JP4664167B2 - 生分解性の制御された生分解性樹脂フィラメント及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、生分解性の制御された生分解性樹脂フィラメント、特にポリグリコール酸系樹脂フィラメント及びその製造方法に関し、詳しくは、生分解性と物理的な性質のバランス及び生分解速度が制御され、適度に生分解し消失して環境汚染や自然破壊をなさず、引張強度と結節強度が高く適度な伸度を有して、特に魚類捕獲用の水産資材として好適に使用される、ポリグリコール酸系樹脂フィラメント及びその特有の製造方法に係わるものである。
生分解性合成樹脂材料は、高機能性樹脂資材のひとつとして古くから知られ、医療分野においては以前から、手術用縫合糸や人口皮膚などの材料として汎用され、その技術改良や利用態様の多様化などが常になされ続けられている。
生分解とは、樹脂材料の生体内分解や自然界における分解を総称しており、自然界においては加水分解や微生物による分解などの作用により分解し、生物に無害のモノマーになって、微生物による消費などにより消滅するが、生分解性樹脂材料も、澱粉系などの天然樹脂をはじめ、ポリビニルアルコール樹脂やポリグリコール酸樹脂及びポリ乳酸樹脂或いはポリカプロラクトンなどの生分解性ポリエステル樹脂さらにはポリエチレンカーボネートその他など多種に亘っている。
その応用分野も非常に拡大されており、徐々に消失する性質を利用した徐放性肥料容器や、自然に分解する性質を利用して、使用後に山野や田畑或いは市街に放置や投棄されても環境汚染や自然破壊をしないために、ロープやセメント化粧枠などの土木用資材(特許文献1を参照)及び育苗ネットや温室フィルムなどの農業用資材(特許文献2を参照)、さらには最近では、磁気カード類や包装材料などの日用雑貨或いはマーカーなどのゴルフ場用部材などに至るまでに活用されている。
また、最近では重大な環境汚染のひとつとして、釣り人や漁労者による海岸や海洋或いは河川や湖沼などへの、使用後の釣糸(テグス)や廃棄魚網などの大量の放置や投棄に起因する自然界の汚染、特に、海岸に投棄され或いは海洋に漂流する釣糸や魚網などが、それらが透明で見え難いこともあって、鳥類や海洋生物などに絡み付いて、損傷や殺傷をする事例の増加が社会的に問題視されており、さらには、釣糸や魚網などが、海中のダイバーに絡まって怪我をさせたり、船舶のスクリュウに巻き付いて船舶の運航を妨害したり、海底に沈積して海藻や魚類の繁殖に支障をきたすような問題まで派生している。
そこで、このような使用後の釣糸や廃棄魚網などが自然界にいつまでも残存することを無くして環境の汚染問題を抑止し、また自然界の生物を保護するためにも、最近では、水産用資材の分野においても使用後に経時と共に自然に分解して消失する、生分解性樹脂材料の利用が注目され必用視され始められて、その活用のために技術開発が行われている。
しかし、釣糸などの従来の水産用資材においては、引張強度や破断伸びなどの物理的性質(物性)が強く重視されて、以前においてはもっぱら、ポリアミド樹脂が使用されていた。そしてポリアミド樹脂では、水中でのそのような強度は低下し、沈水性(水中での沈降性)も低く、経時により黄色化するので、水中での透明性や沈降性なども重要視して、ポリアミド樹脂に代わり、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂やポリエステル樹脂或いはポリフッ化ビニリデン樹脂などが多用されるようになり、特にポリエステル樹脂或いはポリフッ化ビニリデン樹脂などが重用されてきたのであって、これらに代わって生分解性樹脂を使用するとしても、適度の生分解性と適当な紡糸性及び従来の釣糸の優れた各種の性能を共に備えるのは一般的に非常に困難である。
それでも、生分解性樹脂材料を水産用資材に利用する試みは、最近までに多数提示され、その改良は最近では、樹脂材料の開発や改質及び繊維の被覆や断面構造或いはフィラメントの取扱い性や特殊性能など多岐に亘っている。
代表的な開示例を俯瞰すると、生分解性の樹脂素材を釣糸に利用するために、ポリグリコール酸又はそれと他の分解性高分子との混合物をその構成素材とし、さらに固有粘度や切断強度をも特定した分解性釣糸、及び溶融紡糸後に特定の熱延伸と弛緩熱処理を行う分解性釣糸の製造法(特許文献3を参照)、使用時に十分な引張強度を保持し、水中に放棄された後には加水分解して次第に強度を低下せしめるために、ポリマー分子構造中に、少なくともグリコール酸単位及び/又は乳酸単位を持つ繰り返し構造単位を有する加水分解性ポリエステルの繊維、又は該加水分解性ポリエステル繊維と非加水分解性繊維の撚り及び/又は編組みよりなり、かつ、それらの繊維の表面が該加水分解性ポリエステルより加水分解性が低い分解性重合体でコーティングされている釣り糸(特許文献4を参照)、強度と伸度のバランスが良く釣り操作が行い易い生分解性釣糸であって、釣り糸本体が、引張力2.0g/d未満における初期伸び率が10%以上である第1の領域と、引張力2.0〜4.5g/dの範囲における伸び率が前記初期伸び率よりも小さく、破断時の伸び率が40%以下であり、破断強度が4.5g/d以上である第2の領域とを有する生分解性釣り糸(特許文献5を参照)、実用上十分な初期強度を有し、生分解速度をコントロールすることが可能な生分解性繊維であって、脂肪族ポリエステル樹脂にアルカリ性無機化合物を0.5〜10重量%含有させた組成物で構成されており、引張強度が3g/d以上である生分解性ポリエステル繊維(特許文献6を参照)などが開示されている。
