本発明は、超音波流量計に関し、詳しくは超音波を利用して流体の流速や流量を計測する超音波流量計に関する。具体的には、ガスメータ,水道メータ,ガス流量計等の分野で、流体の流量の管理および制御に使用される超音波流量計に関する。
従来、都市ガス,LPG,水などの流体の流量を計測する流量計として、超音波を利用して流速や流量を計測する超音波流量計が知られている。その計測原理として、一般には「伝搬時間差法」が用いられる。これは、流路の流体流れ方向上手側および下手側に一対の超音波トランスジューサを設け、超音波の送受信を交互に切り替えて、流れ方向上手側の超音波トランスジューサから発射された超音波が流れ方向下手側の超音波トランスジューサに到達するまでの時間(以下、順方向伝搬時間という)と、流れ方向下手側の超音波トランスジューサから発射された超音波が流れ方向上手側の超音波トランスジューサに到達するまでの時間(以下、逆方向伝搬時間という)とを計測して、両者の差から流路を流れる流体の平均流速と、平均流速に流路断面積を乗算することで流量とを求める方法である(例えば、特許文献1参照)。
いま、順方向伝搬時間をTj、逆方向伝搬時間をTg、静止流体中の音速をC、計測流体の流速をV、超音波の伝搬距離(一対の超音波トランスジューサ間距離)をLとすると、下式(1)および(2)が得られる。
Tj=L/(C+V) ・・・(1)
Tg=L/(C−V) ・・・(2)
式(1)および(2)より、流速Vが下式(3)のように求められる。
V=L{(1/Tj)−(1/Tg)}/2 ・・・(3)
そして、流量Q1が、流路の断面積S、計測時間間隔等を考慮した補正係数Hを用いて、下式(4)で求められる。
Q1=V・S・H ・・・(4)
また、前回までの積算流量Q0を用いれば、積算流量Qは、Q=Q0+Q1で求められる。
特許第2828615号公報
従来、この種の超音波流量計は、工場出荷時に、流体の遮断弁を閉じた状態(流量0の状態)で一対の超音波トランスジューサ間における順方向伝搬時間および逆方向伝搬時間を計測し、同じ伝搬時間が得られるかどうかに基づいて校正(キャリブレーション)を行なう必要があるかどうかを検出し、必要がある場合には校正を行なっていた。
しかし、超音波トランスジューサは、送受信時の遅延特性、即ち、電気−機械・機械−電気変換特性の経年的な遅延特性変動(ドリフト)が生じることが知られている。すなわち、超音波トランスジューサは、圧電セラミック,音響整合層,支持体,ダンパ等が接着剤で接合されて構成されているので、接着剤が経年変化で劣化したり、圧電セラミックや音響整合層が使用劣化したりすると、送受信時の遅延特性が劣化していた。
このため、超音波流量計が工場から出荷され、フィールドに取り付けられてから時間が経過すると、一対の超音波トランスジューサの遅延特性が経年変化により変動し、互いの遅延特性が規定の範囲から外れてしまう経年的な遅延特性変動(ドリフト)が発生していた。特に、微少流量の計測時のように一対の超音波トランスジューサ間の遅延特性差による影響が無視できない場合、一対の超音波トランスジューサ間の遅延特性のズレ量を何らかの手段により補正しなければならなかったが、従来は、経年的な遅延特性変動の影響を十分に補正する良い手法が無かったため、一対の超音波トランスジューサの経年的な遅延特性変動に対する補正は行なわれていなかった。この結果、計測精度が低下してしまい、超音波流量計の信頼性を低下させてしまうことが懸念されていた。
そこで、本発明の課題は、計測周波数の変化は、流速には影響しないが、超音波の伝搬時間に影響することに着目し、流体の流れを完全に停止させなくても(流量があっても)、計測周波数を変化させて順方向伝搬時間および逆方向伝搬時間を計測することによって、超音波トランスジューサの経年的な遅延特性変動を補正できるようにした超音波流量計を提供することにある。
また、本発明の課題は、工場出荷後に、即ちフィールド上で、一定期間毎に補正検査を自動的に行なう超音波流量計を提供することにある。
さらに、本発明の課題は、計測周波数を変化させて、計測周波数間の順方向伝搬時間差および逆方向伝搬時間差に基づいて補正の必要の有無を判断し、必要がある場合に補正を行なうようにした超音波流量計を提供することにある。
さらにまた、本発明の課題は、高精度の補正を行なうことが可能であり、長期的にも極めて計測精度が高く、計測における信頼性も著しく向上させることができる超音波流量計を提供することにある。
課題を解決するための手段および発明の効果
本発明の超音波流量計は、流路の流体流れ方向上手側および下手側に一対の超音波トランスジューサを設け、超音波の送受信を交互に切り替えて、流れ方向上手側の超音波トランスジューサから発射された超音波が流れ方向下手側の超音波トランスジューサに到達するまでの順方向伝搬時間と、流れ方向下手側の超音波トランスジューサから発射された超音波が流れ方向上手側の超音波トランスジューサに到達するまでの逆方向伝搬時間とを計測して、両者の差から流路を流れる流体の平均流速を求め、平均流速に流路断面積を乗算することで流量を求める超音波流量計において、前記一対の超音波トランスジューサが設置された時において、複数の計測周波数を定めて、前記一対の超音波トランスジューサ間の順方向伝搬時間および逆方向伝搬時間の計測を行い、前記複数の計測周波数の間における順方向伝搬時間の差、および前記複数の計測周波数の間における逆方向伝搬時間の差を求め、その初期順方向伝搬時間差および初期逆方向伝搬時間差を記憶する周波数−伝搬時間差記憶部と、一定期間毎に、前記複数の計測周波数によって、前記超音波トランスジューサ間の順方向伝搬時間および逆方向伝搬時間の計測を行ない、前記複数の計測周波数の間における順方向伝搬時間の差、および前記複数の計測周波数の間における逆方向伝搬時間の差を求め、その順方向伝搬時間差と前記周波数−伝搬時間差記憶部に記憶された前記順方向伝搬時間を計測した温度での初期順方向伝搬時間差、およびその逆方向伝搬時間差と前記周波数−伝搬時間差記憶部に記憶された前記逆方向伝搬時間を計測した温度での初期逆方向伝搬時間差を比較する周波数−伝搬時間差比較部とを有し、前記周波数−伝搬時間差比較部の比較結果に基づく初期順方向伝搬時間差および初期逆方向伝搬時間差との間のズレ量に応じて通常計測補正値をマイナスの値またはプラスの値に変更することで、超音波トランスジューサによる通常計測値を通常計測補正値によって遅延特性の変化分に応じた変更を行い、前記一対の超音波トランスジューサの遅延特性が、計測流体の流速によらず、計測周波数によって変化することを利用し、前記一対の超音波トランスジューサの経年的な遅延特性変動に対する流量補正を行なうことを特徴とする。本発明の超音波流量計によれば、計測周波数間の初期順方向伝搬時間差および初期逆方向伝搬時間差を予め記憶させ、一定期間毎に複数の計測周波数での順方向伝搬時間および逆方向伝搬時間を計測し、計測周波数間の順方向伝搬時間差および逆方向伝搬時間差を求めて、予め記憶されている同計測周波数間の初期順方向伝搬時間差および初期逆方向伝搬時間差と比較し、比較結果に基づいて一対の超音波トランスジューサの経年的な遅延特性変動を補正するようにしたので、経年的な遅延特性変動が定期的に補正され計測誤差の少ない超音波流量計を提供できる。
