JP4641786B2 - 樹脂硬化方法、それに使用する加熱装置、及び微細表面構造をもつ物品の製造方法 - Google Patents
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Description
樹脂の特定を改善し、性能を上げるべく、今まで様々な工夫がなされてきた。例えば、樹脂を硬化したときに収縮がおこるため、それに伴いクラックが発生し、光学性能や耐環境性能が低下するという問題が発生していた。このような問題に対し、樹脂を硬化させるための光をスリット状に当て、その露光範囲をスリットの長手方向に垂直な方向に動かすという手法が提案されている(特許文献2,3参照。)。そのような手法によれば、収縮した樹脂の分だけ未硬化の樹脂が補充されるため、クラック等の発生を回避できるようになった。これらの手法は、数百μmオーダーの3次元形状を転写するマイクロプリントの分野や、接着層の密度の均一化が求められる接合技術の分野においては大きな効果が得られている。
接着剤層厚のばらつきは、例えば光学部品の接着の場合、光透過量ムラの原因となる。光学ユニットの更なる高効率を求める場合には、接着剤層は極力薄く、均一な樹脂厚さであることが肝要となる。
またインプリント時の残レイヤーの膜厚のばらつきは、特に転写樹脂層をドライエッチング等により母材に転写して微細3次元形状を製作する際の精度低下の原因となるため、接着の場合と同様に残レイヤー層は極力薄く、均一な樹脂厚さであることが求められる。
電子情報通信学会論文誌 C Vol. J85-C No.9 pp.793-802 2002年9月
(1)接着又は形状転写する部材における樹脂との界面となる面の形状精度(平面同士の接着や、平面上に微細3次元構造を形成する場合はそのベース面の平面度)
(2)接着又は形状転写する際の樹脂粘度及びチキソ性(部材界面形状への樹脂の倣い易さ)
(3)面合わせから固定までに加える力量(例えば基板同士の接着を実施する場合には面合わせ加圧時の圧力)
本発明は、樹脂層を硬化させる前にこれらの方法以外の方法により樹脂層厚を均一化することを目的とするものである。
樹脂均膜化工程は、硬化予定範囲全体を上記の微小部分加熱温度よりも低温で加熱した状態で行なうようにしてもよい。
この現象は、硬化前の樹脂に副剤を混合して使用しても、硬化後の樹脂は、副剤を含まない樹脂を硬化したものと同じものであることを意味している。
(A)表面に微細形状をもつ金型の表面に硬化可能な樹脂を介して製品基板を押し当てて、前記金型の表面形状の反転形状を前記樹脂に転写する工程、
(B)本発明の樹脂硬化方法による樹脂硬化工程、
(C)前記樹脂を前記製品基板に接合させた状態でその樹脂を前記金型から剥離させる工程、及び
(D)前記樹脂に転写された形状を前記製品基板に転写するドライエッチング工程。
また、ドライエッチングを行なわずに工程(C)での転写材料をそのまま製品とすることもできる。その場合には、製品仕様を満たせばよいので、製品基板には上記のような制限はない。
樹脂厚がそれなりに大きい(数十μm〜数百μm程度)場合には、樹脂の存在する空間において、表面積に対する存在する樹脂の体積が大きいために樹脂を流動するために必要な力が小さく、例えば、面合わせ後に基板をスピンさせたり、微小な振動を与えてやることで、ある程度の均膜化の効果を得ることは可能である。
加熱により均膜化を行なう方法は、加熱された部分の樹脂の流動性が向上するため、大きな均膜化の効果を得ることが可能となる。
この実施例では、バイナリー(Binary)位相型回折光学素子にカバーガラスの接合を行なう。バイナリー位相型回折光学素子の一例は、表面に50μm程度の幅と20μm程度の深さをもつ溝が50μm程度の一定間隔で互いに平行に多数形成されたものであり、入射ビームをほぼ同じエネルギーを含む2つのビームに分割するものである。
製品基板として石英ガラス基板を使用する。製品基板の表面(素子が形成されている面を表面という。)にはバイナリー位相型回折光学素子を構成する互いに平行な多数の溝が形成されている。
シランカップリング処理の一例は、次のものである。市販のカップリング処理剤(例えば、信越シリコーン社製、KBM503)を水に溶かし、表面処理した後、加熱硬化させる。その後、有機溶剤で洗浄し、カップリング処理剤を基板上に1分子層だけ残す。
