JP4698020B2 - 薬剤収納容器 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、プレフィルドシリンジに関する。更に詳しくは、薬剤と接触する少なくとも一部の表面にパリレン層が形成されたプレフィルドシリンジに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より薬剤収納容器にはガラス製バイアル瓶が用いられている。しかしながらガラス瓶では輸送中や取り扱い中の落下事故により破損したり、重いため搬送者、医療従事者に肉体的、精神的負担を与えるものであった。
この問題点の解決策として容器のプラスチック化があり、輸液関係の薬剤についてはかなりの部分がガラス製容器からプラスチック容器へ変換されているのが現状である。
一方、近年、シリンジの先端部を封止したシリンジ内に薬液や注射液を充填し、さらに一方をガスケットで封止した状態で輸送、保管し、投与の際にはシリンジ先端部に注射針もしくは投与用器具を取り付け、ガスケットを押し込みシリンジ内を摺動させることにより薬液や注射液を流出させ、投与が可能ないわゆるプレフィルドシリンジが使われ始めている。
プレフィルドシリンジは、操作が非常に簡便であること、既に薬液と用量が設定されているため誤用なく正確な投与が可能であること、緊急の場合においても薬剤の調整を行う必要がないため細菌の感染を回避できることなど、多くの利点を有しており、近年の医療現場においては治療の効率化、医療過誤、細菌汚染防止などの観点から、各種薬剤のプレフィルド化が望まれてきている。
しかしながら、プレフィルドシリンジは輸送、保管時には高い気密性を要求されると同時に、薬液投与時には密閉していた部位を摺動させる必要があり、気密性と良好な摺動性という相反する機能が要求される。
【0003】
薬剤収納容器のプラスチック化において最も問題になる点は、薬剤が容器に吸着する事による力価低下である。既にニトログリセリンやシクロスポリンおよびベンゾジアゼピン系薬物などの脂溶性の高い多くの医薬品は各種医薬品容器や輸液セット中で含量低下をおこすことが報告されており、注射液と医療用具との相互作用が問題となっている(ジャーナル オブ ファーマシューティカル サイエンス 71,55−59 1982、アメリカン ジャーナル オブ ホスピタル ファーマシー 41,142−144 1984、アメリカン ジャーナル オブ ホスピタル ファーマシー 43,94−97 1984、アメリカン ジャーナル オブ ホスピタル ファーマシー 40,417−423 1983、病院薬学、2,1996 167−1996)。
特に硝酸イソソルビル(ISDN)注射液やニトログリセリン(GTN)注射液は重症狭心症、心筋梗塞、急性心不全、心臓外科手術時の術中、術後の管理などに使用される薬剤であり、投与量の正確なコントロールが要求されている。
また、最近では鬱血症状の強い患者には摂取水分量を増加させたくないとの理由から、精密自動点滴装置を用い、これらの注射液を原液で使用する場合が増えてきている。
このようなことから、容器中で医薬品の含量低下(いわゆる力価低下)が起きない薬剤収納容器が要求され、加えてプレフィルドシリンジにおいては輸送、保管時の高い気密性と実際の使用時のガスケット部の良好な摺動性が要求される。
この薬剤吸着の問題から薬剤吸着を起こしやすい薬剤については依然ガラス製容器、或いはガラス製プレフィルドシリンジが用いられ、上述の医師、看護婦をはじめ搬送者に多大の肉体的、精神的負担を強いているのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は従来より使われている薬剤吸着性の高い薬剤に対し使用されているガラス製バイアル瓶、プレフィルドシリンジをはじめとした各種薬剤収納容器の作業性の悪さ(破損しやすい、重い)をプラスチック化により克服しようとするものある。即ち特定のプラスチック材料からなる収納容器本体と弾性を有する蓋材からなる薬剤収納容器において薬剤と接触する部位の少なくとも一部ににパリレンンを被覆することにより、輸送、保管中等に薬剤の力価もしくは実質的に有効な薬剤量の低下が抑制されたプラスチック製薬剤収納容器を提供することにある。さらに本発明は、これまでに実用化できずにいた薬剤吸着性の低いシリンジ容器を提供することにある。尚、薬剤収納容器にパリレンを使用した技術は特公平3−58742号に開示されているが、ここでは弾力性蓋部材にパリレンコートをする事で該蓋部材からのカルシウムイオンやアルミニウムイオンなどの金属イオンの溶出を防ぐ事のみが開示されており、薬剤吸着を防ぐ技術は全く開示されていない。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜()の本発明により達成される。
