JP4675453B2 - プラスチック表面の撥水処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチック表面に撥水処理面を形成するプラスチック表面の撥水処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本出願人は、ポリイミドやPETなどのプラスチック薄板に所定の印刷パターンからなる開口を形成した印刷用マスクとしてのプラスチックマスクを提供している。このプラスチックマスクは、例えば、電子機器などに用いられているプリント基板に重ね合わせた状態で、その開口内にクリーム半田などのペーストをスキージングして充填した後、プリント基板から剥離することによって、該プリント基板上に該ペーストからなるBGAなどのバンプ電極を印刷形成するバンプ形成用マスクとして用いられる。
なお、このプラスチックマスクは、通常、その使用後にスキージ面(表面)や開口内に付着したペーストを洗浄除去して、その開口の目詰まりなどを防止するようにしている。従って、このプラスチックマスクの洗浄処理や乾燥処理などを容易化させるためには、プラスチックマスクのスキージ面(表面)や開口内面の撥水性を高くすることが好ましい。
【0003】
このようなプラスチックマスクなどのプラスチック製品の表面を撥水処理する比較的簡単な方法としては、該プラスチックの表面に撥水性を有する撥水処理剤を塗布して、該プラスチック表面に撥水膜を形成することが考えられる。
この撥水処理剤の一つとして、ペルフルオロ(4−ビニルオキシ−1−ブテン)重合物からなるアモルファス(非晶質)フッ素系樹脂を、トリス(パーフルオロブチル)アミンからなる希釈液に溶解させたものが知られている。この撥水処理剤は、旭硝子株式会社製造のサイトップ(商品名)として市販されている。
そこで、本発明者は、上記プラスチックマスク等のプラスチック製品の表面に該撥水処理剤(サイトップ)を塗布して、プラスチック表面に撥水処理を施すことを試みた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前述のように、プラスチックの被処理面に前記撥水処理剤(サイトップ)を単に塗布するという撥水処理方法では、プラスチックの表面から撥水処理剤が弾かれてしまい、プラスチック表面に撥水膜を形成することが非常に困難であった。また、撥水処理剤が塗布されてプラスチック表面に撥水膜が形成された場合でも、該プラスチック表面に対する撥水膜の固着力が小さく、本発明者が行った摺擦試験(詳しくは後述する)では、撥水膜が該プラスチック表面から容易に剥がれてしまう程度であった。これは、市販されている撥水処理剤(サイトップ)自体が、水の接触角で110(deg)という高い撥水性を有しているためと思われる。
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、プラスチック表面に撥水性及び固着力の大きな撥水膜を形成することができるプラスチック表面の撥水処理方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、プラスチック表面に撥水処理を施すプラスチック表面の撥水処理方法であって、該プラスチックの撥水処理を施す被処理面に紫外レーザー光を照射するレーザー光照射工程と、該紫外レーザー光が照射された被処理面に、ペルフルオロ(4−ビニルオキシ−1−ブテン)重合物がトリス(パーフルオロブチル)アミンからなる希釈液に溶解された撥水処理剤を塗布する撥水処理剤塗布工程とを有し、上記レーザー光照射工程が実行された後であって、上記撥水処理剤塗布工程に先立ち、上記被処理面に、水、アルコール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水のうちの何れか一つを、予め塗布することを特徴とするものである。
【0006】
