JP4691826B2 - カルボキシル基含有ポリフマレート、製造方法および用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルカリ溶解性および耐熱性に優れたカルボキシル基を有するポリフマレートおよびその製造方法、並びに各種の感光性樹脂組成物用アルカリ現像性ベース樹脂に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリフマレートが本質的に有する耐熱性を保持しながら、ポリマー骨格中にカルボキシル基を導入する方法としては、アクリル酸、フマル酸、イタコン酸などのカルボキシル基を有する単量体とフマレートとを共重合する方法が考えられる。
しかしながらフマレートは前記カルボキシル基を有する単量体との共重合性が乏しいため、カルボキシル基を実用的レベルまで導入した共重合体を得ることができなかった。
【0003】
一方、感光性樹脂組成物を用いたフォトレジストにより各種素材に微細な画像を形成する方法が、印刷用刷版、電子材料、金属加工などの分野で多用されている。
それらの用途の中で露光・現像により形成したフォトレジストの画像を膜として残す永久レジストとしては、1)プリント配線板に電子部品をはんだ付けをする前工程で使用され、はんだ付けをする部分を除く回路導体の全面に皮膜形成されるソルダーレジスト、2)各種印刷に用いる感光性刷版用レジストなどがある。
【0004】
永久レジストの開発当初のものは溶剤現像性のものが主流であったが、廃溶剤の処理コストや職場・地域の環境問題への対応のために、現在使用されているものはアルカリ現像性のものが主流となってきている。
【0005】
前記アルカリ現像性レジスト用の感光性樹脂組成物に用いるアルカリ現像性ベース樹脂としては、例えば、不飽和結合とカルボキシル基を有する重合体(特開平5−202330号公報)、ノボラック型エポキシ樹脂、アクリル酸および多塩基酸の無水物の反応物よりなる重合体(特開平3−71137号公報)、ヒダントインエポキシ樹脂とアクリル酸との反応物に多塩基酸を反応させたもの(特開平4−345608号公報)、スチレン系単量体およびカルボン酸含有単量体を含む重合体(特開平10−26829号公報、特開平10−10734号公報)が開示されている。
【0006】
ところが、これらの従来技術によるアルカリ現像性ベース樹脂は、優れたアルカリ現像性を示すが、種々の永久レジストで要求される更なる耐熱性の向上が不十分であった。たとえば、ソルダーレジストの技術分野では、今後鉛フリーのはんだ付けに対応できるような高度な耐熱性の要求に対して必ずしも十分満足できる耐熱性の性能が得られていないのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来技術に存在する問題に着目してなされたものである。本発明の目的は、アルカリ溶解性および耐熱性に優れたカルボキシル基を有するポリフマレートおよびその製造方法、並びに前記ポリフマレートを用いた感光性樹脂組成物用アルカリ現像性ベース樹脂を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記問題点に鑑み鋭意検討した結果、フマル酸ジエステルとブロックカルボン酸基を有する重合性単量体を重合した後、脱ブロックする方法により、優れた耐熱性、アルカリ現像性を有するポリフマレートが得られることの知見を得て、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は次の[1]〜[5]である。
【0009】
[1](A)下記式(1)で表されるフマル酸ジエステルに基づく構成単位と(B)下記式(2)で表される繰り返し構成単位、下記式(5)で表される繰り返し構成単位および下記式(6)で表される繰り返し構成単位からなるブロックカルボン酸に基づく構成単位群から選ばれる1種以上の構成単位とからなる共重合体前駆体を脱ブロック反応することにより得られるカルボキシル基を有するポリフマレートである。
【0010】
【化17】
【0011】
(ただし、式中のX1およびX2は同一でも異なっていてもよく、炭素数3〜8の分岐アルキル基もしくは置換分岐アルキル基、または炭素数4〜8のシクロアルキル基もしくは置換シクロアルキル基を表す。)
【0018】
【化20】
【0019】
(ただし、式中のY1およびY2は同一でも異なっていてもよく、炭素数3〜8の分岐アルキル基もしくは置換分岐アルキル基、または炭素数4〜8のシクロアルキル基もしくは置換シクロアルキル基を示し、分子中のY1またはY2の少なくとも一方は下記式(3)で表される基を示す。)
【0020】
【化21】
【0022】
(ただし、式(3)中のR1、R2およびR3はそれぞれ水素原子もしくは炭素数1〜18の有機基であり、R4は炭素数1〜18の有機基であり、そしてZ1は酸素原子またはイオウ原子である。)
【0023】
【化23】
【0024】
(ただし、式中のY1およびY2は前記式(2)と同じものを表す。)
【0025】
【化24】
【0026】
(ただし、式中のY3は下記式(3)で表される。またDはベンジル基であり、nは0または1であり、Eは水素原子またはメチル基を表す。)
【0027】
【化25】
【0029】
(ただし、式(3)中のR 1 、R 2 、R 3 、R 4 およびZ 1 は前記と同じものを表す。)
【0030】
[2] 分子量が1,000〜300,000で、かつその酸価が50〜250mgKOH/gである上記ポリフマレートである。
[3] 分子中に(A)、(B)成分が70重量%以上で、(A)成分が50〜950.5〜0.95重量%であり、分子量が5,000〜200,000で、その酸価が70〜200mgKOH/gである上記ポリフマレートである。
