JP4652590B2 - 移植機の苗トレイ縦送り機構 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、移植機の苗搬送台に載置した苗トレイを、縦送り機構及び横送り機構を具備した搬送装置の縦送り機構によって縦送りする苗トレイ縦送り機構に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来、移植機の一形態として、車輪やエンジンを具備する走行部と、操作ハンドルを具備する操作部と、苗トレイから苗を取出して植付けを行う移植部とを設けた移植機があり、作業者が機体後端部に設けた操作ハンドルを操作して圃場を走行させながら、移植部によって苗を移植可能としている。
【０００３】
移植部は操作部の前方に設けており、側面視において前低後高とした苗搬送台を設け、同苗搬送台下端に搬送装置を配設し、苗搬送台に載置した苗トレイを搬送装置によって前下方に搬送し、苗取出爪によって苗トレイから苗を取出して植付器に送給し、昇降自在とした植付器によって圃場に植付けるようにしている。
【０００４】
特に、苗トレイには、通常、複数行・複数列の行列状態に苗の収容されるポット苗収容部となるセルが設けられているため、１つの苗取出爪に順次苗を送給することができるように、搬送装置は、苗トレイを前下方へ縦方向に送る搬送チェンを具備する縦送り機構と、同縦送り機構を左右横方向に送る横送り軸を具備する往復横送り機構とによって構成している。
【０００５】
搬送チェンは、苗搬送台に載置される苗トレイの左右側の下方となる位置にそれぞれ配設されるようにしており、特に、苗搬送台の下端側に設けた上部スプロケットと、同上部スプロケットよりもさらに下方に配設した下部スプロケットとに巻回させるようにしている。
【０００６】
さらに、搬送チェンには所定間隔で係止杆を突設し、苗搬送台に沿って降下してくる苗トレイを同係止杆で受けるようにしている。特に、苗トレイの裏面側に突出状態に設けたポット苗収容部であるセルの下部側面に同係止杆を係合させることにより、苗トレイを苗搬送台から搬送チェンに受け渡すとともに、下部スプロケットの回転にともなって苗トレイを同下部スプロケット側に縦送りすることができるようにしている。
【０００７】
この苗搬送台から搬送チェンに苗トレイを受け渡す苗搬送台下端部分が、新しい苗トレイを苗搬送台にセットする苗継ぎ作業のタイミングを決定する苗継ぎ位置となっており、同苗継ぎ位置部分にはセンサを配設し、同センサが苗トレイの後端が苗継ぎ位置に達したことを検知すると、苗継ぎ警報を鳴らして作業者に苗継ぎ作業を促すようにしている。
【０００８】
こうすることにより、搬送装置により縦送りされている苗トレイと、苗継ぎ作業によって新たに苗搬送台にセットされる苗トレイとの間に隙間を生起することなく苗継ぎが行われ、連続的にかつ確実に苗取出爪に苗を送給し、植付作業を行うことができるようにしている。
【０００９】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記移植機には、未だ次のような解決すべき課題が残されていた。
【００１０】
すなわち、苗搬送台から搬送チェンへの苗トレイの受け渡し位置が高いため、苗トレイの苗継ぎ位置が高くなり、身長の低い人は苗継ぎ作業を行いにくいという問題があった。
【００１１】
また、苗トレイの継ぎ位置が高いということは、苗搬送台の下端の位置が高いということであり、当然ながら苗搬送台の上端位置もそれにともなって高くならざるを得ないため、操作部で操作を行う作業者の視界を苗搬送台の上端部が遮ることとなり、移動時などに前方視界が悪くなるという問題があった。
【００１２】
さらに、苗搬送台の上端部が上方に大きく伸延していることによって、輸送時に同上端部分において接触が生じやすく、苗搬送台に変形や破損を生じやすいため、苗搬送台の中途部に折り畳み機構を設けるなどの構成が必要となり、構成が複雑になるとともに、製造コストを増加させるという問題があった。
【００１３】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決すべく、本発明では、機体に配設した苗搬送台に苗トレイを載置し、同苗トレイを縦送り機構及び横送り機構を設けた搬送装置によって縦方向及び横方向に搬送しながら苗トレイから苗を取出すようにした苗供給機構部と、同苗供給機構部から供給された苗を圃場に植付可能な植付器を設けた植付機構部とを具備する移植機の苗トレイ縦送り機構であって、苗トレイに設けられたポット苗収容部となっているセルと係合する係止杆を所定間隔で配設した搬送チェンと、同搬送チェンの巻回される上部スプロケットと下部スプロケットとによって構成した苗トレイの縦送り機構において、搬送チェンの中途部にチェン当接体を当接させることにより搬送チェンを屈曲させるようにした。
