JP4664167B2 - 生分解性の制御された生分解性樹脂フィラメント及びその製造方法 - Google Patents
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生分解とは、樹脂材料の生体内分解や自然界における分解を総称しており、自然界においては加水分解や微生物による分解などの作用により分解し、生物に無害のモノマーになって、微生物による消費などにより消滅するが、生分解性樹脂材料も、澱粉系などの天然樹脂をはじめ、ポリビニルアルコール樹脂やポリグリコール酸樹脂及びポリ乳酸樹脂或いはポリカプロラクトンなどの生分解性ポリエステル樹脂さらにはポリエチレンカーボネートその他など多種に亘っている。
その応用分野も非常に拡大されており、徐々に消失する性質を利用した徐放性肥料容器や、自然に分解する性質を利用して、使用後に山野や田畑或いは市街に放置や投棄されても環境汚染や自然破壊をしないために、ロープやセメント化粧枠などの土木用資材(特許文献1を参照)及び育苗ネットや温室フィルムなどの農業用資材(特許文献2を参照)、さらには最近では、磁気カード類や包装材料などの日用雑貨或いはマーカーなどのゴルフ場用部材などに至るまでに活用されている。
しかし、釣糸などの従来の水産用資材においては、引張強度や破断伸びなどの物理的性質(物性)が強く重視されて、以前においてはもっぱら、ポリアミド樹脂が使用されていた。そしてポリアミド樹脂では、水中でのそのような強度は低下し、沈水性(水中での沈降性)も低く、経時により黄色化するので、水中での透明性や沈降性なども重要視して、ポリアミド樹脂に代わり、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂やポリエステル樹脂或いはポリフッ化ビニリデン樹脂などが多用されるようになり、特にポリエステル樹脂或いはポリフッ化ビニリデン樹脂などが重用されてきたのであって、これらに代わって生分解性樹脂を使用するとしても、適度の生分解性と適当な紡糸性及び従来の釣糸の優れた各種の性能を共に備えるのは一般的に非常に困難である。
代表的な開示例を俯瞰すると、生分解性の樹脂素材を釣糸に利用するために、ポリグリコール酸又はそれと他の分解性高分子との混合物をその構成素材とし、さらに固有粘度や切断強度をも特定した分解性釣糸、及び溶融紡糸後に特定の熱延伸と弛緩熱処理を行う分解性釣糸の製造法(特許文献3を参照)、使用時に十分な引張強度を保持し、水中に放棄された後には加水分解して次第に強度を低下せしめるために、ポリマー分子構造中に、少なくともグリコール酸単位及び/又は乳酸単位を持つ繰り返し構造単位を有する加水分解性ポリエステルの繊維、又は該加水分解性ポリエステル繊維と非加水分解性繊維の撚り及び/又は編組みよりなり、かつ、それらの繊維の表面が該加水分解性ポリエステルより加水分解性が低い分解性重合体でコーティングされている釣り糸(特許文献4を参照)、強度と伸度のバランスが良く釣り操作が行い易い生分解性釣糸であって、釣り糸本体が、引張力2.0g/d未満における初期伸び率が10%以上である第1の領域と、引張力2.0〜4.5g/dの範囲における伸び率が前記初期伸び率よりも小さく、破断時の伸び率が40%以下であり、破断強度が4.5g/d以上である第2の領域とを有する生分解性釣り糸(特許文献5を参照)、実用上十分な初期強度を有し、生分解速度をコントロールすることが可能な生分解性繊維であって、脂肪族ポリエステル樹脂にアルカリ性無機化合物を0.5〜10重量%含有させた組成物で構成されており、引張強度が3g/d以上である生分解性ポリエステル繊維(特許文献6を参照)などが開示されている。
しかし、これらの開示技術においては、特許文献3では、単に生分解性のポリグリコール酸樹脂を釣糸に使用しただけで特別の工夫及び特定の製法はなされていず、素材が硬くて脆く結節強度も低く釣糸としての性能を満たしているとはいえず、特許文献4でも、素材が硬くて脆く強度と生分解速度のバランスが取れているとはいい難く、特許文献5では生分解性に特別の工夫は何らなされていず、特許文献6においても、実用上十分な強度を有しているとも、生分解速度の自在な制御或いは強度などの物性と生分解性における良好なバランスが実現されているとも、いい難い。