このプラスチック表面の撥水処理方法においては、まず、撥水処理を施すプラスチックの被処理面に紫外レーザー光が照射される。次いで、プラスチックの紫外レーザー光が照射された被処理面に、撥水処理剤の塗布に先立って、水、アルコール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水のうちの何れか一つが、予め塗布される。これにより、上記アモルファスフッ素系樹脂の該被処理面に対する固着力が増大され、プラスチック表面に形成される撥水膜の固着力が向上される。これは、該被処理面にアルコールが塗布されることで、該アルコールの洗浄作用により、該プラスチックの紫外レーザー光照射部表面(被処理面)に付着して該アモルファスフッ素系樹脂と被処理面との固着力を低下させるバインダ成分(不純物)が除去されることによるものと考えられる。そして、水、アルコール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水のうちの何れか一つが、予め塗布された被処理面に、上記ペルフルオロ(4−ビニルオキシ−1−ブテン)重合物からなるアモルファス(非晶質)フッ素系樹脂をトリス(パーフルオロブチル)アミンからなる希釈液に溶解した撥水処理剤が塗布されて乾燥される。これにより、該アモルファスフッ素系樹脂が該プラスチックの被処理面に極めて強固に固着され、プラスチック表面に撥水性及び固着力の高い撥水膜が形成される。ここで、該プラスチックの被処理面に対して該アモルファスフッ素系樹脂が極めて強固に固着される理由としては、該被処理面に紫外レーザー光が照射されることにより、プラスチックの紫外レーザー光照射部表面が改質され、該被処理面に官能基が生成されることによるものと考えられる。なお、上記レーザー光照射工程で上記被処理面に照射する紫外レーザー光としては、例えば、プラスチックの被処理面に紫外域の高強度パルス光を発振するエキシマレーザー光を用いることができる。エキシマレーザー光は、上記プラスチックの被処理面をアブレーション(ダイレクトエッチング)により容易に表面改質できる。また、エキシマレーザー光は、ヘリウム・ネオンレーザー、アルゴンもしくはクリプトンイオンレーザー、YAGレーザー等の他のレーザー光と比較して、ビーム形状が大きく、ビームを走査させながら任意の改質すべき被処理面を照射することができるので、大面積の被処理面を容易に改質させることが可能となる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1のプラスチック表面の撥水処理方法において、上記撥水処理剤塗布工程で上記被処理面に塗布される撥水処理剤の濃度が0.1〜1%であることを特徴とするものである。
【0010】
このプラスチック表面の撥水処理方法においては、撥水処理剤の濃度が0.1〜1%であるので、プラスチック表面に形成される撥水膜の撥水性が向上される。ちなみに、該濃度の撥水処理剤を用いて形成された撥水膜は、該撥水膜に対する水滴の接触角を正確に測定できなくなるほどの超撥水性を示した(詳しくは後述する)。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2のプラスチック表面の撥水処理方法において、上記被処理面に塗布された撥水処理剤を常温で乾燥することを特徴とするものである。上記撥水処理剤塗布工程で上記被処理面に塗布される撥水処理剤の濃度が0.1〜1%であることを特徴とするものである。
【0012】
このプラスチック表面の撥水処理方法においては、プラスチックの被処理面に塗布された撥水処理剤が常温で乾燥されるので、該撥水処理剤を加熱乾燥させた場合に発生する該プラスチックの熱影響による変形を防止することができる。従って、このプラスチック表面の撥水処理方法は、例えば、熱影響により印刷パターン(開口)が変形する虞の高い前記プラスチックマスクなどに撥水処理を施す場合に有効な方法となる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1、2又は3のプラスチック表面の撥水処理方法において、上記撥水処理剤塗布工程で上記被処理面に塗布される撥水処理剤が、該被処理面の表面電荷の極性と反対の極性に帯電されていることを特徴とするものである。
【0014】
このプラスチック表面の撥水処理方法においては、プラスチックの被処理面に対して撥水処理剤が静電的な固着力により塗布される。なお、該撥水処理剤を帯電させる方法としては、例えば、所定の電界雰囲気中に霧状化(ミスト化)した該撥水処理剤を噴霧する方法が知られている。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1に、プラスチック表面に撥水処理剤を塗布・乾燥して撥水膜を形成する撥水処理方法の一例を示す。