【００１４】
特に、チェン当接体は、機体の機枠に配設したチェン当接体配設板に着脱自在とするとともに、同チェン当接体配設板に沿って前後方向に進退自在とし、チェン当接体の配設位置を調整可能とした。
【００１５】
従って、苗継ぎ位置を降下させることができるので苗継ぎ作業を行いやすくすることができるとともに、屈曲した搬送チェンの上部スプロケット側を苗搬送台で被覆するように苗搬送台を降下させることができるので、同苗搬送台の上端位置を降下させることができ、作業者の視界が苗搬送台によって塞がれることを防止することができる。
【００１６】
【発明の実施の形態】
本発明では、苗搬送台の苗トレイを縦方向に搬送可能とした縦送り機構、及び、横方向に搬送可能とした横送り機構を設けた搬送装置を具備する移植機の縦送り機構を、上部スプロケットと、下部スプロケットと、同上下部スプロケットに巻回させた搬送チェンとによって構成しているものであり、特に、搬送チェンの中途部にチェン当接体を当接させることにより搬送チェンを屈曲させているものである。従って、搬送チェンへの苗トレイの受け渡し位置を降下させることができるので、苗継ぎ位置を降下させることができるものである。
【００１７】
すなわち、上部スプロケットを取着した回転軸、及び、下部スプロケットを取着した回転軸の配設位置を変更したり、上部スプロケット及び下部スプロケットの形状を変更したりすることなく苗継ぎ位置を降下させることができるものであり、製造コストを上げることなく苗継ぎ位置を低くして、作業性を向上させることができる。
【００１８】
また、苗搬送台全体を降下させることができるので、苗搬送台の上端の高さも低くすることができ、前方視界を良好なものとすることができる。さらには、苗搬送台に折り畳み機構などを設ける必要がなくなり、苗搬送台の構成を簡単化及び軽量化することができるとともに、強度的にも強い構成とすることができる。
【００１９】
特に、前記チェン当接体を、機体の機枠に配設したチェン当接体配設板に着脱自在とするとともに、同チェン当接体配設板に沿って前後方向に進退自在としていることにより、苗トレイの形態に合わせてチェン当接体の搬送チェンの当接位置を調整することができ、様々なタイプの苗トレイにも対応することができる。
【００２０】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を示しながらさらに詳説する。
【００２１】
【実施例】
図１は本実施例に係る移植機Ａの全体側面図、図２は要部となる苗供給機構部ａ部分の拡大側面図である。
【００２２】
本実施例に係る移植機Ａは、機体フレーム10の下部に走行部１を設けるとともに、上部には、前側に原動機部２を、その後方に移植部３を、さらにその後方に操作部４を設けて機体を構成している。そして、作業者が操作部４を操作して、走行部１によって圃場Ｂを走行しながら、移植部３によって圃場Ｂの畝B1にポット苗を連続的に移植可能としている。
【００２３】
走行部１は、機体フレーム10の前部に遊動輪支持アーム12,12を介して左右一対の遊動輪11,11をそれぞれ取付けると共に、後部に伝動ケース14,14を介して左右一対の駆動輪13,13をそれぞれ取付けている。
【００２４】
原動機部２は、エンジン21を搭載するとともに、伝動ベルト22を介して前記走行部１や移植部３に動力を伝達可能としている。23は給油タンク、24はボンネットである。
【００２５】
操作部４は、機体フレーム10の後端部に連設した略Ｊ字状の後部フレーム15の後端にハンドルフレーム40を連設して構成し、同ハンドルフレーム40の周りに各種の操作具を装備している。図中、41は主クラッチレバー、42は植付クラッチレバー、43はサイドクラッチレバー、44は走行主変速レバー、45は株間調節レバー、46はハンドル端部バーである。
【００２６】
移植部３は、機体フレーム10の後部に配設した苗供給機構部ａと、同苗供給機構部ａの直下方位置に配設した植付機構部７とにより構成している。
【００２７】
苗供給機構部ａには、前記後部フレーム15の上方位置に、苗トレイ９を載置する苗搬送台63を側面視で前低後高に配設している。なお、苗トレイ９は、可撓性を有する合成樹脂製で、複数のポット苗収容部となるセル91を形成して構成している。
【００２８】
苗搬送台63には、苗トレイ９を前下方へ縦方向に縦送りする縦送り機構と、同縦送り機構を左右横方向に往復横送りする横送り機構（図示せず）とを配設しており、両送り機構からなる搬送装置は前記エンジン21に連動連結している。
