれるように調節されるべきである。これは液体レベルを一体化フローターにより測定されることにより、又は同様に流れを出口で測定することにより達成されてもよい。また、光バリヤーのようなその他の系が適用可能である。圧力ゲージへの電気接続により、圧力が液体レベル又は出口流に従って非段階的に調節し得る。
更に一層好ましい実施態様において、全系が連続系で少なくとも工程b)〜d)の全て及び必要により、更に、工程a)及び/又はe)を使用することにより充分に自動化される。この実施態様において、溶解反応器の流出物が中和装置と直接連結され、中和装置の流出物が清澄化反応器と直接連結される。個々の連結及び装置に関する設計は2工程自動化系について上記されたのと同じである。
最も好ましい実施態様において、充分に自動化された系が任意の自動化された状態調節工程(及び装置)に連結される。この実施態様は清澄化反応器から出る清澄化された溶解産物と状態調節溶液(例えば、硫酸アンモニウム溶液)との連続混合を可能にする。上記のように、このような状態調節工程はその後の(クロマトグラフィー)精製工程(例えば、疎水性相互作用クロマトグラフィー)のためにポリヌクレオチド含有溶解産物を調製するのに必要であるかもしれない。
このような状態調節工程の追加は連続の4工程系への自動化された3工程系の延長をもたらす。この実施態様において、状態調節溶液は装置(これは溶解反応器と同じ型のものであることが好ましい)を使用して清澄化された溶解産物と連続的に混合し得る。この装置はせん断力に感受性であるポリヌクレオチドを含む溶液の連続混合に最も穏やかであるとわかった。更にまた、その他の装置(例えば、中和工程について記載されたような)、例えば、通常のスタチックミキサーがこの目的に利用し得る。状態調節溶液をポンプ輸送するポンプの流量は流れ測定ユニットを設置することにより清澄化反応器の流出物の流量に調節し得る。ポンプはこのユニットと連結でき、こうして調節されて、2種の混合された溶液の流量の比を一定に保つ。
本発明の更に別の実施態様において、限外濾過工程が追加される。自動化された3工程系のこのような延長により、その方法は連続の4工程系に相当する。この実施態様において、先の工程の得られる溶解産物が限外濾過により濃縮される。透過物が捨てられ、一方、レテンテートが状態調節工程及び/又は装填工程(これは一つ又は二つの追加の工程による連続系の延長を意味する)により直接に更にプロセシングされ、又は所望の最終濃度/容積に達するまで循環される。後者の場合、濃縮が終了された後に、得られる濃厚物が更にプロセシング(状態調節及び/又は装填)される。
別の実施態様において、清澄化反応器から流出する溶解産物がクロマトグラフィーカラムに直接装填されてもよく、又はそれは状態調節(その後のオンライン濾過を用い、又は用いないで)後にカラムに装填されてもよい。
自動化された清澄化工程を利用する全ての記載された実施態様において、得られた透明にされた溶解産物が好適なタンク中に集められてもよく、又は直接に更にプロセシングされてもよい(例えば、清澄化反応器の流出物をクロマトグラフィーカラムに連結することにより)。状態調節工程がこの自動化された方法に使用される場合、状態調節された溶解産物が好適なタンク中に集められ、又は直接に更にプロセシングし得る。
本発明の方法及び装置は溶液をポンプ輸送するのに使用されるポンプとは独立である。特別な実施態様において、幾つかの懸濁液及び溶液の流れがポンプに代えて加圧容器中の空気圧により得られる。
これらの利点のために、本発明の方法及び装置は医薬等級のpDNAのcGMP(現行の良好な製造慣例)生産に適している。その方法はpDNAのあらゆる起源、例えば、あらゆるバクテリアの細胞起源に適合し得る。特にその系の性質のために、本発明の方法は大容積の速いプロセシングを可能にし、これは細胞溶解産物をプロセシングするのに大いに重要である。溶解産物は種々のpDNA分解物質、例えば、DNAseを含むので、プロセス時間が高い生成物品質及び収率の鍵である。
本発明の方法及び装置はヒト及び動物における使用、例えば、ワクチン投与及び遺伝子治療適用のためのpDNAの生産に適している。その高い生産性のために、その方法は前臨床物質及び臨床物質の生産だけでなく、認可製品の市場供給のために使用し得る。