本発明の超音波流量計は、前記超音波トランスジューサが、低Q型で、不要スプリアスの少ない、単一共振特性を有する超音波トランスジューサで形成されていて、該超音波トランスジューサの周波数帯域を利用することを特徴とする。本発明の超音波流量計によれば、ある程度低いQ値により、計測流体が空気やガスのような音響インピーダンスの極めて小さい流体(超音波トランスジューサの音響整合層と比べて6桁以上の差)に対して、比較的少ない消費電流での超音波の送受信計測が可能である。また、広域な流量レンジに対応させるためにも、周波数帯域内での不要スプリアスが少ない単一共振特性を有し、Q値がある程度低いことから、周波数帯域内における周波数を利用し、この周波数を計測周波数として超音波を送信した結果、計測周波数に応じた受信周波数となる特性が確保できる(広域な流量レンジが計測でき、受信波が計測周波数に応じた周波数となるため、計測精度が向上する)。さらに、Q値がある程度低いことで、できるだけ少ない駆動パルス数により、計測周波数に応じた受信特性が得られ、受信波の周波数追従特性が向上する結果、計測精度が向上し、さらに消費電流を比較的少なく抑えられる。
本発明の超音波流量計は、補正検査時の計測周波数が、前記超音波トランスジューサの周波数帯域内の共振点周波数またはその近傍の周波数と、前記周波数帯域内の共振点周波数から離れた周波数とを使用し、これらの周波数の駆動パルスにより前記超音波トランスジューサを駆動し、順方向伝搬時間および逆方向伝搬時間の計測を行なうことを特徴とする。本発明の超音波流量計によれば、超音波トランスジューサはQ値が低い特性なので、補正検査時に計測する計測周波数の1つを共振点周波数またはその近傍の周波数にすることで、送信側の超音波トランスジューサの計測周波数や環境の影響が少ない安定な基準となる計測周波数となり、また受信波の周波数追従性が得られる。また、残りの計測周波数を共振点周波数から離れた、超音波トランスジューサの周波数帯域の境界近傍の周波数とすることで、共振点周波数の影響を受けづらくなり、受信波が計測周波数に応じた周波数として得られる。
本発明の超音波流量計は、送信波の駆動パルス数Nの制御されたバースト駆動による強制振動で、送信波の駆動パルス数Nに対して最大N+2〜3以内の受信パルス数、できれば、最大N以内の受信パルス数のゼロクロスポイントを受信波の検出ポイントとすることを特徴とする。本発明の超音波流量計によれば、超音波トランスジューサに送信波の駆動パルス数Nによって強制振動と成りうる駆動を与え、その依存度の高い受信エリアを検出ポイントとすることにより、補正するための計測精度を向上させることができる。
本発明の超音波流量計は、計測周波数に応じて送信波の駆動パルス数および受信波の検出ポイントを変更することを特徴とする。本発明の超音波流量計によれば、計測周波数に応じて送信波の駆動パルス数および受信波の検出ポイントを変更することによって、計測周波数の減衰による計測精度の低下を防止することが可能となる。
本発明の超音波流量計は、計測周波数に応じた送信波の駆動パルス数および受信波の検出ポイントを調整・記憶することが想定される。かかる超音波流量計によれば、初期順方向伝搬時間差および初期逆方向伝搬時間差からの経年的な遅延特性変動に対する流量補正を行なうので、超音波流量計が設置されたその環境下で初期状態を学習(初期順方向伝搬時間差および初期逆方向伝搬時間差を取得)することで、より補正精度の向上が可能となる。
本発明の超音波流量計は、フィールドに設置された超音波流量計を、一定期間で、予め決められた温度になった時、しかもできるだけ計測流体の流量の少ないタイミングを見計らって、計測周波数に対する順方向伝搬時間および逆方向伝搬時間の計測を行なうことが想定される。本発明の超音波流量計によれば、流量変動の少ない期間に補正検査を行なうことで、補正精度の向上が可能となる。
本発明の超音波流量計は、複数の計測周波数での順方向伝搬時間の計測を計測周波数を異ならしめながら連続的に行ない、しかる後に複数の計測周波数での逆方向伝搬時間の計測を計測周波数を異ならしめながら連続的に行なうことを特徴とする。本発明の超音波流量計によれば、同じ計測周波数での順方向伝搬時間の計測および逆方向伝搬時間の計測を、計測周波数を異ならしめながら連続的に行なう場合に比べて、順/逆の切替を頻繁に繰り返さなくても済むので、その分、計測時間間隔が短くなり、流量変動の影響が低減できて、高精度に計測補正が可能となる。
本発明の超音波流量計は、ある計測周波数での順方向伝搬時間または逆方向伝搬時間の計測のための駆動パルスを印加して、それに対応した受信パルスが伝搬して来る前に、次の計測周波数での順方向伝搬時間または逆方向伝搬時間の計測のための駆動パルスを印加することを特徴とする。本発明の超音波流量計によれば、ある計測周波数の駆動パルスを印加して、それに対応した受信パルスが伝搬して来る前に、次の計測周波数の駆動パルスを印加するので、ある計測周波数での順方向伝搬時間または逆方向伝搬時間の計測と次の計測周波数での順方向伝搬時間または逆方向伝搬時間の計測との計測時間間隔が短くなり、ある計測周波数の駆動パルスを印加し、それに対応した受信パルスが伝搬して来るのを待って、次の計測周波数の駆動パルスを印加する場合に比べて、計測時間間隔がより短くなり、流量変動の影響がより低減できて、より高精度な計測補正が可能となる。
本発明に関連する超音波流量計は、流路の流体流れ方向上手側および下手側に一対の超音波トランスジューサを設け、超音波の送受信を交互に切り替えて、流れ方向上手側の超音波トランスジューサから発射された超音波が流れ方向下手側の超音波トランスジューサに到達するまでの順方向伝搬時間と、流れ方向下手側の超音波トランスジューサから発射された超音波が流れ方向上手側の超音波トランスジューサに到達するまでの逆方向伝搬時間とを計測して、両者の差から流路を流れる流体の平均流速を求め、平均流速に流路断面積を乗算することで流量を求める超音波流量計において、複数の温度での計測周波数間の初期順方向伝搬時間差および初期逆方向伝搬時間差を予め記憶している周波数−伝搬時間差記憶部と、各計測周波数で計測された順方向伝搬時間および逆方向伝搬時間から演算された計測周波数間の順方向伝搬時間差および逆方向伝搬時間差を、前記周波数−伝搬時間差記憶部に記憶されている現温度での計測周波数間の初期順方向伝搬時間差および初期逆方向伝搬時間差と比較する周波数−伝搬時間差比較部と、一対の超音波トランスジューサに印加する駆動信号の駆動パルス数を計測周波数に応じて可変に制御する駆動パルス数管理部と、受信側の超音波トランスジューサの固有応答性により強制振動による依存度が低いエリアでは計測せずに送信波の駆動パルス数Nの制御されたバースト駆動による強制振動で送信波の駆動パルス数Nに対して最大N+2〜3以内の受信パルス数、できれば、最大N以内の受信パルス数のゼロクロスポイントを受信波の検出ポイントとする受信パルス数管理部と、フィールドに設置された超音波流量計を、一定期間毎に、予め決められた温度になった時、しかもできるだけ計測流体の流量の少ない夜間等のタイミングを見計らって、検査期間であるかどうかを判断する検査期間判定部と、一対の超音波トランスジューサの経年的な遅延特性変動を判定し、通常計測補正値を変更する特性変動判定・補正部とを有することが想定される。かかる超音波流量計によれば、計測周波数間の初期順方向伝搬時間差および初期逆方向伝搬時間差を予め記憶させ、一定期間毎に複数の計測周波数での順方向伝搬時間および逆方向伝搬時間を計測し、計測周波数間の順方向伝搬時間差および逆方向伝搬時間差を取得して、予め記憶されている同計測周波数間の初期順方向伝搬時間差および初期逆方向伝搬時間差と比較し、比較結果に基づいて一対の超音波トランスジューサの経年的な遅延特性変動を補正するようにしたので、経年的な遅延特性変動が定期的に補正され計測誤差の少ない超音波流量計を提供できる。
