JP4644541B2 - 紫外線吸収能を有するエマルション - Google Patents

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本発明は、ポリマー微粒子が水系溶媒中に分散してなるエマルションに関する。より詳しくは、紫外線吸収能を有するポリマー微粒子が水系溶媒中に分散してなるラテックスまたはポリマーコロイドとも呼ばれるポリマーエマルションに関するものである。
ポリマーエマルションは例えば接着剤、コーティング剤、水性塗料などにそのままあるいは主剤として用いられ、さらに、化粧品、薬剤、診断薬、試験薬などの配合成分などとして広範な用途に用いられる。ポリマーエマルションは紫外線吸収剤を原料成分として用いてポリマー微粒子を形成させることにより、紫外線吸収能を付与することができる。この結果、コーティング剤として長期にわたる耐候性を発現させたり、被保護物体を紫外線による劣化から保護することが可能となる。化粧品や医薬品などの用途においては紫外線障害から皮膚を保護することができる。
本発明者は高性能の紫外線吸収剤(紫外線遮蔽剤)として使用可能なポリマーエマルションの合成方法の開発を行った(特許文献1参照)。その結果、低乳化剤使用条件で高融点の紫外線吸収性モノマーを高比率で共重合させたポリマー微粒子を含むエマルションを実用的に合成でき、従来のエマルション合成方法では合成困難なポリマーエマルションすなわち水系の紫外線吸収剤が容易に合成できるようになった。このポリマーエマルションを用いて形成させた薄膜の紫外線遮蔽特性は、ポリマー微粒子の合成に用いた紫外線吸収性モノマー原料の種類と数量に応じて良好な特性を示し、紫外線吸収剤(紫外線遮蔽剤)としての有用性が確認できた。
しかしながら、発明の水系の紫外線吸収剤は通常のエマルションにも一般的に見られるように、ポリマー微粒子のガラス転移温度に比べて最低成膜温度(MFT)が約20℃以上高くなるという特性を示すものであった。これはコート膜(塗膜、被覆膜、コーティング膜)の形成に不利な特性である。特に高いガラス転移温度をもつコート膜が必要な場合、被コーティング物体に耐熱性がないと施用不可能となる。最低成膜温度が高いという問題を解決する方法としては、ポリマー微粒子のガラス転移温度を下げるという解法が使用できることがある。ただし、一般的にはコート膜が柔らかくなるという新たな問題をひきおこすことになる。
さらに近年においてはUV−Aと称される長波長紫外線は皮膚の老化をもたらすということが認識されるようになっているが、ガラスを透過するという性質をもつ。したがって窓用あるいは採光用などのガラス板に紫外線吸収剤を塗布して長波長紫外線を遮断することは建築物の室内環境を管理する上で重要なことである。本発明者はこの点を意識してガラス板に膜厚2〜6 μm程度の紫外線吸収コート膜を形成させることを試みた。しかし、意外にも紫外線吸収剤を薄く塗布した場合は最低成膜温度またはガラス転移温度よりもかなり高温に加熱しても良好なコート膜が形成されないことがあるという問題に直面した。
成膜特性が不良という上記の問題については、通常の対処法としては適当な有機溶媒を成膜助剤を混合して用いる。その結果最低成膜温度を下げ、塗布後に成膜助剤を揮発させることにより所望のガラス転移温度をもつコート膜を形成させる。この方法は非常に有効であるが塗布後の排気処理を適正に行わないと環境中へ揮発性有機物質を放出することになる。
ポリマーエマルションの製造方法(特開平2005−146150)、エマルション(特願2005−143308)
上記の問題すなわち解決すべき課題は、薄く塗布した場合の成膜特性を改良し最高でもガラス転移点付近程度の温度まで加熱することにより所望のコート膜が形成されるようにすれば解決できる。 本発明は、紫外線吸収能に優れるという基本性能をもち、揮発性有機物質を含まず、塗布後にガラス転移温度付近からやや高い温度に加熱するのみで容易に目的とするコート膜の形成が可能な水系の紫外線吸収剤(エマルション)を提供しようというものである。
本発明者は水系の紫外線吸収剤の成膜特性の改良について鋭意検討した。その結果、高いガラス転移温度をもつポリマー微粒子と低いガラス転移温度をもつポリマー微粒子を含んでなるポリマーエマルションが上記課題の有効な解決手段になることに想到し本発明に到達した。
すなわち本発明は下記一般式(1);
Figure 0004644541
(式中R1は水素原子または炭素原子数1−8の炭化水素基を表し、R2は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1−8のアルキル基、炭素原子数1−4のアルコキシ基、ニトリル基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を表し、R3は直鎖状または枝分かれ鎖状構造をもつ炭素原子数1−12のアルキレン基または−O−R4−を表す。R4は直鎖状または枝分かれ鎖状構造をもつ炭素原子数2または3のアルキレン基を表す。R5は水素原子またはメチル基を表す。)で表される化合物を必須モノマー成分として重合させたガラス転移温度が40℃以上のポリマー微粒子と上記一般式(1)で表される化合物を必須モノマー成分として重合させたガラス転移温度が30℃以下のポリマー微粒子とを含有してなることを特徴とするポリマーエマルション。
特徴として
(2) ポリマー微粒子の割合(質量比)が40%以上であることを特徴とする(1)記載のエマルション。
(3) 乳化剤の割合(質量比)が2.5%以下であることを特徴とする(1,2)記載のエマルション。
に関するものである。
以下に本発明を詳述する。
本発明は上記一般式(1)で表されるモノマーをその他のモノマーとともに重合させて得られるポリマー微粒子を含有してなるエマルションであるが、ガラス転移温度の異なるポリマー微粒子を含有することを特徴とする。この特徴により良好な紫外線吸収能をもつだけでなく、成膜助剤などの揮発性有機物質を含まずに良好なコート膜形成特性をもつという好適な特性が実現される。
本発明の紫外線吸収剤(エマルション)はガラス転移温度が異なるポリマー微粒子を含むことを特徴とする。合成方法としては同一の反応液中で2種類あるいは3種類以上のモノマー液滴からポリマー微粒子を形成させてよい。この場合は例えば『ポリマーエマルションの製造方法 (特開平2005−146150)』に示す類の筒状撹拌装置を2基あるいは3基以上用いてそれぞれの撹拌装置でモノマー液滴を生成させ、懸濁重合条件になるように注意して同一水系重合媒体に投入しポリマー微粒子を形成させるなどという方法が適用できる。
本発明者は特開平2005−146150記載のエマルション合成方法をさらに検討し、撹拌装置にモノマー類を供給すると同時に重合開始剤を撹拌装置に供給してモノマー液滴を生成させながら安全に、安定的に重合反応を起こさせることができることを見出した(特願2005−143308)。これは連続的な重合方法あるいは半連続的な重合方法というべきものである。特開平2005−146150の方法の応用(特願2005−143308)として2基あるいは3基以上の撹拌装置にそれぞれ異なる組成のモノマー類を供給すると同時に重合開始剤を撹拌装置に供給してモノマー液滴を生成させながら重合反応を起こさせることができるが、本発明の紫外線吸収剤の合成に適用できる。ここでは撹拌装置の運転条件を選択することにより乳化重合の反応条件も用いることができる。すなわち、モノマーの大部分が撹拌装置内で乳化重合により消費されていれば、当初供給したモノマー組成に対応したガラス転移温度の異なるポリマー微粒子が安定して形成されるからである。特にモノマーが消費された後に均質に混合されるという条件で操作を行う場合は、2種類あるいは3種類以上のポリマーエマルションを予め別々に調製した後に混合することと同等になる。
