JP4682806B2 - プレス成形性に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、フェライト系ステンレス冷延鋼板に係り、とくにプレス成形性に影響する伸び特性の向上に関する。
フェライト系ステンレス鋼板は、耐食性に優れ、かつ安価であることから、建築物外装材、厨房器具、化学プラント等、広い範囲の用途に用いられている。従来、これらの用途ではフェライト系ステンレス鋼板には耐食性に優れることのみが要求され、プレス成形性に優れることまでの要求はなかった。しかし、近年、これらの用途でも、薄鋼板から複雑な三次元形状にプレス成形される場合が多くなり、フェライト系ステンレス鋼板にもプレス成形性に優れることが強く要望されるようになってきた。
このような要望に対し、例えば特許文献1には、C:0.08%以下、Si:0.70%以下、Mn:1.00%以下、Cr:15〜20%、N:0.04〜0.12%(但し、C+N:0.08〜0.15%)を含有し、Feおよび不可避的不純物:残り、よりなるフェライト系ステンレス鋼板が提案され、このフェライト系ステンレス鋼板を用いればプレス成形時のストレツチヤストレインの発生が防止できるとしている。しかし、特許文献1に記載された技術では、ストレツチヤストレインの発生は防止でき、成形後の表面研磨を省略できるが、C+Nが0.08%以上を必要とし、C、N含有量が多く、伸び自体が低い。このため、プレス成形に適した鋼板であるとは言い難いという問題があった。
また、特許文献2には、C:0.02〜0.05%、N:0.02〜0.05%、Al:0.10〜0.30%を含むステンレス鋼組成の鋼片を加熱し熱間圧延してフェライトとマルテンサイトの複合組織を有する熱延板とし、ついで得られた熱延板に850〜980℃の温度範囲で高温短時間焼鈍を施し、AlNを生成させたのち、冷間圧延、仕上焼鈍を施す、耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法が提案されている。しかし、特許文献2に記載された技術により得られた鋼板は、熱延板中に生じたマルテンサイトを短時間焼鈍するため、圧延方向に展伸したマルテンサイトが等軸化されず、著しい異方性を有し、一方向で割れが生じる恐れがあり三次元形状へのプレス成形用としては適さない。
また、特許文献3には、母溶鋼をCr:10〜23%を含み、γポテンシャルが23%以下のフェライト系ステンレス鋼とするとともに、連続鋳造中のモールド内中心未凝固部分にγポテンシャルを増加させる元素を含む粒子を投入し、投入した粒子を溶融固溶させ鋳片内層部のγポテンシャルを母溶鋼の値より5%以上増加させた鋼片として、熱間圧延、冷間圧延および焼鈍を含む工程により延性とリジング性の優れたフェライト系ステンレス鋼板とするフェライト系ステンレス鋼板の製造方法が提案されている。しかし、特許文献3に記載された技術により得られた鋼板では、リジングの発生は低減するものの、スラブ中央のγポテンシャルが高い領域の範囲が一定しないため、安定した効果が得られないうえ、伸び、r値の低下が著しくなり、プレス成形に適した鋼板であるとは言い難いという問題があった。
また、特許文献4には、C:0.01〜0.12%、N:0.01〜0.12%、Cr:11〜18%を含み、さらにV:0.03〜0.15%を含む鋼素材を熱間圧延して熱延板としたのち、熱延板に2〜15%の冷間または温間の予備圧延を施し、再結晶を促進させて短時間の熱延板焼鈍を可能とし、ついで冷間圧延および仕上焼鈍を施す、耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法が提案されている。
特開昭59−80753号公報 特開平9−111354号公報 特開平10−99952号公報 特開2001−107149号公報
しかしながら、特許文献4に記載された方法で製造された鋼板は、V炭窒化物が析出し結晶粒を微細化して材質を硬質化するため、降伏点が高くなり、十分なプレス成形性を有する鋼板であるとは言い難いという問題があった。
