以下、本発明の適用例を実施の形態により説明するが、その前に、OFDM伝送方式について説明する。
OFDM伝送方式は、互いに周波数が直交する複数の搬送波(以下「サブキャリア成分」ともいう。)を用いて送信装置において送信データを変調して伝送し、受信装置において送信データを受信して復調する伝送方式である。
OFDM伝送方式を用いたシステムでは、送信装置において送信データを各サブキャリア成分の変調方式に応じた信号点配置に割り振る。次に、前記各サブキャリア成分に対して逆フーリエ変換を行い、さらに、互いに周波数が直交する複数のサブキャリア成分を多重化して信号を生成する。その後、多重化した信号(以下「多重信号」という)の最後尾の一部をガード区間として多重信号の先頭に付加する。そして、ガード区間を付加した多重信号を所定の周波数帯域に周波数変換して送信する。
他方、OFDM伝送方式を用いたシステムにおける受信装置は、受信したOFDM信号を所定の周波数帯域に周波数変換し、ガード区間の位置を特定して同期を確立する。次に、OFDM信号におけるシンボル毎にガード区間長分の信号を除去した後、当該シンボルに対してフーリエ変換を行って各サブキャリア成分を算出し、当該各サブキャリア成分を復調して送信データを再生する。
サブキャリア成分の復調は、当該サブキャリア成分における振幅および位相の変化量を演算し、当該演算結果に基づいて送信時の信号点配置を再現することにより行う。振幅および位相の変化量の演算を容易にするため、変化量の演算の基準となる既知の信号、すなわちパイロット信号を特定のサブキャリア成分を使って送信する方式が広く用いられている。例えば、日本における地上ディジタルテレビジョン放送方式では、周波数方向においてサブキャリア成分12個おきに、また、時間方向においては4シンボルおきにパイロット信号が周期的に挿入されている。受信装置では、パイロット信号に基づいて振幅および位相の変化量を算出し、サブキャリア成分の復調を行う。なお、日本における地上ディジタルテレビジョン放送方式では、パイロット信号をスキャッタード・パイロット(Scattered Pilot)信号と呼ぶ。また、以下、説明の便宜上、送信装置においてOFDM信号に挿入されるパイロット信号を「送信パイロット信号」といい、受信装置において受信されたOFDM信号におけるパイロット信号を「受信パイロット信号」ともいう。
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態である復調装置100の構成を示すブロック図である。復調装置100は、受信アンテナ1、チューナ部2、A/D(Analog/Digital)変換部3、直交復調回路部4、FFT回路部5、タイミング同期回路部6、固定位相回転除去部7、遅延調整回路部8、パイロット抽出回路部9、第1除算回路部10、既知信号生成回路部11、時間内挿フィルタ部12、遅延プロファイル生成回路部13、周波数内挿フィルタ部14、第2除算回路部15およびデータ再生部16を備えて構成される。本発明の参考形態である復調方法は、復調装置100によって実行される。
チューナ部2は、受信アンテナ1から入力された放送電波(RF信号)から所望のOFDM方式ディジタル放送を選局し、所定周波数および所定レベルの中間周波(Intermediate Frequency;略称:IF)信号に変換する。チューナ部2は、IF信号をA/D変換部3に与える。A/D変換部3は、チューナ部2から与えられるIF信号を、アナログ信号からディジタル信号へ変換し、ディジタル信号を直交復調回路部4に与える。
直交復調回路部4は、A/D変換部3から与えられるディジタル信号を直交復調して、I信号(同相成分)およびQ信号(直交成分)に分割した直交復調信号を出力する。直交復調回路部4は、直交復調信号であるI信号およびQ信号をFFT回路部5およびタイミング同期回路部6に与える。
フーリエ変換部であるFFT回路部5は、直交復調回路部4から与えられるI信号およびQ信号を、時間軸信号から周波数軸信号に高速フーリエ変換する。さらに述べると、FFT回路部5は、直交復調回路部4から与えられる直交復調信号を、後述するタイミング同期回路部6から入力されるタイミング信号に基づいて高速フーリエ変換して、直交復調信号に含まれるサブキャリア成分を固定位相回転除去部7に与える。FFT回路部5によって高速フーリエ変換をして前記サブキャリア成分を出力する工程は、フーリエ変換工程に相当する。