しかし、これらの開示技術においては、特許文献3では、単に生分解性のポリグリコール酸樹脂を釣糸に使用しただけで特別の工夫及び特定の製法はなされていず、素材が硬くて脆く結節強度も低く釣糸としての性能を満たしているとはいえず、特許文献4でも、素材が硬くて脆く強度と生分解速度のバランスが取れているとはいい難く、特許文献5では生分解性に特別の工夫は何らなされていず、特許文献6においても、実用上十分な強度を有しているとも、生分解速度の自在な制御或いは強度などの物性と生分解性における良好なバランスが実現されているとも、いい難い。
さらに、強度などの物性と生分解性における良好なバランスを実現するための取り組みとして、釣糸としての基本的な性能と適度な生分解速度を兼ね備えるために、メルトインデックスと融点が特定された脂肪族ポリエステルを主成分とし、引張強度を5.0g/d以上、結節強度を4.0g/d以上とし、且つ表層の配向度と全体の配向度を特定化した生分解性釣糸であり、溶融紡糸後に、60℃以下の不活性液体中で冷却固化した後、引き続いて2.5〜5.0倍の倍率で1段目延伸を行い、次いで全延伸倍率が6.0倍以上となる延伸倍率で多段延伸することによる生分解性釣糸を製造する方法(特許文献7を参照)、水産資材或いは各種産業資材用途に使用する繊維としての生分解性と力学的性質が均衡して優れたモノフィラメント、特に釣糸を提供するために、融点が70℃以上であるポリアルキレンジカルボキシレート類の少なくとも一種を芯成分とし、ポリ乳酸系樹脂などを鞘成分とし、前記芯成分/鞘成分の重量比が、95/5〜40/60の範囲にあって、引張強度4.0g/d以上で結節強度3.0g/d以上という力学的性質を発揮する生分解性モノフィラメント(特許文献8を参照)、生分解性と力学特性が均衡して優れ、芯鞘又は海島界面の接着性が改善された生分解性複合モノフィラメント、特に釣糸を提供するための、芯鞘型又は海島型の生分解性複合モノフィラメントであって、一方の成分に融点が70℃以上のポリアルキレンジカルボキシレート類を、他方の成分に芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとからなる融点が190℃以上の共重合ポリエステルを使用する生分解性複合モノフィラメント(特許文献9を参照)、なども多々開示されそれぞれにおいて各種の工夫がなされているが、いずれも特殊な材料と煩雑な加工処理を必要としており、また、生分解性と各種の物性のバランスが十分に良好であるとは未だ必ずしもいえない。
特開2002−21324号公報(要約) 特開2000−238194号公報(要約) 特開平3−259029号公報(特許請求の範囲1,2及び第2頁左上欄) 特開平4−108331号公報(特許請求の範囲1及び第2頁右上欄) 特開平8−196175号公報(要約) 特開平9−41220号公報(要約及び特許請求の範囲の請求項1) 特開平9−74961号公報(要約) 特開平10−102323号公報(要約) 特開2005−187968号公報(要約)
本発明の背景技術として段落0002〜0006において概述した、生分解性樹脂資材における種々の産業分野における利用状況、及び、環境汚染抑制や自然保護の必要性からかかる資材の活用の重要性を鑑みて、さらには、特にこのような観点からして生分解性樹脂資材の応用が社会的に強く要請されている水産用資材においては、その応用開発が未だ十分ではなく、特に生分解速度の自在な制御或いは生分解性機能と水産用資材としての各種物性とをバランスよく制御して備えることが実現されていないことをも踏まえて、本発明は、土木用や農業用などの各技術分野における生分解性資材として有用であり、生分解性機能と各種物性に優れ、生分解性機能と各種物性とのバランス及び生分解速度を制御でき、特に水産用資材として有用である、生分解性樹脂資材を開発することを、発明が解決すべき課題とするものである。
ところで、本発明の発明者らは、生分解性機能と各種物性とをバランスよく制御して備える、生分解性樹脂資材を開発する研究を以前から行っており、生分解性樹脂材料としてのポリグリコール酸系樹脂においては、ポリマーに対するその残留モノマー量が生分解性機能と各種物性とのバランスに深く関わり、残留モノマー量を特別に規定すれば、引張強度や結節強度などの実用的な物性に優れ適度な生分解性を備えるポリグリコール酸系樹脂が得られることを見い出して、先の発明として出願している(特願2004−78854)。
