JP4665073B2 - ポリ乳酸廃棄物の再生方法 - Google Patents
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Description
こうして上記目的を達成するための第1の発明に係るポリ乳酸の再生方法は、光学純度が既知であるポリ乳酸を含む組成物を水分と共に反応温度が約110℃〜約300℃の高温下で、約5分間〜約96時間処理した後に、所定の光学純度を備えた乳酸を回収することを特徴とする。
「モノマー」とは、必ずしも全てのポリ乳酸が、完全にモノマーとなることを意味しているのではなく、適当な割合(例えば50%以上)で、当初のポリ乳酸がモノマーとなることを意味している。
「高温下」とは、ポリ乳酸を溶解、反応して乳酸を回収可能な温度を意味しており、具体的には約110℃〜約300℃、好ましくは約110℃〜約270℃、更に好ましくは約120℃〜約300℃、更に好ましくは約120℃〜約270℃、更に好ましくは約200℃〜約300℃、更に好ましくは約230℃〜約300℃、更に好ましくは約230℃〜約270℃である。具体的には、約120℃では約72時間程度、約140℃では約10時間程度、約200℃では約35分間程度、約230℃では約20分間程度、約250℃では約10分間程度、約300℃では約5分間程度である。
また、約110℃〜約270℃の温度では、乳酸の光学純度を減少させる速度が比較的遅い。特に、約240℃以下の温度では、適当な時間条件を選ぶことにより、光学純度に大きな影響を与えることなく、90%以上の回収率で乳酸を回収することができる。例えば、乳酸を230℃で約20分間反応させたときの光学純度の減少は、約5%程度である。このため、約240℃以下の温度では、得られる乳酸の光学純度を初期の条件から大きく変化させることなく得ることができる。また、約110℃〜約300℃の温度では、所定の時間だけ反応させることにより、所定の光学純度を示す乳酸を得ることができる。
また、本願発明を工業的に用いる場合には、水量をできるだけ少なくする方が、後処理及び環境的にも好ましいものとなる。このため、ポリ乳酸と水とを反応させる場合の水量としては、ポリ乳酸の1質量部に対して、約1質量部〜約100質量部、好ましくは約1質量部〜約80質量部、約1質量部〜約60質量部、更に好ましくは約1質量部〜約40質量部、更に好ましくは約1質量部〜約20質量部、更に好ましくは約1質量部〜約10質量部、更に好ましくは約1質量部〜約5質量部である。
そして、光学純度が高い場合(例えば、図中最上段の乳酸(100%)の場合)には、そのままポリ乳酸に再生することができる。一方、乳酸の光学純度が低い場合(例えば、図中二段目〜再下段の乳酸(90%〜0%)の場合)には、この乳酸に約90%以上の光学純度を備えた乳酸(例えば、バイオマスから製造されたもの)を混合することにより、所定の光学純度(例えば、90%)に調整し(混合工程)、ポリ乳酸として再生する。
原料となるポリ乳酸廃棄物を含む組成物(図中左端側。光学純度は、既知のものの組合せ(例えば、100%+80%、90%+70%)でも良く、或いは不明のものでも良い。)を水分と共に約110℃〜約300℃の高温下で、約5分間〜約96時間処理することにより、モノマー化して乳酸とする(モノマー化工程)。得られた乳酸の光学純度を測定し(測定工程)、更にこの乳酸を水分と共に高温処理する(反応温度が約180℃〜約300℃の高温下で約5分間〜約96時間処理する)ことで、所定の光学純度とする(純度調整工程)。この光学純度が、そのまま利用可能な場合(例えば、80%)には、その乳酸をそのままポリ乳酸に再生する。一方、得られた乳酸の光学純度が低い場合には、約90%以上の光学純度を備えた乳酸(例えば、バイオマスから製造されたもの)を混合し(混合工程)、所定の光学純度(例えば、90%)を備えた乳酸として調整した後に、ポリ乳酸に再生する。
また、第4の発明に係る光学純度調整法は、光学純度が既知の乳酸を水分と共に反応温度が約180℃〜約300℃の高温下で、約5分間〜約96時間処理することで所定の光学純度の乳酸とすることを特徴とする。
また、高温高圧水反応により、乳酸の光学純度を調整するには、温度条件としては、約180℃〜約300℃が好ましい。具体的には、光学純度が約90%〜約50%の乳酸を得るためには、180℃では約72時間以上、約190℃では約55時間以上、約200℃では約31時間〜約107時間、約210℃では約10時間〜約53時間、約220℃では約9時間〜約33時間、約230℃では約30分間〜約140分間、約240℃では約15分間〜約70分間、約250℃では約10分間〜約50分間、約260℃では約10分間〜約30分間、約270℃では約3分間〜約20分間、約280℃では約2分間〜約10分間、約300℃では約1分間〜約3分間の時間の処理を行えばよい。