【００２９】
横送り機構は、横送り軸を設けて苗搬送台63を左右横方向へ往復移動可能に構成しており、苗トレイ９をセル91ごとの1ピッチずつ左右横方向に間歇移動させ、横移動終端で逆方向へ横移動させるようにしている。
【００３０】
縦送り機構は、苗供給機構部ａを支持する機枠60（図３参照）に回転自在に横架した回転軸64aの両端に配設した下部スプロケット64と、同じく機枠6 0に回転自在に横架した回転軸65aの両端に配設した上部スプロケット65と、両スプロケット64,65間に巻回した搬送チェン66とによって構成している（図２参照）。符号61は搬送チェン66のカバーケースである。
【００３１】
搬送チェン66には、図３に示すように、側面に係止杆67を突設しており、同係止杆67を苗搬送台63に沿って送給された苗トレイ９の縦搬送方向に並ぶセル91の間に挿入し、同セル91の下部側面に係合させて苗トレイ９を支持するようにしている。そして、下部スプロケット64を間歇回転させることによりセル91ごとの1ピッチずつ苗トレイ９を下部スプロケット64側に縦送りするようにしている。
【００３２】
なお、図３において、符号51は苗継ぎセンサスイッチであり、苗トレイ９の下面側から苗トレイ９に当接させるように付勢された接触板52が、苗トレイ９と非接触状態となる、すなわち、苗トレイ９の後端9aが接触板52部分を通過すると付勢によって接触板52が上動し、苗継ぎセンサスイッチ51をオン状態として苗継ぎ警報ブザーを鳴らすようにしている。また、符号95は苗トレイ押さえ杆であり、苗トレイ９の上面側に当接させるように配設して、苗トレイ９を浮き上がらせることなく搬送するようにしている。
【００３３】
植付機構部７は、エンジン21の後方に植付伝動ケース71を設け、同植付伝動ケース71の上方位置に植付器72を植付伝動ケース71と連動連結して配置している。植付伝動ケース71は、植付器72の後上方位置に配設した前述の苗供給機構部ａとも連動連結している。
【００３４】
前記植付器72は、先細り状とした半割ポット形状の一対の爪を開閉自在に構成しており、前記植付伝動ケース71と連動連結して、上下方向への略楕円軌道Ｌで昇降可能としている。かかる植付器72は、苗供給機構部ａの苗取出爪（図示せず）からポット苗を受け取った後、畝B1に突入時に爪が開いてポット苗を移植することができるようにしている。
【００３５】
73は前側スライドレール、74は後側スライドレールであり、植付機構部７を左右にスライド自在に支持しており、前記操作部４に設けたスライド調節レバー47により調節可能としている。また、75は植付器72の駆動機構、76は鎮圧ローラ、77は同鎮圧ローラ76の支持フレーム、78は植付器72に付着した泥や土を掻き落とすスクレーパである。
【００３６】
以下、図２に基づいて、本発明の要部である苗供給機構部ａの縦送り機構について説明する。
【００３７】
上述したように、縦送り機構は下部スプロケット64と、上部スプロケット65と、両スプロケット64,65間に巻回した搬送チェン66とによって構成している。
【００３８】
そして、本発明では、下部スプロケット64と上部スプロケット65とに巻回した搬送チェン66のうち、苗搬送台63上を送給されてきた苗トレイ９を受け止めることになる上側搬送チェン66aにチェン当接体62aを当接させて押圧することにより、同チェン当接体62aの部分で搬送チェン66を屈曲させるようにしているものである。
【００３９】
チェン当接体62aは、機枠60に配設したチェン当接体配設板62に取着するようにしており、苗トレイ９の形態、特に、セル91の配設ピッチに合わせてチェン当接体62aの位置を前後にずらすことができるようにしている。符号62bは、チェン当接体62aをチェン当接体配設板62に固設するための取着ボルトであり、符号62cは同取着ボルト62bと螺合する固定ナットである。
【００４０】
本実施例では、取着ボルト62bの挿入されるチェン当接体配設板62のネジ孔（図示せず）を前後方向に伸延させた長孔状としておくことにより、チェン当接体62aの位置を前後にずらすことができるようにしている。
【００４１】
チェン当接体62aの位置を前後にずらすことができるようにする構成は、上記の構成に限定するものではなく、適宜の構成としてよい。たとえば、チェン当接体配設板62のネジ孔を長孔状とするのではなく、所定間隔で複数のネジ孔を設けるようにすることもできるし、チェン当接体62aの取着ボルト62bの挿入されるネジ孔（図示せず）を前後方向に伸延させた長孔状としておいてもよい。
【００４２】