一対の超音波トランスジューサの経年的な遅延特性変動(送信遅延特性変動,受信遅延特性変動等)が、計測流体の流速によらず、計測周波数によって変化することを利用することにより、一定期間毎(例えば1年毎)に、複数の温度での、複数の計測周波数で超音波トランスジューサ間の順方向伝搬時間および逆方向伝搬時間の計測を行ない、計測周波数間の順方向伝搬時間差および逆方向伝搬時間差を、予め記憶されている同温度での同計測周波数間の初期順方向伝搬時間差および初期逆方向伝搬時間差と比較し、経年的な遅延特性変動に対する流量補正を行なう。
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る超音波流量計の構成を示すブロック図である。本実施例1に係る超音波流量計は、一対の超音波トランスジューサ1a,1bと、送受切替部2と、駆動部3と、周波数可変部4と、増幅部5と、受信部6と、伝搬時間計測部7と、マイクロコンピュータ8と、温度計9とから、その主要部が構成されている。
一対の超音波トランスジューサ1a,1bは、機械的共振尖鋭度を表すQ値が低い(Q=2〜10、望ましくはQ=2.5〜5)型で、不要スプリアスの少ない、単一共振特性を有する超音波トランスジューサで形成されていて、該超音波トランスジューサの周波数帯域が利用される。これにより、安定した計測周波数および遅延特性の計測が可能となり、より高精度な経年的な遅延特性変動の補正が可能になる。
以下、図2に示すように、計測周波数f0を、超音波トランスジューサ1a,1bの周波数帯域内での共振周波数またはその近傍の周波数であるものとし、計測周波数f1を、超音波トランスジューサ1a,1bの周波数帯域内で、計測周波数f0に対して変位させた周波数であるものとする。計測周波数f1,f0に比例した安定な超音波パルスである受信波が受信可能であることと、使用する周波数帯域での応答性において、不要な振動モードによる遅延特性の相関性が損なわれないように、低Q型で、しかも周波数帯域内の不要スプリアスが小さい、単一共振特性を有する超音波トランスジューサ1a,1bにより、安定した計測周波数および遅延特性を実現し、計測周波数f1,f0間の順方向伝搬時間差Δj(f1,f0)および逆方向伝搬時間差Δg(f1,f0)を保証する。
送受切替部2は、送信手段21と、受信手段22とを含んで構成されており、超音波トランスジューサ1a,1bを、流れ方向上手側の超音波トランスジューサ1aから超音波を発射させて流れ方向下手側の超音波トランスジューサ1bで受信するのか、流れ方向下手側の超音波トランスジューサ1bから超音波を発射させて流れ方向上手側の超音波トランスジューサ1aで受信するのかを、マイクロコンピュータ8からの制御で切り替える。
駆動部3は、周波数可変部4の制御による計測周波数で、マイクロコンピュータ8からの制御による駆動パルス数Nの駆動信号を、超音波を発射するための印加電圧として送受切替部2を介して超音波トランスジューサ1a,1bに印加する。また、駆動部3は、伝搬開始信号を伝搬時間計測部7に送信して、伝搬時間の計測を開始させる。
周波数可変部4は、マイクロコンピュータ8からの制御により、補正検査を行なう際に、超音波トランスジューサ1a,1bに印加する駆動信号の周波数を、決められた計測周波数f1,f0に変更する。
増幅部5は、超音波トランスジューサ1a,1bで受信された受信波を電圧増幅する(AGC(Automatic Gain Control)アンプが望ましい)。
受信部6は、マイクロコンピュータ8からの制御により、増幅部5で電圧増幅された受信信号を伝搬時間計測部7に送信して、伝搬時間を計測させる。また、受信部6は、マイクロコンピュータ8からの制御により、受信波の検出ポイントを最適検出ポイントとなるように制御する。
伝搬時間計測部7は、伝搬開始信号から受信信号までの時間を計測して、伝搬時間としてマイクロコンピュータ8へ送信する。
マイクロコンピュータ8は、周波数−伝搬時間差記憶部81と、周波数−伝搬時間差比較部82と、駆動パルス数管理部83と、受信パルス数管理部84と、検査期間判定部85と、特性変動判定・補正部86とを含んで構成されている。
周波数−伝搬時間差記憶部81は、複数の温度t1,t2,t3,…における、計測周波数f1,f0間の初期順方向伝搬時間差Δj0(f1,f0)および初期逆方向伝搬時間差Δg0(f1,f0)を予め記憶している。詳しくは、図2および図3に示すように、計測周波数f1での初期順方向伝搬時間Tj0(f1)と計測周波数f0での初期順方向伝搬時間Tj0(f0)との差である初期順方向伝搬時間差Δj0(f1,f0)と、計測周波数f1での初期逆方向伝搬時間Tg0(f1)と計測周波数f0での初期逆方向伝搬時間Tg0(f0)との差である初期逆方向伝搬時間差Δg0(f1,f0)とを、複数の温度t1,t2,t3,…毎に予め記憶している。
Δj0(f1,f0)=Tj0(f1)−Tj0(f0),
Δg0(f1,f0)=Tg0(f1)−Tg0(f0)
なお、計測周波数f1,f0間の初期順方向伝搬時間差Δj0(f1,f0)および初期逆方向伝搬時間差Δg0(f1,f0)は、例えば、工場出荷時やフィールド設置時にマイクロコンピュータ8により周波数−伝搬時間差記憶部81に記憶される。
いま、超音波トランスジューサ1a,1b間の基準順方向伝搬時間をTjとし、計測周波数f0での周波数依存順方向伝搬時間項をτj0(f0)、計測周波数f1での周波数依存順方向伝搬時間項をτj0(f1)とすると、計測周波数f0での順方向伝搬時間Tj0(f0)は、基準順方向伝搬時間Tjと周波数依存順方向伝搬時間項τj0(f0)との和として、計測周波数f1での順方向伝搬時間Tj0(f1)は、基準順方向伝搬時間Tjと周波数依存順方向伝搬時間項τj0(f1)との和として表される。
Tj0(f0)=Tj+τj0(f0),
Tj0(f1)=Tj+τj0(f1)