固定位相回転除去部7は、FFT回路部5から与えられるサブキャリア成分毎に、当該サブキャリア成分の周波数に比例した固定値の位相回転成分を除去する。固定位相回転除去部7は、固定値の位相回転成分を除去したサブキャリア成分を遅延調整回路部8、パイロット抽出回路部9および遅延プロファイル生成回路部13に与える。
遅延調整回路部8は、固定位相回転除去部7から与えられるサブキャリア成分と、パイロット抽出回路部9、第1除算回路部10、既知信号生成回路部11、時間内挿フィルタ部12、遅延プロファイル生成回路部13および周波数内挿フィルタ部14において処理をされた前記サブキャリア成分に対応する信号とが、第2除算回路部15に同じタイミングで入力するように所定時間だけ遅延した後、固定位相回転除去部7から与えられるサブキャリア成分を第2除算回路部15に与える。パイロット信号抽出部であるパイロット抽出回路部9は、固定位相回転除去部7から与えられるサブキャリア成分に含まれる受信パイロット信号を抽出し、第1除算回路部10に与える。パイロット抽出回路部9によって、前記サブキャリア成分に含まれる受信パイロット信号を抽出する工程は、パイロット信号抽出工程に相当する。
復調装置100には、送信装置においてOFDM信号中に挿入された送信パイロット信号が既知信号として予め設定されているので、復調装置100において、既知信号である送信パイロット信号と受信パイロット信号とを比較することによって、受信パイロット信号に対応する伝送路特性を演算することができる。
具体的には、既知信号生成部である既知信号生成回路部11において、パイロット抽出回路部9における受信パイロット信号の出力に同期したタイミングで、既知信号である送信パイロット信号を生成して出力し、第1除算回路部10に与える。既知信号生成回路部11によって、既知信号である送信パイロット信号を生成して出力する工程は、既知信号生成工程に相当する。第1除算部である第1除算回路部10では、パイロット抽出回路部9から与えられた受信パイロット信号を、既知信号生成回路部11から与えられた送信パイロット信号で除算することによって、各受信パイロット信号に対応する伝送路特性を演算し、当該伝送路特性を時間内挿フィルタ部12および遅延プロファイル生成回路部13に与える。第1除算回路部10によって、前記受信パイロット信号を前記送信パイロット信号で除算して、各受信パイロット信号に対応する伝送路特性を算出する工程は、第1除算工程に相当する。
第1除算回路部10で演算された伝送路特性は、受信パイロット信号に対してのみ得られるので、全てのサブキャリア成分に対して伝送路特性を得るには、フィルタリングによる内挿処理が必要となる。以下に、フィルタリングによる内挿処理の必要性について具体的に説明する。
図2は、パイロット信号の配置を示す図である。図2には、日本の地上ディジタルテレビジョン放送方式に使用されるOFDM信号におけるパイロット信号の配置を示している。図2において、紙面に向かって左右方向は周波数方向を表し、上下方向は時間方向を表す。また図2の黒丸は、パイロット信号を表し、白丸はパイロット信号以外のサブキャリア成分を表している。また図2の実線で囲まれた部分は、k(kは自然数)番目のサブキャリアを表し、破線で囲まれた部分はi(iは自然数)番目のシンボルを表し、実線で囲まれた部分と破線で囲まれた部分とが交差する部分は、i番目のシンボルにおけるk番目のサブキャリア成分を表している。
パイロット信号は、図2に示すように、周波数方向においてサブキャリア成分12個おきに、また、時間方向においては4シンボルおきに挿入されている。従って、このパイロット信号に基づいて演算される伝送路特性から、全てのサブキャリア成分に対する伝送路特性を算出するには、一般に時間方向および周波数方向の内挿処理が必要となる。
内挿フィルタ部である時間内挿フィルタ部12は、第1除算回路部10から与えられた、受信パイロット信号に対応する伝送路特性に対して、前記内挿処理のうち、時間方向の内挿処理を行う。時間内挿フィルタ部12において、受信パイロット信号に対応する伝送路特性を時間方向に内挿することによって、当該パイロット信号が含まれるサブキャリア周波数成分の各々に対応する伝送路特性が得られる。時間内挿フィルタ部12は、時間方向に内挿処理を行った結果を周波数内挿フィルタ部14に与える。
