ここで、上記先行技術のように、左右一対のエアバッグをフードアウタパネル上に展開させる構成において、左右一対のバッグ膨出用開口部を車両幅方向に並べて形成する場合、フードアウタパネルの後端側に左右一対のバッグ膨出用開口部を直接形成することになるため、フードアウタパネルの後端側中央に双方のバッグ膨出用開口部のコーナー部が集まる。かかるコーナー部にはカバー取付座が形成される関係で、歪みによる変形が生じ易い。このため、フードアウタパネルの後端側中央にコーナー部が集まると、フードアウタパネルに与える歪みの影響が大きくなり、円滑な意匠面を成形することが難しくなる。
本発明は上記事実を考慮し、フードアウタパネルの後端側に左右一対のバッグ膨出用開口部を設ける構成において、フードアウタパネルの意匠性を向上させることができる車両用フードエアバッグ装置を得ることが目的である。
請求項1記載の車両用フードエアバッグ装置は、フード外板を構成するフードアウタパネルの後端側下方又はその近傍の所定位置に配置され、衝突体との前面衝突時にガスを噴出するガス発生手段と、フードアウタパネルの後端側にフード幅方向に沿って形成された左右一対のバッグ膨出用開口部に対応してその下方側に折り畳み状態でそれぞれ格納されると共に、ガス発生手段からのガスの供給を受けて左右一対のバッグ膨出用開口部から膨張展開し少なくともフードアウタパネルの後端部及びカウルを覆う左右一対のエアバッグと、を有し、前記フードアウタパネルの後端側にはフード幅方向に沿って細長い凹部が形成されており、当該凹部の両端部に前記左右一対のバッグ膨出用開口部がカバー取付座が残るように形成されており、当該左右一対のバッグ膨出用開口部は前記凹部全体を覆うと共に前記エアバッグが膨張するとその全体がフード外方側へ展開される単一のカバーによって開放可能に覆われている、ことを特徴としている。
請求項2記載の本発明は、請求項1記載の車両用フードエアバッグ装置において、前記左右一対のエアバッグは、展開後の状態では、フード中央側に位置するバッグ幅方向の端部同士が互いに押し合っている、ことを特徴としている。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2記載の車両用フードエアバッグ装置において、前記エアバッグは、フードアウタパネルの後端部及びカウルを覆うバッグ本体部と、当該バッグ本体部と連通されかつフロントピラーの少なくとも下部を覆うバッグ延長部と、を含んで構成されており、前記ガス発生手段は左右一対のエアバッグに対応して左右一対設けられていると共に各々バッグ膨出用開口部の長手方向に沿って配置され、更にガス噴出孔がバッグ膨出用開口部の外側端部近傍に配置されている、ことを特徴としている。
請求項4記載の本発明は、請求項2記載の車両用フードエアバッグ装置において、前記バッグ本体部は、各々車両幅方向に沿って延在する複数の筒状のセルを車両前後方向に並べて配置することにより構成されている、ことを特徴としている。
請求項5記載の本発明は、請求項2記載の車両用フードエアバッグ装置において、前記左右一対のエアバッグの展開形状は、双方のバッグ幅方向の端部同士が他の一般部に比べて厚い膨らみ形状とされている、ことを特徴としている。
請求項6記載の本発明は、請求項2記載の車両用フードエアバッグ装置において、前記左右一対のエアバッグの展開形状は、双方のバッグ幅方向の端部同士がバッグ厚さ方向に係り合うオーバーラップ形状とされている、ことを特徴としている。
請求項7記載の本発明は、請求項2記載の車両用フードエアバッグ装置において、前記左右一対のエアバッグの展開形状は、双方のバッグ幅方向の端部同士がバッグ前後方向に係り合うオーバーラップ形状とされている、ことを特徴としている。
請求項8記載の本発明は、請求項2記載の車両用フードエアバッグ装置において、前記左右一対のエアバッグの接触側の端部には、双方のバッグ幅方向の端部同士を繋いで接触状態を保持する保持力を発生する保持手段が設けられている、ことを特徴としている。
請求項1記載の本発明によれば、歩行者等の衝突体と前面衝突すると、ガス発生手段によってガスが噴出される。噴出されたガスは左右一対のバッグ膨出用開口部の下方側に折り畳み状態で格納された左右一対のエアバッグ内に供給され、これらを膨張させる。これにより、左右一対のエアバッグが左右一対のバッグ膨出用開口部から膨出されて、少なくともフードアウタパネルの後端部及びカウルを覆うように膨張展開される。その結果、膨張展開した左右一対のエアバッグに歩行者等の衝突体が受け止められ、衝突時の衝突エネルギーが吸収されて歩行者等の衝突体が車体から受ける反力を下げることができる。
ここで、本発明では、フードアウタパネルの後端側にはフード幅方向に沿って細長い凹部が形成されており、当該凹部の両端部に左右一対のバッグ膨出用開口部がカバー取付座が残るように形成されている。そして、本発明では、凹部全体を覆うと共にエアバッグが膨張するとその全体がフード外方側へ展開される単一のカバーによって、左右一対のバッグ膨出用開口部を開放可能に覆ったので、フードアウタパネルの意匠性が向上される。
つまり、フードアウタパネルの後端側に凹部を形成することなく左右一対のバッグ膨出用開口部を直接形成すると、フードアウタパネルの後端側中央に双方のバッグ膨出用開口部のコーナー部が集まる。かかるコーナー部にはカバー取付座が形成される関係で、歪みによる変形が生じ易い。このため、フードアウタパネルの後端側中央にコーナー部が集まると、フードアウタパネルに与える歪みの影響が大きくなり、円滑な意匠面を成形することが難しくなる。
しかし、本発明によれば、フードアウタパネルの後端側にフード幅方向に沿って細長い凹部を先に形成し、その両端部に左右一対のバッグ膨出用開口部をカバー取付座が残るように形成したので、フードアウタパネルの後端側中央にコーナー部が集まってもそのコーナー部にはカバー取付座が形成されない。従って、歪みによる変形が生じ難くなる。加えて、仮にフードアウタパネルの後端側中央に集まったコーナー部に多少の歪みによる変形が生じたとしても、凹部全体を覆うカバーによって覆ってしまうので、フードアウタパネルの外部には見えない。従って、フードアウタパネルの意匠性が向上される。