また、超音波トランスジューサ1a,1b間の基準逆方向伝搬時間をTgとし、計測周波数f0での周波数依存逆方向伝搬時間項をτg0(f0)、計測周波数f1での周波数依存逆方向伝搬時間項をτg0(f1)とすると、計測周波数f0での逆方向伝搬時間Tg0(f0)は、基準逆方向伝搬時間Tgと周波数依存逆方向伝搬時間項τg0(f0)との和として、計測周波数f1での逆方向伝搬時間Tg0(f1)は、基準逆方向伝搬時間Tgと周波数依存逆方向伝搬時間項τg0(f1)との和として表される。
Tg0(f0)=Tg+τg0(f0),
Tg0(f1)=Tg+τg0(f1)
よって、周波数−伝搬時間差記憶部81に記憶される計測周波数f1,f0間の初期順方向伝搬時間差Δj0(f1,f0)および初期逆方向伝搬時間差Δg0(f1,f0)は、以下のようになる。
Δj0(f1,f0)=Tj0(f1)−Tj0(f0)=τj0(f1)−τj0(f0),
Δg0(f1,f0)=Tg0(f1)−Tg0(f0)=τg0(f1)−τg0(f0)
周波数−伝搬時間差比較部82は、各計測周波数f1,f0で計測された順方向伝搬時間Tj0(f1),Tj0(f0)および逆方向伝搬時間Tg0(f1),Tg0(f0)から演算された計測周波数f1,f0間の順方向伝搬時間差Δj(f1,f0)および逆方向伝搬時間差Δg(f1,f0)を、周波数−伝搬時間差記憶部81に記憶されている現温度(計測する時の温度)t1での計測周波数f1,f0間の初期順方向伝搬時間差Δj0(f1,f0)および初期逆方向伝搬時間差Δg0(f1,f0)と比較する。
駆動パルス数管理部83は、超音波トランスジューサ1a,1bに印加する駆動信号の駆動パルス数Nを、計測周波数に応じた変更制御を行なう。これにより、計測周波数に応じた超音波トランスジューサ1a,1bの受信周波数特性が確保され、少ない駆動パルス数Nで伝搬時間の計測が可能となるため、計測精度を向上させながら、低消費電力化が可能となる。
受信パルス数管理部84は、受信側の超音波トランスジューサ1a,1bの固有応答性により強制振動による依存度が低いエリアでは、計測せずに、送信波の駆動パルス数Nの制御されたバースト駆動による強制振動で、送信波の駆動パルス数Nに対して最大N+2〜3以内の受信パルス数、できれば、最大N以内の受信パルス数のゼロクロスポイントを受信波の検出ポイントとする。
例えば、図4(a)では、駆動パルス数が5で検出ポイントが第7ゼロクロスポイントとなっているが、図4(b)では、駆動パルス数が3に変更されることにより検出ポイントが第7ゼロクロスポイントから第5ゼロクロスポイントに変更されている。
検査期間判定部85は、フィールドに設置された超音波流量計を、一定期間毎(例えば、マイクロコンピュータ8に保有させたカレンダまたは時計機能にて1年毎)に、予め決められた温度になった時、しかもできるだけ計測流体の流量の少ない夜間等のタイミングを見計らって、検査期間であるかどうかを判断する。
特性変動判定・補正部86は、周波数−伝搬時間差比較部82により計測周波数f1,f0間の順方向伝搬時間差Δj(f1,f0)および逆方向伝搬時間差Δg(f1,f0)と、周波数−伝搬時間差記憶部81に記憶されている現温度t1での計測周波数f1,f0間の初期順方向伝搬時間差Δj0(f1,f0)および初期逆方向伝搬時間差Δg0(f1,f0)との間のズレ量が一定値以上であれば、そのズレ量に応じて通常計測補正値を変更する。具体的には、特性変動判定・補正部86は、補正検査を行なうために、周波数可変部4や駆動部3および受信手段22を制御して、予め決められた計測周波数および駆動パルス数Nを可変させ、その条件に合った検出ポイントで受信するように、計測周波数f1での順方向伝搬時間Tj(f1)および逆方向伝搬時間Tg(f1)、ならびに計測周波数f0での順方向伝搬時間Tj(f0)および逆方向伝搬時間Tg(f0)の計測が行なわれるようにする。
温度計9は、計測する時の温度(現温度)t1を取得する。なお、現温度t1は、超音波の伝搬時間から演算によって取得することもできる。例えば、前記(1),(2)式より音速Cを求めることで、簡易式C=331.68+0.61t1から現温度t1を求める。
次に、このように構成された実施例1に係る超音波流量計の動作について、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
工場出荷時または超音波流量計がフィールドに設置されたときに、マイクロコンピュータ8は、所定時間内に、複数の温度t1,t2,t3,…での複数の計測周波数f1,f0での初期順方向伝搬時間Tj0(f1),Tj0(f0)および初期逆方向伝搬時間Tg0(f1),Tg0(f0)を計測し、計測周波数f1,f0間の初期順方向伝搬時間差Δj0(f1,f0)および初期逆方向伝搬時間差Δg0(f1,f0)を求めて、周波数−伝搬時間差記憶部81に記憶させる。また、マイクロコンピュータ8は、駆動パルス数管理部83における計測周波数f1,f0に応じた送信波の駆動パルス数Nと、受信パルス数管理部84における受信波の検出ポイントとを調整・記憶する。
超音波流量計のフィールド設置後、マイクロコンピュータ8は、検査期間判定部85により、検査期間であるかどうかを定期的に判定する(ステップS101)。検査期間判定部85は、一定期間毎(例えば、1年毎)に、予め決められた温度になった時(温度計9により測れる任意の温度において、例えば温度t1=20℃)、しかもできるだけ計測流体の流量の少ない夜間等のタイミングを見計らって、検査期間であることを判定する。
検査期間でなければ、マイクロコンピュータ8は、通常の流量計測を行ない(ステップS102)、ステップS101に制御を戻す。
検査期間であれば、マイクロコンピュータ8は、計測周波数f0での順方向伝搬時間Tj(f0)を、流量変動の影響が無視できる短い間に計測する(ステップS103)。
詳しくは、マイクロコンピュータ8は、まず、送受切替信号を送受切替部2に出力する。
送受切替部2は、送受切替信号を受けると、流れ方向上手側の超音波トランスジューサ1aを送信側とし、流れ方向下手側の超音波トランスジューサ1bを受信側とするように切り替える。換言すれば、超音波トランスジューサ1aを送信手段21に接続し、超音波トランスジューサ1bを受信手段22に接続する。
また、マイクロコンピュータ8は、計測周波数をf0に切り替える計測周波数切替信号を周波数可変部4に出力する。
周波数可変部4は、計測周波数切替信号を受けると、計測周波数をf0に切り替える。
次に、マイクロコンピュータ8は、駆動開始信号を駆動部3に出力する。
駆動部3は、駆動開始信号を受信すると、周波数可変部4により設定された計測周波数f0の駆動信号を、駆動パルス数管理部83により設定された駆動パルス数Nだけ、送受切替部2の送信手段21を介して送信側の超音波トランスジューサ1aに印加して送信波を発射させる。これと同時に、駆動部3は、伝搬開始信号を伝搬時間計測部7に出力する。
伝搬時間計測部7は、駆動部3からの伝搬開始信号を受けると、計測周波数f0での順方向伝搬時間Tj(f0)の計測を開始する。