モノマー類、水、乳化剤などの原料から直接本発明の紫外線吸収剤を合成する上記の方法においては原料の総質量に対するモノマー類の総質量の比は通常30%(質量%)以上である。使用条件にも依存するが、20質量%未満であるとエマルションが十分に紫外線遮蔽効果を発揮できないおそれがある。原料の総質量に対するモノマー類の総質量の比は、好ましくは35質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上である。
本発明の紫外線吸収剤の調製方法としては技術的には2種類あるいは3種類以上のポリマーエマルションを混合し、ガラス転移温度が異なるポリマー微粒子を含むエマルションとすることが容易である。この場合は上記特開平2005−146150に開示された方法や、その方法を改良した上記の連続的な重合方法あるいは半連続的な重合方法(特願2005−143308)により調製したものを用いることは好ましい。また、溶液重合の後に相転換して形成させたエマルションを用いることもできる。
紫外線吸収剤(エマルション)を施用する場合はポリマー微粒子の割合(質量比)が高いほうが一般的に好ましい。ポリマー微粒子の割合が低いと塗布量が多くなるので液ダレや乾燥時間の長時間化という問題が起こることになるからである。これに対して、2種類あるいは3種類以上のモノマーを用いて紫外線吸収剤を直接合成する場合あるいは紫外線吸収剤を調製するための原料となるポリマーエマルションを合成する場合のいずれにおいてもポリマー微粒子の割合が高くなると合成しにくくなる。この点で紫外線吸収剤(ポリマーエマルション)のポリマー微粒子の割合については制限される。通常は紫外線吸収剤(ポリマーエマルション)のポリマー微粒子の割合は30〜60%であり、35〜50%が好ましく、より好ましくは40〜50%である。紫外線吸収剤の使用目的によってはポリマー微粒子の割合がさらに高いほうが好ましいことが考えられるが、濃縮(水分の蒸発)などの方法でポリマー微粒子の割合を上げて例えば50〜70%などとすることは可能である。実用的なポリマーエマルションの合成においては原料のモノマーはポリマー微粒子にほぼ完全に転換される。乳化剤使用量は少ないので、実用的にはここで説明したポリマー微粒子の割合(質量比)は固形分率(不揮発分率、NVともいう)と等しくなり、また、水やモノマーなどの合成原料総質量に対するモノマーの総質量の比率と等しくなる。
本発明の紫外線吸収剤を2種類または3種類以上のポリマーエマルションを混合して調製する場合、上述したポリマー微粒子の割合を満たすためには原料の最低限1種類はポリマー微粒子の割合(質量比、NV)が最低30質量%以上、通常は40質量%以上である必要がある。この点で本発明の紫外線吸収剤(エマルション)はガラス転移温度が好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上のポリマー微粒子の割合(質量比、NV)が40質量%以上であることを特徴とするエマルションと、ガラス転移温度が好ましくは30℃以下、より好ましくはガラス転移温度が20℃以下、特に好ましくは10℃以下のポリマー微粒子の割合(質量比、NV)が40%以上のエマルションを混合して調製することが好ましい。原料として用いるポリマーエマルションの少なくとも1種類のポリマー微粒子の割合(質量比、NV)が高ければ、原料の混合比によっては他のポリマーエマルションのポリマー微粒子の割合(質量比、NV)が低くなっても紫外線吸収剤(ポリマーエマルション)としてのポリマー微粒子の割合(質量比、NV)は上述した数値を満たすことは可能である。したがって、本発明の紫外線吸収剤(エマルション)はガラス転移温度が好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上のポリマー微粒子の割合(質量比、NV)が40%以上であることを特徴とするエマルションと、ガラス転移温度が好ましくは30℃以下、より好ましくはガラス転移温度が20℃以下、特に好ましくは10℃以下のポリマー微粒子を含有するエマルションを混合することで調製してよい。あるいは、ガラス転移温度が好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上のポリマー微粒子を含有することを特徴とするエマルションとガラス転移温度が好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下、特に好ましくは10℃以下のポリマー微粒子の割合(質量比、NV)が40%以上であることを特徴とするエマルションを混合したものでもよい。
上記の説明あるいは以後の説明や記述において用いるガラス転移温度は、原料中のポリマー微粒子のガラス転移温度の実測値とすることが可能である。ただし、実用上の簡便さという点では原料エマルションの合成に用いたモノマー組成をもとにFoxの式を用いて計算した計算値とすることは好ましい選択である。
高い紫外線吸収能を付与するためには紫外線吸収剤(エマルション)中に存在する2種類あるいは3種類以上のポリマー微粒子のいずれの種類も下記一般式(1);
Figure 0004644541
(式中R1は水素原子または炭素原子数1−8の炭化水素基を表し、R2は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1−8のアルキル基、炭素原子数1−4のアルコキシ基、ニトリル基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を表し、R3は直鎖状または枝分かれ鎖状構造をもつ炭素原子数1−12のアルキレン基または−O−R4−を表す。R4は直鎖状または枝分かれ鎖状構造をもつ炭素原子数2または3のアルキレン基を表す。R5は水素原子またはメチル基を表す。なお、枝分かれ鎖状とは炭素−炭素結合が直鎖状でなく分岐して結合するものを含み、分岐状であって枝分かれ鎖状であってもよい。)で表される化合物を必須モノマー成分として重合させて形成させたものであることが好ましい。ただし、紫外線吸収能の要求レベルによってはポリマー微粒子の最低限1種が一般式(1)で表される化合物を必須モノマー成分として重合させて形成させたものとすることができる。この場合は他種のポリマー微粒子は一般式(1)で表される化合物を含まないかまたは少量含むモノマー原料から形成させたものとすることも選択できる。
一般式(1)で示される紫外線吸収モノマーはその他のモノマー成分に応じて選択することが可能である。したがって混合するポリマー微粒子のそれぞれの合成に異なったものを原料としてよい。また2種類以上の紫外線吸収モノマーを同一の比率または異なる比率で混合し合成に用いてもよい。