また、本発明に係るポリ乳酸の再生装置の例として図13及び図14の通りとなる。
図13は、バッチ式のポリ乳酸の再生装置20を示す。再生装置20には、ポリ乳酸組成物と水とを反応させる反応槽21と、内部温度を上昇させる熱処理装置22が設けられている。熱処理装置22としては、例えば高温物質(例えば水蒸気など)を挿通可能なパイプを反応槽内部の混合物と接触させる装置、反応槽21の内部に高温物質(例えば水蒸気など)を吹き込む装置などを用いることができる。反応槽21には、内容物を撹拌可能な撹拌機23が設けられている。また、反応槽21には、内部から留出するガス及び/または溶液を冷却する冷却器24が連結されている。冷却器24には、凝縮液を再度反応槽21に戻す復帰路25と、排出用のベント路26が設けられている。また、反応槽21には、反応処理後の溶液を貯めておくホールドタンク27が連結されている。なお、ホールドタンク27に貯留された溶液は、精製系28に送液される。
再生装置20の操作方法を説明すると次のようである。まず、反応槽21に未反応のポリ乳酸等を含む工程内の循環液17、又はポリ乳酸組成物16、未反応のポリ乳酸等を含む工程内の循環液17及び水よりなる群から少なくとも2種を含む成分を投入し、投入後に熱処理装置22による加熱処理を行う。すると、組成物16と水(及び循環液)17の混合物が昇温及び昇圧され乳酸へと分解される。反応終了後は、減圧及び降温され反応槽21から反応液がホールドタンク27に抜き出され、精製系28へ送られる。工程内の循環液17とは、モノマー化工程の反応槽の残渣、精製系の残渣等から成る。
図14は、連続式のポリ乳酸の再生装置30を示す。再生装置30には、ポリ乳酸組成物と水とを反応させる反応槽31と、この反応槽31の内部温度を上昇させる熱処理装置32が設けられている。反応槽31には、内容物を撹拌可能な撹拌機33と、加熱器43により加熱された水を供給可能な水供給路44が設けられている。また、反応槽31には、ポリ乳酸組成物16と、水及び必要に応じて未反応のポリ乳酸等を含む工程内の循環液17とを前処理する溶融槽34がパイプ35を介して連結されている。溶融槽34には、内容物を撹拌する撹拌機36と、内容物を加温する熱処理装置37とが設けられている。また、反応槽31には、反応処理後の溶液を貯めると共にベントガスの処理等を行うフラッシュタンク38が連結されている。フラッシュタンク38には、冷却器39が連結されている。冷却器39には、凝縮液を再度フラッシュタンク38に戻す復帰路40と、排出用のベント路41が設けられている。なお、フラッシュタンク38に貯留された溶液は、精製系42に送液される。
再生装置30の操作方法を説明すると次のようである。まず、溶融槽34にポリ乳酸組成物16及び必要に応じて未反応のポリ乳酸等を含む工程内の循環液17を投入しておき、熱処理装置37で加熱しつつ、撹拌機36による撹拌処理を行うことにより、投入された混合物を溶融液状態にする。次いで、該溶融液を連続的に溶融槽34から反応槽31へ移送しつつ、新たに加熱された水を水供給路44を通して連続的に反応槽31へ供給する。反応槽31は熱処理装置32の稼働によって、高温及び高圧状態に保持され、投入されたポリ乳酸が乳酸へと分解される。反応終了後反応液は減圧及び降温するため、連続的に反応槽31からフラッシュタンク38へ反応液が抜き出され、大気圧下まで減圧される。この時、水及び乳酸等の一部が気化され、その気化熱の分、反応液の内温が降下される。
また、本発明に係る乳酸の光学純度調整装置は、光学純度が既知の乳酸を内部に含んだ状態で約180℃〜約300℃の高温とする高温処理機を設けたことを特徴とする。この光学純度調整装置は、(1)乳酸と液体状態の水とを混合した状態で0.1メガパスカルよりも大きい圧力とすることが可能な連続式のものであるか、(2)乳酸と液体状態の水とを混合した状態で0.1メガパスカルよりも大きい圧力とすることが可能なバッチ式のものとすることができる。また、光学純度調整装置には、乳酸と水とを含んだ状態で撹拌する撹拌機を設けることが好ましい。
まず、処理装置の構成及び測定パラメータについて説明する。
1.回分式処理装置
図3には、実施例に使用したポリ乳酸または乳酸(以下、「ポリ乳酸等」という)の処理装置1(以下には、単に「処理装置1」と記載する)を示した。この処理装置1には、温度制御可能な溶融塩槽2(例えば、耐圧硝子株式会社製、TSC−B600型を用いることができる。)と、その溶融塩槽2の内部に浸漬される耐熱・耐圧な密閉型の処理容器3(例えば、ステンレス製(SUS316)バッチ式反応管(外径12.7mm、肉厚1.24mm、内径10.2mm、長さ10cm、内容積8.2mL)を用いることができる。)と、圧力センサ4とが設けられている。