パイロット規模の実験のためのpDNA含有E. coliバイオマスを下記の操作に従って20l又は200lの発酵規模で生産した(この記載は20lの発酵に関する)。
a) 前培養
プラスミドpRZ-hMCP1の生産株の作用細胞バンク(エシェリキア・コリK12 JM108; ATTC no. 47107; プラスミドサイズ:4892 kbp)を-70℃で低温バイアル(グリセロール保存液)中で管理した。作用細胞バンクの低温バイアルを室温で15分間にわたって解凍し、その200μlのアリコートを200mlのオートクレーブ処理した前培養培地(組成(単位:gL-1):植物ペプトン/オキソイド13.5;バクト酵母エキス/ジフコ7.0;グリセロール15.0;NaCl 1.25;MgSO4*7H2O 0.25;K2HPO4 2.3;KH2PO4 1.5)を含む1000mlの振とう三角フラスコ中で接種した。前培養液を37℃±0.5℃で150rpmで1-1.5の光学密度(OD 550)までインキュベートした。
b) 発酵槽調製
30lの全容積の発酵槽(連続撹拌タンク反応器)を発酵に使用した。培地成分の三つ(最終培地中gL-1:植物ペプトン/オキソイド13.5;バクト酵母エキス/ジフコ7;グリセロール15)を発酵槽内で121℃で20分間にわたって加熱滅菌した。発酵槽内容物を<40℃に冷却した後、マクロ元素溶液(最終培地中gL-1:クエン酸三ナトリウム二水和物0.5;KH2PO4 1.2;(NH4)2SO4 5.0;MgSO4*7H2O 8.8;Na2HPO4*12H2O 2.2;CaCl2*2H2O 0.26;NH4Cl 4.0)を発酵槽に滅菌濾過した。シリンジによる滅菌濾過により、1%m/vチアミン溶液5ml及び痕跡元素溶液1.5mlを発酵槽に移した。その痕跡元素溶液は(溶液中gL-1で)CoCl2*6H2O 0.9;CuSO4*5H2O 1.23;FeSO4*7H2O 38.17;MnSO4*H2O 1.82;Na2MoO4*2H2O 0.48;NiSO4*6H2O 0.12;ZnSO4*7H2O 5.14からなる。発酵培地に無菌の脱イオン水を20Lの最終作業容積まで入れた。
c) 発酵及び細胞ペーストの回収
200mlの全前培養容積を無菌条件下で発酵槽に移した。培養条件を以下のように設定した:通気速度20l分-1=1vvm;撹拌速度400rpm、37+0.5℃;0.5バール;pH 7.0+0.2)。pH値を5M NaOH及び25%m/v H2SO4で自動的に調節した。溶解された酸素の濃度(DO、pO2)を撹拌速度の自動調節(400-700rpm)により飽和の>20%に維持した。
培養を発酵槽の接種の12時間後に終了した。培養ブロースを<10℃に冷却した後、細胞を氷水で冷却した管遠心分離機中の分離により回収した。得られた細胞ペーストをパッケージングし、-70℃で貯蔵した。
実験を異なる20lバッチ発酵及びfed-バッチ発酵だけでなく、200Lバッチ発酵のpDNA含有E. coliバイオマスで行なった(2種の異なる宿主、4種の異なるプラスミド)。
実施例3の実験が基づく、アルカリ溶解、中和及び清澄化の連続組み合わせのためのパイロット規模の系のセットアップを図7に示す。図6は連続の3工程組み合わせの成分及び基本構造の略図を示す。この図はまた原則として実験規模のモデル(100gまでの湿潤細胞重量;予備実験のために使用された)、その系のスケールアップの別型(6kgまでのバイオマスを取り扱うことができる)、及びcGMP生産系(20kgまでの湿潤細胞重量)に関する。