一般式(1)で示される具体的な化合物を用いる比率すなわち共重合させるモノマー総質量に対する比率(共重合率)としては25質量%以上であることが好ましく、より好ましくは35質量%以上であり、さらに好ましくは45質量%である。特に薄膜を形成させて用いる場合は実施例に記載したように50質量%以上や60質量%以上などとすることができる。ここに示した比率は、一般式(1)で示される化合物を2種類あるいは3種類以上以上用いる場合はそれらの合計量に対して適用することが好ましい。また、紫外線吸収剤中に存在するの2種類あるいは3種類以上のポリマー微粒子のいずれの種類もここに示した比率(共重合率)で一般式(1)で示される化合物を共重合させて合成したものであることが好ましい。ただし必要に応じて紫外線吸収剤中に存在する2種類あるいは3種類以上のポリマー微粒子のうちの少なくとも1種類について上記の比率(共重合率)を満たすこととし、共存させる他種のポリマー微粒子は一般式(1)で示される紫外線吸収モノマーを含まないか、または、少量含むモノマーを重合させたものとすることもできる。その結果、ガラス転移温度、成膜特性などで良好な特性を示す紫外線吸収剤(エマルション)を調製することができる。
一般式(1)で示される具体的なベンゾトリアゾール化合物としては、限定はされず、例えば、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−3´−tert−ブチル−5´−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、および、2−〔2´−ヒドロキシ−5´−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3´−tert−ブチルフェニル〕−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタクロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学株式会社製の紫外線吸収性モノマー、製品名RUVA−93。以下RUVA−93という。Foxの式によるガラス転移温度の計算においては100℃とした。)などが好ましく挙げられる。より好ましくは2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタクロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(RUVA−93)である。これらは単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
ポリマーエマルションの合成に用いる一般式(1)以外のモノマーとしては、(i)一般式(1)以外の紫外線吸収効果をもつ化合物、(ii)紫外線照射によって生成したラジカルを補足または消去する特性をもつ化合物(以下、紫外線安定性基をもつモノマーという)、(iii)その他の重合性モノマーの1種類または2種類以上であることが好ましい。
上記(i)紫外線吸収効果をもつ化合物としては下記一般式(2):
Figure 0004644541
(式中R1およびR5は上記一般式(1)中のR1およびR5と同じである。R6は炭素原子数1〜12の直鎖状または枝分かれ鎖状のアルキレン基を表す。R7は、水素原子または水酸基を表す。R8は水素原子または炭素原子数1〜6のアルコキシ基を表す。)で表されるベンゾフェノン化合物が好適である。なお、枝分かれ鎖状とは炭素−炭素結合が直鎖状でなく分岐して結合するものを含み、分岐状であって枝分かれ鎖状であってもよい。
上記一般式(2)で表されるベンゾフェノン化合物としては、限定はされず、例えば、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノン、2,2´−ジヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシ−4´−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、および、2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノンなどが好ましく挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
上記(i)紫外線吸収効果をもつ化合物としては、また、下記一般式(3):
Figure 0004644541
(式中R5は上記一般式(1)中のR5と同じ意味を表す。R9は直接結合、―O(CH2CH2−または−OCH2CH(OH)CH2−を表す。nは1〜5の整数である。R10〜R17は、同一または異なって、水素原子、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、アルケニル基、アルキル基からなる群より選ばれる1種以上の基を表す。)で表されるトリアジン化合物が好適である。
上記一般式(3)で表されるトリアジン化合物としては、限定はされず、例えば、2,4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−s−トリアジン、2,4−ビス(2−メチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−s−トリアジン、および、2,4−ビス(2−メトキシフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−s−トリアジンなどが好ましく挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を併用してもよく、一般式(2)で表される1種類または2種類以上のベンゾフェノン化合物と併用してもよい。
上記(ii)紫外線安定性基を有するモノマーとしては、限定はされないが、例えば、下記一般式(4)または(5)で表されるピペリジン類のモノマーが好ましく挙げられる。
Figure 0004644541
(ただし、一般式(4)中、R18は水素原子またはシアノ基を表し、R19およびR20は同一または異なって水素原子またはメチル基を表し、R21は水素原子または炭化水素基を表し、R22は酸素原子またはイミノ基を表す。)
Figure 0004644541
(ただし、一般式(5)中、R18、R19、R20およびR22は上記一般式(4)におけるR18、R19、R20およびR22と同じ意味を表し、R23およびR24は同一または異なって水素原子またはメチル基を表す。)
上記一般式(4)で表されるモノマーとしては、限定はされず、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、および、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが好ましく挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
上記一般式(5)で表されるモノマーとしては、限定はされず、例えば、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、および、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが好ましく挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を併用してもよく、一般式(4)で表される1種類または2種類以上の紫外線安定性基を有するモノマーと併用してもよい。
