JP4646391B2 - ガスセンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジルコニア固体電解質と一対の電極とを具備する検知部を具備する、例えば自動車の排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサ素子、あるいは窒素酸化物濃度を検出するNOxセンサ素子を金属製のケース体内に収納してなるガスセンサに関し、特に耐熱特性、高信頼性を要求されるガスの気密封止構造の改良に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来のガスセンサの構造を図4を用いて説明する。図4(a)は、酸素濃度を検知する平板型のヒータ一体型のセンサ素子41の概略断面図を示したものである。酸素イオン伝導性の板状の固体電解質42aが空気導入孔43を囲むように形成され、固体電解質42aの外表面にはPtからなる測定電極44、空気導入孔43側にはPtからなる基準電極45が形成され、これらの部分が周囲の雰囲気中の酸素濃度を検知する検知部を形成している。これらの電極44、45は、互いに固体電解質42aにより気密に隔離され、電極44、45間の酸素濃度の比に従った起電力が発生するようになっている。また、空気導入孔43を挟んで対向する固体電解質42bには、酸化アルミニウムからなる絶縁層46に挟まれた発熱抵抗体47が内蔵され、これにより検知部を加熱する構造となっている。
【0003】
また、このような平板型のセンサ素子41は、金属ケース48内に収納されて自動車などに装着される。その際、固体電解質42aの外表面に形成された測定電極44は、大気とは完全に遮断されることが必要であるために、金属ケース48内でセンサ素子41は大気と接触しないようなシールが行なわれている。
【0004】
例えば、特表2000−511645号公報によれば、図4(b)に示すように、センサ素子41を通じせしめる2つのセラミック部材49a、49bの間にセラミック粉末から成るシール材50を充填し、前記セラミック部材49a、49bを加圧することでガス気密性を確保する構造が提案されている。
【0005】
また、他のシール構造としては、Al2O3などのセラミックスからなる封止部材をセンサ素子にケイ酸塩ガラスなどを用いて接合し、この封止部材を金属ケースとの間に介在させることが、特表2000−509823号などにて提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図4(b)のような、セラミック粉末を用いたガスシール構造では、自動車の走行中の振動により、センサ素子41とセラミック部材49a、49bとの隙間部から前記加圧されたセラミック粉末からなるシール材50が漏れ落ち、その結果、センサ素子に対して、基準用大気と被測定ガスとが混ざるという測定センサに致命的な問題があった。
【0007】
また、ガラスによって接合する方法では、ガラスによる接合工程が別途必要となるとともに、接合信頼性を高めるために精度の高い接合技術が必要となるなどの問題があった。
【0008】
従って、本発明は、過酷な環境下でも優れた耐久性を有するとともに、ケース体に取り付けた場合に気密封止性の高い封止構造を形成可能なガスセンサを提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のガスセンサは、円筒型の固体電解質基体の先端付近の内外両主面に一対の電極を形成してなる、酸素濃度または窒素酸化物濃度を検知する検知部と、前記固体電解質基体の外表面に形成されたセラミック絶縁層内に前記検知部を加熱するための発熱抵抗体を埋設してなる加熱部と、前記固体電解質基体の後端付近に設けられた端子部とを具備するセンサ素子を、ケース体内に収納してなる円筒型のガスセンサにおいて、前記検知部と前記端子部との間に前記ケース体との隙間を気密に封止するためのセラミック部材を前記検知部および加熱部との同時焼成によって一体的に形成したことを特徴とする。
【0010】
なお、同時焼結性の点から前記セラミック部材は、ZrO2を主成分とするセラミックスからなることが望ましい。また、前記セラミック部材と前記ケース体との接触部分にシール材を介在せしめることによってさらにシール性を高めることができる。
【0011】