この先願発明は、(i)残留モノマー量が0.5重量%未満のポリグリコール酸系樹脂からなり、引張強度が750MPa以上、且つ結節強度が600MPa以上であることを特徴とする、ポリグリコール酸系樹脂フィラメント、及び、(ii)残留モノマー量が0.5重量%未満のポリグリコール酸系樹脂を溶融紡出後、10℃以下の液浴中で急冷した後、次いで60〜83℃の液浴中で非晶延伸することからなる、ポリグリコール酸系樹脂フィラメントの製造方法である。
一般に残留モノマー量は少ない程、ポリマーの純度が高くなってその物性も高くなり、ポリグリコール酸系樹脂においても残留モノマー量が少ない程、その物性も高く、加水分解機能も低下して生分解性を適度に抑制できるものであると考えられていたが、本発明の発明者らは、この先願発明の応用や改良についての研究を継続していたところ、残留モノマー量が0.5重量%以上の生分解性樹脂、特にポリグリコール酸系樹脂においても、先願発明における溶融紡糸後の特別の延伸処理と熱処理などを採用すれば、残留モノマー量が0.5重量%未満の場合と同等の引張強度や結節強度などの優れた物性を備えることができ、生分解性については、それに強く影響する加水分解機能が、残留モノマー量が0.5重量%以上のポリグリコール酸系樹脂では0.5重量%未満の場合に比べて増大して、その速度がより速くなるが、むしろ自然界に放置や投棄された場合に、より適度な分解消失速度となることを認識することができた。
先願発明における、ポリグリコール酸系樹脂においての残留モノマー量の規定条件を0.5重量%未満から、0.5重量%以上に変更しても、残留モノマー量が0.5重量%未満の場合と同等の引張強度や結節強度などの優れた物性を備えることができ、生分解性のについては、0.5重量%未満の場合に比べて、残留モノマー量が0.5重量%以上では、その速度がより速くなるが、むしろ資材の使用後に自然界に放置や投棄された場合に、より適度な分解消失速度となるという、新しい認識は、生分解性樹脂、特にポリグリコール酸系樹脂においての残留モノマー量の規定条件によって、生分解性と物理的強度とのバランスを制御でき(また、生分解速度をより適度に制御でき)、且つ生分解性機能と各種物性とをバランスよく備えることを可能とするものであって、かかる観点からして注目されるべき事実認知である。
そして、先願発明における応用や改良のための継続研究の結果としての上記の新しい認識が、本願における新しい本発明を形成することとなり、段落0008に記載したところの、「土木用や農業用などの各技術分野における生分解性資材として有用であり、特に水産用資材として生分解性機能と各種物性とをバランスよく制御して備える、生分解性樹脂資材を開発する」という、本願の発明が解決すべき課題を解決することに至らしめた。
以上の段落0010〜0012からして、本発明においては、先願発明と同等の引張強度や結節強度などの優れた物性を備えることができるので、本発明は基本的に、「残留モノマー量が0.5重量%以上の生分解性樹脂からなり、引張強度が750MPa以上、且つ結節強度が600MPa以上であることを特徴とする、生分解性樹脂フィラメント。」の構成とされる。
そして、土木用や農業用などの各技術分野における生分解性資材として有用であり、特に水産用資材として生分解性機能と各種物性とをバランスよく備えて、さらに、生分解性と物理的強度とのバランス及び生分解速度を残留モノマー量により制御でき、自然界の空気中又は水中の使用形態に応じて、必要で適度な生分解速度に制御し設定できるという、特徴を有するものである。
また、本発明はより具体的にその機能や用途なども特定して、残留モノマー量が0.5重量%以上、より好ましくは残留モノマー量が0.8重量%以上のポリグリコール酸系樹脂からなり、引張強度が750MPa以上、且つ結節強度が700MPa以上であり、残留モノマー量により生分解性と物理的強度のバランス及び生分解速度が制御されたことを特徴とする、土木資材又は農業資材或いは水産資材として使用される生分解性ポリグリコール酸系樹脂フィラメントでもある。
さらに本発明においては付加的に、ポリグリコール酸系樹脂における樹脂材料の種類や残留量が規定されるモノマーの種類における規定、及びフィラメントの形態や釣糸としてのその用途、また、残留モノマー量の調整法とそれによる生分解性と物理的強度とのバランス及び生分解速度の制御方法、或いは先願発明におけるポリグリコール酸系樹脂フィラメントの製造方法に準拠して、溶融押出後の急冷や非晶延伸などの特徴を有する、本発明のポリグリコール酸系樹脂フィラメントの製造方法をも発明単位とする。