上記(iii)その他の重合性モノマーとしては、上記一般式(1)のモノマーと共重合可能なモノマーであればよいが、下記モノマーの1種類または2種類以上が好適である。このようなモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基を有するモノマーが例示できる。また、カルボキシル基を有するモノマーの金属塩、例えば、Na塩、K塩、NH4塩、Mg塩、Ca塩、Sr塩、Zn塩、Zr塩、Al塩なども好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸アンモニウム、(メタ)アクリル酸マグネシウム、(メタ)アクリル酸カルシウム、(メタ)アクリル酸ストロンチウム、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸ジルコニウム、(メタ)アクリル酸アルミニウム、イタコン酸ナトリウム、イタコン酸カリウム、イタコン酸アンモニウム、イタコン酸マグネシウム、イタコン酸カルシウム、イタコン酸ストロンチウム、イタコン酸亜鉛、イタコン酸ジルコニウム、イタコン酸アルミニウム、マレイン酸ナトリウム、マレイン酸カリウム、マレイン酸アンモニウム、マレイン酸マグネシウム、マレイン酸カルシウム、マレイン酸ストロンチウム、マレイン酸亜鉛、マレイン酸ジルコニウム、マレイン酸アルミニウム、フマル酸ナトリウム、フマル酸カリウム、フマル酸アンモニウム、フマル酸マグネシウム、フマル酸カルシウム、フマル酸ストロンチウム、フマル酸亜鉛、フマル酸ジルコニウムおよびフマル酸アルミニウム、クロトン酸ナトリウム、クロトン酸カリウム、クロトン酸アンモニウム、クロトン酸マグネシウム、クロトン酸カルシウム、クロトン酸ストロンチウム、クロトン酸亜鉛、クロトン酸ジルコニウムおよびクロトン酸アルミニウムなどが例示できる。
上記(iii)その他の重合性モノマーとしては上記カルボキシル基を有するモノマーの他に、下記のモノマーの1種類または2種類以上が好ましい。このようなモノマーとしては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート等の酸性リン酸エステル系モノマー; 2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートおよび水酸基末端可撓性(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル化学工業株式会社製、製品名:プラクセルFM)等の活性水素を持った基を有するモノマー; (メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートおよびN−メチロール(メタ)アクリルアミド等の含窒素モノマー; エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2個の重合性二重結合を有するモノマー; 塩化ビニル等のハロゲン含有モノマー; スチレンおよびα−メチルスチレン等の芳香族系モノマー; ビニルエーテル; メチル 3−メトキシアクリレート(CH3O−CH=CHCOOCH3); 下記一般式(6)
Figure 0004644541
式中R25は水素原子またはメチル基を表す。R26は炭素原子数1以上の炭化水素基を表す)で示されるモノマー。一般式(6)においてR26で示される置換基(炭素原子数1以上の炭化水素基)は特に限定はされず、例えば、下記に例示される置換基が好適である。
シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基など炭素原子数4以上の脂環式炭化水素基; メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基や、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基など炭素原子数4以上の直鎖状または枝分かれ鎖状のアルキル基; ボルニル基、イソボルニル基など炭素原子数4以上の多環式炭化水素基; ベンジル基、グリシジル基、テトラヒドロフルフリル基、フルフリル基、2−ヒドロキシエチル基、2−フェノキシエチル基、2−(アセトアセトキシ)エチル基、N,N−ジメチルアミノエチル基、N,N−ジエチルアミノエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基、などの芳香環や酸素原子や窒素原子やイオウ原子やリン原子などを部分構造にもつ炭化水素基; トリフルオロエチル基、テトラフルオロプロピル基、オクタフルオロペンチル基、ヘプタドデカフルオロデシル基などのハロゲン原子を部分構造にもつ炭化水素基などが好ましい。
上記一般式(6)で示されるモノマーとしては限定はされないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートおよびイソステアリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸(低級、中級、高級)アルキルエステルや、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンチル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、2−プロペノイックアシッド〔2−〔1,1−ジメチル−2−〔(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ〕エチル〕−5−エチル−1,3−ジオキサン−5−イル〕メチルエステル(日本化薬社製、商品名:KAYARAD R−604)、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートおよびヘプタドデカフルオロデシル(メタ)アクリレートなどが好ましく挙げられる。なかでも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよびトリメチロールプロパン(メタ)アクリレートがより好ましい。これらは単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
一般式(1)で示される紫外線吸収モノマーは多量に用いられるので、ポリマー微粒子のガラス転移温度を決定する時には重要な因子である。しかしながら、ポリマー微粒子のガラス転移温度を決めるという点では選択の範囲が狭い。これに対して一般式(1)で示されるモノマー以外のモノマーとしては、通常、一般式(6)で表されるモノマーは総量として多く用いられ、選択の範囲が広い。この点で一般式(6)で表されるモノマーの選択はポリマー微粒子のガラス転移温度を決める上で重要である。
本発明に用いるエマルション中に存在するポリマー微粒子はガラス転移温度が高いものと低いものとに大きく分類される。ポリマー微粒子のガラス転移温度が高いとはガラス転移温度が40℃以上であることが好ましく、より好ましくはガラス転移温度が50℃以上である。ポリマー微粒子のガラス転移温度が低いとはガラス転移温度が30℃以下であることが好ましく、より好ましくはガラス転移温度が20℃以下である。さらに好ましくはガラス転移温度が10℃以下である。
