以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
(実施の形態1)
本実施の形態では、IDチップに実装される薄膜集積回路の作製方法の一例について説明する。
まず図1(A)に示すように、絶縁表面を有する基板100を用意する。基板100には、例えばバリウムホウケイ酸ガラスや、アルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、石英基板、ステンレス基板等を用いることができる。また、ポリエチレン-テレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)に代表されるプラスチックや、アクリル等の可撓性を有する合成樹脂からなる基板は、一般的に他の基板と比較して耐熱温度が低い傾向にあるが、作製工程における処理温度に耐え得るのであれば用いることが可能である。
また基板の平坦性を高めるため、化学的又は機械的ポリッシング法、いわゆるCMP法(Chemical−Mechanical Polishing)により、表面研磨してから用いると好ましい。CMPの研磨剤(スラリー)には、例えば、塩化シリコンガスを熱分解して得られるフュームドシリカ粒子をKOH添加水溶液に分散したものを用いることができる。
基板100上に、下地膜101を形成する。下地膜は、基板中に含まれるNaなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属が、半導体膜中に拡散し、半導体素子の特性に悪影響を及ぼすのを防ぐために設ける。そのため、アルカリ金属やアルカリ土類金属の半導体膜への拡散を抑えることができる酸化珪素、窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化チタン、窒化チタンなどの絶縁膜を用いて下地膜を形成することができる。
下地膜101は積層構造を有してもよく、例えば第1の下地膜として、窒化酸化珪素膜を10〜200nm(好ましくは50〜100nm)、第2の下地膜として、酸化窒化珪素膜を50〜200nm(好ましくは100〜150nm)の順に積層して形成してもよい。なお窒化酸化珪素膜は、プラズマCVD法を用い、原料ガスにSiH4、N2O、NH3、H2、圧力が0.3Torr(39.9Pa)、RFパワーが50W、RF周波数が60MHz、基板温度が400℃として形成することができる。また酸化珪素膜は、プラズマCVD法を用い、原料ガスにSiH4、N2O、圧力が0.3Torr(39.9Pa)、RFパワーが150W、RF周波数が60MHz、基板温度が400℃として形成することができる。
また下地膜は、不純物が半導体膜へ拡散することが防止できれば、必ずしも設ける必要はない。そのため、石英基板など不純物の拡散がさして問題とならない場合は、必ずしも下地膜を設ける必要はない。一方、ガラス基板、ステンレス基板又はプラスチック基板のように、アルカリ金属やアルカリ土類金属が多少なりとも含まれている基板を用いる場合、不純物の拡散を防ぐという観点から下地膜を設けることは有効である。
下地膜101上に非晶質半導体膜102を形成する。非晶質半導体膜の膜厚は25〜100nm(好ましくは30〜60nm)とする。また非晶質半導体は珪素だけではなくシリコンゲルマニウムも用いることができ、シリコンゲルマニウムを用いる場合、ゲルマニウムの濃度は0.01〜4.5atomic%程度であることが好ましい。本実施の形態では、珪素を主成分とする半導体膜を用いて非晶質半導体膜(非晶質珪素膜、アモルファスシリコンとも表記する)を形成する。
次に、非晶質半導体膜を結晶化するため加熱処理を行う。加熱処理とは、加熱炉、レーザー照射、若しくはレーザー光の代わりにランプから発する光の照射(以下、ランプアニールと表記する)、又はそれら組み合わせて用いることができる。
加熱炉を用いる場合、非晶質半導体膜102を500〜550℃で2〜20時間かけて加熱する。このとき、徐々に高温となるように温度を500〜550℃の範囲で多段階に設定するとよい。最初の低温加熱工程により、非晶質半導体膜の水素等が出てくるため、結晶化の際の膜荒れを低減する、いわゆる水素だしを行うことができる。さらに、結晶化を促進させる金属元素、例えばNiを非晶質半導体膜上に形成すると、加熱温度を低減することができ好ましい。
但し、金属元素を形成する場合、半導体素子の電気特性に悪影響を及ぼすことが懸念されるので、該金属元素を低減又は除去するためのゲッタリング工程を施す必要が生じる。例えば、非晶質半導体膜をゲッタリングシンクとして金属元素を捕獲するよう工程を行えばよい。
またレーザー照射を用いる場合、連続発振型のレーザー(CWレーザー)やパルス発振型のレーザー(パルスレーザー)を用いることができる。レーザーとしては、Arレーザー、Krレーザー、エキシマレーザー、YAGレーザー、Y2O3レーザー、YVO4レーザー、YLFレーザー、YAlO3レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライドレーザー、Ti:サファイヤレーザー、銅蒸気レーザーまたは金蒸気レーザーのうち一種または複数種を用いることができる。またレーザーのビーム形状は、線状とすると好ましく、長軸の長さは200〜350μmとすればよい。またさらにレーザーは、半導体膜に対して入射角θ(0°<θ<90°)を持たせてもよい。
なおレーザー照射を用いる場合、連続発振の基本波のレーザー光と連続発振の高調波のレーザー光とを照射するようにしてもよいし、連続発振の基本波のレーザー光とパルス発振の高調波のレーザー光とを照射するようにしてもよい。
なお、希ガスや窒素などの不活性ガス雰囲気中でレーザー光を照射するようにしてもよい。これにより、レーザー光照射による半導体表面の荒れを抑えることができ、界面準位密度のばらつきによって生じる閾値のばらつきを抑えることができる。
また直接被形成面に、結晶性半導体膜を形成してもよい。この場合、GeF4、又はF2等のフッ素系ガスと、SiH4、又はSi2H6等のシラン系ガスとを用い、熱又はプラズマを利用して直接被形成面に、結晶性半導体膜を形成することができる。
このように形成された結晶性半導体膜を、所定の形状にパターニングし、島状の半導体膜103を得る。パターニングに際し、フォトリソグラフィー法又は液滴吐出法により所定のマスクを形成する。なお、材料の利用効率が向上し、コストの削減、廃液処理量の削減が可能となるため液滴吐出法を用いてマスクを形成すると好ましい。さらに液滴吐出法によりマスクを形成すると、フォトリソグラフィー工程の簡略化を行うことができる。すなわち、フォトマスク形成、露光等が不要となり、設備投資コストの削減を達成でき、製造時間を短縮することができる。
液滴吐出法を用いるとき、組成物はドット状に吐出したり、ドットが連なった柱状に吐出することがある。また組成物は、ドット状又は柱状に吐出される。すなわち、複数のドットが連続して吐出されるため、ドットとして認識されず柱状に吐出されることもある。このような組成物がドット状又は柱状に吐出されることを滴下若しくは噴出と表記する。