前記内挿処理のうち、周波数方向の内挿処理は、周波数内挿フィルタ部14において行われる。ここで、周波数内挿フィルタ部14のフィルタ特性としては、到来波成分が通過する通過帯域があれば十分であり、当該通過帯域が不必要に広い場合、不要な雑音成分もフィルタを通過してしまうので、復調の性能が劣化してしまう。このような復調の性能の劣化を防止するには、周波数方向の内挿フィルタの通過帯域を必要最小限にする必要がある。そのためには、前記FFT回路部5において高速フーリエ変換を行うタイミング(以下「同期タイミング」という)の最適化と、前記周波数方向の内挿に使用する周波数内挿フィルタの通過帯域の最適化とを併せて行うことが有効となる。
同期タイミングの最適化は、当該受信装置に最も先行して到来した到来波のシンボル位置、および最も遅延して到来した到来波のシンボル位置と前記同期タイミングとの時間差に基づいて行うことができる。周波数内挿フィルタの通過帯域の最適化は、同期タイミングおよび当該同期タイミングから最も時間差が大きい到来波の遅延時間に基づいて行うことができる。そこで、前記最適化に必要な信号を、遅延プロファイル生成回路部13で生成する。なお、FFT回路部5から出力される各サブキャリア成分の振幅および位相は、伝送路におけるマルチパス、受信装置における位相雑音および残留周波数誤差だけでなく高速フーリエ変換を行うタイミングにも依存する。以下に、遅延プロファイル生成回路部13において生成する信号の基礎となる、同期タイミングおよび前記遅延時間について説明する。
図3は、復調装置100における同期タイミングおよび遅延時間を説明するための図である。以下の説明では、理解を容易にするために、受信装置までの到来時間、すなわち送信装置から送信された信号が受信装置に到来して受信されるまでの時間に、異なる2つの到来波、すなわち第1到来波および第2到来波を受信したと仮定する。第1および第2到来波は、それぞれ、ガード区間とi番目のシンボルとから成る。なお、当該受信装置においては、各到来波が加算された信号が受信波となるので、隣接シンボル間の干渉(以下「シンボル間干渉」ともいう)が発生しないようなタイミングで、高速フーリエ変換を行う必要がある。そこで、まず、図3(a)を参照して、フーリエ変換を行うタイミング、すなわち同期タイミングの設定について説明する。
図3(a)は、異なる到来時間で受信した第1および第2到来波ならびに受信波を模式的に示す図である。図3(a)には、第1到来波および第2到来波が加算された信号として受信波が示されているが、前後の網掛け部分は、シンボル間干渉が発生する部分である。そのため、隣接するシンボルと干渉することがない高速フーリエ変換を行うデータ区間は、例えば、図3(a)に示されるような第1データ区間、第2データ区間および第3データ区間となる。なお、第1〜第3データ区間の各区間長は、ガード区間を付加する前のシンボル長であり、その区間の始点は同期タイミングによって決定される。
例えば、第1データ区間の場合には、受信波において、i−1番目のシンボルとi番目のシンボルとの間でシンボル間干渉が発生しない境界を同期タイミングとしている。また第3データ区間の場合は、第1到来波におけるガード区間の最後尾を同期タイミングとしている。そして、この第3データ区間の最後尾は、受信波において、i+1番目のシンボルとi番目のシンボルとの間でシンボル間干渉が発生しない境界に位置している。また、第2データ区間に対応する同期タイミングは、前記第1データ区間に対応する同期タイミングと前記第3データ区間に対応する同期タイミングとの間に設けられている。このように、同期タイミングは唯一決定されるものではなく、シンボル間干渉が発生しないという条件のもとで、到来波の到来時間差に依存した時間範囲以内であればよい。従って、例えば図3(a)において、第2データ区間の同期タイミングは、第1データ区間の同期タイミングと第3データ区間の同期タイミングとの間であればどこに設けてもよい。