さらに、前記センサ素子における前記セラミック部材との接合部よりも先端側の外全面にセラミック多孔質層を被覆することによってセンサ素子の耐久性を高めることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のガスセンサの一例を示す図面を参照しながら本発明を説明する。図1は、ガスセンサの一例を示す概略斜視図(a)と、そのA−A断面図(b)である。但し、(a)では説明の便宜上、セラミック保護層13を省略した。
【0013】
図1のセンサ素子1は、酸素イオン導電性を有するジルコニアセラミック固体電解質からなり、先端が封止された円筒管2の内面に、第1の電極として、空気などの基準ガスと接触される基準電極3が被着形成され、また、円筒管2を挟んで基準電極3と対向する位置に第2の電極として、排気ガスなどの被測定ガスと接触する測定電極4が被着形成されている。そして、基準電極3、ジルコニア固体電解質からなる円筒管2および測定電極4によって検知部を形成している。
【0014】
そして、先端が封止された円筒管2の外面には、Al2O3などのセラミック絶縁層6が被着形成されており、そのセラミック絶縁層6には、測定電極4の一部または全部が露出するように開口部7が形成されている。
【0015】
また、上記開口部7の周囲のセラミック絶縁層6中には検知部を加熱するためのPt等からなる発熱抵抗体8が埋設されている。また、セラミック絶縁層6の表面には、発熱抵抗体8による加熱効率を高めるために、Al2O3等からなるセラミック保温層9が形成されている。
【0016】
円筒管2の内面に形成された基準電極3は、円筒管2の開口端面を経由して円筒管2の外表面に設けたセンサ用端子部11aに接続されている。一方、円筒管2の外面に形成された測定電極4は、セラミック絶縁層6に形成された開口部7の端面を経由してセラミック保温層9の表面に形成されたリード部10に接続され、セラミック保温層9の表面に形成された端子部11bと接続されている。なお、円筒管2において上記端面に存在するエッジ部は、C面取りされ、エッジ部で生じる電気的接続の不良を回避している。
【0017】
なお、セラミック保温層9の表面に形成されたリード部10の表面にはさらにZrO2等からなる保護層12が形成されている。この保護層12によって、リード部10を、例えば素子のアッセンブル時の引っかき、あるいは素子の落下時の異物との衝突等の物理的な破壊から保護することができる。このセラミック保護層12は固体電解質と同じZrO2で構成することが固体電解質との熱膨張差による応力の発生を防止する上で好ましい。さらに、少なくとも検知部の表面は、多孔質のセラミック保護層13によって被覆されている。
【0018】
また、センサ用端子部11a,11bには、外部回路との接続のための金属部材14がそれぞれロウ材15によってロウ付け固定されている。これによって、検知部において発生した検知データをリード部10、センサ用端子部11a,11bおよび金属部材14を経由して外部回路に接続される。
【0019】
一方、セラミック絶縁層6内に形成された発熱抵抗体8は、同じくセラミック絶縁層6内に形成されたリード部16と、セラミック絶縁層6およびセラミック保温層9を貫通して形成された貫通導体(図示せず)によって、セラミック保温層9の外表面に形成されたヒータ用端子部18と電気的に接続されている。そして、端子部18上には発熱用外部電源と接続するための金属部材19がロウ材20により固定され、これらを通じて発熱抵抗体8に電流を通ずることにより、発熱抵抗体8が加熱され、測定電極4、円筒管2および基準電極3からなる検知部を所定の温度に急速昇温される。
【0020】
さらに、本発明によれば、上記のセンサ素子1の検知部と端子部11、18との間のほぼ中央部には、このセンサ素子1を後述する金属ケースに対して封止固定するためのセラミック部材21が取り付けられている。なお、このセラミック部材21は、センサ素子1と同時焼成によって形成されていることが重要であって、これによってセンサ素子1とセラミック部材21とは強固に、且つセラミック部材21とセンサ素子1との隙間なく取り付けることができる。
【0021】