マスク材料として、無機材料(酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素など)、感光性又は非感光性の有機材料(ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、ポリビニルアルコール、レジスト又はベンゾシクロブテン)を用いることができる。例えばポリイミドを用いて液滴吐出法によりマスクを形成する場合、所望箇所に液滴吐出法によりポリイミドを吐出した後、焼成するため150〜300℃で加熱処理を行うとよい。
マスクを用いて、ドライエッチング法又はウェットエッチング法により結晶性半導体膜をパターニングする。パターニング後、マスクを除去するため、プラズマ処理を行う。なお、マスクは除去せずに絶縁膜として機能させることもできる。
その後、島状の半導体を覆うように絶縁膜、いわゆるゲート絶縁膜105を形成する。ゲート絶縁膜はプラズマCVD法、減圧CVD法、またはスパッタ法を用い、厚さを10〜150nm、好ましくは20〜40nmとして珪素を含む絶縁膜で形成する。勿論、ゲート絶縁膜は酸化窒化珪素膜に限定されるものでなく、他の珪素を含む絶縁膜を単層または積層構造として用いてもよい。
その後、結晶性半導体膜上にゲート絶縁膜を介して導電膜、いわゆるゲート電極106を形成する。ゲート電極は、液滴吐出法、CVD法又はスパッタリング法により形成することができる。ゲート電極は、Ta、W、Ti、Mo、Al、Cuから選ばれた元素、または前記元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料で形成すればよい。勿論ゲート電極は、単層であっても積層であってもよい。例えば、第1の導電膜108aとして膜厚10〜50nmの窒化タンタル膜を形成し、第2の導電膜108bとして膜厚200〜400nmのタングステン膜を順次積層したゲート電極を形成することができる。
また液滴吐出法によりゲート電極を形成する場合、溶媒に混在される導電体として、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、タンタル(Ta)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、若しくはアルミニウム(Al)が挙げられ、これら導電体が複数混在した材料を用いることができる。また、上記導電体からなる合金、これらの分散性ナノ粒子、又はハロゲン化銀の微粒子を用いることができる。
例えば、ゲート電極のパターンを形成するために、金属微粒子を有機溶媒中に分散させた組成物を用いる場合、金属微粒子は平均粒径が1〜50nm、好ましくは3〜7nmのものを用いるとよい。このような組成物は、電解法、アトマイズ法又は湿式還元法等の公知の方法を用いて形成することができる。また、ガス中蒸発法で形成すると、分散剤で保護された微粒子は約7nmと微細なものとなる。またこの微粒子は、被覆剤を用いて各粒子の表面を覆うと、溶剤中に凝集がなく、室温で安定に分散し、液体とほぼ同じ挙動を示すため、好ましい。
導電体等の材料が効率よく分散するため、微粒子となる導電体の表面を有機物、又は導電物によりコーティングするとよい。また表面を覆う物質は、積層構造を有してもよい。表面を覆う物質は導電性を有すると好ましいが、絶縁性を有しても加熱処理等により除去すればよい。特に銅を用いる場合、半導体膜中等に銅が拡散することを防止するため、銅微粒子の表面をニッケル(Ni)又はニッケルボロン(NiB)等の材料で覆うとよい。またその表面にアミン、アルコール、チオールなどの分散剤を被覆してもよい。有機溶媒はフェノール樹脂やエポキシ系樹脂などであり、熱硬化性又は光硬化性のものを適用している。
これら組成物の粘度調整は、チキソ剤若又は希釈溶剤を添加すればよい。
本実施の形態では、液滴吐出法を用いて、液滴吐出ヘッドによって、Agの導電体を被形成面に適量吐出し、ゲート電極を形成する。
その後、液滴中の溶媒を除去する必要があるとき、焼成したり、乾燥させるため加熱処理を施す。または光照射処理により溶媒を硬化させてもよい。具体的には、所定の温度、例えば200℃〜300℃で加熱すればよく、好ましくは酸素を有する雰囲気で加熱処理を行う。このときゲート電極表面に凹凸が生じないように加熱温度を設定する。特に本実施の形態のようにAgを用いる場合、酸素及び窒素を有する雰囲気で加熱処理を行うとよい。例えば、酸素の組成比は、10〜25%となるように設定する。すると、液滴の溶媒中に含まれる接着剤等の熱硬化性樹脂などの有機物が分解されるため、有機物を含まない銀(Ag)を得ることができる。その結果、ゲート電極表面の平坦性を高め、比抵抗値を低くすることができる。さらに有機溶媒の硬化に伴う体積収縮で金属微粒子間は接触し、融合及び、融着若しくは凝集が促進される。すなわち、平均粒径が1〜50nm、好ましくは3〜7nmの金属微粒子が融合若しくは、融着若しくは凝集したゲート電極が形成される。なおこのとき同時にゲート配線も形成される。このように、融合若しくは、融着若しくは凝集により金属微粒子同士が面接触する状態を形成することにより、配線の低抵抗化を実現することができる。
本発明は、このような組成物を用いて配線パターンを形成することで、線幅が1〜10μm程度のゲート電極、又はゲート配線パターンの形成も容易になる。また、これら電極や配線と接続するためのコンタクトホールの直径が1〜10μm程度であっても、組成物をその中に充填することができる。
なお、金属微粒子の換わりに、絶縁物質の微粒子を用いれば、同様に絶縁性のパターンを形成することができる。
このように液滴吐出法によりゲート電極を形成する場合、ゲート絶縁膜の材料は、ゲート電極材料と密着性の高いものを選択するとよい。例えば、ゲート電極にAgを用いる場合、酸化チタン(TiOx)からなるゲート絶縁膜を形成すると好ましい。すなわち酸化チタン(TiOx)は、ゲート絶縁膜としての機能と、密着性向上機能とを併せ持っている。
次いで、nチャネル型TFTとなる領域に、ゲート電極106をマスクとして自己整合的に不純物元素であるリン(P)を添加し、不純物領域108を形成する。不純物添加時のゲート電極106下方への不純物元素の回り込みにより、ゲート電極と重なるように不純物領域が形成されることもある。またゲート電極の側面をテーパ形状とし、ゲート電極と重なる不純物領域を形成することもできる。
その後、nチャネル型TFTとなる領域をレジストマスクで覆った状態で、pチャネル型TFTとなる領域にゲート電極106をマスクとして、自己整合的に不純物元素であるボロン(B)を添加し、不純物領域109を形成する。
このように形成される薄膜トランジスタは、半導体膜より上方にゲート電極が設けられた、所謂トップゲート型の薄膜トランジスタである。このような薄膜トランジスタが複数設けられた基板をTFT基板と表記することができる。