(2−1)樹脂塗布
まず、樹脂吐出装置に製品基板をセットし、基板の表面の中心に紫外線硬化型樹脂(スリーボンド3034(スリーボンド社の製品))を200mg塗布した。
次にカバーガラス用基板を同装置にセットし、製品基板の表面に接合する面に同樹脂を50mg塗布した。
次に製品基板にカバーガラス用基板を載せる形で面合わせを行なった。このとき、それぞれの基板に塗布した樹脂同士が最初に接するようにする。このことにより、面合わせ時に樹脂内に気泡が入るのを防ぐことができる。
次に面合わせを行なった製品基板とカバーガラス基板を互いに押し付けるように、自動加圧機を用いて加圧処理を施して基板接合体とした。このとき、基板間の樹脂厚は約3〜10μmに制御されている。
次にその基板接合体をアルミニウム製のローラが多数個並んだコンベアの上におき、コンベア上を移動した。
コンベアは図2に示されるように、1個のローラ20が直径10mmで15mm間隔で、100個互いに平行に並んで配置されたものである。中心付近の2個のローラ20aのみを50℃に加熱し、残りのローラ20は室温とした。
次に樹脂硬化を行なった。本実施例では全面にわたって同時に照度15mW/cm2×867秒(13005mj)の照射を窒素雰囲気下で行なった。
以上の工法で接合された基板は、バイナリー位相型回折光学素子とカバーガラスの接着樹脂厚分布は6.5μm±1μmを達成することができた。
この参考例では、マイクロレンズアレイへのカバーガラスの接合を行なう。
(1)製品基板の表面処理
製品基板として石英ガラス基板を使用する。製品基板の表面にはマイクロレンズアレイが形成されている(マイクロレンズアレイ素子が形成されている面を表面という。)。
まず、製品基板−樹脂間の密着性を大きくするために、製品基板表面に、実施例1と同様のシランカップリング処理を行なった。
(2−1)樹脂塗布
まず、樹脂吐出装置に製品基板をセットし、基板表面の中心に紫外線硬化型樹脂スリーボンド3034(スリーボンド社の製品))を200mg塗布した。
次にカバーガラス用基板を同装置にセットし、製品基板の表面に接合する面に同樹脂を50mg塗布した。
次に製品基板表面にカバーガラス用基板を載せる形で面合わせを行なった。この時それぞれの基板に塗布した樹脂同士が最初に接するようにする。このことにより、面合わせ時に樹脂内に気泡が入るのを防ぐことができる。
次に面合わせを行なった製品基板とカバーガラス基板を互いに押し付けるように、自動加圧機を用いて加圧処理を施して基板接合体とした。このとき、基板間の樹脂厚は約3〜10μmに制御されている。
次に基板接合体の間に挟み込まれた樹脂に対して仮硬化を行なった。仮硬化では、紫外線照射により完全に硬化するエネルギーの70%程のエネルギーを与え、ある程度の硬化度をもたせる。紫外線照射は製品基板とカバーガラス基板のどちらの側から行なってもよい。
この紫外線照射において、中心部ほど照射時間が長くなって中心部では完全硬化が起こることもあるが、均膜化処理が終わった後に硬化するので、差し支えはない。全体が完全硬化することはない。
なお、図3において、「OF」は基板の方向を決めるためのオリフラ(オリエンテーション・フラット)である。
次に樹脂に十分な接合強度及び対環境性能をもたせることを目的とした樹脂完全硬化を行なった。本実施例では全面にわたって同時に照度15mW/cm2×867秒(13005mj)の照射を窒素雰囲気下で行なった。
以上の工法で接合された基板は、マイクロレンズアレイ基板のレンズ頂部とカバーガラス表面の間の接着樹脂厚分布は6.5μm±1μmを達成することができた。
参考例2を図4を参照して説明する。
この参考例ではマザー金型を使用して樹脂への転写を行なう。形成しようとする3次元形状はライン・アンド・スペースパターンである。
予め電子線描画用レジストを0.1μmの厚さに塗布した直径100mmのシリコン基板を用意し、EB(電子線)描画装置で所定の条件下で20mm×20mmの範囲のレジストにライン・アンド・スペース用のパターンを描画し、現像、リンスを行なって線幅50nm、間隔50nm、深さ150nmのレジストパターンを形成した。そのレジストパターンをマスクとしてシリコン基板をドライエッチングし、表面にライン・アンド・スペースパターンをもつマザー金型を形成した。