なお、本発明の背景技術として記述した段落0002〜0007における、従来技術としての各特許文献及びその他の特許文献を精査すると、主なものとして、生分解性ポリグリコール酸系樹脂を単に使用するだけの分解性釣糸(特許文献3における、特許請求の範囲及び第2頁左上欄〜右上欄を参照)、引張力や破断強度をg/d単位で規定し伸び率を%単位で規定し、生分解性樹脂材料には特定化のない釣り糸(特許文献5における、特許請求の範囲及び段落0010〜0012を参照)、釣糸としての基本的な性能と適度な生分解速度を兼ね備えるために、引張強度や結節強度をg/d単位で規定し特異な配向度の数値規定をも要件とする、生分解性釣糸(特許文献7における、要約を参照)などが認められる。
一方、本発明は段落0013に要約した、残留モノマー量や各種の物性などの新規で特有の構成要件と生分解速度の制御などの特徴的な作用を有するものであるからして、上記に代表される従来の文献の記載が本発明を示唆したり窺わせるものではないことは明白である。
以上においては、本発明の創作される経緯とその構成や作用の特徴などについて概述したので、ここで本発明についてその全体を俯瞰して、その構成全体を明確に記載すると、本発明は、次の発明単位群から構成されるものであって、[1]及び[2]さらに[8]の発明を基本的発明として、それ以外の発明は、基本的発明を具体化ないしは実施態様化するものである。(なお、発明群全体をまとめて「本発明」という。)
[1]残留モノマー量が0.5重量%以上の生分解性樹脂からなり、引張強度が750MPa以上、且つ結節強度が600MPa以上であることを特徴とする、生分解性樹脂フィラメント。
[2]残留モノマー量が0.8重量%以上のポリグリコール酸系樹脂からなり、引張強度が750MPa以上、且つ結節強度が700MPa以上であり、残留モノマー量により生分解性と物理的強度のバランス及び生分解速度が制御されたことを特徴とする、土木資材又は農業資材或いは水産資材として使用される生分解性ポリグリコール酸系樹脂フィラメント。
[3]ポリグリコール酸系樹脂が、グリコール酸又はグリコリドを重合した樹脂であり、残留モノマーがグリコール酸又はグリコリドであることを特徴とする、[1]又は[2]におけるポリグリコール酸系樹脂フィラメント。
[4]ポリグリコール酸系樹脂が、グリコール酸又はグリコリドと他の重合性モノマーを共重合した樹脂或いはポリグリコール酸系樹脂と他のポリエステル系樹脂との混合物であることを特徴とする、[3]におけるポリグリコール酸系樹脂フィラメント。
[5]フィラメントがモノフィラメントであり、生分解性水産資材用であることを特徴とする、[1]又は[2]におけるポリグリコール酸系樹脂フィラメント。
[6][1]〜[5]のいずれかにおけるポリグリコール酸系樹脂フィラメントから形成される釣糸。
[7]生分解性と物理的強度とのバランス及び生分解速度の制御を残留モノマー量の調整で行い、残留モノマー量の調整はポリグリコール酸系樹脂の重合条件或いは重合後のポリマーの加熱乾燥及び/又は真空乾燥により行うことを特徴とする、[1]〜[6]のいずれかにおけるポリグリコール酸系樹脂フィラメントにおける、生分解性と物理的強度とのバランス及び生分解速度の制御方法。
[8]残留モノマー量が0.5重量%以上に調整されたポリグリコール酸系樹脂に必要により他の成分を添加し230℃以上の温度で溶融押出しして紡糸し、10℃以下の温度の冷媒中で急冷し、次いで60〜83℃の媒体中で3倍以上に非晶延伸し、必要により二段延伸と熱緩和をなすことから構成される、[1]〜[6]のいずれかにおける、ポリグリコール酸系樹脂フィラメントを製造する方法。
本発明の生分解性のポリグリコール酸系樹脂フィラメントは、環境汚染の抑制や自然保護のための、土木用や農業用などの各技術分野における生分解性資材として有用であり、特に水産用資材として適度な生分解性機能と優れた各種物性とをバランスよく備えており非常に有用である。また、残留モノマー量の調整により生分解性と物理的強度とのバランスを制御及び生分解速度を制御することもできる。
本発明については、発明の課題を解決するための手段として、本発明の基本的な構成に沿って前述したが、以下においては、前述した本発明群の発明の実施の形態を、主として、残留モノマー量と各種の物性が特定されたポリグリコール酸系樹脂、及び、残留モノマー量の調整により生分解性と物理的強度とのバランスなどを制御する方法、さらに、溶融押出後の急冷や非晶延伸などの特徴を有する、本発明のポリグリコール酸系樹脂フィラメントの製造方法について、具体的に詳しく説明する。
1.生分解性樹脂フィラメント
(1)基本的な構成
本発明の生分解性樹脂、特にポリグリコール酸系樹脂フィラメントは、残留モノマー量が0.5重量%以上のポリグリコール酸系樹脂などからなり、引張強度が750MPa以上、且つ結節強度が600MPa以上であることを特徴とする、生分解性樹脂フィラメントである。
(2)生分解性樹脂