紫外線吸収エマルションは最終的にはコート膜を形成させる目的で用いられることが多い。したがって使用状態を考慮して、要求されるコート膜のガラス転移温度を基準(以下要求ガラス転移温度と称する)として、ガラス転移温度が高いまたは低いということを考えてもよい。この場合はポリマー微粒子のガラス転移温度が高いとは要求ガラス転移温度に比べて10℃以上高いことが好ましく、20℃以上高いことがより好ましい。またポリマー微粒子のガラス転移温度が低いとは要求ガラス転移温度に比べて10℃以上低いことが好ましく、20℃以上低いことがより好ましい。
紫外線吸収剤として用いるエマルションは乳化剤の含有量が少ないほうが一般に好ましいので、先に本発明者が出願した方法(特開平2005−146150、特願2005−143308)で合成したものが好ましい。一般的にはモノマーの総量に対する乳化剤量を2.5質量%以下、好ましくは1.7質量%以下として調製することが推奨される。乳化剤量をこの範囲内とすることでポリマー微粒子がもつ特性が発現しやすくなる。特に特開平2005−146150の合成方法を半連続化または連続化した合成方法は乳化剤量を低減しやすいので、乳化剤量使用量を0.1〜2.5質量%とすることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.7質量%である。ここに示した乳化剤使用量は固形分比率が40%以上のポリマーエマルションの合成に一般的に適用できる。モノマー組成や固形分比率によっては乳化剤量使用量を0.1〜1.0質量%やさらに好ましくは0.1〜0.5質量%とすることもできる。乳化剤として反応性乳化剤を用いポリマーの構成残基として特性を積極的に用いる場合はここに示した使用量を越えて用いることができる。
乳化剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤、反応性界面活性剤などが使用できる。乳化剤は単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
上記アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウム)、ドデシル硫酸アンモニウム(ラウリル硫酸アンモニウム)などのアルキル硫酸エステル塩類; ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム、ドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩類; ポリオキシエチレンアルキルスルホン酸塩(市販品では、例えば、第一工業製薬(株)製、製品名: ハイテノール18E等); ポリオキシエチレンアルキルアリールスルホン酸塩(市販品では、例えば、第一工業製薬(株)製、製品名:ハイテノールN−08等); ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸ホルマリン縮合物;ドデシル酸アンモニウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ヒマシ油カリセッケンなどの脂肪酸塩; などが好適である。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(市販品では、例えば、三洋化成工業(株)製、製品名:ナロアクティーN−200等);ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル(市販品では、例えば、三洋化成工業(株)製、製品名:ノニポール−200等);ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの縮合物;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセライド;ポリアミド;エチレンオキサイドと脂肪族アミンの縮合生成物;などが挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテートなどのアルキルアミンの塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩などが挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイドなどのアルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド型乳化剤乳化剤などが挙げられる。
高分子界面活性剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリヒドロキシエチルアクリレート等のポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;またはこれらの重合体を構成する重合性モノマーのうちの1種以上を共重合成分とする共重合体;などが挙げられる。
反応性界面活性剤としては、例えば、種々の分子量(エチレンオキシド付加モル数が異なる)のポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンRN類 特許2651736号)やその硫酸塩(例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンHS類、アクアロンBC類 特許2652459号)やアリル(オキシ)基を導入したポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンKH類 特許2596441号)、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン・アルキルフェノールエーテル(メタ)アクリル酸エステル、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸アンモニウム、ポリオキシエチレングリコールのモノマレイン酸エステル及びその誘導体およびポリオキシアルキレン・アルキルエーテル・リン酸エステルなどが挙げられる。
ガラス転移温度が高いポリマー微粒子とガラス転移温度が低いポリマー微粒子の混合比率(質量比)は一方の微粒子が他方の微粒子で取り囲まれている状態を限界と考えれば微粒子の直径が同等の場合、15:1〜1:15が最大範囲と考えられるが、それぞれの微粒子がある程度連続的に接触できることを考えるとおおよそ4:1〜1:4が実用的範囲と考えられ、3次元的に連続的に接触できることを考えると3:1〜1:3程度の範囲で選択することが好ましい。実験的にも3:1〜1:3の範囲を外れると混合比率の多いポリマー微粒子の特性が目立つようになり、紫外線吸収剤としての成膜特性上の利点は少なくなる傾向が見られた。本発明はどちらの粒子の特性も利用し、最終的に均質なコート膜にしているので2:1〜1:2の範囲で混合することが特に好ましい。最も好ましいのは1:1で混合することであるが、平均粒子径の差や配合時の計量誤差を考えれば1.3:1〜1:1.3が実用的に最も好ましい混合比と考えられる。技術的にもポリマー微粒子の原料となるモノマーの組成は必要に応じて変えることができるので、コーティング剤として用いる場合は混合比率は1:1を原則として、コート膜形成特性の微調整の目的で1.5:1〜1:1.5の範囲や広くても2:1〜1:2の範囲にすることが技術的に好ましい。微粒子の直径が同等でない場合も上記の混合比率(質量比)に準じてよい。一方の混合比率が高くなれば2種類または3種類以上の異質のポリマー微粒子を含有するという特徴は小さくなるので、上記15:1〜1:15はおおむね妥当な最大範囲であると思われる。ただし、好ましい範囲としては例えば5:1〜1:5、より好ましい範囲として3:1〜1:3、さらに好ましい範囲として2:1〜1:2などやや広い範囲を用いてもよい。
