JP4689514B2 - セメント焼成設備における排ガスの処理方法及び処理装置 - Google Patents
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Description
特に、近年、セメント焼成設備の代替燃料として廃プラスチック等が利用されるようになってきたが、これらの廃プラスチックには、難燃性を付与するために臭素が含まれているものが多く、この廃プラスチックをセメント焼成設備にて燃焼した場合に臭素が発生し、この廃プラスチックの量が増加するに従ってセメントキルンで揮発する臭素も増加することになる。その理由は、臭素についても塩素と同様、セメント焼成設備内にて循環濃縮するためである。
そこで、これらの高濃度に循環濃縮する塩素や臭素等のハロゲンおよび/またはハロゲン化合物を除去するために、セメント焼成設備に塩素バイパス装置を付設することが一般に行われている。
また、31は塩素バイパス装置であり、セメントキルン6から排出される排ガスの一部を抽気するプローブ32と、冷却チャンバ33と、バッグフィルタ34と、冷却チャンバ33及びバッグフィルタ34からのダストを貯留するダストサイロ35と、冷却ファン36、37と、吸引ファン38とにより構成されている。
通常、硫黄は、サスペンションプレヒータ4では石灰分等と反応して硫酸塩としてセメント原料中に存在している。セメントキルン6に持ち込まれた硫酸塩は、セメントキルン6内の高温領域にてその70〜80%が気化するとともに、粉末石炭などの燃料中に含まれる硫黄分が燃焼することにより発生するSOxとともに、高濃度の気体状態でセメントキルン6から排出される。このセメントキルン6内で気化した気体状態のSOxはサスペンションプレヒータ4に送り込まれ、このサスペンションプレヒータ4にてセメントの粉末原料と反応しほぼ完全に脱硫される。したがって、セメント焼成設備から排出される排ガスには、数ppmのSOxが存在するのみとなる。
例えば、セメント焼成設備に、空気冷却方式の抽気排ガス処理装置を接続し、この抽気排ガス処理装置の集塵機にて揮発性成分を含むダストを除去した後、このダスト除去後の排ガスをセメント原料焼成系の燃料燃焼用空気として利用するセメント原料焼成方法が提案されている(特許文献1参照)。
これらの処理方法においては、戻される排ガスは、燃焼用空気としてセメント焼成系で使用されるため、この排ガスに含まれるSOxはサスペンションプレヒータを通過する間に脱硫される。したがって、セメント原料焼成系から排出される排出ガス中のSOxは、数ppm以下に保持される。
例えば、塩素バイパス装置31の排ガスには、セメントキルン6の窯尻部7から抽気した燃焼ガスの他に多量の冷却空気が混合している。この排ガスを仮焼炉5もしくは仮焼炉5に接続される燃焼用空気ダクト24に導入して処理を行う場合は、排ガスに含まれる空気は仮焼炉5の燃料の燃焼用空気として利用されるが、燃焼ガスは何等利用されることはない。
また、仮焼炉に接続される燃焼用空気ダクト24内の燃焼用空気は、クリンカクーラ9で800〜900℃まで加熱されたものであるが、塩素バイパス装置31の排ガスの温度は100〜150℃と燃焼用空気ダクト24内の燃焼用空気と比較して低温である。したがって、仮焼炉に導入される燃焼用空気の一部を塩素バイパス装置31の排ガスに置き換えると、セメント焼成設備のエネルギー利用効率が極端に低下することとなる。
また、塩素バイパス装置の排ガスをバーナー部の空気取り入れ口へ戻す場合では、エネルギー利用効率は大きく劣らないが、塩素バイパス装置の全ての排ガスを戻すことができない。また、塩素バイパス装置の排ガスをクリンカクーラの空気取り入れ口へ戻す場合では、長距離のガス処理経路が必要になり、設備が大掛かりになる等の問題点があった。
また、近年、セメント焼成設備内で増加してきた臭素についても、塩素と同様、セメントキルン内で揮発した後、サスペンションプレヒータにて凝集して循環濃縮されることから、セメント焼成設備の安定した操業に悪影響を及ぼすという問題点があった。特に、臭素が揮発・凝集する温度は、塩素より低温領域にあるので、セメントキルンの窯尻部にて排ガスを抽気する従来の塩素バイパス装置では、排ガスから臭素を効率良く取り出すことが難しい。