図1(B)に示すように、絶縁膜110、及び各不純物領域に接続された配線112を形成する。絶縁膜は、有機材料や無機材料を用いることができる。有機材料としては、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジスト又はベンゾシクロブテン、シロキサン、ポリシラザンを用いることができる。シロキサンとは、珪素(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構造され、置換基に少なくとも水素を含む、又は置換基にフッ素、アルキル基、又は芳香族炭化水素のうち少なくとも1種を有するポリマー材料、を出発原料として形成される。またポリシラザンとは、珪素(Si)と窒素(N)の結合を有するポリマー材料を含む液体材料を出発原料として形成される。無機材料としては、酸化珪素、又は窒化珪素を用いることができる。絶縁膜は、プラズマCVD法、減圧CVD法、液滴吐出法、スピンコーティング法又はディップ法を用いて形成することができる。粘性の高い原料を用いて形成する場合、液滴吐出法、スピンコーティング法、又はディップ法を用いると好ましい。
配線は、スパッタリング法、CVD法、又は液滴吐出により形成することができる。配線材料としては、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)もしくはシリコン(Si)の元素からなる膜又はこれらの元素を用いた合金膜を用いればよい。また液滴吐出法により配線を形成する場合、溶媒に混在される導電体として、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、タンタル(Ta)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、若しくはアルミニウム(Al)、これらからなる合金、これらの分散性ナノ粒子、又はハロゲン化銀の微粒子を用いることができる。
本実施の形態では、液滴吐出法により層間絶縁膜及び配線を形成する。このとき、層間絶縁膜材料を有する溶媒と、導電膜材料を有する溶媒とを同時に吐出したり、層間絶縁膜材料を有する溶媒を吐出後、導電膜材料を有する溶媒を吐出してもよい。
図1(B)では、配線層は一層であるが、多層としてもよい。多層配線層とすることにより、薄膜集積回路の小型化を達成することができる。
その後、配線112を接続するための導電膜115を形成する。導電膜115の作製方法や材料は、配線112を参照することができる。
図1(C)に示すように、導電膜115を覆うように保護膜として機能する絶縁膜116を形成する。絶縁膜116の作製方法や材料は、層間絶縁膜110を参照することができる。
絶縁膜116には、導電膜115とアンテナ等の端子と接続するためのコンタクトホールを形成し、コンタクトホールには、導電膜117を形成し、接続端子部118を形成する。
また図2に示すように、アンテナ121を一体形成してもよい。この場合、接続端子部を形成後、アンテナ121を形成する。アンテナの一部は、接続端子部と接続するように形成する。その後、保護膜として機能する絶縁膜122を形成する。絶縁膜122の作製方法や材料は、層間絶縁膜110を参照することができる。
このようにアンテナを一体形成すると、アンテナが実装されたIDチップの作製コストを削減することができる。IDチップのように単価が非常に低い集積回路は、単価コストの削減により非常に大きな利益を生むことができる。
また図2では、薄膜集積回路上にアンテナを形成しているが、薄膜集積回路の周囲にアンテナを一体形成しても構わない。この場合、絶縁膜122を形成する工程を省き、絶縁膜の厚みをなくすことができる。
またさらに、アンテナは、ゲート電極、配線112、又は導電膜115と同一導電膜から形成することができる。この場合、作製工程を削除することができ、好ましい。特にアンテナを液滴吐出法や印刷法により形成する場合、同一レイヤーに形成するゲート電極、配線112、又は導電膜115も液滴吐出法や印刷法により形成すると好ましい。
図1(D)には、このように作製された薄膜集積回路の全体図を示す。薄膜集積回路は、基板100上に設けられた薄膜集積回路120は、該集積回路の所定の領域には接続端子部118が設けられている。
このように非常に薄い薄膜集積回路を実装するIDチップにより、多種多様な情報を提供することができる。またIDチップにより、情報取引又は情報管理を簡便、短時間に行うことができる。また更に商品容器にラベルと共にIDチップを付する場合であっても、非常に薄いためデザイン性を損ねることがない。
また本発明の薄膜集積回路は、シリコンウェハで作製された集積回路のように、クラックや研磨痕の原因となるバックグラインド処理を行う必要がない。またさらに本発明の薄膜集積回路は、厚さのバラツキも、半導体膜等の成膜時におけるばらつきに依存することになるので、大きくても数百nm程度であり、バックグラインド処理による数〜数十μmのばらつきと比べて格段に小さく抑えることができる。
また本発明のIDチップは、シリコンウェハで作製されたチップと比較して、低コストで形成することができる。ガラス基板等の低価格な母体基板に形成するためである。またシリコンウェハで作製されたチップは、円形のシリコンウェハからチップを取り出すため、母体基板形状に制約があるが、一方本発明のIDチップは、母体基板がガラス等の絶縁基板であり、形状に制約がない。そのため、生産性を高めることができ、さらにIDチップの形状寸法は自由に設定することができる。
またIDチップを形成する材料の面からみても、シリコンウェハから形成されるチップと比較して低コスト、且つ安全な材料を使用している。そのため使用済みのIDチップを回収する必要性が低く、環境に優しい。またIDチップを破棄する際、ある程度の面積を有するため、ハサミ等で切断することができ、不正使用を防止することができる。
またシリコンウェハで作製されたICチップは、シリコンウェハによる電波吸収が懸念され、信号の感度が問題となる場合がある。特に、よく用いられる電波13.56MHz、又は2.45GHzに関して電波吸収が懸念される。一方、本発明のIDチップは、ガラス等の絶縁基板であるため電波吸収は生じないため好ましい。その結果、高感度なIDチップを形成することができる。そのため、本発明のIDチップが有するアンテナの面積を小さくすることができ、IDチップの小型化が期待できる。
またシリコンウェハ上に形成するチップは、シリコンウェハが半導体性を有するため、交流の電波に対し、接合が順バイアスになりやすく、ラッチアップ対策の必要がある。一方、本発明のIDチップは、絶縁性を有する基板上へ薄膜集積回路を形成するため、このような心配がない。
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態と異なり、非結晶性の半導体膜を有する薄膜トランジスタを具備する薄膜集積回路の作製方法について説明する。
上記実施の形態と同様に、図3(A)に示すように、絶縁表面を有する基板100を用意する。絶縁表面を有する基板の材料は、上記実施の形態を参照することができる。本実施の形態では、非結晶性の半導体膜を有するため、半導体膜を結晶化するための加熱工程を要しない。その結果、可撓性を有する合成樹脂からなる基板を用いやすい。