本発明は、上記した従来技術の問題を有利に解決し、伸びが高く、プレス成形性に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板およびその製造方法を提案することを目的とする。本発明でいう「プレス成形性に優れる」とは、JIS 13号B試験片を用いて引張試験を行った際に示される伸びEL値が30%以上の場合をいうものとする。
本発明者らは、上記した課題を達成するため、フェライト系ステンレス冷延鋼板のプレス成形性、とくに張り出し成形性に大きく影響する伸びと組織の関係について詳細な検討を行なった。その結果、本発明者らは、ステンレス冷延鋼板の伸びは、変形時の転位運動を活発化することにより増加することを突き止め、そのためには、AlNの微細析出を抑制して、微細AlNによる析出強化を低減するとともに結晶粒を粗大化し、さらにフェライト粒内に分散析出して、転位運動を阻害するCr炭窒化物の分散密度を所定値以下に調整し、Cr炭窒化物をまばらに分散させることがよいことを見出した。まばらに分散したCr炭窒化物間を転位が通過すれば塑性変形が促進される。
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)mass%で、C:0.010〜0.045%、N:0.01〜0.05%、Mn:1%以下、Cr:13〜20%、Al:0.01%以下を含み、かつC、Nを次(1)式
v(%)=100×{0.0196C+0.0015N} ………(1)
(ここで、v:Cr炭窒化物体積率(体積%)、C、N:各元素の含有量(mass%))
で定義されるCr炭窒化物の体積率vが0.09%以下となるように含み、さらに、Si:0.4%以下、P:0.05%以下、S:0.010%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、さらにフェライト粒の平均結晶粒径が10μm以上で、Cr炭窒化物がフェライト粒1個当たり50個以下分散したフェライト単一組織を有することを特徴とするプレス成形性に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板。
)ステンレス鋼素材に、熱間圧延工程と、熱延板焼鈍および酸洗を施す熱延板焼鈍処理工程と、冷間圧延工程と、冷延板焼鈍工程とを施しステンレス冷延鋼板とするフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法において、前記ステンレス鋼素材をmass%で、C:0.010〜0.045%、N:0.01〜0.05%、Mn:1%以下、Cr:13〜20%、Al:0.01%以下を含み、かつC、Nを次(1)式
v(%)=100×{0.0196C+0.0015N} ………(1)
(ここで、v:Cr炭窒化物の体積率(体積%)、C、N:各元素の含有量(mass%))
で定義されるCr炭窒化物の体積率vが0.09%以下となるように含み、さらに、Si:0.4%以下、P:0.05%以下、S:0.010%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材とし、前記熱延工程を、1000℃以上に加熱し、900℃以上の温度で熱間圧延を終了し熱延板としたのち、該熱延板を巻取温度:650℃以上で巻取る工程とし、前記冷延工程を冷間圧下率:90%以下の冷間圧延を施し冷延板とする工程とし、前記冷延板焼鈍工程を、該冷延板に焼鈍温度:800〜900℃とする連続焼鈍を施す工程とすることを特徴とするプレス成形性に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法。
本発明によれば、伸びが高くなり、プレス成形性、とくに張り出し成形性が顕著に向上した、ステンレス冷延鋼板を容易に、しかも安価に製造でき、産業上格段の効果を奏する。
まず、本発明のステンレス冷延鋼板の組成限定理由について説明する。以下、組成におけるmass%は単に%で記す。
C:0.010〜0.045%