この先願発明は、(i)残留モノマー量が0.5重量%未満のポリグリコール酸系樹脂からなり、引張強度が750MPa以上、且つ結節強度が600MPa以上であることを特徴とする、ポリグリコール酸系樹脂フィラメント、及び、(ii)残留モノマー量が0.5重量%未満のポリグリコール酸系樹脂を溶融紡出後、10℃以下の液浴中で急冷した後、次いで60〜83℃の液浴中で非晶延伸することからなる、ポリグリコール酸系樹脂フィラメントの製造方法である。
そして、土木用や農業用などの各技術分野における生分解性資材として有用であり、特に水産用資材として生分解性機能と各種物性とをバランスよく備えて、さらに、生分解性と物理的強度とのバランス及び生分解速度を残留モノマー量により制御でき、自然界の空気中又は水中の使用形態に応じて、必要で適度な生分解速度に制御し設定できるという、特徴を有するものである。
また、本発明はより具体的にその機能や用途なども特定して、残留モノマー量が0.5重量%以上、より好ましくは残留モノマー量が0.8重量%以上のポリグリコール酸系樹脂からなり、引張強度が750MPa以上、且つ結節強度が700MPa以上であり、残留モノマー量により生分解性と物理的強度のバランス及び生分解速度が制御されたことを特徴とする、土木資材又は農業資材或いは水産資材として使用される生分解性ポリグリコール酸系樹脂フィラメントでもある。
一方、本発明は段落0013に要約した、残留モノマー量や各種の物性などの新規で特有の構成要件と生分解速度の制御などの特徴的な作用を有するものであるからして、上記に代表される従来の文献の記載が本発明を示唆したり窺わせるものではないことは明白である。
[2]残留モノマー量が0.8重量%以上のポリグリコール酸系樹脂からなり、引張強度が750MPa以上、且つ結節強度が700MPa以上であり、残留モノマー量により生分解性と物理的強度のバランス及び生分解速度が制御されたことを特徴とする、土木資材又は農業資材或いは水産資材として使用される生分解性ポリグリコール酸系樹脂フィラメント。
[3]ポリグリコール酸系樹脂が、グリコール酸又はグリコリドを重合した樹脂であり、残留モノマーがグリコール酸又はグリコリドであることを特徴とする、[1]又は[2]におけるポリグリコール酸系樹脂フィラメント。
[4]ポリグリコール酸系樹脂が、グリコール酸又はグリコリドと他の重合性モノマーを共重合した樹脂或いはポリグリコール酸系樹脂と他のポリエステル系樹脂との混合物であることを特徴とする、[3]におけるポリグリコール酸系樹脂フィラメント。
[5]フィラメントがモノフィラメントであり、生分解性水産資材用であることを特徴とする、[1]又は[2]におけるポリグリコール酸系樹脂フィラメント。
[6][1]〜[5]のいずれかにおけるポリグリコール酸系樹脂フィラメントから形成される釣糸。
[7]生分解性と物理的強度とのバランス及び生分解速度の制御を残留モノマー量の調整で行い、残留モノマー量の調整はポリグリコール酸系樹脂の重合条件或いは重合後のポリマーの加熱乾燥及び/又は真空乾燥により行うことを特徴とする、[1]〜[6]のいずれかにおけるポリグリコール酸系樹脂フィラメントにおける、生分解性と物理的強度とのバランス及び生分解速度の制御方法。
[8]残留モノマー量が0.5重量%以上に調整されたポリグリコール酸系樹脂に必要により他の成分を添加し230℃以上の温度で溶融押出しして紡糸し、10℃以下の温度の冷媒中で急冷し、次いで60〜83℃の媒体中で3倍以上に非晶延伸し、必要により二段延伸と熱緩和をなすことから構成される、[1]〜[6]のいずれかにおける、ポリグリコール酸系樹脂フィラメントを製造する方法。
(1)基本的な構成
本発明の生分解性樹脂、特にポリグリコール酸系樹脂フィラメントは、残留モノマー量が0.5重量%以上のポリグリコール酸系樹脂などからなり、引張強度が750MPa以上、且つ結節強度が600MPa以上であることを特徴とする、生分解性樹脂フィラメントである。
一般に、生分解性樹脂は、i)化学合成系、ii)微生物産生系、及びiii)天然物系の樹脂に分類される。