[4] 前記第1〜3の発明のいずれかに記載のカルボキシル基を有するポリフマレートの製造方法であって、下記の第1および第2の工程からなることを特徴とするポリフマレートの製造方法である。
第1の工程:下記式(7)で表されるフマル酸ジエステルと、下記式(8)で表される重合性単量体、下記式(9)で表される重合性単量体および下記式(10)で表される重合性単量体からなる群から選ばれる1種以上の重合性単量体とを共重合することにより共重合体前駆体を得る、
第2の工程:第1の工程で得られた共重合体前駆体を脱ブロック反応する。
【0031】
【化27】
【0032】
(ただし、式中のX1およびX2は同一でも異なっていてもよく、炭素数3〜8の分岐アルキル基または置換分岐アルキル基、または炭素数4〜8のシクロアルキル基もしくは置換シクロアルキル基を表す。)
【0033】
【化28】
【0034】
(ただし、式中のY1およびY2は同一でも異なっていてもよく、炭素数3〜8の分岐アルキル基もしくは置換分岐アルキル基、または炭素数4〜8のシクロアルキル基もしくは置換シクロアルキル基を示し、分子中のY1またはY2の少なくとも一方は下記式(3)で表される基を示す。)
【0035】
【化29】
【0037】
(ただし、式(3)中のR1、R2およびR3はそれぞれ水素原子もしくは炭素数1〜18の有機基であり、R4は炭素数1〜18の有機基であり、そしてZ1は酸素原子またはイオウ原子である。)
【0038】
【化31】
【0039】
(ただし、式中のY1およびY2は前記式(2)と同じものを表す。)
【0040】
【化32】
【0041】
(ただし、式中のY3、D、nおよびEは前記と同じものを表す。)
【0042】
[5] 請求項1〜3のいずれか1項に記載のカルボキシル基を有するポリフマレートからなる感光性樹脂組成物用アルカリ現像性ベース樹脂である。
【0043】
【発明の実施の形態】
本発明のカルボキシル基を有するポリフマレートは、(A)フマル酸ジエステルに起因する繰り返し構成単位と(B)カルボキシル基を有する置換エチレンに起因する繰り返し構成単位とを少なくともそれぞれ1個以上有する共重合体であって、分子中に(A)、(B)成分に基づく基を70重量%以上含有するものである。
さらにカルボキシル基を有するポリフマレートとして好ましいものは、フマル酸ジエステルに起因する繰り返し構成単位95〜50重量%およびカルボキシル基を有する置換エチレンに起因する構成単位5〜50重量%からなるカルボキシル基を有するポリフマレートである。
【0044】
フマル酸ジエステルに起因する繰り返し構成単位が50重量%未満の場合またはカルボキシル基を有する置換エチレンに起因する構成単位が50重量%を越える場合、カルボキシル基を有するポリフマレートの耐熱性が低下する傾向にある。また、フマル酸ジエステルに起因する繰り返し構造単位が95重量%を越える場合またはカルボキシル基を有する置換エチレンに起因する構造単位が5重量%未満の場合、カルボキシル基を有するポリフマレートのアルカリ溶解性が低下する傾向にあるので好ましくない。
【0045】
また本発明のカルボキシル基を有するポリフマレートとしては、前記式(1)で表される繰り返し構成単位と、前記式(2)で表される繰り返し構成単位、前記式(5)で表される繰り返し構成単位および前記式(6)で表される繰り返し構成単位からなる群から選ばれる1種以上の構成単位とを有する共重合体前駆体を熱処理、化学処理または活性エネルギー線処理により脱ブロック反応(即ち、下記式(11)で表される化合物が脱離してカルボキシル基を生成する。)することにより得られる。
【0046】
【化33】
【0048】
(ただし、式中のR1、R2、R3、R4 、Z 1 は前記に同じ。)
【0049】
本発明のカルボキシル基を有するポリフマレートを形成するための原料の重合性単量体としては、前記の式(7)で表されるフマル酸ジエステルと前記式(8)、(9)および(10)で表される重合性単量体からなる群から選ばれる1種以上の重合性単量体である。
また、共重合性、耐熱性、加工性などの諸物性のバランス化を図るために、前記フマル酸ジエステルや前記式(8)、(9)および(10)で表される重合性単量体に加えて、その他の重合性単量体を含ませて形成してもよい。その量は分子中全体に対して0〜30重量%である。
【0050】
前記フマル酸ジエステルとしては、炭素数3〜8の分岐アルキル基もしくは置換分岐アルキル基、または炭素数4〜8のシクロアルキル基もしくは置換シクロアルキル基を有する対称ジエステルまたは非対称ジエステルなどを挙げることができる。具体例としては、ジイソプロピルフマレート、ジ−sec−ブチルフマレート、ジ−tert−ブチルフマレート、ジイソブチルフマレート、ジ−tert−アミルフマレート、ジ−4−メチル−2−ペンチルフマレート、ジ−sec−アミルフマレート、ジ−3−ペンチルフマレート、ジ−4−メチル−ペンチルフマレート、ビス(2,4−ジメチル−3ペンチル)フマレート、イソプロピル−sec−ブチルフマレート、tert−ブチル−4−メチル−2−ペンチルフマレート、イソプロピル−tert−ブチルフマレート、sec−ブチル−tert−ブチルフマレート、sec−ブチル−tert−アミルフマレート、tert−ブチル−イソアミルフマレート、イソプロピル−シクロブチルフマレート、1−クロロ−2−プロピル−シクロペンチルフマレート、1,3−ジクロロ−2−プロピル−シクロヘキシルフマレート、sec−ブチル−シクロヘキシルフマレート、3−クロロ−2−プロピル−シクロヘキシルフマレート、tert−ブチル−シクロペンチルフマレート、tert−ブチルシクロヘキシルフマレート、sec−アミル−シクロヘキシルフマレート、3−ペンチル−ボルニルフマレート、2,3−ジメチル−3−ペンチル−アダマンチルフマレート、tert−アミル−シクロヘキシルフマレート、ネオペンチル−シクロペンチルフマレート、4−メチル−2−ペンチル−シクロヘキシルフマレートなどである。