Cは、鋼中に固溶して熱間圧延中のオーステナイト相安定化に寄与するとともに、Crと結合してCr炭化物、あるいはCr炭窒化物として結晶粒内や結晶粒界等に析出する。C含有量が0.010%未満では、熱間圧延中のオーステナイト相分率が低下し、そのため製品板である冷延鋼板においてリジングの発生が顕著となりプレス成形性が劣化する。一方、0.045%を超える含有は、Cr炭化物量、あるいはCr炭窒化物量が増加しすぎて鋼板が硬質化し伸びが低下する。このため、Cは0.010〜0.045%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.010〜0.030%である。
N:0.01〜0.05%
Nは、Cと同様に、鋼中に固溶して熱間圧延中のオーステナイト相安定化に寄与するとともに、Crと結合してCr窒化物、あるいはCr炭窒化物として結晶粒内や結晶粒界等に析出する。N含有量が0.01%未満では、熱間圧延中のオーステナイト相分率が低下し、そのため製品板である冷延鋼板においてリジングの発生が顕著となりプレス成形性が劣化する。一方、0.05%を超える含有は、 Cr窒化物量、あるいはCr炭窒化物量が増加しすぎて鋼板が硬質化し伸びが低下する。このため、Nは0.01〜0.05%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.01〜0.035%である。
C、Nは上記した範囲内でかつ(1)式で定義されるCr炭窒化物の体積率vが0.09%以下となるように含有される。本発明では、Al含有量を低減しているため、C、NはCrと結合し、Cr炭窒化物となる。ここでいう、Cr炭窒化物はCr23C6、Cr2Nおよびこれらの複合析出物を指す。
Cr炭窒化物の体積率v:0.09%以下
Cr炭窒化物の体積率vは、次(1)式
v(%)=100×{0.0196×C+0.0015N} ………(1)
(ここで、v:Cr炭窒化物の体積率(体積%)、C、N:各元素の含有量(mass%))
で定義される。Cr炭窒化物の体積率vが0.09%を超えると、Cr炭窒化物が多くなり、フェライト粒1個当り50個以下とすることが難しくなる。このため、プレス成形時にCr炭窒化物と転位運動とが相互作用するようになり、伸びが低下する。このため、(1)式で定義されるCr炭窒化物の体積率vを0.09%以下に限定した。なお、vは好ましくは0.05(%)以下である。
なお、(1)式中の0.0196Cは、Cr炭化物Cr23C6の体積率(計算上)を意味し、0.0015NはCr窒化物Cr2Nの体積率(計算上)を意味する。
Mn:1%以下
Mnは、鋼中に固溶して鋼を強化する作用を有するとともに、Cr炭窒化物の体積率、すなわちフェライト粒内個数に影響する元素であり、Cr炭窒化物の分散化を制御するために本発明では0.6%以上含有することが望ましいが、1%を超えて含有すると、鋼を硬質化し、プレス成形性が低下する。このため、Mnは1%以下に限定した。なお、好ましくは0.9%以下、より好ましくは0.70〜0.85%である。また、脱酸生成物の形態制御の観点からは、Mn/Siを2以上とすることが好ましい。
Cr:13〜20%
Crは、鋼を固溶強化するとともに、耐食性向上に寄与する元素であり、ステンレス鋼板として必須の元素であるが、Cr含有量が13%未満ではステンレス鋼としての耐食性を維持することができない。一方、20%を超えて含有すると、鋼が硬質化しすぎて伸びが低下する。このため、Crは13〜20%の範囲に限定した。
Al:0.01%以下
Alは、脱酸剤として作用するとともに、鋼中ではNと結合しAlNとして析出し、鋼を硬質化する。AlNは、Cr炭窒化物より先に析出し、微細に析出する。微細AlNの析出は鋼を硬質化し、伸びを低下させる。このため本発明では、Alは0.01%以下に限定した。なお、好ましくは0.005%以下である。
本発明では、上記した成分以外は、Si:0.4%以下、P:0.05%以下、S:0.010%以下に限定することが好ましい。
Si:0.4%以下
Siは、脱酸剤として作用する元素であり、Al含有量を低く限定する本発明では、脱酸はSiで行なう。また、Siは固溶強化元素であり、多量の含有は鋼を硬質化する。また、Siはフェライト形成元素であり、熱間圧延中にフェライト相分率を増加させる。このため、多量のSi含有はリジングの発生を顕著にする。リジング発生防止および鋼の硬質化防止の観点から、本発明ではSiは0.4%以下、好ましくは0.2%以下に限定した。