化学合成系の例としては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、セルロースアセテート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンカーボネート、ポリエチレンサクシネート、及び上記の各ポリマーにおけるモノマーを組み合わせて得られる共重合体、さらには、ポリエチレンサクシネート・テレフタレート共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
微生物産生系の例としては、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、ポリ−3−ヒドロキシバリレート、及びこれらのポリマーにおけるモノマーによる共重合体などが挙げられる。
天然物系の例としては、澱粉、絹、キチン、キトサンなどが挙げられるが、残留モノマーが生成しないため、本発明では生分解性樹脂の単独としては対象とならない。
本発明の生分解性樹脂としては、上記の化学合成系又は微生物産生系の樹脂が使用され、これらの樹脂を組み合わせてもよく、また、化学合成系及び微生物産生系の樹脂を組み合わせてもよいし、これらの樹脂と天然物系の物を組み合わせて使用してもよい。
それらの中でもポリグリコール酸系樹脂は、特に生分解性に優れた樹脂として知られているものである。
本発明で専ら使用するポリグリコール酸系樹脂は基本的には、ポリグリコール酸樹脂であって、グリコール酸の縮合重合により製造されるが、重合の容易性から通常はグリコール酸の二分子縮合物であるグリコリドの開環重合により製造され、重合体の単位は、−(OCH2CO)n−で表される。
共重合する他の重合性モノマーは、任意のモノマーが使用されるが、生分解性を有するポリマーを生成するモノマーが好ましく、乳酸やラクトン類或いはトリメチレンカーボネートのようなカーボネート類、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸及びこれらの酸類のエステル、修酸エチレンなどが代表的に例示される。これらのモノマーを併用することもできる。
ポリグリコール酸系樹脂中におけるグリコール酸の繰り返し単位は55重量%以上であり、好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
グリコール酸の繰り返し単位が55重量%に満たないと、ポリグリコール酸系樹脂における高い各種物性を得ることが困難となり、また、残留モノマー量の調整により生分解性と物理的強度とのバランスを制御(生分解速度を制御)することも困難となる。
混合物(ブレンド組成物)の形態の代わりに、芯−鞘構造の積層フィラメントの形態で使用することもできる。
本発明においては、残留モノマー量は、0.5重量%以上と規定されるが、先願発明における0.5重量%未満の規定との関係で、設定された規定であって、段落0010〜0011に記載したとおりに、残留モノマー量の規定条件を0.5重量%未満から、0.5重量%以上に変更しても、残留モノマー量が0.5重量%未満の場合と同等の引張強度や結節強度などの優れた物性を備えることができ、生分解性については、0.5重量%未満の場合に比べて、残留モノマー量が0.5重量%以上では、その速度がより速くなるが、むしろ資材の使用後に自然界に放置や投棄された場合に、より適度な分解消失速度となるという利点も生じる。
残留モノマー量の測定方法は、下記の実施例における試験方法として記載されている(段落0035)。
本発明のポリグリコール酸系樹脂フィラメントにおける、各種の物性(物理的性質;いわゆる機械的性質)は、特に優れた性能として引張強度と結節強度が規定され、引張強度は750MPa以上で、好ましくは800MPa以上であり、結節強度は600MPa以上であって、好ましくは700MPa以上であり、これらは特に水産資材における釣糸として重要な性能である。
残留モノマー量が0.5重量%以上のポリグリコール酸系樹脂からなり、引張強度が750MPa以上、且つ結節強度が600MPa以上であることを特徴とする生分解性ポリグリコール酸系樹脂フィラメントは、従来においては知られていないフィラメントである。
これらの物性の測定方法は、下記の実施例における試験方法として記載されている(段落0037)。具体的なデータは実施例−1における表2に記載されている。