また上記実施の形態と同様に、平坦性を高めるため、絶縁表面を有する基板に表面研磨を施してもよい。
その後、下地膜101を形成する。下地膜の材料や作製手段は、上記実施の形態を参照すればよい。また下地膜の材料として、チタン等の導電膜を用いることもできる。この場合、導電膜は、作製工程における加熱処理等により、少なくとも表面酸化される。その他の下地膜の材料は、3d遷移元素(Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn)、及びそれらの酸化物、窒化物、酸窒化物を用いることができる。
また下地膜は、不純物が半導体膜へ拡散することが防止できれば、必ずしも設ける必要はないことは、上記実施の形態で述べたとおりである。
次いで、下地膜上にゲート電極106を形成する。ゲート電極の材料又は作製手段は、上記実施の形態を参照することができる。本実施の形態では、液滴吐出法を用いて、Agの導電体を用いてゲート電極を形成する。
その後、液滴中の溶媒を除去する必要があるとき、焼成したり、乾燥させるため加熱処理を施す。加熱条件は上記実施の形態を参照することができる。
このように液滴吐出法によりゲート電極を形成する場合、下地膜の材料は、ゲート電極材料と密着性の高いものを選択するとよい。例えば、ゲート電極にAgを用いる場合、酸化チタン(TiOx)からなる下地膜を形成すると好ましい。すなわち酸化チタン(TiOx)は、下地膜としての機能と、密着性向上機能とを併せ持っている。
その後、ゲート電極上に保護膜として機能する絶縁膜を設けてもよい。特に、Agを用いて液滴吐出法により形成されたゲート電極上には窒化珪素を有する絶縁膜を形成するとよい。その結果、ゲート電極の酸化を防止したり、表面の平坦化を向上することができる。一方、酸素を有する絶縁膜を用いると、Agと反応し、酸化銀が形成され、ゲート電極表面が荒れる恐れがあるため好ましくない。
その後ゲート電極を覆うようにゲート絶縁膜105を形成する。ゲート絶縁膜の材料や作製手段は上記実施の形態を参照すればよい。また上記実施の形態以外に加えて、ゲート絶縁膜の材料は、ポリシラザン、ポリビニルアルコール等の有機材料からなる絶縁体を用いることができる。またゲート絶縁膜の作製手段は、液滴吐出法、スピンコーティング法又はディップ法を用いて形成することができる。粘性の高い原料を用いて形成する場合、液滴吐出法、スピンコーティング法、又はディップ法を用いると好ましい。
次いで、ゲート絶縁膜上に半導体膜を形成する。半導体膜は、プラズマCVD法、スパッタリング法、液滴吐出法等により形成することができる。本実施の形態において半導体膜は、非晶質半導体、非晶質状態と結晶状態とが混在したセミアモルファス半導体(SASとも表記する)、非晶質半導体中に0.5nm〜20nmの結晶粒を観察することができる微結晶半導体、及び結晶性半導体から選ばれたいずれの非結晶性状態を有してもよい。特に、0.5nm〜20nmの結晶を粒観察することができる微結晶状態はいわゆるマイクロクリスタル(μc)と呼ばれている。
SASは、非晶質構造と結晶構造(単結晶、多結晶を含む)との中間的な構造を有し、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体である。また短距離秩序を持ち格子歪みを有する結晶質な領域を含んでいる。そして少なくとも膜中の一部の領域には、0.5〜20nmの結晶領域を観測することができ、珪素を主成分とする場合にはラマンスペクトルが520cm-1よりも低波数側にシフトしている。X線回折では珪素結晶格子に由来するとされる(111)、(220)の回折ピークが観測される。また未結合手(ダングリングボンド)を終端させるための中和剤として、SASは水素或いはハロゲンを1原子%、又はそれ以上含んでいる。
SASは、珪化物気体をグロー放電分解することにより得ることができる。代表的な珪化物気体としては、SiH4であり、その他にもSi2H6、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4などを用いることができる。珪化物気体を水素、水素とヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンから選ばれた一種又は複数種の希ガス元素で希釈して用いることによりSASの形成を容易なものとすることができる。このとき希釈率が10倍〜1000倍の範囲となるように、珪化物気体を希釈すると好ましい。またSi2H6及びGeF4を用い、ヘリウムガスで希釈する方法を用いてSASを形成することができる。グロー放電分解による被膜の反応生成は減圧下で行うと好ましく、圧力は概略0.1Pa〜133Paの範囲で行えばよい。グロー放電を形成するための電力は1MHz〜120MHz、好ましくは13MHz〜60MHzの高周波電力を供給すればよい。基板加熱温度は300度以下が好ましく、100〜250度の基板加熱温度が推奨される。
本実施の形態では、半導体膜として、プラズマCVD法を用いて、珪素を主成分とするSASを形成する。SASを用いて薄膜トランジスタを形成すると、移動度は1〜10cm2/Vsecとなる。
次いで、一導電型を有する半導体膜を形成する。なお一導電型を有する半導体膜を形成すると、半導体膜と電極とのコンタクト抵抗が低くなり好ましいが、必要に応じて設ければよい。一導電型を有する半導体膜は、プラズマCVD法、スパッタリング法、液滴吐出法等を用いて形成することができる。
プラズマCVD法により形成する場合、半導体膜と、N型を有する半導体膜、さらにゲート絶縁膜を連続形成することができる。具体的には、プラズマCVD装置の処理室内への原料ガスの供給を変化させることにより大気開放することなく、連続形成することができる。その結果、半導体膜と、N型を有する半導体膜、さらにゲート絶縁膜の各々の界面への不純物付着を防止することができる。
その後、半導体膜、及びN型を有する半導体膜を所望の形状にパターニングし、島状の半導体膜103、島状のN型を有する半導体膜104を得る。パターニングに際し、上記実施の形態を参照することができる。
半導体膜、及びN型を有する半導体膜を同時にパターニングするため、島状の半導体膜103、及び島状のN型を有する半導体膜104の端部が一致する構造となる。すなわち、島状の半導体膜103、及び島状のN型を有する半導体膜104のそれぞれの端部は、互いの端部を越えないように設けられている。
図3(A)に示すように、ソース電極及びドレイン電極111として機能する導電膜を形成する。導電膜は、単層構造及び積層構造のいずれを有してもよい。また導電膜の材料や作製手段は、上記実施の形態を参照することができる。上記実施の形態と同様に、導電膜はスパッタリング法、プラズマCVD法により形成することができ、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶珪素膜に代表される半導体膜や、AgPdCu合金を用いることができる。
さらに液滴吐出法を用いる場合、ソース電極及びドレイン電極の被形成面上の撥液性を高めるため、撥液処理を行ってもよい。撥液処理としては、フッ素系のシランカップリング剤等を塗布する方法がある。別の撥液処理として、CHF3、O2混合ガス等を用いたプラズマ処理を行ってもよい。その後、液滴の溶媒を除去する必要があるとき、焼成したり、乾燥させるため加熱処理を施す。