P:0.05%以下
Pは、固溶して鋼を著しく強化する作用を有するが、フェライト結晶粒界に偏析し鋼を脆化させる元素であり、本発明ではできるだけ低減することが望ましいが、0.05%までは許容できる。なお、高い伸び値を確保するためには、0.03%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.02%以下である。
S:0.010%以下
Sは、鋼中では硫化物を形成する。Mnを含有する場合にはMnと結合しMnSを形成する。MnSは熱間圧延等により展伸し、フェライト粒界等に析出物(介在物)として存在する。このような硫化物系析出物(介在物)は伸びを低下させ、とくに曲げ加工時の亀裂発生に大きく影響するため、Sはできるだけ低減することが望ましいが、0.010%までは許容できる。なお、好ましくは0.005%以下である。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。なお、不可避的不純物としては、Ni:0.5%以下、Cu:0.05%以下、Mo:0.1%以下、V:0.05%以下、Nb:0.03%以下、Ti:0.03%以下、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下が許容できるが、不可避的不純物量は少ないほど好ましいことは言うまでもない。
次に、本発明のフェライト系ステンレス冷延鋼板の組織限定理由について説明する。
本発明のフェライト系ステンレス冷延鋼板の組織は、フェライト単一組織とする。ここでいう、「フェライト単一組織」とは、フェライト相と、フェライト結晶粒内或いはフェライト結晶粒界に析出した析出物からなる組織をいうものとする。フェライト相以外に、マルテンサイト相、ベイナイト相やオーステナイト相等の第二相が混入すると、鋼が硬質化し所望の伸びが得られない。
フェライト粒の平均結晶粒径;10μm以上
フェライト平均結晶粒径が10μm未満では、隣接粒の拘束で結晶粒界から転位が増殖しやすく、転位同士の相互作用で転位運動が阻害されやすく塑性変形が進まず、伸びが低下する。このため、フェライト粒の平均結晶粒径の下限値を10μmとした。なお、ここでいう、「フェライト粒径」は、JIS G 0552の規定に準拠した切断法に従い求めた平均値であり、ASTM公称粒径を意味する。
Cr炭窒化物:フェライト粒1個当たり50個以下
フェライト粒の粒内に分散析出したCr炭窒化物が、フェライト粒1個当たり50個を超えると、析出したCr炭窒化物と塑性変形で粒界より生じた転位との相互作用が生じて、転位がCr炭窒化物間を障害なく運動できなくなり、伸びが低下する。このため、フェライト粒1個当たりに分散析出するCr炭窒化物の個数を50個以下に限定した。ここでいう、「Cr炭窒化物」とは、Cr炭化物、Cr窒化物の総称であり、これらが複合した場合には、複合体を1個として数えるものとする。ここでいう、Cr炭化物は主としてCr23C6を、Cr窒化物は主としてCr2Nを指す。なお、Cr23C6、Cr2Nの一部がFe、Mn等の他の元素と置換しても結晶構造がCr23C6、Cr2Nと同等であれば、効果に差異はない。ここでいう、「Cr炭窒化物の個数」には、フェライト粒内に分散するもののみを含み、粒界に析出したものは含まない。
なお、フェライト粒1個当たりに分散析出するCr炭窒化物の個数は、圧延方向に平行な板厚断面の組織写真から求めるものとする。また、Cr炭窒化物の個数は、断面組織で隣り合う少なくとも20個の粒について測定した値の算術平均値を用いるものとする。
つぎに、本発明のフェライト系ステンレス冷延鋼板の好ましい製造方法について説明する。
本発明のフェライト系ステンレス冷延鋼板は、上記した組成のステンレス鋼素材に、熱間圧延工程と、熱延板焼鈍および酸洗処理を施す熱延板焼鈍工程と、冷間圧延工程と、冷延板焼鈍工程とを施して、製造される。
上記した組成のステンレス溶鋼を公知の溶製方法で溶製したのち、公知の鋳造法、好ましくは連続鋳造法でスラブ等のステンレス鋼素材とする。本発明では、溶製方法、鋳造法についてとくに限定されるものではない。公知の方法がいずれも適用できる。