本発明の紫外線吸収剤は浸漬、刷け塗り、噴霧などの方法で棒状、板状、筒状、塊状などの形状あるいはそれらの複合した形状をした合成樹脂製の造形物や製品に塗布できる。また布、織物、繊維、皮革、羽根などの製品や木工製品、紙製品、植物などの材料や物品に塗布することができる。ガラス板、ガラスブロック材に塗布してもよい。塗布後の乾燥により水分が蒸発し、紫外線遮蔽能をもつコート膜(以下一次コート膜という)が形成される。本発明の記述において特に一次コート膜とよぶのは紫外線吸収剤が異質なポリマー微粒子を含有してなるので、異質のポリマー微粒子が接着して形成されるコート膜(一次コート膜)は同質のポリマー微粒子が接着して形成されるコート膜とは明らかにコート膜(の構造)が異なるからである。
上記一次コート膜は通常のエマルションをガラス転移温度以下で塗布した場合に形成される乾燥物とは異なることを明確に区別するために参考例の評価方法により特性を調べた。参考例の評価方法はコート膜あるいは乾燥物の状態を電気抵抗と水中での安定性により識別するものである。
用いた測定方法をまず説明する。ポリマー微粒子は表面に界面活性剤、原料のモノマー、重合開始剤に由来する電荷をもっている。ここでいう原料のモノマーに由来する電荷とは本来の原料だけでなく、原料中のイオン性不純物のもつ電荷や重合反応中に生成する可能性があるモノマー分解物のもつ電荷も含むものと考えて差し支えない。これらの電荷によりエマルションの塗布により形成される一次コート膜はその構造に応じて導電性を示す。一次コート膜が均質化するにつれてポリマー粒子間の空隙が消失し、ポリマー粒子表面に存在した電荷はコート膜中に分散して導電性が減少し電気抵抗が高くなると考えられる。本発明のように導電性コート膜の形成を目的としない場合は、界面活性剤、原料中のイオン解離可能なモノマー、イオン性の重合開始剤などの導電性にかかわる原材料の種類と数量が同じであればコート膜の電気抵抗の上昇はコート膜の均質性の上昇を示すことになる。したがって、ポリマー微粒子の凝集や融合により形成される一次コート膜の電気抵抗や耐水性は一次コート膜の特性評価の指標として使用できると考えられる。この考えは表1の試料T0〜T50についての成膜特性の評価結果により妥当性が確認できた。T0は室温(23℃)で均質性が高い平滑なコート膜を与えるが、T10、T20とガラス転移温度が高くなるにつれてコート膜の均質性は低くなった。同時に電気抵抗とコート膜の耐水性が低下した。したがって試料T0〜T50の測定結果と比較することにより同系統のポリマー微粒子から形成された一次コート膜の定量的な評価ができる。
この評価方法を用いて本発明の紫外線吸収剤により形成された一次コート膜を評価した。測定した例を表1に記載したが、ガラス転移温度30℃のT30では電気抵抗が低く耐水性が見られないという結果から室温の塗布では乾燥物を形成すると判定できた。これに対して、計算上のガラス転移温度が30℃付近の紫外線吸収剤2や紫外線吸収剤3は電気抵抗の点ではT20やT30と同程度であったが、かなりの耐水性を示したことからガラス転移温度に換算すると20℃相当と判定でき、一次コート膜が形成されたことが認められた。さらに計算上のガラス転移温度が35℃の紫外線吸収剤1の場合はかなりの透明感をもつ良好な一次コート膜が形成され、ガラス転移温度に換算すると10℃相当と判定できた。したがって本発明の紫外線吸収剤は1種類のポリマー微粒子からなる紫外線吸収剤と比較して利用上の有用性、進歩性があることが認められた。
本発明の紫外線吸収剤により形成される一次コート膜は透明度や機械的強度の点で要求仕様を満たせば最終的なコート膜としてよい。一次コート膜あるいは一次コート膜を形成させた製品には、意匠性、装飾性など従来の紫外線吸収剤では容易に実現できなかった機能を付与できるので、後に別途説明する。従来の紫外線吸収剤を塗布した場合に得られるコート膜と同等の一般的なコート膜は一次コート膜の加熱処理により形成される。
本発明の紫外線吸収剤の塗布量であるが一次コート膜またはコート膜の膜厚として一般的には0.3〜10μmの範囲が適当であり、目的によっては0.3〜100μmの範囲で用いてもよい。通常の使用では0.5〜10μmの範囲が適当であり、塗布時の乾燥性と紫外線遮蔽能のバランスからは1〜6μmの範囲とすることが好ましい。透明な紫外線遮蔽用のコート膜を形成させる場合は1〜4μmの範囲がより好ましい。不透明な一次コート膜を利用する場合は3〜10μmの範囲とすることも好ましい。
一般的なコート膜を形成させる場合は一次コート膜を計算上のガラス転移温度ないしその10℃高温まで加熱処理することが好ましい。合成樹脂製品などの被コート物品の耐熱性に問題がなければ、一次コート膜を計算上のガラス転移温度ないしその20℃高温やさらに高温にまで加熱処理することも可能である。この加熱処理により外見上均質となり、透明度が上がり、機械的強度が強くなるなど、一般的なコート膜として好ましくなる。合成樹脂製品が熱可塑性を示す場合、一次コート膜の加熱処理温度は低いほうが好ましい。一般的な熱可塑性を示す合成樹脂製品は使用可能な温度が80〜120℃付近のものが多い。この点で、最低成膜温度は高くても120℃以下が好ましく、汎用のコート剤としては最低成膜温度は80℃以下であることがより好ましい。本発明の紫外線吸収剤は最低成膜温度を計算上のガラス転移温度と同程度から10℃程度高い温度にすることができる特性をもつので好ましい。ここでいう計算上のガラス転移温度とはポリマー微粒子混合物全体の原料モノマー組成に対応して計算されるガラス転移温度という意味である。単純なポリマーエマルションの場合は最低成膜温度はガラス転移温度よりも30℃程度高いことが多い。したがって単純なポリマーエマルションのポリマー微粒子のガラス転移温度は被コート物品の使用可能な温度よりも30℃以上低く、成膜特性によっては40℃以上低くする必要があった。このようにポリマー微粒子すなわちコート膜のガラス転移温度が低いと、コート膜が軟らかくなるために他のコート膜や物品と接着するなどの不都合が懸念される。本発明の紫外線吸収剤は一次コート膜の加熱処理温度を被コート物品の使用可能な温度に等しくすることができるが、この温度を計算上のガラス転移温度付近とすることができる。その結果、単純なポリマーエマルションから形成されるコート膜に比べてガラス転移温度が通常で20〜30℃、場合によっては40℃以上高いコート膜を形成することが可能である。
本発明の紫外線吸収剤により形成される一次コート膜には、意匠性、装飾性など従来の紫外線吸収剤によるコート膜では容易に実現できなかった機能を付与できる。すなわち、本発明の紫外線吸収剤にはガラス転移温度の高いポリマー微粒子とガラス転移温度の低いポリマー微粒子が2種類または3種類以上存在するが、それらの特性は光学特性など特性においても異なる。したがってポリマー微粒子の特性を調整することにより従来の紫外線吸収剤による紫外線遮蔽コート膜には見られない装飾性を付与することができる。
一次コート膜は、ポリマー微粒子の組成や特性を選択することにより白色ないし半透明あるいは透明とすることができる。したがって、例えば塗料やスプレーなどとしてガラス板やアクリル板、塩化ビニル板、ポリスチレン板などの合成樹脂板に本発明の紫外線吸収剤を塗布することにより透明の板に紫外線遮蔽能、可視光線散乱効果や赤外線散乱効果を与え、目隠し効果を付与することができる。
