JP4681439B2 - 油中水型乳化組成物 - Google Patents
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Description
本発明は前述の従来技術の課題に鑑み行われたものであり、皮膚に対する保湿効果の高い油中水型乳化組成物でありながら、使用性の良好な高内水相比のものであり、且つ乳化安定性が良好である油中水型乳化組成物を提供することを目的とする。
紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸等の安息香酸系紫外線吸収剤、アントラミル酸メチル等のアントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル等のサリチル酸系紫外線吸収剤、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ウロカニン酸、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4-tert-ブチル-4'-メトキシベンゾイルメタン等が挙げられる。
金属イオン封鎖剤としては、エデト酸ナトリウム塩、メタリン酸ナトリウム、リン酸等が挙げられる。
酸化防止剤としては、アスコルビン酸、α-トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
薬剤としては、ビタミンA油、レチノール、パルミチン酸レチノール、イノシット、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸アミド、ニコチン酸DL-α-トコフェロール、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸2-グルコシド、ビタミンD2(エルゴカシフェロール)、dl-α-トコフェロール2-Lアスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム塩、dl-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール、パントテン酸、ビオチン等のビタミン類、アラントイン、アズレン等の坑炎症剤、アルブチン等の美白剤、酸化亜鉛、タンニン酸等の収斂剤、イオウ、塩化リゾチーム、塩酸ピリドキシン、γ−オリザノール等が挙げられる。
また、上記薬剤は遊離の状態で使用されるほか、造塩可能なものは酸または塩基の塩の型で、またカルボン酸基を有するものはそのエステルの形で使用することができる。
極性の油分については、乳化物の安定性を損なわない範囲で少量配合することが望ましい。極性油のうち、グリセリン脂肪酸ジエステルおよびグリセリン脂肪酸トリエステルは望ましくない。これら油相成分として配合されるグリセリン脂肪酸ジエステルおよびグリセリン脂肪酸トリエステルに成分(A)のモノオレイン酸グリセリンの不純物として含まれるグリセリン脂肪酸ジエステルおよびグリセリン脂肪酸トリエステルを加えた総量は少ないことが望ましい。具体的には、全油相成分中の20%を超えないことが好ましく、さらに好ましくは10%を超えないことである。20%を超えると、高温での乳化安定性が低下する傾向がある。
その他の極性油分としては、オクタン酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イロプロピル、イソパルミチン酸オクチル、オレイン酸イソデシル、コハク酸2−エチルヘキシル、セバシン酸ジエチルなどに代表されるエステル油等が挙げられる。
非極性油としては、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、パラフィン、イソパラフィン、セシレン等に代表される炭化水素油等が挙げられる。