そこで、図2に、センサ素子1を金属ケースに固定した時の構造を説明するために金属ケースを切り欠いた概略断面図を示す。図2によれば、金属ケース22の内部にセンサ素子1を挿入し、センサ素子1をプレスにて押し込み、金属ケース22に形成されたフランジ部23の内壁23aに対して、セラミック部材21の角部24を接触させるとともに、フランジ部材23に形成された溝部25によって、金属ケース22aをかしめ、固定することで、ガス気密性を廉価に確保することが可能となり、測定センサの製造コストを大幅に低減することが可能となるのである。
【0022】
また、この時のセラミック部材21とフランジ部材23の内壁23aとの間にアスベストパッキンや、Ni被覆銅パッキン等の公知のシール材26を介在させることによって気密封止性を高めることができる。また、セラミック部材21の角部24は取り扱い時に欠けなどが発生するのを防止するためにC面などの面取りを施すことが望ましく、さらに、金属ケース22の内壁23a側にも同一角度のテーパを形成しそれらを当接、圧着することによって応力集中を回避でき、前記セラミック部材21の破壊を防止することが可能となる。
【0023】
さらに、本発明のセンサ素子1によれば、検知部の外表面には、セラミック保護層13が形成されるが、上記のセンサ素子1の取付け構造から明らかなように、セラミック部材21よりも先端側は、被測定ガスに晒されるために、セラミック部材21よりも先端側のセンサ素子1の表面全面に、セラミック保護層13を形成することが望ましい。これによって、センサ素子1における被測定ガスに晒される部分の耐久性を高めることができる。
【0024】
本発明によれば、セラミック部材21を前記センサ素子1の本体と一体焼結して形成されるものであるために、セラミック部材21の材質はセンサ本体と同時焼成可能なセラミック材料からなることが必要である。用いられるセラミック材料としては、ZrO2、SiO2、MgO、Y2O3および希土類元素酸化物、CaO、Al2O3のうちの1種以上の金属酸化物系セラミックスが挙げられるが、特にZrO2を主体とするセラミックスからなること、さらには3〜15mol%の希土類元素酸化物またはMgOまたはCaOで安定化されたZrO2セラミックスが好適に用いられる。
【0025】
本発明において、円筒管2を形成するのに用いられるセラミック固体電解質は、ZrO2を含有するセラミックスからなり、具体的には、Y2O3およびYb2O3、Sc2O3、Sm2O3、Nd2O3、Dy2O3等の希土類酸化物を酸化物換算で1〜30モル%、好ましくは3〜15モル%含有する部分安定化ZrO2あるいは安定化ZrO2が用いられている。
【0026】
また、ZrO2中のZrを1〜20原子%をCeで置換したZrO2を用いることにより、電子伝導性が大きくなり、応答性がさらに改善されるといった効果がある。
【0027】
さらに、焼結性を改善する目的で、上記ZrO2に対して、Al2O3やSiO2を添加含有させることができるが、多量に含有させると、高温におけるクリープ特性が悪くなることから、Al2O3およびSiO2の添加量は総量で5重量%以下、特に3重量%以下であることが望ましい。
【0028】
また、固体電解質中のNaの含有量としては、固体電解質からセラミック絶縁層への拡散進入を防止する観点からは200ppm以下、特に100ppmが望ましい。
【0029】
一方、発熱抵抗体8を埋設するセラミック絶縁層6としては、アルミナおよび/またはマグネシアを含有する酸化物、特に、アルミナ材料、スピネル材料、あるいはアルミナとスピネルとの複合化合物材料が好適に用いられる。この際、セラミック絶縁層の焼結性を改善する目的で、少量Si成分を添加することが望ましいが、その含有率としては酸化物換算で0.1重量%以上でその効果が見られるが、Siの含有量が、5重量%を越えるとセラミック絶縁層中のNaの拡散と偏析が促進され、白金等からなる発熱抵抗体の寿命が低下しやすいため、Si含有量は0.1〜5重量%の範囲が望ましい。Si含有量としては、0.5〜3重量%が望ましい。特に、0.5〜2重量%がNaの拡散を防止する観点から望ましい。
【0030】
また、このセラミック絶縁層6は、相対密度が80%以上、開気孔率が5%以下の緻密質なセラミックスによって構成されていることが望ましい。これは、セラミック絶縁層6が緻密質であることにより絶縁層の強度が高くなる結果、酸素センサ自体の機械的な強度を高めることができるためである。さらに、セラミック絶縁層6中のNaの含有量は、50ppm、特に30ppm以下とすることがヒータの寿命を延ばすために望ましい。