その後、ソース電極及びドレイン電極111をマスクとして、N型を有する半導体膜104をエッチングする。N型を有する半導体膜が、ソース電極及びドレイン電極を短絡することを防止するためである。このとき、半導体膜103が多少エッチングされることがある。
その後、ソース電極及びドレイン電極上に保護膜として機能する絶縁膜を設けてもよい。特に、Agを用いて液滴吐出法により形成されたソース電極及びドレイン電極上には窒化珪素を有する絶縁膜を形成するとよい。その結果、ソース電極及びドレイン電極の酸化を防止したり、表面の平坦化を向上することができる。一方、酸素を有する絶縁膜を用いると、Agと反応し、酸化銀が形成され、ソース電極及びドレイン電極表面が荒れる恐れがあるため好ましくない。
以上のように、ソース電極及びドレイン電極まで設けられた薄膜トランジスタが完成する。本実施の形態の薄膜トランジスタは、半導体膜より下方にゲート電極が設けられた、所謂ボトムゲート型の薄膜トランジスタである。より詳細には、半導体膜が多少エッチングされている、所謂チャネルエッチ型である。このような薄膜トランジスタが複数設けられた基板をTFT基板と表記する。
図3(B)に示すように、絶縁膜110、及び配線112を形成する。絶縁膜及び配線の材料、及び作製手段は上記実施の形態を参照することができる。詳しくは、絶縁膜材料を有する液滴、及び導電膜材料を有する液滴を、同時にノズルから吐出することができる。このとき例えば二つのヘッドを設置したノズルを用いる場合、各ヘッドが有するノズルを、絶縁膜材料を有するノズル専用、導電膜材料を有するノズル専用とすることもできる。また、絶縁膜及び導電膜を同時ではなく別に形成してもよい。この場合、絶縁膜及び導電膜のいずれを先に形成してもよいが、好ましくは絶縁膜を先に形成すると、微細な導電膜を先に形成する場合と比較し、導電膜パターンのくずれを防止することが期待できる。
図2(C)に示すように、導電膜115を覆うように保護膜として機能する絶縁膜116を形成する。絶縁膜116の作製方法や材料は、上記実施の形態を参照することができる。
また本実施の形態においても、図2に示すように、アンテナ121を一体形成してもよい。
以上、チャネルエッチ型の薄膜トランジスタを用いて形成される薄膜集積回路について説明したが、図4に示すように、チャネルエッチ型の薄膜トランジスタに代えて、半導体膜上に保護膜130が設けられている、所謂チャネル保護型の薄膜トランジスタを用いて薄膜集積回路を形成してもよい。
図3(D)には、このように作製された薄膜集積回路の全体図を示す。IDチップは、基板100上に設けられた薄膜集積回路120を有し、該集積回路の所定の領域には接続端子部118が設けられている。
このような非結晶性半導体膜を用いた薄膜集積回路では、13.56MHzのように低い周波数を有する電波により通信を行うことが望ましい。また通信距離が10cm未満である近接型、又は数cm程度である密着型に適している。
本実施の形態では、ボトムゲート型の薄膜トランジスタを形成するため、薄膜集積回路を非常に薄くすることができる。そのため、デザイン性を損ねることがなく、IDチップとして紙幣等の紙へ搭載すると好ましい。
また非結晶性の半導体膜を用いるため、結晶性の薄膜集積回路と比較すると、半導体膜の面積が大きくなることが懸念される。しかし、IDチップを破棄する際、ある程度の面積を有するため、ハサミ等で容易に切断することができ、不正使用を防止することができるというメリットがある。
また従来のシリコンウェハで作製されたチップは、応力に弱い。特に非結晶性の半導体膜を用いる薄膜集積回路は面積が大きくなることがあり、応力破壊が懸念される。しかし、IDチップはシリコンウェハチップと比較して、ある程度の面積を有するため、更にはフレキシブル性の高い基板を用いることにより、応力破壊、つまり曲げ応力に対して強い。
また本実施の形態で示した薄膜トランジスタは、少なくとも液滴吐出法により導電膜やマスク等を形成することを特徴とする。そのため、材料の利用効率が向上し、コストの削減、廃液処理量の削減が可能となる。特に液滴吐出法によりマスクを形成すると、フォトリソグラフィー工程と比較して工程の簡略化を行うことができる。その結果、設備投資コストの削減、IDチップのコスト削減、製造時間を短縮することができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態と異なる方法により作製する薄膜集積回路について説明する。本実施の形態では上記実施の形態1に示す薄膜トランジスタで説明するが、上記実施の形態2に示す薄膜トランジスタを用いてもよい。
図5(A)に示すように基板100上に、金属膜140を形成する。金属膜としては、W、Ti、Ta、Mo、Nd、Ni、Co、Zr、Zn、Ru、Rh、Pd、Os、Irから選ばれた元素または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料からなる単層、或いはこれらの積層を用いることができる。金属膜の作製方法として例えば、金属のターゲットを用いるスパッタリング法により形成すればよい。なお金属膜の膜厚は、10nm〜200nm、好ましくは50nm〜75nmとなるように形成すればよい。
金属膜の代わりに、上記金属が窒化された(例えば、窒化タングステンや窒化モリブデン)膜を用いても構わない。また金属膜の代わりに上記金属の合金(例えば、WとMoとの合金:WxMo1-X)膜を用いてもよい。この場合、成膜室内に第1の金属(W)及び第2の金属(Mo)といった複数のターゲットを用いたり、第1の金属(W)と第2の金属(Mo)との合金のターゲットを用いたスパッタリング法により形成すればよい。また更に、金属膜に窒素や酸素を添加してもよい。添加する方法として例えば、金属膜に窒素や酸素をイオン注入したり、成膜室を窒素や酸素雰囲気としてスパッタリング法により形成すればよく、このときターゲットとして窒化された金属を用いてもよい。
このような金属膜の形成方法により、剥離工程を制御することができる。すなわち、金属の合金を用いた場合、合金の各金属の組成比を制御することにより、剥離工程を制御できる。具体的には、剥離するための加熱温度の制御や、加熱処理の要否までも制御することができる。その結果、プロセスマージンを広げることができる。
その後、金属膜140上に被剥離層141を形成する。この被剥離層は珪素を有する酸化膜を有し、酸化膜は下地膜としての機能も有する。またさらに金属膜や基板からの不純物やゴミの侵入を防ぐため、半導体膜より下面に窒化珪素(SiN)膜、窒化酸化珪素(SiONやSiNO)膜等の窒素を有する絶縁膜を設けてもよい。このような金属膜上に形成される絶縁膜を被剥離層と表記する。
珪素を有する酸化膜は、スパッタリング法やCVD法により酸化珪素、酸化窒化珪素等を形成すればよい。珪素を有する酸化膜の膜厚は、金属膜の約2倍以上であることが望ましい。本実施の形態では、シリコンターゲットを用いたスパッタリング法により、酸化珪素膜を150nm〜200nmの膜厚として形成する。