【0051】
前記式(8)、(9)および(10)のいずれかで表される重合性単量体は、カルボキシル基を有する重合性単量体と、前記式(11)または式(12)で表される化合物、即ちビニルエーテル化合物、ビニルチオエーテル化合物、あるいは酸素原子または硫黄原子をヘテロ原子とするビニル型二重結合をもつ複素環式化合物との反応により、容易に形成することができる。
【0052】
本発明の前記式(8)、(9)または(10)で表される重合性単量体の合成に使用されるカルボキシル基を有する重合性単量体の具体例としては、次のものが挙げられる。
式(8)に対しては、例えばフマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、メサコン酸など、
式(9)に対しては、例えばイタコン酸など、
式(10)に対しては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、4−ビニルフェニル酢酸などが挙げられる。
【0053】
前記式(11)で表される化合物の具体例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ベヘニルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどの脂肪族ビニルエーテルおよびこれらに対応する脂肪族ビニルチオエーテル化合物が挙げられる。
【0054】
本発明で使用する前記式(8)、(9)または(10)で表される重合性単量体は、カルボキシル基を有する単量体と前記式(11)で表される化合物とを室温ないし150℃の範囲の温度で反応させることにより得ることができる。この際、反応を促進させる目的で酸触媒を使用することができる。そのような触媒としては、プロトン酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸とトリアルキルホスフェートの混合物、スルホン酸エステル類、リン酸エステル類、およびオニウム化合物類、無機酸類が挙げられる。
【0055】
前記プロトン酸をルイス塩基で中和した化合物としては、例えばハロゲノカルボン酸類、スルホン酸類、硫酸モノエステル類、リン酸モノおよびジエステル類、ポリリン酸エステル類、ホウ酸モノおよびジエステル類などを、アンモニア、モノエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、アニリン、モルホリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの各種アミンもしくはトリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスファイトで中和した化合物、さらには、酸−塩基ブロック化触媒として市販されているネイキュア2500X、X−47−110、3525、5225(いずれも商品名、キングインダストリー社製)などが挙げられる。
【0056】
また、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物としては、例えばBF3、FeCl3、SnCl4、AlCl3、ZnCl2などのルイス酸を前記のルイス塩基で中和した化合物が挙げられる。
前記スルホン酸エステルとしては、例えば下記式(14)で表される化合物である。
【0057】
【化35】
【0058】
(式中のR7はフェニル基、置換フェニル基、ナフチル基、置換ナフチル基またはアルキル基であり、R8は一級炭素または二級炭素を介してスルホニルオキシ基と結合している炭素数3〜18のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカリール基、アルカノール基、飽和もしくは不飽和のシクロアルキルまたはヒドロキシシクロアルキル基である。)
【0059】
より具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸類と、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノールなどの第一級アルコール類またはイソプロパノール、2−ブタノール、2−ヘキサノール、2−オクタノール、シクロヘキサノールなどの第二級アルコール類とのエステル化物、さらには前記スルホン酸類とオキシラン基含有化合物との反応により得られるβ−ヒドロキシアルキルスルホン酸エステル類などが挙げられる。
前記リン酸エステル類としては、例えば式(15)で表される酸性リン酸エステル化合物が挙げられる。
【0060】
【化36】
【0061】
(式中のR9は炭素数3〜10のアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基、mは1または2である。)
より具体的には、n−プロパノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、n−エチルヘキサノールなどの第一級アルコール類のリン酸モノエステル類もしくはリン酸ジエステル類;イソプロパノール、2−ブタノール、2−ヘキサノール、2−オクタノール、シクロヘキサノールなどの第二級アルコール類のリン酸モノエステル類もしくはリン酸ジエステル類が挙げられる。
【0062】
また前記オニウム化合物としては、例えば式(16)〜(19)の化合物などが挙げられる。
[R11 3NR12]+X- …(16)
[R13 3PR14]+X- …(17)
[R15 2OR16]+X- …(18)
[R17 2SR18]+X- …(19)
【0063】