さらに、上側搬送チェン66aの屈曲状態を適宜に調整することができるように、突出量を異ならせた複数のチェン当接体62aを必要に応じて交換することができるようにしている。あるいは、チェン当接体62aを進退自在とし、進退させることによって突出量を適宜調整することができるようにすることもできる。チェン当接体62aを進退自在としておくことにより、１つのチェン当接体62aだけで様々に異なる苗トレイ９に合わせて上側搬送チェン66aを屈曲させることができ、作業性を向上させることができる。
【００４３】
チェン当接体62aによって上側搬送チェン66aを屈曲させることにより、苗トレイ９を係止すべく搬送チェン66に設けた係止杆67による苗トレイ９の係止位置を降下させることができるので、苗継ぎ位置を降下させることができる。従って、苗継ぎ警報ブザーが鳴ることによって行われる苗継ぎ作業の際に、苗トレイ９を高く持ち上げることなく苗継ぎを行うことができるので、身長の低い作業者であっても難なく苗継ぎ作業を行うことができる。
【００４４】
また、苗継ぎ位置が降下することによって、苗搬送台63の下端63aの位置も降下させ、苗搬送台63の下端63aが上側搬送チェン66aを被覆するようにしていることによって、苗搬送台63伝体を降下させることができ、従って苗搬送台63の上端63bも降下させることができるので、操作部４で操作を行う作業者の前方視界を良好なものとして作業性を向上させることができる。
【００４５】
さらには、苗搬送台に折り畳み機構などを設ける必要がなくなり、苗搬送台の構成を簡単化及び軽量化することができるとともに、強度的にも強い構成とすることができる。
【００４６】
搬送チェン66は、上述したように、搬送される苗トレイ９の両側にそれぞれ１本ずつ設けているが、両方の搬送チェン66,66ともチェン当接体62aによって屈曲させる必要はなく、どちらか一方のみ、特に、苗継ぎセンサスイッチ51を設けた側の搬送チェン66をチェン当接体62aによって屈曲させるだけでもよい。
【００４７】
このように、チェン当接体62aによって苗継ぎ位置を降下させることができることによって、上部スプロケット65や下部スプロケット64の配設位置や寸法を変更したりして製造コストを大きく増加させることなく、苗継ぎ位置を降下させることができる。
【００４８】
【発明の効果】
本発明によれば、搬送チェンの中途部にチェン当接体を当接させることにより搬送チェンを屈曲させていることによって、苗継ぎ位置を低くすることができる。従って、苗継ぎ作業を容易に行うことができるようにすることができる。
【００４９】
また、苗継ぎ位置を降下させることによって、屈曲した搬送チェンの上部スプロケット側を苗搬送台で一部被覆するように苗搬送台全体を降下させて配設することができるので、苗搬送台の上端の高さも低くすることができ、前方視界を良好とすることができる。さらには、苗搬送台に折り畳み機構などを設ける必要がなくなり、苗搬送台の構成を簡単化及び軽量化することができるとともに、強度的にも強い構成とすることができる。
【００５０】
そのうえ、搬送チェンの巻回された上下部スプロケットの配設位置及び寸法などを変更することなく苗搬送台を降下させて配設することができるので、低コストで苗継ぎ位置を降下させることができる。
【００５１】
さらには、チェン当接体を、機体の機枠に配設したチェン当接体配設板に着脱自在とするとともに、同チェン当接体配設板に沿って前後方向に進退自在とし、チェン当接体の配設位置を調整可能としていることにより、苗トレイの形態に合わせてチェン当接体の搬送チェンの当接位置を調整することができ、様々なタイプの苗トレイに対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る縦送り機構を具備した移植機の側面図である。
【図２】本発明に係る縦送り機構を具備する苗供給機構部の拡大側面図である。
【図３】苗供給機構部の縦送り機構の説明図である。
【符号の説明】
ａ 苗供給機構部
62 チェン当接体配設板
62a チェン当接体
63 苗搬送台
64 下部スプロケット
64a 回転軸
65 上部スプロケット
65a 回転軸
66 搬送チェン
66a 上側搬送チェン
67 係止杆
９ 苗トレイ
91 セル
【発明の属する技術分野】
本発明は、移植機の苗搬送台に載置した苗トレイを、縦送り機構及び横送り機構を具備した搬送装置の縦送り機構によって縦送りする苗トレイ縦送り機構に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来、移植機の一形態として、車輪やエンジンを具備する走行部と、操作ハンドルを具備する操作部と、苗トレイから苗を取出して植付けを行う移植部とを設けた移植機があり、作業者が機体後端部に設けた操作ハンドルを操作して圃場を走行させながら、移植部によって苗を移植可能としている。