次に、図3(a)において第1〜第3データ区間に含まれるデータを高速フーリエ変換して得られる信号に対応する遅延プロファイルについて説明する。図3(b)は、第1データ区間に含まれるデータを高速フーリエ変換して得られる信号に対応する遅延プロファイルを模式的に示す図である。図3(c)は、第2データ区間に含まれるデータを高速フーリエ変換して得られる信号に対応する遅延プロファイルを模式的に示す図である。図3(d)は、第3データ区間に含まれるデータを高速フーリエ変換して得られる信号に対応する遅延プロファイルを模式的に示す図である。図3(b),図3(c),図3(d)において、横軸は高速フーリエ変換を行うデータ区間の始点に対する各到来波のガード区間最後尾、すなわちi番目のシンボルの先頭位置に対応する遅延時間を表し、縦軸は各到来波に対応する電力を表している。
遅延プロファイルとは、マルチパス環境下における遅延波に対応する情報、例えば遅延時間、電力値などをいうが、本実施の形態においては、送信装置からFFT回路部5の出力に至るまでの伝送路を経た受信信号に対応する遅延時間および受信電力を当該遅延プロファイルとして扱う。
図3(b)では、第1データ区間に対応する同期タイミングと第1到来波におけるガード区間最後尾との差aが、第1到来波の同期タイミングに対する遅延時間となり、第1到来波のスペクトルが遅延時間aの位置に現れる。同様に、図3(c)では、第2データ区間に対応する同期タイミングと第1到来波におけるガード区間最後尾との差bが、同期タイミングに対する第1到来波の遅延時間となり、第1到来波のスペクトルが遅延時間bの位置に現れる。図3(d)では、第3データ区間に対応する同期タイミングと、第1到来波におけるガード区間最後尾とが一致しているため、第1到来波のスペクトルが遅延時間0の位置に現れ、第2到来波のスペクトルが、各到来波の到来時間差に相当する量tだけ離れた位置に現れる。なお、第1データ区間および第2データ区間の場合も、第2到来波のスペクトルは、第1到来波のスペクトルに対してtだけ離れた位置に現れる。
遅延プロファイル生成部である遅延プロファイル生成回路部13は、第1除算回路部10から与えられるパイロット信号の伝送路特性に基づいて、送信装置から送信されたデータに対応する信号がFFT回路部5の出力に至るまでの伝送路に対応する遅延時間対受信電力を演算し、また固定位相回転除去部7から与えられるサブキャリア成分に基づいて前記遅延時間対受信電力を演算し、これらの遅延時間対受信電力に基づいて前記最適化に必要な信号を出力する。
図4は、本発明の第1の実施の形態における遅延プロファイル生成回路部13の構成を示すブロック図である。遅延プロファイル生成回路部13は、信号ソート部21、第1逆フーリエ変換部22a、第2逆フーリエ変換部22b、第1相対レベル演算部23a、第2相対レベル演算部23b、到来波判定部24、最大遅延波判定部25、最大遅延時間演算部26および同期タイミングオフセット演算部27を備えて構成される。
信号ソート部21は、第1除算回路部10から与えられるパイロット信号の伝送路特性を周波数の高い順または低い順に並べる。ただし、パイロット信号の配置が、図2に示すようにシンボル毎にオフセットしている場合は、受信パイロット信号の周波数が受信シンボルによって変化してしまう。従って、このような場合には、現在の受信シンボルよりも以前に受信したシンボルのパイロット信号も利用し、信号ソート部21の出力において、受信パイロット信号の周波数が変化しないようにする。例えば、パイロット信号が図2に示すように時間方向に4シンボルおきに配置される場合は、現在の受信シンボルを含めて過去4シンボル分のパイロット信号をソートする。
第1逆フーリエ変換部22aは、信号ソート部21によって周波数の高い順または低い順に並べられたパイロット信号に対応する伝送路特性に対して逆フーリエ変換を行い、当該逆フーリエ変換の結果に対応する信号を第1相対レベル演算部23aに与える。
第1相対レベル演算部23aは、第1逆フーリエ変換部22aから与えられる信号、すなわちパイロット信号の伝送路特性に対応する信号の振幅または振幅の2乗値を演算して、当該演算の結果を到来波判定部24に与える。ここで、第1相対レベル演算部23aの出力、すなわち前記振幅または振幅の2乗値は、前記遅延プロファイルにおける遅延時間対受信電力に相当する。