処理容器3を密閉した後、予め設定温度に加熱しておいた溶融塩槽2に処理容器3を投入し、この時点を0分として、高温処理を開始する。
図4には、流通管型の連続式処理装置の概要を示した。流通管型反応装置には、溶液を供給する2台のHPLCポンプ7(日本分光、PU−1580)と、流路内の物質を加熱し、高温高圧水反応を開始させる溶融塩恒温槽8(耐圧硝子工業、TSC−B006型)と、流路内の物質を冷却し反応を停止させる冷却器11(ADVANTEC、LC−101)と、流路内の圧力を制御する圧力調整弁12(日本分光、880−81)が設けられている。流路には、予熱管9、反応管10、冷却管(11の内部に収容されている)がある。予熱管9には、内径0.5mmの1/16inSUS316管を20m、反応管10には、内径0.5mmの1/16inSUS316製反応管を40m、冷却管には、内径4.8mmの1/8inSUS316管を1.5m使用している。
この装置での反応時間は、恒温槽内の流量により調整する。そのときの反応式は次式で計算することが出来る。
<実験方法>
1.ポリ乳酸のモノマー化に関する試験
(1)まず、120℃、0.20MPa、または140℃、0.36MPaの各条件において、最大で120時間の処理を行い、ポリ乳酸から乳酸を回収したときの回収率の評価を行った。
(2)次に、200℃〜300℃の所定の温度において、約1分間〜約180分間の所定の処理時間でポリ乳酸から乳酸を回収したときの回収率の評価を行った。
いずれの試験においても、処理容器3の内部に、0.24gの試料(ポリ乳酸)と4.8gの精製水とを投入し、試料:精製水の質量比を1:20として実施した。
ポリ乳酸として、L型がほぼ100%、分子量約3x105、Mw/Mn=1.5であるラクティTM5000(株式会社島津製作所製)を用いた。また、L−乳酸として光学純度98%のもの(ナカライテスク株式会社製)を使用した。光学純度76%の乳酸は、上記L−乳酸(光学純度98%)と、D−乳酸(光学純度90%、ナカライテスク株式会社製)とを混合して調整したものを用いた。
また、精製水には、超純水(MILLI−Q Labo、MILLOPORE社製)を用いた。
500mLの容器にあらかじめ試料をイオン交換水で希釈し、脱気したものと、予熱管において予熱するためのイオン交換水を脱気したものを用意し、ポンプ7にセットした。試料の濃度は、試料と予熱されたイオン交換水を1:2で混合させるため、目的の3倍の濃度に希釈した。ポンプ7における試料のライン、イオン交換水のラインの両方をヘリウム15によって置換した。ポンプ7によりイオン交換水を予熱管9により温め、T字管で試料と混合することにより反応管10で反応を開始させた。また、反応後の試料は、冷却器11により急冷させることにより反応を停止させた。試料は圧量調整弁12より回収した。
回収された乳酸の光学活性について、液体クロマトグラフ[日本分光(株),分離カラム:(株)住化分析センター,SUMICHIRAL OA−5000]によって分析を行った。カラム温度を30℃に設定し、移動相には0.1mmol/L硫酸銅水溶液を1mL/minの流速で流した。標準物質として、L−乳酸[ナカライテスク(株),純度98%]、D−乳酸[ナカライテスク(株),純度90%]を用いた。
1.ポリ乳酸からの乳酸の回収
(1)図5及び図6には、120℃、0.20MPa、または140℃、0.36MPaの条件において、反応時間と乳酸回収率との関係を評価したグラフを示した。
120℃では、反応開始から約5時間後から乳酸の回収率が増加し、約72時間後(約3日後)には、ほぼ100%の回収率となった。また、約120時間後(約5日後)まで試験を続行したところ、乳酸の回収率はほぼ100%のままであり、ほとんど影響を与えないことが分かった。
140℃では、反応開始から約3時間後から乳酸の回収率が増加し、約10時間後には、ほぼ100%の回収率となった。また、約24時間後まで試験を続行したところ、乳酸の回収率はほぼ100%のままであり、ほとんど影響を与えないことが分かった。