請求項2記載の本発明によれば、フードアウタパネルの後端側にフード幅方向に沿って左右一対のバッグ膨出用開口部を形成し、かかるバッグ膨出用開口部から左右一対のエアバッグを少なくともフードアウタパネルの後端部及びカウルを覆うようにフード後端側へ向けて膨張展開させる構成を採っているため、左右のエアバッグは左右一対のバッグ膨出用開口部の形成範囲に亘ってその展開位置が規制(拘束)される。これだけでも、前述した先行技術文献に開示された構成よりも浮き上がり抑制効果が高められる。
但し、この構成を採った場合、左右一対のバッグ膨出用開口部の間に位置するバッグ幅方向の端部についてはその展開位置を規制(拘束)することができない。そこで、本発明では、展開後の状態で左右のエアバッグにおけるフード中央側に位置するバッグ幅方向の端部同士が互いに押し合う構成とした。これにより、左右一対のバッグ膨出用開口部間に位置するバッグ幅方向の端部についても、互いに押し合うことで展開位置を規制(拘束)する力が発生する。
上記より、本発明によれば、左右一対のエアバッグが膨張展開した際にエアバッグの展開位置をバッグ幅方向のほぼ全域において規制(拘束)することができる。従って、車両走行時の風圧等によってエアバッグが浮き上がるのを効果的に抑制することができる。
しかも、本発明では、左右のエアバッグがフードアウタパネルの後端側にフード幅方向に沿って形成された左右一対のバッグ膨出用開口部から膨張展開されて少なくともフードアウタパネルの後端部及びカウルを覆う構成としたので、広範囲に迅速にエアバッグを展開させることができる。つまり、先行技術文献に開示された技術では、乗員側から見てフード右端及び中央部にバッグ膨出用開口部が形成されており、これらのバッグ膨出用開口部を通るフード前後方向を回転中心として左右のエアバッグがフード幅方向に倒れ込む展開挙動を示すものであったため、フード中央側にエアバッグが配置されるまでに時間がかかったが、本発明では、フードアウタパネルの後端側にフード幅方向に沿って左右一対のバッグ膨出用開口部が形成されており、これらのバッグ膨出用開口部を通るフード幅方向を回転中心として左右のエアバッグがフード後方側へ展開する展開挙動を示すため、左右のエアバッグによってフードアウタパネルの後端部及びカウルが覆われるまでの時間が短い。従って、エアバッグの展開範囲を広く設定した場合に、当該展開範囲にエアバッグを迅速に展開させることができる。
請求項3記載の本発明によれば、エアバッグがフードアウタパネルの後端部及びカウルを覆うバッグ本体部だけでなく、フロントピラーの少なくとも下部を覆うバッグ延長部とを含んで構成されているため、より広範囲に歩行者等の衝突体の保護エリアを設定することができる。
しかも、ガス発生手段が左右のエアバッグに対応してバッグ膨出用開口部の長手方向に沿ってそれぞれ設けられており、ガス噴出孔が当該バッグ膨出用開口部の外側端部近傍に配置されているため、ガス噴出孔とバッグ延長部との距離が短くなる。従って、バッグ延長部に迅速にガスを供給することができる。
請求項4記載の本発明によれば、バッグ本体部が車両幅方向に沿って延在する複数の筒状のセルを車両前後方向に並べて配置することにより構成されているため、左右のエアバッグのフード中央側に位置するバッグ幅方向側の端部同士が押し合う膨張完了状態になると、フードアウタパネルの後端側にフード幅方向に沿って連続するセルが配置されることになる。従って、左右のエアバッグのバッグ本体部が折れ曲がり難くなり、エアバッグの浮き上がり抵抗を増強することができる。
請求項5記載の本発明によれば、左右のエアバッグが膨張展開すると、他の一般部よりも厚く形成されたバッグ幅方向の端部同士が互いに押し合う。このため、厚さが厚い分だけ(膨らんだ分だけ)接触部位の接触面積が増加してその分接触部位の摩擦力が増加する。従って、バッグ幅方向の端部同士がバッグ厚さ方向にずれ難くなる。また、膨らみ形状とされた分だけ衝突体が衝突したときのエネルギー吸収量も増加する。
請求項6記載の本発明によれば、左右のエアバッグが膨張展開すると、双方のバッグ幅方向の端部同士がバッグ厚さ方向に係り合う(オーバーラップする)。このため、左右のエアバッグの接触部位(継ぎ目)に衝突体が衝突してきても、左右のエアバッグのバッグ幅方向の端部は相互に係り合った状態で、これを受け止める。従って、左右のエアバッグの接触部位のエネルギー吸収性能は担保される。
請求項7記載の本発明によれば、左右のエアバッグが膨張展開すると、双方のバッグ幅方向の端部同士がバッグ前後方向に係り合う(オーバーラップする)。このため、左右のエアバッグの接触部位(継ぎ目)に衝突体が衝突してきても、左右のエアバッグのバッグ幅方向の端部は相互に係り合った状態で、これを受け止める。従って、左右のエアバッグの接触部位のエネルギー吸収性能は担保される。
請求項8記載の本発明によれば、左右のエアバッグが膨張展開すると、双方のバッグ幅方向の端部同士が保持手段によって保持される。従って、左右のエアバッグの接触部位に衝突体が衝突してきても、左右のエアバッグのバッグ幅方向の端部同士を繋ぐ保持手段の保持力が効いて、当該衝突体をしっかりと受け止めることができる。これにより、左右のエアバッグの接触部位のエネルギー吸収性能は担保される。
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る車両用フードエアバッグ装置は、フードアウタパネルの後端側にフード幅方向に沿って細長い凹部を形成すると共に、当該凹部の両端部に左右一対のバッグ膨出用開口部をカバー取付座が残るように形成し、当該左右一対のバッグ膨出用開口部を凹部全体を覆うと共に前記エアバッグが膨張するとその全体がフード外方側へ展開される単一のカバーによって開放可能に覆ったので、フードアウタパネルの意匠性を向上させることができるという優れた効果を有する。