この珪素を有する酸化膜を形成するときに、金属膜140の表面に当該金属を有する酸化物(以下、金属酸化物と表記し、図示しない)が形成される。金属酸化物の膜厚は、0.1nm〜1μm、好ましくは0.1nm〜100nm、更に好ましくは0.1nm〜5nmとなるように形成すればよい。また金属酸化物は、硫酸、塩酸或いは硝酸を有する水溶液、硫酸、塩酸或いは硝酸と過酸化水素水とを混同させた水溶液又はオゾン水で処理することにより金属膜表面に形成される薄い金属酸化物を用いることもできる。更に他の方法としては、酸素雰囲気中でのプラズマ処理や、酸素含有雰囲気中で紫外線照射することによりオゾンを発生させて酸化処理を行ってもよく、クリーンオーブンを用い200〜350℃程度に加熱して金属酸化物を形成してもよい。
次いで、被剥離層141に半導体膜103等を形成し、薄膜トランジスタを完成させる。その後、絶縁膜110、及び各不純物領域に接続された配線112、導電膜115、絶縁膜116、導電膜117が形成された接続端子部118を形成する。薄膜トランジスタの作製方法等は、上記実施の形態を参照することができる。
このように、金属膜140と、金属酸化物と、被剥離層141と、半導体膜とが積層された状態、つまり被剥離層の一方の面に半導体膜が設けられ、他方の面に金属酸化物及び金属膜が設けられる構造となる。
以上のように薄膜トランジスタを形成後、少なくとも金属酸化物形成後に加熱処理を行い、金属酸化物を加熱する。その結果、金属酸化膜は結晶状態となる。例えば、金属膜にW(タングステン)を用いる場合、400℃以上で加熱処理を行うと、WO2又はWO3の金属酸化物が結晶状態となる。加熱処理は、選択される金属膜により温度や要否を決定すればよい。その結果、必要に応じて金属酸化物を結晶化することができ、剥離を容易に行うことができる。
なお上述の加熱処理は、半導体素子の作製中の加熱処理と兼用させることができる。例えば半導体膜を形成後に加熱を行うことにより、半導体膜の水素を出す、所謂水素出し工程の加熱処理と兼用することができる。また結晶性半導体膜を形成する場合、加熱炉やレーザー照射を用いて加熱処理を行うことができる。その結果、作製工程を低減することができる。
次いで、図5(B)に示すように基板上に形成された薄膜集積回路120を商品表面へ接着する。なお、商品は瓶の側面のように曲面であってもよい。本実施の形態では、アンテナ121及び接続端子部144が設けられた基板142へ接着する。このとき、集積回路の接続端子部118と、基板上の接続端子部143とが接続するように接着剤により接着する。接着剤としては、紫外線硬化樹脂、具体的にはエポキシ樹脂系接着剤或いは樹脂添加剤等の接着剤又は両面テープ等を用いることができる。
そして図5(C)に示すように、基板100を、物理的手段により剥離する。このとき、結晶化された金属酸化物の層内、又は金属酸化物の両面の境界(界面)、すなわち金属酸化物と金属膜との界面或いは金属酸化物と被剥離層との界面で剥がれる。
このとき剥離を容易に行うため、基板の一部を切断し、切断面における剥離界面、すなわち金属膜と金属酸化物との界面付近にカッター等で傷を付けるとよい。または、半導体素子が設けられていない領域の被剥離層に傷を付けてもよい。
基板100を剥離後、金属酸化物は、薄膜集積回路側において全て除去されている場合、又は一部或いは大部分が薄膜集積回路側に点在(残留)している場合がある。金属酸化物が残留している場合は、エッチング等により除去してもよい。このとき、更に珪素を有する酸化膜を除去しても構わない。
以上のように薄膜集積回路が搭載された商品を形成することができる。
本実施の形態では、接続端子部の導電膜が下方を向いている所謂フェイスダウン状態で薄膜集積回路を実装する場合について説明したが、接続端子部の導電膜が上方を向いている所謂フェイスアップ状態で薄膜集積回路を実装してもよい。この場合、集積回路の接続端子部の導電膜と、アンテナ等のコンタクトには、ワイヤボンディングを用いるとよい。
以上、基板100上に薄膜トランジスタを形成後、転写し、基板100を剥離する形態を説明したが、被転写物、又は剥離するタイミング若しくは回数は上記形態に限定されない。例えば、被転写物として可撓性を有する合成樹脂基板を用い、金属酸化物形成後に該合成樹脂基板へ半導体膜の転写を行い、その後薄膜トランジスタを完成させてもよい。特に、上記実施の形態2にように非結晶性の半導体膜を有する薄膜トランジスタを形成する場合、合成樹脂基板へ転写を行った後であっても、薄膜トランジスタを完成することが可能となる。非結晶性の半導体膜を有する薄膜トランジスタは、加熱温度を低く、又は加熱処理を行わずに形成することができるからである。その後更に、薄膜集積回路をプリント基板等へ転写してもよい。このような転写及び剥離により形成される薄膜集積回路は、フェイスアップ状態又はフェイスダウン状態で商品へ搭載することができる。
また剥離を行う場合、剥離する必要がある基板の接着には、接着剤としては剥離可能な接着剤、例えば紫外線により剥離する紫外線剥離型、熱による剥離する熱剥離型或いは水により剥離する水溶性の接着剤、又は両面テープ等を使用するとよい。そして接着剤を除去するために、接着剤を剥がすために紫外線照射を照射したり、加熱したり、水洗すればよい。
本実施の形態では、金属膜等を用いた剥離法を説明したが、その他の剥離法により基板100を剥離してもよい。例えば、剥離層へレーザーを照射して、基板100を剥離したり、基板100をエッチング除去することにより基板100を剥離したりすることができる。また、剥離層へ切り込みを入れ、フッ素系、又は塩素系、例えばClF3等のエッチャントにより剥離することもできる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、IDチップのアンテナの作製方法について説明する。
非接触型IDチップとして機能するためには、上述のように薄膜集積回路及びアンテナが必要となる。アンテナは、多様な配置をとることができ、少なくともアンテナの先端には、薄膜集積回路と接続するための接続端子が設けられている。
例えば図6(A)に示すように、基板142上に設けられたアンテナは、矩形上に蛇行するように設けられ、先端にはそれぞれ接続端子143が設けられている。図6(A)では、各接続端子が近接して設けられているが、これに限定されるものではない。薄膜集積回路の接続端子に合わせて、各接続端子の配置を決定することができる。
アンテナは、図6(B)に示すような巻くように設けてもよい。そしてアンテナの先端には、接続端子143が設けられている。図6(B)では、各接続端子は離れるように設けられているが、図6(A)のように近接して設けてもよい。
またアンテナは、矩形状に配置せずとも、円状に配置してもよい。
次いで、アンテナの作製方法について説明する。