【0031】
また、上記セラミック絶縁層6の内部に埋設される発熱抵抗体8としては、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウムの群から選ばれる1種の金属、または2種以上の合金からなることが望ましく、特に、セラミック絶縁層6との同時焼結性の点で、そのセラミック絶縁層6の焼成温度よりも融点の高い金属または合金を選択することが望ましい。
【0032】
また、発熱抵抗体8中には上記の金属の他に焼結防止と絶縁層との接着力を高める観点からアルミナ、スピネル、アルミナ/シリカの化合物、フォルステライトあるいは上述の電解質となり得るジルコニア等を体積比率で10〜80%、特に30〜50%の範囲で混合することが望ましい。
【0033】
発熱抵抗体8を埋設したセラミック絶縁層6の表面に形成されるセラミック保温層9は、ジルコニアセラミックスからなることが望ましい。このジルコニアからなるセラミック保温層9は、固体電解質とセラミック絶縁層6間の熱膨張差や焼成収縮差等に起因する応力を緩和させ、熱応力をできる限り小さくすることができる。この際、円筒管2と発熱抵抗体8の間とセラミック保温層9と発熱抵抗体8の間の距離はそれぞれ2μm以上であることが望ましい。
【0034】
円筒管2の内面および外面に被着形成される基準電極3、測定電極4は、いずれも白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウムおよび金の群から選ばれる1種、または2種以上の合金が用いられる。また、センサ動作時の電極中の金属の粒成長を防止する目的と、応答性に係わる金属粒子と固体電解質と気体との、いわゆる3相界面の接点を増大する目的で、上述のセラミック固体電解質成分を1〜50体積%、特に10〜30体積%の割合で上記電極中に混合してもよい。
【0035】
また、本発明においては、この開口部7に露出している測定電極4の形状は特に限定するものではなく、また、開口部7は、円筒管2における対照な位置となる2箇所に設けると熱衝撃性を改善することができる。開口部7の広がりとしては、円筒管2の断面の中心に対して30〜90度の範囲とすることにより、開口部7の周囲への熱応力の発生を抑制し、また、発熱抵抗体8による加熱効率を高めることができる。この開口部7は40〜80度の範囲が特に優れる。
【0036】
一方、固体電解質からなる円筒管2の内面に形成される基準電極3は、測定電極4の前記開口部7より露出する部分に対向する内面部分に形成されていればよく、測定電極4の露出部面積よりも大きい面積、例えば、円筒管2の内面全面に成されていてもよい。
【0037】
本発明の酸素センサにおいては、図1(b)に示すように、開口部7内にて露出している測定電極4の表面に、多孔質のセラミック保護層13が形成されるが、このセラミック保護層13は、以下の2つの目的で形成される。第1に、排気ガスによって測定電極4が被毒して出力電圧が低下するのを防止することを目的として設けるものであり、露出した測定電極4の表面にジルコニア、アルミナ、マグネシアあるいはスピネル等のポーラスな保護層として形成される。このような保護層を設けた酸素センサは、一般的には理論空燃比センサ(λセンサ)素子として用いることができる。この場合に、セラミック保護層13としては開気孔率が10〜40%の多孔質体からなることが望ましい。
【0038】
第2に、露出した測定電極4の表面に微細な細孔を有するジルコニア、アルミナ、スピネル、マグネシアまたはγ−アルミナの群から選ばれる少なくとも1種のガス拡散律速層として機能させる。このようなガス拡散律速層となるセラミック保護層13としては、開気孔率が5〜30%の多孔質体が望ましい。
【0039】
また、このガス拡散律速層となるセラミック保護層13の表面には、さらに排気ガスの被毒を防止する観点から、前述したアルミナあるいはスピネルからなるセラミック保護層を設けることもできる。この様なヒータ一体型酸素センサは、後で述べる広域空燃比センサ素子(A/Fセンサ)として応用することが可能である。
【0040】
次に、本発明の酸素センサの製造方法について、図1のガスセンサの製造方法を例にして説明する。