本発明の生分解性のポリグリコール酸系樹脂の使用形態はフィラメントに特定され、モノフィラメント又はマルチフィラメントであり、ロープやネットなどにも加工できるが、特に、水産資材の釣糸としての使用に適した形態である。本発明におけるフィラメントは、ポリグリコール酸系樹脂を溶融状態で押出機などから押出紡糸することにより形成され、主としてモノフィラメントの形態で使用される。
フィラメントの径は特に限定されないが、釣糸としては0.05〜4.0mmが使用され、0.05〜2.0mm程度が好ましい。
本発明のポリグリコール酸系樹脂においては、より物性を高め、また、他の各種物性を付加するなどのために各種の添加剤として、ポリエステル系樹脂に通常に使用されるような、可塑剤、核剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、熱安定剤、光安定剤、充填剤、内部離型剤、艶消し剤、導電性付与剤、帯電制御剤、帯電防止剤、滑剤、その他の加工助剤を添加することができる。
段落0020に記載した、本発明のポリグリコール酸系樹脂フィラメントにおける基本的な構成に対するフィラメントの他の具体的な態様として、「残留モノマー量が0.5重量%以上、より好ましくは残留モノマー量が0.8重量%以上のポリグリコール酸系樹脂からなり、引張強度が750MPa以上、且つ結節強度が700MPa以上であり、残留モノマー量により生分解性と物理的強度のバランス及び生分解速度が制御されたことを特徴とする、土木資材又は農業資材或いは水産資材として使用される生分解性ポリグリコール酸系樹脂フィラメント」が具体化される。
この具体化は基本的な構成において、より高めの残留モノマー量とし、結節強度も高めに規定し、機能や用途も明確化した実施の態様であって、後記の実施例−1により実証されているものである。
本発明のポリグリコール酸系樹脂フィラメントにおける、特徴のひとつとして、生分解性と物性(物理的強度)とのバランス及び生分解速度を制御することもできる。
残留モノマー量の調整により、空気中(山野や田畑など)及び水中(海洋や河川など)におけるポリグリコール酸系樹脂の加水分解性が調整され、それにより樹脂がモノマーに分解される生分解速度を制御できる。なお、空気中より水中における方が生分解速度は速い。
具体的には、生分解性資材の可使時間(使用し得る必用な月日)、及び環境汚染を避け自然保護に適当な、生分解と消失に要する時間(月日)の双方を勘案して、さらにはできるだけ高い諸物性を得られる残留モノマー量も考慮して、最適の生分解速度に設定制御することができる。それにより、生分解性と物性とのバランスを制御でき、また、購入者(消費者)が購入後に防湿容器を開封して空気中に放置しても、かなりの期間(数か月)は使用可能の状態を保持できる。
残留モノマー量の調整はポリグリコール酸系樹脂の重合条件或いは重合後のポリマーの加熱乾燥及び/又は真空乾燥により行うことができる。
本発明のポリグリコール酸系樹脂フィラメントにおける用途としては、主として、モノフィラメントやネット及びロープや樹脂ワイヤ或いは繊維や織布などの種々の使用形態で、土木資材又は農業資材或いは水産資材として使用される。特に、水産資材における釣糸や魚網として好適である。
(1)溶融押出
本発明のフィラメントは、残留モノマー量が0.5重量%以上に調整されたポリグリコール酸系樹脂に必要により他の成分を添加し230℃以上の温度で溶融押出しして紡糸し、10℃以下の温度の冷媒中で急冷し、次いで60〜83℃の媒体中で3倍以上に非晶延伸し、必要により二段延伸と熱緩和をなすことによって製造される。
押出溶融する前に熱安定化剤と混練してペレット化しておくことが好ましい。熱安定化剤の好ましい例としては、ペンタエリスリトール骨格構造を有するリン酸エステルやリン酸アルキルエステルが例示される。生分解性ポリグリコール酸系樹脂100重量部に対して、3重量部以下、好ましくは0.003〜1重量部添加される。
溶融押出温度は好ましくは230〜290℃であり、より好ましくは240〜280℃に設定される。230℃未満では押出機のスクリュウのモータ過負荷により樹脂の押出しが困難であり、290℃を超えると樹脂の熱分解が起こってしまう。