一次コート膜は加熱処理により均質または見かけ上均質なコート膜に転換でき、透明にすることができる。その特性の利用として、特定の部分を加熱処理することにより透明度を高め、半透明やさらには透明の部分を所望の形状に形成させることができる。したがって加熱する部位と温度と時間をコントロールすることにより例えば人物、動植物や菌類や微生物、建造物、自然物、風景、模様などの図案や絵画をガラス板や合成樹脂板などの被コート材に形成させ、意匠性や装飾性さらには芸術性をも付与できる。この場合透明度の違いや光散乱の差による明暗が形成されやすいと考えられるので、エッチングガラス風や水墨画風の図案や絵画の形成は好ましい利用法と考えられる。
加熱処理するための熱源としては広い面積を加熱したい場合は温風や熱風や赤外線(加熱炉)を用いてもよい。図案や絵画をガラス板や合成樹脂板に形成させる場合は温風や熱風や赤外線を用いてもよい。またレーザーや赤外線ビームを用いて加熱し描画することや、簡便には太陽光をレンズ、反射鏡で集光して熱源として描画することも好ましい。これらのいずれの場合もステンシルなどを併用して所望の図案や絵画を形成することができる。ここに示した描画方法はガラス板や合成樹脂板単体だけでなく建築材料や装飾素材としてすでに使用が行われているガラス板や合成樹脂板に対しても適用できる。
本発明の紫外線吸収剤は塗料やスプレーなどとしてガラス板や合成樹脂板単体に塗布できるだけでなく、ガラス窓や鏡など構造物、建築物、物品など既にその使用が行われている物に対しても塗布できる。その結果として既存のガラス窓に紫外線遮蔽能を付与するだけでなく壁画、絵画としての意匠性や装飾性や芸術性をも付与できる。この場合、ガラス窓に透明感による明暗を形成させることが容易であると考えられる。さらに、本発明の紫外線吸収剤に色素を混合して用いれば、色素の褪色を低減でき、着色コーティング剤として用いることができる。したがって例えばガラス窓や鏡に紫外線遮蔽能を付与するだけでなく、それらを着色したり、図案や絵画を形成させることが容易であると考えられる。
本発明の紫外線吸収能をもつエマルションはガラス転移温度が異なるポリマー微粒子が存在することを特徴とする。その結果コート膜の形成特性が良好であり、被保護物品をガラス転移温度付近まで加熱するのみで外見上均質なコート膜が得られるだけでなく、被保護物品をガラス転移温度まで加熱しなくても白色ないし透明のコート膜(一次コート膜)が得られるという特徴がある。また白色ないし透明感の低いコート膜(一次コート膜)は、可視光線散乱効果や赤外線散乱効果を与え、目隠し効果を付与できる。この場合は加熱により透明または透明度の高いコート膜に転換することができるので被コート材に紫外線遮蔽能を付与できるだけでなく図案や絵画を形成させ、意匠性や装飾性をも付与できる。
以下に実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。合成例1〜7は本発明の紫外線吸収剤の調製に用いることができるポリマー微粒子の割合(質量比)が40%のエマルションを1kgずつ合成した例であるが、本発明の紫外線吸収剤の調製に用いることができるエマルションは合成例に限定されるものではない。
合成例1
筒状撹拌装置に重合開始剤の同時に供給できるように改良した特許文献1ポリマーエマルションの製造方法(特開平2005−146150)に記載の装置を用いた。合成装置を加熱するために用いる水浴の温度は89〜92℃に調節した。アクアロンBC1025(第一工業製薬株式会社製)を3 gと水を15gを混合した水溶液を通液して合成装置の壁面を濡らした。その直後に2−エチルへキシルアクリレート(以下2EHAと略称)を175g、メチルメタクリレート(以下MMAと略称)を25g、RUVA−93を200g含むモノマー混合物を、反応性乳化剤アクアロンBC1025を33g、メタクリル酸(以下MAAと略称)を1.8g、水を530g、市販濃アンモニア水を0.9g混合して調製した水溶液とともに、加熱管に通じて筒状撹拌装置に供給した。このとき同時に、重合開始剤として過硫酸アンモニウム3.0gを水30gに溶解した水溶液を供給することにより筒状撹拌装置内において重合反応を起こさせるという連続合成法に近い合成条件でエマルション(実施例や参考例ではT0と略称)を調製した。ポリマー微粒子の平均粒子径は138nm、重量平均分子量は40.7kであった。参考例に記載の方法を用いて成膜特性の評価を行った。評価結果を表1に示した。
合成例2
合成例1と同様の合成操作により2EHAを110g、ブチルアクリレート(BAと略称)を50g、MMAを40g、RUVA−93を200g含むモノマー混合物を用いてエマルション(実施例や参考例ではT10と略称)を調製した。ポリマー微粒子の平均粒子径は162nm、重量平均分子量は43.1kであった。参考例に記載の方法を用いて成膜特性の評価を行った。評価結果を表1に示した。
合成例3
合成例1と同様の合成操作により合成装置の壁面を最初に濡らす水溶液中のアクアロンBC1025の量を1g、2EHAを132g、MMAを68g、RUVA−93を200g含むモノマー混合物を用いてエマルション(実施例や参考例ではT20と略称)を調製した。ポリマー微粒子の平均粒子径は171nm、重量平均分子量は49.8kであった。参考例に記載の方法を用いて成膜特性の評価を行った。評価結果を表1に示した。
合成例4
合成例1と同様の合成操作により合成装置の壁面を最初に濡らす水溶液中のアクアロンBC1025の量を1 g、2EHAを112g、MMAを88g、RUVA−93を200g含むモノマー混合物を用いてエマルション(実施例や参考例ではT30と略称)を調製した。ポリマー微粒子の平均粒子径は194nm、重量平均分子量は57.0kであった。参考例に記載の方法を用いて成膜特性の評価を行った。評価結果を表1に示した。
合成例5
合成例1と同様の合成操作により合成装置の壁面を最初に濡らす水溶液中のアクアロンBC1025の量を1 g、2EHAを93g、MMAを107g、RUVA−93を200g含むモノマー混合物を用いてエマルション(実施例や参考例ではT40と略称)を調製した。ポリマー微粒子の平均粒子径は183nm、重量平均分子量は69.5kであった。参考例に記載の方法を用いて成膜特性の評価を行った。評価結果を表1に示した。
合成例6
合成例1と同様の合成操作により合成装置の壁面を最初に濡らすのは水として、2EHAを76g、MMAを124g、RUVA−93を200g含むモノマー混合物を用いてエマルション(実施例や参考例ではT50と略称)を調製した。ポリマー微粒子の平均粒子径は178nm、重量平均分子量は66.4kであった。参考例に記載の方法を用いて成膜特性の評価を行った。評価結果を表1に示した。
合成例7
合成例1と同様の合成操作により合成装置の壁面を最初に濡らすのは水として、シクロヘキシルメタクリレート(CHMAと略称)を90g、ブチルメタクリレート(BMAと略称)を50g、スチレンを60g、RUVA−93を200g含むモノマー混合物を用いてエマルション(実施例や参考例ではT80と略称)を調製した。ポリマー微粒子の平均粒子径は253nm、重量平均分子量は473kであった。
実施例1