【０００３】
移植部は操作部の前方に設けており、側面視において前低後高とした苗搬送台を設け、同苗搬送台下端に搬送装置を配設し、苗搬送台に載置した苗トレイを搬送装置によって前下方に搬送し、苗取出爪によって苗トレイから苗を取出して植付器に送給し、昇降自在とした植付器によって圃場に植付けるようにしている。
【０００４】
特に、苗トレイには、通常、複数行・複数列の行列状態に苗の収容されるポット苗収容部となるセルが設けられているため、１つの苗取出爪に順次苗を送給することができるように、搬送装置は、苗トレイを前下方へ縦方向に送る搬送チェンを具備する縦送り機構と、同縦送り機構を左右横方向に送る横送り軸を具備する往復横送り機構とによって構成している。
【０００５】
搬送チェンは、苗搬送台に載置される苗トレイの左右側の下方となる位置にそれぞれ配設されるようにしており、特に、苗搬送台の下端側に設けた上部スプロケットと、同上部スプロケットよりもさらに下方に配設した下部スプロケットとに巻回させるようにしている。
【０００６】
さらに、搬送チェンには所定間隔で係止杆を突設し、苗搬送台に沿って降下してくる苗トレイを同係止杆で受けるようにしている。特に、苗トレイの裏面側に突出状態に設けたポット苗収容部であるセルの下部側面に同係止杆を係合させることにより、苗トレイを苗搬送台から搬送チェンに受け渡すとともに、下部スプロケットの回転にともなって苗トレイを同下部スプロケット側に縦送りすることができるようにしている。
【０００７】
この苗搬送台から搬送チェンに苗トレイを受け渡す苗搬送台下端部分が、新しい苗トレイを苗搬送台にセットする苗継ぎ作業のタイミングを決定する苗継ぎ位置となっており、同苗継ぎ位置部分にはセンサを配設し、同センサが苗トレイの後端が苗継ぎ位置に達したことを検知すると、苗継ぎ警報を鳴らして作業者に苗継ぎ作業を促すようにしている。
【０００８】
こうすることにより、搬送装置により縦送りされている苗トレイと、苗継ぎ作業によって新たに苗搬送台にセットされる苗トレイとの間に隙間を生起することなく苗継ぎが行われ、連続的にかつ確実に苗取出爪に苗を送給し、植付作業を行うことができるようにしている。
【０００９】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記移植機には、未だ次のような解決すべき課題が残されていた。
【００１０】
すなわち、苗搬送台から搬送チェンへの苗トレイの受け渡し位置が高いため、苗トレイの苗継ぎ位置が高くなり、身長の低い人は苗継ぎ作業を行いにくいという問題があった。
【００１１】
また、苗トレイの継ぎ位置が高いということは、苗搬送台の下端の位置が高いということであり、当然ながら苗搬送台の上端位置もそれにともなって高くならざるを得ないため、操作部で操作を行う作業者の視界を苗搬送台の上端部が遮ることとなり、移動時などに前方視界が悪くなるという問題があった。
【００１２】
さらに、苗搬送台の上端部が上方に大きく伸延していることによって、輸送時に同上端部分において接触が生じやすく、苗搬送台に変形や破損を生じやすいため、苗搬送台の中途部に折り畳み機構を設けるなどの構成が必要となり、構成が複雑になるとともに、製造コストを増加させるという問題があった。
【００１３】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決すべく、本発明では、機体に配設した苗搬送台に苗トレイを載置し、同苗トレイを縦送り機構及び横送り機構を設けた搬送装置によって縦方向及び横方向に搬送しながら苗トレイから苗を取出すようにした苗供給機構部と、同苗供給機構部から供給された苗を圃場に植付可能な植付器を設けた植付機構部とを具備する移植機の苗トレイ縦送り機構であって、苗トレイに設けられたポット苗収容部となっているセルと係合する係止杆を所定間隔で配設した搬送チェンと、同搬送チェンの巻回される上部スプロケットと下部スプロケットとによって構成した苗トレイの縦送り機構において、搬送チェンの中途部にチェン当接体を当接させることにより搬送チェンを屈曲させるようにした。
【００１４】
特に、チェン当接体は、機体の機枠に配設したチェン当接体配設板に着脱自在とするとともに、同チェン当接体配設板に沿って前後方向に進退自在とし、チェン当接体の配設位置を調整可能とした。
【００１５】
従って、苗継ぎ位置を降下させることができるので苗継ぎ作業を行いやすくすることができるとともに、屈曲した搬送チェンの上部スプロケット側を苗搬送台で被覆するように苗搬送台を降下させることができるので、同苗搬送台の上端位置を降下させることができ、作業者の視界が苗搬送台によって塞がれることを防止することができる。