流れ方向上手側の超音波トランスジューサ1aから発射された送信波が計測流体を伝搬して流れ方向下手側の超音波トランスジューサ1bで受信されると、増幅部5は、送受切替部2の受信手段22を介して入力された受信波を電圧増幅して受信信号を受信部6に入力する。
受信部6は、受信パルス数管理部84により設定された受信パルス数のゼロクロスポイントを受信波の検出ポイントとして検出すると、伝搬検出信号を伝搬時間計測部7に伝える。
伝搬時間計測部7は、受信部6からの伝搬検出信号を受けると、計測周波数f0での順方向伝搬時間Tj(f0)の計測を終了し、計測周波数f0での順方向伝搬時間Tj(f0)をマイクロコンピュータ8に送信する。
計測周波数f0での順方向伝搬時間Tj(f0)の計測が完了すると、マイクロコンピュータ8は、計測周波数をf0からf1に切り替える計測周波数切替信号を周波数可変部4に出力する。
周波数可変部4は、計測周波数切替信号を受けると、計測周波数をf0からf1に切り替える。
マイクロコンピュータ8は、以下、ステップS103と同様にして、計測周波数f1での順方向伝搬時間Tj(f1)を、流量変動の影響が無視できる短い間に計測する(ステップS104)。
なお、ステップS103とステップS104とを同時並列的に実行することもできる。すなわち、順方向伝搬時間Tj(f0)の計測のための駆動パルスを印加してそれに対応した受信パルスが伝搬して来る前に、順方向伝搬時間Tj(f1)の計測のための駆動パルスを印加するようにし、その後に順方向伝搬時間Tj(f0)の計測に対応した受信パルスを受信し、続いて順方向伝搬時間Tj(f1)の計測に対応した受信パルスを受信するようにしてもよい。このようにすれば、順方向伝搬時間Tj(f0)と順方向伝搬時間Tj(f1)との計測時間間隔がより短くなり、流量変動の影響がより低減できて、より高精度な計測補正が可能となる。
計測周波数f0での順方向伝搬時間Tj(f0)および計測周波数f1での順方向伝搬時間Tj(f1)の計測が完了すると、マイクロコンピュータ8は、送受切替信号を送受切替部2に出力する。
送受切替部2は、送受切替信号を受けると、流れ方向上手側の超音波トランスジューサ1aを受信側とし、流れ方向下手側の超音波トランスジューサ1bを送信側とするように切り替える。換言すれば、超音波トランスジューサ1aを受信手段22に接続し、超音波トランスジューサ1bを送信手段21に接続する。
また、マイクロコンピュータ8は、計測周波数をf1からf0に切り替える計測周波数切替信号を周波数可変部4に出力する。
周波数可変部4は、計測周波数切替信号を受けると、計測周波数をf1からf0に切り替える。
以下、マイクロコンピュータ8は、ステップS103と同様にして、計測周波数f0での逆方向伝搬時間Tg(f0)を、流量変動の影響が無視できる短い間に計測する(ステップS105)。
詳しくは、マイクロコンピュータ8は、駆動開始信号を駆動部3に出力する。
駆動部3は、駆動開始信号を受信すると、周波数可変部4により設定された計測周波数f0の駆動信号を、駆動パルス数管理部83により設定された駆動パルス数Nだけ、送受切替部2の送信手段21を介して送信側の超音波トランスジューサ1bに印加して送信波を発射させる。これと同時に、駆動部3は、伝搬開始信号を伝搬時間計測部7に出力する。
伝搬時間計測部7は、駆動部3からの伝搬開始信号を受けると、計測周波数f0での逆方向伝搬時間Tg(f0)の計測を開始する。
流れ方向下手側の超音波トランスジューサ1bから発射された送信波が計測流体を伝搬して流れ方向上手側の超音波トランスジューサ1aで受信されると、増幅部5は、送受切替部2の受信手段22を介して入力された受信波を増幅して受信信号を受信部6に入力する。
受信部6は、受信パルス数管理部84により設定された受信パルス数の受信信号を受信すると(ゼロクロスポイントを検出すると)、伝搬検出信号を伝搬時間計測部7に伝える。
伝搬時間計測部7は、受信部6からの伝搬検出信号を受けると、計測周波数f0での逆方向伝搬時間Tg(f0)の計測を終了し、計測周波数f0での逆方向伝搬時間Tg(f0)をマイクロコンピュータ8に送信する。
計測周波数f0での逆方向伝搬時間Tg(f0)の計測が完了すると、マイクロコンピュータ8は、計測周波数をf0からf1に切り替える計測周波数切替信号を周波数可変部4に出力する。
周波数可変部4は、計測周波数切替信号を受けると、計測周波数をf0からf1に切り替える。
以下、ステップS105と同様にして、マイクロコンピュータ8は、計測周波数f1での逆方向伝搬時間Tj(f1)を、流量変動の影響が無視できる短い間に計測する(ステップS106)。
なお、ステップS103およびステップS104と同様に、ステップS105およびステップS106も同時並列的に実行することもできる。すなわち、逆方向伝搬時間Tg(f0)の計測のための駆動パルスを印加してそれに対応した受信パルスが伝搬して来る前に、逆方向伝搬時間Tg(f1)の計測のための駆動パルスを印加するようにし、その後に逆方向伝搬時間Tg(f0)の計測に対応した受信パルスを受信し、続いて逆方向伝搬時間Tg(f1)の計測に対応した受信パルスを受信するようにしてもよい。このようにすれば、逆方向伝搬時間Tg(f0)と逆方向伝搬時間Tg(f1)との計測時間間隔がより短くなり、流量変動の影響がより低減できて、より高精度な計測補正が可能となる。
次に、マイクロコンピュータ8は、計測周波数f1での順方向伝搬時間Tj(f1)から計測周波数f0での順方向伝搬時間Tj(f0)を引いて、計測周波数f1,f0間の順方向伝搬時間差Δj(f1,f0)を算出する(ステップS107)。
Δj(f1,f0)=Tj(f1)−Tj(f0)=τj(f1)−τj(f0)
同様に、マイクロコンピュータ8は、計測周波数f1での逆方向伝搬時間Tg(f1)から計測周波数f0での逆方向伝搬時間Tg(f0)を引いて、計測周波数f1,f0間の逆方向伝搬時間差Δg(f1,f0)を算出する(ステップS108)。
Δg(f1,f0)=Tg(f1)−Tg(f0)=τg(f1)−τg(f0)
ここで、計測周波数f1,f0間の順方向伝搬時間差Δj(f1,f0)および逆方向伝搬時間差Δg(f1,f0)は、流速Vによらず一定である。即ち、規定の温度条件下であれば、計測周波数f1,f0間の順方向伝搬時間差Δj(f1,f0)および逆方向伝搬時間差Δg(f1,f0)は、各計測周波数f1,f0での超音波トランスジューサ1a,1bの遅延特性を意味する。換言すれば、計測周波数f1,f0間の順方向伝搬時間差Δj(f1,f0)および逆方向伝搬時間差Δg(f1,f0)は、計測流体の媒質や速度Vのパラメータで変化しない値である。
続いて、マイクロコンピュータ8は、周波数−伝搬時間差比較部82により、計測周波数f1,f0間の順方向伝搬時間差Δj(f1,f0)を、周波数−伝搬時間差記憶部81に記憶された、現温度t1での、計測周波数f1,f0間の初期順方向伝搬時間差Δj0(f1,f0)と比較する(ステップS109)。
同様に、マイクロコンピュータ8は、周波数−伝搬時間差比較部82により、計測周波数f1,f0間の逆方向伝搬時間差Δg(f1,f0)を、周波数−伝搬時間差記憶部81に記憶された、現温度t1での、計測周波数f1,f0間の初期逆方向伝搬時間差Δg0(f1,f0)と比較する(ステップS110)。