このように、セメント製造設備から排出される塩素や臭素等のハロゲンおよび/またはハロゲン化合物を含む排ガスを処理するにあたって、セメント製造設備の操業に与える影響が小さく、しかも大掛かりな設備を必要としない簡便な方法で処理できる技術が求められていた。更に、排ガスから臭素を効率良く取り出す技術についても同時に求められていた。
また、排ガスの量の増加を抑制するので、排ガスの処理工程を小さくすることが可能となる。
また、ダスト捕集工程にて捕集されたダストを搬送用空気と共に冷却工程の冷却媒体として循環利用することにより、セメント焼成設備から抽気する高温の排ガス中のダスト濃度を高くし、この高温の排ガス中に含まれる揮発性成分を高効率で捕集することが可能となり、よって、抽気する排ガスの量を少なくすることが可能になる。
また、排ガス中に含まれるSO x 等の揮発性成分の含有量が少なくなるので、任意の処理先を選択することが可能である。
この処理方法では、セメントキルンの窯尻部から排ガスの一部を抽気することにより、塩素や臭素等の揮発性成分の含有率の高いダストを捕集することが可能となり、更に高温の排ガスを抽気することによるセメント焼成設備の操業に与える影響をより小さくすることが可能となる。
また、排ガスの量の増加を抑制するので、排ガスの処理装置を小型化することが可能となる。よって、セメント焼成設備の排ガスから揮発性成分を低コストで除去することが可能となる。
また、ダスト循環手段によりダスト捕集手段にて捕集されたダストを搬送用空気と共に冷却手段の冷却媒体として循環利用することにより、セメント焼成設備から抽気する高温の排ガス中のダスト濃度を高くし、この高温の排ガス中に含まれる揮発性成分を高効率で捕集することが可能となり、よって、抽気手段にて抽気する排ガスの量を少なくすることが可能になる。
また、排ガス中に含まれるSO x 等の揮発性成分の含有量が少なくなるので、任意の処理先を選択することが可能となる。
その後、ダストが取り除かれた排ガスをプレヒータの所定の位置へ戻すことによって、セメント焼成設備の操業に与える影響を小さくすることができる。
さらに、排ガスの量の増加を抑制するので、排ガスの処理工程を小さくすることができる。
その後、排ガス処理手段を用いてダストが取り除かれた排ガスをプレヒータの所定位置へ戻すので、セメント焼成設備の操業に与える影響を小さくすることができる。
さらに、排ガスの量の増加を抑制するので、排ガスの処理装置を小型化することができ、その結果、セメント焼成設備の排ガスから揮発性成分を低コストで除去することができる。
その後、排ガス処理手段を用いてダストが取り除かれた排ガスをプレヒータの排ガス誘引手段以降へ戻すので、セメント焼成設備の操業に与える影響を小さくすることができる。
さらに、排ガスの量の増加を抑制するので、排ガスの処理装置を小型化することができ、その結果、セメント焼成設備の排ガスから揮発性成分を低コストで除去することができる。
なお、本形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
図1は、本発明の第1の実施形態のセメント製造設備における排ガスの処理装置を示す模式図であり、発生する排ガスの一部をプレヒータライジングダクトにて抽気し、この抽気された排ガスを、それに含まれる揮発性成分の融点の600℃〜700℃以下にまで低下させ、この揮発性成分が付着したダストを300℃以上の高温状態のまま捕集すると共に、このダストが取り除かれた排ガスをサスペンションプレヒータへ戻す排ガスの処理装置の例である。この図1では、図3と同一の構成要素には同一の符号を付してある。
(抽気工程)
セメントキルン6に接続されるプレヒータライジングダクト7から排出される排ガスの一部をプローブ42を用いて抽気する工程である。