一般に、生分解性樹脂は、i)化学合成系、ii)微生物産生系、及びiii)天然物系の樹脂に分類される。
化学合成系の例としては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、セルロースアセテート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンカーボネート、ポリエチレンサクシネート、及び上記の各ポリマーにおけるモノマーを組み合わせて得られる共重合体、さらには、ポリエチレンサクシネート・テレフタレート共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
微生物産生系の例としては、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、ポリ−3−ヒドロキシバリレート、及びこれらのポリマーにおけるモノマーによる共重合体などが挙げられる。
天然物系の例としては、澱粉、絹、キチン、キトサンなどが挙げられるが、残留モノマーが生成しないため、本発明では生分解性樹脂の単独としては対象とならない。
本発明の生分解性樹脂としては、上記の化学合成系又は微生物産生系の樹脂が使用され、これらの樹脂を組み合わせてもよく、また、化学合成系及び微生物産生系の樹脂を組み合わせてもよいし、これらの樹脂と天然物系の物を組み合わせて使用してもよい。
それらの中でもポリグリコール酸系樹脂は、特に生分解性に優れた樹脂として知られているものである。
本発明で専ら使用するポリグリコール酸系樹脂は基本的には、ポリグリコール酸樹脂であって、グリコール酸の縮合重合により製造されるが、重合の容易性から通常はグリコール酸の二分子縮合物であるグリコリドの開環重合により製造され、重合体の単位は、−(OCHCO)−で表される。
ポリグリコール酸系樹脂は、グリコール酸又はグリコリドと他の重合性モノマーを共重合した樹脂或いはポリグリコール酸系樹脂と他のポリエステル系樹脂との混合物であってもよい。
共重合する他の重合性モノマーは、任意のモノマーが使用されるが、生分解性を有するポリマーを生成するモノマーが好ましく、乳酸やラクトン類或いはトリメチレンカーボネートのようなカーボネート類、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸及びこれらの酸類のエステル、修酸エチレンなどが代表的に例示される。これらのモノマーを併用することもできる。
ポリグリコール酸系樹脂中におけるグリコール酸の繰り返し単位は55重量%以上であり、好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
グリコール酸の繰り返し単位が55重量%に満たないと、ポリグリコール酸系樹脂における高い各種物性を得ることが困難となり、また、残留モノマー量の調整により生分解性と物理的強度とのバランスを制御(生分解速度を制御)することも困難となる。
ポリグリコール酸系樹脂と他のポリエステル系樹脂との混合物においては、他のポリエステル系樹脂としては、段落0022に例示して記載した、ポリエステル系のモノマーから重合される、生分解性を有するポリエステル系ポリマーが使用される。
混合物(ブレンド組成物)の形態の代わりに、芯−鞘構造の積層フィラメントの形態で使用することもできる。
(3)残留モノマー
本発明においては、残留モノマー量は、0.5重量%以上と規定されるが、先願発明における0.5重量%未満の規定との関係で、設定された規定であって、段落0010〜0011に記載したとおりに、残留モノマー量の規定条件を0.5重量%未満から、0.5重量%以上に変更しても、残留モノマー量が0.5重量%未満の場合と同等の引張強度や結節強度などの優れた物性を備えることができ、生分解性については、0.5重量%未満の場合に比べて、残留モノマー量が0.5重量%以上では、その速度がより速くなるが、むしろ資材の使用後に自然界に放置や投棄された場合に、より適度な分解消失速度となるという利点も生じる。
残留モノマー量の測定方法は、下記の実施例における試験方法として記載されている(段落0035)。
(4)物性
本発明のポリグリコール酸系樹脂フィラメントにおける、各種の物性(物理的性質;いわゆる機械的性質)は、特に優れた性能として引張強度と結節強度が規定され、引張強度は750MPa以上で、好ましくは800MPa以上であり、結節強度は600MPa以上であって、好ましくは700MPa以上であり、これらは特に水産資材における釣糸として重要な性能である。
残留モノマー量が0.5重量%以上のポリグリコール酸系樹脂からなり、引張強度が750MPa以上、且つ結節強度が600MPa以上であることを特徴とする生分解性ポリグリコール酸系樹脂フィラメントは、従来においては知られていないフィラメントである。