【００１６】
【発明の実施の形態】
本発明では、苗搬送台の苗トレイを縦方向に搬送可能とした縦送り機構、及び、横方向に搬送可能とした横送り機構を設けた搬送装置を具備する移植機の縦送り機構を、上部スプロケットと、下部スプロケットと、同上下部スプロケットに巻回させた搬送チェンとによって構成しているものであり、特に、搬送チェンの中途部にチェン当接体を当接させることにより搬送チェンを屈曲させているものである。従って、搬送チェンへの苗トレイの受け渡し位置を降下させることができるので、苗継ぎ位置を降下させることができるものである。
【００１７】
すなわち、上部スプロケットを取着した回転軸、及び、下部スプロケットを取着した回転軸の配設位置を変更したり、上部スプロケット及び下部スプロケットの形状を変更したりすることなく苗継ぎ位置を降下させることができるものであり、製造コストを上げることなく苗継ぎ位置を低くして、作業性を向上させることができる。
【００１８】
また、苗搬送台全体を降下させることができるので、苗搬送台の上端の高さも低くすることができ、前方視界を良好なものとすることができる。さらには、苗搬送台に折り畳み機構などを設ける必要がなくなり、苗搬送台の構成を簡単化及び軽量化することができるとともに、強度的にも強い構成とすることができる。
【００１９】
特に、前記チェン当接体を、機体の機枠に配設したチェン当接体配設板に着脱自在とするとともに、同チェン当接体配設板に沿って前後方向に進退自在としていることにより、苗トレイの形態に合わせてチェン当接体の搬送チェンの当接位置を調整することができ、様々なタイプの苗トレイにも対応することができる。
【００２０】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を示しながらさらに詳説する。
【００２１】
【実施例】
図１は本実施例に係る移植機Ａの全体側面図、図２は要部となる苗供給機構部ａ部分の拡大側面図である。
【００２２】
本実施例に係る移植機Ａは、機体フレーム10の下部に走行部１を設けるとともに、上部には、前側に原動機部２を、その後方に移植部３を、さらにその後方に操作部４を設けて機体を構成している。そして、作業者が操作部４を操作して、走行部１によって圃場Ｂを走行しながら、移植部３によって圃場Ｂの畝B1にポット苗を連続的に移植可能としている。
【００２３】
走行部１は、機体フレーム10の前部に遊動輪支持アーム12,12を介して左右一対の遊動輪11,11をそれぞれ取付けると共に、後部に伝動ケース14,14を介して左右一対の駆動輪13,13をそれぞれ取付けている。
【００２４】
原動機部２は、エンジン21を搭載するとともに、伝動ベルト22を介して前記走行部１や移植部３に動力を伝達可能としている。23は給油タンク、24はボンネットである。
【００２５】
操作部４は、機体フレーム10の後端部に連設した略Ｊ字状の後部フレーム15の後端にハンドルフレーム40を連設して構成し、同ハンドルフレーム40の周りに各種の操作具を装備している。図中、41は主クラッチレバー、42は植付クラッチレバー、43はサイドクラッチレバー、44は走行主変速レバー、45は株間調節レバー、46はハンドル端部バーである。
【００２６】
移植部３は、機体フレーム10の後部に配設した苗供給機構部ａと、同苗供給機構部ａの直下方位置に配設した植付機構部７とにより構成している。
【００２７】
苗供給機構部ａには、前記後部フレーム15の上方位置に、苗トレイ９を載置する苗搬送台63を側面視で前低後高に配設している。なお、苗トレイ９は、可撓性を有する合成樹脂製で、複数のポット苗収容部となるセル91を形成して構成している。
【００２８】
苗搬送台63には、苗トレイ９を前下方へ縦方向に縦送りする縦送り機構と、同縦送り機構を左右横方向に往復横送りする横送り機構（図示せず）とを配設しており、両送り機構からなる搬送装置は前記エンジン21に連動連結している。
【００２９】
横送り機構は、横送り軸を設けて苗搬送台63を左右横方向へ往復移動可能に構成しており、苗トレイ９をセル91ごとの1ピッチずつ左右横方向に間歇移動させ、横移動終端で逆方向へ横移動させるようにしている。
【００３０】
縦送り機構は、苗供給機構部ａを支持する機枠60（図３参照）に回転自在に横架した回転軸64aの両端に配設した下部スプロケット64と、同じく機枠6 0に回転自在に横架した回転軸65aの両端に配設した上部スプロケット65と、両スプロケット64,65間に巻回した搬送チェン66とによって構成している（図２参照）。符号61は搬送チェン66のカバーケースである。
【００３１】