なお式中のR11、R13、R15およびR17は炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカリール基、アルカノール基またはシクロアルキル基である。2個のR11、R13、R15およびR17はたがいに結合している場合にはN、P、OまたはSをヘテロ原子とする複素環となる。R12、R14、R16およびR18は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカリール基であり、X-はSbF6 -、AsF6 -、PF6 -またはBF4 -である。
前記無機酸類としては、塩酸、硝酸、硫酸やこれらの混合物などが挙げられる。
【0064】
また、反応系を均一にし、反応を容易にする目的で有機溶剤も使用することができる。そのような有機溶剤としては、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ミネラルスピリット、イソオクタン、ノナン、トリメチルヘキサン、デカン、イソデカン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、デカリン、アイソバー(エクソン化学(株)、登録商標)、ニューソルデラックス(日本石油(株)、登録商標)、シェルゾール70(シェル化学社、登録商標)などの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、芳香族石油ナフサ、テトラリン、テレビン油、ソルベッソ#100(エクソン化学(株)、登録商標)、ソルベッソ#150(エクソン化学(株)、登録商標)などの芳香族炭化水素;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸メトキシブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トリメチルホスフェート、トリエチルフォスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類;ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0065】
前記その他の重合性単量体の具体例としては、例えば下記(a)〜(h)が挙げられる。
(a)メチル(メタ)アクリレ−ト、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜22のアルキル基を有するアクリル酸エステル。ここで、(メタ)アクリレートはメタクリレートおよび/またはアクリレートを意味する。
(b)ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジイソブチルイタコネート、ジ−sec−ブチルイタコネート、ジ−tert−ブチルイタコネート、ジシクロヘキシルイタコネートなどのイタコン酸エステル。
【0066】
(c)スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレンなどのスチレン誘導体。
(d)メチルビニルケトン、ブチルビニルケトンなどの不飽和ケトン。
(e)ビニルアセテート、ビニルブチレートなどのビニルエステル。
(f)メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのビニルエーテル。
(g)フェニルアリルエーテル、メチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル、アリルプロピオネート、アリルミリステート、アリルシクロヘキシルプロピオネートなどのアリル化合物。
(h)N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのN−置換マレイミド。
【0067】
また、カルボキシル基を有するポリフマレートのアルカリ溶解性などの観点から、重合体を形成する際に仕込まれる各重合性単量体の重量分率は決定される。
フマル酸ジエステルの重量分率は通常95〜50重量%で、好ましくは90〜55重量%である。また前記式(8)、(9)または(10)で表される重合性単量体の重量分率の合計は5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%である。フマル酸ジエステルの重量分率が50重量%未満の場合または前記式(8)、(9)または(10)で表される重合性単量体の重量分率の合計が50重量%を越える場合、カルボキシル基を有するポリフマレートの耐熱性が低下する傾向にある。また、フマル酸ジエステルの重量分率が95%を越える場合または前記式(8)、(9)または(10)で表される重合性単量体の重量分率の合計が5重量%未満の場合、カルボキシル基を有するポリフマレートのアルカリ溶解性が低下する傾向にある。
さらに、その他の重合性単量体の重量分率は、フマル酸ジエステルおよび前記式(8)、(9)または(10)で表される重合性単量体の合計量に対して0〜30重量%、好ましくは0〜20重量%である。
【0068】
前記共重合体前駆体およびそれから得られるカルボキシル基を有するポリフマレートとしては本発明の目的とするアルカリ溶解性が得られる限り重量平均分子量の範囲は全てものが使用可能である。ポリフマレートの重量平均分子量は通常好ましくは、5,000〜200,000、より好ましくは10,000〜100,000である。
重量平均分子量が5,000未満の場合にはカルボキシル基を有するポリフマレートのアルカリ溶解速度が大きくなり過ぎる傾向にあり、また重量平均分子量が200,000を越える場合にはカルボキシル基を有するポリフマレートのアルカリ溶解速度が小さくなり過ぎる傾向がある。
【0069】
共重合体前駆体の構造としては、ランダム、ブロック、グラフト、ラダーなどの各種構造が可能であるが、共重合体のアルカリ溶解性を良好に維持することができる点で、ランダム構造を有することが好ましい。