到来波判定部24は、第1相対レベル演算部23aから与えられた演算結果、すなわち前記振幅または振幅の2乗値のうち、予め定めるしきい値よりも大きな成分を、到来波に対応する成分(以下「到来波成分」ともいう)と判定し、当該到来波成分が存在する時間軸上の位置と同期タイミングとの相対的時間差を遅延時間として、最大遅延波判定部25に与える。ただし、本実施の形態において、最も先行する到来波、図3(a)では第1到来波におけるガード区間の最後尾を同期タイミングとしてフーリエ変換した場合、当該最も先行する到来波は最も遅延時間の小さい到来波として検出される。本実施の形態では、遅延時間が負の値として得られた到来波が存在する場合には、i+1番目のシンボルとのシンボル間干渉が発生していることを意味する。
第2逆フーリエ変換部22bは、固定位相回転除去部7から出力されたサブキャリア成分全てに対して逆フーリエ変換を行う。さらに述べると、第2逆フーリエ変換部22bでは、サブキャリア毎に異なる位相回転成分をキャンセルするために、サブキャリア成分のI信号(同相成分)の2乗値とQ信号(直交成分)の2乗値とを加算した値を用いて逆フーリエ変換を行う。サブキャリア成分の固定位相回転成分については、固定位相回転除去部7で取り除かれている。第2逆フーリエ変換部22bは、逆フーリエ変換の結果に対応する信号を第2相対レベル演算部23bに与える。
第2相対レベル演算部23bは、第2逆フーリエ変換部22bから与えられる全てのサブキャリア成分についての逆フーリエ変換の結果に対応する信号の振幅または振幅の2乗値を演算して、当該演算の結果を最大遅延波判定部25に与える。ここで、第2相対レベル演算部23bの出力、すなわち前記振幅または振幅の2乗値は、前記遅延プロファイルにおける遅延時間対受信電力に相当する。
第2逆フーリエ変換部22bにおける逆フーリエ変換の元信号、すなわち固定位相回転除去部7から出力されたサブキャリア成分は、既知信号ではないので、前記I信号(同相成分)の2乗値とQ信号(直交成分)の2乗値とを用いて行った逆フーリエ変換の結果からは、明確なマルチパス位置を特定することが難しい。しかし、第2フーリエ変換部22bでは、第1逆フーリエ変換部22aのようにパイロット信号のみを用いた逆フーリエ変換をする場合に比べて、逆フーリエ変換される信号の周波数が高いので、パイロット信号のみを用いた逆フーリエ変換をする場合よりも広い周波数帯域についての情報を得ることが可能である。たとえば、信号ソート部21でソートされた過去4シンボル分のパイロット信号の伝送路特性が第1逆フーリエ変換部22aに与えられる場合、パイロット信号は、周波数方向においてサブキャリア成分12個おきに周期的に挿入されているので、第2逆フーリエ変換部22bにおける逆フーリエ変換の結果からは、パイロット信号のみを用いた逆フーリエ変換をする場合の3倍の周波数帯域についての情報を得ることが可能である。したがって、マルチパス検出範囲を広げることができるので、最適な位置にFFT用の時間窓位置を設定することができる。
第1逆フーリエ変換部22aにおいて、パイロット信号を用いて行った逆フーリエ変換の結果から検出されたマルチパス信号は、ディジタル信号の特性から、折り返し成分が観測されている可能性がある。
したがって最大遅延波判定部25は、到来波判定部24から与えられる遅延時間に基づいて、最も遅延時間の大きな到来波成分を求め、その到来波成分の折り返し成分に相当する遅延時間の位置に、ピークと思われる成分が存在しないか否かを、第2相対レベル演算部23bから与えられる前記遅延時間対受信電力に基づいて判定する。前記到来波成分の折り返し成分に相当する位置にピークと思われる成分が存在すると判定した場合、最大遅延波判定部25は、前記最も遅延時間の大きな到来波成分の次に遅延時間の大きな到来波成分を求め、前述のようにして、折り返し成分に相当する遅延時間の位置にピークと思われる成分が存在するか否かを判定する。この判定は、前記到来波成分の折り返し成分に相当する位置にピークと思われる成分が存在しないと判定されるまで続けられる。
最大遅延波判定部25は、前記到来波成分の折り返し成分に相当する位置にピークと思われる成分が存在しないと判定すると、その到来波成分を最大遅延波成分と判定し、その判定結果を最大遅延時間演算部26および同期タイミングオフセット演算部27に与える。また最大遅延波判定部25は、到来波判定部24から与えられる遅延時間をそのまま最大遅延時間演算部26および同期タイミングオフセット演算部27に与える。