この撥水処理方法においては、レーザー光照射工程及び撥水処理剤塗布工程が順に実行される。
まず、上記レーザー光照射工程では、図1(a)に示すように、処理対象となるPETやポリイミド等のプラスチックからなるワーク1の撥水処理を施す被処理面1aに紫外レーザー光2が照射される。このように、ワーク1の被処理面1aに紫外レーザー光2が照射されることにより、ワーク1の紫外レーザー光照射部表面(プラスチック表面)が改質され、該被処理面1aに新たな官能基が生成される。なお、紫外レーザー光の照射によってプラスチックの紫外レーザー光照射部表面が改質されて新たな官能基が生成されることは、S.ラザレ等の報告(S.Lazare and R.Srinivasan,Journal ofPhysical Chemistry,Vol.90,p.2124(1986).)で明らかにされている。
【0016】
次いで、上記撥水処理剤塗布工程では、図1(b)に示すように、上記レーザー光照射工程において紫外レーザー光が照射されて表面改質されたワーク1の被処理面1aに撥水処理剤3が塗布される。この撥水処理剤塗布工程において被処理面1aに塗布される撥水処理剤3としては、ペルフルオロ(4−ビニルオキシ−1−ブテン)重合物を、トリス(パーフルオロブチル)アミンからなる希釈液に溶解されたものを使用する。
上記ペルフルオロ(4−ビニルオキシ−1−ブテン)重合物は、ガラス転移温度(℃)108、融点(℃)無し、密度(g/cm2)2.03、臨海表面張力rc(mN/m)19、吸水率(%)0.01未満、デュロメーター硬度HDD78、線膨張係数(cm/cm/℃)7.4×10−5等の物理特性を有するアモルファスフッ素系樹脂である(化学式;(C6F10O)n、化学名;フッ素系樹脂、化審法番号6−2092、Cas番号101182−89−2)。
上記撥水処理剤は、上記アモルファスフッ素系樹脂を、上記希釈液;トリス(パーフルオロブチル)アミン(化学式;(C4F9)3N、化学名;TFPA、化審法番号2−173、Cas番号311−89−7)に溶解したものである。
【0017】
次いで、上記撥水処理剤塗布工程においてワーク1の被処理面1aに塗布された撥水処理剤3を、上記撥水処理剤乾燥工程で乾燥させる。これにより、ワーク1の被処理面1aに生成された官能基の作用によって被処理面1aに上記アモルファスフッ素系樹脂が極めて強固に固着され、図1(c)に示すように、ワーク1の被処理面1aに撥水性及び固着力の高い撥水膜4が形成される。
【0018】
ここで、上記レーザー光照射工程で使用される紫外レーザー光2としては、その照射によりワーク1の紫外レーザー光照射部表面を改質して被処理面1aに新たな官能基を生成させるものであれば何でもよいが、例えば、エキシマレーザー光を用いることができる。この紫外域の高強度パルス光を発振するエキシマレーザー光を、プラスチックからなるワーク1の被処理面1aに照射することで、該ワーク1の被処理面1aをアブレーション(ダイレクトエッチング)により容易に表面改質できる。また、エキシマレーザー光は、ヘリウム・ネオンレーザー、アルゴンもしくはクリプトンイオンレーザー、YAGレーザー等の他のレーザー光と比較して、ビーム形状が大きく、ビームを走査させながら任意の改質すべき被処理面を照射することができるので、大面積の被処理面を容易に改質させることが可能となる。
【0019】
また、上記撥水処理剤塗布工程におけるワーク1の被処理面1aへの撥水処理剤3の塗布方法としては、(1)ワーク1に撥水処理剤3をドブ付けする方法、(2)ワーク1に撥水処理剤3を刷毛塗りする方法、(3)ワーク1に撥水処理剤3を静電塗布する方法などを用いることができる。上記(3)の塗布方法においては、ワーク1の被処理面1aに塗布される撥水処理剤3が、該被処理面1aの表面電荷の極性と反対の極性に帯電されることにより、ワーク1の被処理面1aに対して撥水処理剤3が静電的な固着力により塗布される。なお、撥水処理剤3を帯電させる方法としては、例えば、所定の電界雰囲気中に霧状化(ミスト化)した該撥水処理剤を噴霧する方法が知られている。
【0020】