この実施例では、このマザー金型を樹脂転写用の金型として用い、樹脂転写及びドライエッチングによって製品基板に所望のパターンを転写する。
製品基板として石英ガラス基板を使用する。
まず、製品基板−樹脂間の密着性を大きくするために、製品基板表面に、実施例1と同様のシランカップリング処理を行なった。
金型表面にキャロス洗浄を施し、続いてエキシマ処理を施した。キャロス洗浄は硫酸とH2O2の混合液による洗浄方法である。エキシマ洗浄はO2ガスを流しながらエキシマ光を照射してO3を発生させ、基板表面の有機物質を酸化して除去する洗浄方法である。
金型表面には離型処理を施しておくのが好ましい。離型処理を行うと、樹脂硬化後に金型の剥離が容易となる。離型処理の一例はフッ素系プライマー処理である。
以上が樹脂転写の前工程となる。続いて樹脂転写工程を具体的に説明する。
(4−1)樹脂塗布
まず、樹脂吐出装置に製品基板をセットし、転写しようとする領域上に、紫外線硬化型樹脂(スリーボンド3034(スリーボンド社の製品):オリジナル樹脂)とアセトン(副剤)を4:1の割合で混ぜ合わせた樹脂を0.3mgずつ塗布した。
次に金型を同装置にセットし、金型表面の転写したい部分に同樹脂を0.3mgずつ塗布した。
次に金型表面に製品基板を載せる形で面合わせを行なった。このとき、空気が転写領域に入り込まないように注意する。
次に面合わせを行なった金型と製品基板を互いに押し付けるように、自動加圧機を用いて加圧処理を施した。この時点で残レイヤー層(パターン下部と転写母材との間の樹脂層)の厚さは40±20nmであった。
次に金型と製品基板の間に挟み込まれた樹脂に対して均膜化処理を行なった。均膜化処理に必要な体積変化を、樹脂を仮硬化することで得た。
ここでの仮硬化も完全に硬化するエネルギーの70%程のエネルギーを与え、ある程度の硬化度をもたせた。硬化の方法としては、製品基板側から樹脂層の小さい範囲をスリットを介して露光し、金型と製品基板を固定してスリットを移動させるか、スリットを固定して金型と製品基板を移動させるか、又は両方を移動させることにより、露光位置を少しずつずらして行き、金型パターンの形状の通りに仮硬化させた。
次に金型からの樹脂の離型処理及び樹脂に十分なエッチング耐性をもたせることを目的とした樹脂完全硬化を行なった。このときの硬化処理は全面にわたって同時に照度15mW/cm2×867秒(13005mj)の照射を窒素雰囲気下で行ない、樹脂を引けさせる(硬化による樹脂収縮)ことで効果的に離型を行なった。
次に金型と製品基板の組を製品基板側を上にして離型治具に設置し、製品基板を金型から剥がした。金型表面に離型処理を施していたことにより、金型に樹脂残りが発生せずに剥離できた。これにより、製品基板上の樹脂層に金型の微細形状が転写され、樹脂によるライン・アンド・スペースパターンが形成された。
なお、剥がされた金型は洗浄して繰り返し使用する。先に実施した均膜化処理の硬化により、残レイヤー層の厚さは40±5nmとなり、ばらつきは5nm以下に抑えることができた。
続いてドライエッチングによる微細形状加工処理を示す。
(5−1)ダミー処理
ダミー基板(樹脂層は付着していない)をチャンバーに設置した後、チャンバー内を4.0×10-4Torr以下に排気した。ダミー基板は特に限定されるものではないが、例えば製品基板と同じもので樹脂層の付着していないものである。その後、RIE(反応性イオンエッチング)装置の上部電極パワーを1250ワット、下部電極(RF)パワーを50ワットに設定し、CHF3を17sccmで供給して5分間ドライエッチング処理を行なった。この処理を実施することでチャンバー内の雰囲気を、製品基板を処理するガスとした。
次にチャンバーからダミー基板を取り出し、微細3次元形状が形成されている樹脂層が付着している製品基板をチャンバー内に設置した後、チャンバー内を4.0×10-4Torr以下に排気した。その後、RIE装置の上部電極パワーを1250ワット、下部電極(RF)パワーを300ワットに設定し、CHF3を17sccmで供給して15秒間ドライエッチング処理を行なった。このドライエッチング処理により、製品基板がエッチングされてライン・アンド・スペースパターンが形成されたが、このドライエッチングはライン・アンド・スペースパターンのラインパターン上に樹脂層がまだ残っている状態で終了した。