最大遅延時間演算部26は、最大遅延波判定部25から与えられる判定結果に基づいて、最大遅延波判定部25を介して到来波判定部24から与えられた遅延時間のうち、最も遅延時間の大きな最大遅延波成分の遅延時間に対応する信号(以下「フィルタ帯域制御信号」ともいう)を周波数内挿フィルタ部14に与える。
同期タイミングオフセット演算部27は、最大遅延波判定部25を介して到来波判定部24から与えられる遅延時間に基づいて、最も遅延時間の小さな到来波成分である最小遅延波成分を判定し、その最小遅延波成分の遅延時間に対応する信号(以下「タイミングオフセット調整信号」ともいう)をタイミング同期回路部6に与える。なお、前記遅延時間と前記フィルタ帯域制御信号の大きさ、例えば電力値、電流値および電圧値などとの関係、または前記遅延時間と前記タイミングオフセット調整信号の大きさ、例えば電力値、電流値および電圧値などとの関係は、例えば、比例関係となるように設定することができる。
このように遅延プロファイル生成回路部13によって、前記パイロット信号の前記伝送路特性と、前記サブキャリア成分を逆フーリエ変換して得られる結果とに基づいて遅延プロファイルを生成し、前記最大遅延時間に対応する信号および前記最小遅延時間に対応する信号を出力する工程は、遅延プロファイル生成工程に相当する。
内挿フィルタ部である周波数内挿フィルタ部14は、最大遅延時間演算部26から与えられた前記フィルタ帯域制御信号に基づいて、時間内挿フィルタ部12において時間方向への内挿が行われた同一周波数の各サブキャリア成分に対応する伝送路特性に対して、最大の遅延時間に対応する到来波が通過するのに必要かつ十分なフィルタのうち最も狭帯域な通過帯域を持つ内挿フィルタを選択する。そして、選択した内挿フィルタに基づいて周波数方向の内挿処理を行う。時間内挿フィルタ部12および周波数内挿フィルタ部14によって、受信パイロット信号に対応する伝送路特性に対して、時間方向の内挿処理および周波数方向の内挿処理をそれぞれ行う工程は、内挿工程に相当する。
前述の時間内挿フィルタ部12および周波数内挿フィルタ部14における内挿処理によって、全てのサブキャリア成分に対する伝送路特性を得ることができる。なお、上述した周波数内挿フィルタ部14は、例えば、低域を通過するローパスフィルタによって構成することができる。
タイミング同期部であるタイミング同期回路部6は、直交復調回路部4から与えられる直交復調信号および同期タイミングオフセット演算部27から与えられるタイミングオフセット調整信号に応じて、フーリエ変換を行うタイミングに対応する情報を生成し、当該情報に対する信号をタイミング信号としてFFT回路部5に与える。タイミング同期回路部6によって、フーリエ変換を行うタイミングに対応する情報を生成し、当該情報に対する信号をタイミング信号として出力する工程は、タイミング同期工程に相当する。
第2除算部である第2除算回路部15は、遅延調整回路部8で遅延された各サブキャリア成分を、周波数内挿フィルタ部14から出力されたサブキャリア成分に対応する伝送路特性で除算し、各サブキャリア成分を復調する。第2除算回路部15によって、前記遅延調整回路部8で遅延された各サブキャリア成分を、周波数内挿フィルタ部14から出力されたサブキャリア成分に対応する伝送路特性で除算して復調信号を出力する工程は、第2除算工程に相当する。データ再生部16では、第2除算回路部15で復調されたサブキャリア成分の信号点配置から送信データを再生し、この送信データを再生データとして出力する。
以上のように本実施の形態によれば、遅延プロファイル生成回路部13は、受信したOFDM信号をFFT回路部5でフーリエ変換して得られるサブキャリア成分に含まれるパイロット信号、すなわちフーリエ変換後のパイロット信号と、FFT回路部5でフーリエ変換して得られるサブキャリア成分の全て、すなわちフーリエ変換後の全ての受信信号とを利用して遅延プロファイルを生成するので、フーリエ変換後のパイロット信号のみを利用して遅延プロファイルを生成する場合に比べて、マルチパス検出範囲を広げることができる。これによって遅延プロファイルを精度良く、広範囲に渡って生成することができる。