比較の結果、計測周波数f1,f0間の順方向伝搬時間差Δj(f1,f0)と計測周波数f1,f0間の初期順方向伝搬時間差Δj0(f1,f0)とのズレ量が一定値以上あれば(ステップS111でイエス)、マイクロコンピュータ8は、特性変動判定・補正部86により、このズレ量が一定値未満となるように、通常計測時に使用する補正値(通常計測補正値)を変更する(ステップS112)。
詳しくは、
Δj(f1,f0)>Δj0(f1,f0)ならば、通常計測補正値をマイナス変更し、
Δj(f1,f0)≒Δj0(f1,f0)ならば、通常計測補正値を変更せず、
Δj(f1,f0)<Δj0(f1,f0)ならば、通常計測補正値をプラス変更する。
また、
Δg(f1,f0)>Δg0(f1,f0)ならば、通常計測補正値をマイナス変更し、
Δg(f1,f0)≒Δg0(f1,f0)ならば、通常計測補正値を変更せず、
Δg(f1,f0)<Δg0(f1,f0)ならば、通常計測補正値をプラス変更する。
ここでの変更は、Δj(f1,f0)−Δj0(f1,f0)=αとおくと、α<0およびα>0の場合に変更を行ない、αの初期値に対する大小分、すなわち遅延特性の変化分を通常計測時に考慮して、流量演算時に加減算して変更することを意味する。具体的には、特性変動判定・補正部86は、補正検査を行なうために、周波数可変部4や駆動部3、および駆動パルス数管理部83や受信パルス数管理部84を制御して、予め決められた計測周波数および駆動パルス数Nや受信パルス数を可変させ、その条件に合った検出ポイントで、計測周波数f1での順方向伝搬時間Tj(f1)および逆方向伝搬時間Tg(f1)、ならびに計測周波数f0での順方向伝搬時間Tj(f0)および逆方向伝搬時間Tg(f0)の計測が行なわれるようにする。
このような補正を行なうことによって、超音波流量計は、長期にわたって高精度な流量の計測が可能になる。
以上説明したように、実施例1によれば、計測周波数f1,f0間の順方向伝搬時間差Δj(f1,f0)および逆方向伝搬時間差Δg(f1,f0)は、温度が規定の温度条件で、かつ伝搬時間差を計測する間が同じ流速であれば、流速によらず一定となることを利用し、計測周波数f1,f0間の順方向伝搬時間差Δj(f1,f0)および逆方向伝搬時間差Δg(f1,f0)を元に経年的な遅延特性変動(ドリフト)を補正し、計測誤差の少ない超音波流量計を提供することができる。
また、実施例1では、超音波トランスジューサ1a,1bとしては機械的共振尖鋭度を表すQ値が比較的低く、Q=2〜10程度(より実際的にはQ=2.5〜5程度)で、周波数帯域内で計測周波数f1,f0に比例した受信特性を得るため、周波数帯域内での不要スプリアスを低減させた単一共振に近い超音波トランスジューサ1a,1bの遅延特性を有するため、超音波トランスジューサ1a,1bの周波数帯域内での、2つの計測周波数f1,f0に対応して、順方向伝搬時間差Δj(f1,f0)および逆方向伝搬時間差Δg(f1,f0)が得られ、高精度な経年的な遅延特性変動(ドリフト)の補正が実現可能である。
また、超音波トランスジューサ1a,1bでは、低Q型の超音波トランスジューサf1,f0であっても共振点の無いQ≒0の超音波トランスジューサでは無いため、計測周波数の送信波による受信時の応答性が、超音波トランスジューサ1a,1bの共振の影響により、直ぐには計測周波数に成らない。このため、超音波トランスジューサ1a,1bのバースト駆動による強制振動を与え、強制振動が終わる近傍の計測周波数に比較的比例した受信特性が得られるゼロクロスポイントにて検出することにより、高精度化が実現できる。これと同時に、低Q型の超音波トランスジューサであるため、駆動パルス数Nを少なく抑えられるので、少ない消費電力で周波数可変が実現でき、電池寿命を満足できる。
さらに、計測周波数による受信精度の低下を送信波の駆動パルス数Nを可変とすることで(例えば、高周波で計測するときほど、送信波の駆動パルス数Nを多くすることで)、安定した受信波を受信し、さらに、その送信波の駆動パルス数Nに応じた、安定した受信パルス数のゼロクロスポイント(強制振動の依存度が高い)に受信波の検出ポイントを切り替えて検出することによって、補正計測の精度が向上する。
なお、超音波流量計がフィールドに設置されたことを知らされた後、その環境下で所定時間内に複数の温度t1,t2,t3,…での複数の計測周波数f1,f0での初期順方向伝搬時間Tj0(f1),Tj0(f0)および初期逆方向伝搬時間Tg0(f1),Tg0(f0)を計測し、計測周波数f1,f0間の初期順方向伝搬時間差Δj0(f1,f0)および初期逆方向伝搬時間差Δg0(f1,f0)を求めて記憶をすることで、より補正精度の向上が可能となる。超音波流量計がフィールドに設置されたことを知る方法としては、一定流量を検知することや、通信または外部スイッチ等で外部から知らせてもらう等の方法が考えられる。例えば、超音波流量計のフィールド設置前は流路内は空気であるが、設置後はガスとなった場合など、伝搬特性(伝搬時間,受信信号特性,減衰特性等)が異なり、さらに、工場等でのガス環境下で伝搬特性を記憶しても、現地で使用するガスと微妙な成分誤差があったときに補正誤差となりうるため、それらの補正誤差をも低減ができる。なお、この機能を使用して、長時間未使用になっていた超音波流量計を再度使用開始する時に、計測流体の違い等による補正も可能になることは容易に考えられる。
また、できるだけ、流量の少ない、かつ流量変動の少ない期間に補正検査を行なうことで、補正精度の向上が可能となる(できるだけ流量の少ない期間に補正検査を行なうことで、ノイズの影響を受けないため、計測精度が向上する)。
本発明の実施例2に係る超音波流量計は、図1ないし図5に示した実施例1に係る超音波流量計における計測周波数がf0およびf1の2周波数であったのに対して、図6に例示するように、計測周波数をf0,f1およびf2の3周波数にしたことだけが異なっている。したがって、その他の構成は、実施例1に係る超音波流量計と同様に構成されているので、図1ないし図4を実施例2に係る超音波流量計にも流用して、相違する点を除く詳しい説明を省略する。
周波数−伝搬時間差記憶部81は、複数の温度t1,t2,t3,…における、計測周波数f1,f0間の初期順方向伝搬時間差Δj0(f1,f0)および初期逆方向伝搬時間差Δg0(f1,f0)と、計測周波数f2,f0間の初期順方向伝搬時間差Δj0(f2,f0)および初期逆方向伝搬時間差Δg0(f2,f0)とを予め記憶している。詳しくは、図6および図3に示すように、計測周波数f1での初期順方向伝搬時間Tj0(f1)と計測周波数f0での初期順方向伝搬時間Tj0(f0)との差である初期順方向伝搬時間差Δj0(f1,f0)と、計測周波数f1での初期逆方向伝搬時間Tg0(f1)と計測周波数f0での初期逆方向伝搬時間Tg0(f0)との差である初期逆方向伝搬時間差Δg0(f1,f0)と、計測周波数f2での初期順方向伝搬時間Tj0(f2)と計測周波数f0での初期順方向伝搬時間Tj0(f0)との差である初期順方向伝搬時間差Δj0(f2,f0)と、計測周波数f2での初期逆方向伝搬時間Tg0(f2)と計測周波数f0での初期逆方向伝搬時間Tg0(f0)との差である初期逆方向伝搬時間差Δg0(f2,f0)とを、複数の温度t1,t2,t3,…毎に予め記憶している。