搬送チェン66には、図３に示すように、側面に係止杆67を突設しており、同係止杆67を苗搬送台63に沿って送給された苗トレイ９の縦搬送方向に並ぶセル91の間に挿入し、同セル91の下部側面に係合させて苗トレイ９を支持するようにしている。そして、下部スプロケット64を間歇回転させることによりセル91ごとの1ピッチずつ苗トレイ９を下部スプロケット64側に縦送りするようにしている。
【００３２】
なお、図３において、符号51は苗継ぎセンサスイッチであり、苗トレイ９の下面側から苗トレイ９に当接させるように付勢された接触板52が、苗トレイ９と非接触状態となる、すなわち、苗トレイ９の後端9aが接触板52部分を通過すると付勢によって接触板52が上動し、苗継ぎセンサスイッチ51をオン状態として苗継ぎ警報ブザーを鳴らすようにしている。また、符号95は苗トレイ押さえ杆であり、苗トレイ９の上面側に当接させるように配設して、苗トレイ９を浮き上がらせることなく搬送するようにしている。
【００３３】
植付機構部７は、エンジン21の後方に植付伝動ケース71を設け、同植付伝動ケース71の上方位置に植付器72を植付伝動ケース71と連動連結して配置している。植付伝動ケース71は、植付器72の後上方位置に配設した前述の苗供給機構部ａとも連動連結している。
【００３４】
前記植付器72は、先細り状とした半割ポット形状の一対の爪を開閉自在に構成しており、前記植付伝動ケース71と連動連結して、上下方向への略楕円軌道Ｌで昇降可能としている。かかる植付器72は、苗供給機構部ａの苗取出爪（図示せず）からポット苗を受け取った後、畝B1に突入時に爪が開いてポット苗を移植することができるようにしている。
【００３５】
73は前側スライドレール、74は後側スライドレールであり、植付機構部７を左右にスライド自在に支持しており、前記操作部４に設けたスライド調節レバー47により調節可能としている。また、75は植付器72の駆動機構、76は鎮圧ローラ、77は同鎮圧ローラ76の支持フレーム、78は植付器72に付着した泥や土を掻き落とすスクレーパである。
【００３６】
以下、図２に基づいて、本発明の要部である苗供給機構部ａの縦送り機構について説明する。
【００３７】
上述したように、縦送り機構は下部スプロケット64と、上部スプロケット65と、両スプロケット64,65間に巻回した搬送チェン66とによって構成している。
【００３８】
そして、本発明では、下部スプロケット64と上部スプロケット65とに巻回した搬送チェン66のうち、苗搬送台63上を送給されてきた苗トレイ９を受け止めることになる上側搬送チェン66aにチェン当接体62aを当接させて押圧することにより、同チェン当接体62aの部分で搬送チェン66を屈曲させるようにしているものである。
【００３９】
チェン当接体62aは、機枠60に配設したチェン当接体配設板62に取着するようにしており、苗トレイ９の形態、特に、セル91の配設ピッチに合わせてチェン当接体62aの位置を前後にずらすことができるようにしている。符号62bは、チェン当接体62aをチェン当接体配設板62に固設するための取着ボルトであり、符号62cは同取着ボルト62bと螺合する固定ナットである。
【００４０】
本実施例では、取着ボルト62bの挿入されるチェン当接体配設板62のネジ孔（図示せず）を前後方向に伸延させた長孔状としておくことにより、チェン当接体62aの位置を前後にずらすことができるようにしている。
【００４１】
チェン当接体62aの位置を前後にずらすことができるようにする構成は、上記の構成に限定するものではなく、適宜の構成としてよい。たとえば、チェン当接体配設板62のネジ孔を長孔状とするのではなく、所定間隔で複数のネジ孔を設けるようにすることもできるし、チェン当接体62aの取着ボルト62bの挿入されるネジ孔（図示せず）を前後方向に伸延させた長孔状としておいてもよい。
【００４２】
さらに、上側搬送チェン66aの屈曲状態を適宜に調整することができるように、突出量を異ならせた複数のチェン当接体62aを必要に応じて交換することができるようにしている。あるいは、チェン当接体62aを進退自在とし、進退させることによって突出量を適宜調整することができるようにすることもできる。チェン当接体62aを進退自在としておくことにより、１つのチェン当接体62aだけで様々に異なる苗トレイ９に合わせて上側搬送チェン66aを屈曲させることができ、作業性を向上させることができる。
【００４３】
チェン当接体62aによって上側搬送チェン66aを屈曲させることにより、苗トレイ９を係止すべく搬送チェン66に設けた係止杆67による苗トレイ９の係止位置を降下させることができるので、苗継ぎ位置を降下させることができる。従って、苗継ぎ警報ブザーが鳴ることによって行われる苗継ぎ作業の際に、苗トレイ９を高く持ち上げることなく苗継ぎを行うことができるので、身長の低い作業者であっても難なく苗継ぎ作業を行うことができる。