(1)まず図3(a)に示すような一端が封止された中空の円筒管32を作製する。この円筒管32は、ジルコニア等の酸素イオン伝導性を有するセラミック固体電解質粉末に対して、適宜、成形用有機バインダーを添加して押出成形や、静水圧成形(ラバープレス)あるいはプレス形成などの周知の方法により作製される。
【0041】
この時、用いられる固体電解質粉末としては、ジルコニア粉末に対して、安定化剤としてY2O3およびYb2O3、Sc2O3、Sm2O3、Nd2O3、Dy2O3等の希土類酸化物粉末を酸化物換算で1〜30モル%、好ましくは3〜15モル%の割合で添加した混合粉末、あるいはジルコニアと上記安定化剤との共沈原料粉末が用いられる。また、ZrO2中のZrを1〜20原子%をCeで置換したZrO2粉末、または共沈原料を用いることもできる。さらに、焼結性を改善する目的で、上記固体電解質粉末に、Al2O3やSiO2を5重量%以下、特に3重量%以下の割合で添加することも可能である。
【0042】
(2)そして、上記固体電解質からなる円筒管32の内面および外面に、基準電極および測定電極となるパターン33、34を例えば、白金を含有する導電性ペーストを用いてスラリーデッィプ法、あるいはスクリーン印刷、パット印刷、ロール転写で形成する。この時、円筒管32内面への基準電極33の印刷は、導体ペーストを充填して排出して、内面全面に塗布形成することが効率がよい。このようにしてセンサ素体Aを作製する。
【0043】
(3)次に、図3(b)に示すようなヒータ素体Bを形成する。ヒータ素体Bは、まず、ジルコニア粉末を用いて、適宜成形用有機バインダーを添加してスラリーを調製し、このスラリーを用いてドクターブレード法、押し出し成形法、プレス法などにより所定厚さのセラミック絶縁層35を形成するためのグリーンシートを作製する。グリーンシート1枚の厚みは、シートの取り扱いの観点から50〜500μm、特に100〜300μmの範囲が特に好ましい。
【0044】
その後、成形したグリーンシート表面に、アルミナ、スピネルあるいはアルミナとスピネルの複合酸化物粉末をスクリーン印刷法、パット印刷法、ロール転写法等により印刷し、この後、白金粉末を含む導電性ペーストをスクリーン印刷法、パット印刷法、ロール転写法等により印刷してリード部を含めた白金ヒータパターンを塗布した後、その上にさらにもう一度上記のセラミック絶縁層形成粉末を塗布して、セラミック絶縁層35内に発熱抵抗体36を埋設したシート状のヒータ積層体を得る。その後、ヒータ積層体に開口部37をパンチングなどによって形成する。
【0045】
(4)次に、図3(c)に示すように、上記円筒状のセンサ素体Aの表面に、ヒータ素体Bを巻き付けて円筒状積層体を作製する。この際、ヒータ素体Bをセンサ素体Aに巻き付けるには、ヒータ素体Bとセンサ素体Aとの間にアクリル樹脂や有機溶媒などの接着剤を介在させて接着させたり、あるいはローラ等で圧力を加えながら機械的に接着させたりすることができる。この時、巻き付けされたヒータ素体Bの合わせ目は、焼成時の収縮を考慮し、シート端部同志を重ねるか、あるいは所定の間隔をおいて接着してもよい。
【0046】
(5)その後、図3(d)に示すように、このセンサ素体Aにヒータ素体Bを巻き付けた成形体を、予めZrO2などのセラミック組成物をプレス成形して作製した円筒状のセラミック部材21用成形体38の開口39に所定の位置まで差し込み、さらに、両者間に生じる隙間部にスラリーを充填する。
【0047】
その際に、両者の隙間部に充填されるスラリーとしては、上記セラミック部材21と同一原料の他に、Y2O3−SiO2−Al2O3複合酸化物も好適に利用される。例えば、重量換算でY2O320〜53重量%、Al2O310〜34重量%、SiO224〜60重量%の組成範囲とすると、融点1500℃以下のガラス状セラミックスを形成しやすく、ガス気密な接合をもたらす。また、他の充填用セラミック材料としては、3〜15mol%の希土類元素酸化物で安定化されたZrO2総重量100重量部に対し、Y2O3、Yb2O3、Sc2O3、Sm2O3、Gd2O3、CeO2等の希土類酸化物あるいはCaOのうち少なくとも1種以上を0〜50重量部添加すると、前記セラミック部材21と前記センサ素子1の本体との接合性がさらに改善され望ましい。また、前記ZrO2総重量100重量部に対して、SiO2を0〜10重量部添加しても強固な接合を得ることが可能となる。