Δj0(f1,f0)=Tj0(f1)−Tj0(f0),
Δg0(f1,f0)=Tg0(f1)−Tg0(f0),
Δj0(f2,f0)=Tj0(f2)−Tj0(f0),
Δg0(f2,f0)=Tg0(f2)−Tg0(f0)
なお、計測周波数f1,f0間の初期順方向伝搬時間差Δj0(f1,f0)および初期逆方向伝搬時間差Δg0(f1,f0)、ならびに計測周波数f2,f0間の初期順方向伝搬時間差Δj0(f2,f0)および初期逆方向伝搬時間差Δg0(f2,f0)は、例えば、工場出荷時やフィールド設置時にマイクロコンピュータ8により周波数−伝搬時間差記憶部81に記憶される。
いま、超音波トランスジューサ1a,1b間の基準順方向伝搬時間をTjとし、計測周波数f2,f1,f0での周波数依存順方向伝搬時間項をτj0(f2),τj0(f1),τj0(f0)とすると、計測周波数f2,f1,f0での初期順方向伝搬時間Tj0(f2),Tj0(f1),Tj0(f0)は、基準順方向伝搬時間Tjと周波数依存順方向伝搬時間項τj0(f2),τj0(f1),τj0(f0)との和で表される。
Tj0(f2)=Tj+τj0(f2),
Tj0(f1)=Tj+τj0(f1),
Tj0(f0)=Tj+τj0(f0)
また、超音波トランスジューサ1a,1b間の基準逆方向伝搬時間をTgとし、計測周波数f2,f1,f0での周波数依存逆方向伝搬時間項をτg0(f2),τg0(f1),τg0(f0)とすると、計測周波数f2,f1,f0での初期順方向伝搬時間Tg0(f2),Tg0(f1),Tg0(f0)は、基準順方向伝搬時間Tgと周波数依存順方向伝搬時間項τg0(f2),τg0(f1),τg0(f0)との和で表される。
Tg0(f2)=Tg+τg0(f2),
Tg0(f1)=Tg+τg0(f1),
Tg0(f0)=Tg+τg0(f0)
よって、周波数−伝搬時間差記憶部81は、複数の温度t1,t2,t3,…での計測周波数f1,f0間の初期順方向伝搬時間差Δj0(f1,f0)および初期逆方向伝搬時間差Δg0(f1,f0)と、計測周波数f2,f0間の初期順方向伝搬時間差Δj0(f2,f0)および初期逆方向伝搬時間差Δg0(f2,f0)とを予め記憶する。
Δj0(f2,f0)=Tj0(f2)−Tj0(f0)=τj0(f2)−τj0(f0),
Δj0(f1,f0)=Tj0(f1)−Tj0(f0)=τj0(f1)−τj0(f0),
Δg0(f2,f0)=Tg0(f2)−Tg0(f0)=τg0(f2)−τg0(f0),
Δg0(f1,f0)=Tg0(f1)−Tg0(f0)=τg0(f1)−τg0(f0)
周波数−伝搬時間差比較部82は、各計測周波数f2,f1,f0で計測された順方向伝搬時間Tj0(f2),Tj0(f1),Tj0(f0)および逆方向伝搬時間Tg0(f2),Tg0(f1),Tg0(f0)から演算された計測周波数f1,f0間の順方向伝搬時間差Δj(f1,f0)および逆方向伝搬時間差Δg(f1,f0)、ならびに計測周波数f2,f0間の順方向伝搬時間差Δj(f2,f0)および逆方向伝搬時間差Δg(f2,f0)を、周波数−伝搬時間差記憶部81に記憶されている現温度t1での計測周波数f1,f0間の初期順方向伝搬時間差Δj0(f1,f0)および初期逆方向伝搬時間差Δg0(f1,f0)、ならびに現温度t1での計測周波数f2,f0間の初期順方向伝搬時間差Δj0(f2,f0)および初期逆方向伝搬時間差Δg0(f2,f0)と比較する。
特性変動判定・補正部86は、周波数−伝搬時間差比較部82により計測周波数f1,f0間の順方向伝搬時間差Δj(f1,f0)および逆方向伝搬時間差Δg(f1,f0)と、周波数−伝搬時間差記憶部81に記憶されている現温度t1での計測周波数f1,f0間の初期順方向伝搬時間差Δj0(f1,f0)および初期逆方向伝搬時間差Δg0(f1,f0)との間のズレ量が一定値以上であれば、そのズレ量に応じて通常計測補正値を変更する。また、特性変動判定・補正部86は、周波数−伝搬時間差比較部82により計測周波数f2,f0間の順方向伝搬時間差Δj(f2,f0)および逆方向伝搬時間差Δg(f2,f0)と、周波数−伝搬時間差記憶部81に記憶されている現温度t1での計測周波数f2,f0間の初期順方向伝搬時間差Δj0(f2,f0)および初期逆方向伝搬時間差Δg0(f2,f0)との間のズレ量が一定値以上であれば、そのズレ量に応じて通常計測補正値を変更する。
次に、このように構成された実施例2に係る超音波流量計の動作について、図7に示すフローチャートを参照して説明する。
なお、ステップS201〜S204までの処理は、実施例1に係る超音波流量計のステップS101〜S104までの処理(図5参照)と同様であるので、詳しい説明を省略する。
ステップS204の後、マイクロコンピュータ8は、計測周波数f1での順方向伝搬時間Tj(f1)を受信すると、計測周波数をf1からf2に切り替える計測周波数切替信号を周波数可変部4に出力して計測周波数をf1からf2に切り替えた後、同様にして、計測周波数f2での順方向伝搬時間Tj(f2)を計測する(ステップS205)。
次に、マイクロコンピュータ8は、送受切替信号を送受切替部2に出力して一対の超音波トランスジューサ1a,1bの送受を切り替えた後、計測周波数切替信号を周波数可変部4に出力して計測周波数をf0,f1からf2と切り替えながら、計測周波数f0での逆方向伝搬時間Tg(f0),計測周波数f1での逆方向伝搬時間Tg(f1)および計測周波数f2での逆方向伝搬時間Tg(f2)を順次計測する(ステップS206,S207,S208)。
次に、マイクロコンピュータ8は、計測周波数f1での順方向伝搬時間Tj(f1)から計測周波数f0での順方向伝搬時間Tj(f0)を引いて、計測周波数f1,f0間の順方向伝搬時間差Δj(f1,f0)を算出する(ステップS209)。
Δj(f1,f0)=Tj(f1)−Tj(f0)=τj(f1)−τj(f0)
また、マイクロコンピュータ8は、計測周波数f2での順方向伝搬時間Tj(f2)から計測周波数f0での順方向伝搬時間Tj(f0)を引いて、計測周波数f2,f0間の順方向伝搬時間差Δj(f2,f0)を算出する(ステップS210)。
Δj(f2,f0)=Tj(f2)−Tj(f0)=τj(f2)−τj(f0)
同様に、マイクロコンピュータ8は、計測周波数f1での逆方向伝搬時間Tg(f1)から計測周波数f0での逆方向伝搬時間Tg(f0)を引いて、計測周波数f1,f0間の逆方向伝搬時間差Δg(f1,f0)を算出する(ステップS211)。
Δg(f1,f0)=Tg(f1)−Tg(f0)=τg(f1)−τg(f0)