この排ガスには、ダストの他、揮発性成分である塩素や臭素等のハロゲンおよび/またはハロゲン化合物、SOx等の硫黄化合物が含まれている。
循環ダスト空気輸送装置46により、ダスト捕集装置44にて捕集されたダストを冷却ファン43から送風される搬送用空気と共に再度プローブ42に供給し、これらダスト及び搬送用空気を用いて抽気された排ガスを、この排ガスに含まれる臭素や塩素等のハロゲン元素および/またはハロゲン化合物の融点の600℃〜700℃以下にまで低下させ、この臭素や塩素等のハロゲン元素および/またはハロゲン化合物を排ガス中のダストに付着させる工程である。
また、同様に、排ガス中のダスト濃度を高くすることによって、抽気した排ガス中に含まれる硫黄化合物の捕集効率も高めることができる。したがって、排ガス中のSOx濃度を低下させることが可能になる。また、この排ガスの処理においては、必ずしも高温処理が必要とならないので、後述するサスペンションプレヒータ排ガスライン25に導入して処理することが可能になる。
ダスト捕集装置44により、この臭素や塩素等のハロゲン元素および/またはハロゲン化合物が付着したダストを、300℃以上の高温状態のまま分離捕集する。
このダスト捕集装置44では、この臭素や塩素等のハロゲン元素および/またはハロゲン化合物が付着したダストを300℃以上の高温状態のまま分離捕集してダストサイロ48に搬送し貯留するとともに、このダストの一部を循環ダスト空気輸送装置46に搬送する。
循環ダスト空気輸送装置46では、ダスト捕集装置44から搬送された臭素や塩素等のハロゲン元素および/またはハロゲン化合物が付着したダストを、冷却ファン43からの搬送用及び冷却用空気とともに循環ダスト供給ライン47を経由してプローブ42に搬送し、抽気した排ガスの冷却媒体として循環利用する。
このように、ダスト捕集装置44にて捕集したダストをプローブ42に供給することで循環使用するので、抽気した排ガス中のダスト濃度を高くし、臭素や塩素等のハロゲン元素および/またはハロゲン化合物の捕集効率を高くすることが可能である。
上記のダスト捕集装置44にてダストが分離捕集されて取り除かれた排ガスを、排ガスライン45を介してサスペンションプレヒータ排ガスライン25へ戻す工程である。
このダストが取り除かれた排ガスは、サスペンションプレヒータ排ガスライン25及び吸引ファン14を経由してセメント原料を乾燥粉砕する原料ミル2に投入されて処理される。
したがって、プレヒータライジングダクト7から従来の塩素バイパス装置にて抽気するガス量以上のガスを抽気した場合であっても、セメント焼成設備の操業に与える影響を従来装置の1/5〜1/2程度まで減少させることができる。
(A)セメントキルン窯尻から高温ガスを抽気するために損失する損失熱。
(B)塩素バイパス装置の冷却された排ガスを燃焼用空気として仮焼炉に使用するために、燃焼用空気が温度が低下することによる損失熱。
これらの熱損失のうち、(B)の熱損失によるセメントクリンカ焼成熱量原単位に与える影響は、(A)の熱損失による熱量原単位に与える影響の5〜12倍に相当することが一般に知られている。
また、(B)の熱損失によるセメント焼成装置の操業に与える影響によって、セメントクリンカ焼成能力の低下もあり得るものである。
従来の塩素バイパス装置では、塩素などのハロゲン化合物の捕集効率を第一として考えていたために、セメントキルンのプレヒータライジングダクトから約2%の高温ガス(約1000℃)の抽気と、この抽気される排ガス量の5〜10倍の冷却空気量を装置に導入し、ダストを捕集した後、排ガスを仮焼炉の燃料燃焼用空気ダクトに導入して処理しているが、セメントクリンカの焼成熱量原単位については、約1.5〜2.5%程度の増加がみられ、セメント焼成設備の操業に与える影響は大きい。