【0070】
次にカルボキシル基を有するポリフマレートの製造方法について詳細に説明する。製造は、第1の工程としてラジカル共重合反応による共重合体前駆体の合成、および第2の工程として前記式(11)で表される化合物の脱ブロック反応よりなる。
【0071】
まず第1の工程について説明する。
ラジカル重合反応は、フマル酸ジエステルおよび前記式(8)、(9)または(10)で表される重合性単量体の混合物中に、熱的にラジカルを発生する重合開始剤を添加し、そのまま塊状重合を行うか、水溶性高分子または無機系分散剤を含有する水溶液中に分散させて懸濁重合を行うか、もしくは各重合性単量体と共重合体前駆体を溶解する有機溶剤中での溶液重合を行う。
【0072】
前記重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(ACN)などのアゾ系有機化合物;過酸化ジベンゾイル(BPO)、tert−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)、ジ−tert−ブチルペルオキシド(DtBP)、ジクミルペルオキシド(DCP)などの有機過酸化物が挙げられる。
【0073】
次に第2の工程について説明する。得られた共重合体前駆体を熱処理、化学処理または紫外線もしくは電子線のような活性エネルギー線の照射による処理を行うと、共重合体前駆体から前記式(11)で表される化合物の脱離によりカルボキシル基を生成する(脱ブロック反応という場合がある)ので、目的とするカルボキシル基を有するポリフマレートを得ることができる。このカルボキシル基の生成反応は、酸触媒や光酸触媒により促進される。そのような酸触媒としては、例えばハロゲノカルボン酸類、スルホン酸類、硫酸モノエステル類、リン酸モノ及びジエステル類、ポリリン酸エステル類、ホウ酸モノおよびジエステル類などのプロトン酸;BF3、FeCl3、SnCl4、AlCl3、ZnCl2などのルイス酸を挙げることができる。また、光酸触媒としてはアデカオプトマーSPシリーズ(旭電化工業(株)製、商品名)などが利用できる。
【0074】
前記式(11)で表される化合物の脱ブロック反応を行う条件は酸触媒や光酸触媒の種類や量により異なるが、例えば共重合体前駆体の10〜60重量%ジオキサン溶液中に濃塩酸を共重合体前駆体に対して2〜15重量%添加して50〜100℃で3〜12時間の反応を行うことにより、ほぼ定量的に脱ブロック反応が進行させることができる。そのため、フマル酸誘導体の共重合組成を調節することにより、得られるカルボキシル基を有するポリフマレートの酸価を自由に制御することができる。好ましくは酸価は、50〜250mgKOH/g、より好ましくは70〜200mgKOH/gである。
【0075】
脱ブロックされた前記式(11)で表される化合物は、脱ブロック反応後に得られる溶液を水中に投入した際、沈殿物として除去してもよいし、また、反応槽中において減圧下でかき混ぜながら溶剤とともにトッピング(共沸除去)して除去してもよい。
【0076】
また本発明のカルボキシル基を有するポリフマレートはアルカリ現像性レジスト用の感光性樹脂組成物の主要成分となるアルカリ現像性ベース樹脂として用いることができる。その際、一般にアルカリ現像性レジスト用の感光性樹脂組成物中には、アルカリ現像性ベース樹脂、重合性単量体および活性エネルギー線により重合を開始するための重合開始剤が必須成分として含まれている。
また、必要により熱により重合を開始するための重合開始剤をさらに配合することができる。これは現像を終えたレジスト塗膜を完全硬化するためのポストキュアーを行う際に重合開始剤として用いる。
【0077】
感光性樹脂組成物中に用いられる重合性単量体としては、ブチルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの各種アクリレート;アジピン酸ジビニル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジアリルイソフタレート、ジシクロヘキシルフマレート、ジイソプロピルフマレートなどのビニル化合物などが用いられる。これらの重合性単量体は1種または2種以上を用いることができる。
【0078】
活性エネルギー線による重合開始剤としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン、ベンゾインイソプロピルエーテルなどが用いられる。これらの活性エネルギーによる重合開始剤は1種または2種以上を用いてもよい。
【0079】
熱重合に用いる重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物などが用いられる。前記の熱重合による重合開始剤は1種または2種以上を用いてもよい。
【0080】
本発明のカルボキシル基を有するポリフマレートの含有量はアルカリ現像性レジスト用の感光性樹脂組成物中好ましくは20〜80重量%、さらに好ましくは40〜70重量%である。
一方、重合性単量体の含有量はアルカリ現像性レジスト用の感光性樹脂組成物中好ましくは80〜20重量%、さらに好ましくは60〜30重量%である。
また、活性エネルギー線もしくは熱による重合開始剤の含有量は、活性エネルギー線もしくは熱による速やかな硬化性の観点から、アルカリ現像性レジスト用の感光性樹脂組成物中の使用量は通常、0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜10重量%である。
【0081】
アルカリ現像性レジスト用の感光性樹脂組成物中には、必要によりチオキサントン、アントラセン、ペリレンなどの光増感剤;フェノチアジン、ハイドロキノンなどの重合禁止剤;酸化防止剤、熱硬化型触媒、染料、顔料、チクソトロピー賦与剤、可塑剤、界面活性剤などを配合してもよい。