【0048】
(6)そして、上記の円筒状積層体を、それぞれの構成要素が同時に焼成可能な温度で焼成することにより一体化することができる。焼成は、例えば、アルゴンガス等の不活性雰囲気中あるいは大気中1300〜1700℃で1〜10時間程度焼成することによりヒータ素体Bとセンサ素体Aとを同時焼成することができる。
【0049】
なお、上記の製造方法では、基準電極33および測定電極34を円筒管32形成時に塗布したが、これらの電極の形成は、電極を有しない円筒管32の表面にヒータ素体Bを巻き付けて円筒状積層体を作製した後、円筒状積層体に対して、電極ペーストをスクリーン印刷、パット印刷、ロール転写法あるいは浸漬法によって円筒管32の内面およびヒータ素体Bにおける開口部37内の円筒管32表面に塗布するか、またはスパッタ法やメッキ法にて形成することもできる。
【0050】
さらに、図1のセラミック保護層13を形成するには、焼成後に、アルミナ、スピネル、ジルコニア等の粉末をゾルゲル法、スラリーディップ法、印刷法などによって印刷塗布し、焼き付け処理したり、上記セラミックスをスパッタ法あるいはプラズマ溶射法により被覆したりして形成するか、または、円筒状積層体を作製する際に予めセラミック保護層13を形成するスラリーを塗布した後に、同時に焼成し形成することも可能である。
【0051】
上記の製造方法によれば、1回の焼成工程でセンサ、ヒータ、セラミック部材の一体物を作製することができ、別途接合工程を必要としないことから、製造歩留りや製造コストの低減を図ることができるために非常に好ましい。
【0052】
【実施例】
ここでは、金属ケース内に設置した本発明のガスセンサのガスシール性を調べた。まず、評価用サンプルの作製にあたり、以下のものを準備した。
a)共沈法により作製した5モル%Y2O3含有のZrO2粉末
b)MgO含有量が10ppm以下の微粒Al2O3粉末
c)Al2O3を10体積%含有するPtペースト
d)5モル%Y2O3含有のZrO2粉末を30体積%含有するPtペースト
e)5モル%Y2O3含有のZrO2粉末を40体積%含有するPtペースト
なお、上記e)のPtペーストに使用されたZrO2粉末の粒径は、平均2次粒径(D50)で2μmとした。
【0053】
まず、a)のZrO2粉末にポリビニルアルコール溶液を添加して坏土を作製し、押出成形により外径が約4mm、内径が2.3mmの円筒管を作製し、さらに先端にZrO2の坏土を充填して一端が封止された円筒管2を作製した。
【0054】
また、a)のZrO2粉末に、アクリル系のバインダーを所定量添加しスラリーを作製した後、ドクターブレード法により200μm厚みのZrO2のセラミック保護層9用のグリーンシートを作製した。
【0055】
セラミック保護層9用のグリーンシートの表面に、上記b)のAl2O3粉末からなるスラリーを焼成後に約10〜15μmの厚みになるように塗布した。そして、そのAl2O3からなるセラミック絶縁層6の表面に、発熱抵抗体8と抵抗体用のリード部16を上記c)のPtペーストを用いてスクリーン印刷により形成した。さらにリード部16の所定の位置に、パンチングにより貫通孔を開け、d)のPtペーストを充填した。
【0056】
次に、セラミック保護層9用のグリーンシートを反転させ、測定電極4と接続されるリード部10、測定電極4と接続される端子部11b、ヒータ用端子部18をそれぞれd)あるいはe)のPtペーストを用いて、所定の位置にスクリーン印刷により形成した。なお、測定電極4と接続されるリード部10上には、セラミック保護層12として、グリーンシートを形成する前述のa)のZrO2スラリーと同一のスラリーを、焼成後、約15〜20μmの厚みとなるようにスクリーン印刷した。
【0057】
この後、再度グリーンシートを反転させ、前記発熱抵抗体8がAl2O3のセラミック絶縁層6に内包されるように、前記c)のAl2O3粉末からなるスラリーを焼成後、約10〜15μmとなるように塗布した。
【0058】
以上、各印刷体が積層したグリーンシート(以下、シート状積層体と称する)シート状積層体のうち、測定電極4を形成する領域をパンチングにより開口し、開口部7を形成した後、上記の円筒管2の表面に、接着層としてアクリル系樹脂に上記の5モル%Y2O3含有のZrO2粉末を分散させた密着液を用いて巻き付け、円筒状積層体を作製した。