これらの物性の測定方法は、下記の実施例における試験方法として記載されている(段落0037)。具体的なデータは実施例−1における表2に記載されている。
本発明の生分解性のポリグリコール酸系樹脂フィラメントは、高剛性フィラメントとして知られる芳香族ポリエステル樹脂(PET)フィラメントと同等以上の高引張弾性率を備えることもでき、高剛性でありながら600MPa以上の極めて高い結節強度を有することは、少なくともある程度のフィラメントの表面柔軟性と表面伸度をも兼ね備えて初めて得られるものであり、従来のフィラメント材料には見られない、本発明の生分解性のポリグリコール酸系樹脂フィラメントの特徴的な特性のひとつである。
(5)フィラメント
本発明の生分解性のポリグリコール酸系樹脂の使用形態はフィラメントに特定され、モノフィラメント又はマルチフィラメントであり、ロープやネットなどにも加工できるが、特に、水産資材の釣糸としての使用に適した形態である。本発明におけるフィラメントは、ポリグリコール酸系樹脂を溶融状態で押出機などから押出紡糸することにより形成され、主としてモノフィラメントの形態で使用される。
フィラメントの径は特に限定されないが、釣糸としては0.05〜4.0mmが使用され、0.05〜2.0mm程度が好ましい。
(6)添加剤
本発明のポリグリコール酸系樹脂においては、より物性を高め、また、他の各種物性を付加するなどのために各種の添加剤として、ポリエステル系樹脂に通常に使用されるような、可塑剤、核剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、熱安定剤、光安定剤、充填剤、内部離型剤、艶消し剤、導電性付与剤、帯電制御剤、帯電防止剤、滑剤、その他の加工助剤を添加することができる。
(7)ポリグリコール酸系樹脂フィラメントにおける具体的な態様
段落0020に記載した、本発明のポリグリコール酸系樹脂フィラメントにおける基本的な構成に対するフィラメントの他の具体的な態様として、「残留モノマー量が0.5重量%以上、より好ましくは残留モノマー量が0.8重量%以上のポリグリコール酸系樹脂からなり、引張強度が750MPa以上、且つ結節強度が700MPa以上であり、残留モノマー量により生分解性と物理的強度のバランス及び生分解速度が制御されたことを特徴とする、土木資材又は農業資材或いは水産資材として使用される生分解性ポリグリコール酸系樹脂フィラメント」が具体化される。
この具体化は基本的な構成において、より高めの残留モノマー量とし、結節強度も高めに規定し、機能や用途も明確化した実施の態様であって、後記の実施例−1により実証されているものである。
2.生分解性と物理的強度とのバランスなどの制御
本発明のポリグリコール酸系樹脂フィラメントにおける、特徴のひとつとして、生分解性と物性(物理的強度)とのバランス及び生分解速度を制御することもできる。
残留モノマー量の調整により、空気中(山野や田畑など)及び水中(海洋や河川など)におけるポリグリコール酸系樹脂の加水分解性が調整され、それにより樹脂がモノマーに分解される生分解速度を制御できる。なお、空気中より水中における方が生分解速度は速い。
具体的には、生分解性資材の可使時間(使用し得る必用な月日)、及び環境汚染を避け自然保護に適当な、生分解と消失に要する時間(月日)の双方を勘案して、さらにはできるだけ高い諸物性を得られる残留モノマー量も考慮して、最適の生分解速度に設定制御することができる。それにより、生分解性と物性とのバランスを制御でき、また、購入者(消費者)が購入後に防湿容器を開封して空気中に放置しても、かなりの期間(数か月)は使用可能の状態を保持できる。
残留モノマー量の調整はポリグリコール酸系樹脂の重合条件或いは重合後のポリマーの加熱乾燥及び/又は真空乾燥により行うことができる。
3.生分解性ポリグリコール酸系樹脂フィラメントにおける用途
本発明のポリグリコール酸系樹脂フィラメントにおける用途としては、主として、モノフィラメントやネット及びロープや樹脂ワイヤ或いは繊維や織布などの種々の使用形態で、土木資材又は農業資材或いは水産資材として使用される。特に、水産資材における釣糸や魚網として好適である。
4.生分解性ポリグリコール酸系樹脂フィラメントの製造
(1)溶融押出
本発明のフィラメントは、残留モノマー量が0.5重量%以上に調整されたポリグリコール酸系樹脂に必要により他の成分を添加し230℃以上の温度で溶融押出しして紡糸し、10℃以下の温度の冷媒中で急冷し、次いで60〜83℃の媒体中で3倍以上に非晶延伸し、必要により二段延伸と熱緩和をなすことによって製造される。
押出溶融する前に熱安定化剤と混練してペレット化しておくことが好ましい。熱安定化剤の好ましい例としては、ペンタエリスリトール骨格構造を有するリン酸エステルやリン酸アルキルエステルが例示される。生分解性ポリグリコール酸系樹脂100重量部に対して、3重量部以下、好ましくは0.003〜1重量部添加される。