図6中、1は三つの同様のポンプであり、これらは細胞懸濁液(I)、溶解溶液(II)及び中和溶液(III)を輸送する。2はT連結としてつくられた第一の出会い位置である。3は直径5mmのガラスビーズで充填された溶解反応器(内径:6cm、高さ45cm)を示す。4は再度T連結としてつくられた、第二の出会い位置を示す。5は中和反応器(内径12.5mm及び長さ3.5mのコイル状ポリプロピレン管)を示す。6は内径180mm及び高さ500mmのガラスシリンダーとしてつくられた清澄化反応器を示す。中央に、スロット付きのステンレス鋼管が入ってくる溶液を分配するために組み入れられる。清澄化反応器の上部に、加圧ガス及び圧力ゲージのための連結が配置される。清澄化反応器の下部に、保持材料(ガラスビーズ;直径0.75-1mm)が4-5cmの高さまで充填される。清澄化反応器の出口がその系の保持層7の隣にある。8はコレクタータンクであり、それは清澄化反応器から出る透明にされた溶解産物を集める。9は流路を変えて系の脱気及び清澄化反応器中のフロックの洗浄を行なうための通常の3方弁である。
上記操作(実施例1)に従って調製された、湿潤バイオマス990gを、室温(羽根車撹拌機)でガラス容器中で1時間混合することにより、pH 8で0.05Mトリス-HCl、0.01M EDTAを含む緩衝液10l中で再懸濁させた。
その後のプロセスを開始する前に、懸濁液及び溶液を3個のポンプでポンプ輸送することにより、溶解反応器及び中和反応器を脱気した。その後、全ての三つのポンプ(再懸濁されたバイオマスのためのポンプI、溶解溶液のためのポンプII及び中和溶液のためのポンプIII)を同時に始動させ、同じ流量(150ml/分)に調節して、夫々の反応器(溶解反応器、中和反応器)中の細胞と溶解溶液及び溶解された細胞溶液と中和溶液の所望の接触時間を得た。
それにより、再懸濁された細胞が第一出会い位置で溶解溶液(0.2M NaOH、1%SDS)と接触した。続いて、ガラスビーズを通すことにより、得られる流れを溶解反応器中で均一に混合し、接触させた(1.5-2分)。中和反応器から出た直後に、今溶解された細胞溶液を第二出会い位置(Tコネクター)で中和溶液(pH 5.5の3M酢酸カリウム)と接触させた。両方の流れを後の中和反応器中で均一に混合し、接触させた(1-1.5分)。次いでpDNA含有溶解産物及び沈殿した不純物(フロック)の混合物を特別の設計装置の下に穏やかに流すことにより清澄化反応器に輸送した。この方法で、混合物が反応器の下部中の保持材料に達する。その後、混合物を反応器中に既に存在する溶解産物/フロック混合物の表面に分配し、フロックの大半が浮遊している。清澄化反応器を10cm(保持材料の上)まで充填する時、反応器の出口(これは今まで閉じられていた)を開けて透明にされた溶解産物を出口で回収した。それにより、フロックを保持材料により保持する。そのプロセスを促進するために、加圧空気を導入することにより、圧力を段階的に増大し(0.25バール/2lの溶解産物)、反応器からの一定の流出を確実にした。終了時に、その系中の残留細胞を溶解された細胞の形態で回収するために系を1lの夫々の溶液(細胞を含まない)で洗浄した。清澄化反応器中の残留混合物を最大2バールの圧力に暴露し、溶解産物を最大の可能な程度まで回収し、一方、フロックが反応器中に留まった。また、フロック間のpDNA含有溶解産物を回収するために、穏やかな洗浄操作を適用した。中和溶液を清澄化反応器の出口から装置そして沈殿中にポンプ輸送した。この後に、フロック及び洗浄溶液の混合物を2バールまでの過剰圧力に暴露することによりフロックを排出した。洗浄フラクションを含む透明にされた溶解産物を幾つかのその後のクロマトグラフィー工程(HIC、80mlのCIM(登録商標)管を使用するAIEC及びSEC)により更にプロセシングした。分析をHPLCにより行なった。基準サンプルとして、湿潤バイオマス1gに等しい再懸濁された細胞のアリコートを通常の実験規模の操作に従って小さい管中で溶解し、中和し、清澄化を遠心分離(12.000g)により行なった。このサンプルを使用してパイロット規模の方法の収率を計算し、均一性(平滑性及び品質に関する基準)を比較した。加えて、pDNA溶液の純度を推定することができた(HPLC)。
基準溶解産物及び連続系から得られた溶解産物の比較(表1)は実験規模の溶解(これは非常に穏やかであることが知られている)、及び新規パイロット規模の系の結果が匹敵したことを示す。