このような遅延プロファイルにおける最大遅延時間に対応する信号に基づいて、周波数内挿フィルタ部14で周波数内挿フィルタの通過帯域が設定されるので、周波数内挿フィルタの通過帯域が過度に広くなることを防ぐことができる。また遅延プロファイルにおける最小遅延時間に対応する信号に基づいて、タイミング同期回路部6によってタイミング信号が出力され、このタイミング信号に応じてFTT回路部5でフーリエ変換が行われるので、FFT回路部5でフーリエ変換を行う同期タイミングを調整しながら周波数内挿フィルタの通過帯域を制御することができる。したがって、周波数内挿フィルタの通過帯域を必要最小限に抑えることができるので、最適な位置にフーリエ変換用の時間窓位置を設定することができる。
このような周波数内挿フィルタを使用して、第1除算回路部10で算出されたパイロット信号の伝送路特性に対して、周波数内挿フィルタ部14で周波数方向への内挿が行われるので、不要な雑音成分が周波数内挿フィルタを通過することを抑制することができる。このようにして周波数内挿フィルタ部14で周波数方向への内挿が行われるとともに、時間内挿フィルタ部12で時間方向への内挿が行われて、サブキャリア成分に対応する伝送路特性が出力される。このサブキャリア成分に対する伝送路特性で、FFT回路部5から出力されたサブキャリア成分が第2除算回路部15で除算されて、復調信号が出力される。したがって、不要な雑音成分が周波数内挿フィルタを通過することによる受信性能の劣化を軽減することができる。
<第2の実施の形態>
図5は、本発明の第2の実施の形態における遅延プロファイル生成回路部13Aの構成を示すブロック図である。本実施の形態の遅延プロファイル生成回路部13Aの構成は、前述の第1の実施の形態の遅延プロファイル生成回路部13の構成と類似しているので、異なる部分についてのみ説明し、対応する部分には同一の参照符を付して重複する説明を省略する。
前述の第1の実施の形態では、遅延プロファイル生成回路部13による遅延プロファイル生成におけるパイロット信号の処理と全サブキャリアを用いた処理とは、同じシンボルに対して行われるが、伝送路歪の変動が急峻でない場合、遅延プロファイル生成におけるパイロット信号の処理と全サブキャリアを用いた処理とは、同じシンボルに対して行う必要は無い。そこで本実施の形態では、パイロット信号による遅延プロファイル生成処理と、受信したサブキャリア成分全てを用いる遅延プロファイル生成処理とを、それぞれ異なるシンボルを用いて行う。具体的には、本実施の形態における遅延プロファイル生成回路部13Aは、第1除算回路部10で算出されたパイロット信号の伝送路特性と、FFT回路部5から出力されたサブキャリア成分のうち、第1除算回路部10で伝送特性が算出されたパイロット信号を含むシンボルとは別のシンボルに含まれるサブキャリア成分を逆フーリエ変換して得られる結果とに基づいて、遅延プロファイルを生成する。
遅延プロファイル生成回路部13Aは、信号ソート部21、逆フーリエ変換部22、相対レベル演算部23、到来波判定部24、最大遅延波判定部25、最大遅延時間演算部26、同期タイミングオフセット演算部27および入力信号切換スイッチ部28を備えて構成される。
入力信号切換スイッチ部28は、2つの入力端子、すなわち第1および第2入力端子28a,28bと1つの出力端子28cとを備える。第1入力端子28aには、信号ソート部21から出力されたパイロット信号が入力され、第2入力端子28bには、固定位相回転除去部7から出力された各サブキャリア成分が入力される。入力信号切換スイッチ部28は、後述する最大遅延波判定部25Aから与えられる切換信号に応じて、第1入力端子28aと出力端子28cとが接続される状態と、第2入力端子28bと出力端子28cとが接続される状態とを切換える。
第1入力端子28aと出力端子28cとが接続される状態では、信号ソート部21からのパイロット信号が逆フーリエ変換部22に与えられ、第2入力端子28bと出力端子28cとが接続される状態では、固定位相回転除去部7からの各サブキャリア成分が逆フーリエ変換部22に与えられる。
逆フーリエ変換部22に、信号ソート部21からのパイロット信号が与えられると、逆フーリエ変換部22および相対レベル演算部23は、前述の第1の実施の形態の遅延プロファイル生成回路部13における第1逆フーリエ変換部22aおよび第1相対レベル演算部23aと同様の処理をする。これによって、パイロット信号の伝送路特性に対応する信号の振幅または振幅の2乗値の演算結果、すなわち遅延プロファイルにおける遅延時間対受信電力が到来波判定部24に与えられる。