また、アルカリ現像性レジスト用の感光性樹脂組成物中には、本発明の効果を損なわない範囲において、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリイミドなどの熱硬化性樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂を配合してもよい。
【0082】
以上述べた各成分を混合することにより、アルカリ現像性レジスト用の感光性樹脂組成物を調製することができる。
また、前記感光性樹脂組成物は、使用する際に、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、水などの溶媒に溶解もしくは分散させることによって、粘度や塗布性を調節することができる。
【0083】
以下、この発明のカルボキシル基を有するポリフマレートを配合して形成されるアルカリ現像性レジスト用の感光性樹脂組成物を用いるレジストの製造方法とその用途の詳細について説明する。
アルカリ現像性レジスト用の感光性樹脂組成物は、使用に際し、転写、バーコーター、ロールコーター、スピンコーター、スクリーン印刷、グラビア印刷などにより、市販の両面もしくは片面に銅が張られたガラスエポキシ基板、ポリフェレンエーテル(PPE、PPO)基板、BT(ビスマレイミド−トリアジン)レジン基板、テフロン(登録商標)基板、ガラス基板、アルミ合金などの被着体に薄膜状に塗布される。また貼り付けることもできる。
【0084】
この塗布ないし貼り付け後に、フォトマスクを介して紫外線、電子線、X線またはγ線などの活性エネルギー線を照射して硬化させる。その後、現像を行って未照射部分を除去することにより、フォトマスク形状の画像が形成される。現像には、通常炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなどのアルカリ水溶液を用い、80℃以下の温度で行われる。さらに現像の後に、レジスト中に残存する重合性単量体の重合をさらに進行させるために、通常80℃以上の温度でポストキュアーすることによりさらに硬化したレジストを得ることができる。
【0085】
(感光性樹脂組成物の用途)
本発明のカルボキシル基を有するポリフマレートを配合して形成されるアルカリ現像性レジスト用の感光性樹脂組成物は、PS版などの刷版用レジストやソルダーレジストなどに用いることができる。
【0086】
(それぞれの用途における利用の態様)
(刷版用レジスト)
厚さ0.3mmのアルミニウム板(2S材)を80℃に保持された第三リン酸ナトリウムの10%水溶液に30秒間浸漬して脱脂する。次に、バミススラリーをこのアルミニウム板の上に流しながらナイロンブラシでこすって砂目を立てた後、60℃のアルミナ酸ナトリウムで10秒間エッチングし、引き続き硫酸水素ナトリウム3%水溶液で洗浄した。このアルミニウム板を20%硫酸水溶液中で電流密度2A/dm2において2分間陽極酸化し、次いで70℃の2.5%珪酸ナトリウム水溶液で1分間処理し、その後水洗し乾燥した。続いて、感光性樹脂組成物をバーコーターにより塗布し、溶媒を乾燥除去して数10μm程度の塗膜を形成して感光性平板印刷版を形成する。
この感光性平板印刷版にネガマスクを通して紫外線を照射する。続いて、例えば富士写真フィルム(株)製のPSプロセサー400Sを用いて現像を行ない、平板印刷版を作製する。
【0087】
(ソルダーレジスト)
感光性樹脂組成物をカーテンコーターにより基板に乾燥時の膜厚が数10μm程度になるように塗布した後、溶剤を乾燥除去することにより平滑な塗膜を形成する。次に、回路図が印刷されたフォトマスクを通して紫外線を照射した後、アルカリ水溶液による現像で未照射部を除去することにより、回路パターン通りの画像の皮膜を形成する。画像の形成された皮膜をポストキュアーしてソルダーレジスト皮膜とする。
【0088】
【発明の効果】
第1の発明ないし第4の発明のカルボキシル基を有するポリフマレートによれば、アルカリ現像性を維持しつつ、優れた耐熱性を発揮することができる。
第5の発明のカルボキシル基を有するポリフマレートの製造方法によれば、優れたアルカリ現像性を有し、かつ優れた耐熱性を有するカルボキシル基を有するポリフマレートを容易に得ることができる。
第6の発明のカルボキシル基を有するポリフマレートを含有する感光性樹脂組成物用アルカリ現像性ベース樹脂によれば、耐熱性に優れたアルカリ現像性の感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0089】
【実施例】
次に、実施例および比較例に基づいて本発明をさらに具体的に説明する。また、各例中の部および%は、特に断りのない限り、重量基準である。
なお、用いたポリフマレートの分析値および評価結果は以下の方法により求めたものである。
【0090】
(平均分子量)
カルボキシル基を有するポリフマレートの1重量%テトラヒドロフラン溶液(以後、テトラヒドロフランをTHFと略記する。)を調整後、移動相としてTHFを用いるSEC(サイズエクスクルージョンクロマトグラフ)法により測定したポリスチレン換算値である。重量平均分子量および数平均分子量を求めた。
【0091】
(酸価)
秤量したポリフマレート約1gを25ミリリットルのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以後、PGMAcと略記する。)に溶解してから、JIS K 0070の方法に従って測定した。
【0092】
(アルカリ現像性)
ポリフマレートの20%PGMAc溶液を調製し、これをスピンコーターを用いてガラス板上に膜厚が10μmとなるように塗布し、150℃で30分間温風乾燥した。