請求項2記載の本発明に係る車両用フードエアバッグ装置は、フードアウタパネルの後端側にフード幅方向に沿って左右一対のバッグ膨出用開口部を形成し、かかるバッグ膨出用開口部から左右一対のエアバッグを膨張展開させ、かつ展開後の状態ではフード中央側に位置するバッグ幅方向の端部同士が互いに押し合う構成としたので、風圧等による浮き上がりを抑制することができ、しかも広範囲にエアバッグを迅速に展開させることができるという優れた効果を有する。
請求項3記載の本発明に係る車両用フードエアバッグ装置は、フードアウタパネルの後端部及びカウルを覆うバッグ本体部と、当該バッグ本体部と連通されかつフロントピラーの少なくとも下部を覆うバッグ延長部と、を含んでエアバッグを構成し、かつガス発生手段をバッグ膨出用開口部の長手方向に沿って配置すると共にガス噴出孔をバッグ膨出用開口部の外側端部近傍に配置させたので、フロントピラーの少なくとも下部を覆うバッグ延長部を迅速に膨張展開させることができるという優れた効果を有する。
請求項4記載の本発明に係る車両用フードエアバッグ装置は、各々車両幅方向に沿って延在する複数の筒状のセルを車両前後方向に並べて配置することによりバッグ本体部を構成したので、風圧等によって左右のエアバッグが浮き上がるのをより一層効果的に抑制することができるという優れた効果を有する。
請求項5記載の本発明に係る車両用フードエアバッグ装置は、左右一対のエアバッグの展開形状を、双方のバッグ幅方向の端部同士が他の一般部に比べて厚い膨らみ形状としたので、接触部位に作用する摩擦力の増強効果及びエネルギー吸収性能の向上効果が得られ、その結果、左右のエアバッグの接触部位のエネルギー吸収性能を担保することができるという優れた効果を有する。
請求項6記載の本発明に係る車両用フードエアバッグ装置は、左右一対のエアバッグの展開形状を、双方のバッグ幅方向の端部同士がバッグ厚さ方向に係り合うオーバーラップ形状としたので、接触部位に係合力が得られ、その結果、左右のエアバッグの接触部位のエネルギー吸収性能を担保することができるという優れた効果を有する。
請求項7記載の本発明に係る車両用フードエアバッグ装置は、左右一対のエアバッグの展開形状を、双方のバッグ幅方向の端部同士がバッグ前後方向に係り合うオーバーラップ形状としたので、接触部位に係合力が得られ、その結果、左右のエアバッグの接触部位のエネルギー吸収性能を担保することができるという優れた効果を有する。
請求項8記載の本発明に係る車両用フードエアバッグ装置は、左右一対のエアバッグの接触側の端部に双方のバッグ幅方向の端部同士を繋いで接触状態を保持する保持力を発生する保持手段を設けたので、接触部位に保持力が得られ、その結果、左右のエアバッグの接触部位のエネルギー吸収性能を担保することができるという優れた効果を有する。
〔第1実施形態〕
以下、図1〜図5を用いて、第1実施形態について説明する。なお、この第1実施形態中、図2に示される左右一対のエアバッグドア48を設ける構成については参考例とする。この点についての本発明の実施形態は、後述する図11及び図12に示される変形例に記載されたエアバッグドア110である。また、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
図1には、本実施形態に係る車両用フードエアバッグ装置10が作動した状態の車両12の外観斜視図が示されている。また、図2には、当該車両用フードエアバッグ装置10を搭載した車両12の外観斜視図が示されている。さらに、図3には、組付状態の車両用フードエアバッグ装置10を車両前後方向に沿って切断した状態を側方から観た縦断面図(図2の3−3線拡大断面図)が示されている。
これらの図に示されるように、車両用フードエアバッグ装置10は、エンジンルームを開閉するフード14の後端側に車両幅方向に沿って配設されている。フード14は、フード外板を構成すると共にフード14の意匠面を構成するフードアウタパネル16と、フードアウタパネル16に対して所定距離だけ車両下方側に離間した位置に配設されてフード内板を構成するフードインナパネル20と、を含んで構成されている。
図2に示されるように、フードアウタパネル16の後端側の両サイドには、フード幅方向(車両幅方向)を長辺方向とする左右一対のバッグ膨出用開口部18が形成されている。なお、バッグ膨出用開口部18は、平面視で略矩形状に形成されている。これに対応して、図3に示されるように、フードインナパネル20におけるバッグ膨出用開口部18と対向する位置には、バッグ膨出用開口部18と同様形状の左右一対のフードインナ側開口部26が形成されている。
上記左右一対のバッグ膨出用開口部18の下方側には、その各々に対応して左右一対のエアバッグモジュール22が配設されている。エアバッグモジュール22は、フードインナ側開口部26を下方側から閉塞する高強度のロアプレート24を備えている。ロアプレート24は平面視でフードインナ側開口部26よりも一回り大きく形成されており、フードインナ側開口部26に対して車両下方側から当接配置されることにより、フードインナ側開口部26を閉塞している。
フードインナパネル20におけるフードインナ側開口部26の前縁側には側面視で略Z字状に形成された長尺状の前側リインフォース28の下端部28Aが当接配置されており、ロアプレート24の前端部24Aと共にボルト30及びナット32でフードインナパネル20に共締めされている。同様に、フードインナパネル20におけるフードインナ側開口部26の後縁側には側面視で略Z字状に形成された後側リインフォース34の下端部34Aが当接配置されており、ロアプレート24の後端部24Bと共にボルト30及びナット32でフードインナパネル20に共締めされている。また、前側リインフォース28の上端部28B及び後側リインフォース34の上端部34Bは、接着剤(マスチック)36等の固定手段によりフードアウタパネル16の裏面に固定されている。
なお、これらの前側リインフォース28及び後側リインフォース34は、フードインナパネル20にフードインナ側開口部26を形成したことによる剛性低下分を補強し、エアバッグモジュール22をフードアウタパネル16及びフードインナパネル20から成るフード14の閉空間に固定するために設置されている。また、前側リインフォース28及び後側リインフォース34は別個独立に二部品で構成してもよいし、両者を長手方向の両端部で繋いで平面視で枠状に形成された一部品として構成してもよい。