本発明における液晶構造の判別方法としては、以下の様な手法が考えられる。まず、(A)成分のモノオレイン酸グリセリン、(B)成分のアルキル基に分岐鎖を有する界面活性剤および(C)の水性成分を良く混合した後、遠心分離処理により共存する複数の相を分離する。通常の遠心分離装置を用いた場合には、数時間から数日の処理時間を要する場合がある。共存する相がなく1相の状態であれば全体が均一に透明な状態となる。逆型を含むバイコンティニュアスキュービック液晶は、外観は透明で光学的には等方性であり、高粘度のゲル状を呈する。光学的に等方性であることは、偏光板2枚を90度の位相差で組み合わせた間にサンプルを保持し、光の透過がないことから判別できる。外観が透明で光学的に等方性であり、高粘度のゲル状の相については、さらに小角X線散乱によって構造を同定することができる。逆型を含むバイコンティニュアスキュービック液晶の散乱パターンは、Pn3m と呼ばれる構造の場合には√2、√3、√4、√6、√8 、√9、またはIa3dと呼ばれる構造の場合には√6、√8、√14、√16、√20のピーク比となる。
小角X線散乱に代わる簡便な方法として、H.Kunieda et al., J.Oleo Sci. vol.52, 429-432(2003)に記載されているように、水溶性および油溶性の色素を用いて、その拡散時間から構造を推定する方法もある。
成分(A)のモノオレイン酸グリセリン、成分(B)のアルキル基に分岐鎖を有する界面活性剤、成分(D)の油性成分およびその他の油溶性成分を混合し、約40度に加熱して溶解する。成分(C)の水性成分およびその他の水溶性成分を混合、溶解する。油溶性成分のパーツを比較的強く攪拌しながら水溶性成分のパーツを徐添する。
また、成分(A)のモノオレイン酸グリセリンの純度は、ガスクロマトグラフィー(GC)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの一般的な方法で測定することができる。
前記調製法で得られる油中水型乳化組成物の内水相比は、水および水溶性成分の質量を、水および水溶性成分と油および油溶性成分の合計質量で除することで計算される。
下記表1〜表6に示す組成物について、以下の評価基準に基づいて、乳化安定性、皮膚に対する保湿効果、使用感、相平衡を評価した。
1.高温での乳化安定性
40℃で一ヶ月保存後に目視にて安定性を評価した。
◎:水および/または油の分離が全く認められない。
○:水および/または油の分離が極僅かに認められる。
×:水および/または油の分離が明らかに認められる。
2.低温での乳化安定性
0℃で一ヶ月保存後に光学顕微鏡観察を行い安定性を評価した。
○:結晶の析出が全く認められない。
△:結晶の析出が極僅かに認められる。
×:結晶の析出が明らかに認められる。
3.皮膚に対する保湿効果
上腕部の初期コンダクタンス値を測定した後、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム5%水溶液で上腕部の脱脂を行った。各組成物を1週間連用した後のコンダクタンス値を測定した。
◎:初期のコンダクタンス値の8割以上に回復
○:初期のコンダクタンス値の4割〜8割に回復。
×:初期のコンダクタンス値の4割未満。
4.使用感
専門パネル10名により使用感の評価を行った。
◎:10名中9名以上がみずみずしくさっぱりしていると評価。
○:10名中7ないし8名がみずみずしくさっぱりしていると評価。
△:10名中4ないし6名がみずみずしくさっぱりしていると評価。
×:10名中3名以下がみずみずしくさっぱりしていると評価。
5.成分(A),(B),(C)を混合したときの相平衡
各成分を充分に混合した後、遠心分離により各相を分離した。その後、偏光顕微鏡観察および小角X線散乱測定により相平衡を決定した。
◎:バイコンティニュアスキュービック液晶と水相が共存。
○:バイコンティニュアスキュービック液晶と他の相および水相が共存。
×:バイコンティニュアスキュービック液晶以外の相の組み合わせにより構成。
これに対し、モノオレイン酸グリセリン及びフィタントリオールを併用した試験例1−6においては、優れた安定性のW/O型乳化組成物が調製することができた。
そこで、本発明者らは、モノオレイン酸グリセリン及びフィタントリオールの組み合わせによる乳化組成物の向上機構について検討を行った。
その結果、両者が共存する場合には、それぞれ単独の場合と比較して乳化安定性が優れる傾向にあるが、特に1:1〜5:1において優れた安定性が得られることが分かった。
なお、モノオレイン酸グリセリンとフィタントリオールとの合計配合量を4%とすると(試験例2−8)、安定性に問題はないが、使用感が低下する傾向にあった。また同様に合計配合量を0.1%とすると(試験例2−9)、安定性が低下する傾向があった。