得られたステンレス鋼素材に、ついで、熱延工程を施す。
熱延工程では、ステンレス鋼素材を、好ましくは1000℃以上の温度に加熱する。加熱温度が1000℃未満の場合には、圧延荷重が過大となり、粗大粒組織の鋼素材では圧延により微細な割れ、へゲ、表面光沢劣化等の表面品質の劣化が起こる。このため、鋼素材の加熱温度は1000℃以上に限定することが好ましい。
加熱されたステンレス鋼素材には、900℃以上の温度で熱間圧延を終了し熱延板としたのち、該熱延板を巻取温度:650℃以上で巻取る熱間圧延が施される。
熱間圧延の終了温度が900℃未満では圧延荷重が高くなり、圧延ロールの表面粗さが増加し、それに伴い熱延板の表面粗さも増加し鋼板の表面品質劣化に繋がる。このため、熱間圧延の終了温度は900℃以上にすることが好ましい。
巻取温度が650℃未満では、熱延工程中にCr炭窒化物の析出が遅れ、その後の工程における熱延板焼鈍でCr炭窒化物が微細に析出し、フェライト粒内の所定値以下のCr炭窒化物分散密度を確保することが難しくなる。このため、熱延板の巻取温度を650℃以上に限定することが好ましい。
ついで、熱延板には、熱延板焼鈍および酸洗処理を施す熱延板焼鈍工程が施される。本発明では、熱延板焼鈍および酸洗処理は、とくに限定する必要はなく、公知の熱延板焼鈍条件および酸洗処理条件とすることが好ましい。なお、通常の酸洗条件としては、混酸水溶液を用いることが、また、好ましい熱延板焼鈍条件としては、熱延板組織を均一化する観点から、箱焼鈍とすることができる。箱焼鈍の焼鈍温度としては、780℃以上とすることが好ましく、より好ましくは800℃以上である。
熱延板焼鈍工程を施された熱延板には、ついで、冷間圧延工程が施され、冷延板とされる。冷間圧延の条件は、所望の板厚の冷延板とすることができればよく、とくに限定されないが、フェライト粒径を10μm以上とする観点からは冷間圧下率:90%以下とすることが好ましい。より好ましくは80%以下である。
ついで、冷延板は、冷延板焼鈍工程を施される。本発明では、フェライト粒径を10μm以上とするために、冷延板焼鈍工程は、焼鈍温度:800℃以上、より好ましくは850℃以上に10s以上保持する連続焼鈍を施す工程とすることが好ましい。焼鈍温度が、800℃未満では、フェライト粒の成長が不十分となる。一方、焼鈍温度が900℃を超えて高くなると、一部がオーステナイト化し、冷却後マルテンサイト化する。上記した温度に10s間以上、好ましくは20s以上保持したのち、冷却速度:10℃/s以上で400℃以下まで冷却することが表面性状の観点から好ましい。
なお、冷延板焼鈍工程後に、形状矯正を目的とした、伸び率:1.5%以下、好ましくは0.3%以上の調質圧延を施してもよい。
表1に示すステンレス鋼組成の溶鋼を溶製しスラブとした。ついで、これらスラブに、表2に示す条件で、熱間圧延工程を施し、熱延板とした。得られた熱延板には、熱延板焼鈍として840℃×8時間の均熱処理後、降温過程で700℃で5時間保持する箱焼鈍を施し、ついで該熱延板を酸洗する熱延板焼鈍工程を施した。ついで熱延板には、表2に示す条件の冷間圧延を行なう冷間圧延工程を施し表2に示す板厚の冷延板とした。ついで該冷延板には、表2に示す条件で冷延板焼鈍工程を施し、冷延焼鈍板とした。
Figure 0004682806
Figure 0004682806
得られた冷延焼鈍板について、組織試験および引張試験を実施し、組織および引張特性を調査した。試験方法は次の通りとした。
(1)組織試験
冷延焼鈍板から試験片を採取し、圧延方向に平行な板厚断面で板厚中央部を研磨し、王水で腐食し、組織を現出した。得られた組織について、走査型電子顕微鏡(倍率:2000倍)を用いて観察し、組織を撮像して、画像解析装置によりフェライト粒内に分散析出したCr炭窒化物の個数を測定した。
Cr炭窒化物の個数の測定は、各試験片とも100個のフェライト粒について行い、各フェライト粒について得られたCr炭窒化物個数を平均し、該鋼板におけるフェライト粒1個当たりのCr炭窒化物の個数とした。