上述したロアプレート24におけるフードインナ側開口部26に臨む部位は、車両下方側へ若干凹んだ形状を成しており、この若干凹んだ部分に上方側が開放されて前壁46A及び後壁46Bを備えた金属製かつ略箱体形状のエアバッグケース46が取り付けられている。なお、エアバッグケース46は、左右一対のエアバッグモジュール22に跨って設けられている。つまり、エアバッグケース46については左右分割構造にはなっておらず、左右のエアバッグモジュール22を収納できる程度の長手方向寸法を有している。
上述したエアバッグケース46内には、略円柱形状に形成されたガス発生手段としてのインフレータ58が車両幅方向を長手方向として配置されていると共に(図4参照)、所定の折り畳み方によって折り畳まれたエアバッグ60が収容されている。正確には、インフレータ58は、折り畳み状態のエアバッグ60内に収容された状態でエアバッグケース46及びロアプレート24に固定されている。
なお、インフレータ58としては機械着火式、電気着火式のいずれを使用してもよく、又ガス発生剤封入タイプ、高圧ガス封入タイプのいずれでも適用可能である。また、図4に示されるように、インフレータ58の軸方向の端部(車両幅方向外側の端部)には小径部58Aが形成されており、かかる小径部58Aの周壁部には、複数のガス噴出孔59がインフレータ58の周方向に形成されている。なお、図4ではガス噴出孔59を小径部58Aの上端側に一箇所のみ図示しているが、実際には複数箇所に形成されている。
一方、エアバッグケース46の開放側端部、即ちバッグ膨出用開口部18は、カバーとしての金属製のエアバッグドア48によって開放可能に塞がれている。具体的には、バッグ膨出用開口部18はフードアウタパネル16の一般面16Aに対して車両下方側へ一段下がる段差形状に形成されており、エアバッグドア48はこの段差部50に納まる厚さ及び大きさに形成されている。エアバッグドア48の後端部48Aには、当該後端部48Aを含めて略弓字状に形成された展開ヒンジ部48Bが一体に形成されている。なお、このエアバッグドア48は金属製であったが、基材が金属パネルで構成されてその上に樹脂層が設けられた二層構造等のエアバッグドアでもよい。
展開ヒンジ部48Bはエアバッグドア48の幅方向に所定の間隔で設けられている。これに対応して、前述した後側リインフォース34における展開ヒンジ部48Bと対向する位置にはブラケット52が固定されており、このブラケット52に展開ヒンジ部48Bの下端部48B1がボルト54及びナット56によって固定されている。従って、エアバッグドア48は、衝突体と前面衝突するとバッグ膨張圧によって、ボルト54及びナット56の締結点を展開中心として、展開ヒンジ部48Bの前後逆向きのコ字状を成すヒンジ中間部48B2を塑性変形させながら、車両後方側へ片開きに展開される構成である。
ここで、本実施形態では、前述したようにフードアウタパネル16の後端側に左右一対のバッグ膨出用開口部18が形成されており、これに対応してバッグ膨出用開口部18には左右一対のエアバッグドア48が被嵌され、更にその下方には左右一対のエアバッグモジュール22(エアバッグケース46は共用)が配設されている。このため、エアバッグモジュール22の主要部を構成するインフレータ58及びエアバッグ60についても、左右それぞれ設けられている。以下、説明の便宜上、左右のエアバッグ60を区別する必要があるときは、車両正面視で左側のエアバッグ60を「左側エアバッグ60L」、右側のエアバッグ60を「右側エアバッグ60R」と称す。
左側エアバッグ60Lは平面視で略L字状に形成されており、又右側エアバッグ60Rは平面視で左右逆向きの略L字状に形成されている。そして、左右のエアバッグ60が展開すると、全体の展開形状は平面視で車両後方側が開放された略コ字状となっている。これにより、図1及び図4に示されるように、左右のエアバッグ60が展開すると、複数のセル61(図では前後2個)から成り車両幅方向に沿って扁平に展開する本体部60Aによってフード14の後端部14A及びカウル62(更にウインドシールドガラス64の下端部)が覆われると共に、本体部60Aの両サイドに連通されかつフロントピラー66側へ延長された左右一対の延長部60Bによってフロントピラー66の下部が覆われるようになっている。
更にここで、図4及び図5に示されるように、上述したエアバッグ60は左右二分割構造とされているが、膨張展開した状態では左側エアバッグ60Lの中央側端部60L’と右側エアバッグ60Rの中央側端部60R’とが接触して互いに押し合うようにエアバッグ60の大きさ及び形状が設定されている。より具体的に説明すると、左右のエアバッグ60が膨張展開した状態では、左側エアバッグ60Lの中央側端部60L’と右側エアバッグ60Rの中央側端部60R’とが、バッグ膨張圧によってバッグ幅方向(車両幅方向)に突き合わされており、接触部位70は略平面状になっている。
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
車両12が歩行者等の衝突体68(図5参照)と前面衝突すると、左右一対のインフレータ58がそれぞれ作動して複数のガス噴出孔59からガスが噴出される。このため、エアバッグケース46内に折り畳み状態で格納された左右一対のエアバッグ60がそれぞれ膨張し、対応するエアバッグドア48を下面側から押圧する。エアバッグドア48に作用するバッグ膨張圧が所定値に達すると、左右一対のエアバッグドア48は展開ヒンジ部48Bを中心としてそれぞれフード外方側(ウインドシールドガラス64側)へ展開される。これにより、フード後端側に形成された左右一対のバッグ膨出用開口部18がそれぞれ開放されて、図1に示されるように、左右のエアバッグ60が車両平面視で略コ字状になるように膨張展開される。