以上の結果から、モノオレイン酸グリセリンとフィタントリオールとの配合比は1:1〜5:1が好ましく、またその合計量は組成物中4%以下、特に1.0〜3.0質量%であることが好ましいことが理解される。
次に本発明者らは、高内水相比のW/O型乳化組成物の相状態と乳化安定性についてさらに検討を進めた。
その結果、モノオレイン酸グリセリンの純度が90%である場合(試験例3−1)、乳化安定性に優れた組成物であるが、その純度が75%になると(試験例3−2)、相平衡はバイコンティニュアスキュービック液晶と水以外の他の相が共存する状態となり、高温における乳化安定性が若干低下した。さらに純度が45%とまで下がると(試験例3−3)、相平衡はバイコンティニュアスキュービック液晶を含まないものとなり、乳化安定性もさらに低下する傾向にあった。
また、油性成分中に含まれるグリセリン脂肪酸ジエステル及びグリセリン脂肪酸トリエステルの含有量が乳化安定性にもたらす影響についても検討した。試験例3−4に示すように、純度が90%のモノオレイン酸グリセリンを用い、トリイソオクタン酸グリセリルの配合量を増やした場合、乳化安定性は劣るものとなった。この時の全油性成分の含有量に対するグリセリン脂肪酸ジエステル及びグリセリン脂肪酸トリエステルの割合は22%であった。さらに、純度が45%のモノオレイン酸グリセリンを用い、トリイソオクタン酸グリセリルの配合量を増やした場合、乳化安定性は益々低下する傾向にあった。この時、モノオレイン酸グリセリン中に含まれるグリセリン脂肪酸ジエステル及びグリセリン脂肪酸トリエステルと、その他の油分のトリイソオクタン酸グリセリルを合計した量が、全油性成分の含有量に対し26%であった。
以上の結果から、モノオレイン酸グリセリン中に含まれるグリセリン脂肪酸ジエステル及びグリセリン脂肪酸トリエステルの存在はバイコンティニュアスキュービック液晶の形成を妨げ、相状態に影響を与えること、及び、モノオレイン酸グリセリン中に含まれるグリセリン脂肪酸ジエステル及びグリセリン脂肪酸トリエステル、もしくはその他の成分として含まれるグリセリン脂肪酸ジエステル及びグリセリン脂肪酸トリエステルの含有量の増加は乳化安定性を低下させる要因となることが理解される。
次に本発明者らは、高内水相比のW/O型乳化組成物でありながら、良好な乳化安定性を保持するために使用する界面活性剤について、さらに検討を進めた。
その結果、通常化粧料の乳化剤として汎用されている、ポリオキシエチレン構造を有する、適度なアルキル鎖長の界面活性剤を選択したところ、試験例4−1〜4−3のように乳化安定性に優れた組成物となることが分かった。しかし、同様のポリオキシエチレン構造及びアルキル鎖長であっても、アルキル基が分岐していない界面活性剤であると(試験例4−4,4−5)、低温での結晶化が問題となり乳化安定性が低下した。また、分岐鎖を有する同様のアルキル基であってもポリオキシエチレン構造を備えていないと(試験例4−6)、低温での乳化安定性が若干低下し、親水性の界面活性剤としての作用が低下するため、べとつき感が強くなり使用性も低下した。
以上の結果から、モノオレイン酸グリセリンと併用する界面活性剤としては、ポリオキシエチレン構造を有する、アルキル基に分岐構造を有するものを使用することが、高内水相比であり良好な安定性を保持したW/O型乳化組成物の調製のために好ましいことが理解される。また、この点に関して、バイコンティニュアスキュービック液晶と水との共相状態が乳化安定性の良否と相関関係があることが示唆された。
引き続き本発明者らは、モノオレイン酸グリセリンと併用する、ポリオキシエチレン構造を有するアルキル基に分岐構造を有する界面活性剤の検討を進めた。
その結果、POE鎖が5である試験例5−1はバイコンティニュアスキュービック液晶と水との相平衡であり乳化安定性に優れたものであった。一方、POEが18の試験例5−2、さらにはPOEが30の試験例5−3のようにPOE鎖が長くなるにつれ、相平衡がバイコンティニュアスキュービック液晶ではない他の相が占める割合が増し、乳化安定性も低下する傾向があることが理解される。特にPOEが30である試験例5−3、および5−4においては、併用するモノオレイン酸グリセリンと相補的に作用する、界面活性剤としての親水性が必要以上に増すため、W/O型乳化組成物としての調製には不向きな組み合わせとなってしまう。また、POE鎖を有さないと低温での乳化安定性が低下することは、前記表4の試験例4−6で示したとおりである。