急冷は温度10℃以下の水浴や油浴において行われ、その温度が10℃を超えると、ポリグリコール酸系樹脂の冷却速度が遅くなって結晶化が進んでしまい、その後の非晶延伸が困難となる。
急冷後の延伸は、水やアルコール類及びシリコーンオイルやポリエチレングリコールなどの液浴中で60〜83℃、好ましくは70〜80℃において行われ、60℃未満ではポリグリコール酸系樹脂の軟化度が不足し所望の高倍率延伸が困難で83℃を超えると樹脂の結晶化が無視できなくなり、また、同様に高倍率延伸が困難となるし、生成した結晶核により配向欠陥が生じてしまい高い物性のフィラメントが得られない。
延伸はポリグリコール酸系樹脂の非晶状態において非晶延伸が行われ、3倍以上、特に4〜8倍の高倍率延伸が好ましい。非晶延伸を行わないと高い物性がえられない。
引き続き、或いは一旦冷却後に、第2段以降の延伸を行い、総合延伸倍率を4.5倍以上、特に5〜10倍に上げると高強度が期待できる。その後に必用に応じて0.99〜0.8倍程度の範囲で緩和処理を行ってもよい。
i)残留モノマー量
サンプル約300mgを約6gのジメチルスルホキシド(DMSO)中に加熱し溶解させ、室温まで冷却した後に濾過を行う。その濾液に内部標準物質の4−クロロベンゾフェノンとアセトンを一定量添加する。その溶液をガスクロマトグラフィ装置に注入し残留モノマー量の測定を行った。
装置:島津GC−2010 カラム:TC−17(0.25mm×30mm) カラム温度:150℃で5分保持後、20℃/minで270℃まで昇温して、270℃で3分間保持 気化室温度:200℃ 検出器:FID(水素炎イオン検出器) 温度:300℃
JISL1013に準拠し、オリエンテック(株)製「テンシロンUTM−III−100型引張試験機」を用い、23℃・65RH%の室内で、試長300mm、引張速度300mm/min、測定数=5にて、引張強度を測定した。また、結節強度は試料のつかみ間の中央に結節を作り、同様の引張条件に付し切断時の強さを測定した。
段落0037に記載した試験機を用い、同様な測定条件及び測定法により測定した。
23℃・65RH%に管理された室内に、ボビンに巻いた状態で放置し、所定期間経過毎にサンプリングし上記の引張試験ににて、強度保持率及び伸度保持率を求めた。
原料(1)ポリグリコール酸樹脂 溶融粘度;2,790Pa・s(キャピログラフ240℃・122/sec) 残留モノマー量;0.18重量%
原料(2)ポリグリコール酸樹脂 溶融粘度;2,560Pa・s(キャピログラフ240℃・122/sec) 残留モノマー量;0.8重量%
原料(3)ポリ乳酸樹脂 (株)島津製作所製(商品名Lacty)溶融粘度;1,350Pa・s(キャピログラフ220℃・100/sec)
原料(1)を、φ35mm押出機において、L/D:24・フルフライトタイプスクリュウ・φ1.3×6ホール単層ノズルを用いて、押出温度260℃・ノズル温度230℃の条件で溶融押出した後に、エアギャップ6.5cm・水冷却温度5℃・引取り速度4.5m/minの条件にてクエンチ(急冷)し、次いで80℃のグリセリン浴中で6.0倍に延伸し、直径0.24mmのモノフィラメントを得た。
得られたモノフィラメントは、引張強度1,190MPa・引張伸度34%・
結節強度930MPa・結節伸度28%であった。
原料(2)を、φ35mm押出機において、L/D:24・フルフライトタイプスクリュウ・φ1.3×6ホール単層ノズルを用いて、押出温度260℃・ノズル温度230℃の条件で溶融押出した後に、エアギャップ6.5cm・水冷却温度5℃・引取り速度4.5m/minの条件にてクエンチ(急冷)し、次いで80℃のグリセリン浴中で6.0倍に延伸し、直径0.17mmのモノフィラメントを得た。
得られたモノフィラメントは、引張強度790MPa・引張伸度55%・結節強度750MPa・結節伸度52%であった。
原料(3)を、φ35mm押出機において、L/D:24・フルフライトタイプスクリュウ・φ1.3×6ホール単層ノズルを用いて、押出温度及びノズル温度220℃・クエンチ温度40℃・引取り速度5m/minの条件で紡糸して未延伸糸を作成して、引続き1段85℃の温水浴中で4.0倍に延伸し、次いで2段98℃熱水浴中で1.75倍、合計7.0倍に延伸し、直径0.2mmのモノフィラメントを得た。