溶融押出温度は好ましくは230〜290℃であり、より好ましくは240〜280℃に設定される。230℃未満では押出機のスクリュウのモータ過負荷により樹脂の押出しが困難であり、290℃を超えると樹脂の熱分解が起こってしまう。
(2)急冷と非晶延伸
急冷は温度10℃以下の水浴や油浴において行われ、その温度が10℃を超えると、ポリグリコール酸系樹脂の冷却速度が遅くなって結晶化が進んでしまい、その後の非晶延伸が困難となる。
急冷後の延伸は、水やアルコール類及びシリコーンオイルやポリエチレングリコールなどの液浴中で60〜83℃、好ましくは70〜80℃において行われ、60℃未満ではポリグリコール酸系樹脂の軟化度が不足し所望の高倍率延伸が困難で83℃を超えると樹脂の結晶化が無視できなくなり、また、同様に高倍率延伸が困難となるし、生成した結晶核により配向欠陥が生じてしまい高い物性のフィラメントが得られない。
延伸はポリグリコール酸系樹脂の非晶状態において非晶延伸が行われ、3倍以上、特に4〜8倍の高倍率延伸が好ましい。非晶延伸を行わないと高い物性がえられない。
引き続き、或いは一旦冷却後に、第2段以降の延伸を行い、総合延伸倍率を4.5倍以上、特に5〜10倍に上げると高強度が期待できる。その後に必用に応じて0.99〜0.8倍程度の範囲で緩和処理を行ってもよい。
以下においては、本発明における実施例を開示して比較例を対照しながら、本発明をより詳細に具体的に開示して、本発明の構成をいっそう明らかにし、本発明の構成の各要件の合理性と有意性及び従来技術への優位性を実証する。
[測定方法]
i)残留モノマー量
サンプル約300mgを約6gのジメチルスルホキシド(DMSO)中に加熱し溶解させ、室温まで冷却した後に濾過を行う。その濾液に内部標準物質の4−クロロベンゾフェノンとアセトンを一定量添加する。その溶液をガスクロマトグラフィ装置に注入し残留モノマー量の測定を行った。
ii)ゲルクロマトグラフィ分析
装置:島津GC−2010 カラム:TC−17(0.25mm×30mm) カラム温度:150℃で5分保持後、20℃/minで270℃まで昇温して、270℃で3分間保持 気化室温度:200℃ 検出器:FID(水素炎イオン検出器) 温度:300℃
iii)引張強度及び結節強度
JISL1013に準拠し、オリエンテック(株)製「テンシロンUTM−III−100型引張試験機」を用い、23℃・65RH%の室内で、試長300mm、引張速度300mm/min、測定数=5にて、引張強度を測定した。また、結節強度は試料のつかみ間の中央に結節を作り、同様の引張条件に付し切断時の強さを測定した。
iv)引張伸度及び結節伸度
段落0037に記載した試験機を用い、同様な測定条件及び測定法により測定した。
v)経時変化
23℃・65RH%に管理された室内に、ボビンに巻いた状態で放置し、所定期間経過毎にサンプリングし上記の引張試験ににて、強度保持率及び伸度保持率を求めた。
[使用原料]
原料(1)ポリグリコール酸樹脂 溶融粘度;2,790Pa・s(キャピログラフ240℃・122/sec) 残留モノマー量;0.18重量%
原料(2)ポリグリコール酸樹脂 溶融粘度;2,560Pa・s(キャピログラフ240℃・122/sec) 残留モノマー量;0.8重量%
原料(3)ポリ乳酸樹脂 (株)島津製作所製(商品名Lacty)溶融粘度;1,350Pa・s(キャピログラフ220℃・100/sec)
[参考例−1]
原料(1)を、φ35mm押出機において、L/D:24・フルフライトタイプスクリュウ・φ1.3×6ホール単層ノズルを用いて、押出温度260℃・ノズル温度230℃の条件で溶融押出した後に、エアギャップ6.5cm・水冷却温度5℃・引取り速度4.5m/minの条件にてクエンチ(急冷)し、次いで80℃のグリセリン浴中で6.0倍に延伸し、直径0.24mmのモノフィラメントを得た。
得られたモノフィラメントは、引張強度1,190MPa・引張伸度34%・
結節強度930MPa・結節伸度28%であった。
[実施例−1]
原料(2)を、φ35mm押出機において、L/D:24・フルフライトタイプスクリュウ・φ1.3×6ホール単層ノズルを用いて、押出温度260℃・ノズル温度230℃の条件で溶融押出した後に、エアギャップ6.5cm・水冷却温度5℃・引取り速度4.5m/minの条件にてクエンチ(急冷)し、次いで80℃のグリセリン浴中で6.0倍に延伸し、直径0.17mmのモノフィラメントを得た。
得られたモノフィラメントは、引張強度790MPa・引張伸度55%・結節強度750MPa・結節伸度52%であった。
[比較例−1]
原料(3)を、φ35mm押出機において、L/D:24・フルフライトタイプスクリュウ・φ1.3×6ホール単層ノズルを用いて、押出温度及びノズル温度220℃・クエンチ温度40℃・引取り速度5m/minの条件で紡糸して未延伸糸を作成して、引続き1段85℃の温水浴中で4.0倍に延伸し、次いで2段98℃熱水浴中で1.75倍、合計7.0倍に延伸し、直径0.2mmのモノフィラメントを得た。