放冷した後、25℃の1%炭酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬し、その後、イオン交換水で洗浄する。次に150℃で30分間乾燥した後、サンプルの塗膜の状態を目視により観察し、次の基準により評価を行った。
記号:評価
○:アルカリ現像性良好、
×:アルカリ現像性不良。
【0093】
(耐熱性)
ポリフマレートの20%PGMAc溶液を調製し、これをスピンコーターを用いてガラス板上に膜厚が10μmとなるように塗布し、150℃で30分間温風乾燥した。
次に塗膜をスパチュラで掻き取って、乳鉢で微粉砕した後、150℃で30分間真空乾燥し、これをサンプルとして熱重量分析(TGA)を行った。
分析条件は室温から250℃までを10℃/分の昇温速度にて昇温した後、250℃で1時間保った。その後におけるサンプルの重量残存率(%)を耐熱性として表わした。
【0094】
また、表1、表2、表3および表4中の略号は次の通りである。
FA:フマル酸、IA:イタコン酸、VPAA:ビニルフェニル酢酸、iBuVE:イソブチルビニルエーテル、CHVE:シクロヘキシルビニルエーテル、tBVE:tert−ブチルビニルエーテル、tAVE:tert-アミルビニルエーテル、EHVE:2−エチルヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート)、DcHF:ジシクロヘキシルフマレート、DiPF:ジイソプロピルフマレート、DtBF:ジ−tert−ブチルフマレート、DsBF:ジ−sec−ブチルフマレート、St:スチレン、PTS:p-トルエンスルホン酸、PGMAc:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート。
【0095】
参考例1
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えた4つ口フラスコ中に、フマル酸(表中、FAと略記する。)117.1g、イソブチルビニルエーテル(表中、iBuVEと略記する。)202.1gおよび商品名「AP−8」(大八化学工業社製)0.2gの混合物を仕込んだ後、還流する温度条件(80〜100℃)で攪拌した。混合物の酸価が2mgKOH/g以下になったところで反応を終了し、95%の収率でガスクロマトグラフィー(GC)純度99.2%の重合性単量体(a)を得た。結果を表1に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
参考例2〜6
混合物の仕込み組成を表1のように変更した以外は、参考例1と同様の方法にて前記式(8)、(9)または(10)で表される重合性単量体(b)〜重合性単量体(f)の合成を行った。結果を表1に示す。
【0098】
実施例1
(1)共重合体前駆体の製造
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えた4つ口フラスコ中に、フマル酸ジシクロヘキシル(DcHF)70.7g、重合性単量体(a)32.6gおよびトルエン66.7gの混合物を仕込んだ。次に攪拌下で反応装置内の空気を窒素で置換した後、40℃まで昇温した。そこへジイソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)1gを仕込んだ後、40℃で25時間保った。その後室温まで冷却することにより共重合体前駆体の溶液を得た。
次に、共重合体前駆体の溶液に対してメタノールを沈殿剤とする再沈殿精製を行った後、60℃で5時間真空乾燥して収率92%で共重合体前駆体1を得た。平均分子量を前記の方法により測定した。結果を表2に示す。
【0099】
(2)カルボキシル基を有するポリフマレートの製造
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えた4つ口フラスコ中に、表3に示すように共重合体前駆体167.5g、ジオキサン155.6gおよび濃塩酸0.675gを仕込んだ。次に80℃まで昇温してから80℃で4時間保った後、室温まで冷却してカルボキシル基を有するポリフマレートの溶液を得た。
その後カルボキシル基を有するポリフマレートの溶液に対して水を沈殿剤とする再沈殿精製を行った後、60℃で5時間真空乾燥して収率95%でカルボキシル基を有するポリフマレート1を得た。平均分子量、酸価の測定、アルカリ現像性および耐熱性の評価結果を表4に示した。
【0100】
(3)アルカリ現像性レジスト用樹脂組成物の調整および評価
ポリフマレート1を6g、酢酸エチル6gを均一混合した溶液に、重合性単量体としてトリメチロールプロパントリアクリレート3.0gと、重合開始剤としてダロキュアー1173 0.12gとを混合した。そして、室温で10分間撹拌して、アルカリ現像性レジスト用の感光性樹脂組成物を調製した。
さらに、下記の要領でレジストの基本特性(感度および解像度)およびソルダーレジストとして使用した場合の特性(はんだ耐熱性)を調べてレジスト用樹脂組成物およびソルダーレジストとしての評価を行ったところ、感度が9段、解像度が10μm、はんだ耐熱性が○とそれぞれ良好であった。
〈感 度〉
(i)表面に砂目立て処理を施してあるアルミ板上にソルダーレジスト用樹脂組成物を、(株)エイブル製スピンコーターASS−300を用いて、10μmの膜厚に塗布した。
(ii)100℃の熱風乾燥器中にて10分間乾燥して溶剤を除去した。
(iii)グレースケール(イーストマンコダック社製フォトグラフィックステップタブレットNo.2)を介して、空気中で20mW/cmの超高圧水銀灯を用いて10秒間露光を行った。
(iv)露光後の塗膜に対して1%炭酸ナトリウム水溶液を気液混合法で0.29MPa(3kg/cm2)の圧力によるスプレー現像を行い未露光部分の除去を行った。