(1) 先端を開封可能に封止され後端に開口部を有する合成樹脂製のシリンダーと、シリンダーの後端の開口部を閉塞するシリンダー内で摺動可能なガスケットを有するシリンジの内部に薬理学的に有効な物質を含有する液体を収容したプレフィルドシリンジであって;
前記合成樹脂製のシリンダーが、ポリプロピレンまたは環状ポリオレフィンからなっており;
前記薬理学的に有効な物質が、ニトログリセリン、硝酸イソソルビドおよび塩酸ニカルジピンからなる群のいずれかであり;
ガスケットの液体と接触する表面の全てがパリレン層覆われており;
シリンダーとガスケットとがパリレン層を介して接触する構造を有し;かつ、
前記液体をシリンダーに充填する時点での当該液体中の薬理学的に有効な物質の量(a)と、当該液体をシリンダーに充填してガスケットにて密閉して得たプレフィルドシリンジを40℃で6ヶ月保存した時の液体中の薬理学的に有効な物質の量(b)との比(b/a)×100(維持率)が90%以上である;
ことを特徴とするプレフィルドシリンジ。
(2) 上記(b)を求めるための40℃で6ヶ月の保存を液体がガスケットに接触する状態で行ったものである上記(1)に記載のプレフィルドシリンジ。
(3) パリレン層の厚みが1〜30μmである上記(1)または(2)に記載のプレフィルドシリンジ。
(4) パリレン層が、下記の化学式1で示されるパリレンNからなる上記(1)〜(3)のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
【0006】
【化2】
Figure 0004698020
【0007】
(5) ガスケットがゴム又はエラストマーからなる弾性体である上記(1)〜(4)のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ。
【0009】
本発明において、シリンジに充填されたニトログリセリン、硝酸イソソルビドおよび塩酸ニカルジピンのいずれかからなる薬理学的に有効な物質を含有する液体中の当該薬理学的に有効な物質の量の定量は、液体クロマトグラフィーにより行ったものであり、該液体をシリンジのシリンダーに充填する時点の前記液体中の前記薬理学的に有効な物質のチャート面積と、ガスケットにて密封された状態でプレフィルドシリンジを40℃で6ヶ月保存した時点での前記液体中の前記薬理学的に有効な物質のチャート面積との面積比を求め、当該薬理学的に有効な物質量(%)とした。なお、薬理学的に有効な物質を含有する水溶液がニトログリセリン水溶液である場合は、ニトログリセリン水溶液中のニトログリセリン濃度は0.5mg/mLとし、ニトログリセリンとしては日本化薬製、ミリスロール注を用いた。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の薬剤収納容器を容器としては形状の最も複雑なプレフィルドシリンジに限定し、以下に示す概略図に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、ゴム栓付きのバイアル瓶をはじめとし輸液バッグ等に見られる各種弾性体を蓋材とした薬剤収納容器を含めるものである。図1および図2にシリンジの断面図を示すが、これはあくまでもシリンジ形状の1例であり本発明のシリンジ容器がこれに限定されるものではない。本図においてシリンダー2が本発明における薬学的に有効な物質を含有する液体を収納する容器に該当し、ガスケット4が該容器と共に使用される蓋材に該当する。シリンジ1はシリンダー2とプランジャー3とこれの先端に位置するガスケット4からなり、シリンダー2の内部には薬液を保管するための空間22とその先端には薬液を吸入・排出するため開口部21が形成されている。また、図1および図2においてはガスケット4は本体41とその表面に存在するパリレン層42からできている。また、プレフィルドシリンジの場合、空間22と外界とを隔てるシール材5が開口部21に容易に剥離可能な状態で固定されている。該シール材5は後述するシリンダー2と同様の材質を用いることができる。
【0011】
シリンダー2は、その先端に薬液や血液などの液体を吸入・排出するための開口部21が突出形成された円筒体からなり、基端側には開口部の周囲に鍔23が形成されている。