上記エアバッグ60の膨張展開過程(ガスの流れ)を補足すると、図4に示されるように、まずインフレータ58のガス噴出孔59からガスが車両上方側へ噴出された後、前側のセル61の外側へ向けてガスが流れる(このときのガスの流れを矢印イで示す)。次いで、前側のセル61の外側の端部に突き当たったガスは、バッグ延長部60B側へ向きを変えて流れ、バッグ延長部60Bを真っ先に膨張展開させる(このときのガスの流れを矢印ロで示す)。また、この流れと並行して、前側のセル61の外側の端部に突き当たったガスの一部が前側のセル61の内側の端部へ流れて前側のセル61を膨張展開させる(このときのガスの流れを矢印ハで示す)。次に、バッグ延長部60Bを膨張展開させた後に戻ってきたガスが後側のセル61に流れてこれを膨張展開させる(このときのガスの流れを矢印ニで示す)。
上記の結果、膨張展開したエアバッグ60の本体部60A或いは延長部60Bに、フード上方側から歩行者等の衝突体68が受け止められることにより、前面衝突時の衝突エネルギー(図5にそのときの衝突力を矢印Fで示す)が吸収されて歩行者等の衝突体68がボディーから受ける反力を下げることができる。
ここで、前述した背景技術の項の先行技術文献に開示された構成による場合、右側エアバッグはインフレータからのガス圧によってバッグ膨出用開口部から一旦車両上方側へ膨出した後、バッグ先端部がフード中央側へ倒れるようにして展開される。左側エアバッグも同様の展開挙動となる。このため、この先行技術については、以下の二点において改良の余地がある。
第一に、バッグ膨出用開口部に近いエアバッグの根元部についてはその展開位置を規制(拘束)することができるが、バッグ膨出用開口部から遠いエアバッグの先端部については展開位置を規制(拘束)することは困難である。従って、右側エアバッグの先端部と左側エアバッグの根元部とを面ファスナ等の接合手段で接合したとしても、車両走行時の風圧等が作用している状況下においては、右側エアバッグの先端部が浮き上がる可能性がある。何ら拘束されない左側エアバッグの先端部については更にその可能性が高くなる。従って、風圧等による浮き上がりを抑制する能力を高めることが望ましい。
第二に、上記の展開挙動から、右側エアバッグの先端部が左側エアバッグの根元部側へ倒れ込むまでに時間がかかる。このため、エアバッグの展開範囲を広く設定した場合、当該展開範囲にエアバッグを迅速に展開することが難しい。従って、広範囲に迅速にエアバッグを展開させる観点から、上記先行技術は改良の余地がある。
この点につき、本実施形態では、フードアウタパネル16の後端側にフード幅方向に沿って左右一対のバッグ膨出用開口部18を形成し、かかるバッグ膨出用開口部18から左右一対のエアバッグ60をフードアウタパネル16の後端部16A及びカウル62を覆うようにフード後端側へ向けて膨張展開させる構成を採っているため、左右のエアバッグ60は左右一対のバッグ膨出用開口部18の形成範囲に亘ってその展開位置が規制(拘束)される。これだけでも、前述した背景技術の項の先行技術文献に開示された構成よりも浮き上がり抑制効果が高められる。
但し、この構成を採った場合、左右一対のバッグ膨出用開口部18の間に位置する左側エアバッグ60Lの中央側端部60L’と右側エアバッグ60Rの中央側端部60R’についてはその展開位置を規制(拘束)することができない。そこで、本実施形態では、展開後の状態で左側エアバッグ60Lの中央側端部60L’と右側エアバッグ60Rの中央側端部60R’とが、フードアウタパネル16の左右一対のバッグ膨出用開口部18間の上面で互いに押し合う構成とした。これにより、左右一対のバッグ膨出用開口部18間に位置する左側エアバッグ60Lの中央側端部60L’と右側エアバッグ60Rの中央側端部60R’についても、互いに押し合うことで展開位置を規制(拘束)する力が発生する。
上記より、本実施形態によれば、左右一対のエアバッグ60が膨張展開した際にエアバッグ60の展開位置をバッグ幅方向のほぼ全域において規制(拘束)することができる。従って、車両走行時の風圧等によってエアバッグ60が浮き上がるのを効果的に抑制することができる。
しかも、本実施形態では、左右のエアバッグ60がフードアウタパネル16の後端側にフード幅方向に沿って形成された左右一対のバッグ膨出用開口部18から膨張展開されてフードアウタパネル16の後端部16A及びカウル62を覆う構成としたので、広範囲に迅速にエアバッグ60を展開させることができる。つまり、先行技術文献に開示された技術では、乗員側から見てフード右端及び中央部にバッグ膨出用開口部が形成されており、これらのバッグ膨出用開口部を通るフード前後方向を回転中心として左右のエアバッグがフード幅方向に倒れ込む展開挙動を示すものであったため、フード中央側にエアバッグが配置されるまでに時間がかかったが、本実施形態では、フードアウタパネル16の後端側にフード幅方向に沿って左右一対のバッグ膨出用開口部18が形成されており、これらのバッグ膨出用開口部18を通るフード幅方向を回転中心として左右のエアバッグ60がフード後方側へ展開する展開挙動を示すため、左右のエアバッグ60によってフードアウタパネル16の後端部16A及びカウル62が覆われるまでの時間が短い。従って、エアバッグ60の展開範囲を広く設定した場合に、当該展開範囲にエアバッグ60を迅速に展開させることができる。
以上説明したように、本実施形態に係る車両用フードエアバッグ装置10によれば、風圧等による浮き上がりを抑制することができ、しかも広範囲にエアバッグ60を迅速に展開させることができる。
また、本実施形態に係る車両用フードエアバッグ装置10では、左右のエアバッグ60がフードアウタパネル16の後端部16A及びカウル62を覆うバッグ本体部60Aだけでなく、フロントピラー66の少なくとも下部を覆うバッグ延長部60Bとを含んで構成されているため、より広範囲に歩行者等の衝突体68の保護エリアを設定することができる。
しかも、インフレータ58が左右のエアバッグ60に対応してバッグ膨出用開口部18の長手方向に沿ってそれぞれ設けられており、ガス噴出孔59が当該バッグ膨出用開口部18の外側端部近傍に配置されているため、ガス噴出孔59とバッグ延長部60Bとの距離が短くなる。従って、バッグ延長部60Bに迅速にガスを供給することができ、フロントピラー66の下部を迅速に覆うことができる。