スケールアップした系及びcGMP生産のための系の原理構造は実施例2に記載されたパイロット規模の系と同様である。図8はスケールアップした系を示し、一方、図9はcGMP生産系を示す。系の寸法を、多量の再懸濁された細胞がプロセシングされる必要がある場合に、線速度、接触時間及びプロセス時間のような主要パラメーターがパイロット系に匹敵する範囲に保たれるように適合した。
スケールアップした系のステンレス鋼溶解反応器は10cmの内径及び70cmの高さを有する。中和反応器は内径19mm及び長さ900cmのポリプロピレン管であり、一方、清澄化反応器は内径45cm及び高さ50cmのガラスシリンダーとしてつくられる。
生産系の溶解反応器を内径11cm及び高さ84cmのステンレス鋼シリンダーとしてつくった。中和コイルは内径25.4mm及び長さ900cmのポリプロピレン管からつくられる。このセットアップにおいて、清澄化反応器はまたステンレス鋼からなる。内径60cm及び高さ65cmのシリンダーをCIPable(CIP=適所の洗浄)変型としてつくった。
両方の系は清澄化反応器中にフラッシング装置を備えて、反応器が洗浄される前に反応器のフロックの大半を除去する。加えて、安全性の理由のために、系は破裂ディスクを備えている。生産系は特に衛生使用及び洗浄のために設計される。全ての部分はCIPableかつSIPable(SIP=適所のスチーミング)である。
保持材料として、0.75-1mm又は0.42-0.84mmのガラスビーズを使用した。
実施例2及び3の系を延長する選択肢として、その後の工程状態調節、濾過及び捕捉の直接の連続の連結を試験した。疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)がクロマトグラフィー精製順序の最初の工程であったので、溶解産物を硫酸アンモニウムの添加により状態調節して樹脂へのpDNAの結合を得るべきであった。
それ故、実施例3に記載された方法及び実施例2に記載された装置により得られた(実施例1に従って生産された、湿潤細胞ペースト約250gの)溶解産物を回収容器中で回収した。充分な容積の清澄化された溶解産物がこの容器中に存在するとすぐに、自動化された状態調節−濾過−捕捉操作(実施例4に従う)を開始した。
二つの追加のピストンポンプをこの延長されたセットアップで使用した。一つのピストンポンプを使用して透明にされた溶解産物を28mL/分の流量で輸送し、一方、4M硫酸アンモニウム溶液をポンプ輸送する、別のポンプを2倍の速度(56ml/分)に調節した。両方の流れを通常のYコネクターにより連結した。合わせた流れを溶解反応器と同様の混合装置に入れ、充分な均一の混合及び接触を可能にした。混合装置として、内径5mmのガラスビーズで充填された、内径2.6cm及び長さ100cmの管を使用した。接触時間(ここでは、約2.5分)をこの状態調節反応器中の流量及び反応器内の自由体積により特定した。この状態調節操作中に、RNA及びその他の不純物(例えば、エンドトキシン)の沈殿が起こった。粒子を含まない溶液をクロマトグラフィーカラムに装填するために、フィルター(4.5μmの細孔サイズ)を状態調節反応器の出口と連結し、こうしてオンライン濾過を得た。フィルターから出る透明な溶液(pDNAを含む)をトヨパール・ブチル650Mで充填されたクロマトグラフィーカラム(内径7cm、床の高さ25cm)に直接かつ連続的に装填した。これらの条件下で、pDNAは樹脂に結合しており、これを溶離(全体の状態調節された溶解産物が装填された後そしてその後の適当な緩衝液による“洗浄”工程後に行なわれた)中に不純物の大半から分離した。結果が図12中に得られるHICプールのHPLCクロマトグラムとして示される。不純物を約45%に減少することができ、oc pDNA(前に10%付近)が殆ど分離された。