上記撥水処理剤乾燥工程においてワーク1の被処理面1aに塗布された撥水処理剤3は、自然乾燥あるいはワーク1の被処理面1aにエアーを吹き付けるブロー処理により乾燥される。このとき、該撥水処理剤3を常温で乾燥させることが望ましい。すなわち、ワーク1が熱可塑性を有している場合には、該ワーク1の被処理面1aに塗布された撥水処理剤3を加熱乾燥させることによって、乾燥時の熱影響によってワーク1が変形する虞がある。従って、このようなワークの場合には、該撥水処理剤3を常温で乾燥させることにより、該ワークの熱影響による変形を防止することができる。このように撥水処理剤3を常温で乾燥させることは、前記プラスチックマスクのように、熱影響により印刷パターン(開口)が変形する虞の高いワークに撥水処理を施す場合に特に有効となる。
【0021】
次に、プラスチック表面に撥水処理剤を塗布・乾燥して撥水膜を形成する他の撥水処理方法について説明する。
この撥水処理方法においては、図2(a)に示すレーザー光照射工程、図2(b)に示すIPA塗付工程、図2(c)に示す撥水処理剤塗布工程、図2(d)に示す撥水処理剤乾燥工程が順に実行される。ここで、レーザー光照射工程、撥水処理剤塗布工程、撥水処理剤乾燥工程は、図1(a)、(b)、(c)に示した各工程と同じである。
すなわち、このプラスチック表面の撥水処理方法では、図2(a)に示すレーザー光照射工程が実行された後、図2(c)に示す撥水処理剤塗布工程の実行に先立って、図2(b)に示すように、ワーク1の被処理面1aに、の塗布剤5を、予め塗布するIPA塗付工程が実行される。この塗布剤5としては、水、アルコール(エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール(IPA)等)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水のうちの何れか一つを用いることができる。
【0022】
このように、ワーク1の被処理面1aへの撥水処理剤3の塗布に先立って上記IPA塗付工程を実行して、ワーク1の被処理面1aにイソプロピルアルコール塗布剤5を塗布することにより、ワーク1の被処理面1aに対する上記アモルファスフッ素系樹脂の固着力が増大され、ワーク1(プラスチック表面)に形成される撥水膜4の固着力が向上される。これは、ワーク1の被処理面1aにイソプロピルアルコール等の塗布剤5が塗布されることで、該塗布剤5の洗浄作用により、該ワーク1の被処理面1aに付着して該アモルファスフッ素系樹脂と被処理面1aとの固着力を低下させるバインダ成分(不純物)が除去されることによるものと考えられる。
【0023】
表1に、上述の撥水処理方法によりワーク1の被処理面1aに形成した撥水膜4の撥水性及び固着力を調べるために実施した試験結果を示す。この試験では、ワーク1の素材としてPETを用いた。また、撥水膜4の撥水性はワーク1の被処理面1aに対する水滴の接触角で表し、該撥水膜4の固着力は、該撥水膜4に貼り付けた粘着テープを剥離する剥離試験、及び該撥水膜4を布により所定圧で摺擦する摺擦試験を所定回数実施した後の接触角の大きさを比較して調べた。
【表1】
【0024】
表1において、比較例1は、ワーク1の被処理面1aへの紫外レーザー光2の照射、イソプロピルアルコール等の塗布剤5及び撥水処理剤3の塗付を行わない場合の試験結果であって、この場合の撥水角は最大で75度であった。
また、比較例2は、ワーク1の被処理面1aへの紫外レーザー光2の照射、イソプロピルアルコール等の塗布剤5の塗付を行わず、撥水処理剤3としてF4スキーワックスを塗付した場合の試験結果であって、この場合の撥水角は最大で104度であった。
比較例3は、ワーク1の被処理面1aへの紫外レーザー光2の照射、イソプロピルアルコール等の塗布剤5の塗付を行わず、被処理面1aをカーボンコートした場合の試験結果であって、この場合の撥水角は最大で87度であった。
比較例4は、ワーク1の被処理面1aへの紫外レーザー光2の照射、イソプロピルアルコール等の塗布剤5の塗付を行わず、撥水処理剤3として濃度0.5%のサイトップ液(0.5%C液)をドブ付けにより塗付した場合の試験結果であって、この場合の撥水角は最大で107度であった。