以上のように、高内水相比でありながら、乳化安定性が優れるW/O型乳化組成物を得るためには、適度な親水性、および親油性である界面活性剤を組み合わせることが重要であり、モノオレイン酸グリセリンと組み合わせる界面活性剤としては、POE鎖が平均5〜15モルであるアルキル鎖に分岐構造を有するものが好ましいことが理解される。
さらに、本発明者らは、高内水相比であり乳化安定性に優れたW/O型乳化組成物を調製するにあたって配合する、他の油性成分について検討を進めた。
その結果、シリコーン油を含む試験例6−1及び6−2は安定性に優れており、この両者を比べると、環状シリコーン油を配合した試験例6−1が特に優れたものであることが理解される。一方、シリコーン油を含まない試験例6−6では極性油ほどではないが安定性が十分とはいえない。
さらに、シリコーン油以外の油性成分に着目すると、トリイソオクタン酸グリセリンを5%配合した試験例6−3は乳化安定性が低下した。なお、前記表3の試験例3−1ではトリイソオクタン酸グリセリンを含む組成ではあるものの、含有割合が2%と少量であったため乳化安定性を損なわなかったことから、配合量に依存するものと理解される。
また、エモリエント効果のあるオリーブ油のような天然油を配合した場合(試験例6−4)、および液状ラノリンのようなロウ類を配合した場合(試験例6−5)に乳化安定性が低下した。以上の結果より、前記表2の試験例2−3、2−4及び2−5に配合されているエステル油や、表6の試験例6−1に配合されている炭化水素油がその他の油性成分として配合されることが好ましいと理解される(図1を参照)。
Claims (5)
- 下記成分(A)(B)(C)(D)を含み、さらに下記(1)〜(3)の条件を満たすことを特徴とする油中水型乳化組成物。
成分:(A)モノオレイン酸グリセリン
(B)平均モル数5〜15のポリオキシエチレン鎖を有し、アルキル基に分岐鎖を有する界面活性剤、又はテトラメチルトリヒドロキシヘキサデカン
(C)水性成分
(D)油性成分
条件:(1)成分(C)の水性成分の質量を成分(C)の水性成分と成分(D)の油性成分
の質量の和で除することで得られる内水相比が70%以上である。
(2)成分(A)の不純物として含まれるグリセリン脂肪酸ジエステルおよび/またはグリセリン脂肪酸トリエステルが、成分(A)の25%未満であり、且つ、成分(D)の油性成分として配合される油分の一種として、または成分(A)の不純物として油相中に含まれるグリセリン脂肪酸ジエステルおよび/またはグリセリン脂肪酸トリエステルの含有割合が、成分(D)の油性成分の全質量に対し、20%を超えない。
(3)成分(A)と成分(B)の質量比が1:1〜5:1であり、且つ成分(A)と成分(B)を合わせた質量が全質量に対して1.0〜3.0質量%である。 - 請求項1に記載の組成物において、成分(C)と成分(A)および成分(B)を混合することで得られる相平衡状態がバイコンティニュアスキュービック液晶と水相、またはバイコンティニュアスキュービック液晶と他の相および水相が共存する多相状態であることを特徴とする油中水型乳化組成物。
- 請求項1又は2に記載の組成物において、成分(B)のアルキル基に分岐鎖を有する界面活性剤がポリオキシエチレンイソステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレングリセリルイソステアレートからなる群から選ばれる一種または二種以上であることを特徴とする油中水型乳化組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の組成物において、成分(D)の油性成分として環状シリコーン油を含むことを特徴とする油中水型乳化組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の組成物において、成分(D)の油性成分中にグリセリン脂肪酸ジエステルおよび/またはグリセリン脂肪酸トリエステルを含まないことを特徴とする油中水型乳化組成物。
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