図7(A)に示すように、基板142上に所定な配置となるようにアンテナを形成する。アンテナ材料には、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、Au(金)、Cu(銅)、Pt(白金)等の導電材料を用いることができる。比較的抵抗の高いAlやAuを用いる場合、配線抵抗が懸念される。しかし、アンテナを厚くしたり、アンテナ形成面積が広い場合には、アンテナの幅を広くすることで配線抵抗を低減することができる。Cuのように拡散が懸念される導電材料は、アンテナの被形成面、又はCuの周囲を覆うように保護膜として機能する絶縁膜を形成するとよい。またアンテナは、スパッタリング法、液滴吐出法、印刷法、メッキ法、フォトリソグラフィー法及びメタルマスクを用いた蒸着法のいずれかにより形成することができる。特に、液滴吐出法、印刷法、又はメッキ法によりアンテナを形成する場合、導電膜をパターニングする必要がないため、作製工程数を低減することができる。本実施の形態では、ノズル151からAgを有する液滴を吐出する液滴吐出法によりアンテナを形成する。このとき、Agの密着性を高めるため、TiOx等を有する下地膜を形成してもよい。
液滴を吐出後、液滴中の溶媒を除去する必要があるとき、焼成したり、乾燥させるため加熱処理を施す。加熱処理は、上記実施の形態におけるゲート電極の作製方法を参照することができる。
更に好ましくは、図7(B)に示すように、加圧するとよい。その結果、アンテナを薄膜化することができ、加えてアンテナ表面の平坦性を高めることができる。加圧手段152に加えて、加熱手段を有してもよく、上記加熱処理を同時に行うことができる。
図7(C)に示すように、アンテナが形成された基板(以下、アンテナ基板と表記する)を完成することができる。また、アンテナを覆って保護膜として機能する絶縁膜を形成してもよい。
また図8(A)に示すように基板142に開口部154を形成し、開口部にアンテナを形成してもよい。図7(A)と同様に、ノズル151からAgを有する液滴を吐出する液滴吐出法によりアンテナを形成する。その他のアンテナ材料や作製手段は図7(A)の記載を参照することができる。
図8(B)に示すように、図7(B)と同様に、加圧手段152によりアンテナをプレスすると好ましい。加圧手段152に加えて、加熱手段を有してもよく、上記加熱処理を同時に行うことができる。
図8(C)に示すように、アンテナ基板を完成することができる。また、アンテナを覆って保護膜として機能する絶縁膜を形成してもよい。
図8において、開口部内にアンテナを形成することができるため、アンテナ基板の薄膜化を達成することができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、アンテナ基板に薄膜集積回路を実装する具体的な方法について説明する。
上記実施の形態に基づいて形成されたアンテナ基板上に、上記実施の形態に基づき形成された薄膜集積回路を実装する。図9に示すように、アンテナ121が形成された一組のアンテナ基板150を用意する。アンテナ基板間に、薄膜集積回路120を配置し、つまり、アンテナ基板は前記薄膜集積回路を介して対称に配置する。その後、それぞれの接続端子部118及び143が接続するように固定する。接続する手段にワイヤボンディング法を用いてもよい。そしてIDチップが完成する。
次に図9に記載の実装方法により、大型基板からIDチップを複数個作製する、いわゆる多面取りにについて説明する。
図14(A)に示すように、大型基板100に複数(例えば25個)の薄膜集積回路120を形成する。アンテナ基板150間に、大型基板100を配置し、各薄膜集積回路の接続端子部118と、各アンテナの接続端子部143とが接続するように固定する。
その後図14(B)に示すように、大型基板に複数のIDチップを形成し、スクライビイグまたはダイシング等で切り離し一つのIDチップ157が完成する。なおIDチップの切り離しには、レーザーを用いてもよい。特にIDチップを切断する場合、シリコンウェハ上に形成されたチップと比較し、切断時のダメージを受けにくいと思われる。そのため、IDチップの切断領域は、シリコンウェハ上に形成されたチップの切断領域より小さくすることが可能である。そのため、アンテナ形成領域を大きくすることができる。その後さらに、IDチップを封止膜として機能する絶縁膜で封止してもよい。
このように、大型基板から複数のIDチップを得ることで、IDチップのコストを削減することができる。チップのように単価が非常に低い集積回路は、コストの削減により非常に大きな利益を生むことができる。
図9と異なる方法により薄膜集積回路を実装する方法を図10に示す。
図10(A)に示すように、一組のアンテナが形成されたアンテナ基板150を用意する。アンテナ基板は、中心部から折り畳むことができる可撓性を有する基板、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、塩化ビニリデン、塩化ビニル樹脂、等の可撓性を有する基板を使用する。
その後図10(B)に示すように、薄膜集積回路120を間に挟むように、アンテナ基板を折り畳む。折り畳み安いように、アンテナ基板の折り目に切り込みや凹部を形成するとよい。その後、それぞれの接続端子部118及び143が接続するように固定する。接続する手段にワイヤボンディング法を用いてもよい。そしてIDチップが完成する。
一組のアンテナを設けることにより、一方のアンテナは電源発生回路用に使用し、他方のアンテナは変調回路用に使用することができる。その結果、各回路に対してアンテナを設定することができ、通信距離や感度を高めることができる。また一組のアンテナへ薄膜集積回路を接続するため、薄膜集積回路の両面(上面及び下面)にそれぞれ接続端子部118を形成する必要がある。
但し、各アンテナがショートしないように保護膜として機能する絶縁膜を設ける必要がある。また接続端子部間には導電性の樹脂を塗布し、それ以外の領域には絶縁性の樹脂を塗布してもよい。
または、アンテナ基板にコンタクトを開口し、アンテナの接続端子部をアンテナ基板の裏面(アンテナが設けられていない面)に形成することにより、各アンテナがショートしない構成とすることができる。
本実施の形態では、一組のアンテナ基板間に薄膜集積回路を実装する場合を説明したが、一つのアンテナ基板上に薄膜集積回路を実装してもよい。また薄膜集積回路上にアンテナを配置しない形態で説明したが、絶縁膜を介して薄膜回路上にアンテナを配置しても構わない。
図10に示す実装形態においても、大型基板から複数の薄膜集積回路を形成し、大型基板から複数のアンテナ基板を形成することにより、IDチップのコストを削減することができる。
次に図15を用いて、IDチップの、機能的な構成の一形態について説明する。
400はアンテナ、401は薄膜集積回路に相当する。アンテナ400は、アンテナコイル402と、アンテナコイル402内で形成される容量素子403とを有する。また薄膜集積回路401は、復調回路409、変調回路404、整流回路405、マイクロプロセッサ406、メモリ407、負荷をアンテナ400に与えるためのスイッチ408とを有している。なおメモリ407は1つに限定されず、複数であってもよい。