【0059】
また、5mol%の希土類元素酸化物により安定化されたZrO2セラミック粉末を略円筒形状にプレス成形してセラミック部材21用成形体を作製し、この成形体の内壁に沿うように、円筒状積層体を所定の位置まで差し込み、さらに、両者間に生じる隙間部にこのセラミック部材用成形体と同一原料から成るスラリーを充填した。
【0060】
その後、大気中にて、1400〜1500℃で2時間焼成し、一体化した。
【0061】
焼成後、不活性雰囲気中にて所定温度でセンサ用端子部およびヒータ用端子部上にAu−Cuロウ材によりφ0.6mmのNi線からなる金属部材を、ロウ材曲率半径0.6mmとなるように固定した。
【0062】
さらに、その後、プラズマ溶射法を用いてスピネルからなる気孔率が約30%のセラミック保護層を約100μmの厚みになるように、セラミック部材よりも先端側のセンサ素子の全面に被覆して本発明のガスセンサを作製した。なお、焼成後、センサ素子の外径は3.0〜3.1mmであり、内径は1.7〜1.8mmであった。
【0063】
かくして得られたガスセンサを、図2に示すような構造で、アスベストパッキンを介して、金属ケース内に収納し、プレス押し込みをしながら、かしめ固定することで評価用ガスセンサを得た。
【0064】
この評価用ガスセンサを所定のガス加圧治具に設置し、金属ケースの検知部側からHeガスを2kgf/cm2の圧力で30分間加圧し、端子部側へのガスリーク量を測定した。その結果、最大ガスリーク量で0.1cc/min以下の優れた気密性を示した。
【0065】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のガスセンサは、ケース体に対して気密封止を担うセラミック部材をヒータを具備するセンサ素子と同時焼成によって一体的に形成することによって、セラミック部材とセンサ素子との間を高い気密性で接合形成できる。しかも、セラミック部材を接合する工程が不要となるためにガスセンサの製造工程の簡略化と低コスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガスセンサの一実施態様を説明するための(a)概略斜視図と、(b)A−A断面図である。
【図2】図1のガスセンサを金属ケースに収納したときの概略断面図である。
【図3】本発明のガスセンサを製造する方法の一例を説明するための工程図である。
【図4】従来の(a)平板型センサ素子の概略断面図と、(b)それを金属ケースに収納した時の構造を説明するための概略断面図である。
【符号の説明】
1 センサ素子
2 円筒管(固体電解質基体)
3 基準電極
4 測定電極
6 セラミック絶縁層
7 開口部
8 発熱抵抗体
9 セラミック保温層
13 セラミック保護層
21 セラミック部材
Claims (4)
- 円筒型の固体電解質基体の先端付近の内外両主面に一対の電極を形成してなる、酸素濃度または窒素酸化物濃度を検知する検知部と、前記固体電解質基体の外表面に形成されたセラミック絶縁層内に前記検知部を加熱するための発熱抵抗体を埋設してなる加熱部と、前記固体電解質基体の後端付近に設けられた端子部とを具備するセンサ素子を、ケース体内に収納してなる円筒型のガスセンサにおいて、前記検知部と前記端子部との間に前記ケース体との隙間を気密に封止するためのセラミック部材が、前記検知部および前記加熱部との同時焼成によって一体的に形成されてなることを特徴とするガスセンサ。
- 前記セラミック部材が、ZrO2を主成分とするセラミックスからなることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
- 前記セラミック部材と前記ケース体との接触部分にシール材を介在せしめたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスセンサ。
- 前記センサ素子における前記セラミック部材との接合部よりも先端側の外全面にセラミック多孔質層を被覆してなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のガスセンサ。
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