このシリンダー2は、ポリオレフィン系合成樹脂、ポリエステル系合成樹脂、等の合成樹脂で形成されている。これらのうち、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、非晶性ポリアリレート等のポリエステル等の光学的に透明でかつ110℃以上のガラス転移点又は融点を有する材料で形成されることが好ましい。特にポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)、環状ポリオレフィン、ポリエチレンナフタレートが、透明性、蒸気滅菌性、薬剤非吸着性の点で望ましい。これらの材料はシリンダーに限らず本発明を構成する薬学的に有効な物質を収納する容器に共通して使用出来るものである。更に薬剤収納容器がバッグ形状である場合は、上記材料の他さらにPP系或いはPE系等のエラストマーが使用出来る。又、該容器において薬剤が接するすべての面をパリレンにてコートする場合は上記樹脂に限らず各種合成樹脂材料が使用出来る。
【0012】
プランジャー3は、ポリプロピレン等で形成されており、その先端にはガスケット4を着脱可能に固定させる手段を有する。また、該プランジャー3はガスケット4と共に基端方向に移動することにより空間22に薬液や血液を吸入したり、先端方向に移動することで空間22に貯留された薬液や血液を排出する役割を担っている。
ガスケット4は、プランジャー3の先端に嵌合などの手段により着脱可能に固定されており、本体41とその表面に形成されたパリレン層42からなる。このガスケットは、スチレン系エラストマー、水添スチレン系エラストマーや、これにポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、α−オレフィン共重合体などのポリオレフィンや流動パラフィン、プロセスオイルなどのオイルやタルク、キャスト、マイカなどの粉体無機物を混合したものが挙げられる。さらにポリ塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーや天然ゴム、イソブレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料(特に加流処理したもの)や、それらの混合物等が構成材料として挙げられる。中でも、弾性特性、耐蒸気滅菌性などの観点からスチレン系エラストマー、ブチルゴム、シリコーンゴムなどが望ましい。これらの材料はガスケットに限らず本発明を構成する蓋材に共通し使用出来るものである。
【0013】
ここでは図示しないが、プランジャーとガスケットが一体に形成されたシリンジをツー・パーツ・シリンジと言うが、この場合、プランジャーの先端側、すなわち薬液や血液などの液体と接する部分とシリンダーと接する部分が合わさってガスケットを形成することは言うまでもない。このようなツー・パーツ・シリンジの場合、パリレン層42はプランジャー全体に施されても良いし、薬液や血液などの液体と接する部分とシリンダーと接する部分を含むように施しても良い。
【0014】
次に本発明において使用されるパリレンについて説明を行う。
本発明で言うパリレンとは、下記化学式1で示されるベンゼン環に置換基の無いパリレン(以下パリレンN)を基本に、ベンゼン環に各種官能基を導入したもの、ベンゼン環に隣接するメチレン基の水素が置換されたもの等を含むものであり、ベンゼン環上に塩素が導入されたパリレンC(化学式2)、メチル基が導入されたパリレンM(化学式3)およびメチレン基にフッ素が導入されたパリレンF(化学式4)などが挙げられる。
昨今の環境問題を考えた場合、ハロゲン元素を含有しないパリレンNやパリレンMを利用する事が望ましい。更にこれらパリレンをプレフィルドシリンジに利用する場合、ガスケット表面にコーティングすることにより、ガスケットの摺動抵抗が低下するが、実験例に示すようにパリレンNが最も低値である。従って、これらの事を考えあわせると本発明においては容器をシリンジとする場合はパリレンNを使用することがもっとも望ましいといえる。
【0015】
【化3】
Figure 0004698020
【0016】
【化4】
Figure 0004698020
【0017】
【化5】
Figure 0004698020
【0018】
【化6】
Figure 0004698020
【0019】
尚、本発明においては、薬学的に有効な物質を収納する容器と、該容器と共に使用される構造体において、薬学的に有効な物質と接触する少なくとも一部の表面がパリレンに覆われており、かつ該容器と該蓋材とがパリレンを介して接触していればいかなるものであってもかまわない。
したがって、本発明においては前記化学式1〜4に示される各パリレン層が多層にコーティングされたものや、前記化学式1〜4に示される各パリレンに対応するジパラキシリレンモノマーから調製される共重合体としてもしても本発明の効果は発現する。
本発明におけるパリレンのコーティング方法は、図3に示すように3つの工程からなる。