リーダライタから電波として送られてきた信号は、アンテナコイル402において電磁誘導により交流の電気信号に変換される。復調回路409では該交流の電気信号を復調し、後段のマイクロプロセッサ406に送信する。また整流回路405では、交流の電気信号を用いて電源電圧を生成し、後段のマイクロプロセッサ406に供給する。
マイクロプロセッサ406では、入力された信号に従って各種演算処理を行う。メモリ407にはマイクロプロセッサ406において用いられるプログラム、データなどが記憶されている他、演算処理時の作業エリアとしても用いることができる。そしてマイクロプロセッサ406から変調回路404に送られた信号は、交流の電気信号に変調される。スイッチ408は、変調回路404からの交流の電気信号に従って、アンテナコイル402に負荷を加えることができる。リーダライタは、アンテナコイル402に加えられた負荷を電波で受け取ることで、結果的にマイクロプロセッサ406からの信号を読み取ることができる。
なお、図15に示すIDチップは、本発明の一形態を示したのに過ぎず、本発明は上記構成に限定されない。信号の伝送方式は、図15に示したような電磁誘導方式に限定されず、電磁誘導方式、マイクロ波方式やその他の伝送方式を用いていてもよい。また例えばGPSなどの機能を有していてもよい。
(実施の形態6)
本実施の形態では、IDチップを搭載した商品について説明する。
アンテナ基板が、カード用のプリント基板である場合、IDチップが搭載されたカード(以下、IDカードと表記する)として使用することができる。図11(A)には、IDチップを搭載したIDカードの上面図を示す。IDカードには、カード周辺に設けられたアンテナ121と、アンテナに接続される薄膜集積回路120とが実装されている。
図11(B)には、図11(A)のA−A’における断面図を示す。薄膜集積回路と、アンテナとを同一層に設けてもよいが、本実施の形態では、アンテナ上に保護膜として絶縁膜160を形成し、絶縁膜上に薄膜集積回路を実装する。そのため、カード周辺に設けられたアンテナを薄膜集積回路に接続する場合、その他のアンテナとショートしないように、絶縁膜上にアンテナ(リード線と表記する)を形成し、リード線と薄膜集積回路とを接続することができる。そして、薄膜集積回路120と、アンテナ121とは、接続端子部を介して接続される。本実施の形態では、フェイスダウン状態で設けられた薄膜集積回路と、アンテナとを接続している。そのため、それぞれの各接続端子部は、接続用配線162を介して接続されている。または、各接続端子部間を導電性の樹脂を用いて接続してもよい。
その後、封止を行うためラミネート法又は印刷法により保護膜として機能するフィルム161を形成する。フィルムには、IDカードの図柄を印刷してもよい。
また図11(C)には、図11(B)と異なる方法によりアンテナと薄膜集積回路を接続する形態を示す。図11(C)に示す薄膜集積回路はフェイスアップ状態で設けられているため、ワイヤボンディング法によりワイヤ163を用いて接続する構成が特徴である。その他の構成は図11(B)と同様であるため、説明を省略する。
なお薄膜集積回路と、アンテナとは、上記実施の形態のように接続してもよい。
以上のようにして、IDカードを完成することができる。
またIDチップは、商品又は製品の管理手段として利用するタグ(以下、IDタグと表記する)として使用することができる。例えば、図12(A)に示すように、商品170にIDチップが搭載されたバーコード171を付し、IDタグとして使用する。
図12(B)には、図12(A)のB−B’における断面図を示す。商品170に、薄膜集積回路120を有するIDチップが、バーコード171と共に接着されている。
次いで、商品の瓶へラベルと共にIDチップを付する場合を示す。
図13(A)には、大型基板100から複数の薄膜集積回路120を形成する。その後、図13(B)に示すように、一つの薄膜集積回路120を切り離し、アンテナ121が形成されたラベル181へ実装する。このとき、薄膜集積回路の接続端子部と、アンテナの接続端子部143とが接続するように固定する。なお、ラベル上へアンテナを形成する方法は、上記実施の形態3に示したような剥離技術を用いればよい。具体的には、ガラス基板上に、被剥離層、及びアンテナを形成し、ラベルに転写した後にガラス基板を剥離する。本発明の剥離技術を用いると、ラベルのように耐熱性のない絶縁表面上へアンテナを転写することができる。また上記実施の形態3に基づき、アンテナが一体形成されたIDチップをラベルへ転写してもよい。なおアンテナの作製方法は、上記実施の形態4を参照すればよい。
図13(C)に示すように、曲面を有する瓶180の表面に、ラベル181と共に薄膜集積回路及びアンテナ、つまりIDチップが付されている。
このような商品は、ベルトコンベア183等に配置され、リーダ装置182の近傍を通過することで、情報を読み出すことができる。またリーダ装置に加えて、ライター装置を設けることにより、IDタグへ情報を入力したり、既存の情報を書き換えることができる。
さらにIDチップは、非接触で情報管理を行うことができるため、段ボール等に商品が梱包された状態で、リーダ装置、又はライター装置により情報管理することができる。このような非接触で通信を行うIDチップを無線チップと表記する。
このようにIDチップを搭載した商品の流通を自動化することにより、物流時の人件費を大幅に削減することができる。また人為的なミスを削減することもできる。
商品としては、飲食品、衣料品、書籍等がある。またレンタル商品にIDタグを付して、商品管理を簡便にすることができる。
また本発明のIDチップは、非常に薄いため、紙幣等の有価証券に搭載し、不正使用等を防止したり、管理を簡便にすることができる。有価証券にIDチップを搭載する場合、有価証券の内部に搭載し、改ざん等ができないようにするとよい。
以上のように商品に搭載又は付されたIDチップの情報は、生産又は製造に関する場所、者、日付等の基本事項から、アレルギー情報、主成分、宣伝等、多岐にわたる。また図12に示すように、バーコードと併用する場合、バーコードには書き換え不要な情報、例えば上記基本情報を入力し、IDチップには書き換え可能な情報を入力するとよい。
このような情報を読むためのリーダは、専用のリーダ装置以外に、携帯電子機器、例えば携帯電話機にリーダ機能を搭載すればよい。携帯電話機の場合、音声や画面への表示により、IDチップの情報を提供することができる。
その他のIDチップを搭載した商品としては、携帯電話機、時計、自転車等がある。例えば、携帯電話機のような携帯型電子機器にIDチップを搭載することにより、クレジットカードのような決算機能を有することができる。また時計のように消費者の年齢層が広く、容易に身につける商品では、迷子時等に位置を把握することができる。また、子供がIDチップ搭載の商品を携帯することにより、両親は子供の現在地を把握することができる。同様にペットの首輪等にIDチップを搭載することにより、ペットの現在地を把握することができる。また自転車のように、盗難が多い商品では、商品の現在地を把握することができ、盗難防止の効果を奏する。またこのようなIDチップ搭載の商品を紛失した場合、商品の現在地を把握することができる。