得られたモノフィラメントは、引張強度590MPa・引張伸度35%であった。
参考例−1と実施例−1及び比較例−1における結節強度と引張強度及び結節伸度と引張伸度の経時変化を表1〜3に掲示した。さらにそれらの測定結果を図1及び図2に変化グラフ図として掲示した。
参考例−1:ポリグリコール酸樹脂(残留モノマー量=0.18重量%)
表1〜3及び図1,2によって、以上の参考例と実施例及び比較例を対照することにより、本発明の生分解性ポリグリコール酸系樹脂フィラメントにおいては、糸径をも考慮すると、フィラメント製造当初では、先願発明の結節強度と引張強度の各値に近い強度が得られており、残留モノマー量の規定を変更しても、先願発明と同等の物性が得られることが実証されている。
各強度や伸度の経時変化では、先願発明に比べて本発明の強度などの低下変化が速くなっており、使用後に山野や海岸などに放置や投棄されたフィラメントが速やかに分解消失して、環境汚染抑制や自然保護のために、より寄与し得ることが示されている。なお、製造時から数か月はさほど変化しないので、生分解性資材の製品として販売しても、購入者に特に製品性能の低下の不利益をもたらさない。
比較例の従来例では、ポリ乳酸樹脂が使用され、さらに製造条件も本発明の要件を満たしていないので、本発明に比して、フィラメント製造時当初では引張強度が劣り、経時変化も非常に低いので、使用後に山野や海岸などに放置や投棄されたフィラメントが分解消失し難くて、環境汚染抑制や自然保護のために寄与し得ないことが示されている。
そして、参考例と本発明の結果からして、本発明においては、残留モノマー量の調整により、生分解速度の制御が可能で、生分解性と物性のバランスも制御できることが窺える。
以上のデータ結果と考察からして、本発明の構成要件の合理性と有意性が実証され、本発明が従来技術に比べて顕著な優位性を有していることが明確にされているといえる。
Claims (7)
- 残留モノマー量が0.8重量%以上のポリグリコール酸系樹脂からなり、引張強度が75
0MPa以上、且つ結節強度が700MPa以上であり、残留モノマー量により生分解性と物理的強度のバランス及び生分解速度が制御されたことを特徴とする、土木資材又は農業資材或いは水産資材として使用される生分解性ポリグリコール酸系樹脂フィラメント。 - ポリグリコール酸系樹脂が、グリコール酸又はグリコリドを重合した樹脂であり、残留モノマーがグリコール酸又はグリコリドであることを特徴とする、請求項1に記載されたポリグリコール酸系樹脂フィラメント。
- ポリグリコール酸系樹脂が、グリコール酸又はグリコリドと他の重合性モノマーを共重合した樹脂或いはポリグリコール酸系樹脂と他のポリエステル系樹脂との混合物であることを特徴とする、請求項2に記載されたポリグリコール酸系樹脂フィラメント。
- フィラメントがモノフィラメントであり、生分解性水産資材用であることを特徴とする、請求項1に記載されたポリグリコール酸系樹脂フィラメント。
- 請求項1〜請求項4のいずれかに記載されたポリグリコール酸系樹脂フィラメントから形成される釣糸。
- 生分解性と物理的強度とのバランス及び生分解速度の制御を残留モノマー量の調整で行い、残留モノマー量の調整はポリグリコール酸系樹脂の重合条件或いは重合後のポリマーの加熱乾燥及び/又は真空乾燥により行うことを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載されたポリグリコール酸系樹脂フィラメントにおける、生分解性と物理的強度とのバランス及び生分解速度の制御方法。
- 残留モノマー量が0.5重量%以上に調整されたポリグリコール酸系樹脂に必要により他の成分を添加し230℃以上の温度で溶融押出しして紡糸し、10℃以下の温度の冷媒中で急冷し、次いで60〜83℃の媒体中で3倍以上に非晶延伸し、必要により二段延伸と熱緩和をなすことから構成される、請求項1〜請求項5のいずれかに記載された、ポリグリコール酸系樹脂フィラメントを製造する方法。
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