さらに、本実施形態に係る車両用フードエアバッグ装置10では、バッグ本体部60Aが車両幅方向に沿って延在する複数の円筒状のセル61を車両前後方向に並べて配置することにより構成されているため、左右一対のバッグ膨出用開口部18間に位置する左側エアバッグ60Lの中央側端部60L’と右側エアバッグ60Rの中央側端部60R’とが互いに押し合う膨張完了状態になると、左右のセル61が一体となって一本のセルとなり、左右のエアバッグ60のバッグ本体部60Aが折れ曲がり難くなる。従って、エアバッグ60の浮き上がり抵抗を増強することができる。その結果、本実施形態によれば、車両走行時の風圧等によって左右のエアバッグ60が浮き上がるのをより一層効果的に抑制することができる。
加えて、本実施形態に係る車両用フードエアバッグ装置10によれば、以下に説明する効果が得られる。
すなわち、エアバッグの展開範囲を広くする場合、フードアウタパネルの後端側にフード幅方向に沿って長くて大きい単一のバッグ膨出用開口部を形成することも考えられるが、このような大きな開口をフードアウタパネルに形成すると、フードアウタパネルの面精度が低下し意匠に悪影響が及ぶ可能性がある。しかし、本実施形態に係る車両用フードエアバッグ装置10では、フードアウタパネル16の後端側にフード幅方向に沿って形成されるバッグ膨出用開口部18を左右二分割したので、各々のバッグ膨出用開口部18の開口面積を小さくできかつフード幅方向に沿った開口長さも短くすることができる。このため、本実施形態によれば、フードアウタパネル16の面精度を容易に確保することができる。特に、アルミフードの場合には、大きな開口を形成すると面精度を出し難い傾向があるので、アルミフードの場合には特に有効である。
しかも、本実施形態に係る車両用フードエアバッグ装置10では、エアバッグドア48も左右二分割させ、エアバッグ60も左右二分割して左側エアバッグ60Lと右側エアバッグ60Rに分けたので、バッグ膨出用開口部18を左右二分割したメリットを減殺することなく、エアバッグ60の展開範囲を広範囲にすることができる。
上記より、本実施形態によれば、エアバッグ60の展開領域を広く確保しつつ、フードアウタパネル16を精度良く成形することができる。また、精度良くフードアウタパネル16を成形することにより、フードアウタパネル16の面精度も確保されるため、フード14の意匠性を良好に保つことができる。
また、上記のようにエアバッグ60を左右二分割して別個独立に膨張展開させると、左側エアバッグ60Lと右側エアバッグ60Rとの接触部位70(左右のエアバッグ60の継ぎ目)の衝撃吸収性能が他の一般部60A’よりも低下する懸念が生じる。しかし、本実施形態に係る車両用フードエアバッグ装置10によれば、前述したように、左右のエアバッグ60が膨張展開すると、左側エアバッグ60Lの中央側端部60L’と右側エアバッグ60Rの中央側端部60R’とがバッグ膨張圧によってバッグ幅方向に突き合うようになっているため、接触部位70の摩擦力が増強されて一体性が増す。換言すれば、接触部位70である双方の中央側端部60L’、60R’間のせん断抵抗が大きくなる。このため、左右の中央側端部60L’、60R’がバッグ厚さ方向にずれ難くなる。その結果、衝突体68が接触部位70に衝突しても、エネルギー吸収量の低下分が補われたのと同様の結果をもたらし、左右のエアバッグ60の接触部位70以外の部位(即ち、一般部60A’)と同等のエネルギー吸収性能を確保することができる。その結果、本実施形態によれば、フードアウタパネル16の意匠面の面精度を確保するためにエアバッグ60を左右二分割構造とした場合においても、左右のエアバッグ60の車両幅方向の全域に亘って良好なエネルギー吸収性能を担保することができる。
さらに、本実施形態によれば、エアバッグ60を左側エアバッグ60Lと右側エアバッグ60Rとに二分割して膨張展開時に左側エアバッグ60Lの中央側端部60L’と右側エアバッグ60Rの中央側端部60R’とを突き合せる(押し合う)構成を採っており、左側エアバッグ60Lの中央側端部60L’と右側エアバッグ60Rの中央側端部60R’を特殊な形状にする等の手段は施していない。従って、エアバッグ60のバッグ形状を変更(基布形状の変更)する必要がないという意味で簡単な構成で、左右のエアバッグ60の接触部位70のエネルギー吸収性能を担保することができる。
〔第2実施形態〕
以下、図6及び図7を用いて、本発明に係る車両用フードエアバッグ装置の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
この第2実施形態では、左右一対のエアバッグのバッグ幅方向の端部同士が他の一般部に比べて厚い膨らみ形状とされている点に特徴がある。
具体的には、図6に示される実施形態では、左側エアバッグ80Lの中央側端部80L’並びに右側エアバッグ80Rの中央側端部80R’がフード上方側へ盛り上がる膨出形状を成している。つまり、このような膨出形状が形成されるように左右のエアバッグ80を構成する基布がそれぞれ裁断され縫製されているということである。これにより、中央側端部80L’、80R’は、本体部80Aの他の一般部80A’に比べてバッグの厚さが厚くなっている。
一方、図7に示される実施形態では、左側エアバッグ82Lの中央側端部82L’並びに右側エアバッグ82Rの中央側端部82R’が、本体部82Aの他の一般部82A’を構成する円筒状のセルよりも大径に形成されている。従って、左右のエアバッグ82が離間した状態で膨張させると、左側エアバッグ82Lの中央側端部82L’並びに右側エアバッグ82Rの中央側端部82R’はいずれも球形に膨張する。つまり、このような球形の端部が形成されるように左右のエアバッグ82を構成する基布がそれぞれ裁断され縫製されているということである。これにより、中央側端部82L’、82R’は、本体部82Aの他の一般部82A’に比べてバッグの厚さが上下両方向に厚くなっている。