(v)150℃で1時間のポストキュアーを行った。残存したレジスト膜のグレースケールの最高段数を求めて感度とした。段数が大きいことは、感度が高いことを示している。
【0101】
〈解像度〉
感度試験の(iii)において、グレースケールの代わりに2〜40μmのライン&スペースを持つフォトマスクを介して露光した以外は感度試験と同様の操作にて、露光、現像、ポストキュアーを行った。フォトマスクのライン&スペースの像が抜けている最少部分のライン&スペースの大きさを解像度(μm)とした。解像度の値が小さいことは、より高い解像度であることを示している。
【0102】
〈はんだ耐熱性〉
はんだ耐熱性は、JIS−6481の方法に準じて行った。感度試験において露光−現像−ポストキュアーを行った後の基板上の塗膜を、260℃のはんだ浴に2分間浸漬した後の試料の外観を目視により観察し、塗膜上の膨れや剥がれの有無を観察した。試験後のサンプルの外観を目視で観察した。塗膜に膨れや剥がれがない場合を○、塗膜に膨れや剥がれがある場合を×とした。
【0103】
実施例2〜6
表2に示すように、重合性単量体の種類およびその添加量、フマレートの種類およびその添加量、溶剤(トルエン)の添加量を変更した以外は、実施例1と同様にして共重合体前駆体の製造を行った。次に表3に示すように共重合体前駆体の種類およびその添加量、触媒の種類およびその添加量、溶剤の種類および反応温度を変更した以外は、実施例1と同様にしてカルボキシル基を有するポリフマレートの製造を行った。
共重合体前駆体の分析結果を表2に、カルボキシル基を有するポリフマレートの各種の評価結果を表4に示す。ここで、(B)はカルボキシル基を有する単量体に基づく構成単位である。
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
【表4】
【0107】
比較例1
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えた4つ口フラスコ中に、メタクリル酸メチル84.7g、メタクリル酸15.3g、PGMAc66.7gの混合物を仕込んだ。次に攪拌下で反応装置内の空気を窒素で置換した後、40℃まで昇温した。そこへジイソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)1gを仕込んで、40℃で25時間保った後、室温まで冷却して共重合体溶液を得た。
次に、得られた共重合体の溶液に対してメタノールを沈殿剤とする再沈殿精製を行った後、60℃で5時間真空乾燥して収率92%で比較共重合体1を得た。また、実施例1と同様の方法にて各種の評価を行った。結果を表4に示す。
【0108】
比較例2
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えた4つ口フラスコ中に、アクリル酸メチル87.2g、アクリル酸12.8g、PGMAc66.7gの混合物を仕込んだ。次に攪拌下で反応装置内の空気を窒素で置換した後、40℃まで昇温した。そこへジイソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)1gを仕込んで、40℃で25時間保った後、室温まで冷却して共重合体溶液を得た。
次に、得られた共重合体の溶液に対してメタノールを沈殿剤とする再沈殿精製を行った後、60℃で5時間真空乾燥して収率96%で比較共重合体2を得た。また、実施例1と同様の方法にて各種の評価を行った。結果を表4に示す。
【0109】
表4から明らかなように、本発明の実施例1〜6の各々から得られたカルボキシル基を有するポリフマレートはいずれも優れたアルカリ現像性に加えて優れた耐熱性を有していることが明らかである。
これに対し、比較例1および2のメタクリレートやアクリレートを主成分とする比較共重合体1および2はアルカリ現像性には優れているが、耐熱性に劣っていることがわかる。
Claims (5)
- (A)下記式(1)で表されるフマル酸ジエステルに基づく構成単位と(B)下記式(2)で表される繰り返し構成単位、下記式(5)で表される繰り返し構成単位および下記式(6)で表される繰り返し構成単位からなるブロックカルボン酸に基づく構成単位群から選ばれる1種以上の構成単位とからなる共重合体前駆体を脱ブロック反応することにより得られるカルボキシル基を有するポリフマレート。
- 分子量が1,000〜300,000で、かつその酸価が50〜250mgKOH/gである請求項1記載のポリフマレート。
- 分子中に(A)、(B)成分が70重量%以上で、(A)成分が50〜950.5〜0.95重量%であり、分子量が5,000〜200,000で、その酸価が70〜200mgKOH/gである請求項1記載のポリフマレート。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のカルボキシル基を有するポリフマレートの製造方法であって、下記の第1および第2の工程からなることを特徴とするポリフマレートの製造方法。
第1の工程:下記式(7)で表されるフマル酸ジエステルと、下記式(8)で表される重合性単量体、下記式(9)で表される重合性単量体および下記式(10)で表される重合性単量体からなる群から選ばれる1種以上の重合性単量体とを共重合することにより共重合体前駆体を得る、
第2の工程:第1の工程で得られた共重合体前駆体を脱ブロック反応する。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のカルボキシル基を有するポリフマレートからなる感光性樹脂組成物用アルカリ現像性ベース樹脂。
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