【００４４】
また、苗継ぎ位置が降下することによって、苗搬送台63の下端63aの位置も降下させ、苗搬送台63の下端63aが上側搬送チェン66aを被覆するようにしていることによって、苗搬送台63伝体を降下させることができ、従って苗搬送台63の上端63bも降下させることができるので、操作部４で操作を行う作業者の前方視界を良好なものとして作業性を向上させることができる。
【００４５】
さらには、苗搬送台に折り畳み機構などを設ける必要がなくなり、苗搬送台の構成を簡単化及び軽量化することができるとともに、強度的にも強い構成とすることができる。
【００４６】
搬送チェン66は、上述したように、搬送される苗トレイ９の両側にそれぞれ１本ずつ設けているが、両方の搬送チェン66,66ともチェン当接体62aによって屈曲させる必要はなく、どちらか一方のみ、特に、苗継ぎセンサスイッチ51を設けた側の搬送チェン66をチェン当接体62aによって屈曲させるだけでもよい。
【００４７】
このように、チェン当接体62aによって苗継ぎ位置を降下させることができることによって、上部スプロケット65や下部スプロケット64の配設位置や寸法を変更したりして製造コストを大きく増加させることなく、苗継ぎ位置を降下させることができる。
【００４８】
【発明の効果】
本発明によれば、搬送チェンの中途部にチェン当接体を当接させることにより搬送チェンを屈曲させていることによって、苗継ぎ位置を低くすることができる。従って、苗継ぎ作業を容易に行うことができるようにすることができる。
【００４９】
また、苗継ぎ位置を降下させることによって、屈曲した搬送チェンの上部スプロケット側を苗搬送台で一部被覆するように苗搬送台全体を降下させて配設することができるので、苗搬送台の上端の高さも低くすることができ、前方視界を良好とすることができる。さらには、苗搬送台に折り畳み機構などを設ける必要がなくなり、苗搬送台の構成を簡単化及び軽量化することができるとともに、強度的にも強い構成とすることができる。
【００５０】
そのうえ、搬送チェンの巻回された上下部スプロケットの配設位置及び寸法などを変更することなく苗搬送台を降下させて配設することができるので、低コストで苗継ぎ位置を降下させることができる。
【００５１】
さらには、チェン当接体を、機体の機枠に配設したチェン当接体配設板に着脱自在とするとともに、同チェン当接体配設板に沿って前後方向に進退自在とし、チェン当接体の配設位置を調整可能としていることにより、苗トレイの形態に合わせてチェン当接体の搬送チェンの当接位置を調整することができ、様々なタイプの苗トレイに対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る縦送り機構を具備した移植機の側面図である。
【図２】本発明に係る縦送り機構を具備する苗供給機構部の拡大側面図である。
【図３】苗供給機構部の縦送り機構の説明図である。
【符号の説明】
ａ 苗供給機構部
62 チェン当接体配設板
62a チェン当接体
63 苗搬送台
64 下部スプロケット
64a 回転軸
65 上部スプロケット
65a 回転軸
66 搬送チェン
66a 上側搬送チェン
67 係止杆
９ 苗トレイ
91 セル
Claims (1)
- 機体に配設した苗搬送台(63)に苗トレイ(9)を載置し、同苗トレイ(9)を縦送り機構及び横送り機構を設けた搬送装置によって縦方向及び横方向に搬送しながら苗トレイ(9)から苗を取出すようにした苗供給機構部(a)と、同苗供給機構部(a)から供給された苗を圃場に植付可能な植付器(72)を設けた植付機構部(7)とを具備する移植機の苗トレイ縦送り機構であって、
苗トレイ(9)に設けられたポット苗収容部となっているセル(91)と係合する係止杆(67)を所定間隔で配設した搬送チェン(66)と、同搬送チェン(66)の巻回される上部スプロケット(65)と下部スプロケット(64)とによって構成した苗トレイ(9)の縦送り機構において、
搬送チェン(66)の中途部にチェン当接体(62a)を当接させることにより搬送チェン(66)を屈曲させて、
前記チェン当接体(62a)は、機体の機枠(60)に配設したチェン当接体配設板(62)に着脱自在とするとともに、同チェン当接体配設板(62)に沿って前後方向に進退自在とし、チェン当接体(62a)の配設位置を調整可能としていることを特徴とする移植機の苗トレイ縦送り機構。
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