連続の3工程系のスケールアップ可能性を示すために、6kgまでの湿潤細胞ペーストについて可能なスケールアップした系(実施例4に記載された)を使用して実施例1に従って200L発酵で生産された湿潤細胞ペースト5.4kgをプロセシングする清澄化された溶解産物を調製した。54.4lの再懸濁緩衝液中の既に凍結されたバイオマスの再懸濁及び系の脱気後に、溶解、中和及び清澄化を実施例3に記載されたような方法で行なった。ポンプを0.5l/分に調節して溶解及び中和反応器中で1-1.5分の接触/混合時間を得た。得られるフロック溶解産物混合物を清澄化反応器中で分離し、そこでフロックが浮遊しており、これらを保持材料(0.42-0.84mm)により保持した。そのプロセスの終了時に、清澄化反応器中の保持されたフロックを両側から1l/分の流量で0.017Mトリス-HCl、0.003M EDTA、0.067M NaOH及び1M酢酸カリウムを含む緩衝液で洗浄した。最後に2.3バールの過剰圧力(加圧空気)を適用することにより、フロックを排出した。結果が図13中に分析HPLCクロマトグラムとして示される。得られた清澄化された溶解産物を状態調節工程(濾過を含む)及び捕捉(HIC)により更に(段階的に)プロセシングした。図14は最初のクロマトグラフィー工程からのプールの分析HPLCクロマトグラムを示す。溶解産物の均一性は約93.5%であり、推定純度(HPLCによりおよそ推定される)は約10%であり、一方、HICプールは約94%の均一性及び約92%の推定純度を示した。
溶解産物の濃縮は状態調節及びカラム装填の期間に必要とされる4M硫酸アンモニウム溶液(HICがその後のクロマトグラフィー工程である場合)の容積の減少をもたらす。清澄化された溶解産物をアメーシャム・バイオサイエンシズの中空繊維膜(UFP-100-E4X2MA、クイックス・スタンド)(100kDaカットオフ)で濃縮した。
この実施例について、実施例1に記載された方法により得られたバイオマス70gを実験規模の系(ポンプ:15ml/分;接触時間:約1分)中で実施例2中の記載に従ってプロセシングした。得られる溶解産物をガラス容器中に回収した。ガラス容器をぜん動ポンプと連結して限外濾過膜を供給した。溶解産物100mlをガラス容器中に回収した後、限外濾過を開始し、連続的に続けた。それ故、ポンプ速度及びトランスメンブラン圧力(約0.3-0.4バール)を、透過物及びレテンテートが同様であり(夫々20ml/分)、レテンテート中で2倍のpDNA濃縮係数をもたらすような方法で調節した。得られたレテンテートが分析HPLCクロマトグラムとして図15に示される。溶解が50分(フロックの洗浄なし)を要し、一方、平行の濃縮が約60分を要した(溶解産物から流出しないことを確実にするため)。レテンテートを中間の容器(これはその後の連続工程状態調節、濾過及び捕捉(これらは実施例5に記載されている)のための供給タンクとして使用された)中で回収した。それ故、ポンプ輸送された濃縮された溶解産物(レテンテート)の流量を15ml/分に調節し、また硫酸アンモニウム溶液について30ml/分に調節した。捕捉に使用したカラムは5cmの内径及び25cmの床の高さを有していた。
Claims (28)
- 自動化または半自動化された装置を使用して宿主細胞から目的とする生物分子を精製する方法であって、前記装置は互いに流体的に連結された溶解反応器、中和反応器及び清澄化反応器を含み、前記方法は、
a)目的とする生物分子を生成するために培養された宿主細胞の細胞懸濁液を提供する工程であって、細胞懸濁液は、宿主細胞が培養された発酵ブロース、又は、前記発酵ブロースから回収された培養された宿主細胞の再懸濁液である、前記工程、
b)細胞懸濁液の流れ及び溶解溶液の流れを溶解反応器に導入する工程であって、溶解反応器は、ガラス、プラスチック、ステンレス鋼または繊維材料から作製された充填要素を有し、細胞懸濁液の流れ及び溶解溶液の流れは、溶解反応器中の充填要素の中を流れることにより均一に混合され、それにより目的とする生物分子の不可逆的な変性が回避され、培養された宿主細胞は、溶解反応器内でアルカリ溶解によりせん断力の不存在下で崩壊されて溶解細胞溶液を生成する、前記工程、
c)中和反応器を通して溶解細胞溶液を輸送する工程であって、中和反応器はコネクター装置及び管系からなり、溶解された細胞溶液は中和溶液と、両溶液をコネクター装置により合わせることにより混合されて溶解産物、及び、細胞デブリ及び不純物を含む沈殿、を含む混合物を生成し、かつ、溶解産物は目的とする生物分子を含む、前記工程、