(作用・効果)
上記構成によれば、図6の場合であれば、左右のエアバッグ80が膨張展開すると、他の一般部80A’よりも厚く形成された中央側端部80L’、80R’同士が接触(押圧)し合う。このため、厚さが厚い分だけ(フード上方側へ膨らんだ分だけ)接触部位70の接触面積が増加してその分接触部位70の摩擦力が増加する。従って、中央側端部80L’、80R’同士がバッグ厚さ方向にずれ難くなる。また、中央側端部80L’、80R’が厚く膨らみ形状とされた分だけ、衝突体68が接触部位70に衝突したときのエネルギー吸収量も増加する。
一方、図7の場合であれば、左右のエアバッグ82が膨張展開すると、他の一般部82A’よりも大径に形成された球形の中央側端部82L’、82R’同士が接触(押圧)し合う。このため、厚さが厚い分だけ(フード上下方向へ膨らんだ分だけ)接触部位70の接触面積が増加してその分接触部位70の摩擦力が増加する。従って、中央側端部82L’、82R’同士がバッグ厚さ方向にずれ難くなる。特に、図7の場合には、フード上方側だけでなくフード下方側へもバッグの厚さが厚くなっているので、図6に示される構成よりも接触面積が大きくなる。このため、より一層中央側端部82L’、82R’同士がバッグ厚さ方向にずれ難くなる。また、中央側端部82L’、82R’が厚く膨らみ形状とされた分だけ、衝突体68が接触部位70に衝突したときのエネルギー吸収量も増加する。
上記より、本実施形態によれば、接触部位70に作用する摩擦力の増強効果及びエネルギー吸収性能の向上効果が得られ、その結果、左右のエアバッグ80、82の接触部位70のエネルギー吸収性能を担保することができる。
〔第3実施形態〕
以下、図8及び図9を用いて、本発明に係る車両用フードエアバッグ装置の第3実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態等と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
この第3実施形態では、左右一対のエアバッグのバッグ幅方向の端部同士がバッグ厚さ方向に係り合うオーバーラップ形状とされている点に特徴がある。
具体的には、図8に示される実施形態では、左側エアバッグ90Lの中央側端部90L’並びに右側エアバッグ90Rの中央側端部90R’が、フード前方側から見たときに、フード上下方向に相互に噛み合う(係合し合う)段差形状を成している。つまり、このような段差形状が形成されるように左右のエアバッグ90を構成する基布がそれぞれ裁断され縫製されているということである。また、この実施形態の場合、フード前方側から見たときに、左右の中央側端部90L’、90R’が相互にオーバーラップしている(重合されている)。
一方、図9に示される実施形態では、左側エアバッグ92Lの中央側端部92L’並びに右側エアバッグ92Rの中央側端部92R’が、フード上方から見たときに、フード前後方向に相互に噛み合う(係合し合う)段差形状を成している。つまり、このような段差形状が形成されるように左右のエアバッグ92を構成する基布がそれぞれ裁断され縫製されているということである。詳細には、左側エアバッグ92Lは車両前方側のセルが車両後方側のセルに比べて車両幅方向の長さが短く形成されている。右側エアバッグ92Rは車両前方側のセルが車両後方側のセルに比べて車両幅方向の長さが長く形成されている。また、この実施形態の場合、フード上方側から見たときに、左右の中央側端部92L’、92R’が相互にオーバーラップしている(重合されている)。
(作用・効果)
上記構成によれば、図8の場合であれば、左右のエアバッグ90が膨張展開すると、中央側端部90L’、90R’が、バッグ厚さ方向に噛み合う(オーバーラップする)。このため、左右のエアバッグ90の接触部位70(継ぎ目)に衝突体68が衝突してきても、左右のエアバッグ90の中央側端部90L’、90R’は相互に係り合った状態で、これを受け止める。別の言い方をすれば、左右のエアバッグ90の中央側端部90L’、90R’の係合状態が解除されることはない。従って、左右のエアバッグ90の接触部位70のエネルギー吸収性能は担保される。
一方、図9の場合であれば、左右のエアバッグ92が膨張展開すると、中央側端部92L’、92R’が、バッグ前後方向に噛み合う(オーバーラップする)。このため、左右のエアバッグ92の接触部位70(継ぎ目)に衝突体68が衝突してきても、左右のエアバッグ92の中央側端部92L’、92R’は相互に係り合った状態で、これを受け止める。別の言い方をすれば、左右のエアバッグ92の中央側端部92L’、92R’の係合状態が解除されることはない。
このように本実施形態によれば、接触部位70に係合力が得られ、その結果、左右のエアバッグ90、92の接触部位70のエネルギー吸収性能を担保することができる。補足すると、図8、図9に示される実施形態では、段差形状の係り合いとして接触部位70が形成されるため、左右のエアバッグ90の中央側端部90L’、90R’同士の接触面積並びに左右のエアバッグ92の中央側端部92L’、92R’同士の接触面積が大きくなる。従って、その分、摩擦力も大きくなり、衝突体68が衝突した際に、両者の係合を解除させるための摩擦抵抗も大きく、係合解除の抑止に寄与する。
〔第4実施形態〕
以下、図10を用いて、本発明に係る車両用フードエアバッグ装置の第4実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態等と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
この第4実施形態では、左右一対のエアバッグの接触側の端部に、双方のバッグ幅方向の端部同士を繋いで接触状態を保持する保持力を発生する保持手段が設けられている点に特徴がある。
具体的には、図10に示される実施形態では、左側エアバッグ100Lの中央側端部100L’並びに右側エアバッグ100Rの中央側端部100R’の各対向面に、保持手段としての面ファスナ102がそれぞれ縫製又は接着剤により取り付けられている。なお、面ファスナ102は保持手段の一例であるので、保持力を発揮することができる構成であればすべて適用可能である。