到来波判定部24は、前述の第1の実施の形態と同様の処理をして、到来波成分が存在する時間軸上の位置と同期タイミングとの相対的時間差を遅延時間として、最大遅延波判定部25Aに与える。最大遅延波判定部25Aは、到来波判定部24から前記相対的時間差が遅延時間として与えられると、入力信号切換スイッチ部28における接続状態を切換える切換信号を、入力信号切換スイッチ部28に与える。入力信号切換スイッチ部28では、前記切換信号に応じて、第1入力端子28aと出力端子28cとが接続される状態から、第2入力端子28bと出力端子28cとが接続される状態に切換わる。
また逆フーリエ変換部22に、固定位相回転除去部7からの各サブキャリア成分が与えられると、逆フーリエ変換部22および相対レベル演算部23は、前述の第1の実施の形態の遅延プロファイル生成回路部13における第2逆フーリエ変換部22bおよび第2相対レベル演算部23bと同様の処理をする。これによって、全てのサブキャリア成分についての逆フーリエ変換の結果に対応する信号の振幅または振幅の2乗値の演算結果、すなわち遅延プロファイルにおける遅延時間対受信電力が最大遅延波判定部25Aに与えられる。
最大遅延波判定部25Aは、到来波判定部24から与えられる遅延時間と相対レベル演算部23から与えられる遅延時間対受信電力とに基づいて、最も遅延時間の大きな到来波成分、すなわち最大遅延波を判定し、判定結果を最大遅延時間演算部26および同期タイミングオフセット演算部27に与える。また最大遅延波判定部25Aは、到来波判定部24から前記相対的時間差が遅延時間として与えられると、入力信号切換スイッチ部28における接続状態を切換える切換信号を、入力信号切換スイッチ部28に与える。入力信号切換スイッチ部28では、前記切換信号に応じて、第2入力端子28bと出力端子28cとが接続される状態から、第1入力端子28aと出力端子28cとが接続される状態に切換わる。
以上のように本実施の形態の復調装置によれば、遅延プロファイル生成回路部13Aは、第1除算回路部10で算出されたパイロット信号の伝送路特性と、FFT回路部5から出力されたサブキャリア成分のうち、第1除算回路部10で伝送特性が算出されたパイロット信号を含むシンボルとは別のシンボルに含まれるサブキャリア成分を逆フーリエ変換して得られる結果とに基づいて、遅延プロファイルを生成する。つまり、本実施の形態では、パイロット信号による遅延プロファイル生成処理と、受信したサブキャリア成分全てを用いる遅延プロファイル生成処理とは、互いに異なるシンボルに対して行われる。
このように遅延プロファイル生成処理を、2つのシンボルにわたって時系列に行うことによって、遅延プロファイル生成回路部13Aを小形化し、復調装置を小形化することが可能である。たとえば本実施の形態のように、逆フーリエ変換部22および相対レベル演算部23を1つずつ設け、入力信号切換スイッチ部28で入力される信号を切換える構成にすることができるので、第1の実施の形態における遅延プロファイル生成回路部13に比べて、逆フーリエ変換部22および相対レベル演算部23の数を2分の1(1/2)に削減することができ、回路規模を2分の1(1/2)に抑えることができる。このように遅延プロファイル生成回路部13Aを小形化することができるので、復調装置を小形化することができる。
1 受信アンテナ、2 チューナ部、3 A/D変換部、4 直交復調回路部、5 FFT回路部、6 タイミング同期回路部、7 固定位相回転除去部、8 遅延調整回路部、9 パイロット抽出回路部、10 第1除算回路部、11 既知信号生成回路部、12 時間内挿フィルタ部、13,13A 遅延プロファイル生成回路部、14 周波数内挿フィルタ部、15 第2除算回路部、16 データ再生部、21 信号ソート部、22 逆フーリエ変換部、22a 第1逆フーリエ変換部、22b 第2逆フーリエ変換部、23 相対レベル演算部、23a 第1相対レベル演算部、23b 第2相対レベル演算部、24 到来波判定部、25,25A 最大遅延波判定部、26 最大遅延時間演算部、27 同期タイミングオフセット演算部、28 入力信号切換スイッチ部、100 復調装置。