また、マイクロコンピュータ8は、計測周波数f2での逆方向伝搬時間Tg(f2)から計測周波数f0での逆方向伝搬時間Tg(f0)を引いて、計測周波数f2,f0間の逆方向伝搬時間差Δg(f2,f0)を算出する(ステップS212)。
Δg(f2,f0)=Tg(f2)−Tg(f0)=τg(f2)−τg(f0)
ここで、計測周波数f1,f0間の順方向伝搬時間差Δj(f1,f0)および計測周波数f2,f0間の順方向伝搬時間差Δj(f2,f0)、ならびに計測周波数f1,f0間の逆方向伝搬時間差Δg(f1,f0)および計測周波数f2,f0間の逆方向伝搬時間差Δg(f2,f0)は、流速Vによらず一定である。即ち、規定の温度条件下であれば、計測周波数f1,f0間の順方向伝搬時間差Δj(f1,f0)および計測周波数f2,f0間の順方向伝搬時間差Δj(f2,f0)、ならびに計測周波数f1,f0間の逆方向伝搬時間差Δg(f1,f0)および計測周波数f2,f0間の逆方向伝搬時間差Δg(f2,f0)は、各計測周波数f2,f1,f0での超音波トランスジューサ1a,1bの遅延特性を意味する。換言すれば、計測周波数f1,f0間の順方向伝搬時間差Δj(f1,f0)および計測周波数f2,f0間の順方向伝搬時間差Δj(f2,f0)、ならびに計測周波数f1,f0間の逆方向伝搬時間差Δg(f1,f0)および計測周波数f2,f0間の逆方向伝搬時間差Δg(f2,f0)は、計測流体の媒質や速度Vのパラメータで変化しない値である。
続いて、マイクロコンピュータ8は、周波数−伝搬時間差比較部82により、計測周波数f1,f0間の順方向伝搬時間差Δj(f1,f0)を、周波数−伝搬時間差記憶部81に記憶された、現温度t1での、計測周波数f1,f0間の初期順方向伝搬時間差Δj0(f1,f0)と比較する(ステップS213)。
また、マイクロコンピュータ8は、周波数−伝搬時間差比較部82により、計測周波数f2,f0間の順方向伝搬時間差Δj(f2,f0)を、周波数−伝搬時間差記憶部81に記憶された、現温度t1での、計測周波数f2,f0間の初期順方向伝搬時間差Δj0(f2,f0)と比較する(ステップS214)。
同様に、マイクロコンピュータ8は、周波数−伝搬時間差比較部82により、計測周波数f1,f0間の逆方向伝搬時間差Δg(f1,f0)を、周波数−伝搬時間差記憶部81に記憶された、現温度t1での、計測周波数f1,f0間の初期逆方向伝搬時間差Δg0(f1,f0)と比較する(ステップS215)。
また、マイクロコンピュータ8は、周波数−伝搬時間差比較部82により、計測周波数f2,f0間の逆方向伝搬時間差Δg(f2,f0)を、周波数−伝搬時間差記憶部81に記憶された、現温度t1での、計測周波数f2,f0間の初期逆方向伝搬時間差Δg0(f2,f0)と比較する(ステップS216)。
比較の結果、計測周波数f1,f0間の順方向伝搬時間差Δj(f1,f0)と計測周波数f1,f0間の初期順方向伝搬時間差Δj0(f1,f0)とのズレ量が一定値以上であれば(ステップS217でイエス)、マイクロコンピュータ8は、特性変動判定・補正部86により、このズレ量が一定値未満となるように、通常計測補正値を変更する(ステップS218)。
詳しくは、
Δj(f1,f0)>Δj0(f1,f0)ならば、通常計測補正値をマイナス変更し、
Δj(f1,f0)≒Δj0(f1,f0)ならば、通常計測補正値を変更せず、
Δj(f1,f0)<Δj0(f1,f0)ならば、通常計測補正値をプラス変更する。
また、
Δg(f1,f0)>Δg0(f1,f0)ならば、通常計測補正値をマイナス変更し、
Δg(f1,f0)≒Δg0(f1,f0)ならば、通常計測補正値を変更せず、
Δg(f1,f0)<Δg0(f1,f0)ならば、通常計測補正値をプラス変更する。
具体的には、特性変動判定・補正部86は、補正検査を行なうために、周波数可変部4や駆動部3、および駆動パルス数管理部83や受信パルス数管理部84を制御して、予め決められた計測周波数および駆動パルス数Nや受信パルス数を可変させ、その条件に合った検出ポイントで、計測周波数f1での順方向伝搬時間Tj(f1)および逆方向伝搬時間Tg(f1)、ならびに計測周波数f0での順方向伝搬時間Tj(f0)および逆方向伝搬時間Tg(f0)の計測が行なわれるようにする。
また、計測周波数f2,f0間の逆方向伝搬時間差Δg(f2,f0)と計測周波数f2,f0間の初期逆方向伝搬時間差Δg0(f2,f0)とのズレ量が一定値以上であれば(ステップS217でイエス)、マイクロコンピュータ8は、特性変動判定・補正部86により、このズレ量が一定値未満となるように、通常計測補正値を変更する(ステップS218)。
詳しくは、
Δj(f2,f0)>Δj0(f2,f0)ならば、通常計測補正値をマイナス変更し、
Δj(f2,f0)≒Δj0(f2,f0)ならば、通常計測補正値を変更せず、
Δj(f2,f0)<Δj0(f2,f0)ならば、通常計測補正値をプラス変更する。
また、
Δg(f2,f0)>Δg0(f2,f0)ならば、通常計測補正値をマイナス変更し、
Δg(f2,f0)≒Δg0(f2,f0)ならば、通常計測補正値を変更せず、
Δg(f2,f0)<Δg0(f2,f0)ならば、通常計測補正値をプラス変更する。
具体的には、特性変動判定・補正部86は、補正検査を行なうために、周波数可変部4や駆動部3および受信手段22を制御して、予め決められた計測周波数および駆動パルス数Nを可変させ、その条件に合った検出ポイントで受信するように、計測周波数f2での順方向伝搬時間Tj(f2)および逆方向伝搬時間Tg(f2)、ならびに計測周波数f0での順方向伝搬時間Tj(f0)および逆方向伝搬時間Tg(f0)の計測が行なわれるようにする。
このように、実施例2に係る超音波流量計によれば、実施例1に係る超音波流量計と同様の効果が得られるが、計測周波数を2周波数から3周波数にしたので、よりきめ細かな通常計測補正値の補正可能になり、さらに高精度な計測が実現可能となる。
本発明の実施例1に係る超音波流量計の構成を示すブロック図。
実施例1に係る超音波流量計における計測周波数と順方向伝搬時間および逆方向伝搬時間との関係を示すグラフ。
実施例1に係る超音波流量計における計測周波数と初期順方向伝搬時間差および初期逆方向伝搬時間差との関係を示すグラフ。
実施例1に係る超音波流量計における駆動パルス数と検出ポイントとの関係を説明する波形図。
実施例1に係る超音波流量計の補正動作を表すフローチャート。
本発明の実施例2に係る超音波流量計における計測周波数と順方向伝搬時間および逆方向伝搬時間との関係を具体的に示すグラフ。
実施例2に係る超音波流量計の補正動作を表すフローチャート。
符号の説明
1a,1b 超音波トランスジューサ
2 送受切替部
3 駆動部
4 周波数可変部
5 増幅部
6 受信部
7 伝搬時間計測部
8 マイクロコンピュータ
9 温度計
21 送信手段
16 受信手段
81 周波数−伝搬時間差記憶部
82 周波数−伝搬時間差比較部
83 駆動パルス数管理部
84 受信パルス数管理部
85 検査期間判定部
86 特性変動判定・補正部