d)沈殿及び溶解産物を含む混合物を清澄化反応器に導入する工程であって、目的とする生物分子を含む溶解産物は沈殿から分離され、沈殿及び溶解産物を含む混合物は清澄化反応器に流され、かつ、清澄化反応器は保持層を有し、該保持層は、沈殿は保持するが溶解産物は清澄化反応器から流れ出るように作用する、前記工程、及び、
e)目的とする生物分子を精製する工程であって、目的とする生物分子は清澄化反応器から流れ出る溶解産物から精製される、前記工程
を含み、
製造規模で操作される、前記方法。 - 充填要素が粒状材料である、請求項1記載の方法。
- 粒状材料がビーズからなり、各ビーズは1〜100mmの直径を有する、請求項2記載の方法。
- 各ビーズが同じ直径を有する、請求項3記載の方法。
- 溶解反応器が粒状材料で実質的に完全に充填されている、請求項2記載の方法。
- 粒状材料がガラスビーズからなる、請求項2記載の方法。
- 保持層が粒状材料を含む、請求項1記載の方法。
- 保持層の粒状材料がガラスビーズからなる、請求項7記載の方法。
- 保持層が硬質保持材料を含む、請求項1記載の方法。
- 硬質保持材料が焼結プレートを含む、請求項9記載の方法。
- 清澄化反応器が上部及び下部を有し、保持層が清澄化反応器内の上部と下部の間に配置され、
沈殿及び溶解産物を含む混合物が清澄化反応器の上部に入り、溶解産物が清澄化反応器の下部から出て、沈殿は保持層によって清澄化反応器内に保持され、
工程d)で、増大する圧力を清澄化反応器の上部から沈殿及び溶解産物を含む混合物に適用し、それにより清澄化反応器の下部からの溶解産物の一定の流出を確実にする、請求項1記載の方法。 - 保持層が、清澄化反応器の上部に面する上部、及び、清澄化反応器の下部に面する下部を有し、前記保持層は、沈殿を保持材料の上部及びその中に保持しながら、精製された溶解産物が清澄化反応器から流れ出るように作用する、請求項11記載の方法。
- 圧力ガスを適用することにより圧力を増大する、請求項11記載の方法。
- 加圧空気を適用することにより、圧力を増大する、請求項13記載の方法。
- 一つ以上の洗浄工程を工程d)とe)の間に挿入する、請求項1記載の方法。
- 細胞懸濁液の流れと溶解溶液の流れを、溶解反応器に入る前は、積極的には混合せずに単に合流させ、こうして溶解反応器中の、充填要素に流入する場合に均一に混合されている単一の流れを溶解反応器内に形成する、請求項1記載の方法。
- 細胞懸濁液と溶解溶液を二つの独立の流れの形態で溶解反応器に導入する、請求項1記載の方法。
- 前記二つの流れをTコネクター又はYコネクターを通して連結された独立した源から導入し、それにより単一の流れを形成する、請求項17記載の方法。
- 前記二つの流れを特定の流量の比で輸送し(流量は圧力又はポンプにより制御される)、それにより細胞懸濁液容積と溶解溶液容積の一定の比を確実にする、請求項17又は18記載の方法。
- 工程c)で、工程b)で得られた溶解された細胞溶液を連続様式で中和溶液と混合する、請求項1記載の方法。
- 溶解された細胞溶液と中和溶液を一定の流量の比で合わせる、請求項20記載の方法。
- 濃縮工程、及び/又は、清澄化反応器からの溶解溶液の塩組成、導電率及び/又はpH値を調節する工程を工程d)と工程e)の間に挿入する、請求項1記載の方法。
- 濃縮工程、及び、清澄化反応器からの溶解溶液の塩組成、導電率及び/又はpH値を調節する工程が挿入され、かつ、前記濃縮工程を前記調節する工程の前に行なう、請求項22記載の方法。
- 目的とする前記生物分子がポリヌクレオチドである、請求項1記載の方法。
- ポリヌクレオチドがプラスミドDNAである、請求項24記載の方法。
- 加えて、工程a)を工程b)に連結されることにより連続様式で行なう、請求項1記載の方法。
- 工程a)で得られた細胞懸濁液を低温ペレット化する、請求項1記載の方法。
- 一つ以上の分配装置が清澄化反応器内に配置されて保持層の表面に達し、前記一つ以上の分配装置は、工程c)で得られた沈殿及び溶解産物を含む混合物を、工程d)の清澄化反応器内に均等に分配する、請求項1に記載の方法。
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