比較例5は、ワーク1の被処理面1aへの紫外レーザー光2の照射、イソプロピルアルコール等の塗布剤5の塗付を行わず、撥水処理剤3として濃度0.5%のサイトップ液を刷毛塗りにより塗布した場合の試験結果であって、この場合の撥水角は最大で108度であった。
比較例6は、ワーク1の被処理面1aへの紫外レーザー光2の照射、イソプロピルアルコール等の塗布剤5の塗付を行わず、カーボンコートした被処理面1a上に、撥水処理剤3として濃度0.5%のサイトップ液をドブ付けにより塗布した場合の試験結果であって、この場合の撥水角は最大で112度であった。
比較例7は、ワーク1の被処理面1aへの紫外レーザー光2の照射、イソプロピルアルコール等の塗布剤5の塗付を行わず、カーボンコートした被処理面1a上に、撥水処理剤3として濃度0.5%のサイトップ液を刷毛塗りにより塗布した場合の試験結果であって、この場合の撥水角は最大で116度であった。
比較例8は、カーボンコートしたワーク1の被処理面1aに紫外レーザー光2の最大ビームを照射し、イソプロピルアルコール等の塗布剤5の塗付を行わない場合の試験結果であって、この場合の撥水角は最大で84度であった。
比較例9は、カーボンコートしたワーク1の被処理面1aに紫外レーザー光2をスキャニング照射し、イソプロピルアルコール等の塗布剤5の塗付を行わない場合の試験結果であって、この場合の撥水角は、水滴が濡れ広がり正確な測定が不可能(推定で最大10度程度)であった。
【0025】
これに対し、本発明の撥水処理方法により撥水膜4を形成したワークの場合には、撥水角が150〜180度となり、非常に高い撥水性及び固着性を示した。
例えば、表1の実施例1に示すように、ワーク1の被処理面1aに紫外レーザー光2の最大ビームを照射した後、イソプロピルアルコール等の塗布剤5の塗付を行わずに、撥水処理剤3として濃度0.5%のサイトップ液を静電塗装により塗布した場合の試験結果では、10回のテープ剥離試験後の撥水角が最大で122度と高い撥水性及び固着性を示した。
また、実施例2のように、ワーク1の被処理面1aに紫外レーザー光2の最大ビームを照射した後、イソプロピルアルコール等の塗布剤5の塗付を行わずに、撥水処理剤3として濃度0.5%のサイトップ液を静電塗装により塗布した場合の試験結果では、20回の摺擦試験後の撥水角が最大で118度であった。
実施例3は、ワーク1の被処理面1aに紫外レーザー光2の最大ビームを照射した後、イソプロピルアルコール等の塗布剤5の塗付を行わずに、撥水処理剤3として濃度0.5%のサイトップ液をドブ付けにより塗布し、20回の摺擦試験を行った場合の試験結果であって、この場合の撥水角は最大で102度であった。
実施例4は、ワーク1の被処理面1aに紫外レーザー光2の最大ビームを照射した後、イソプロピルアルコール等の塗布剤5の塗付を行わずに、撥水処理剤3として濃度0.5%のサイトップ液を刷毛塗りにより塗布し、20回の摺擦試験を行った場合の試験結果であって、この場合の撥水角は最大で110度であった。
実施例5は、ワーク1の被処理面1aに紫外レーザー光2をスキャニング照射し、該ワーク1の被処理面1aにイソプロピルアルコール等の塗布剤5を塗付した後、撥水処理剤3として濃度0.5%のサイトップ液を静電塗装により塗布し、100回の摺擦試験を行った場合の試験結果であって、この場合の撥水角は最大で90度であった。
【0026】
一方、実施例6は、ワーク1の被処理面1aに紫外レーザー光2をスキャニング照射し、該ワーク1の被処理面1aにイソプロピルアルコール等の塗布剤5を塗付した後、撥水処理剤3として濃度0.1%のサイトップ液を静電塗装により塗布し、20回の摺擦試験を行った場合の試験結果である。この場合には、撥水膜4から水滴が弾かれて該撥水膜4に対する水滴の接触角を正確に測定できなくなるほどの完全撥水の状態であった。
【0027】
上述のように、本発明の撥水処理方法によりプラスチック表面に撥水性及び固着力の高い撥水膜を形成することができる。従って、例えば前記プラスチックマスクに該撥水膜を形成することによって、該プラスチックマスクのスキージ面(表面)や開口内面の撥水性を向上させて、該プラスチックマスクの洗浄処理や乾燥処理などを容易化させることができるようになる。
また、この撥水膜を、例えば降雪地域に敷設されている電線や電子機器基板に形成することで、該電線や電子機器基板の着氷による断線を防止することが可能になる。