(2)反応温度200℃〜300℃において、ポリ乳酸から乳酸を回収したときの乳酸の回収率を90%とする場合に必要な反応時間と、得られたL−乳酸の光学純度を図7に示した。この試験において、試料として用いたポリ乳酸の融点は176℃である。図より、反応温度の上昇に伴い、L−乳酸を回収するために必要な時間が短縮することが分かった。しかし、反応温度の上昇に伴って回収される乳酸の光学純度が低下することが明らかとなった。特に、温度が270℃を越えると、L−乳酸の収率が急激に低下した。以上のことから、200℃〜270℃(特に、200℃〜230℃)では、ポリ乳酸の原料であるモノマーとしての乳酸の光学純度を大きく変えることなく高い収率で回収できることが分かった。また、270℃〜300℃では、短い反応時間でL−乳酸を回収できるものの、モノマーの光学純度が減少することが分かった。
次に、反応温度が230℃、240℃、250℃、270℃、280℃、及び300℃のときに、反応時間が乳酸の光学純度に与える影響を確認した。図8には、各反応温度のときの乳酸の光学純度の経時的変化を示した。230℃では、30分間の反応時間を経過しても約90%の光学純度を維持していた。反応温度の上昇に伴って、乳酸の光学純度の低下が速くなる傾向を示した。250℃、30分間の条件では、約75%の光学純度を維持していたが、270℃、30分間の条件では、約20%程度の光学純度に低下した。また、300℃の温度では、約10分間後に光学純度は0%となった。
図の結果に基づいて、光学純度100%の乳酸の光学純度を任意の割合で低下させるために必要な反応温度と反応時間とを算出した。算出結果を表1に示した。
次に、反応温度が120℃、140℃、150℃、160℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃及び230℃のときに、反応時間が乳酸の光学純度に与える影響を確認した。図10には、各反応温度のときの乳酸の光学純度の経時的変化を示した。120℃〜160℃では、4日間(72時間)の反応時間を経過しても元の乳酸の光学純度には影響が認められなかった。180℃では、4日間(72時間)の反応時間で約10%、6日間(120時間)の反応時間で約20%の光学純度の低下が認められた。反応温度を190℃〜230℃に上昇させると、乳酸の光学純度の低下が速くなる傾向を示した。
図の結果に基づいて、光学純度100%の乳酸の光学純度を任意の割合で低下させるために必要な反応温度と反応時間とを算出した。算出結果を表2に示した。
3.初期の光学純度を変化させたときの反応時間と光学純度の変化との関係
次に、L−乳酸(光学純度98%)と、DL−乳酸(光学純度76%)とを用いて、270℃の温度で反応させたときの光学純度の時間的な変化を確認した。図11には、光学純度98%のL−乳酸を出発物質としたときの反応時間による光学純度の変化(■)と、光学純度76%の乳酸を出発物質としたときの反応時間による光学純度の変化(□)とを示した。
また、図12には、光学純度76%の乳酸が、光学純度100%であると仮定したときの経時変化を示した。この図より、光学純度76%の乳酸の方が、光学純度の低下が速いことが分かった。
ポリ乳酸は、加圧されたバッチ式反応工程において、120℃〜300℃の反応温度で所定の時間だけ処理することにより、乳酸を回収できることがわかった。反応温度が120℃〜270℃の場合には、約10分間〜約72時間の反応時間で、回収率90%という高率で、元の光学純度を損なうことなくモノマーを回収できる。
本実施形態によれば、ポリ乳酸に高温高圧水処理をすることにより、乳酸を高率で回収することができる。このとき、所定の温度及び時間を選択することにより、乳酸の光学純度に影響を与えることなく、モノマー化することができる。
次に、得られた乳酸の光学純度を測定し、所定の値よりも低い場合には、光学純度が高い(例えば、約90%以上)乳酸を混合することで、所定の光学純度(例えば、70%、80%、または90%など)を備えた乳酸を得ることができる。このように一定の光学純度を備えた乳酸をポリ乳酸にすることで、一定の性質を備えたポリ乳酸を再生することができる。
Claims (1)
- 少なくとも、(1)ポリ乳酸を含む組成物をポリ乳酸1質量部に対して1〜40質量部の水分と共に反応温度が110℃〜230℃の高温下で5分間〜96時間処理してモノマー化するモノマー化工程、(2)モノマー化工程で得られた乳酸の光学純度を測定する測定工程、及び(3)光学純度を測定した乳酸を水分と共に反応温度が180℃〜300℃の高温下で5分間〜96時間処理することで所定の光学純度とする純度調整工程を備え、(4)乳酸の光学純度が所定の値よりも低い場合には、光学純度が90%以上の乳酸を混合して光学純度が70%以上100%未満の乳酸を調整する混合工程を経て、ポリ乳酸を再生することを特徴とするポリ乳酸の再生方法。
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