また、王水で腐食した組織について、光学顕微鏡(倍率:100倍)を用いて観察し、組織写真を撮影し、該組織写真を用いてJIS G 0552の規定に準拠した切断法に従いフェライト粒径を求めた。組織写真上で実長さ2mmの線分を板面に平行にして板厚方向に5本引き、また実長さ0.5mmの線分を板面に垂直に圧延方向に20本引き、これらの線分で切断されるフェライト粒の数を測定した。そして、線分長の合計を切断された結晶粒の個数で割り、1結晶粒当たりの線分の長さを求め、係数1.13を乗じてASTM公称粒径を算出し、各鋼板におけるフェライト粒平均粒径とした。
(2)引張試験
得られた冷延焼鈍板から、圧延方向が引張り方向となるようにJIS 13号B引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施し、引張特性(降伏強さYS、引張強さTS、伸びEl)を求めた。
得られた結果を表3に示す。
Figure 0004682806
本発明例はいずれも、フェライト粒径が10μm以上で、かつフェライト粒1個当たりのCr炭窒化物の個数が50個以下となる組織を有し、Elが30%以上と伸び特性(延性)に優れ、プレス成形性に優れていることが推察できる。一方、組成、フェライト粒径、あるいはCr炭窒化物の個数のいずれかまたは全てが本発明の範囲を外れる比較例は、Elが30%未満と延性が劣化している。

Claims (2)

  1. mass%で、
    C:0.010〜0.045%、 N:0.01〜0.05%、
    Mn:1%以下、 Cr:13〜20%、
    Al:0.01%以下
    を含み、かつC、Nを下記(1)式で定義されるCr炭窒化物の体積率vが0.09%以下となるように含み、さらに
    Si:0.4%以下、 P:0.05%以下、
    S:0.010%以下
    を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、さらにフェライト粒の平均結晶粒径が10μm以上で、Cr炭窒化物がフェライト粒1個当たり50個以下分散したフェライト単一組織を有することを特徴とするプレス成形性に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板。

    v(%)=100×{0.0196C+0.0015N} ………(1)
    ここで、v:Cr炭窒化物の体積率(体積%)、
    C、N:各元素の含有量(mass%)
  2. ステンレス鋼素材に、熱間圧延工程と、熱延板焼鈍および酸洗を施す熱延板焼鈍処理工程と、冷間圧延工程と、冷延板焼鈍工程とを施しステンレス冷延鋼板とするフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法において、前記ステンレス鋼素材をmass%で、
    C:0.010〜0.045%、 N:0.01〜0.05%、
    Mn:1%以下、 Cr:13〜20%、
    Al:0.01%以下
    を含み、かつC、Nを下記(1)式で定義されるCr炭窒化物の体積率vが0.09%以下となるように含み、さらに
    Si:0.4%以下、 P:0.05%以下、
    S:0.010%以下
    を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材とし、前記熱間圧延工程を、1000℃以上に加熱し、900℃以上の温度で熱間圧延を終了し熱延板としたのち、該熱延板を巻取温度:650℃以上で巻取る工程とし、前記冷延工程を冷間圧下率:90%以下の冷間圧延を施し冷延板とする工程とし、前記冷延板焼鈍工程を、該冷延板に焼鈍温度:800〜900℃とする連続焼鈍を施す工程とすることを特徴とするプレス成形性に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法。

    v(%)=100×{0.0196C+0.0015N} ………(1)
    ここで、v:Cr炭窒化物体積率(体積%)、
    C、N:各元素の含有量(mass%)
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