【0028】
【発明の効果】
請求項1乃至4の発明によれば、紫外レーザー光の照射によりプラスチックの被処理面が改質されて、該被処理面に新たな官能基が生成されるので、プラスチック表面に撥水性及び固着力の高いアモルファスフッ素系樹脂からなる撥水膜を形成できるという優れた効果がある。さらに、プラスチックの紫外レーザー光が照射された被処理面に、撥水処理剤の塗布に先立って、水、アルコール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水のうちの何れか一つが塗布されるので、上記アモルファスフッ素系樹脂の該被処理面に対する固着力が増大され、プラスチック表面に形成される撥水膜の固着力が向上されるという優れた効果もある。
【0030】
特に、請求項2の発明によれば、撥水処理剤の濃度が0.1〜1%であるので、プラスチック表面に形成された撥水膜に対する水滴の接触角を正確に測定できなくなるほど、該撥水膜の撥水性を向上させることができるという優れた効果がある。
【0031】
また、請求項3の発明によれば、プラスチックの被処理面に塗布された撥水処理剤が常温で乾燥されるので、該撥水処理剤を加熱乾燥させた場合に発生する該プラスチックの熱影響による変形を防止することができるという優れた効果がある。
【0032】
また、請求項4の発明によれば、プラスチックの被処理面に対して撥水処理剤を静電的な固着力により塗布できるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明によるプラスチック表面の撥水処理方法におけるレーザー光照射工程を示す概略図。
(b)は、該撥水処理方法における撥水処理剤塗布工程を示す概略図。
(c)は、該撥水処理方法における撥水処理剤乾燥工程を示す概略図。
【図2】(a)は、本発明によるプラスチック表面の他の撥水処理方法におけるレーザー光照射工程を示す概略図。
(b)は、該撥水処理方法におけるIPA塗布工程を示す概略図。
(c)は、該撥水処理方法における撥水処理剤塗布工程を示す概略図。
(d)は、該撥水処理方法における撥水処理剤乾燥工程を示す概略図。
【符号の説明】
1 ワーク
1a ワークの被処理面
2 紫外レーザー光
3 撥水処理剤
4 撥水膜
5 塗布剤(イソプロピルアルコール等)
Claims (4)
- プラスチック表面に撥水処理を施すプラスチック表面の撥水処理方法であって、
該プラスチックの撥水処理を施す被処理面に紫外レーザー光を照射するレーザー光照射工程と、該紫外レーザー光が照射された被処理面に、ペルフルオロ(4−ビニルオキシ−1−ブテン)重合物がトリス(パーフルオロブチル)アミンからなる希釈液に溶解された撥水処理剤を塗布する撥水処理剤塗布工程とを有し、
上記レーザー光照射工程が実行された後であって、上記撥水処理剤塗布工程に先立ち、上記被処理面に、水、アルコール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水のうちの何れか一つを、予め塗布することを特徴とするプラスチック表面の撥水処理方法。 - 請求項1のプラスチック表面の撥水処理方法において、
上記撥水処理剤塗布工程で上記被処理面に塗布される撥水処理剤の濃度が0.1〜1%であることを特徴とするプラスチック表面の撥水処理方法。 - 請求項1又は2のプラスチック表面の撥水処理方法において、
上記被処理面に塗布された撥水処理剤を常温で乾燥することを特徴とするプラスチック表面の撥水処理方法。 - 請求項1、2又は3のプラスチック表面の撥水処理方法において、
上記撥水処理剤塗布工程で上記被処理面に塗布される撥水処理剤が、該被処理面の表面電荷の極性と反対の極性に帯電されていることを特徴とするプラスチック表面の撥水処理方法。
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JPH06145398A (ja) * | 1992-11-09 | 1994-05-24 | Agency Of Ind Science & Technol | 紫外レーザーを用いた高分子成形品表面および固体基板表面への有機化合物の固定化方法 |
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