図2は、本発明の第2の実施形態のセメント製造設備における排ガスの処理装置を示す模式図であり、本実施形態の排ガス処理装置51が、第1の実施形態の排ガス処理装置41と異なる点は、第1の実施形態の排ガス処理装置41では、プレヒータライジングダクト7から排出される排ガスの一部をプローブ42を用いて抽気し、さらに、ダスト捕集装置44にてダストが分離捕集されて取り除かれた排ガスを、排ガスライン45を介してサスペンションプレヒータ排ガスライン25へ戻していたのに対し、本実施形態の排ガス処理装置51では、サスペンションプレヒータ4の最下段のサイクロン4dの出口から排出される排ガスの一部をプローブ42を用いて抽気し、さらに、ダスト捕集装置44にてダストが分離捕集されて取り除かれた排ガスを、排ガスライン52及び吸引ファン53を介してサスペンションプレヒータ排ガスライン25の吸引ファン14以降へ戻している点である。
また、セメントキルン6や仮焼炉5にて発生したSOxは、最下段のサイクロン4dで仮焼されたセメント原料によって脱硫されているので、抽気された排ガスに含まれるSOxの量は少ない。これにより、排ガスをサスペンションプレヒータ排ガスライン25の誘引ファン14以降に導入し、後続するセメント原料を乾燥粉砕する原料ミル2の熱源として利用することができる。
この排ガス処理装置51では、ダストが分離捕集されて取り除かれた排ガスは、プレヒータライジングダクト7からの排ガスと比較して塩素化合物濃度に対する臭素化合物濃度比が高くなっているので、排ガス中の臭素および/または臭素化合物を選択して捕集することができる。
4a〜4d サイクロン
5 仮焼炉
6 セメントキルン
7 プレヒータライジングダクト
8 バーナー
9 クリンカクーラ
14 吸引ファン
15 冷却ファン
23 セメントクリンカ搬送ライン
24 燃焼用空気ダクト
25 サスペンションプレヒータ排ガスライン
41 排ガス処理装置
42 プローブ
43 冷却ファン
44 ダスト捕集装置
45 排ガスライン
46 循環ダスト空気輸送装置
47 循環ダスト供給ライン
48 ダストサイロ
51 排ガス処理装置
52 排ガスライン
53 吸引ファン
Claims (3)
- セメント原料をセメント焼成設備にて焼成する際に発生する排ガスの一部を抽気し、この抽気された排ガスから揮発性成分を除去するセメント焼成設備における排ガスの処理方法であって、
セメント原料を仮焼するプレヒータ、この仮焼されたセメント原料を焼成するセメントキルン、のいずれかから排出される排ガスの一部を抽気する抽気工程と、
この抽気された排ガスを、この排ガスに含まれる揮発性成分の融点の600℃〜700℃以下にまで低下させ、この揮発性成分を該排ガスに含まれるダストに付着させる冷却工程と、
この揮発性成分が付着したダストを300℃以上の高温状態のまま捕集するダスト捕集工程と、
このダストが取り除かれた排ガスを前記プレヒータへ戻す排ガス処理工程と、
前記ダスト捕集工程にて捕集されたダストを搬送用空気と共に前記冷却工程の冷却媒体として循環利用するダスト循環工程と、
を備えてなることを特徴とするセメント焼成設備における排ガスの処理方法。 - 前記抽気工程は、前記セメントキルンの窯尻部から排ガスの一部を抽気する工程であることを特徴とする請求項1記載のセメント焼成設備における排ガスの処理方法。
- セメント原料をセメント焼成設備にて焼成する際に発生する排ガスの一部を抽気し、この抽気された排ガスから揮発性成分を除去するセメント焼成設備における排ガスの処理装置であって、
セメント原料を仮焼するプレヒータ、この仮焼されたセメント原料を焼成するセメントキルン、のいずれかから排出される排ガスの一部を抽気する抽気手段と、
この抽気された排ガスを、この排ガスに含まれる揮発性成分の融点の600℃〜700℃以下にまで低下させ、この揮発性成分を該排ガスに含まれるダストに付着させる冷却手段と、
この揮発性成分が付着したダストを300℃以上の高温状態のまま捕集するダスト捕集手段と、
このダストが取り除かれた排ガスを前記プレヒータへ戻す排ガス処理手段と、
前記ダスト捕集手段にて捕集されたダストを搬送用空気と共に前記冷却手段の冷却媒体として循環利用するダスト循環手段と、
を備えてなることを特徴とするセメント焼成設備における排ガスの処理装置。
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