製品基板を一度チャンバーから取り出し、ダミー基板をチャンバーに設置した後、チャンバー内を4.0×10-4Torr以下に排気した。その後、RIE装置でO2を200sccmで供給しながら5分間O2クリーニング処理を行なった。この処理を実施することでチャンバー内をO2雰囲気とした。
上部に樹脂層を残してエッチングを終了した製品基板をチャンバー内に設置した後、チャンバー内を4.0×10-4Torr以下に排気した。その後、RIE装置の上部電極パワーを1250ワット、下部電極(RF)パワーを200ワットに設定し、O2を20sccmで供給して10秒間アッシング処理を行ない、ドライエッチング時に樹脂表面に堆積した堆積物を除去した。これにより、次工程で実施する洗浄の際に残留樹脂層を完全に除去することが可能となる。このアッシング処理では、先にO2クリーニングを実施していることによりチャンバー内がO2雰囲気になっているので、形状転写時のドライエッチングの残ガスによるパターンの形状の崩れを防止することができる。
次にO2アッシング処理を施した製品基板をH2SO4とH2O2の混合液で6分間洗浄して残っていた樹脂層14を除去した。
以上の工程により、シリコン基板に形成した金型の高精度の微細形状を他の材料に転写することが可能となる。
14 樹脂
14a 仮硬化した樹脂
14b 未硬化樹脂
20 ローラ
20a 加熱されたローラ
22,30 基板接合体
Claims (8)
- 2部材間に未硬化状態の光硬化型又は熱硬化型樹脂を挟んで面合わせを行なった状態で前記樹脂を硬化させる樹脂硬化方法において、
前記樹脂の完全硬化工程の前に、前記樹脂の硬化予定面積に比べて微小な面積部分の樹脂に加熱により完全硬化に至らない大きさのエネルギーを与えてその部分の樹脂に体積変化を起こさせるとともに、その体積変化を起こす領域を連続的に変化させることにより樹脂層の厚さを均一にする樹脂均膜化工程を備えていることを特徴とする樹脂硬化方法。 - 前記樹脂均膜化工程は、硬化予定範囲全体を前記加熱温度よりも低温で加熱した状態で行なう請求項1に記載の樹脂硬化方法。
- 前記樹脂均膜化工程は、微小部分をスリット状に加熱し、その加熱領域をスリットの長手方向に垂直な方向に移動させる工程である請求項1又は2に記載の樹脂硬化方法。
- 前記樹脂は硬化型樹脂の主剤であるモノマーのほかに、そのモノマーよりも低分子量で、相溶性をもち、硬化反応に寄与しない副剤を含んで流動性が高められている請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂硬化方法。
- 以下の工程(A)から(C)を備えて微細表面構造をもつ物品を製造する製造方法。
(A)表面に微細形状をもつ金型の表面に硬化可能な樹脂を介して製品基板を押し当てて、前記金型の表面形状の反転形状を前記樹脂に転写する工程、
(B)請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂硬化方法による樹脂硬化工程、及び
(C)前記樹脂を前記製品基板に接合させた状態でその樹脂を前記金型から剥離させる工程。 - 以下の工程(A)から(D)を備えて微細表面構造をもつ物品を製造する製造方法。
(A)表面に微細形状をもつ金型の表面に硬化可能な樹脂を介して製品基板を押し当てて、前記金型の表面形状の反転形状を前記樹脂に転写する工程、
(B)請求項1から4のいずれか一項に記載の樹脂硬化方法による樹脂硬化工程、
(C)前記樹脂を前記製品基板に接合させた状態でその樹脂を前記金型から剥離させる工程、及び
(D)前記樹脂に転写された形状を前記製品基板に転写するドライエッチング工程。 - 請求項3に記載の樹脂硬化方法中の樹脂均膜化工程で使用する加熱装置であって、
物品の微小範囲にスリット状に熱エネルギーを与え、かつその熱エネルギーを与える範囲をスリットの長手方向に垂直な方向に移動させる加熱装置。 - 複数のローラが互いに平行に配置され、ローラの回転によりそれらのローラ上を物品が搬送される搬送装置にてなり、前記ローラのうちの一箇所のローラのみが加熱されていることにより、その上を搬送される物品にスリット状に熱エネルギーを与える請求項7に記載の加熱装置。
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