原料の固体二量体のジパラキシリレンの昇華が起こる工程(A)、二量体の熱分解によるジラジカルパラキシリレンの発生が起こる工程(B)、容器や蓋材表面でのラジカルモノマーの重合によるポリパラキシリレン(パリレン)層が形成される工程(C)である。このAからCの各工程における処理条件を以下の表1に示す。
【0020】
【表1】
Figure 0004698020
【0021】
得られたパリレン層は、耐熱性、耐薬品性、気体の遮蔽性に優れており、また気相重合法により形成されるため、複雑な形状を有する部材においてもコーティングが可能となる。さらにC工程においては室温で処理がなされるため、耐熱性の低い材料においても処理が可能となる。したがって本発明のように複雑な形状である容器や蓋材へのコーティングが可能となる。
本発明に使用されるパリレンのコーティング層の厚さは、表1の温度及び圧力とコーティング時間により制御可能であり、本発明においては、効果が顕著に発現されるコート層厚みは通常1μm〜30μm、より望ましくは2μm〜20μmである。1μm未満では薬剤吸着の抑制が十分でなく、30μmより大きくなると、パリレンコート層の剥離と言った問題が生じる。
【0022】
次に薬剤吸着について述べる。
前記したように、ニトログリセリンやシクロスポリンおよびベンゾジアゼピン系薬物などの多くの医薬品は各種医薬品容器や輸液セット中で含量低下をおこすことが報告されており、注射液と医療用具との相互作用が問題となっている(ジャーナル オブ ファーマシューティカル サイエンス 71, 55−59 1982、 アメリカン ジャーナル オブ ホスピタル ファーマシー 41,142−144 1984、アメリカン ジャーナル オブ ホスピタル ファーマシー 43, 94−97 1984、アメリカン ジャーナル オブ ホスピタル ファーマシー 40,417−423 1983、病院薬学、2,1996 167−1996)。
この含量低下については、プレフィルドシリンジにおいても課題であり、輸送、保管時には高い気密性と実際の使用時の良好な摺動性と同時に医薬品容器中での含量低下(いわゆる力価低下)が起きないことが要求される。
パリレンは表2に示すように各種溶媒に対する耐性が高く結晶性が高いため、各種薬剤の医薬品容器表面への吸着が少ないことが推察される。
【0023】
【表2】
Figure 0004698020
【0024】
本発明におけるシリンジとしては、患者への薬剤投与、患者からの血液採取、薬液の混合等に使用される一般用シリンジ、インスリン投与等に使用される微量用シリンジまたは歯科治療時に使用される歯科用シリンジ等、プランジャを押圧し気密保持部を摺動させる操作を伴うシリンジを例示できるが、特にシリンジ内に予め薬液が充填された状態で長期間接液するプレフィルドシリンジが好適に例示できる。
プレフィルドシリンジの場合、シリンダー内には必要に応じ薬液が収納されている。薬液中の薬剤の種類は、特に限定されず、例えば、抗生物質、ビタミン剤(総合ビタミン剤)、各種アミノ酸、ヘパリンのような抗血栓剤、インシュリン、抗腫瘍剤、鎮痛剤、強心剤、静注麻酔剤、抗パーキンソン剤、潰瘍治療剤、副腎皮質ホルモン剤、不整脈用剤、補正用電解質、抗ウイルス剤、免疫賦活剤等、いかなるものでも良いが、特に薬剤吸着が問題となる親油性の薬剤に対し、その能力を発揮する。
【0025】
【実施例】
以下実験例、実施例をあげて、本発明を具体的に説明する。
・摺動性(実験例1〜6、比較例1、2)
シリンジガスケットへの可能性を検討するため、ガスケット基材としてスチレン系エラストマーを、シリンダーの基材としてポリプロピレン、及び環状ポリオレフィンを選択し、シート状サンプルを用いその評価を行った。
スチレン系エラストマー(日本合成ゴム(株)製JSR TR)からなる10mm×10mm×1mmのシートに、表1の条件にてパリレンをコーティングした。得られたサンプルのパリレン厚は、電子顕微鏡(日本電子データム(株)製走査型電子顕微鏡JSM-5300)により測定した。
得られたサンプルの潤滑性を評価するため摩擦係数を測定した。摩擦係数は、表面性測定器(新東科学株式会社製 トライボギアTYPE 14S/14DR)を用いて、該サンプルと他材料表面との間で生成する摩擦抵抗力より算出した。詳しくは、パリレン膜形成サンプルを測定器の可動台に固定し、その上からポリプロピレン(チッソ(株)製チッソポリプロ)、又は環状ポリオレフィン(三井化学(株)アペル)からなるそれぞれのシートを10gの垂直荷重を加えた状態で接触させ、室温にてサンプルを100mm/minの速度で移動させたときの値を測定した。結果を表3に示す。
【0026】
【表3】
Figure 0004698020
【0027】