T80のエマルション2部とT0のエマルション2部を混合し、紫外線吸収剤1を調製した。バーコータ(6番)を用いてスライドガラス(長さ76mm、幅26mm、板厚1mm)に塗布し3μm厚の一次コート膜を形成させた。スライドガラスの一部を透明化が起きるまでホットプレート上において加熱した。この状態を図1に示した。一次コート膜と透明になったコート膜について紫外線透過率を調べたが、結果を図2に示した。さらに参考例に記載の方法により一次コート膜の評価を行った。評価結果を表1に示した。
実施例2
T50のエマルション2部とT10のエマルション2部を混合し、紫外線吸収剤2を調製した。参考例に記載の方法により一次コート膜の評価を行った。評価結果を表1に示した。
実施例3
T50のエマルション2部とT0のエマルション1部を混合し、紫外線吸収剤3を調製した。バーコータ(6番)を用いてスライドガラス(長さ76mm、幅26mm、板厚1mm)に塗布し3μm厚の一次コート膜を形成させた。スライドガラスの一部を透明化が起きるまでホットプレート上において加熱した。また、一次コート膜の他の一部を加熱の程度が中心方向に弱くなるように加熱したが、加熱の強弱に対応して透過度の強弱がみられた。この状態を図1に示した。一次コート膜と透明になったコート膜について紫外線透過率を調べたが、結果を図3に示した。さらに参考例に記載の方法により一次コート膜の評価を行った。評価結果を表1に示した。
Figure 0004644541
実施例4
実施例3において調製した紫外線吸収剤3をバーコータ(10番)を用いてガラス板(長さ150mm、幅100mm、板厚1.5mm)の片面に塗布し乾燥させて白色の一次コート膜を形成させた。他の面(裏面)に熱源としてはんだごてのこてさきをあてて所定の部位を加熱した。加熱の度合いにより一次コート膜は透明度の異なるコート膜に転換され、図案を形成させることができた。図4はその一例を示した
参考例
本発明においては一次コート膜を以下本参考例の方法により評価した。銅板(長さ50mm、幅30mm、板厚 1 mm)の表面に10番バーコータによりエマルションを塗布した。室温で1日乾燥後に得られた5μm厚の乾燥物(エマルションの蒸発残渣または一次コート膜)を試料コート膜として測定に供した。試料コート膜の上に電解液として1M硫酸銅水溶液30μLで濡らした一辺8mmの正方型のろ紙を置き、さらに直径8mmの銅製円柱を載せて測定セルを構成した。銅板と銅製円柱の底面の間に50〜500nAの微弱電流を流したときに生ずる電圧からファラデー抵抗(銅板と電解液の間、銅製円柱と電解液の間で生ずる)とコート膜の抵抗の総和を求めた。試料コート膜無しの場合に得られた測定値26Ωをファラデー抵抗としたが、ファラデー抵抗とコート膜の抵抗の総和である測定値から差し引くことによってコート膜の抵抗値とした。T20がT30よりも低くなったが、この原因はファラデー抵抗が銅電極(銅板、銅製円柱)の表面の影響を受けやすいことに起因する測定誤差のためと思われた。
試料コート膜の抵抗の測定においては作成した試料コート膜の大部分は未使用のままである。そこで、試験に用いた試料コート膜を2分間程度流水中で指でこすることにより試料コート膜の安定性を調べた。この試験方法においてはポリマー微粒子が銅板表面上においてゆるく凝集しているのみで一次コート膜を形成していないと洗い流され、ポリマー微粒子が一次コート膜を形成し、銅板表面に付着(接着)していれば洗い流されない。試験結果(試料コート膜安定性)を試料コート膜が完全に流失した場合は−、一部流失した場合は±、流失が見られなかった場合は+として表示し、さらに流失が見られなかったものについては電気抵抗測定に用いた部分の状態を観察して変色が著しいものは+、変色がかなり見られるものは+±、変色の程度が少ないものは++として5段階で表示した。
スライドガラス上に形成した一次コート膜と熱処理により透明化したコート膜の模式図。透明度が高い部分を模式図では暗い灰色で示し、白色になるにつれて灰色の明るさを上げて示した。実施例1記載の紫外線吸収剤1を塗布した例は上側、実施例3記載の紫外線吸収剤3を塗布した例は下側であり、上下の例ともに左側1/4の部分は紫外線吸収剤を塗布しなかった。
実施例1記載の紫外線吸収剤1を塗布した場合(上側)は一次コート膜の透明度が高かったので一次コート膜はやや暗い灰色で示した。一次コート膜は加熱処理により透明化した(右側1/4の暗い灰色部分)。 実施例3記載の紫外線吸収剤3を塗布した場合(下側)は一次コート膜の透明度が低かったので明るい灰色で示した。一次コート膜は加熱処理により透明化した(右側1/4の暗い灰色部分)。この場合は加熱の度合いを変えて弱く加熱処理することも試みた(図の左内側1/4の部分のやや明るい灰色部分、弱く加熱処理と矢印で示した部分)が加熱の度合いにより透明度が異なった。
実施例1で形成された一次コート膜の紫外線透過スペクトル(低透過率を示す曲線)と加熱処理後に透明化したコート膜の紫外線透過スペクトル(高透過率を示す曲線)。 実施例3で形成された一次コート膜の紫外線透過スペクトル(低透過率を示す曲線)と加熱処理後に透明化したコート膜の紫外線透過スペクトル(高透過率を示す曲線)。 図4は本発明の実施例4において得られた紫外線遮蔽性コート膜付のガラス板の模式図である。一次コート膜は透明度が低く、光線を反射するので明るい灰色で示した。『U』、『V』という文字形状に加熱した部分は、一次コート膜が透明化したので黒い灰色で示した。図中右側の『U』、『V』という形状については、一部は加熱の程度を少くした。その部分は透明度が低くなったが、透明度に応じて明度が異なる灰色の輪郭不鮮明部分として示した。

Claims (4)

  1. 下記一般式( 1 ) ;
    Figure 0004644541
    ( 式中R 1 は水素原子または炭素原子数1 − 8 の炭化水素基を表し、R 2 は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1 − 8 のアルキル基、炭素原子数1 − 4 のアルコキシ基、ニトリル基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を表し、R 3 は直鎖状または枝分かれ鎖状構造をもつ炭素原子数1 − 1 2 のアルキレン基または− O − R 4 − を表す。R 4 は直鎖状または枝分かれ鎖状構造をもつ炭素原子数2 または3 のアルキレン基を表す。R 5 は水素原子またはメチル基を表す。) で表される化合物を全単量体成分100質量%に対して35質量%以上として重合させたガラス転移温度が40 ℃ 以上のポリマーエマルション微粒子と上記一般式( 1 ) で表される化合物を全単量体成分100質量%に対して35質量%以上として重合させたガラス転移温度が10 ℃ 以下のポリマーエマルション微粒子とを含有してなることを特徴とするポリマーエマルション。
  2. 請求項1 記載のガラス転移温度が40 ℃ 以上のポリマーエマルション微粒子とガラス転移温度が10 ℃以下のポリマーエマルション微粒子の混合比率は質量比で4:1〜1:4の範囲であることを特徴とする請求項1記載のエマルション。
  3. ポリマーエマルション微粒子の割合( 質量比) が40 % 以上であることを特徴とする請求項1乃至2記載のエマルション。
  4. 乳化剤の割合( 質量比) が2.5 % 以下であることを特徴とする請求項1乃至3記載のエマルション。
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