得られたモノフィラメントは、引張強度590MPa・引張伸度35%であった。
[経時変化の測定]
参考例−1と実施例−1及び比較例−1における結節強度と引張強度及び結節伸度と引張伸度の経時変化を表1〜3に掲示した。さらにそれらの測定結果を図1及び図2に変化グラフ図として掲示した。
参考例−1:ポリグリコール酸樹脂(残留モノマー量=0.18重量%)
Figure 0004664167
実施例−1:ポリグリコール酸樹脂(残留モノマー量=0.8重量%)
Figure 0004664167
比較例−1:ポリ乳酸樹脂
Figure 0004664167
[実施例と比較例の結果の考察]
表1〜3及び図1,2によって、以上の参考例と実施例及び比較例を対照することにより、本発明の生分解性ポリグリコール酸系樹脂フィラメントにおいては、糸径をも考慮すると、フィラメント製造当初では、先願発明の結節強度と引張強度の各値に近い強度が得られており、残留モノマー量の規定を変更しても、先願発明と同等の物性が得られることが実証されている。
各強度や伸度の経時変化では、先願発明に比べて本発明の強度などの低下変化が速くなっており、使用後に山野や海岸などに放置や投棄されたフィラメントが速やかに分解消失して、環境汚染抑制や自然保護のために、より寄与し得ることが示されている。なお、製造時から数か月はさほど変化しないので、生分解性資材の製品として販売しても、購入者に特に製品性能の低下の不利益をもたらさない。
比較例の従来例では、ポリ乳酸樹脂が使用され、さらに製造条件も本発明の要件を満たしていないので、本発明に比して、フィラメント製造時当初では引張強度が劣り、経時変化も非常に低いので、使用後に山野や海岸などに放置や投棄されたフィラメントが分解消失し難くて、環境汚染抑制や自然保護のために寄与し得ないことが示されている。
そして、参考例と本発明の結果からして、本発明においては、残留モノマー量の調整により、生分解速度の制御が可能で、生分解性と物性のバランスも制御できることが窺える。
以上のデータ結果と考察からして、本発明の構成要件の合理性と有意性が実証され、本発明が従来技術に比べて顕著な優位性を有していることが明確にされているといえる。
参考例と実施例及び比較例における強度保持率の経時変化を示すグラフ図である。 参考例と実施例及び比較例における伸度保持率の経時変化を示すグラフ図である。

Claims (7)

  1. 残留モノマー量が0.8重量%以上のポリグリコール酸系樹脂からなり、引張強度が75
    0MPa以上、且つ結節強度が700MPa以上であり、残留モノマー量により生分解性と物理的強度のバランス及び生分解速度が制御されたことを特徴とする、土木資材又は農業資材或いは水産資材として使用される生分解性ポリグリコール酸系樹脂フィラメント。
  2. ポリグリコール酸系樹脂が、グリコール酸又はグリコリドを重合した樹脂であり、残留モノマーがグリコール酸又はグリコリドであることを特徴とする、請求項1に記載されたポリグリコール酸系樹脂フィラメント。
  3. ポリグリコール酸系樹脂が、グリコール酸又はグリコリドと他の重合性モノマーを共重合した樹脂或いはポリグリコール酸系樹脂と他のポリエステル系樹脂との混合物であることを特徴とする、請求項2に記載されたポリグリコール酸系樹脂フィラメント。
  4. フィラメントがモノフィラメントであり、生分解性水産資材用であることを特徴とする、請求項1に記載されたポリグリコール酸系樹脂フィラメント。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれかに記載されたポリグリコール酸系樹脂フィラメントから形成される釣糸。
  6. 生分解性と物理的強度とのバランス及び生分解速度の制御を残留モノマー量の調整で行い、残留モノマー量の調整はポリグリコール酸系樹脂の重合条件或いは重合後のポリマーの加熱乾燥及び/又は真空乾燥により行うことを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載されたポリグリコール酸系樹脂フィラメントにおける、生分解性と物理的強度とのバランス及び生分解速度の制御方法。
  7. 残留モノマー量が0.5重量%以上に調整されたポリグリコール酸系樹脂に必要により他の成分を添加し230℃以上の温度で溶融押出しして紡糸し、10℃以下の温度の冷媒中で急冷し、次いで60〜83℃の媒体中で3倍以上に非晶延伸し、必要により二段延伸と熱緩和をなすことから構成される、請求項1〜請求項5のいずれかに記載された、ポリグリコール酸系樹脂フィラメントを製造する方法。
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