(作用・効果)
上記構成によれば、左右のエアバッグ100が膨張展開すると、双方の中央側端部100L’、100R’の対向面に設けられた面ファスナ102同士が接触して、接合された状態となる。これにより、左右のエアバッグ100の接触部位70に面ファスナ102の結合力に依る保持力が発生する。従って、左右のエアバッグ100の接触部位70に衝突体68が衝突してきても、面ファスナ102が剥がれて双方の中央側端部100L’、100R’が非接触状態、更には離間状態となることはなく、当該衝突体68をしっかりと受け止めることができる。
このように本実施形態によれば、接触部位70に面ファスナ102による保持力が得られ、その結果、左右のエアバッグ100の接触部位70のエネルギー吸収性能を担保することができる。
なお、図10では、面ファスナ100に厚みをつけて図示している関係で接触部位70が非接触状態のように見えるが、実際にはバッグ膨張圧が作用するため、面ファスナ100を間に介在させた状態で双方の対向面同士が接触して接触部位70が形成される。
〔本実施形態の補足説明〕
上述した各実施形態、例えば第1実施形態では、エアバッグ60を左右に分けたことに伴ってインフレータ58も左右に分割したが、これに限らず、インフレータ58はエアバッグケース46の中央部一箇所に設けてホース等の接続管で左右のエアバッグ60にガスを供給するようにしてもよい。
また、上述した各実施形態、例えば第1実施形態では、エアバッグ60が膨張展開すると、フード14の後端部14A及びカウル62のみならず、(ウインドシールドガラス64の下端部や)左右のフロントピラー66の下部をも覆う構成としたが、少なくともフード14の後端部14A(フードアウタパネル16の後端部16A)及びカウル62を覆う構成であれば本発明には含まれる。
さらに、上述した各実施形態、例えば第1実施形態では、フードアウタパネル16の後端側に左右一対のバッグ膨出用開口部18を形成し、これに伴って左右一対のエアバッグドア48を設けたが、これに限らず、フード幅方向(車両幅方向)に細長い単一のエアバッグドア110で左右一対のバッグ膨出用開口部18を塞ぐようにしてもよい。なお、この実施形態が請求項1に係る本発明の一実施形態である。
簡単に説明すると、図11及び図12に示されるように、この実施形態では、フードアウタパネル16の後端側にフード幅方向に沿って細長い凹部112が形成されている。凹部112の深さは、エアバッグドア110の厚さに略一致されている。かかる凹部112の長手方向の両端部に、上記左右一対のバッグ膨出用開口部18が打抜きにより形成されている。従って、凹部112の中央部114は、左右のバッグ膨出用開口部18の間に位置する繋ぎ部として同一平面上に残っている。なお、バッグ膨出用開口部18の一般断面は、前述した図3と同一の断面構造を成している。
また、左右一対のバッグ膨出用開口部18の外周は凹部112の内周よりも一回り小さく形成されており、これによりバッグ膨出用開口部18の外周部にエアバッグドア110の取付座116が形成されている。但し、各バッグ膨出用開口部18の外側に位置する前後一対の外側コーナー部118には取付座116が形成されるものの、フードアウタパネル16の中央部114側に位置する合計4箇所の内側コーナー部120には取付座116は形成されない構成となっている。
上記実施形態の作用・効果について以下に説明する。
左右一対のエアバッグドア48を設ける場合及びフード幅方向に細長い単一のエアバッグドア110を設ける場合のいずれも、それぞれに有効な作用・効果がある。
上述した各実施形態で説明した左右一対のエアバッグドア48を設ける場合には、各エアバッグドア48の展開ヒンジ部48B(図3参照)の構成が容易になるというメリットがある。つまり、仮にウインドシールドガラス64の下縁の湾曲形状に合わせてエアバッグドア48の外周縁(特に展開ヒンジ部48側の後端縁)を湾曲させると、当該エアバッグドア48の展開中心となる展開ヒンジ部48Bに、エアバッグドア48を迅速かつ円滑に展開させるための構成(ヒンジ中間部48B2(図3参照)の変形代をどの程度に設定し、何箇所に設定するか等)を付加する必要がある。その場合、エアバッグドア48がフード幅方向に短ければ、それだけエアバッグドア48の展開中心線の湾曲によるずれも少なくなるため、前記構成を付加するにあたって設計が容易になる。従って、この場合には、エアバッグドア48を迅速かつ円滑に展開させるための設計の容易化を図ることができるというメリットがある。
一方、図11に示されるように、フード幅方向に細長い単一のエアバッグドア110を採用した場合には、フードアウタパネル16の意匠性が向上されるというメリットがある。
つまり、フードアウタパネル16の後端側に凹部112を形成することなく左右一対のバッグ膨出用開口部18を直接形成すると、フードアウタパネル16の後端側中央に双方のバッグ膨出用開口部18のコーナー部が集まる。かかるコーナー部にはカバー取付座が形成される関係で、歪みによる変形が生じ易い。このため、フードアウタパネル16の後端側中央にコーナー部が集まると、フードアウタパネル16に与える歪みの影響が大きくなり、円滑な意匠面を成形することが難しくなる。
しかし、この実施形態のように、フードアウタパネル16の後端側にフード幅方向に沿って細長い凹部112を先に形成し、その両端部に左右一対のバッグ膨出用開口部18を取付座116が残るように形成することにより、フードアウタパネル16の後端側の中央部114に内側コーナー部120が集まってもその内側コーナー部120には取付座116が形成されない。従って、歪みによる変形が生じ難くなる。加えて、仮にフードアウタパネル16の後端側の中央部114に集まった内側コーナー部120に多少の歪みによる変形が生じたとしても、凹部112全体をエアバッグドア110によって覆ってしまうので、フードアウタパネル16の外部には見えない。従って、フードアウタパネル16の意匠性を向上させることができるというメリットがある。