表3より、パリレンを1μm以上コーティングしたスチレン系エラストマーは、ポリプロピレン、ポリエチレン及び環状ポリオレフィンのすべてに対して、良好な摺動性を示した。
【0028】
・薬剤吸着
(実施例1−10
薬剤の吸着実験の代表例として、容器への吸着、拡散が問題となっているニトログリセリン(日本化薬製、ミリスロール)について比較検討した。20mLのポリプロピレン(チッソ(株)製チッソポリプロ)製或いは環状ポリオレフィン製シリンダーに0.5mg/mLニトログリセリン水溶液を5mL分注し、パリレンをコーティングしたガスケット(朝日ラバー製)で封止後、オートクレーブにて滅菌し、これを40℃のオーブン中にて6ヶ月間保存、加速系での吸着試験を行った。ニトログリセリンの定量は、液体クロマトグラフィーに高速液体クロマトグラフ島津LC−9A(島津製作所社製)を、カラムにInterstil ODS(0.46mmΦ×250mm、ジーエルサイエンス社製)を、検出器に紫外線吸光光度計(at220nm)を、移動相に水/メタノール(2:3)を用いることにより行った。未開封ガラス製アンプル中のニトログリセリンのチャート面積と、各サンプルとの面積比でニトログリセリン量(%)とした。表4に結果を示す。
【0029】
(比較例1−5)
コーティングを行っていないガスケットを実施例1と同様にシリンジ形態でニトログリセリン吸着実験を行った。表4に結果を示す。
【0030】
【表4】
Figure 0004698020
【0031】
(実施例11−13
塩酸ニカルジピン(ベルジピン注射薬、山之内製薬株式会社)について薬剤吸着を実施例1、比較例1と同様に比較検討した。結果を表5に示す。
【0032】
【表5】
Figure 0004698020
【0033】
(実施例14-16、比較例8-9)
硝酸イソソルビド(ニトロール注射薬、エーザイ株式会社)について薬剤吸着を実施例1、比較例1と同様に比較検討した。結果を表6に示す。
【0034】
【表6】
Figure 0004698020
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、輸送、保管中に起きる薬剤の力価もしくは実質的に有効な薬剤量の低下が実用上問題のない容器が提供される。さらに、シリンジ型薬剤収納容器とした時にはパリレン層を有するガスケットとする事で、薬剤低吸着のプラスチック製プレフィルドシリンジが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の薬剤収納容器の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の薬剤収納容器の他の実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明のパリレンのコーティング工程を示す図である。

Claims (5)

  1. 先端を開封可能に封止され後端に開口部を有する合成樹脂製のシリンダーと、シリンダーの後端の開口部を閉塞するシリンダー内で摺動可能なガスケットを有するシリンジの内部に薬理学的に有効な物質を含有する液体を収容したプレフィルドシリンジであって;
    前記合成樹脂製のシリンダーが、ポリプロピレンまたは環状ポリオレフィンからなっており;
    前記薬理学的に有効な物質が、ニトログリセリン、硝酸イソソルビドおよび塩酸ニカルジピンからなる群のいずれかであり;
    ガスケットの液体と接触する表面の全てがパリレン層覆われており;
    シリンダーとガスケットとがパリレン層を介して接触する構造を有し;かつ、
    前記液体をシリンダーに充填する時点での当該液体中の薬理学的に有効な物質の量(a)と、当該液体をシリンダーに充填してガスケットにて密閉して得たプレフィルドシリンジを40℃で6ヶ月保存した時の液体中の薬理学的に有効な物質の量(b)との比(b/a)×100(維持率)が90%以上である;
    ことを特徴とするプレフィルドシリンジ。
  2. 上記(b)を求めるための40℃で6ヶ月の保存を液体がガスケットに接触する状態で行ったものである請求項1に記載のプレフィルドシリンジ。
  3. パリレン層の厚みが1〜30μmである請求項1または2に記載のプレフィルドシリンジ。
  4. パリレン層が、下記の化学式1で示されるパリレンNからなる請求項1〜3のいずれか1項に記載のプレフィルドシリンジ。
    Figure 0004698020
  5. ガスケットがゴム又はエラストマーからなる弾性体である請求項1〜4のいずれか1項に記載のプレフィルドシリンジ。
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